説明

スイッチ装置とその故障検出装置

【課題】ショート故障を検知することが可能なスイッチ装置と故障検出装置とを提供すること。
【解決手段】第1固定接点11−1と、前記第1固定接点の内側に互いに所定間隔離間して配置された第2、第3固定接点(11−2、11−3)と、前記第1固定接点上に載置され、前記第2、第3固定接点を覆うドーム状の可動接点12とを有し、前記第2固定接点は、一定の電位に接続され、前記第1固定接点及び可動接点によりスイッチを構成し、前記第3固定接点は、前記スイッチの動作を検出する検出信号出力端として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器の操作パネルに適用されるスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチには、開放(オープン)及び短絡(ショート)の故障がある。オープンで故障した場合はスイッチ操作に対して電子機器は動作しない。
【0003】
一方、ショートで故障した場合、電子機器を停止することが出来ない。このため、
従って、ショートによる故障を検知できれば安全性を向上することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−146679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ショート故障を検知することが可能なスイッチ装置と故障検出装置とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この実施形態によればスイッチ装置は、第1固定接点と、前記第1固定接点の内側に互いに所定間隔離間して配置された第2、第3固定接点と、前記第1固定接点上に載置され、前記第2、第3固定接点を覆うドーム状の可動接点とを有し、前記第2固定接点は、一定の電位に接続され、前記第1固定接点及び可動接点によりスイッチを構成し、前記第3固定接点は、前記スイッチの動作を検出する検出信号出力端として機能する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ショート故障を検知することが可能なスイッチ装置と故障検出装置とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るスイッチ装置を搭載した回路基板の平面図。
【図2】図2(a)は、図1に示すスイッチ装置の1つを取り出して示す平面図であり、図2(b)は図2(a)に可動接点を装着した状態を示す平面図。
【図3】図3(a)は、図2(a)に示す3−3線に沿った断面図であり、図3(b)は図3(a)を押圧し、動作状態を示した断面図。
【図4】本実施形態に係るスイッチ装置及び制御部を備えた回路図。
【図5】本実施形態に係るスイッチ装置が正常動作をする際の各ノードの電圧値を示した概念図。
【図6】本実施形態に係るスイッチ装置が異常動作をする際の各ノードの電圧値を示した概念図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態は、ドーム型の1つの可動接点と、1つのコモン接点としての固定接点と、2つの固定接点とを備えた、例えば単極のスイッチ装置に係り、このスイッチ装置において一方の固定接点をスイッチ装置本来の固定接点として機能させ、他方の固定接点を、一方の固定接点が正常に可動接点と導通しているかを検知する検知部として機能させる。すなわち、本実施形態に係るスイッチ装置は、スイッチ装置が正常に動作しているかを検知することが可能な検知部を備えている。
【0010】
以下、この発明の実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0011】
図1は本実施形態に係るスイッチ装置が配置された電子機器の、例えば操作パネルを構成する回路基板10を示している。図1において、回路基板10の表面にはスイッチ装置を構成する1つのリング状コモン接点と、コモン接点の内側に配置された2個の固定接点を含む複数のスイッチ装置SWが形成されている。各スイッチ装置SWは、リング状コモン接点が戴置され、2つの固定接点を覆うドーム状の可動接点(図2(b)に示す)が設けられる。なお、スイッチ装置SWの数は、電子機器の機能に応じて、任意である。
【0012】
図2(a)、(b)は1つのスイッチ装置SWを示している。
【0013】
図2(a)に示すようにスイッチ装置SWは、回路基板10上に形成されたリング状のコモン接点としての固定接点11−1、及び固定接点11−1の内側に形成された2つの固定接点11−2、及び11−3を備える。
【0014】
リング状の固定接点11−1は外縁と内縁とに囲まれた領域により構成される。外縁からリングの中心部分までの距離をa1とし、内縁からリングの中心部分までの距離をa2とすると、外縁から内縁までの距離は(a1−a2)となる。
【0015】
固定接点11−2及び11−3は、半円形状の金属片により構成され、所定間隔離隔して中心部分を対称的に配置される。また、固定接点11−2、11−3の外縁から固定接点11−1の内縁までの距離をa3とする。
【0016】
固定接点11−3は後述する可動接点12と電気的に接触することで電子機器のスイッチ素子として機能する。また固定接点11−2は、固定接点11−3が正常にオン、オフしているかを検知する検知部として機能する。このため、固定接点11−3は接地され、また固定接点11−2は図示せぬスルーホールを介してA/D変換器(後述する)に電気的に接続される。なお、A/D変換器は回路基板10の裏面側に設けられていてもよい。
【0017】
図2(b)はドーム状の可動接点12をリング状の固定接点11−1上に戴置した状態を示している。この状態において、ドーム状の可動接点12は図3(a)に示すように固定接点11−2、11−3及び固定接点11−1を覆う。
【0018】
図3(a)は、オフ状態のスイッチ装置を示している。この場合、可動接点12は固定接点11−3、11−2から離隔しており、固定接点11−1と11−3とは電気的に切断されている。また、可動接点12は頂点bを有する。
【0019】
一方、図3(b)はオン状態のスイッチ装置を示している。すなわち、ドーム状の可動接点12の中央部が押圧されると、可動接点12の中央部が撓み、中央部がそれぞれ固定接点11−2、11−3に接触されるため、固定接点11−2、11−3と固定接点11−1とが可動接点12を介して電気的に接続される。すなわち、中央部は固定接点111−2、11−3と接触する接触部として機能する。図示はしていないが、この頂点b(接触部)に固定接点11−2、11−3との接触用突起(窪み)を設けてもよい。
【0020】
ところで、固定接点11−3は接地されている。このため、スイッチがオン状態において可動接点12の電位もゼロ電位となる。
【0021】
図4は、上記スイッチ装置が正常に導通しているか否かを検知するスイッチ回路を示している。ここでは一例として回路基板10上にスイッチ装置が、例えば2つ設けられている場合を想定する。なお、図4において、図2、図3と同一部分には同一符号を付す。
【0022】
図示するように、本実施形態に係るスイッチ回路は、第1スイッチ装置30、第2スイッチ装置31、及び制御部21を備える。
【0023】
図示するように第1スイッチ装置30は可動接点12と固定接点11−2、11−3、及びノイズ吸収容量13とを備える。以下、第1スイッチ装置30の固定接点11−1はノードN1を介して制御部21の入力端子D1に接続される。
また、固定接点11−3はノードN2を介して、接地される。
また、固定接点11−2は抵抗素子27及びノードN3を介して制御部21内のA/D変換器21−2に接続される。また容量13の一方の電極はノードN1に接続され、他方の電極はノードN2に接続される。
【0024】
同様に、第2スイッチ装置31の固定接点11−1はノードN4を介して制御部21の入力端子D2に接続される。
また、固定接点11−3はノードN5を介して接地される。
さらに、固定接点11−2は抵抗素子27及びノードN3を介して制御部21内のA/D変換器21−2に接続される。また容量14の一方の電極はノードN4に接続され、他方の電極はノードN5に接続される。
【0025】
また、抵抗素子22は一端には電圧VDDが供給され、他端はノードN1に接続される。抵抗素子23は一端が上記抵抗素子22の一端と共通接続され、他端はノードN4に接続される。
【0026】
また、抵抗素子24の一端には電圧VDDが供給され、他端はノードN3に接続される。抵抗素子25の一端はノードN3で上記抵抗素子24の他端と共通接続され、他端は接地される。すなわち、ノードN3の電圧Vは抵抗素子24と25とにより分圧された値に設定される。
【0027】
更に、ノードN3と接地間には容量26が接続されている。
制御部21は入力端子D1、D2、CPU21−1、及びA/D変換器21−2を備える。入力端子D1及びD2はCPU21−1に接続され、CPU21−1は第1、第2スイッチ装置30、31の出力信号を受ける。
【0028】
A/D変換器21−2はノードN3の電位と基準電圧Vrefとを比較し、ノードN3の電位に応じたデジタル値を変換する。A/D変換器21−2の出力信号はCPU21−1に供給される。
【0029】
CPU21−1は、例えば入力端子D1とA/D変換器21−2が算出したデジタル値とを参照する。参照した結果、CPU21−1は第1スイッチ装置30が正常に動作(導通)しているか否かを判断する。第2スイッチ装置31に対しても同様である。
【0030】
次に図5を用いて上記制御部21、具体的にはCPU21−1による検知動作(その1)について説明する。
図5は第1スイッチ装置30が正常動作する場合において、CPU21−1により第1スイッチ装置30がオン状態かオフ状態かを判断する概念図である。すなわち、図5は、ノードN1、N3の電圧値と、CPU21−1の判断結果を示している。
【0031】
各ノードの電位は0[V]、“L”レベル、及び“H”レベルで表わされる。これらの関係は0[V]< “L”レベル、“H”レベル>“H”レベル>“L”レベルである。ここで、“H”レベルは、第1スイッチ装置30が、オフ状態におけるノードN1の電位であり、VDD−IR1の電位である。R1は抵抗素子22の抵抗値であり、Iは抵抗素子22に流れる電流である。
【0032】
また、“H”レベルは、第1スイッチ装置30がオフ状態におけるノードN3の電位であり、抵抗素子24、25の分圧電圧である。
更に、“L”レベルは、第1スイッチ装置30がオン状態におけるノードN3の電位であり、抵抗素子24、25の分圧電圧より低い電圧である。
【0033】
図示するように、ノードN1が0[V]であって、ノードN3が“L”レベル>0[V]であると、CPU21−1はノードN1とN2間、及びノードN1とN3間がそれぞれ電気的に接続されている、すなわち正常にオン状態とされていると判断する。
【0034】
また、ノードN1が“H”レベル、ノードN3が“H”レベル(<“H”レベル)とされると、CPU21−1は、ノードN1とN2間、及びノードN1とN3間がそれぞれ電気的に開放されている、すなわち正常にオフ状態とされていると判断する。第2スイッチ装置31に対しても第1スイッチ装置30と同様に、CPU21−1は、入力端子D2に供給される信号とA/D変換器21−2の出力信号に基づき第2スイッチ装置31の状態を判断する。
【0035】
一方、図6はCPU21−1により、第1スイッチ装置30が異常動作をしていると判断する概念図であり、図5と同一部分には同一符号を付している。図6において、ノードN1、N3の電圧の値を示す。各レベルの関係は次の通りである。0[V]<“L”レベル、“H”レベル<“H”レベル<“H”レベル<“H”レベルの関係を満たす。ここで、“H”レベルは、ノードN1とノードN3のみが接続されている場合におけるノードN1の電位であり、“H”レベルはこの時のノードN3の電位であり、抵抗素子27の電圧降下分だけノードN1より低い電位である。
【0036】
図示するように、ノードN1が“H”レベル、及びノードN3が“H”レベルの場合、CPU21−1は、ノードN1とN3のみが接続された状態、すなわち異常接触と判断する。
【0037】
また、ノードN1が“H”レベル、ノードN3がそれぞれ“L”レベルの場合、CPU21−1は、ノードN2とN3とがショートした、すなわち異常接触と判断する。
【0038】
更に、ノードN1が0[V]、ノードN3が“H”レベルの場合、CPU21−1はノードN1とN2のみが接続された状態、すなわち異常接触と判断する。異常を示す場合、第2スイッチ装置31に対しても、第1スイッチ装置30と同様にして、CPU21−1は、入力端子D2に供給される信号とA/D変換器21−2の出力信号に基づき第2スイッチ装置31の状態を判断することが出来る。
【0039】
以上から制御部21はノードN1、及びノードN3の電圧に応じたデジタル値を参照し、図6に示す組み合わせであれば、第1、第2スイッチ装置30、31のいずれかまたは両方が異常動作をしていると判断する。
【0040】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態に係るスイッチ回路によれば、スイッチ装置はリング状の固定接点11−1の内側に2つの固定接点11−2、11−3を設け、一方の固定接点11−3はスイッチ素子として機能し、他方の固定接点11−2は検知部として機能することにより、可動接点12と固定接点11−2、11−3及び固定接点11−1とがスイッチ装置として正常に動作しているか否かを検知することができる。
【0041】
つまり、CPU21−1は入力端子D1、D2に入力されるノードN1、N4の電位及びノードN3の電位に応じたデジタル値を検知することでスイッチ回路がオフ状態の場合であっても、第1スイッチ装置30、第2スイッチ装置31において、固定接点及び可動接点間に、例えば異物などが挟まったこと、又は固定接点同士がショートしたことを検知することが出来る。
【0042】
また、本実施形態では、2つのスイッチ装置に対して、A/D変換器21−2を設けていたが、スイッチ装置毎にA/D変換器を設けてもよい。この場合、制御部21は異常のスイッチ装置を検知することが出来るため、複数のスイッチ装置の中から故障状態のスイッチ装置を容易に検知することが出来る。すなわち、この構成であると、CPU21−1は各入力端子と対応するA/D変換器の出力信号を参照することで、より具体的にどちらのスイッチ装置で異常が発生しているかを検知することが出来る。
【0043】
1)また、本実施形態に係るスイッチは、スイッチのオンまたはオフを制御可能な可動部(12)と、前記スイッチが前記オン状態とされると、前記可動部に接続される固定部(11−2、11−3)とを備え、
前記固定部は、固定接点(11−3)と、前記可動部と前記固定接点とにそれぞれ接続されたか否かによって前記スイッチが前記オン状態とされたか否かを検知する検知部(11−2)とを備える。
【0044】
2)また、本実施形態に係るスイッチは、前記第2固定接点は接地されることを備える。
【0045】
3)また、本実施形態に係るスイッチは、前記上部スイッチの電圧が入力される端子と、前記第3固定接点の電圧をデジタル変換するA/D変換器と、前記端子の値と、前記デジタル変換によって得られたデジタル値とを参照するCPUとを備えた制御部を更に備える。
【0046】
4)また、本実施形態に係るスイッチは、前記制御部は、前記値と前記デジタル値とを参照した結果、窪み部分と前記第1固定接点及び前記第2固定接点とが接合しているか否かを検知する。
【0047】
なおまた本実施形態では、固定接点11−2、11−3の形状は半円であったが、窪み部分と接触可能であれば形はこれに限らない。つまり、例えば正方形を分割した長方形や、三角形を分割した垂直三角形などであってもよい。しかし、好ましくは、本実施形態に示した円形を2つに分割した半円形状が良い。なぜなら、固定接点11−2、11−3の外縁から固定接点11−1の内縁までの距離は一定とされaである。従って、固定接点11−1の内縁からある所だけ固定接点11−2、11−3の外縁まで近い箇所があるといったことがなくなる。つまり、異物などによってオフ状態にも関わらず、異常接触を起こすといったことを防止することが出来る。
【0048】
また、可動接点12と固定接点11−1とのコモン接点は、リング状であれば円形以外であってもよい。すなわち、線の一端と他端とが互いに接続され、閉じた図形(リング状)であれば、平面状の閉じた単純折れ線、及び平面状の閉じた単純折れ線によって囲まれた図形であってもよい。具体的には、(正)多角形などの形状であってもよい。
【0049】
なお、可動接点12の形状はリング状に限られない。すなわち、固定接点11−1が可動接点12の一部に接続されていればリング状に限られない。
【0050】
また、本実施形態の可動接点12の形状の一例としてドーム状を上げたが、これに限られない。すなわち、固定接点11−1に接し、且つ可動接点12の一部が固定接点11−2、11−3の両端に接触さえすれば、どのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…基板回路、12…可動接点、11−1、11−2、11−3…固定接点、13、14、26…容量、21…制御部、21−1…CPU、21−2…A/D変換器、23〜26…抵抗素子、30…第1スイッチ装置、31…第2スイッチ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定接点と、
前記第1固定接点の内側に互いに所定間隔離間して配置された第2、第3固定接点と、
前記第1固定接点上に載置され、前記第2、第3固定接点を覆うドーム状の可動接点と、を有し、
前記第2固定接点は、一定の電位に接続され、前記第1固定接点及び可動接点によりスイッチを構成し、前記第3固定接点は、前記スイッチの動作を検出する検出信号出力端として機能することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
第1固定接点と、
前記第1固定接点の内側に互いに所定間隔離間して配置された第2、第3固定接点と、
前記第1固定接点上に載置され、前記第2、第3固定接点を覆うドーム状の可動接点と、を有し、
前記第2固定接点は、一定の電位に接続され、前記第1固定接点及び可動接点によりスイッチを構成し、
前記第1固定接点に第1電圧を供給する第1電圧供給手段と、
前記第3固定接点に第2電圧を供給する第2電圧供給手段と、
前記第3固定接点の電圧をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記アナログ/デジタル変換器の出力信号と、前記第1固定接点の電圧とを比較し、前記スイッチを構成する第1乃至第3固定接点の接続状態を判別する制御部と
を具備することを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−94346(P2012−94346A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240101(P2010−240101)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(591267338)株式会社エニー (2)
【Fターム(参考)】