説明

スキージ

【課題】水切り性能の低下を抑制することができるスキージを提供する。
【解決手段】一定方向に延びる長手状の基部2と、基部2の長手方向に沿う端縁に基端が連設された板状部3と、を備え、板状部3は、基端側から先端側に向かうにつれて厚みが減少する第1板部31と、第1板部31の先端側につながり、略一定の厚みをもつ両側面321、およびこれら両側面321につながる先端面322を有する第2板部32と、を備え、先端面322と両側面321のそれぞれとがなす2つの角部がエッジ3Aを形成しており、先端面322と各両側面321とのなす角が直角もしくは略直角とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばガラスの水切り等に使用されるスキージに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの水切り等に用いられる清掃具として、スキージが知られている(たとえば特許文献1,2を参照)。特許文献1に開示されたスキージは、一定方向に延びる長手状の基部と、この基部の長手方向に沿う端縁に連設された板状部とを備え、板状部の先端には、直線状に延びるエッジが設けられている。このようなスキージは、樹脂等により一体成形される。上記構成のスキージの使用時には、たとえば、基部を持ち手として掴み、エッジをガラスや鏡等の表面に当接させたまま滑らせることにより、水切りを行う。特許文献2には、スキージ本体に柄を取り付けた構成が開示されている。柄の端部には吊下げ用の孔が形成されており、不使用時には、たとえば壁に取り付けられた吊フックに上記吊下げ用孔を引っ掛けることにより、スキージを壁に吊下げて保管することができる。
【0003】
上記従来のスキージにおいて、板状部の先端付近は、エッジに向かうにつれて厚みが小さくなっており、エッジは先鋭状となっている(特許文献1の図1〜図3、特許文献2の第2図参照)。スキージの使用時には、板状部をガラス等に対して傾けた状態で押し付けて撓ませ、エッジの長手方向全長をガラス表面等に当接させる。このようにエッジの全長域がガラス表面等に当接すると、十分な水切り性能を発揮することができる。
【0004】
しかしながら、上記従来のスキージは、エッジが先鋭状であるため、使用を繰り返すことにより、エッジ付近に反り癖がつき易かった。反り癖が付いた部分は、ガラス表面等との間に隙間を生じやすく、水切り性能を低下させる虞れがあった。また、スキージは樹脂等により一体成形されるが、エッジにパーティングラインのバリ等が残る場合には、エッジの全長域をガラス表面等に適切に当接させることができない。このことは、水切り性能を低下させる原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2586407号公報
【特許文献2】実開昭50−131852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、水切り性能の低下を抑制することができるスキージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供されるスキージは、一定方向に延びる長手状部分を有する基部と、上記長手状部分の長手方向に沿う端縁に基端が連設された板状部と、を備え、上記板状部は、基端側から先端側に向かうにつれて厚みが減少する第1板部と、この第1板部の先端側につながり、略一定の厚みをもつ両側面、およびこれら両側面につながる先端面を有する第2板部と、を備え、上記先端面と上記両側面のそれぞれとがなす2つの角部がエッジを形成しており、上記先端面と各両側面とのなす角が直角もしくは略直角とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成のスキージによれば、第2板部は、第1板部の基端よりも厚みが小さくされているので、適度な柔軟性を有しており、使用時には、第2板部の先端にあるエッジの全長域を、ガラス等の水切り対象物の表面に当接させることができる。そして、第2板部は、その全体が略一定の厚みとされているため、形状安定性・形状復元性に優れており、使用を繰返しても、第2板部に反り癖が付き難い。したがって、上記構成のスキージによれば、水切り性能の低下を抑制することができる。
【0010】
また、第2板部の先端面と両側面のそれぞれとがなす2つの角部がエッジを形成しており、先端面と各両側面とのなす角が直角もしくは略直角とされている。したがって、エッジは、第2板部の先端面を挟んで厚み方向に離れた2箇所の角部において略同じ態様で形成されているので、板状部を水切り対象物の表面に対していずれの方向に傾斜させても、いずれか一方のエッジを上記表面に当接させることができる。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記基部と上記板状部とは、樹脂もしくはゴムにより一体成形された成形品によって構成されており、上記エッジは、上記成形品の一部を切断することにより形成される。このような成形品の一部切断によってエッジが形成される構成によれば、エッジの全長域に亘って略一様の角が形成される。これにより、エッジの全長域を水切り対象物の表面に適切に当接させることができる。このことは、水切り性能の低下を抑制するうえでより好ましい。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記第2板部における基端から先端までの長さは、上記第1板部における基端から先端までの長さの略1/1〜1/3である。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記第2板部の厚みは、上記第1板部における基端の厚みの略1/2〜1/3である。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記第2板部の厚みは、上記第1板部における先端の厚みと略同一である。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るスキージの一例を示す正面図である。
【図2】図1に示したスキージの左側面図である。
【図3】図1に示したスキージの斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1に示したスキージを支持部材に吊下げる作業の途中の状態を示す正面図である。
【図6】図1に示したスキージを支持部材に吊下げた状態を示す正面図である。
【図7】本発明に係るスキージの使用状態を示す要部断面図である。
【図8】本発明に係るスキージの他の例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1〜図4は、本発明に係るスキージの一例を示している。本実施形態のスキージ1は、一定方向に延びる長手状の基部2と、この基部2の長手方向に沿う端縁に基端が連設された板状部3と、を備える。本実施形態では、図1に表れているように、スキージ1は、正面視において全体として概略平行四辺形を呈している。基部2は、厚みが相対的に大きくされており、概略長矩形状の持ち手とされる部分である。基部2は、横断面が略楕円状とされている。図3および図4によく表れているように、板状部3は、厚みが相対的に小さくされており、先端には直線状に延びるエッジ3Aが設けられている。
【0019】
より具体的には、板状部3は、第1板部31と、この第1板部31の先端側につながる第2板部32とを備える。図4によく表れているように、第1板部31は、基端側から先端側に向かうにつれて厚みが減少する先細り状となっている。一方、第2板部32は、略一定の厚みをもつ両側面321と、これら両側面321につながる先端面322とを有しており、第2板部32の厚みは、第1板部31における先端の厚みと略同一である。エッジ3Aは、先端面322と両側面321のそれぞれとがなす2つの角部によって形成されており、先端面322と各両側面321とのなす角が直角もしくは略直角とされている。
【0020】
第1板部31における基端の厚みt1に対する第2板部32の厚みt2の割合は、たとえば1/2〜1/3の範囲で適宜定められる。上記厚みt1および厚みt2の一例を挙げると、厚みt1が約6mm、厚みt2が約2mmとされる。第1板部31における基端から先端までの長さd1に対する第2板部32における基端から先端までの長さd2の割合は、たとえば1/1〜1/3の範囲で適宜定められる。上記長さd1および長さd2の一例を挙げると、長さd1が約23mm、長さd2が約8mmとされる。
【0021】
図1に表れているように、スキージ1の長手方向端部近傍には、厚み方向に貫通する円形の吊下げ用孔4が形成されている。吊下げ用孔4は、基部2および板状部3に跨って形成されている。
【0022】
スキージ1には、このスキージ1の外縁から吊下げ用孔4に通じる切れ込み5が設けられている。切れ込み5は、たとえばバー状の支持部材Sを吊下げ用孔4に挿通させるためのものであり(図6参照)、本実施形態では、基部2と板状部3との境界に形成されている。他の部分との区別のために、図1〜図3においては切れ込み5を示す線分を点線で表し、図3においては切れ込み5を示す領域にハッチングを付している。切れ込み5を挟んで両側に位置する基部2と板状部3のうち、厚みの小さい板状部3が比較的容易に弾性変形可能とされている。図5に示すように、たとえば板状部3を紙面の手前側に撓ませることにより、バー状の支持部材Sを、切れ込み5を通じて吊下げ用孔4に挿通することができる(図6参照)。
【0023】
図1および図6においては、スキージ1の重心Gが示されている。重心Gは、基部2内に位置しており、基部2と板状部3との境界から少し離れた位置にある。吊下げ用孔4の中心C1は、重心Gを通って長手方向に延びるラインL1上に位置している。そして、図6に示すように、スキージ1をバー状の支持部材Sに吊下げたときには、吊下げ用孔4の内周のうち重心Gから最も離れた位置P1は、支持部材Sにより支持される被支持部P2となっている。本実施形態では、吊下げ用孔4が円形であり、断面円形の支持部材Sにより支持されるので、重心Gから最も離れた位置P1と被支持部P2とが、一致している。
【0024】
図1を参照して上述したように、切れ込み5は、基部2と板状部3との境界に形成されている。これにより、切れ込み5が吊下げ用孔4の内周に通じる位置P3は、被支持部P2とは異なる位置にある。
【0025】
上記構成のスキージ1は、樹脂もしくはゴムにより一体成形された成形品によって構成されており、たとえばシリコン樹脂からなる。
【0026】
また、スキージ1は、図3において仮想線で示すラインL2をパーティングラインとする上下割型を用いて1個取りあるいは複数個取りにより成形されたものである。切れ込み5は、スキージ1の長手方向端部から吊下げ用孔4にかけて基部2と板状部3との境界部分を切ることにより形成される。板状部3先端のエッジ3Aは、成形品の一部を切断することにより、厚み方向の両端が直角もしくは略直角に形成される。
【0027】
次に、上記構成のスキージ1の作用について説明する。
【0028】
スキージ1の使用時には、図7に示すように、板状部3をガラス等に対して傾斜した状態で押し付けて撓ませ、エッジ3Aの長手方向全長をガラス等の表面Sfに当接させる。そのまま当該エッジ3Aを表面Sf上において図中矢印方向に滑らすことにより、水切りを行う。
【0029】
本実施形態のスキージ1においては、板状部3は、基端側において先細り状の第1板部31を有し、先端側において厚みが略一定の第2板部32を有する。第2板部32は、第1板部31の基端よりも厚みが小さくされているので、適度な柔軟性を有しており、スキージ1の使用時には、第2板部32の先端にあるエッジ3Aの全長域を表面Sfに当接させることができる。そして、第2板部32は、その全体が略一定の厚みt2とされているため、形状安定性・形状復元性に優れており、使用を繰り返しても、第2板部32に反り癖が付き難い。したがって、スキージ1によれば、水切り性能の低下を抑制することができる。
【0030】
また、第2板部32の先端にあるエッジ3Aは、先端面322と両側面321のそれぞれとがなす2つの角部によって形成されており、先端面322と各両側面321とのなす角が直角もしくは略直角とされている。したがって、エッジ3Aは、先端面322を挟んで厚み方向に離れた2箇所の角部において略同じ態様で形成されている。このため、板状部3を表面Sfに対していずれの方向に傾斜させても、いずれか一方のエッジ3Aを表面Sfに当接させることができる。そして、エッジ3Aは、樹脂等による成形品の一部を切断して形成されたものであるので、このエッジ3Aの全長域に亘って略一様の角が形成される。かかる構成によれば、エッジ3Aの全長域を表面Sfに適切に当接させることができる。このことは、水切り性能の低下を抑制するうえでより好ましい。
【0031】
板状部3において、第1板部31における基端の厚みt1に対する第2板部32の厚みt2の割合や、第1板部31における基端から先端までの長さd1に対する第2板部32における基端から先端までの長さd2の割合は、上記した所定の範囲とされている。これにより、板状部3全体として寸法バランスが良くなり、第2板部32においては、適度な柔軟性を有し、かつ形状安定性・形状復元性を適切に発揮することができる。
【0032】
本実施形態のスキージ1においては、図5および図6を参照して上述したように、不使用時には、切れ込み5近傍の板状部3を弾性変形させ、当該切れ込み5を通じてバー状の支持部材Sを吊下げ用孔4に挿通することにより、被支持部P2を支点として支持部材Sにスキージ1を吊下げることができる。したがって、たとえば、支持部材Sが、その両端部が壁W等に固定されたタオル掛けなどの場合でも、当該支持部材Sによりスキージ1を吊下げることができる。
【0033】
スキージ1を支持部材Sに吊下げたときには、被支持部P2においてスキージ1の自重が作用することになる。そして、被支持部P2は、切れ込み5において吊下げ用孔4の内周に通じる位置P3とは異なる位置にある。このため、切れ込み5が不当に開くのを抑制することができ、支持部材Sにより吊下げられたスキージ1が落下するのを防止することができる。
【0034】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係るスキージ各部の具体的な形状や材質なども、上記実施形態に限定されるものではない。
【0035】
上記実施形態においては、吊下げ用孔4および切れ込み5を有する場合を例に挙げて説明したが、本発明に係るスキージは、これら吊下げ用孔や切れ込みを有しない構成としてもよい。
【0036】
上記実施形態では、基部2は、一定方向に延びる1つの長手状部分からなる構成とされているが、これに代えて、基部を一定方向に延びる2つ以上の長手状部分からなる構成としてもよい。たとえば、比較的狭い領域や入り組んだ領域の水切りの使用も考慮すると、図8(a),(b)に表れているように、基部2をL型やV型の屈曲状にし、その屈曲状の基部2の外側の端縁に板状部3が連設された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 スキージ
2 基部
3 板状部
3A エッジ
31 第1板部
32 第2板部
321 側面
322 先端面
4 吊下げ用孔
5 切れ込み
d1 (第1板部における基端から先端までの)長さ
d2 (第2板部における基端から先端までの)長さ
t1 (第1板部における基端の)厚み
t2 (第2板部の)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に延びる長手状部分を有する基部と、上記長手状部分の長手方向に沿う端縁に基端が連設された板状部と、を備え、
上記板状部は、基端側から先端側に向かうにつれて厚みが減少する第1板部と、この第1板部の先端側につながり、略一定の厚みをもつ両側面、およびこれら両側面につながる先端面を有する第2板部と、を備え、
上記先端面と上記両側面のそれぞれとがなす2つの角部がエッジを形成しており、
上記先端面と各両側面とのなす角が直角もしくは略直角とされていることを特徴とする、スキージ。
【請求項2】
上記基部と上記板状部とは、樹脂もしくはゴムにより一体成形された成形品によって構成されており、
上記エッジは、上記成形品の一部を切断することにより形成される、請求項1に記載のスキージ。
【請求項3】
上記第2板部における基端から先端までの長さは、上記第1板部における基端から先端までの長さの略1/1〜1/3である、請求項1または2に記載のスキージ。
【請求項4】
上記第2板部の厚みは、上記第1板部における基端の厚みの略1/2〜1/3である、請求項1ないし3のいずれかに記載のスキージ。
【請求項5】
上記第2板部の厚みは、上記第1板部における先端の厚みと略同一である、請求項1ないし4のいずれかに記載のスキージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−24337(P2012−24337A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165827(P2010−165827)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 本願発明の特許を受ける権利を有する者である「株式会社テラモト」は、3項に記載の博覧会「インテリアライフスタイル」において、刊行物としての出品カタログを頒布した。出品カタログの頒布は、特許法第30条第1項における「刊行物に発表」に該当する。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 本願発明の特許を受ける権利を有する者(出願人)である「株式会社テラモト」は、「メサゴ・メッセフランクフルト株式会社」が主催し、平成22年6月2日から6月4日までの3日間開催された特許庁長官指定の博覧会「インテリアライフスタイル」において、証明書の添付書類に示される展示物を出品した。
【出願人】(000133928)株式会社テラモト (62)
【Fターム(参考)】