説明

スキーマット又は人工芝の連結構造及びそれを備えたスキーマット

【課題】 複数のスキーマットまたは人工芝同士の連結作業及び分離作業が容易であり、かつ、使用時における連結状態が安定しているスキーマット又は人工芝の連結構造を提供すること。
【解決手段】
本発明は、第一の単位マット10の辺縁部11に上下方向を向いて形成された第一の係合突起1と、第二の単位マット10の辺縁部12に形成され前記第一の係合突起1を上下方向から挿入可能な係合孔2とから構成した第一の結合子Aと、前記一方の単位マット10の辺縁部12に水平方向を向いて形成された第二の係合突起3と、前記他方の単位マット10の辺縁部11の下面に設けられ、前記係止上面4と当接する係止面5とから構成した第二の結合子Bとからなり、前記両結合子A,Bを斜め方向から互いに結合させ、その後両単位マット10を相対回動させてそれらの上面を整合させて両単位マット10同士を連結状態とするようにしたスキーマット又は人工芝の連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキーマット又は人工芝の連結構造に関するものであって、より詳細には複数のスキーマットまたは人工芝同士の連結作業及び分離作業が容易であり、かつ、使用時における連結状態が安定しているスキーマット又は人工芝の連結構造に関するものである。
【0002】
本発明は、スキーマット同士の連結作業及び分離作業が容易であり、かつ、使用時における連結状態が安定しているスキーマットに関するものであり、さらにはスキー及びスノーボードによる自然な滑走を得ることができるスキーマットに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、スキーマットあるいは人工芝などの単位マット相互の連結構造としては、雄連結部又は雄型係合部と、雌連結部又は雌型係合部を隣接する単位マットの辺部に設け、それらを互いに強く押さえつけることによる弾性変形を利用して単位マット同士を強制的に連結させる構造が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、かかる従来の単位マット相互の連結構造においては、単位マット毎に複数設けられている雄連結部又は雄型係合部と、雌連結部又は雌型係合部とを互いに強く押さえつけて連結する作業に手間がかかるという問題や、一旦連結した単位マット同士を分離するには大きな力を要したり工具を用いる必要があるという問題があった。
【0005】
上記の問題を軽減するには、単位マットに設けられる連結部の個数を減らすことが考えられるが、その場合、個々の連結部に負荷が集中するため、連結部の強度を高める必要があり、結局連結作業と分離作業に手間がかかるという問題が生じるばかりか、マットを敷設する場所の凹凸形状に対する追従性が悪化するという問題が生じる。
【0006】
そこで、連結部の個数を減らすことなく連結部の連結強度を弱くすると、連結作業の負担は軽減されるものの、単位マット同士の結合状態が弱くなり、ゲレンデに敷設するスキーマットの場合においては雪の重みに十分耐えることができなかったり、スキーヤーによって加えられる荷重や摩擦によって単位マットに加えられる上下方向あるいは横方向の力に十分耐えることができないという問題を生じる。
【0007】
さらに、従来のスキーマットにおいては、雪が不足していたり雪がない状態でその上を滑走すると、ゴツゴツした感触を受けたり、摩擦抵抗が大きすぎたり小さすぎたりして雪上を滑走するような自然な感触を得ることができなかった。
【0008】
特に、スキーとスノーボードでは滑走の際にスキーマットに加えられる荷重や摩擦力の作用が異なるため、スキーヤーとスノーボーダーの両者が満足できる自然な滑走状態を得られる単位マット相互の連結構造を備えたスキーマットはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2707051号公報
【特許文献2】特開平11−178976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、スキーマットあるいは人工芝などの連結構造において、単位マット同士の強固な連結力を得ようとすると、単位マット同士の連結作業及び分離作業に手間がかかることであり、本発明の目的は、それらの問題を解決する連結構造を備えたスキーマット又は人工芝を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の目的は、前記の問題を解決する連結構造を備えたスキーマットであって、スキーヤーとスノーボーダーの両者が満足できる自然な滑走状態を得られる単位マット相互の連結構造を備えたスキーマットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)第一の単位マットの辺縁部に上下方向を向いて形成された第一の係合突起と、第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔とから構成した第一の結合子と、(2)前記一方の単位マットの辺縁部に水平方向を向いて形成された第二の係合突起と、前記他方の単位マットの辺縁部の下面に設けられ、前記第二の係合突起に設けられた係止上面と当接する係止面とから構成した第二の結合子とからなり、前記第一の係合突起を前記係合孔に挿入して両単位マットを互いに連結する際に、前記第二の係合突起の係止上面を斜め上方から前記係止面が設けられた他方の単位マットの辺縁部の下方に挿入し、その後両単位マットを相対回動させて両単位マットの上面を整合させることで両単位マット同士を連結状態とすることができるようにしたスキーマット又は人工芝の連結構造を最も主要な特徴とするものである。
【0013】
本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、前記第二の係合突起は、その先端側に前記係止上面を備え、基端側の裏面に上下方向に設けられた係止端面を備えたL字状に形成されており、両単位マットの連結状態において前記係止上面と前記他方の単位マットの係止面との間にはギャップが生じるように構成されており、当該ギャップを維持した状態においては両単位マットを相対回動させようとしても、前記係止端面が他方の単位マットの辺縁部に設けられた回動規制端面と当接し、両単位マットの相対回動が阻止され、前記係止上面を前記他方の単位マットの係止面に当接させた状態においては、前記係止端面が他方の単位マットの回動規制端面と当接せず、両単位マットの相対回動が許容され、両単位マットの連結状態を解除できるようにされていてもよい。
【0014】
本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、前記第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔は、両単位マットの相対回動を許容すべく、両単位マットの回動方向に延びる長穴となっていてもよい。
【0015】
さらに、本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、前記第二の単位マットに形成された係合孔は、その周囲の環状部が前記第一の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成されていてもよく、また、前記第二の係合突起は、その基部が他方の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成されていてもよい。
【0016】
また、本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、単位マットの前記両結合子が形成されていない他の辺縁部には、単位マットを上下方向から重ね合わせることで弾性変形し、互いに係合可能な第三の結合子を設けてもよい。
【0017】
さらに、本発明は、(1)第一の単位マットの辺縁部に上下方向を向いて形成された第一の係合突起と、第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔とから構成した第一の結合子と、(2)前記一方の単位マットの辺縁部に水平方向を向いて形成された第二の係合突起と、前記他方の単位マットの辺縁部の下面に設けられ、前記第二の係合突起に設けられた係止上面と当接する係止面とから構成した第二の結合子とからなり、前記第一の係合突起を前記係合孔に挿入して両単位マットを互いに連結する際に、前記第二の係合突起の係止上面を斜め上方から前記係止面が設けられた他方の単位マットの辺縁部の下方に挿入し、その後両単位マットを相対回動させて両単位マットの上面を整合させることで両単位マット同士を連結状態とすることができるようにした連結構造を採用したスキーマットであって、
マット上面に突設される複数の細い棒状突起を環状又は多角形状の基本パターンを繰り返し整列させることで網目状に配列し、さらにその網目の交差部分に配置されて突設される細い棒状突起の高さを他の棒状突起の高さより低くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスキーマットは、第一及び第二の結合子を互いに結合させる際に、単位マット同士を相対回動させてそれらの上面を整合させるという簡単な作業を要するだけであり、特別な力を加えることなく単位マット同士を強固に連結した状態とすることができ、その連結状態を解除する際にも工具を用いることなく単位マット同士を相対回動させるという簡単な作業を要するだけであり、単位マット同士の連結作業及び分離作業に手間や労力がかかることがないスキーマット又は人工芝の連結構造を提供することができる。
【0019】
本発明の連結構造によれば、第一及び第二の結合子同士を結合させる際に手間や労力を要しないため、単位マットの辺縁部に多数の結合子を並べてスキーマット又は人工芝を設けることができ、より一層単位マット同士の連結状態を確実で強固なものとすることができるばかりか、設置面の凹凸形状に対する追従性にも優れたものとなる。
【0020】
さらに、本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、両単位マットの連結状態において前記係止上面と前記他方の単位マットの係止面との間にギャップが生じるように構成することで、当該ギャップを維持した通常時の連結状態においては両単位マットを相対回動させようとしても、前記係止端面が他方の単位マットの辺縁部に設けられた回動規制端面と当接し、両単位マットの相対回動を阻止し、単位マット同士の連結状態が不用意に解除されることなく維持される。
【0021】
一方、単位マットの一方を持ち上げることで前記係止上面を前記他方の単位マットの係止面に当接させた状態においては、前記係止端面が他方の単位マットの回動規制端面と当接せず、両単位マットの相対回動が許容されるため、両単位マットの連結状態を簡単かつ迅速に解除できる。
【0022】
本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造は、前記第二の単位マットの辺縁部に形成された係合孔を両単位マットの回動方向に延びる長穴とすることで、両単位マットの相対回動がスムーズに許容され、単位マット同士の連結作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0023】
さらに、本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、前記第二の単位マットに形成された係合孔をその周囲の環状部が前記第一の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成したり、前記第二の係合突起の基部を他方の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成することで、スキーマット又は人工芝の連結強度を高めることができ、かつ、連結部を滑らかとすることで外観形態を損ねることがなく、スキー又はスノーボードによる滑走性能を高めることもできる。
【0024】
本発明のスキーマット又は人工芝の連結構造において、単位マットの前記両結合子が形成されていない他の辺縁部には、単位マットを上下方向から重ね合わせることで弾性変形し、互いに係合可能な第三の結合子を設けることで、側方に隣接する単位マットとの連結作業もスムーズに行うことができ、かつ、単位マット同士の連結を解除する作業も簡単かつ迅速に行うことができる。
【0025】
本発明による上記の連結構造を備えたスキーマット及び人工芝においては、上記のとおりの連結構造による効果を得ることができ、さらに、本発明のスキーマットは、棒状突起を網目状に配置し、かつ、棒状突起が密集する網目の交差部分に配置される棒状突起の高さを他の棒状突起の高さより低くしたことにより、雪が不足していたり雪がない状態でその上を滑走しても、ゴツゴツした感触を受けたり、摩擦抵抗が大きすぎたり少なすぎたりすることがなく、スキー板及びスノーボードに対し滑らかで適度な摩擦力を与えることができ、スキーヤーとスノーボーダーの両者において実際の雪上を滑走するような自然な感触を得ることができる。
【0026】
さらに、棒状突起を網目状に配置しているため、保雪力が高く、積雪が少ない場合であっても長期間雪面を維持することができ、スノーマシンによる雪の生産量も節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明を具体化したスキーマットを互いに連結する前の長辺側の辺縁部を示す拡大斜視図である。(実施例1)
【図2】図2は本発明を具体化したスキーマットの棒状突起の形成された様子を示す平面図である。(実施例1)
【図3】図3は本発明を具体化したスキーマットの棒状突起の形成された様子を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】図4は本発明を具体化したスキーマットの互いに連結された長辺側の辺縁部を示す断面図である。(実施例1)
【図5】図5は本発明を具体化したスキーマットの互いに連結された長辺側の辺縁部を示す斜視図である。(実施例1)
【図6】図6(a)〜(e)は本発明を具体化したスキーマットの長辺側の辺縁部を互いに連結する様子を示す斜視図である。(実施例1)
【図7】図7は本発明を具体化したスキーマットを互いに連結する前の短辺側の辺縁部を示す斜視図である。(実施例1)
【図8】図8(a),(b)は本発明を具体化したスキーマットの短辺側の結合子を連結する前後の状態を示す拡大断面図である。(実施例1)
【図9】図9は本発明を具体化したスキーマットを互いに連結した短辺側の辺縁部の状態を示す斜視図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、第一の単位マットの辺縁部に上下方向を向いて形成された第一の係合突起と、第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔とから構成した第一の結合子と、前記一方の単位マットの辺縁部に水平方向を向いて形成された第二の係合突起と、前記他方の単位マットの辺縁部の下面に設けられ、前記第二の係合突起に設けられた係止上面と当接する係止面とから構成した第二の結合子とからなり、前記第一の係合突起を前記係合孔に挿入して両単位マットを互いに連結する際に、前記第二の係合突起の係止上面を斜め上方から前記係止面が設けられた他方の単位マットの辺縁部の下方に挿入し、その後両単位マットを相対回動させて両単位マットの上面を整合させることで両単位マット同士を連結状態とすることができるようにした連結構造により、第一及び第二の結合子による連結作業及び分離作業に手間がかかることないため、それらの結合子を密接して複数設けることができ、単位マット同士の強固な連結力と、設置面に対する優れた追従性を得ることができるスキーマット又は人工芝の連結構造を実現した。
【0029】
そして、上記の連結構造を採用したスキーマットにおいて、マット上面に突設される複数の細い棒状突起を環状又は多角形状の基本パターンを繰り返し整列させることで網目状に配列し、さらにその網目の交差部分に配置されて突設される細い棒状突起の高さを他の棒状突起の高さより低くしたことにより、保雪力にも優れ、しかもスキーヤーとスノーボーダーの両者が満足できる滑らかで適度な摩擦力を有するスキーマットを実現した。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明を具体化した合成樹脂製のスキーマット10の一実施例を示す部分拡大斜視図であって、11,12は、2枚のスキーマット10の互いに連結される辺縁部を示し、それらの辺縁部11,12は、本実施例のスキーマット10においては、図2に示すように長方形状をなす1枚のスキーマット10の向かい合った平行な長辺にそれぞれ該当するものである。
【0031】
13,14は、前記スキーマット10の向かい合った平行な短辺をなす辺縁部であり、これらの短辺同士も互いに連結可能となっており、辺縁部11〜14を備えた1枚のスキーマット10により単位マットが構成され、各単位マットの長辺に設けられた連結部同士及び短辺に設けられた連結部同士が互いに連結可能となっている。
【0032】
15は、スキーマット10の上面に多数個突出形成される細い棒状突起であって、図3に示すように略円錐形状に形成されており、本実施例においては八角形状の基本パターンを隣接させて繰り返し整列させることで、複数の八角形状の保雪空間16を備えた網目状に配列されている。
【0033】
この八角形状の基本パターンにより構成される保雪空間16の底面をなすスキーマット10の上面16aは、地熱を避けることができるように設置面から離間した薄い板状に形成されており、複数個の透水孔が形成されることで透水性と保雪性を得られるようになっている。
【0034】
前記棒状突起15は、スキーマット10の上面において、2列となって網目を構成しており、その網目の交差部分の内側に配置されて突設される細い棒状突起15aの高さは、他の棒状突起15よりも2〜3mm低くなっている。
【0035】
さらに、本実施例においては、前記網目の交差部分の中央部(棒状突起15aの内方に該当する部分)には、透孔17が形成されており、透水性と保雪性及びスキーマット10上面の適度な強度と滑らかな摩擦性能を得られるようになっている。
【0036】
次に、本実施例のスキーマット10の辺縁部11,12に設けられている連結部について説明すると、図1において左側に記載されているスキーマット10は、第一の単位マットとして、その辺縁部11に上下方向を向いて円柱状に形成された第一の係合突起1を備えている。
【0037】
一方、図1において右側に記載されているスキーマット10は、第二の単位マットとして、その辺縁部12に前記第一の係合突起1を上下方向から挿入可能な係合孔2を備えている。そして、前記第一の係合突起1と係合孔2とから第一の結合子Aが構成され、スキーマット10同士の連結時において、スキーマット10同士の水平方向における相対移動及び係合孔2を備えたスキーマット10の下方への相対移動を規制するようになっている。
【0038】
さらに、前記係合孔2が設けられた(図1において右側に記載されている)スキーマット10の辺縁部12には、水平方向を向いて形成された第二の係合突起3が前記係合孔2の側方に形成されている。
【0039】
一方、前記第一の係合突起1が設けられた(図1において左側に記載されている)スキーマット10の辺縁部11の下面には、前記第二の係合突起3の先端部に設けられた係止上面4と当接する係止面5が設けられている。そして、前記第二の係合突起3(より正確にはその係止上面4)と、係止面5とから第二の結合子Bが構成されている。
【0040】
なお、前記第二の係合突起3は、図4に示すように、その先端側に前記係止上面4を備え、基端側の裏面に上下方向に設けられた係止端面6を備えたL字状に形成されており、両単位マット(スキーマット)10の連結状態において前記係止上面4と前記他方の単位マット10の係止面5との間にはギャップGが生じるように構成されている。
【0041】
そして、当該ギャップGを維持した状態においては、両単位マット10を相対回動させようとしても、前記係止端面6が他方の単位マット10の辺縁部11に設けられた回動規制端面7と当接し、両単位マット10の相対回動が阻止され、両単位マット10の連結状態を維持できるようになっている。
【0042】
さらに、前記回動規制端面7と、当該回動規制端面7を構成する辺縁部11の上面7aとは、第二の結合子Bによるスキーマット10同士の連結時において、スキーマット10同士の水平方向における相対移動及び前記第二の係合突起3を備えたスキーマット10の上下方向への相対移動を制限し得るようになっている。
【0043】
一方、前記ギャップGを解消するように、前記辺縁部12を若干持ち上げることで、前記係止上面4を前記他方の単位マット10の係止面5に当接させた状態においては、前記係止端面6が他方の単位マット10の回動規制端面7と当接せず、両単位マット10の相対回動が許容され、両単位マット10の連結状態を解除できる。
【0044】
上記の構成を可能とするために本実施例1において採用したスキーマット10の連結状態における連結部の寸法概要について説明すると、前記ギャップGの大きさは1mm、係止端面6と回動規制端面7との間隔は1.5mmに設定され、辺縁部11において係止面5と回動規制端面7との間の最短距離は5.1mmに設定され、第二の係合突起3において係止上面4の後端部と係止端面6の下端部との距離は3.7mmに設定されている。
【0045】
なお、両単位マット10を相対回動させる際に、両単位マット10の相対回動がスムーズに許容されるように、前記スキーマット10の辺縁部12に形成された係合孔2を両単位マット10の回動方向(辺縁部12と直交する方向)に延びる長穴としたが、下方(他の単位マット側)ほど拡開する円錐台筒形の孔として実施してもよく、その場合、第一の係合突起1と係合孔2との結合時における両単位マット10同士の連結状態はより強固なものとなる。
【0046】
即ち、前記係合孔2の形状は、第一の係合突起1が両単位マット10の相対回動を阻害しないように形成されていればよく、上端部が円形で下端側が単位マット10の回動方向に延びる長穴状となっていてもよい。
【0047】
また、両結合子A,Bを互いに結合させる際には、特に各部を強制的に変形させるわけではなく、単位マット同士の連結作業に際して連結部を押圧するなどの手間がかからないため、スキーマット10の辺縁部11,12には、多数の結合子A,B対を隣接して(本実施例においては交互に並べて)形成することができ、単位マット同士の連結強度及び設置面への追従性を優れたものとすることができる。
【0048】
従って、スキーマット10の設置面が平らでない場合においても、両結合子A,Bによる辺縁部11,12同士の緊密な連結状態が維持されるため、スキーマット10が設置面の凹凸形状に柔軟に追従し、連結状態が安定してスキー又はスノーボードによる好適な滑走状態を得られるようになっている。
【0049】
さらに、本実施例1のスキーマット10は、他のスキーマット10との連結時において、前記辺縁部12に形成された係合孔2の周囲の環状部2aが、前記第一の係合突起1の周囲における辺縁部11の弧状凹部11aの形状と整合する形状に形成されている。
【0050】
また、前記第二の係合突起3の基部3aの形状を、他のスキーマット10の辺縁部11の矩形凹部11bの形状と整合する形状に形成することで、スキーマット10の辺縁部11,12同士の連結強度および設置面への追従性を高めることができ、かつ、連結部を滑らかとすることで外観形態を損ねることがなく、スキー又はスノーボードによる滑走性能をより一層高めることもできる。
【0051】
また、上記のとおり辺縁部11,12の形状を連結時において整合するようにしたため(図1及び図5参照)、弧状凹部11aまたは矩形凹部11bを回動規制端面として作用させることも可能である。
【0052】
さらに、本実施例1の係合突起1及び係合孔2は、棒状突起15が形成されていない網目の交差部分に配置され、さらに、第二の係合突起3の基部上に棒状突起15を設けることで、多数連結されて敷設されるスキーマット10の上面において棒状突起15によって形成される網目パターンに乱れが生じることがないようになっている。
【0053】
従って、本実施例1のスキーマット10は、棒状突起15による自然な滑走性能を有するものとなり、さらには、本実施例のスキーマット10は、好ましくは全体がポリエチレン、EVAなどの粘弾性を備えた合成樹脂にて一度に一体成形され、潤滑剤、耐候剤が配合されることで、雪が無い状態であっても滑らかな滑走性能を得られるとともに、スキー場での長期間の使用に耐えられるようになっている。
【0054】
上記のとおり構成された2枚のスキーマット10の辺縁部11,12を互いに連結させる場合には、前記第一の係合突起1を前記係合孔2に挿入して両スキーマット10を互いに連結する際に、図6(a)〜(e)に示すように、前記第二の係合突起3の係止上面4を斜め上方(本実施例においては他方のマットを約40〜45度傾斜させた方向)から前記係止面5が設けられたスキーマット10の辺縁部11の下方に挿入し、その後両スキーマット10を相対回動させて両スキーマット10の上面を整合させることで両スキーマット10同士を連結状態とする。
【0055】
この連結状態において、(1)前記係止端面6と回動規制端面7との間、及び、(2)前記矩形凹部11bの前面と当該矩形凹部11bと向き合った前記第二の係合突起3の前面との間には、それぞれ若干のギャップが形成されるため、単位マット10同士の上記連結作業及び下記の分離作業に支障が生じることはない。
【0056】
上記のスキーマット10同士の連結状態を解除して分離するには、一方のスキーマット10を引き起こすように持ち上げることで前記ギャップGが自然に解消されるため、前記の連結作業の逆の手順にて両スキーマット10を単に相対回動させればよい。
【0057】
従って、本発明の連結構造を採用したスキーマット10においては、辺縁部11,12に設けられた第一及び第二の結合子A,Bの連結作業及び分離作業において辺縁部11,12を押さえつけたり工具を用いるなどして結合子A,Bを強制的に変形させる必要が無く、多数のスキーマット10同士の連結作業及び分離作業に労力や手間をかけることなくそれらの作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0058】
次に、スキーマット10の短辺側の辺縁部13,14に形成されている結合子Cによる連結構造について図7〜図9により説明する。
本発明のスキーマット10の連結構造において、前記両結合子A,Bが形成されていない他の辺縁部13,14には、単位マットを上下方向から重ね合わせることで弾性変形し、互いに係合可能な第三の結合子Cを設けている。
【0059】
この第三の結合子Cは、前記両結合子A,Bと同様の第一の係合突起1及び係止面5を辺縁部13に備え、係合孔2及び第二の係合突起3を辺縁部14に備えることで構成されているが、1)係合孔2の長穴の形成方向が辺縁部14と平行な方向に沿って形成されていること、及び、2)係止面5の上方に対応する辺縁部13がテーパー状にカットされた斜面13cとなっていることが、前記両結合子A,Bの場合と異なっている。
【0060】
従って、第二の係合突起3を斜面13cの上方(係止面5の上方)から押さえ付けることで、第二の係合突起3の先端部3cを弾性変形させて係止面5の下側まで押し込むことができ、さらには、係止上面4と係止面5との係合状態も結合子Bの場合よりも弱く、単位マット10を引き上げて両者を相対回動させることで、第三の結合子Cによる連結状態を比較的容易に強制的に解除することができる。
【0061】
特に本実施例のスキーマット10においては、その長辺側の辺縁部11,12に連結部を押さえつける必要がなく速やかな連結作業に適した結合子A,Bを設け、短辺側の辺縁部13,14に連結部を押さえつける必要がある結合子Cを設けているため、ゲレンデのように広範囲に亘って多数のスキーマット10を前後左右に並べて敷設する作業効率上において有利な構成となっている。
【0062】
さらには、結合子A,Bを設けた辺縁部11,12の連結構造と、結合子Cを設けた辺縁部13,14の連結構造とは、共通した構成が多く互いに類似しているため、連結されたスキーマット10により構成される滑走面を全体的に均質なものとすることができる。
【0063】
上記にて説明したとおり、 本実施例のスキーマット10は、辺縁部11〜14に結合子A,B,Cを用いる上記の連結構造を採用したため、複数のスキーマット10を互いに正確にしかも強く連結させて設置面への優れた追従性を図りつつきれいに敷設することができ、スキーにおいてもスノーボードにおいても自然な滑走フィーリングを得ることができ、さらには網目状に配置した棒状突起15による保雪空間16及び地熱を避ける当該空間部分におけるスキーマット10の上面16aにより、保雪力にも優れたものとなる。
【0064】
前記実施例1においては、辺縁部11の上面に第一の係合突起1を突設し、辺縁部12に係合孔2を設けて実施したが、辺縁部12に下方を向いた係合突起1を突設し、辺縁部11に係合孔2を設けて実施してもよい。即ち、辺縁部12に下向きの第一係合突起1と、水平方向を向いた第二の係合突起3とを設けて実施してもよい。
【0065】
また、前記実施例においては、互いに連結される全ての単位マットの形状を同一のものとするために、一枚のスキーマット10の向かい合った2辺に互いに連結可能な結合子の対を有する辺縁部11と辺縁部12を設けて実施したが、2枚の異なる形状の単位マット同士を組み合わせて互いに連結する構成を採用するために、一方の単位マットには第一の係合突起1と係止面5を備えた辺縁部11のみを向かい合った2辺に形成し、他方の単位マットには係合孔2と第二の係合突起3を備えた辺縁部12のみを向かい合った2辺に設けて実施してもよい。
【0066】
前記実施例において、保雪空間16を形成するスキーマット10の八角形状の上面16aの形態としては、透水孔によって文字、記号、商標、図形、その他の模様を施してもよく、さらにはスキーマット10が設置される場所の気候や地面の状態、あるいはスキーマット10の下に敷かれる防水・防草シートの状態に応じて上面16aを適宜省略して実施してもよい。
【0067】
また、前記実施例1においては、スキーマットを単位マットとして実施したが、人工芝に本発明を具体化して実施してもよい。
【0068】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で前記スキーマット10の材質、寸法、強度、連結方法などを適宜変更したり、結合子A,B,Cの形状、配置、設置個数、設置順などを変更して実施したり、棒状突起15を配置する基本パターンを三角形状、四角形状、六角形状、楕円形状、円形状、その他の環状パターンに変更して実施したり、各種の基本パターンを組み合わせて網目状にして実施することも可能である。
【0069】
前記のとおり棒状突起15を配置する基本パターンを適宜変更する際には、スキーマット上におけるスキー及びスノーボードによる自然な滑走性能を得るために、スキーマット10上に棒状突起15をむら無く、かつ、途切れたり段差が生じたりすることの無いように網目状に配置するとよく、その網目状の交差部分(交点)の特に内側に短い棒状突起15aを配置して実施するとよい。
【0070】
さらに、本発明のスキーマットは、ゲレンデに敷設されるものに限らず、駐車場、建物内又は建物の出入口付近などに敷設されるものであってもよく、特にスキーマット又は人工芝の使用場所に関する限定を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、スキーマット又は人工芝の製造において好適に利用可能であり、スキーマットはスキー場又は人工スキー施設にて利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
A 第一の結合子
1 第一の係合突起
2 係合孔
2a 環状部
B 第二の結合子
3 第二の係合突起
3a 基部
4 係止上面
5 係止面
6 係止端面
7 回動規制端面
7a 上面
G ギャップ
10 スキーマット
11 辺縁部(長辺)
11a 弧状凹部
11b 矩形凹部
12 辺縁部(長辺)
13 辺縁部(短辺)
13c 斜面
14 辺縁部(短辺)
15 棒状突起
15a 棒状突起
16 保雪空間
16a 上面
17 透孔
C 第三の結合子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第一の単位マットの辺縁部に上下方向を向いて形成された第一の係合突起と、
第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔とから構成した第一の結合子と、
(2)前記一方の単位マットの辺縁部に水平方向を向いて形成された第二の係合突起と、
前記他方の単位マットの辺縁部の下面に設けられ、前記第二の係合突起に設けられた係止上面と当接する係止面とから構成した第二の結合子と
からなるスキーマット又は人工芝の連結構造であって、
前記第一の係合突起を前記係合孔に挿入して両単位マットを互いに連結する際に、前記第二の係合突起の係止上面を斜め上方から前記係止面が設けられた他方の単位マットの辺縁部の下方に挿入し、その後両単位マットを相対回動させて両単位マットの上面を整合させることで両単位マット同士を連結状態とすることができるようにしたことを特徴とするスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項2】
前記第二の係合突起は、その先端側に前記係止上面を備え、基端側の裏面に上下方向に設けられた係止端面を備えたL字状に形成されており、
両単位マットの連結状態において前記係止上面と前記他方の単位マットの係止面との間にはギャップが生じるように構成されており、当該ギャップを維持した状態においては両単位マットを相対回動させようとしても、前記係止端面が他方の単位マットの辺縁部に設けられた回動規制端面と当接し、両単位マットの相対回動が阻止され、
前記係止上面を前記他方の単位マットの係止面に当接させた状態においては、前記係止端面が他方の単位マットの回動規制端面と当接せず、両単位マットの相対回動が許容され、両単位マットの連結状態を解除できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項3】
前記第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔は、両単位マットの相対回動を許容すべく、両単位マットの回動方向に延びる長穴となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項4】
前記第二の単位マットに形成された係合孔は、その周囲の環状部が前記第一の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項5】
前記第二の係合突起は、その基部が他方の単位マットの辺縁部の形状と整合する形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項6】
単位マットの前記両結合子が形成されていない他の辺縁部には、
単位マットを上下方向から重ね合わせることで弾性変形し、互いに係合可能な第三の結合子を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のスキーマット又は人工芝の連結構造。
【請求項7】
(1)第一の単位マットの辺縁部に上下方向を向いて形成された第一の係合突起と、
第二の単位マットの辺縁部に形成され前記第一の係合突起を上下方向から挿入可能な係合孔とから構成した第一の結合子と、
(2)前記一方の単位マットの辺縁部に水平方向を向いて形成された第二の係合突起と、
前記他方の単位マットの辺縁部の下面に設けられ、前記第二の係合突起に設けられた係止上面と当接する係止面とから構成した第二の結合子と
からなり、
前記第一の係合突起を前記係合孔に挿入して両単位マットを互いに連結する際に、前記第二の係合突起の係止上面を斜め上方から前記係止面が設けられた他方の単位マットの辺縁部の下方に挿入し、その後両単位マットを相対回動させて両単位マットの上面を整合させることで両単位マット同士を連結状態とすることができるようにした連結構造を採用したスキーマットであって、
マット上面に突設される複数の細い棒状突起を環状又は多角形状の基本パターンを繰り返し整列させることで網目状に配列し、さらにその網目の交差部分に配置されて突設される細い棒状突起の高さを他の棒状突起の高さより低くしたことを特徴とするスキーマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−30674(P2011−30674A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178347(P2009−178347)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(303011275)株式会社ジャパーナ (43)
【Fターム(参考)】