説明

スクラッチ層を有する印刷物、スクラッチ層を有する印刷物を製造するための方法、装置およびプログラム

【課題】印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能である印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】印刷媒体である基材20と、基材20上に配置され、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層50と、スクラッチ層50上に配置され、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラッチ層を有する印刷物、スクラッチ層を有する印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報保護の観点から、一般人においても、受け取ったダイレクトメールなどを廃棄する際、印刷されている個人情報を消去し、個人情報の漏洩を防止する行為が見受けられるようになった。個人情報の消去は、シュレッダーや特殊なスタンプを用いる方法が一般的であるが、一般家庭にこれらの道具はあまり普及しておらず、これらを購入するための初期投資はダイレクトメールの受取人が負わねばならなかった。
【0003】
そのため、削り取ることにより除去可能なスクラッチ印刷を個人情報の印刷に適用することで、シュレッダーや特殊なスタンプを用いることなく個人情報を消去可能としている(例えば、特許文献1参照。)。また、消去可能とする部分にトナーを多量に使用することで定着剥れを誘発し,除去可能とするものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−273018号公報
【特許文献2】特開2007−34039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術においては、例えば、スクラッチ印刷に使用されたインクの一部が取り残されたり、スクラッチ印刷時に与えられた熱量によってスクラッチ印刷部位と非スクラッチ印刷部位との間で光沢差が生じたりすることにより、除去されたスクラッチ印刷の痕跡が識別される虞がある。そのため、スクラッチ印刷部位を削り取っても、その痕跡から元の情報が読み取られる可能性があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術においても、トナーを剥離した後の痕跡が残る場合あるため、特許文献1に記載の技術と同様に、元の情報が読み取られる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能である印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)印刷媒体である基材と、
前記基材上に配置され、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層と、
前記スクラッチ層上に配置され、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部と、
を有することを特徴とする印刷物。
【0010】
(2)前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする上記(1)に記載の印刷物。
【0011】
(3)前記スクラッチ層が占める範囲の形状は、前記第1印刷部の形状と異なっていることを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載の印刷物。
【0012】
(4)前記スクラッチ層が占める範囲は、全体として単一の閉じた形状を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の印刷物。
【0013】
(5)前記基材と前記スクラッチ層との間に配置される第2印刷部およびラミネート層を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の印刷物。
【0014】
(6)前記第2情報は、印刷物の受け取り手の興味を引く情報からなることを特徴とする上記(5)に記載の印刷物。
【0015】
(7)前記基材上に配置され、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部をさらに有し、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置していることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の印刷物。
【0016】
(8)前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に配置される装飾印刷部を、さらに有し、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の印刷物。
【0017】
(9)前記装飾印刷部の外周は、前記スクラッチ層の一部を露出するための欠落部を有することを特徴とする上記(8)に記載の印刷物。
【0018】
(10)前記装飾印刷部は、前記基材の色と同じ色あるいは近似色を有することを特徴とする上記(8又は上記(9)に記載の印刷物。
【0019】
(11)前記スクラッチ層は、前記基材の色と同じ色あるいは近似色を有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の印刷物。
【0020】
(12)印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置するステップ(A)と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置するステップ(B)と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【0021】
(13)前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする上記(12)に記載の印刷方法。
【0022】
(14)印刷ジョブデータから前記第1情報を分離するステップ(C)を、さらに有することを特徴とする上記(12)又は上記(13)に記載の印刷方法。
【0023】
(15)前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記ステップ(C)における前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする上記(12)〜(14)のいずれか1項に記載の印刷方法。
【0024】
(16)前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする上記(15)に記載の印刷方法。
【0025】
(17)前記基材と前記スクラッチ層との間に、第2印刷部およびラミネート層を配置するステップ(D)を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする上記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の印刷方法。
【0026】
(18)前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置するステップ(E)を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする上記(12)〜(17)のいずれか1項に記載の印刷方法。
【0027】
(19)前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置するステップ(F)を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする上記(12)〜(18)のいずれか1項に記載の印刷方法。
【0028】
(20)印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置するためのスクラッチ層配置手段と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置するための第1印刷部配置手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【0029】
(21)前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする上記(20)に記載の印刷装置。
【0030】
(22)印刷ジョブデータから前記第1情報を分離するための第1情報分離手段を、さらに有することを特徴とする上記(20)又は上記(21)に記載の印刷装置。
【0031】
(23)前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記第1情報分離手段による前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする上記(20)〜(22)のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0032】
(24)前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする上記(23)に記載の印刷装置。
【0033】
(25)前記基材と前記スクラッチ層との間に第2印刷部を配置するための第2印刷部配置手段と、
前記基材と前記スクラッチ層との間にラミネート層を配置するためのラミネート層配置手段とを、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする上記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0034】
(26)前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置するための第3印刷部配置手段を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする上記(20)〜(25)のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0035】
(27)前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置するための装飾印刷部配置手段を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする上記(20)〜(26)のいずれか1項に記載の印刷装置。
【0036】
(28)印刷装置を制御するプログラムであって、
印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置する手順(A)と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置する手順(B)と、
を有する処理を、前記印刷装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【0037】
(29)前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする上記(28)に記載のプログラム。
【0038】
(30)前記処理は、印刷ジョブデータから前記第1情報を分離する手順(C)を、さらに有することを特徴とする上記(28)又は上記(29)に記載のプログラム。
【0039】
(31)前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記手順(C)における前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする上記(28)〜(30)のいずれか1項に記載のプログラム。
【0040】
(32)前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする上記(31)に記載のプログラム。
【0041】
(33)前記処理は、前記基材と前記スクラッチ層との間に、第2印刷部およびラミネート層を配置する手順(D)を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする上記(28)〜(32)のいずれか1項に記載のプログラム。
【0042】
(34)前記処理は、前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置する手順(E)を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする上記(28)〜(33)のいずれか1項に記載のプログラム。
【0043】
(35)前記処理は、前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置する手順(F)を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする上記(28)〜(34)のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムによれば、スクラッチ層を削り取ることにより、第1印刷部が破壊されるため、第1印刷部が保持する第1情報が消去される。また、スクラッチ層と第1印刷部とは別体であるため、除去されたスクラッチ層の痕跡に基づき、第1印刷部が保持していた第1情報を読み取ることは困難である。したがって、印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能である印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1に係る印刷物を説明するための平面図である。
【図2】図1に示される印刷物の断面図である。
【図3】図1に示されるスクラッチ層が除去された状態を示している平面図である。
【図4】実施の形態1に係る印刷装置を説明するための概略断面図である。
【図5】図1の印刷装置に入力される印刷ジョブデータを説明するための概念図である。
【図6】図4に示される一次印刷装置によって形成される一次印刷部を説明するための平面図である。
【図7】図4に示されるスクラッチ印刷装置によって形成されるスクラッチ層を説明するための平面図である。
【図8】実施の形態1に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】図7に示される印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】実施の形態1に係る変形例1を説明するための断面図である。
【図11】実施の形態1に係る変形例2を説明するための平面図である。
【図12】実施の形態1に係る変形例3を説明するための平面図である。
【図13】実施の形態1に係る変形例3を説明するための断面図である。
【図14】実施の形態1に係る変形例4を説明するための平面図である。
【図15】実施の形態2に係る印刷ジョブデータを説明するための概略図である。
【図16】実施の形態2に係る印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】実施の形態3に係る印刷ジョブデータを説明するための概略図である。
【図18】実施の形態3に係る印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0047】
図1は、実施の形態1に係る印刷物を説明するための平面図、図2は、図1に示される印刷物の断面図、図3は、図1に示されるスクラッチ層が除去された状態を示している平面図である。
【0048】
実施の形態1に係る印刷物10は、印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能であり、印刷用紙20、一次印刷部30、ラミネート層40、スクラッチ層50および二次印刷部(第1印刷部)60を有する。
【0049】
印刷用紙20は、印刷媒体からなる基材である。スクラッチ層50は、印刷用紙20上に配置され、削り取ることにより除去自在に構成されている。二次印刷部60は、スクラッチ層50上に配置され、第1情報が印刷されて構成される。第1情報は、本実施の形態においては、個人情報であり、例えば図1に示されるように、住所および名前である。第1情報は、その他の漏洩防止情報を含むことも可能である。
【0050】
印刷物10においては、スクラッチ層50を削り取ることにより、二次印刷部60が破壊されるため、二次印刷部60が保持する個人情報が消去される。また、スクラッチ層50と二次印刷部60とは別体であるため、除去されたスクラッチ層50の痕跡に基づき、二次印刷部60が保持していた個人情報を読み取ることは困難である。
【0051】
一次印刷部30は、印刷用紙20上に直接配置されており、スクラッチ層50から離間して位置する通常印刷部34と、スクラッチ層50の直下に位置する下層印刷部(第2印刷部)32とを有する。通常印刷部34は、個人情報を含まない非秘匿情報が印刷されて構成される。非秘匿情報は、例えば、図1に示されるような「宛先」や広告メッセージである「新装開店セール実施中」である。
【0052】
下層印刷部32は、第2情報が印刷されて構成されており、スクラッチ層50が除去されるまではスクラッチ層50によって隠蔽される。第2情報は、印刷物10の受け取り手の興味を引く情報を有する隠し文字からなり、例えば、図3に示されるような「お得意様専用ウェブサイト情報XXX」である。隠し文字は、スクラッチ層50を削り取ることにより露出(視認される)するため、印刷物10の受け取り手に対し強烈な印象を与えることが可能であり、良好な広告効果を発揮する。
【0053】
ラミネート層40は、下層印刷部32とスクラッチ層50との間に位置し、下層印刷部32が視認できる透明な材料から構成される保護層である。下層印刷部32は、ラミネート層40を介してスクラッチ層50から隔離されているため、スクラッチ層50を削り取る際に、下層印刷部32が削り取られることが抑制され、下層印刷部32が保持する隠し文字が欠損することが避けられる。ラミネート層40は、スクラッチ層50が占める範囲を越えて延長していることが好ましい。
【0054】
スクラッチ層50が占める範囲の形状は、二次印刷部60の形状と異なっていることが好ましい。この場合、除去されたスクラッチ層50の痕跡に基づき、二次印刷部60が保持していた個人情報を読み取ることが、さらに困難となる。
【0055】
スクラッチ層50が占める範囲は、全体として単一の閉じた形状(例えば、略矩形のボックス形状)を有することも好ましい。この場合、スクラッチ層50の形成が容易であり、かつ、除去されたスクラッチ層50の痕跡に基づき、二次印刷部60が保持していた個人情報を読み取ることが、さらに困難となる。
【0056】
スクラッチ層50は、印刷用紙20の色と同じ色あるいは近似色を有することが好ましい。この場合、スクラッチ層50の存在が目立たないため、美観を向上させることができる。
【0057】
次に、実施の形態1に係る印刷装置を説明する。
【0058】
図4は、実施の形態1に係る印刷装置を説明するための概略断面図、図5は、図1の印刷装置に入力される印刷ジョブデータを説明するための概念図、図6は、図4に示される一次印刷装置によって形成される一次印刷部を説明するための平面図、図7は、図4に示されるスクラッチ印刷装置によって形成されるスクラッチ層を説明するための平面図である。
【0059】
実施の形態1に係る印刷装置100は、印刷物10を製造するために使用され、制御部110、給紙部120、1次印刷装置130、ラミネータ140、スクラッチ印刷装置150、2次印刷装置160および排紙部170から構成される。なお、符号180は、給紙部120と排紙部170との間を連通している搬送通路である。
【0060】
制御部110は、CPU112、RAM113、ROM115、HDD116およびインタフェース118を有し、これらは、信号をやり取りするためのバス119を介して相互に接続されている。
【0061】
CPU112は、プログラムにしたがって上記各部の制御や各種の演算処理を実行するマイクロプロセッサ等から構成される制御回路であり、制御部110の各機能は、それに対応するプログラムをCPU112が実行することにより発揮される。
【0062】
RAM113は、作業領域として一時的にプログラムおよびデータを記憶するランダムアクセス記憶装置である。ROM115は、各種プログラムおよび各種データを格納するための読取り専用の記憶装置である。
【0063】
HDD116は、各種データや各種プログラムを格納する大容量のランダムアクセス記憶装置である。格納されているプログラムは、CPU112により必要に応じて読み出され、RAM113上で実行処理される。格納されているプログラムは、後述される印刷画像情報生成処理、給紙処理、1次印刷処理、ラミネート層形成処理、スクラッチ層形成処理、2次印刷処理および排紙処理を実行するためのプログラムである。なお、印刷画像情報生成処理においては、一次印刷部30を形成するための1次印刷画像情報、ラミネート層40を形成するためのラミネート設定情報、スクラッチ層50を形成するためのスクラッチ印刷情報、二次印刷部60を形成するための2次印刷画像情報が生成される。
【0064】
インタフェース118は、例えば、所謂LANボードからなる通信インタフェースであり、ネットワークを介し、使用者が操作するホスト端末からの印刷ジョブデータの入力を受け付けるために使用される。印刷ジョブデータは、例えば、テキストボックスデータ、文字列データもしくは画像データを含んでおり、図5に示されるように、対象データが個人情報か否かを判別するための識別情報が付加されている。
【0065】
ネットワークは、イーサネット(登録商標)、トークンリング、およびFDDI(Fiber−Distributed Data Interface)等の規格によりコンピュータやネットワーク機器同士を接続する構内情報通信網(LAN:Local Area Network)、LAN同士を専用線で接続した広域情報通信網(WAN:Wide Area Network)、インターネット、これらの組み合わせ等の各種のネットワークからなる。ネットワークプロトコルは、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。
【0066】
なお、使用者のホスト端末と印刷装置100とは、ネットワークを介して接続する形態に限定されず、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインタフェースやIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1284等のパラレルインタフェースを利用して直接接続することも可能である。
【0067】
給紙部120は、複数の給紙トレイ122を有し、使用者の手により予め挿入された各種の印刷用紙20を保持している。給紙部120は、制御部110から指示された印刷用紙20を給紙トレイ122から取出し、1次印刷装置130に向って搬送するために使用される。
【0068】
1次印刷装置130は、例えば、帯電、露光、現像、転写および定着工程を含む電子写真式プロセス等の作像プロセスを利用するプリントエンジンを有する。1次印刷装置130は、制御部110から指示された印刷用紙20に、制御部110からの1次印刷画像情報を印刷し、通常印刷部34および下層印刷部32からなる一次印刷部30を、印刷用紙20上に形成するために使用される(図6参照)。一次印刷部30が配置された印刷用紙20は、ラミネータ140に向って搬送される。1次印刷画像情報が存在しない場合は、印刷用紙20は、1次印刷装置130を素通りすることになる。
【0069】
ラミネータ140は、例えば、粘着剤が塗布されたラミネート用のプラスチックフィルムと、プラスチックフィルムを印刷用紙20に圧着し加熱するための1対のロールと、プラスチックフィルムを切断するためのカッタと、を有する。プラスチックフィルムは、例えば、下層印刷部32が視認できる光透過性を有する熱可塑性樹脂から形成される。粘着剤は、例えば、プラスチックフィルムと同様な光透過性を有するアクリル系粘着剤である。
【0070】
ラミネータ140は、制御部110より受信したラミネート設定情報に基づき、下層印刷部32上にラミネート層40を形成し、下層印刷部32を保護(隠蔽)するために使用される(図3参照)。ラミネート層40が配置された印刷用紙20は、スクラッチ印刷装置150に向って搬送される。なお、下層印刷部32が存在しない場合は、印刷用紙20は、ラミネータ140を素通りすることになる。また、ラミネータ140は、プラスチックフィルムを利用する形態に限定されず、ラミネート層40をコーティングによって形成することも可能である。
【0071】
スクラッチ印刷装置150は、例えば、アルミニウム粉にバインダー成分を加えた銀インキを主成分とするスクラッチ層形成用インキを塗布するためのコーティング機構を有する。スクラッチ印刷装置150は、制御部110より受信したスクラッチ印刷情報に基づき、ラミネート層40上にスクラッチ層50を形成するために使用される(図7参照)。スクラッチ層50が配置された印刷用紙20は、2次印刷装置160に向って搬送される。
【0072】
なお、スクラッチ層形成用コーティング材は、インキに限定されず、必要に応じて適宜選択して用いることが可能であり、例えば、トナーを適用することも可能である。また、コーティング機構も、オフセット印刷や熱転写プリンタを利用することも可能である。
【0073】
2次印刷装置160は、1次印刷装置130と同様なプリントエンジンを有しており、制御部110より受信した2次印刷画像情報(個人情報)を印刷し、二次印刷部60をスクラッチ層50上に形成するために使用される(図1参照)。二次印刷部60が配置された印刷用紙20つまり印刷物10は、排紙部170に向って搬送される。
【0074】
なお、1次印刷装置130および2次印刷装置160は、同一原理の画像形成機構を有する形態に限定されない。また、1次印刷装置130によって2次印刷装置160を兼用させることも可能である。この場合、スクラッチ層50が配置された印刷用紙20を1次印刷装置130に戻すための搬送通路を追加することが必要である。
【0075】
排紙部170は、印刷物10が排出される排紙トレイ172を有し、2次印刷装置160から搬送されてきた印刷用紙20を積載するために使用される。なお、排紙トレイ172を、複数設けることも可能である。この場合、印刷用紙20の種類に応じて積載する排紙トレイ172を変更することが可能である。
【0076】
次に、実施の形態1に係る印刷方法を説明する。
【0077】
図8は、実施の形態1に係る印刷方法を説明するためのフローチャート、図9は、図8に示される印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。なお、図8および図9に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、制御部110のHDD116にプログラムとして記憶されており、制御部110のCPU112によって実行される。
【0078】
実施の形態1に係る印刷方法は、印刷画像情報生成処理、給紙処理、1次印刷処理、ラミネート層形成処理、スクラッチ層形成処理、2次印刷処理および排紙処理を有する。
【0079】
印刷画像情報生成処理においては、インタフェース118を介して入力された使用者からの印刷ジョブデータから、1次印刷画像情報、ラミネート設定情報およびスクラッチ印刷情報、2次印刷画像情報が生成される(ステップS01)。
【0080】
給紙処理においては、使用者が指示した種類の印刷用紙の搬送開始を要求する制御部110からの指示を受信すると、給紙部120は、指示された印刷用紙20を給紙トレイ122から取出し、1次印刷装置130に向って搬送する(ステップS02)。
【0081】
1次印刷処理においては、給紙部120から印刷用紙が搬送されてくると、1次印刷装置130は、制御部110より受信した1次印刷画像情報を印刷することで、一次印刷部30を、印刷用紙20上に形成し(図6参照)、一次印刷部30が配置された印刷用紙20は、ラミネータ140に向って搬送される(ステップS03)。なお、1次印刷画像情報は、個人情報を含まない非秘匿情報と、印刷物の受け取り手の興味を引く情報を有する隠し文字とを有しており、一次印刷部30は、非秘匿情報が印刷されて構成される通常印刷部34と、隠し文字が印刷されて構成される下層印刷部32とを有する。
【0082】
ラミネート層形成処理においては、1次印刷装置130から印刷用紙が搬送されてくると、ラミネータ140は、制御部110より受信したラミネート設定情報に基づき、下層印刷部32上にラミネート層40を形成し、下層印刷部32を隠蔽し(図3参照)、ラミネート層40が配置された印刷用紙20は、スクラッチ印刷装置150に向って搬送される(ステップS04)。
【0083】
スクラッチ層形成処理においては、ラミネータ140から印刷用紙が搬送されてくると、スクラッチ印刷装置150は、制御部110より受信したスクラッチ印刷情報に基づき、ラミネート層40上にスクラッチ層50を形成し(図7参照)、スクラッチ層50が配置された印刷用紙20は、2次印刷装置160に向って搬送される(ステップS05)。
【0084】

2次印刷処理においては、スクラッチ印刷装置150から印刷用紙が搬送されてくると、2次印刷装置160は、制御部110より受信した2次印刷画像情報を印刷することで、二次印刷部60を、スクラッチ層50上に形成し、得られた印刷物10(図1参照)は、排紙部170に向って搬送される(ステップS06)。なお、2次印刷画像情報は、人情報(住所および名前)である。
【0085】
排紙処理においては、2次印刷装置160から印刷物10が搬送されてくると、排紙トレイ172に積載し(ステップS07)、プロセスは終了する。
【0086】
次に、ステップS01の印刷画像情報生成処理を詳述する。
【0087】
まず、使用者から入力された印刷ジョブデータ中に含まれる対象データ(テキストボックスデータ、文字列データもしくは画像データ)が、個人情報か否かが判別される(ステップS11)。判別は、対象データに付加されている識別情報に基づいて実行される(図5参照)。
【0088】
対象データが非個人情報であると判別される場合(ステップS11:No)、対象データは、1次印刷データとして分離され(ステップS12)、プロセスは、ステップS14に進む。対象データが個人情報であると判別される場合(ステップS11:Yes)、対象データは、2次印刷データとして分離され(ステップS13)、プロセスは、ステップS14に進む。
【0089】
ステップS14においては、次データの存在の有無が判別される。次データが存在すると判別される場合(ステップS14:Yes)、プロセスは、ステップS11にリターンする。次データが存在しないと判別される場合(ステップS14:No)、1次印刷データに基づき、1次印刷装置130が印刷するための1次印刷画像情報が生成される(ステップS15)。
【0090】
そして、個人情報であると判別された2次印刷データに基づき、2次印刷装置160が印刷するための2次印刷画像情報が生成され、また、2次印刷範囲が算出される(ステップS16)。2次印刷範囲の算出は、例えば、個人情報に係るテキストボックスのサイズ、字列に使用されているフォントのサイズ、画像サイズが利用される。本実施の形態においては、全体として単一の閉じた形状となるよう、単純に縦横の長さだけによって規定される。
【0091】
算出された矩形形状の2次印刷範囲に基づき、ラミネータ140がラミネート層を形成するためのラミネート設定情報およびスクラッチ印刷装置150がスクラッチ層を形成するためのスクラッチ印刷情報が生成され(ステップS17)、プロセスは、図8に示される給紙処理(ステップS02)にリターンする。
【0092】
次に、実施の形態1に係る変形例1〜4を説明する。
【0093】
図10は、実施の形態1に係る変形例1を説明するための断面図である。
【0094】
印刷物10は、ラミネート層40を有しない形態を適用することも可能である。例えば、一次印刷部が通常印刷部34のみからなり、下層印刷部32が存在しない場合、下層印刷部32を保護する必要がないため、ラミネート層40は必須ではない。なお、下層印刷部32が存在する場合であっても、必要に応じて、ラミネート層40を省略することも可能である。
【0095】
図11は、実施の形態1に係る変形例2を説明するための平面図である。
【0096】
印刷物10の一次印刷部に、備考印刷部(第3印刷部)36を含ませることも可能である。備考印刷部36は、印刷物10の受け取り手に対するメッセージを含んでいる情報(第3情報)が印刷されて構成され、その占める範囲は、スクラッチ層50が占める範囲から離間して位置している。メッセージは、例えば、スクラッチ層を削り取ることにより個人情報が消去可能である旨の内容を含んでいる。これにより、印刷物の受け取り手に、スクラッチ層50の存在を注目させることが可能である。
【0097】
図12および図13は、実施の形態1に係る変形例3を説明するための平面図および断面図である。
【0098】
印刷物10のスクラッチ層50上において二次印刷部60が占める範囲以外に装飾印刷部70を配置することも可能である。装飾印刷部70は、スクラッチ層50を隠蔽できる有色の材料(例えば、白トナー)から構成されており、スクラッチ層50が露出していないため、美観を向上させることが可能である。装飾印刷部70は、スクラッチ層50が占める範囲を越えて延長させることも可能である。また、装飾印刷部70は、印刷用紙20の色と同じ色あるいは近似色を有することが好ましい。この場合、装飾印刷部70の存在が目立たないため、美観をさらに向上させることができる。
【0099】
図14は、実施の形態1に係る変形例4を説明するための平面図である。
【0100】
装飾印刷部70の外周は、スクラッチ層50の一部を露出するための欠落部72を有することが好ましい。この場合、装飾印刷部70の欠落部72から露出しているスクラッチ層50の一部を手始めとして、スクラッチ層50を容易に削り取ることが可能である。欠落部72は、三角形形状に限定されず、矩形形状とすることも可能である。また、欠落部72の配置位置は、コーナー部に限定されない。さらに、欠落部72の配置数を複数とすることも可能である。
【0101】
以上のように、実施の形態1に係る印刷物においては、スクラッチ層を削り取ることにより、二次印刷部が破壊されるため、二次印刷部が保持する個人情報が消去される。また、スクラッチ層と二次印刷部とは別体であるため、除去されたスクラッチ層の痕跡に基づき、二次印刷部が保持していた個人情報を読み取ることは困難である。つまり、印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能である印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムを提供することが可能である。
【0102】
次に、実施の形態2を説明する。
【0103】
図15は、実施の形態2に係る印刷ジョブデータを説明するための概略図、図16は、実施の形態2に係る印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。なお、図16に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、制御部110のHDD116にプログラムとして記憶されており、制御部110のCPU112によって実行される。
【0104】
実施の形態2は、バリアブルプリントに関する点で、実施の形態1と概して異なっており、図15に示されるように、フォームデータにあらかじめ各フィールドが個人情報か否かを区別する識別情報が付加されている。なお、実施の形態2と実施の形態1は、給紙処理〜排紙処理が略一致するため、印刷画像情報生成処理のみを説明し、重複を避ける。
【0105】
実施の形態2に係る印刷画像情報生成処理においては、図16に示されるように、まず、使用者から入力された印刷ジョブデータ中に含まれるフォームデータの対象フィールドが、個人情報か否かが判別される(ステップS21)。判別は、フォームデータに付加されている識別情報に基づいて実行される(図15参照)。
【0106】
対象フィールドが非個人情報であると判別される場合(ステップS21:No)、対象フィールドのバリアブルデータは、1次印刷データとして分離され(ステップS22)、プロセスは、ステップS24に進む。対象フィールドが個人情報であると判別される場合(ステップS21:Yes)、対象フィールドのバリアブルデータは、2次印刷データとして分離され(ステップS23)、プロセスは、ステップS24に進む。
【0107】
ステップS24においては、次データの存在の有無が判別される。次データが存在すると判別される場合(ステップS24:Yes)、プロセスは、ステップS21にリターンする。次データが存在しないと判別される場合(ステップS24:No)、非個人情報であると判別された対象フィールドのバリアブルデータからなる1次印刷データに基づき、1次印刷装置130が印刷するための1次印刷画像情報が生成される(ステップS25)。そして、個人情報であると判別された対象フィールドのバリアブルデータからなる2次印刷データに基づき、2次印刷装置160が印刷するための2次印刷画像情報が生成され、また、2次印刷範囲が算出される(ステップS26)。
【0108】
算出された2次印刷範囲に基づき、ラミネータ140がラミネート層を形成するためのラミネート設定情報およびスクラッチ印刷装置150がスクラッチ層を形成するためのスクラッチ印刷情報が生成され(ステップS27)、プロセスは、図8に示される給紙処理(ステップS02)にリターンする。
【0109】
以上のように、実施の形態2においては、バリアブルプリントが適用される場合においても、印刷されている情報を事後的に容易かつ良好に消去することが可能である印刷物、前記印刷物を製造するための方法、装置およびプログラムを提供することが可能である。
【0110】
次に、実施の形態3を説明する。
【0111】
図17は、実施の形態3に係る印刷ジョブデータを説明するための概略図、図18は、実施の形態3に係る印刷画像情報生成処理を説明するためのフローチャートである。なお、図17に示されるフローチャートにより示されるアルゴリズムは、制御部110のHDD116にプログラムとして記憶されており、制御部110のCPU112によって実行される。
【0112】
実施の形態3は、フォームデータのフィールドの構成に関し、実施の形態1および2と概して異なっており、図17に示されるように、フィールドに配置されるバリアブルデータに対しても個人情報か否かを区別する識別情報が付加されている。なお、実施の形態3と実施の形態1および2とは、給紙処理〜排紙処理が略一致するため、印刷画像情報生成処理のみを説明し、重複を避ける。
【0113】
実施の形態3に係る印刷画像情報生成処理においては、図18に示されるように、まず、使用者から入力された印刷ジョブデータ中に含まれるフォームデータの対象フィールドが、個人情報か否かが判別される(ステップS31)。判別は、フォームデータに付加されている識別情報に基づいて実行される(図15参照)。
【0114】
対象フィールドが非個人情報であると判別される場合(ステップS31:No)、対象フィールドのバリアブルデータは、1次印刷データとして分離され(ステップS32)、プロセスは、ステップS36に進む。
【0115】
対象フィールドが個人情報であると判別される場合(ステップS31:Yes)、対象フィールドのバリアブルデータが個人情報か否かが判別される(ステップS33)。判別は、バリアブルデータに付加されている識別情報に基づいて実行される(図17参照)
バリアブルデータが非個人情報であると判別される場合(ステップS33:No)、対象フィールドのバリアブルデータは、隠し文字(下層印刷部)の1次印刷データとして分離され(ステップS34)、プロセスは、ステップS36に進む。バリアブルデータが個人情報であると判別される場合(ステップS33:Yes)、対象フィールドのバリアブルデータは、2次印刷データとして分離され(ステップS35)、プロセスは、ステップS36に進む。
【0116】
ステップS36においては、次データの存在の有無が判別される。次データが存在すると判別される場合(ステップS36:Yes)、プロセスは、ステップS31にリターンする。次データが存在しないと判別される場合(ステップS36:No)、非個人情報であると判別されたフィールドのバリアブルデータと、個人情報であると判別されたフィールドの非個人情報のバリアブルデータ(隠し文字)とからなる1次印刷データに基づき、1次印刷装置130が印刷するための1次印刷画像情報が生成される(ステップS37)。そして、個人情報であると判別されたフィールドの個人情報のバリアブルデータからなる2次印刷データに基づき、2次印刷装置160が印刷するための2次印刷画像情報が生成され、また、2次印刷範囲が算出される(ステップS38)。
【0117】
算出された2次印刷範囲に基づき、ラミネータ140がラミネート層を形成するためのラミネート設定情報およびスクラッチ印刷装置150がスクラッチ層を形成するためのスクラッチ印刷情報が生成され(ステップS39)、プロセスは、図8に示される給紙処理(ステップS02)にリターンする。
【0118】
以上のように、実施の形態3においては、バリアブルプリントが適用される場合において、フォームデータのフィールドに配置されるバリアブルデータに識別情報を付加することにより、下層印刷部を構成する隠し文字を簡単に指定することが可能である。
【0119】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することが可能である。例えば、印刷ジョブデータは、個人情報か否かを判別するための識別情報を予め付加する形態に限定されない。
【0120】
なお、本発明に係る手段、方法およびプログラムは、専用のハードウェア回路によっても実現することも可能である。また、プログラムされたコンピュータ装置によって本発明を実現する場合、コンピュータ装置を動作させるプログラムは、USBメモリやCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供したり、記録媒体によらず、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供したりすることも可能である。この場合、プログラムは、通常、コンピュータ装置のハードディスク等のランダムアクセス記憶装置に送信されて記憶される。また、プログラムは、単独のアプリケーションソフトウェアとして提供されてもよいし、コンピュータ装置の一機能としてそのコンピュータ装置のソフトウェアに組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 印刷物、
20 印刷用紙、
30 一次印刷部、
32 下層印刷部、
34 通常印刷部、
36 備考印刷部、
40 ラミネート層、
50 スクラッチ層、
60 二次印刷部、
70 装飾印刷部、
72 欠落部、
100 印刷装置、
110 制御部、
112 CPU、
113 RAM、
115 ROM、
116 HDD、
118 インタフェース、
119 バス、
120 給紙部、
122 給紙トレイ、
130 一次次印刷装置、
140 ラミネータ、
150 スクラッチ印刷装置、
160 二次印刷装置、
170 排紙部、
172 排紙トレイ、
180 搬送通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体である基材と、
前記基材上に配置され、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層と、
前記スクラッチ層上に配置され、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部と、
を有することを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記スクラッチ層が占める範囲の形状は、前記第1印刷部の形状と異なっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。
【請求項4】
前記スクラッチ層が占める範囲は、全体として単一の閉じた形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項5】
前記基材と前記スクラッチ層との間に配置される第2印刷部およびラミネート層を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項6】
前記第2情報は、印刷物の受け取り手の興味を引く情報からなることを特徴とする請求項5に記載の印刷物。
【請求項7】
前記基材上に配置され、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部をさらに有し、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項8】
前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に配置される装飾印刷部を、さらに有し、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項9】
前記装飾印刷部の外周は、前記スクラッチ層の一部を露出するための欠落部を有することを特徴とする請求項8に記載の印刷物。
【請求項10】
前記装飾印刷部は、前記基材の色と同じ色あるいは近似色を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の印刷物。
【請求項11】
前記スクラッチ層は、前記基材の色と同じ色あるいは近似色を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷物。
【請求項12】
印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置するステップ(A)と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置するステップ(B)と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項13】
前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする請求項12に記載の印刷方法。
【請求項14】
印刷ジョブデータから前記第1情報を分離するステップ(C)を、さらに有することを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の印刷方法。
【請求項15】
前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記ステップ(C)における前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項16】
前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする請求項15に記載の印刷方法。
【請求項17】
前記基材と前記スクラッチ層との間に、第2印刷部およびラミネート層を配置するステップ(D)を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項18】
前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置するステップ(E)を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項19】
前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置するステップ(F)を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項20】
印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置するためのスクラッチ層配置手段と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置するための第1印刷部配置手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項21】
前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする請求項20に記載の印刷装置。
【請求項22】
印刷ジョブデータから前記第1情報を分離するための第1情報分離手段を、さらに有することを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の印刷装置。
【請求項23】
前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記第1情報分離手段による前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする請求項20〜22のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項24】
前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする請求項23に記載の印刷装置。
【請求項25】
前記基材と前記スクラッチ層との間に第2印刷部を配置するための第2印刷部配置手段と、
前記基材と前記スクラッチ層との間にラミネート層を配置するためのラミネート層配置手段とを、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする請求項12〜16のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項26】
前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置するための第3印刷部配置手段を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする請求項20〜25のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項27】
前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置するための装飾印刷部配置手段を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする請求項20〜26のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項28】
印刷装置を制御するプログラムであって、
印刷物の印刷媒体である基材上に、削り取ることにより除去自在であるスクラッチ層を配置する手順(A)と、
前記スクラッチ層上に、第1情報が印刷されて構成される第1印刷部を配置する手順(B)と、
を有する処理を、前記印刷装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項29】
前記第1情報は、漏洩防止情報あるいは個人情報を含んでいることを特徴とする請求項28に記載のプログラム。
【請求項30】
前記処理は、印刷ジョブデータから前記第1情報を分離する手順(C)を、さらに有することを特徴とする請求項28又は請求項29に記載のプログラム。
【請求項31】
前記印刷ジョブデータに含まれるデータには、前記第1情報か否かを判別するための識別情報が付加されており、
前記手順(C)における前記第1情報を分離は、前記識別情報に基づいていることを特徴とする請求項28〜30のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項32】
前記印刷ジョブデータは、バリアブルプリントに使用されるフォームデータを含んでおり、前記識別情報は、前記フォームデータのフィールドに付加されていることを特徴とする請求項31に記載のプログラム。
【請求項33】
前記処理は、前記基材と前記スクラッチ層との間に、第2印刷部およびラミネート層を配置する手順(D)を、さらに有しており、
前記第2印刷部は、前記基材上に配置され、第2情報が印刷されて構成されており、
前記ラミネート層は、前記第2印刷部と前記スクラッチ層との間に位置し、前記第2印刷部が視認できる透明な材料から構成されている
ことを特徴とする請求項28〜32のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項34】
前記処理は、前記基材上に、第3情報が印刷されて構成される第3印刷部を配置する手順(E)を、さらに有しており、
前記第3情報は、前記スクラッチ層を削り取ることにより前記第1情報が消去可能である旨のメッセージを含んでおり、
前記第3印刷部が占める範囲は、前記スクラッチ層が占める範囲から離間して位置している
ことを特徴とする請求項28〜33のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項35】
前記処理は、前記スクラッチ層上において前記第1印刷部が占める範囲以外に、装飾印刷部を配置する手順(F)を、さらに有しており、
前記装飾印刷部は、前記スクラッチ層を隠蔽できる有色の材料から構成されている
ことを特徴とする請求項28〜34のいずれか1項に記載のプログラム。

【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−245834(P2011−245834A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124359(P2010−124359)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】