説明

スクランブル放送切替装置

【課題】スクランブル放送信号の送出系統を切り替える際に、切替出力のコンテンツに影響を与えることなく簡単な手順で切り替えることが可能なスクランブル放送切替装置を提供する。
【解決手段】系統切替時に、切替元の系統から切替先の系統への切り替えの実行に先立ち、切替制御器14において、切替元のスクランブラ11及び切替先のスクランブラ13のスクランブル処理を停止し、ノンスクランブル状態で切替元の信号から切替先の信号へ切り替えるようにシームレス切替器12を切替制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RMP(Rights Management and Protection)放送信号の送出系統を切り替えるスクランブル放送切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送送出設備にあっては、機器の故障対策及び保守のために、現用・予備の二重化構成とすることが一般的となっている。
【0003】
ところで、近年、地上波放送システムにおいては、デジタル放送が開始されている。このようなデジタル放送では、放送局用の機器やシステムとして、アナログ放送対応からデジタル放送対応への移行期にある。この移行期において、アナログ放送とデジタル放送とが並存することになる。
【0004】
ここで、アナログ放送送出設備では、信号が圧縮されていないため、現用・予備の切替時にショックが目立たないようにするのに、フレーム同期を行なった上で、フレーム位置で切り替えるものとし、接点の切替時に発生するノイズ対策等を講じるだけで十分であった。しかしながら、デジタル放送では、現用・予備切替時において、送出すべき放送信号がTS(Transport Stream)に圧縮符号化されており、フレームの切れ目が分かり難くなっているため、アナログ放送のように単純にフレーム同期を行なってフレーム位置で切り替えることはできない。
【0005】
また、デジタル放送では、TSにスクランブルをかけて放送する場合もあるため(RMP放送)、この場合には、TSのフレーム位置を識別することができない。
【0006】
そこで、現用・予備切替時において、フレーム識別用のTSパケットについてはスクランブルをかけないようにし、他のパケットについては系統間もしくはパケット間で同一のスクランブル鍵を用いてスクランブルをかけるようにした手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−258003号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記手法では、現用系スクランブル処理部及び予備系スクランブル処理部において、フレーム識別用のTSパケットを識別してスクランブルをかけないようにするという複雑な処理が要求されることになる。
【0008】
そこで、この発明の目的は、スクランブル放送信号の送出系統を切り替える際に、切替出力のコンテンツに影響を与えることなく簡単な手順で切り替えることが可能なスクランブル放送切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
デジタル放送信号に対しスクランブル処理を施した複数系統のスクランブル放送信号を、系統切替信号に応じて選択的に切り替えて送出するスクランブル放送切替装置において、各系統に設けられ、デジタル放送信号に対しスクランブル処理を施して出力するスクランブル処理手段と、各系統のスクランブル処理手段の出力のいずれか一方を送出信号として選択的に導出する切替手段と、系統切替信号が入力されたとき、切替元及び切替先のスクランブル処理手段に対し停止制御を行い、しかる後に切替手段を切替元の系統から切替先の系統に切り替える切替制御手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
この構成によれば、系統切替時に、切替元の系統から切替先の系統への切り替えの実行に先立ち、切替元のスクランブル処理手段及び切替先のスクランブル処理手段のスクランブル処理を停止し、ノンスクランブル状態で切替元の信号から切替先の信号へ切り替えるようにしている。このため、切替出力のコンテンツに影響を与えることなく切り替えることができる。
【0011】
切替制御手段は、切替手段を切替元の系統から切替先の系統に切り替えた後、受信機側で切替先のスクランブル放送信号を受信するために必要な処理時間相当の時間経過後に、切替先のスクランブル処理手段のスクランブル処理を実行させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、切替出力を受信機側で安定して受信するように、切替時点から、受信機側で切替先のスクランブル放送信号を受信するために必要な処理時間相当の時間経過後に、切替元及び切替先のスクランブル処理手段のスクランブル処理を実行させるようにしている。このため、受信機側では、系統切替時に、ノンスクランブル放送信号からスクランブル放送信号を受信するための情報を受信することができ、この情報をもとに途切れのないスクランブル放送信号を受信することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳述したようにこの発明によれば、スクランブル放送信号の送出系統を切り替える際に、切替出力のコンテンツに影響を与えることなく簡単な手順で切り替えることが可能なスクランブル放送切替装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明に係わるスクランブル放送信号切替装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、1系入力、2系入力には、MPEG2(Moving Picture Experts Group 2)によるTSが供給される。1系入力のTSは、スクランブラ11で選択的にスクランブルがかけられてシームレス切替器12に供給される。同様に、2系入力のTSは、スクランブラ13で選択的にスクランブルがかけられてシームレス切替器12に供給される。
【0015】
上記シームレス切替器12は、切替制御器14によって切替制御され、1系入力のTS及び2系入力のTSを選択的に導出する。切替制御器14は、スクランブラ11,13及びシームレス切替器12に対し、ユーザ指定入力操作による系統切替トリガに従って、スクランブラ11,13をOFF制御し、しかる後にシームレス切替器12の切替制御を行う。
【0016】
上記構成において、以下にその処理動作を説明する。図2は、1系から2系へ切り替える際の切替制御器14の切替処理の様子を示し、図3は、1系から2系へ切り替える際の切替制御器14の切替処理手順を示すフローチャートである。
切替制御器14は、1系のTSを送出している状態で、系統切替トリガが入力されると、ステップST3aからステップST3bに移行してここで1系及び2系のスクランブラ11,13をOFF制御し、しかる後に1系から2系に切り替えるようにシームレス切替器12を切替制御する(ステップST3c)。このとき、シームレス切替器12は、1系出力を減衰させながら、2系出力を増大させる。
【0017】
一方、切替制御器14は、シームレス切替器12から切替完了信号が到来するか否かを監視しており、切替完了信号を受信すると、ステップST3dからステップST3eに移行しここで切替時点つまり切替完了信号の受信時点から5秒経過するか否かを監視する。
【0018】
そして、5秒経過後、切替制御器14は1系及び2系のスクランブラ11,13をON制御する(ステップST3f)。
【0019】
すなわち、受信機側では、ノンスクランブル番組からスクランブル番組に切り替わる際に、例えばバージョン情報の取得等のRMP放送信号を受信するための処理が必要となる。そこで、本実施形態では、受信機側におけるRMP放送信号の受信処理を考慮して、切替制御器14において、1系から2系への切替時点から5秒経過後にスクランブラ11,13をON制御するようにしている。
【0020】
なお、上記処理手順は、2系から1系への切替時にも、同様に行なうことができる。
【0021】
以上のように上記実施形態では、系統切替時に、切替元の系統から切替先の系統への切り替えの実行に先立ち、切替制御器14において、切替元のスクランブラ11及び切替先のスクランブラ13のスクランブル処理を停止し、ノンスクランブル状態で切替元の信号から切替先の信号へ切り替えるようにシームレス切替器12を切替制御している。このため、切替出力のコンテンツに影響を与えることなく切り替えることができる。
【0022】
また、上記実施形態では、切替出力を受信機側で安定して受信するように、切替制御器14において、切替時点から、受信機側で切替先のRMP放送信号を受信するために必要な処理時間相当の時間経過後に、切替元及び切替先のスクランブラ11,13のスクランブル処理を実行させるようにしている。
【0023】
従って、受信機側では、系統切替時に、ノンスクランブル放送信号からRMP放送信号を受信するための情報を受信することができ、この情報をもとに途切れのないスクランブル放送信号を受信することができる。
【0024】
また、この他にも、MPEG2符号化方式以外で規定されるデジタル放送信号を取り扱う場合や切替制御器による切替制御手順等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係わるスクランブル放送信号切替装置の一実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態において、1系から2系へ切り替える際の切替制御器の切替処理の様子を示す図。
【図3】同実施形態において、1系から2系へ切り替える際の切替制御器の切替処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0026】
11,13…スクランブラ、12…シームレス切替器、14…切替制御器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送信号に対しスクランブル処理を施した複数系統のスクランブル放送信号を、系統切替信号に応じて選択的に切り替えて送出するスクランブル放送切替装置において、
各系統に設けられ、デジタル放送信号に対しスクランブル処理を施して出力するスクランブル処理手段と、
各系統のスクランブル処理手段の出力のいずれか一方を送出信号として選択的に導出する切替手段と、
前記系統切替信号が入力されたとき、切替元及び切替先のスクランブル処理手段に対し停止制御を行い、しかる後に前記切替手段を前記切替元の系統から切替先の系統に切り替える切替制御手段とを具備したことを特徴とするスクランブル放送切替装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、前記切替手段を前記切替元の系統から切替先の系統に切り替えた後、デジタル放送信号の受信機側で切替先のスクランブル放送信号を受信するために必要な処理時間相当の時間経過後に、切替元及び切替先のスクランブル処理手段のスクランブル処理を実行させることを特徴とする請求項1記載のスクランブル放送切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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