説明

スクリーニング方法、スクリーニングプログラム及びスクリーニング装置

【課題】非特異的に結合する候補分子を除外して、簡便に且つ効率よく候補分子をスクリーニングする。
【解決手段】生理活性を低下させる活性低下処理を行っていない前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して得られた活性時結合量データと、生理活性を低下させる活性低下処理を行った前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して得られた低活性時結合量データとの間に、所定の差がある候補分子を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーニング方法、スクリーニングプログラム及びスクリーニング装置に関し、詳しくは、標的分子と候補分子との結合を用いて所定の候補分子を抽出するスクリーニング方法、スクリーニングプログラム及びスクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛋白質などの生理活性物質と所定の化合物との相互作用を測定する装置として、様々なバイオセンサーが提案されている。そのうち、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして、表面プラズモンセンサーが知られている(特許文献1参照)。一般的に、表面プラズモンセンサーは、プリズムと、このプリズムの一面に配置され生理活性物質が固定される金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームをプリズムに対して、プリズムと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段と、を備え、光検出手段の検出結果に基づいて、生理活性物質に関する測定を行うものである。そして、この表面プラズモンセンサーによる測定では、金属膜の上に固定化された生理活性物質に対して化合物溶液を供給すると共に、金属膜の化合物溶液が供給されている側と逆側の面へ光ビームを入射し、その反射光から得られる屈折率の情報に基づいて、生理活性物質と化合物溶液中の化合物との相互作用が測定される。
【0003】
ところで、表面プラズモンセンサーは、金属膜上での化合物間の微細な結合状態を精度よく検出することができるため、特定の生理活性物質を標的分子として金属膜に固定し、この標的分子に対して特異的に結合可能か否かを指標として大量の候補分子を選別する大規模なスクリーニングに好適である。
【0004】
しかしながら、候補分子の中には標的分子に対して非特異的に結合するものがある。表面プラズモンセンサーは上述のように化合物間の結合状態の変化を検出するものであるため、このような結合状態の変化だけでは、候補分子と標的分子との間での特異的結合と非特異的結合とを区別することができない。このため、大量のスクリーニングを行う際に、候補分子の絞り込みに時間がかかるという問題がある。
このような非特異的な結合を少なくするために、測定に使用するバッファー等に、Tween20やポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルなどの高濃度の界面活性剤を添加することが行われている(例えば、特許文献2〜4)。
【特許文献1】特許第3294605公報
【特許文献2】特開昭58−187862号公報
【特許文献3】特開昭61−260163号公報
【特許文献4】特開平6−300759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高濃度の界面活性剤を含有するバッファーを用いる方法では、高濃度の界面活性剤が常に測定系に存在することになり、センサ表面に吸着、脱離することによって、測定の安定性が損なわれることがある。また、界面活性剤を含むバッファー等を大量に調製する必要がある。
【0006】
従って、本発明は、標的分子に対して非特異的に結合し得る候補分子を効率よく除外して、標的分子に対して特異的に結合し得る候補分子を簡便に且つ効率よく抽出可能なスクリーニング方法、スクリーニングプログラム及びスクリーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクリーニング方法は、標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に、検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニング方法であって、生理活性を低下させる活性低下処理を行っていない前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して、活性時結合量データを得る工程と、生理活性を低下させる活性低下処理を行った前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して、低活性時結合量データを得る工程と、前記活性時結合量データと前記低活性時結合量データとの間に所定の差がある候補分子を抽出する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0008】
本発明のスクリーニングプログラムは、標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニングプログラムであって、生理活性を低下させる活性低下処理を行っていない前記標的分子が固定化されている測定領域に供給された前記候補分子と、前記標的分子と、の結合量に基づいて活性時結合量データを算出するステップと、前記標的分子の生理活性を低下させる活性低下処理を行った前記標的分子が固定化されている測定領域に供給された前記候補分子と、前記標的分子と、の結合量に基づいて低活性時結合量データを算出するステップと、前記活性時結合量データと低活性測定データとの間に所定の差を示す候補分子を抽出するステップと、をコンピュータに実行させるものである。
【0009】
また、本発明のスクリーニング装置は、標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニング装置であって、前記測定領域に候補分子を供給して、前記結合量データを取得する測定手段と、活性低下処理液を前記測定領域に供給して、前記標的分子の生理活性を低下させるための活性低下処理手段と、前記測定手段から取得された前記活性低下処理を行っていない標的分子に対する候補分子の活性結合量データと、前記活性低下処理後の低活性標的分子に対する候補分子の低活性時結合量データを、候補分子毎に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記活性時結合量データと低活性測定データとを間に所定の差がある候補分子を抽出する抽出手段と、を備えたものである。
【0010】
本発明では、検討対象となる候補分子をスクリーニングするための標的となる標的分子に対して、生理活性を低下させる活性低下処理を行う。候補分子は標的分子に対して特異的に結合可能であったとしても、このような活性低下処理を行った後の標的分子に対しては本来の結合量を維持できない。このために、活性低下処理後の標的分子に対して得られた結合量データ(低活性時結合量データ)は、本来、活性低下処理を行っていない標的分子に対して得られた結合量データ(活性時結合量データ)よりも低い値を示し、これらのデータの間には所定の差が示される。一方、標的分子に対して非特異的に結合する候補分子であれば、標的分子の活性の高さとは無関係に結合するため、これらのデータ間には、所定の差が示されない。従って、このような所定の差に基づいて、標的分子に対して非特異的に結合する候補分子を確実に排除し、標的分子に対して特異的に結合する候補分子を効率よくスクリーニングすることができる。
【0011】
このとき、候補分子を選別するためのしきい値を予め設定することができる。これによって更に効率よくスクリーニングを行うことができる。
しきい値としては、低活性時結合量データと対比するしきい値であってもよく、活性時結合量データと対比するしきい値であってもよい。低活性時結合量データと対するしきい値を用いた場合には、しきい値以下又はこれ未満の低活性時結合量データを示す候補分子を抽出する。一方、活性時結合量データと対比するしきい値を用いた場合には、しきい値以上又はこれを超える活性時結合量データを示す候補分子を抽出する。更に、活性時結合量データ及び低活性時結合量データの差と対比するしきい値であってもよい。この場合には、活性時結合量データと低活性時結合量データとの差がしきい値以上又はこれを超える候補分子を抽出する。
しきい値は、複数組み合わせて使用することもできる。これにより、より精度よく目的とする候補分子をスクリーニングすることができる。
【0012】
また、抽出工程が、複数設定されたしきい値をそれぞれ用いて候補分子を抽出する独立した複数の抽出工程で構成されているものであってもよい。この場合、1のしきい値に基づく第1の抽出工程によって抽出された候補分子に対して、他のしきい値に基づく第2の抽出を行うことができる。これにより、第2の抽出の対象となる候補分子の数を減らすことができ、より短時間でスクリーニングすることができる。
【0013】
また、活性低下処理は、活性時結合量データを取得した後の標的分子に対して行ってもよい。この場合には、固定化膜に固定された同一の標的分子に対して得られた活性時結合量データと低活性時結合量データとに基づいてスクリーニングを行うので、より精度よく標的分子に対して特異的に結合する候補分子を抽出することができる。
更に、活性低下処理は、標的分子の種類によって固定化処理の前の標的分子に対して行うこともできるが、固定化膜に固定化された標的分子に対して行うことが好ましい。これにより、活性低下処理によって固定化膜に固定化しにくくなる性質の標的分子であっても、固定化膜に確実に固定化された活性低下処理後の標的分子から低活性時結合量データを得ることができる。
【0014】
なお、前記固定化膜が金属膜上に形成され、活性時結合量データ及び低活性時結合量データが、片面に前記固定化膜の形成された金属膜の前記固定化膜の形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して得られたものであってもよい。
上記のような形態としては、表面プラズモンセンサー、漏洩モードセンサーによる測定を挙げることができる。
【0015】
また、このような前記標的分子が固定されていない固定化膜が形成された金属膜に前記候補分子を供給し、前記光ビームを前記標的分子が固定されていない金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰量を参照データとして、前記活性時結合量データと低活性時結合量データとを得てもよい。
このように参照データを得ることによって、活性時結合量データ及び低活性時結合量データを正確に得て、適切なスクリーニングを行うことができる。
【0016】
なお、本発明における標的分子及び候補分子としては、日本工業規格(JIS)K3611中に「天然高分子」(記号11001〜11025)として記載されている各物質、生物学データ大百科事典(朝倉書店)中の「1.生体物質概論」に記載されている糖、アミノ酸、ヌクレオチド、脂質、ヘム、キノン、蛋白質、RNA,DNA、リン脂質、多糖、バイオサイエンス辞典(朝倉書店)中の「II.生物物質と代謝」に記載されている蛋白質、アミノ酸、核酸、脂質、糖質、酵素のうちのいずれか1つ以上で構成された、所謂、生理活性物質及びこの生理活性物質と結合可能な有機又は無機分子を挙げることができる。
また、本発明における標的分子と候補分子との結合とは、物理的、化学的、もしくは生化学的な結合反応をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、標的分子に対して非特異的に結合し得る候補分子を効率よく除外して、標的分子に対して特異的に結合し得る候補分子を簡便に且つ効率よく抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。
本実施形態のスクリーニング装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモンを利用して、標的分子としての生理活性物質Dと候補分子との相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。本実施形態では、このバイオセンサー10を、生理活性物質Dに特異的に結合する物質を大量の候補分子からスクリーニングするために使用する。
【0019】
図1に示すように、バイオセンサー10は、トレイ保持部12、搬送部14、容器載置台16、液体吸排部20、光学測定部54及び制御部60を備えている。
トレイ保持部12は、載置台12A及びベルト12Bを含んで構成されている。載置台12Aは、矢印Y方向に架け渡されたベルト12Bに取り付けられており、ベルト12Bの回転により矢印Y方向に移動可能とされている。載置台12A上には、2枚のトレイTが位置決めして載置される。トレイTには、センサースティック40が8本収納されている。センサースティック40は、生理活性物質Dが固定されるチップであり、詳細については後述する。載置台12Aの下には、センサースティック40を後述するスティック保持部材14Cの位置まで押し上げるための図示しない押上機構が配置されている。
【0020】
センサースティック40は、図2及び図3に示すように、誘電体ブロック42、流路部材44、保持部材46、接着部材48及び蒸発防止部材49で構成されている。
【0021】
誘電体ブロック42は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部42Aと、プリズム部42Aの両端部にプリズム部42Aに対して一体的に形成された被保持部42Bとを備えている。プリズム部42Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、図4にも示すように金属膜50が形成されている。誘電体ブロック42は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部42Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜50との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0022】
金属膜50の表面には、図4に示すように、固定化膜50Aが形成されている。固定化膜50Aは、生理活性物質Dを金属膜50上に固定化するためのものである。固定化膜50Aは、固定する生理活性物質Dの種類に応じて選択される。
【0023】
固定化膜50Aとしては、例えばアガロース、デキストラン、カラゲナン、アルギン酸、デンプン、セルロースなどのヒドロゲル、又はこれらの誘導体、例えばカルボキシメチル誘導体、又は水膨潤性有機ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。特に、ポリエチレングリコール誘導体、デキストラン誘導体は、生理活性維持の観点から好ましく用いられる。
【0024】
固定化膜50A上には、生理活性物質Dが固定された測定領域E1と、生理活性物質Dが固定されず、測定領域E1の信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域E2とが形成される。即ち、参照領域E2は、生理活性物質Dの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するために設けられた領域である。この参照領域E2は、上述した固定化膜50Aを製膜する際に形成される。形成方法としては、例えば、固定化膜50Aに対して表面処理を施して、生理活性物質Dと結合する結合基を失活させる。これにより、固定化膜50Aの半分が測定領域E1となり、残りの半分が参照領域E2となる。
図5にも示すように、参照領域E2と、参照領域E2よりも上流側に位置する測定領域E1とには、各々光ビームL2、L1が入射される。
【0025】
プリズム部42Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材46と係合される係合凸部42Cが、下側の端辺に沿ってプリズム部42Aの上面と垂直な仮想面の延長上に構成される垂直凸部42Dが、各々7箇所に形成されている。また、誘電体ブロック42の下面の長手方向に沿った中央部には、係合溝42Eが形成されている。
【0026】
流路部材44は、誘電体ブロック42よりもわずかに狭幅の直方体状とされ、図3に示すように、誘電体ブロック42の金属膜50上に6個並べて配置されている。各々の流路部材44の下面には流路溝44Aが形成されており、上面に形成された供給口45A及び排出口45Bと連通されて、金属膜50との間に、液体流路45が構成される。したがって、1本のセンサースティック40には、独立した6個の液体流路45が構成される。流路部材44の側壁には、保持部材46の内側の図示しない凹部に圧入されて保持部材46との密着性を確保するための凸部44Bが形成されている。
なお、液体流路45には蛋白質を含有する液体が供給されることが想定されるので、流路部材44の材料としては、蛋白質に対する非特異吸着性を有しないものであることが好ましい。
【0027】
保持部材46は、長尺とされ、上面板46A及び2枚の側面板46Bで構成されている。側面板46Bには、誘電体ブロック42の係合凸部42Cと係合される係合孔46Cが形成されている。保持部材46は、6個の流路部材44を間に挟んで係合孔46Cと係合凸部42Cとが係合されて、誘電体ブロック42に取り付けられる。これにより、流路部材44は、誘電体ブロック42に取り付けられる。上面板46Aには、流路部材44の供給口45A及び排出口45Bと対向する位置に、流路部材44に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔46Dが形成されている。また、隣り合うピペット挿入孔46Dとピペット挿入孔46Dとの間には、位置決め用のボス46Eが形成されている。
【0028】
保持部材46の上面には、蒸発防止部材49が接着部材48を介して接着されている。接着部材48のピペット挿入孔46Dと対向する位置にはピペット挿入用の孔48Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔48Eが形成されている。また、蒸発防止部材49のピペット挿入孔46Dと対向する位置には十字状の切り込みであるスリット49Dが形成され、ボス46Eと対向する位置には位置決め用の孔49Eが形成されている。ボス46Eを孔48E及び49Eに挿通させて、蒸発防止部材49を保持部材52の上面に接着することにより、蒸発防止部材49のスリット49Dと流路部材44の供給口45A及び排出口45Bとが対向するように構成される。ピペットチップCPの非挿入時には、スリット49D部分が供給口45Bを覆い、液体流路45に供給されている液体の蒸発が防止される。
【0029】
図1に示すように、バイオセンサー10の搬送部14は、上部ガイドレール14A、下部ガイドレール14B及びスティック保持部材14C、を含んで構成されている。上部ガイドレール14A及び下部ガイドレール14Bは、トレイ保持部12及び光学測定部54の上部で、矢印Y方向と直交する矢印X方向に水平に配置されている。上部ガイドレール14Aには、スティック保持部材14Cが取り付けられている。スティック保持部材14Cは、センサースティック40の両端部の被保持部42Bを保持可能とされていると共に、上部ガイドレール14Aに沿って移動可能とされている。スティック保持部材14Cに保持されたセンサースティック40の係合溝42Eと下部ガイドレール14Bとが係合され、スティック保持部材14Cが矢印X方向に移動することにより、センサースティック40が光学測定部54上の測定部56に搬送される。
【0030】
容器載置台16には、化合物溶液プレート17、バッファー液ストック容器18、廃棄液容器19が載置されている。化合物溶液プレート17は、96に区画されており、各種の化合物溶液をストック可能とされている。バッファー液ストック容器18は、容器18A〜18Eで構成されており、容器18A〜18Eには、後述するピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
【0031】
バッファー液としては、例えば公知の緩衝溶液(化学便覧応用編改訂2版、1312頁〜1320頁)を基本に、食塩、金属イオン(マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなど)、安定化剤(DTTなど)などを添加したものを用いることができる。特に、PBSバッファー(リン酸バッファー生理食塩水)、Trisバッファー、HEPESバッファーなどが好ましく用いられる。
【0032】
廃棄液容器19は、複数の容器19A〜19Eで構成されており、容器18A〜18Eと同様にピペットチップCPを挿入可能な開口Kが形成されている。
液体吸排部20は、上部ガイドレール14Aと、ガイドレール16Bよりも上方で、矢印Y方向に架け渡された横断レール22と、ヘッド24とを含んで構成されている。横断レール22は、図示しない駆動機構により、矢印X方向へ移動可能とされている。また、ヘッド24は、横断レール22に取り付けられ、矢印Y方向に移動可能とされている。また、ヘッド24は、図示しない駆動機構により、鉛直方向(矢印Z方向)にも移動可能とされている。ヘッド24は、図6に示すように、2本のピペット部24A、24Bを備えている。ピペット部24A、24Bには、先端部にピペットチップCPが取り付けられ、個々にZ方向の長さを調整可能とされている(図6(A)〜(B)参照)。ピペットチップCPは、図示しないピペットチップストッカーに多数ストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0033】
なお、本実施形態においてはセンサースティック40への液体供給はピペットチップCPにより行われるが、ピペットチップの代わりに、一端が上記各溶液プレートに接続され、他端がセンサースティック40に接続可能とされたインジェクションチューブを設け、送液ポンプにより液体の供給を行ってもよい。
【0034】
光学測定部54は、図7に示すように、光源54A、第1光学系54B、第2光学系54C、受光部54D、信号処理部54Eを含んで構成されている。光源54Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、第1光学系54Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、測定部56に配置された誘電体ブロック42の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜50と誘電体ブロック42との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック42と金属膜50との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、第2光学系54Cを経て受光部54Dで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部54Eへ出力される。信号処理部54Eでは、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1の測定データG1及び参照領域E2の参照データG2が求められる。この測定データG1、参照データG2が制御部60へ出力される。
【0035】
制御部60は、バイオセンサー10の全体を制御する機能を有し、図7に示すように、光源54A、信号処理部54E及びバイオセンサー10の図示しない駆動系と接続されている。制御部60は、図8に示すように、バスBを介して互いに接続される、CPU60A、ROM60B、RAM60C、メモリ60D及びインターフェースI/F60Eを有し、各種の情報を表示する表示部62及び、各種の指示、情報を入力するための入力部64と接続されている。
【0036】
メモリ60Dには、バイオセンサー10を制御するための各種プログラムや、各種データ及び、スクリーニングプログラムが記憶されている。
メモリ60Dに記憶される参照データG2は、生理活性物質Dが固定化されていない固定化膜50A上にランニングバッファーを供給した際に求められる基準点と、候補分子Aを供給した際に求められる信号との変化量RU(Resonance Unit、1RU=1pg/mmに相当)で示されている。
【0037】
このように、本実施の形態にかかるバイオセンサー10では、センサースティック40が測定部56へ搬送され、入力部64から測定開始の指示が入力されると、制御部60では、結合量測定処理が実行される。この結合量測定処理では、検討対象となっている最初の候補分子の溶液を液体流路45へ供給し、光源54A、信号処理部54E及び図示しない駆動系を駆動して、測定領域E1から測定データG1を取得し、参照領域E2から参照データG2を取得する。次いで、測定データG1を参照データG2で補正して、結合量データG3を算出し、候補分子毎に結合量データが記憶される。
【0038】
次に、本実施形態にかかるスクリーニング方法について説明する。
本実施形態では、生理活性物質Dの生理活性を低下させるための活性低下処理を行い、生理活性物質Dの生理活性を維持した状態での結合量データ(活性時結合量データ)と、生理活性を低下させた状態での結合量データ(低活性時結合量データ)と、の間で活性低下処理の前後で生じた所定の差に基づいて、候補分子をスクリーニングする。
【0039】
生理活性物質Dの活性低下処理としては、生理活性物質Dの候補分子に対する結合活性を低下させることができればよいが、低活性時結合量データと活性時結合量データとの差を明確にするために、好ましくは低活性処理前の結合活性の少なくとも50%、より好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下まで、結合活性を低下させることができる。低活性処理前の活性と低活性処理後の活性の差が小さいと、結合量の差異の検出が困難になり、好ましいスクリーニング結果が得られない。
【0040】
活性低下処理としては、(1)pH、塩濃度などのバッファー組成、(2)界面活性剤の濃度、(3)酸、アルカリ、有機溶剤による処理、(4)光の照射、(5)温度変化、(6)蛋白変性剤の添加などを挙げることができる。このうち、(1)〜(3)は、通常の測定と同様の作業で活性低下処理を実施することができ、(4)及び(5)は、処理液を調製する必要がない。このため、生理活性物質Dの種類によって上記(1)〜(5)から適切な活性低下処理を適宜選択すればよい。
【0041】
バッファー組成を変更する場合には、生理活性物質Dの活性が維持されているpHから0.01以上7.0以下変化させることが好ましく、0.5以上4.0以下変化させることがさらに好ましい。また、0.2〜10mMの塩濃度とすることが好ましく、0.3mM〜5mMの塩濃度とすることが更に好ましい。このような結合活性低下処理溶液としては、塩濃度及びpHを調整した上記バッファーとして記載されたものの他、酢酸バッファー、ホウ酸バッファー等を挙げることができる。
【0042】
界面活性剤としては、Triton X−100、Tween20、SDSなどの公知の界面活性剤を、0.1容量%以上、好ましくは0.5容量%以上の比較的高濃度で用いるとよい。
有機溶剤としては、エタノール、DMSOなどの公知の溶剤を、10容量%以上、好ましくは20容量%以上の濃度で用いるとよい。蛋白変性剤としては、フェノール、尿素、塩酸グアニジンのような公知の化合物を用いることができる。
【0043】
光を照射する場合は、紫外光を少なくとも10分以上照射させるとよい。温度を変化させる場合は、生理活性物質Dの至適温度から、5℃以上、好ましくは10℃以上異なる温度で処理するとよい。
【0044】
活性低下処理溶液として処理用バッファーを使用する場合、バッファー液ストック容器18に代えて活性低下処理溶液ストック容器を載置し、活性低下処理開始の指示と共に、液を供給する。これにより、バッファー液の供給と同様に活性低下処理を行うことができる。
【0045】
このような活性低下処理は、生理活性物質Dを固定化する前、後のいずれで行ってもよい。生理活性物質Dを固定化膜50Aに固定化した後で行うことが、生理活性物質Dの固定可能を損なわないため好ましい。その一方で、生理活性物質Dの固定化時に、生理活性物質Dと候補分子との結合部位に結合することがわかっている物質、例えば阻害剤を共存させることによって、特異結合部位を保護することができるため、このような物質を共存させる場合には、固定前又は固定化工程中に活性低下処理を行うこともできる。
【0046】
生理活性の低下は、候補分子の結合量又は生理活性物質Dの機能を測定することによって確認することができる。
【0047】
生理活性物質Dと候補分子との結合量は、バイオセンサー10を使用し、固定化膜50Aに固定化された生理活性物質Dに対する候補分子の結合量データG3を得ることによって容易に確認することができる。
その際、生理活性物質Dと候補分子それぞれの分子量から、以下の式にて理論最大結合量を算出する。
理論最大結合量=蛋白質固定量×(特異的に結合する化合物の分子量)/蛋白質分子量×(蛋白質1分子に対する該化合物の結合部位の数)
【0048】
次に、その化合物の蛋白質に対する結合量を測定し、以下の式より結合比率を算出する。この比率が100に近いほど、蛋白質の機能・活性が維持されていると考えることができる。
結合比率=(結合量測定値/理論最大結合量)×100
【0049】
生理活性物質Dの機能を測定する方法としては、酵素活性を測定する方法及びレセプター活性を測定する方法を挙げることができる。
【0050】
酵素活性の測定原理については蛋白質、酵素の基礎実験法(堀尾武一、山下仁平)第IV章に記載されている。また、検出方法としては(1)分光学的測定法、(2)蛍光法(3)電極法、(4)発光法等があり、例えば新生化学実験講座 蛋白質 V、酵素免疫測定法 第3版、エンザイムイムノアッセイ 生化学実験法等に記載されている方法等も使用することができる。
例えば、蛍光法により酵素活性を測定する場合には、酵素に特異的な基質(酵素による分解物のみが蛍光を発する基質)を反応させ、分解物の蛍光測定を行うころにより酵素活性を測定することができる。
【0051】
分光学的測定法により酵素活性を測定する場合には、基質と生成物との間に分光学的性質の差があることを利用して、その時間的変化を測定し、酵素反応の初速度を求めることで酵素活性を測定することができる。
電極法により酵素活性を測定する場合には、自動滴定装置を利用した方法で、酵素反応を含めて化学反応に伴って生成される酸あるいは塩基による試料溶液のpH変化を電気的に検出することで酵素活性を測定することができる。
【0052】
発光法により酵素活性を測定する場合には、抗体ないし抗原に酵素標識しておき、抗原抗体反応後、酵素に特異的な化学発光基質(酵素による分解物のみが化学発光する基質)を反応させ、分解物の化学発光測定することで酵素活性を測定することができる。
レセプター活性を測定する場合には、支持体上に固定されている1種類以上のレセプターまたはリガンドと抗原標識されたリガンドまたはレセプターを含む検体とを接触させた後に、支持体上に固定されている1種類以上のレセプターまたはリガンドに結合した抗原標識されたリガンドまたはレセプターと、該抗原に対する抗体(例えば、検出のための酵素で標識した抗体など)とを接触させて抗原抗体反応を行い、これにより結合した抗体の存在を検出することにより、検体中のリガンドまたはレセプターを検出することができる。
【0053】
本実施形態においては、生理活性物質Dを固定化し、その固定化量を測定すると共に、上記の方法を利用して蛋白質の機能、活性を数値化する。蛋白質の固定化量は、常に一定とは限らないので、下記の式により、一定の蛋白質量あたりの活性値を算出することが好ましい。
活性値=蛋白質活性値/蛋白質固定量
【0054】
候補分子の抽出には、予め設定されたしきい値を用いて行うことが好ましい。
このようなしきい値として、低活性時結合量データを用いた選別のときの上限値となる第1のしきい値を設定してもよい。この場合、このしきい値以下の低活性時結合量データを示す候補分子を抽出する。第1のしきい値よりも大きい候補分子は、生理活性物質Dに対して特異的な結合以上に結合する物質と考えられる。これにより、生理活性物質Dに対して非特異的に結合する候補分子を効率よく除外することができる。
【0055】
更に、第1のしきい値に加えて、活性時結合量データを用いた選別のときの下限値となる第2のしきい値を設定してもよい。この場合、このしきい値以上の活性時結合量データを示す候補分子を抽出する。第2のしきい値よりも小さい候補分子は、生理活性物質Dに対する結合量が不十分な物質と考えらえる。これにより、生理活性物質Dに対して特異的に充分に結合する候補分子を効率よく抽出することができる。
このように2つの2つのしきい値を設定することによって、生理活性物質Dに対して非特異的に結合する候補分子を除外すると共に、充分な結合量で特異的に結合する候補分子を効率よく抽出することができる。
【0056】
しきい値としては、結合量データとして得られた値をそのまま適用してもよく、結合量データの値を候補分子の分子量で除した値としてもよい。結合量は分子量に比例するため、結合量データを候補分子の分子量で除した値を用いたほうが、物質としての相対的な比較、選別において、より好ましい。
【0057】
次に、図9を参照して、活性時結合量データに対応した第1のしきい値と、低活性時結合量データに対応した第2のしきい値とをそれぞれ「5RU」及び「3RU」として設定した場合のバイオセンサー10でのスクリーニング処理について説明する。
【0058】
センサースティック30が測定部56へ搬送され、入力部64からスクリーニング開始の指示が入力されると制御部60では図9に示すスクリーニング処理が実行される。
ステップS100で、第1のしきい値「5RU」及び第2のしきい値「3RU」が入力されたか否かが判断される。ユーザによってそれぞれのしきい値が入力部64から入力されると、判断は肯定されてステップS102において、第1の結合量測定が実行され、ステップS104において測定結果が取得されるまで判断が否定される。結合量の測定は、候補分子ライブラリーから検討対象となっている最初の候補分子溶液を液体流路45へ供給させ、測定領域E1からの測定データG1と、参照領域E2からの参照データG2とを測定結果として取得することにより行われる。
【0059】
ステップS104において、測定結果としての測定データG1及び参照データG2が取得されると判断は肯定されて、ステップS106において、測定データG1を参照データG2で補正して結合量データG3としての活性時結合量データHnを算出し、候補分子に対応づけてメモリ60Dに記憶する。この活性時結合量データには、生理活性物質Dに対する候補分子の特異的結合に応じた特異的結合成分が含まれている。活性時結合量データHnの算出及び記憶が完了すると、ステップS108に移行し、次の候補分子があるか否かが判断される。
ステップS108では、図示しないセンサによって次の候補分子が感知されると、判断が肯定されてステップS102に移行し、次の候補分子に対して第1の結合量測定処理を実施させる。
【0060】
ステップS108において、次の候補分子が感知されない場合には判断は否定されてステップ110に移行し、活性低下処理を実行させる。
活性低下処理は、ランニングバッファーに代えて、調製された活性低下処理液を液体流路45へ供給させ、固定化膜50A上の生理活性物質Dと反応させることによって行われる。この処理によって、生理活性物質Dの候補分子に対する特異的な結合を低下させる。所定時間後に活性低下処理液の供給を停止させると共に所定時間ランニングバッファーを供給させて活性低下処理を終了させ、ステップS112に移行する。
【0061】
ステップS112では、活性時結合量データを取得した後の候補分子に対して第2の結合量測定処理を実行させる。
第2の結合量測定処理では、活性低下処理を行った生理活性物質Dを用いている以外は第1の結合量測定と同様に結合量測定を行い、ステップS114において、測定結果として測定データG1及び参照データG2が取得されるまで判断は否定される。測定結果が取得されると判断は肯定されてステップS116に移行し、結合量データG3としての低活性時結合量データLnを前記同様に算出する。低活性時結合量データLnでは、活性低下処理によって生理活性物質Dの結合活性が低下しているため、データに含まれる特異的結合成分は、活性時結合量データの値に含まれていたものよりも理論的に少なくなる。
【0062】
低活性時結合量データLnを算出すると、ステップS118において、同一候補分子の対応する活性時結合量データHnをメモリ60Dから読み取り、ステップS120において、活性時結合量データHnが第1のしきい値5RU以上か否かが判断される。
活性時結合量データHnが5RUよりも小さい場合には、判断は否定されてステップS122に移行する。一方、活性時結合量データHnが5RU以上の場合には、判断は肯定されてステップS124に移行する。
【0063】
ステップS124では、低活性時結合量データLnが第2のしきい値3RU以下か否かが判断され、3RUよりも大きい場合には判断は否定されてステップS122に移行する。ステップS122では、対象となっている候補分子を、生理活性物質Dに対して非特異的に結合し得る候補分子と判定して、抽出対象から除外し、ステップS128に移行する。
【0064】
一方、低活性時結合量データLnが3RU以下である場合には判断は肯定されてステップS126に移行する。ステップS126では、対象となっている候補分子を抽出すべき候補分子として判定し、ステップS128に移行する。
【0065】
ステップS128では、次の候補分子があるか否かを判断し、図示しないセンサが次の候補分子を感知すると判断は肯定されてステップS112に移行し、次の候補分子に対して第2の結合量測定の処理を実行させる。
一方、センサが次の候補分子を感知しないと判定は否定され、抽出工程において抽出された候補分子を表示部62に表示すると共にメモリ60Dをクリアして、処理を終了する。
【0066】
本実施形態のスクリーニング処理を実行することによって、3RUを超える低活性時結合量データを示す非特異的結合の高い候補分子を抽出対象から除外し、非特異的結合が低く、5RU以上の高い結合活性を示す候補分子を抽出することができる。この結果、生理活性物質Dに対して特異的に結合する物質についてのスクリーニングを、大量の候補分子に対して簡便に且つ効率よく行うことができる。
【0067】
図10には、候補分子毎に記憶された結合量測定の結果(活性時結合量データHn及び低活性時結合量データLn)を示すリストの一例が示されている。
このような候補分子に対して第1のしきい値3RU及び第2のしきい値5RUを用いてスクリーニングを行うと、候補分子No.000003及びNo.000005の2つが抽出される。特に、候補分子No.000002のような低活性時結合量データと活性時結合量データとの差が小さく、非特異的結合しやすいと考えられる候補分子を抽出対象から除外することができる。
【0068】
本実施形態では、第1及び第2のしきい値を用いて候補分子の抽出を行ったが、これに限定されない。
例えば、活性時結合量データHnと低活性時結合量データLnの差に相当する1のしきい値や、この差に相当するしきい値と、本実施形態で使用した第1のしきい値又は第2のしきい値とを組み合わせて使用し、候補分子の抽出を行ってもよい。しきい値の選択や、しきい値の組み合わせの選択は、スクリーニング対象となる候補分子や標的分子、或いはスクリーニングの絞り込み具合によって、ユーザによって適宜選択可能である。
【0069】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
なお、第2の実施形態を適用可能なスクリーニング装置としては、第1の実施形態で使用したバイオセンサー10をそのまま適用可能であるため、バイオセンサー10の構成についての説明を省略する。
本発明の第2の実施形態では、活性時結合量データを第1のしきい値と対比して候補分子を抽出し、抽出された候補分子に対してのみ第2の結合量測定処理を行い、第2のしきい値を用いて、生理活性物質Dに対して特異的に結合する候補分子を抽出する。
ここで第1のしきい値は、生理活性物質Dに対して結合量の高い候補分子を抽出すると共に、低活性時結合量データを得るための結合量測定の対象となる候補分子を抽出するものである。この結果、第2の結合量測定の測定対象の数を減らすことができるので、より短時間で候補分子のスクリーニングを行うことができる。
【0070】
以下に、図11を参照して、低活性時結合量データに対応した第1のしきい値と、活性時結合量データに対応した第2のしきい値とをそれぞれ「5RU」及び「3RU」として設定した場合のバイオセンサー10でのスクリーニング処理について説明する。
【0071】
センサースティック30が測定部56へ搬送され、入力部64からスクリーニング開始の指示が入力されると制御部60では図11に示すスクリーニング処理が実行される。
ステップS200で、第1のしきい値「3RU」及び第2のしきい値「5RU」が入力されたか否かが判断される。ユーザによってそれぞれのしきい値が入力部64から入力されると、判断は肯定されてステップS202に移行し、第1の結合量測定を実行させ、ステップS204において、測定結果としての測定データG1及び参照データG2が取得されるまで判断は否定される。
ステップS204において、測定結果としての測定データG1及び参照データG2が取得されると判断は肯定されて、ステップS206に移行し、測定データG1を参照データG2で補正して結合量データG3としての活性時結合量データHnを算出し、ステップS208に移行する。
【0072】
ステップS208では、第1の抽出工程として、活性時結合量データHnが第1のしきい値5RU以上か否かが判断される。5RUよりも小さい場合には判断は否定されてステップS210に移行し、対象となっている候補分子を抽出対象から除外し、ステップS216に移行する。
活性時結合量データHnが5RU以上の場合には判断は肯定されてステップS212に移行する。ステップS212では、対象となっている候補分子を抽出し、ステップS214では、活性時結合量データHnを、抽出された候補分子に対応づけてメモリ60Dに記憶する。活性時結合量データHnを記憶するとステップS216に移行する。
ステップS216では、次の候補分子があるか否かが判断され、次の候補分子が感知されると、判断が肯定されてステップS202に移行し、次の候補分子に対して第1の結合量測定を実行させる。
【0073】
ステップS216において、次の候補分子が感知されない場合には、判断は否定されてステップS218に移行し、所定の活性低下処理を実行させ、活性低下処理が終了すると、ステップS220において、第2の結合量測定処理を実行させる。この第2の結合量測定処理は、第1の抽出工程で抽出された候補分子のみを選択して実行される。
ステップS220で第2の結合量測定処理を実行させると、ステップS222において測定結果が取得されたか否かが判断され、測定結果が取得されると判断は肯定されてステップS224において、結合量データG3としての低活性時結合量データLnを算出する。
【0074】
低活性時結合量データLnを算出すると、ステップS226において、第2の抽出工程として、低活性時結合量データLnが第2のしきい値3RU以下か否かが判断される。
低活性時結合量データLnが3RUよりも大きい場合には、判断は否定されてステップS228に移行し、生理活性物質Dに対して非特異的に結合し得る候補分子と判定して抽出対象から除外し、ステップS232に移行する。
一方、ステップS226において、低活性時結合量データLnが3RU以下の場合には、判断は肯定されてステップS230に移行し、対象となっている候補分子を、生理活性物質Dに対して特異的に結合する抽出すべき候補分子として判定し、ステップS232に移行する。
【0075】
ステップS232では、次の候補分子があるか否かを判断し、次の候補分子を感知すると判断は肯定されてステップS220に移行し、次の抽出候補分子に対して第2の結合量測定処理を実行する。
一方、センサが次の候補分子を感知しないと判定は否定され、第2の抽出工程で抽出された候補分子を表示部62に表示すると共にメモリ60Dをクリアして、処理を終了する。
【0076】
本実施形態のスクリーニング処理を実行することによって、3RUを超える低活性時結合量データを示す非特異的結合の高い候補分子が除外され、非特異的結合が低く、5RU以上の高い結合活性を示す候補分子が抽出できる。この結果、生理活性物質Dに対して特異的に結合する物質についてのスクリーニングを、大量の候補分子に対して簡便に且つ効率よく行うことができる。
また、第2の結合量測定処理の対象となる候補分子は、抽出工程によって絞り込みによって抽出された少ない数の候補分子であるために、第2の結合量測定処理の数を減らすことができ、より短時間で効率よく生理活性物質Dに対して特異的結合する候補分子をスクリーニングすることができる。
【0077】
本発明の実施形態では、低活性時結合量データに対する第1のしきい値を3RUとし、活性時結合量データに対する第2のしきい値を5RUとしたが、これに限定されない。しきい値は、同一の値であっても異なる値であってもよく、候補分子又は生理活性物質Dの特性、或いは、要求される特異的結合の程度に応じてユーザが適宜設定することができる。
また本発明の実施の形態では、生理活性物質Dに特異的に結合する物質として抽出された候補分子を表示部62に表示してメモリ62Dをクリアしたが、これに限定されない。結合量測定処理を実行させたすべての候補分子の結合量データを候補分子と対応づけて記憶し、データとして蓄積させてもよい。
【0078】
更に、本発明の実施形態では、結合量測定処理を含めてスクリーニング処理としたが、抽出工程のみをスクリーニング処理としてもよい。この場合、結合量測定処理によって活性低下処理の前後で取得された結合量データをすべての候補分子に対応づけて結合量データリストを作成し、この結合量データリストを読み取ることによってスクリーニング処理を開始することができる。
【0079】
また、本発明の本実施形態では、生理活性物質Dを固定化膜50Aに対して固定化してから活性低下処理を行ったが、これに限定されない。用いられる生理活性物質D及び活性低下処理の種類によって、生理活性物質Dを固定化膜50Aに固定化する前に活性低下処理を行ってもよい。活性低下処理しない場合と、活性低下処理する場合の結合量データを比較する上で、生理活性物質Dの固定量は両者でほぼ同一であることが好ましいので、固定化した後に活性低下処理を行う方が好ましい。
【0080】
本実施の形態では、結合能に基づく活性低下処理前の結合量データを活性時結合量データとし、処理後の結合量データを低活性時結合量データとしたが、これに限定されない。活性時結合量データは、活性低下処理が未処理のものであってもよく、ある程度の処理を行ったものであってもよい。この場合には、少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上の活性を維持しているものについて活性時結合量データを得る。
【0081】
本発明の実施形態では、固定化膜50Aに固定化される標的分子として生理活性物質Dを使用し、液体流路45へ供給する候補分子として、生理活性物質Dに結合可能な有機又は無機の分子としたが、これに限定されず、生理活性物質Dを候補分子として、これに結合可能な有機又は無機の分子を標的分子としてもよい。
【0082】
なお、本発明の実施形態では、バイオセンサーとして、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、バイオセンサーとしては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーを用いた場合における、参照領域で得られる参照データを予めデータベース化して記憶しておき、記憶された参照データにより、測定された測定データを補正するようにすることもできる。
【0083】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【実施例】
【0084】
次に、上記実施形態で説明した誘電体ブロック42上への固定化膜50Aの作製及び作製された固定化膜50Aに対する生理活性物質Dの固定化と、固定化された生理活性物質Dに対する候補分子の結合について説明する。
【0085】
[実施例1]
(1)測定チップの作成
金属膜として50nmの金が蒸着された誘電体ブロックをModel−208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分間処理した後、エタノール/水(80/20:容量比)で溶解した16−ヒドロキシ−1−ヘキサデカンチオールの1.0mM溶液を金属膜に接触するように添加し、25℃で1時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
【0086】
次に、16−ヒドロキシ−1−ヘキサデカンチオールで被覆した表面に10重量(質量)%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウム及びジエチレングリコールジメチルエーテルの1:1混合溶液)を接触させ、25℃の振盪インキュベーター中で4時間反応を進行させた。その後、表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。次に、25重量%のデキストラン(T500,Pharmacia)水溶液40.5mlに4.5mlの1M水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面上に接触させた。次に振盪インキュベーター中で、25℃で20時間インキュベートした。表面を50℃の水で10回洗浄した。続いて、ブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させて、25℃の振盪インキュベーターで16時間インキュベートした。表面を水で洗浄し、その後同様のブロモ酢酸処理をさらに1回繰り返した。
【0087】
(2)蛋白質の固定化
以下に示す手順で、(1)で作成したヒドロゲル被覆測定チップにp38MAPキナーゼ(CALBIOCHEM社製、#559324)を固定化した。
まず、表1に記載の固定化バッファーを用いて、p38MAPキナーゼ200μg/ml、および表1に記載の阻害剤10μMを含む蛋白質溶液を調製する。ランニングバッファーは、以下の組成とした:50mMリン酸バッファー(pH7.2)/150mM NaCl/3.4mM EDTA。
【0088】
まず、ヒドロゲル被覆チップに、ランニングバッファーを添加し、ベースラインをとる。次に、1−エチル−2,3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(400mM)とN−ヒドロキシスクシンイミド(100mM)との混合液を添加し、15分間静置後、ランニングバッファーで洗浄する。次に、作成した蛋白質溶液を添加し20分間静置後、PBSバッファー(pH7.4)で洗浄する。更に、エタノールアミン・HCl溶液(1M,pH8.5)を添加し、15分静置後、ランニングバッファーで3回洗浄する。最初のベースラインからの信号変化分をp38キナーゼの固定量(RU)とする。
結果を表1に示す。固定化バッファーのpHが上がると、固定化量が低下し、pH6.0では固定できないことがわかる。
【0089】
【表1】

【0090】
(3)化合物の結合測定
蛋白質を固定化した測定チップ(試料E以外)を、市販の表面プラズモン共鳴測定装置にセットし、化合物1、2、3の結合測定を以下のようにして行った。ここで、化合物1は、p38MAPキナーゼの活性を阻害することが知られている化合物である。一方、化合物2、3は、p38MAPキナーゼの活性を阻害しない化合物である。
【0091】
以下の組成のランニングバッファーを作成する:50mMリン酸バッファー(pH7.2)/150mM NaCl/3.4mM EDTA/DMSO 5容量%。
【0092】
次に、ランニングバッファーに表2に記載の化合物1、2、3が10μMになるように溶解する。次に、ヒドロゲル被覆チップにランニングバッファーを添加し、ベースラインをとる。次に、調製した化合物溶液を添加して3分間静置後の信号変化分を、各化合物の結合量(RU)とする。最後にランニングバッファーで洗浄する。
【0093】
結果を表2に示す。ここで、理論最大結合量とは、蛋白質と化合物が1:1で結合したときの結合量を示す。p38MAPキナーゼの分子量は41,000、化合物1の分子量は377である。
理論最大結合量=蛋白質固定量×化合物分子量/蛋白質分子量
【0094】
化合物1の結合比率は、以下の式から算出している。化合物1は、p38MAPキナーゼの活性部位特異的に結合することがわかっているため、この比率が100に近いほど、蛋白質の活性が維持されていると考えられる
結合比率=(結合量測定値/理論最大結合量)×100
【0095】
【化1】

【0096】
【表2】

【0097】
表2から、固定化pHが高いほど活性の低下が小さく、また、固定化時に阻害剤を存在させると活性低下が小さくなることがわかる。
【0098】
p38MAPキナーゼに特異的に結合する化合物1は、p38MAPキナーゼの活性が低下するほど、その結合量は小さくなっている。一方、化合物2は、p38MAPキナーゼの活性が低下しても結合量は低下しない。化合物2は、p38MAPキナーゼに非特異的に結合しているものと推測される。化合物3は、いずれの試料でも、ほとんど結合はみられない。
ここで、スクリーニングを考える場合、試料Dのような状態だけで判断すると、化合物1と化合物2は、それぞれ24.0RU及び21.5RUとなって両者に差がほとんどなく、共に抽出対象(ヒット化合物)と判断してしまう。試料Aのように、蛋白の活性を低下させた状態でデータを取得することにより、化合物2は非特異的に吸着するものと判断することができる。
【0099】
[実施例2]
蛋白質を固定化した後に、蛋白質の活性を低下させる方法の具体例を以下に示す。
実施例1の試料Dと同様に化合物1を共存させてp38MAPキナーゼを固定化した後に、表3に示す活性低下処理を行った。さらに、実施例1と同様の方法で、化合物1の結合測定を行い、結合比率を算出した。結果を表3に示す。表3に示されるように、このような簡便な処理で、p38MAPキナーゼの結合活性を低下させることができる。
【0100】
【表3】

【0101】
その後、第1のしきい値として例えば20RU、第2のしきい値として5RUを設定することにより、20RU以上で且つ5RU以下の結合量データを示す化合物1を抽出することができる。一方、化合物2については、同一のスクリーニング処理により、第1のしきい値に基づいて抽出されたとしても、第2のしきい値に基づいて除外される。
【0102】
従って、p38MAPキナーゼに対して特異的に結合する候補分子をスクリーニングする場合に、酢酸バッファーによる活性低下処理を行って低活性時結合量データを取得することによって、p38MAPキナーゼに対して非特異的に結合する候補分子と特異的に結合する候補分子とを簡便に選別することができる。
このように、活性低下処理の前の結合量データと活性低下処理後の結合量データとの差が大きい候補分子を、p38MAPキナーゼに対して特異的に結合する物質として効率よく且つ簡便に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態にかかるバイオセンサーの全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるセンサースティックの斜視図である。
【図3】本実施形態のセンサースティックの分解斜視図である。
【図4】本実施形態のセンサースティックの1の液体流路部分の断面図である。
【図5】本実施形態のセンサースティックの測定領域、参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図6】(A)〜(C)は本発明の実施形態にかかる液体供給部を構成するピペット部の側面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる制御部とその周辺の概略ブロック図である。
【図9】本発明の第1の実施形態にかかるスクリーニング処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態にかかる候補分子リストの一例である。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかるスクリーニング処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0104】
10 バイオセンサー
40 センサースティック
50 金属膜
50A 固定化膜
54 光学測定部
60D メモリ
60 制御部
62 表示部
64 入力部
D 生理活性物質
E1 測定領域
E2 参照領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニング方法であって、
生理活性を低下させる活性低下処理を行っていない前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して、活性時結合量データを得る工程と、
生理活性を低下させる活性低下処理を行った前記標的分子が固定されている測定領域に、前記候補分子を供給して、低活性時結合量データを得る工程と、
前記活性時結合量データと前記低活性時結合量データとの間に所定の差がある候補分子を抽出する工程と、
を含むことを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項2】
前記候補分子を抽出する工程が、予め設定されたしきい値以下又はこれ未満の低活性時結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記候補分子を抽出する工程が、予め設定されたしきい値以上又はこれを超える活性時結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項2記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記活性低下処理を、活性時結合量データを取得した後の標的分子に対して行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記活性低下処理を、固定化膜に固定化した後の前記標的分子に対して行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記固定化膜が金属膜上に形成され、活性時結合量データと低活性時結合量データが、片面に前記固定化膜が形成された金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して得られたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記標的分子が固定されていない固定化膜が形成された金属膜に前記候補分子を供給し、前記光ビームを前記標的分子が固定されていない金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰量を参照データとして、前記活性時結合量データと低活性時結合量データとを得ることを特徴とする請求項6記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニングプログラムであって、
生理活性を低下させる活性低下処理を行っていない前記標的分子が固定化されている測定領域に供給された前記候補分子と、前記標的分子と、の結合量に基づいて活性時結合量データを算出するステップと、
前記標的分子の生理活性を低下させる活性低下処理を行った前記標的分子が固定化されている測定領域に供給された前記候補分子と、前記標的分子と、の結合量に基づいて低活性時結合量データを算出するステップと、
前記活性時結合量データと低活性測定データとの間に所定の差を示す候補分子を抽出するステップと、
をコンピュータに実行させるスクリーニングプログラム。
【請求項9】
前記活性時結合量データを算出するステップの後に、当該標的分子の生理活性を低下させるための活性低下処理用溶液を当該標的分子に対して供給する活性低下処理を実行させるステップと、
前記活性低下処理が完了した後に、前記低活性時結合量データを算出するステップへの移行を指示するステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項8記載のスクリーニングプログラム。
【請求項10】
前記抽出するステップが、前記低活性時結合量データを用いて候補分子を選別するために入力されたしきい値と低活性結合量データとを対比させて、しきい値以下又はこれ未満の低活性時結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項8又は9記載のスクリーニングプログラム。
【請求項11】
前記抽出するステップが、前記活性時結合量データを用いて候補分子を選別するために入力されたしきい値と活性結合量データとを対比させて、しきい値以上又はこれを超える活性結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項10記載のスクリーニングプログラム。
【請求項12】
前記活性時結合量データと低活性時結合量データが、片面に前記固定化膜が形成された金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して得られたものであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載のスクリーニングプログラム。
【請求項13】
前記標的分子が固定されていない固定化膜が形成された金属膜に前記候補分子を供給し、前記光ビームを前記標的分子が固定されていない金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰量から取得された参照データに基づいて、前記活性時結合量データと低活性時結合量データとを得ることを特徴とする請求項12記載のスクリーニングプログラム。
【請求項14】
標的分子が固定された固定化膜で構成された測定領域に検討対象である候補分子を供給し得られる標的分子と候補分子との結合量データを用いて、特定の候補分子を選別するスクリーニング装置であって、
前記測定領域に候補分子を供給して、前記結合量データを取得する測定手段と、
活性低下処理液を前記測定領域に供給して、前記標的分子の生理活性を低下させるための活性低下処理手段と、
前記測定手段から取得された前記活性低下処理を行っていない標的分子に対する候補分子の活性結合量データと、前記活性低下処理後の低活性標的分子に対する候補分子の低活性時結合量データを、候補分子毎に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記活性時結合量データと低活性測定データとを間に所定の差がある候補分子を抽出する抽出手段と、
を備えたスクリーニング装置。
【請求項15】
前記抽出手段が、入力されたしきい値以下又はこれ未満の低活性時結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項14記載のスクリーニング装置。
【請求項16】
前記抽出手段が、入力されたしきい値以上又はこれを超える活性時結合量データを示す候補分子を抽出するものであることを特徴とする請求項15記載のスクリーニング装置。
【請求項17】
前記固定化膜が金属膜上に形成され、活性時結合量データと低活性時結合量データが、片面に前記固定化膜が形成された金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰を利用して得られたものであることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1項記載のスクリーニング装置。
【請求項18】
前記標的分子が固定されていない固定化膜が形成された金属膜に前記候補分子を供給し、前記光ビームを前記標的分子が固定されていない金属膜の前記固定化膜が形成されていない側へ光ビームを入射させることにより発生する全反射減衰量から取得された参照データに基づいて、前記活性時結合量データと低活性時結合量データとを得ることを特徴とする請求項17記載のスクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−163284(P2007−163284A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359619(P2005−359619)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】