説明

スケーラブルなPETおよびSPECTシステムのための構成ブロックとしての自律検出器モジュール

核撮像システムにおいてシンチレーション・イベントを検出するとき、下流での処理を軽減するために、タイムスタンプ付けおよびエネルギー・ゲーティングの処理が自律的検出モジュール(ADM)(14)に組み込まれる。各ADM(14)は検出器器具(13)に着脱可能式に結合され、シンチレーション結晶アレイ(66)およびシリコン光電子増倍管などのような対応する光検出器(単数または複数)(64)を有する。光検出器(64)はADM(14)中またはADM(14)上の処理モジュール(62)に結合され、処理モジュールがエネルギー・ゲーティングおよびタイムスタンプ付けを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核撮像システム、特に陽電子放出断層撮影(PET: positron emission tomography)撮像および/または単一光子放出計算機断層撮影(SPECT: single electron emission computed tomography)撮像に格別な用途を見出すが、他の核撮像システムなどにも用途を見出しうる。しかしながら、記載された技術は、他の撮像システム、他の撮像シナリオ、他の画像解析技術などにも用途を見出しうることは理解されるであろう。
【背景技術】
【0002】
PETおよびSPECTシステムのための放射検出器は、シンチレータ/光検出器の組み合わせに基づくか、直接変換材料を使う。いずれの場合にも、記録されたエネルギー投下(deposition)の実質的な処理が、シンチレーション・イベントのエネルギーおよびタイムスタンプを導出するために実行される必要がある。たとえば、多くのガンマ線はコンプトン散乱を受け、複数の検出要素に対してエネルギーを配分する。個々のエネルギー投下は、読み出し電子系によって収集されて、結果として得られるイベントを形成し、PETでは、このいわゆる「単一」イベントにタイムスタンプが付与される(たとえばエネルギー・クラスター化およびタイムスタンプ付け)。エネルギー・クラスター化およびエネルギー・ゲーティングののち、イベントは、最も確からしい第一の相互作用素子としての検出素子に割り当てられることができる。SPECT検出器の場合、このイベントは再構成のために直接使用されることができ、一方、PETについては、二つのイベントの間の同時性が、それらのイベントを再構成のために使うのに先立って見出される。
【0003】
古典的なPETおよびSPECTスキャナでは、データ処理は中央集中された仕方で行われる。シンチレータ/光検出器の組み合わせの出力は、エネルギー弁別、イベント・クラスター化、エネルギー・ゲーティング、ピクセル同定およびタイムスタンプ付けを実行する電子系枠箱(たとえば、処理電子回路を収容するキャビネット)によって処理される。半導体光検出器または直接変換器を使った検出器は、専用のフロントエンド電子回路(たとえば、前置増幅器およびアナログ‐デジタル変換器のようなASIC)を使うことによって、該検出器近くに集中されたより多くの読み出し電子回路を用いる。
【0004】
しかしながら、古典的なソリューションは、検出器モジュールを全体システムの自律的なスケーラブルな構成ブロックとして動作させるのに十分な電子回路を一つの検出器モジュールに統合することはしない。一般に、これは考えているPETまたはSPECTシステムの厳密な幾何学的構造に合わせて調整される読み出し電子回路につながる。したがって、幾何学的構造に対するわずかな変化でさえ、読み出し電子回路の大きな部分を変更することなく実装するのは難しいことがある。さらに、個々のイベントの遅いクラスター化は、エネルギー・ゲーティングが処理チェーンのはるか先で適用されることができるだけなので、読み出し電子系によって処理されねばならない高いデータ・レートにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、上述した問題およびその他を克服するスケーラブルな核検出器アーキテクチャを提供するために、核検出器モジュール中に処理電子系を含めるための新しい、改善されたシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある側面によれば、核スキャン検出器システムは、複数の核検出器を有する核スキャナと、各検出器に着脱可能式に結合された複数の自律的検出器モジュール(ADM: autonomous detector modules)とを含む。各ADMは、一つまたは複数のシンチレーション結晶を有するシンチレーション結晶アレイと、前記シンチレーション結晶アレイにおけるシンチレーション・イベントを検出する一つまたは複数の光検出器と、検出された各シンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、コンプトン散乱を受けたガンマ線を弁別するようエネルギー・ゲーティング・プロトコルを実行し、タイムスタンプ付けされたエネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力する処理モジュールとを含む。
【0007】
もう一つの側面によれば、核撮像システムにおいて下流でのデータ処理需要を削減する方法が、一つまたは複数の自律的検出器モジュール(ADM)においてシンチレーション・イベントを検出し、各ADM上でのモジュール・レベルで前記シンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、モジュール・レベルで前記シンチレーション・イベントに対してエネルギー・ゲーティング技法を実行し;タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力することを含む。本方法はさらに、前記イベント情報を処理して3D画像ボリュームに再構成することを含む。
【0008】
もう一つの側面によれば、自律的検出器モジュール(ADM)は、シンチレーション結晶アレイと、前記シンチレーション結晶アレイの全部または一部におけるシンチレーション・イベントを検出する少なくとも一つの光検出器と、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、検出されたシンチレーション・イベントに対してエネルギー・ゲーティング技法を実行し、タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力する処理モジュールとを含む。前記少なくとも一つの光検出器は、第一の側では前記シンチレーション結晶アレイの全部または一部に、第二の側ではコネクタに結合される。前記コネクタは、前記少なくとも一つの光検出器を、前記処理モジュールに結合されているプリント回路基板に着脱可能式に結合する。
【発明の効果】
【0009】
一つの利点は、下流でのデータ処理のオーバーヘッドが削減されるということである。
【0010】
もう一つの利点は、置換可能かつ交換可能な検出器モジュールを使った検出器アーキテクチャのスケーラビリティにある。
【0011】
本発明のさらなる利点は、以下の詳細な説明を読み、理解すれば当業者には理解されるであろう。
【0012】
本発明は、さまざまなコンポーネントおよびコンポーネント配列ならびにさまざまなステップおよびステップ配列の形を取りうる。図面は、さまざまな側面を例解する目的だけのためであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】複数の検出器をもつ核スキャナ(たとえばPETまたはSPECTスキャナ)を有する核撮像システムであって、各核スキャナが、エネルギー・ゲーティングされた単独シンチレーション・イベントを生成または検出するために必要とされる処理電子系のすべてを組み込む自律的検出器モジュール(ADM)のアレイを含む、核撮像システムを示す図である。
【図2】本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、ADMおよびそのさまざまなコンポーネントを示す図である。
【図3】検出される単独イベントのモジュール・サイズへの依存性を示すグラフである。
【図4】本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、ADMの使用によって容易にされる可能なPETシステム・アーキテクチャを示す図である。
【図5】本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、下流でのデータ処理要求を削減するために、検出されたシンチレーション・イベントを下流で処理するのではなく、検出器モジュール・レベルでシンチレーション・イベントのタイムスタンピングおよびエネルギー・ゲーティングを実行する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、複数の機械的検出器器具(fixture)(たとえば検出器ヘッド)13をもつ核スキャナ12(たとえばPETまたはSPECTスキャナ)を有する核撮像システム10を示している。機械的検出器器具のそれぞれは、エネルギー・ゲーティングされた単独シンチレーション・イベントを生成または検出するために必要とされる処理電子系のすべてを組み込む自律的検出器モジュール(ADM)14のアレイを含んでいる。ADMは、システム設計を単純化し、種々の核スキャナ幾何学的構造の簡単な実装を容易にするフルにスケーラブルな核スキャナ・アーキテクチャを提供することを容易にする。さらに、ADMは、下流での処理電子系におけるより低いデータ・レートを容易にし、特に計数率が高い用途に適用可能にする。
【0015】
複数の検出器器具13は、被験体台18上に位置された被験体または患者16を撮像するために、スキャナ12の検査領域のまわりに位置される。各ADM14は、複数の入出力(I/O)ピンまたはコネクタを含む。該複数の入出力(I/O)ピンまたはコネクタには、ADMに電力を提供するための電力接続20、タイムスタンプ生成を容易にするクロック接続22、ADMを構成設定する際に経由する構成設定接続24およびシンチレーション・イベント・データが出力されるときに経由する出力接続26が含まれる。ある実施形態では、これらのI/Oコネクタは、単独のコネクタまたはバスに束ねられる。こうして、ADMは、検出器ハウジング内で、単独シンチレーション・イベントを生成または検出するための処理電子系の完全なセットを含む。これは、電源により給電され、システム・クロックおよび構成設定ポートを含み、エネルギー・ゲーティングされた単独シンチレーション・イベントを出力する自律的モジュールを提供することを容易にする。このようにして、ADMは、PETおよびSPECT検出器13のためのスケーラブルな構築ブロックを提供する。
【0016】
SPECT撮像では、投影画像表現は、検出器上の各座標で受領される放射データによって定義される。SPECT撮像では、コリメータが、放射が受領される射線(ray)を定義する。PET撮像では、検出器出力は、二つの検出器上での同時放射イベントについてモニタリングされる。検出器の位置および配向ならびに同時放射が受領される検出器面上での位置から、同時イベント検出点間の射線または同時計数線(LOR: line of response)が計算される。この射線によって定義される線沿いで、放射イベントが発生がしたことになる。PETおよびSPECTの両方において、複数の角度配向の検出器の放射データがデータ・メモリ30に記憶され、再構成プロセッサ32によって関心領域の体積画像表現に再構成され、それが体積画像メモリに記憶される。
【0017】
PETでは、ADM 14によって検出されるシンチレーション・イベント(たとえば一つまたは複数のシンチレーション結晶とのガンマ線相互作用)は、タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされ(たとえば、検査された被験体でコンプトン散乱を受けたガンマ線などに対して弁別するため)、同時性検出(coincidence detection)コンポーネント28に出力される。同時性検出コンポーネント28はタイムスタンプ付けされたシンチレーション・イベント情報を解析して、核スキャンの間の被験体16内の共通する対消滅イベントに対応するシンチレーション・イベント対を同定する。データ・メモリ30は、生のシンチレーション・イベント情報、タイムスタンプ情報および/または他の取得された核スキャン・データを、同時性検出情報などとともに記憶する。再構成プロセッサ32は、核スキャン・データを一つまたは複数の核画像に再構成し、核画像は画像メモリ34に記憶され、ユーザー・インターフェース36上でレンダリングされる。ユーザー・インターフェースは、一つまたは複数のプロセッサ38(たとえばデータ・プロセッサ、ビデオ・プロセッサ、グラフィカル・プロセッサなど)およびメモリ40を含み、これらが、ディスプレイ42上でユーザーに対して核出力画像を出力することおよびユーザー入力を受領/処理することを容易にする。
【0018】
各ADM 14は、シンチレータおよび光検出器のアレイ(図1には示さず)を、前記情報処理の一部を実行する適切な回路とともに含む。特に、検出されたシンチレーション・イベントについてのエネルギー窓ゲーティングおよびタイムスタンプ付け機能が各ADMにおいて実行される。これは、ガンマ線が検査対象中で一回または複数回のコンプトン散乱を受けたイベントを除去するという利点がある。この除去は、モジュール・レベルで行われるので、さらなる処理のためにバス線に沿って送られるタイムスタンプ付けされたイベントの数を大幅に減らす。この機能は、下流のコンポーネントに対する処理負荷を著しく軽減する。特に、下流のコンポーネントは、下流でのタイムスタンプおよび/またはゲーティング処理を必要とすることなく、同時性検出および再構成を含むよう合理化されうる。
【0019】
ある実施形態では、ADM処理回路は、シンチレータ・アレイ内でのコンプトン散乱のための補正回路を含む。シンチレータ材料はガンマ放射に対して有限の阻止能をもつので、ガンマ線は時にそのエネルギーを複数のシンチレータ結晶において投下する。モジュールが小さすぎる場合、コンプトン散乱された放射の有意な部分が部分的に二つ以上の異なるモジュールに投下されることがありえ、エネルギー・ゲーティングがモジュール・レベルで行われるという事実のため、失われてしまうことがありうる。したがって、モジュールのサイズは、モジュールのサイズと、失っても我慢できるイベントの割合との間の妥協をなす。サイズは、用いられるシンチレータの密度および放射阻止能に依存する。コンプトン散乱された放射の約97%は、正ケイ酸ルテチウムイットリウム(LYSO: Lutetium Yttrium Orthosilicate)または正ケイ酸ルテチウム(LSO: Lutetium Orthosilicate)またはそれらの変形(たとえばセリウムをドープされた変形など)をもつ7×7cm2のモジュールにおいて回収できる。10×10cm2モジュールのようなより大きなモジュールでは、ランチウム・ブロミド(LaBr: Lanthium Bromide)のようなそれほど密度の高くないシンチレータを用いることができる。ゲルマン酸ビスマス(BGO: Bismuth Germanate)シンチレータのようなより高い密度のシンチレータは、4×4cm2モジュールのようなより小さな素子アレイを用いることができる。一般に、モジュールが小さいほど、各モジュールについて必要とされる処理能力は少なくなるが、失われうるデータは多くなる。
【0020】
ある実施形態では、ADM 14は2×2または4×4のモジュールのように、より小さな有効モジュールに分割可能である。シンチレータ/検出器の組み合わせは、シンチレータと検出器との間の光ガイドまたは一対一結合を含むアンガー(Anger)論理構成を含むことができる。別の実施形態では、各ADMは、シンチレータおよびダイオードの配置ならびに相互作用の深さを測定するためのオンボードの処理回路を含む。さらに別の実施形態では、オンモジュール回路は、データ補正テーブル、バッファ・データなどを格納しうるフラッシュメモリを含む。さらに別の実施形態では、検出器素子および処理電子系は同じPCBの二つの側を共有する。
【0021】
標準化されたADMの使用により、検出器モジュールは事前較正済みのADMで置換できる。これは、スキャナを較正し直す必要性を軽減する。たとえば、ADMが不良だと判定される(たとえばADMからの信号が貧弱であるまたは欠如していることなどに基づいて)場合、不良ADMについて技師などに注意喚起するために故障信号が送られる。すると技師は故障ADMを新しい事前較正済みのADMで置き換える。さらに、標準化されたADMの使用はスキャナ設計を容易にする。これはまた、種々の感度および空間的解像度を達成するための、シンチレータおよび検出器の種々のサイズをもつモジュールの開発を容易にする。標準化モジュールのアプローチは、異なるサイズのモジュールが同じスキャナ内で使用できるようにする。同様に、スキャナ内のモジュールが、解像度を変えるために、再較正なしにスワップ・アウトされることができる。
【0022】
図2は、本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、ADM 14およびそのさまざまなコンポーネントを示す図である。ADMは、プリント回路基板(PCB)62上に処理モジュール60(たとえば一つまたは複数のプロセッサおよび関連付けられたメモリ)を含む。処理モジュール60には、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、ゲーティングするために、一つまたは複数の現場プログラム可能なゲート・アレイ(FPGA: field-programmable gate array)などが格納されている。追加的または代替的に、処理モジュールは、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、ゲーティングするために、一つまたは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)を有する。追加的または代替的に、タイムスタンプ付け回路は、光検出器に統合され、光検出器がタイムスタンプのためのデジタル値と、ガンマ・ヒットのエネルギーとを、処理電子系に出力する。
【0023】
シリコン光電子増倍管(SiPM: silicon photomultiplier)、アバランシュ・フォトダイオード(APD: avalanche photodiode)などのアレイまたはタイルのような複数の半導体光検出器64が、シンチレーション結晶アレイ66のそれぞれの部分に結合される。図2では、各光検出器が結晶の8×8セクタに結合され、四つの図示されたタイルが組み合わさって16×16の結晶アレイ66を形成する。各光検出器64はまた、光検出器64をPCB 62に、よって一つまたは複数のASICおよび/またはFPGAを含む処理モジュール60に接続するコネクタ68に結合されている。あるいはまた、検出器素子および処理電子系は同じPCBの二つの側を共有する。各タイルのシンチレータに面する面はエッジのできるだけ近くまでSiPMまたはAPDで充填される。このようにして、それらのタイルにわたった一貫したピクセル・サイズおよび周期性を維持しつつ、タイルが密にパックされることができる。正方形グリッドで示しているが、これらのタイルはオフセットされることができる。たとえば、オフセットされた行または列である。
【0024】
エネルギー・クラスター化(たとえば単一のガンマ光子からの複数のシンチレーション・イベントの検出および総合)がモジュール・レベルで実行されるので、エネルギー・ゲーティングもモジュール・レベルで実行される。患者または被験体サイズに依存して、これは、下流の電子系によって処理されるべきデータ・レートの5倍ないし10倍の削減を容易にする。モジュールのデータ出力は、相互作用結晶の同定情報(たとえばシンチレーション・イベントが検出された一つまたは複数の結晶の識別情報または座標)、エネルギーおよびタイムスタンプ情報を含む、イベントを特徴付ける完全な情報を与える。したがって、すべての個々のADMの出力は、単一の同時性検出回路に挿入されることができ(たとえばPETについて)、あるいは再構成のために直接使われることができる(たとえばSPECTについて)。
【0025】
ある実施形態では、個々の光検出器64(およびモジュールの結晶アレイ66のその関連付けられたセクタ)は、ADM 14内で個々に置換されることができる。たとえば、検出器64が故障した場合に光検出器64を交換のために取り外し可能にするため、コネクタ68は、PCB 62を通じた処理モジュール60への電気的接続および該PCBへの機械的接続の両方を提供できる。追加的または代替的に、各ADM 14はその検出器13(図1)に着脱可能に結合され、それにより特定のADMを取り外して交換することができ、検出器上のADMのアレイにおけるすべてのADMが機能することを保証することができる。
【0026】
もう一つの実施形態では、変化のある幾何学的構造および/または感度の検出器表面を生成することを容易にするために、異なる複数のサイズのADMが所与の検出器上で用いられる。
【0027】
もう一つの実施形態では、個々のモジュールからの読み出しが一致検性出電子回路(図示せず)に与えられる。近隣ADMの処理モジュールは、それらのモジュールが、二つ以上の近隣モジュールでコンプトン・イベントが検出されうるほど十分小さいとき(たとえば8×8の結晶アレイまたは他の何らかの比較的小さなアレイ・サイズ)、どの処理モジュールがコンプトン型データを処理するかを決定するよう、最近接近傍型通信プロトコルを用いることができる。
【0028】
さらにもう一つの実施形態では、各処理モジュール60は、シンチレーション・イベント・データを処理するために一つまたは複数の補正テーブルが格納されたフラッシュ・メモリ(図示せず)を含む。補正テーブルは、コンプトン散乱などを考慮に入れるのを容易にする。
【0029】
図3は、検出された単独イベントの、モジュール・アレイ・サイズへの依存性を示すグラフ80を例示している。このグラフは、4.1mmピッチをもつ4×4mm2ピクセルLYSOシンチレータ結晶アレイについて、ピクセル当たりの検出されたシンチレーション・イベントの割合を、ピクセル読み出し面積の関数としてプロットしたものを示す。より小さなモジュールについては、近隣のモジュールへのコンプトン散乱のため単独イベント検出感度が損なわれる。約7×7cm2の好適なモジュール・サイズをなす16個×16個の結晶のモジュール・アレイ・サイズについては、近隣モジュールへのコンプトン散乱のために失われる全単独イベントはたった3%である。
【0030】
エネルギー・ゲーティングはADMにおいて実行されるので、近隣モジュールへのコンプトン散乱がシステム感度の損失につながらないことを保証することが望ましい。システム・シミュレーション・グラフ80は、16×16結晶(たとえばそれぞれ4×4mm2)のモジュール・サイズについては、近隣モジュールへのコンプトン散乱のために失われる全単独イベントはたったの約3%である。これは、7×7cm2のモジュール・サイズが好適なモジュール・サイズをなすことを示している。
【0031】
一般に、モジュール・サイズはシンチレーション物質密度の関数である。たとえば、LYSOまたはLSOシンチレーション物質を使うとき、16×16の結晶アレイが用いられてもよい。LaBrシンチレーション物質を使うときは、24×24の結晶アレイが用いられてもよい。もう一つの例では、BGOシンチレーション物質が使われるときは、8×8の結晶アレイが用いられる。結晶アレイ・サイズの上記の例は例示的な性質のものであり、シンチレーション密度が増すにつれて選ばれるモジュール・サイズを小さくできることを例解することを意図したものであることは理解されるであろう。
【0032】
図4は、本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、ADM 14の使用によって容易にされる可能なPETシステム・アーキテクチャ100を示している。同時性検出回路28は、複数の検出器モジュール14からエネルギー・ゲーティングされた単独イベント・データを受け取る。エネルギー・ゲーティングはモジュール・レベルで行われるので、同時性検出回路に入力されるデータ・レートは、古典的なアーキテクチャに比べ、(患者サイズに依存して)5ないし10倍小さくなる。ひとたび同時性検出が実行されたら、対にされたエネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント・データが再構成プロセッサ32に与えられ、再構成プロセッサ32がユーザーに対して表示するための解剖画像を再構成する。
【0033】
図5は、本稿に記載される一つまたは複数の側面に基づく、下流でのデータ処理要求を軽減するための、検出されたシンチレーション・イベントを下流で処理するのではなく、検出器モジュール・レベルでシンチレーション・イベントのタイムスタンプ付けおよびエネルギー・ゲーティングを実行する方法を示している。90では、シンチレーション・イベントがADM 14において検出される。92では、シンチレーション・イベント情報がモジュール・レベルで、たとえばADM内のプロセッサ・モジュールに含まれるタイムスタンプ付け回路によって、タイムスタンプ付けされる。94では、シンチレーション・イベントはモジュール・レベルでエネルギー・ゲーティングされる(たとえばシンチレーション・イベントが検出されたADMによって)。96では、タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報が、処理および/または再構成のために出力される。ADMにおいてシンチレーション・イベント情報にタイムスタンプ付けおよびエネルギー・ゲーティングを行うことにより、これらの処理動作が下流の処理作業フローから除去され、それにより再構成スピードが増す。98では、タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報が、3D画像ボリュームに再構成される。
【0034】
ある実施形態では、本方法はさらに、3D画像ボリュームを再構成するのに先立って、シンチレーション・イベントの対応する諸対を同定するために、出力シンチレーション・イベント情報に対して同時性検出アルゴリズムを実行することを含む。
【0035】
もう一つの実施形態では、本方法は、ADMが故障していることを判別し(たとえば該ADMからの信号の欠如を検出することにより、あるいは他の任意の好適な仕方で)、技師に一つまたは複数の故障ADMについて注意喚起する故障信号を送り出すことを含む。すると技師は、故障ADMを新しい、事前較正済みのADMと交換できる。
【0036】
記載されたシステムおよび方法は、PETおよびSPECT検出器に適用されることができる。フルにスケーラブルなアーキテクチャは、簡略化されたシステム設計を可能にし、スキャナの幾何学的な設計自由度を容易にする。これはひいては、下流の電子系によって扱われる必要のあるデータ・レートの劇的な削減につながる。特に高計数率の用途については、記載されるシステムおよび方法は、高バンド幅(high-bandwidth)の処理電子系の必要性を緩和する。
【0037】
さらに、記載される方法は、プロセッサ(単数または複数)によって実行されるコンピュータ実行可能な命令としてコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。
【0038】
本発明についていくつかの実施形態を参照して記述してきた。以上の詳細な説明を読み、理解すれば他の者にも修正や変更が思いつくことがありうる。本発明は、付属の請求項およびその等価物の範囲内にはいる限り、そのようなすべての修正および変更を含むものと解釈されることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核スキャン検出器システムであって:
複数の核検出器器具を有する核スキャナと;
各検出器器具に着脱可能式に結合された一つまたは複数の自律的検出器モジュール(ADM)とを有しており、各ADMは:
一つまたは複数のシンチレーション結晶を有するシンチレーション結晶アレイと;
前記シンチレーション結晶アレイの個別のセクタにおけるシンチレーション・イベントを検出する一つまたは複数の光検出器と;
検出された各シンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けし、コンプトン散乱されたイベントを同定するエネルギー・ゲーティング・プロトコルを実行し、タイムスタンプ付けされエネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力する処理モジュールとを含む、
システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって:
前記複数のADMからのタイムスタンプ付けされエネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を受領し、被験体内での単一の対消滅イベントに対応する検出されたシンチレーション・イベントの対を同定する同時性検出コンポーネントをさらに含む、システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムであって:
同定されたシンチレーション・イベントの対から被験体の画像ボリュームを再構成する再構成プロセッサと;
再構成された画像ボリュームを記憶する画像メモリと;
画像ボリュームが閲覧者に対して表示されるディスプレイとをさらに含む、
システム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムであって、各ADMが:
前記ADMが電力を受け取るために経由する電力コネクタと;
前記ADMが、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けするためにマスター・クロックからのタイミング情報を受け取るために経由するクロック・コネクタと;
セットアップの際にADMが構成設定される際に経由する構成設定コネクタと;
ADMがタイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を送り出す際に経由する出力接続とを含み、
これらの接続およびガントリー上の対応するコネクタがプラグ‐ソケットの関係をもつ、
システム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムであって、前記シンチレーション結晶アレイが、約3×3cm2ないし約16×16cm2の範囲の寸法をもつ、システム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムであって、前記シンチレーション結晶が:
前記シンチレーション結晶アレイが約3×3cm2ないし約6×6cm2の範囲の寸法をもつとして、ゲルマン酸ビスマス(BGO);または
前記シンチレーション結晶アレイが約3×3cm2ないし約8×8cm2の範囲の寸法をもつとして、正ケイ酸ルテチウムイットリウム(LYSO)または正ケイ酸ルテチウム(LSO)のうちの少なくとも一つ;または
前記シンチレーション結晶アレイが約6×6cm2ないし約12×12cm2の範囲の寸法をもつとして、ランチウム・ブロミド(LaBr)、
のうちの一つから形成される、
システム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムであって、前記光検出器がそれぞれ、タイル上に配置された複数の光感応性の素子を含み、各タイルは複数の検出器ピクセルに対応する光感応性素子をもち、それらの光感応性素子は最小限の縁領域をもってそのタイルを実質的に覆い、それによりそれらのタイルは互いに当接してマウントされ、一貫した検出器ピクセル周期性を維持することができる、システム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムであって、前記タイルが長方形であり、各モジュールが密に充填された関係で少なくとも四つのタイルを含む、システム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムであって、前記処理モジュールが、コンプトン型散乱について補償するために前記処理モジュールによって使用される補正情報を含むルックアップ・テーブルを記憶するフラッシュメモリを含む、システム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムであって、前記処理モジュールが、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けおよびエネルギー・ゲーティングを行うために、現場プログラム可能なゲート・アレイ(FPGA)および特定用途向け集積回路(ASIC)のうちの少なくとも一つを含む、システム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムであって、前記処理モジュールが、前記光検出器に統合されたタイムスタンプ付けユニットからタイムスタンプ情報を受け取る少なくとも一つの現場プログラム可能なゲート・アレイ(FPGA)を含む、システム。
【請求項12】
核撮像システムにおいて下流でのデータ処理需要を削減する方法であって:
一つまたは複数の自律的検出器モジュール(ADM)においてシンチレーション・イベントを検出する段階と;
各ADM上でのモジュール・レベルで前記シンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けする段階と;
モジュール・レベルで前記シンチレーション・イベントに対してエネルギー・ゲーティング技法を実行する段階と;
タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力する段階と;
前記イベント情報を処理して3D画像ボリュームに再構成する段階とを含む、
方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって:
対応するシンチレーション・イベント対を同定するよう出力された前記シンチレーション・イベント情報に対して同時性検出アルゴリズムを実行する段階をさらに含む、
方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって:
一つまたは複数のADMが故障していると判別する段階と;
前記一つまたは複数の故障しているADMについて技師に注意喚起する故障信号を送り出す段階と;
前記一つまたは複数の故障しているADMを新しい事前較正済みのADMと交換する段階とを含む、
方法。
【請求項15】
請求項12記載の方法を実行するためのコンピュータ実行可能な命令が記憶されているコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
自律的検出器モジュール(ADM)であって:
シンチレーション結晶アレイと;
前記シンチレーション結晶アレイの全部または一部におけるシンチレーション・イベントを検出する少なくとも一つの光検出器と;
検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けするか前記光検出器に統合された回路からタイムスタンプおよびエネルギー情報を受け取るかし、検出されたシンチレーション・イベントに対してエネルギー・ゲーティング技法を実行し、タイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を出力する処理モジュールとを含む、
ADM。
【請求項17】
請求項16記載のADMであって:
前記少なくとも一つの光検出器は、第一の側では前記シンチレーション結晶アレイの全部または一部に、第二の側ではコネクタに結合され、
前記コネクタは、前記少なくとも一つの光検出器を、前記処理モジュールに結合されているプリント回路基板(PCB)に着脱可能式に結合する、
ADM。
【請求項18】
前記少なくとも一つの光検出器は、第一の側では前記シンチレーション結晶アレイの全部または一部に、第二の側ではプリント回路基板(PCB)に結合され、前記プリント回路基板はさらに前記処理モジュールに結合されている、
ADM。
【請求項19】
請求項16記載のADMであって:
当該ADMが電力を受け取るために経由する電力コネクタと;
当該ADMが、検出されたシンチレーション・イベントにタイムスタンプ付けするためにマスター・クロックからのタイミング情報を受け取るために経由するクロック・コネクタと;
セットアップまたはスキャンのうちの少なくとも一方の際に当該ADMが構成設定される際に経由する構成設定コネクタと;
当該ADMがタイムスタンプ付けされ、エネルギー・ゲーティングされたシンチレーション・イベント情報を送り出す際に経由する出力接続とをさらに含む、
ADM。
【請求項20】
請求項16記載のADMを複数含む、陽電子放出断層撮影(PET)撮像システム。
【請求項21】
密に充填されたアレイに配列された複数のタイルを有する自律的検出器モジュール(ADM)であって:
各タイルは複数の検出器ピクセルに対応する光感応性素子を含み、それらの光感応性素子は最小限の縁領域をもってそのタイルを実質的に覆い、
各タイルは前記光感応性素子に光学的に結合された少なくとも一つのシンチレータを含み、
前記タイルは互いに当接してマウントされ、一つのタイルの前記光感応性素子は隣接するタイルの前記光感応性素子と十分に近接しており、それにより前記複数のタイルを横断して一貫した検出器ピクセル周期性が維持される、
ADM。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−511717(P2012−511717A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540262(P2011−540262)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055107
【国際公開番号】WO2010/067220
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】