説明

スケール除去システム

【課題】電極及び負荷にスケールが付着する不都合を効果的に回避することができるスケール除去システムを提供する。
【解決手段】被処理水中に浸漬されて当該被処理水を電気化学的に処理する少なくとも一対の電極12、13と、この電極12、13の下流側に設けられたスケール回収手段5(フィルタ6)とを備え、フィルタ6を経た被処理水を分流し、一方を負荷に供給した後、電極12、13からの被処理水と合流させてスケール回収手段5の入口側に戻すと共に、他方を電極12、13の入口側に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中のスケールを除去するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、微生物ウィルスや細菌等の除去を目的として、被処理水を電気化学的に処理して電解水を生成して負荷に供給し、除菌する装置が提案されている。例えば、空気除菌装置では、一対の電極からなる電解処理手段により、被処理水を電気化学的に処理して電解水を生成し、この電解水を負荷としてのエレメント(気液接触部材)に供給して、当該エレメントに循環される被除菌空間内の空気と接触させて、被除菌空間内の空気を除菌するものであった。
【0003】
ところで、このように被処理水を電気化学的に処理することで、被処理水に含まれるシリカ、マグネシウム、カルシウム等のスケール成分がスケールとして析出する問題が生じていた。析出したスケールの大部分は電極に付着するが、一部のスケールは電解処理手段から流出し、配管や負荷などに付着する恐れがあった。この場合、当該装置を空気除菌装置として使用した場合には、スケールによりエレメントの濡れ性が低下して、エレメントの寿命が著しく短くなる等の問題が生じていた。また、当該装置をクーリングタワー等に使用した場合には、コンデンサ(冷却部)表面にスケールが析出して冷却能力が著しく悪化するなどの問題が生じていた。
【0004】
このような不都合を回避するものとして、電解処理手段と負荷との間に沈殿槽やフィルタなどのスケール回収手段を設けて、電解処理手段から流出したスケール、及び、極性反転して電極から剥離したスケールを回収するものも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−259690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の構成では、電解処理手段とスケール回収手段とを接続する配管に剥離したスケールが付着して配管が詰まる恐れがあった。また、スケール回収手段にスケールが蓄積されて、当該スケール回収手段が詰まった場合には、電解水の循環が阻害されるという問題も生じていた。更に、電極に付着したスケールを剥離させるためには、上記のように極性の反転を行う必要があるが、この極性の反転によるスケール成分の剥離作業は電極の劣化の要因となるため、なるべく極性反転を行わずに運転することが求められていた。
【0006】
更にまた、上記エレメントやコンデンサなどの負荷で電解水は更に濃縮されるため、当該負荷における電解水の濃縮によってもスケールが発生する問題が生じていた。そして、負荷にて発生したスケールは電解処理手段に送り込まれ、電極に付着して電極の寿命を著しく低下させるなどの不都合を招いていた。
【0007】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、電極及び負荷にスケールが付着する不都合を効果的に回避することができるスケール除去システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスケール除去システムは、負荷に循環供給される被処理水中のスケールを除去するものであって、被処理水中に浸漬されて当該被処理水を電気化学的に処理する少なくとも一対の電極と、この電極の下流側に設けられたスケール回収手段とを備え、スケール回収手段を経た被処理水を分流し、一方を負荷に供給した後、電極からの被処理水と合流させてスケール回収手段の入口側に戻すと共に、他方を電極の入口側に戻すことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明のスケール除去システムは、請求項1に記載の発明において被処理水がスケール回収手段をバイパスして流れる流路を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明のスケール除去システムは、請求項1又は請求項2に記載の発明において被処理水中の次亜塩素酸を分解する次亜塩素酸分解手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明のスケール除去システムは、請求項3に記載の発明において電極による電気化学的処理を所定の条件下で行うと共に、当該電気化学的処理が行われていない状態で次亜塩素酸分解手段を機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、負荷に循環供給される被処理水中のスケールを除去するスケール除去システムであって、被処理水中に浸漬されて当該被処理水を電気化学的に処理する少なくとも一対の電極と、この電極の下流側に設けられたスケール回収手段とを備え、スケール回収手段を経た被処理水を分流し、一方を負荷に供給した後、電極からの被処理水と合流させてスケール回収手段の入口側に戻すと共に、他方を電極の入口側に戻すので、電極に循環される被処理水と負荷に循環される被処理水を合流させてスケール回収手段に流すことにより、電極で生成されたスケールを負荷に循環される前にスケール回収手段で回収することができる。また、負荷で被処理水が濃縮されることで発生したスケールも電極に流すこと無く、スケール回収手段で回収することができる。
【0013】
これにより、負荷にスケールが付着する不都合を回避し、且つ、電極にスケールが発生し難くなり、電極及び負荷双方でのスケールの付着する不都合を効果的に回避することができるようになる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1に記載の発明において被処理水がスケール回収手段をバイパスして流れる流路を備えたので、スケール回収手段が詰まった場合であっても、被処理水の循環を確保することができる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において被処理水中の次亜塩素酸を分解する次亜塩素酸分解手段を備えたので、当該次亜塩素酸分解手段により電極による電気化学的処理で生成された次亜塩素酸の濃度が高くなりすぎる不都合を防止することができる。
【0016】
特に、請求項4の如く電極による電気化学的処理を所定の条件下で行うと共に、当該電気化学的処理が行われていない状態で次亜塩素酸分解手段を機能させるものとすれば、電気化学的処理の停止時に次亜塩素酸濃度を初期化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、従来電極や負荷に付着して双方の寿命を低下させていたスケールを効果的に除去するために成されたものである。電極及び負荷にスケールが付着する不都合を効果的に回避するという目的を、被処理水中に浸漬されて当該被処理水を電気化学的に処理する少なくとも一対の電極と、この電極の下流側に設けられたスケール回収手段とを備え、スケール回収手段を経た被処理水を分流し、一方を負荷に供給した後、電極からの被処理水と合流させてスケール回収手段の入口側に戻すと共に、他方を電極の入口側に戻すことにより実現した。以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のスケール回収システムの概略構成図、図2は図1のスケール回収システムの系統図をそれぞれ示している。本実施例は、本発明のスケール回収システムを、空気除菌装置VWに適用したものである。従って、本発明の負荷は空気除菌装置VWのエレメントに相当する。
【0019】
本実施例の空気除菌装置VWは、貯水部としての水受け皿2と、この水受け皿2の上面に設けられたエレメント3(本発明の負荷に相当)と、電解槽11と、一対の電極12、13(図1では電極は図示されず)等により構成される電解処理手段4と、電解処理手段4の下流側(出口側)に設けられたスケール回収手段5と、水(被処理水)を循環するポンプPとを備える。
【0020】
エレメント3は、電解処理手段4により処理された電解水(被処理水)と被除菌空間内の空気とを接触させるための気液接触部であり、ハニカム構造を持ったフィルタ部材であって、気液接触面積が広く確保され、保水可能で、目詰まりし難い構造とされている。即ち、このエレメント3は、例えば、波形状に屈曲された素材と、平板状の素材とを接合して全体としてハニカム状に形成されている。こられ素材には、電解水に反応性の少ない素材、即ち、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン樹脂系、PET樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フッ素樹脂系、又は、セラミック樹脂系等の素材が使用されている。
【0021】
また。エレメント3の一面側には、図示しないファンが設置され、当該エレメント3に被除菌空間内の空気が通風可能に構成されている。このエレメント3の下部には水受け皿2が設けられ、当該受け皿2がエレメント3を経た被処理水を授受可能に配置されている。
【0022】
上記水受け皿2内にはスケール回収手段5が設けられている。本実施例のスケール回収手段5は、水(被処理水)を流通可能な通水性とされ、且つ、水中(被処理水中)に含まれるスケールのみを捕集可能なフィルタ6にて構成されており、このスケール回収手段5のフィルタ6により、水受け皿2内がエレメント3の直下に位置する空間2Aと、水受け皿2内の被処理水を汲み上げるための循環ポンプPに接続された配管7の一端が開口する空間2Bとに区画されている。通常、当該水受け皿2内に貯留される被処理水の水面は、フィルタ6の高さ寸法より下側に位置するよう設定されている。即ち、通常の運転時には、エレメント3から水受け皿2の空間2A内に滴下された被処理水は、全てこのフィルタ6(スケール回収手段5)を経て空間2Bに入り、この空間2B内にて開口する配管7から汲み上げられることとなる。
【0023】
また、フィルタ6の高さ寸法は、水受け皿2の壁面の高さ寸法より小さく設定されている。従って、フィルタ6が詰まった場合、即ち、フィルタ6にて捕集されたスケールにより、当該フィルタ6を介した被処理水の流通が不可能となった場合には、フィルタ6の上方から空間2A内の被処理水が空間2Bにバイパスして流れる流路(図2に示す破線の流路17)が構成されることとなる。即ち、水受け皿2に貯留される被処理水の水面は、通常、上述したようにエレメント3の上端より下部に位置するため、エレメント3から水受け皿2の空間2A内に滴下された被処理水は、全てこのフィルタ6を経て空間2Bに入ることとなるが、フィルタ6が詰まると、当該フィルタ6により水受け皿2内の被処理水の流通が阻害されて、空間2A内の被処理水は水受け皿2の空間2Bに流れることなく、空間2A内に貯留され行く。そして、空間2A内に貯留された被処理水がフィルタ6の高さ寸法を超えると、空間2A内の被処理水が当該フィルタ6の上部を経て空間2B内に流入することとなる。
【0024】
そして、水受け皿2には水道水などからの水(補給水)を供給するための給水配管15が接続され、前記フィルタ6(スケール回収手段5)の下流側となる水受け皿2の空間2B内に給水可能に構成されている。また、水受け皿2には、後述する電解処理手段4からの配管10が接続されて、電解処理手段4にて電解処理された被処理水が、フィルタ6の上流側(入口側)となる水受け皿2の空間2A内に供給可能に構成されている。即ち、当該水受け皿2の空間2A内にて電解処理手段4にて電解処理された被処理水と、エレメント3に供給された後の被処理水とが合流するよう構成されている。
【0025】
一方、水受け皿2の空間2Bの水内に一端が開口する配管7は循環ポンプPに接続され、当該循環ポンプPを出た配管7は、二股に分岐されており、一方の配管8は、前述したエレメント3の上端にて開口し、当該エレメントに水が供給可能に構成されている。また、分岐した他方の配管9は、電解処理手段4の電解槽11に接続され、当該配管9の一端が電解槽11内の被処理水内にて開口する。
【0026】
この電解処理手段4は、電解槽11と、一対の電極12、13(電解ユニット)からなり、この電極12、13が電解槽11内に配設され、当該電解槽11内に貯留された被処理水内にて浸漬されて、当該被処理水に通電可能に配置されている。具体的に、本実施例では、電極12、13に通電することにより、電解槽11内の被処理水を電気分解(電気化学的処理)して次亜塩素酸等の活性酸素種を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは、過酸化水素といった所謂狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった所謂広義の活性酸素を含むものとする。
【0027】
電極12、13は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板である。上記電極12、13により被処理水に通電すると、カソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、水に含まれる塩化物イオン(被処理水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、更にこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
【0028】
この構成では、電極12、13に通電することで、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)が発生し、この次亜塩素酸がフィルタ6を介してエレメント3に供給され、このエレメント3での雑菌の繁殖が防止でき、当該エレメント3に前述したファンによる通風によって、エレメント3を通過する空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、悪臭もエレメント3を通過する際に、被処理水中の次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解することで空気中から除去され、脱臭される。本実施例では電解処理手段4の電極12、13における電気分解は所定の条件下で実行されるものとする。当該所定の条件下とは、例えば、電解槽11内、或いは、エレメント3に供給される被処理水(電解水)の次亜塩素酸濃度が所定値(例えば、2PPM乃至10PPM)を維持するように、所定の時間間隔、例えば、30分時間毎に10分間実行されるものとする。
【0029】
そして、当該電解槽11内には前述した配管10が接続され、当該配管10の一端が電解槽11内にの被処理水内にて開口しており、当該電解槽11内にて電気分解された被処理水が前述した循環ポンプPの運転により、当該配管10から取り出し可能に構成されている。
【0030】
以上の構成で次に本実施例のスケール除去システムを備えた空気除菌装置VWの動作について説明する。先ず、空気除菌装置VWの電源が投入されると、循環ポンプPが駆動され、同時に電解処理手段4の電極12、13への通電が開始される。これにより、電解槽11内の被処理水が電気分解され次亜塩素酸を含む電解水(被処理水)が生成される(電気化学的処理)。
【0031】
そして、電解槽11にて生成された被処理水(上記電解水)は循環ポンプPの運転により、当該電解槽11の被処理水内にて開口する一端から配管10に入り、フィルタ6の上流側(入口側)である水受け皿2の空間2A内に至る。空間2A内の被処理水は、フィルタ6を経て空間2B内に流入し、この空間2B内にて開口する一端から配管7に入り、循環ポンプPを経た後、二つの流れに分流され、一方が配管8を介してエレメント3に供給される。
【0032】
一方、前記電極12、13への通電開始と同時にエレメント3の一面側に設けられた図示しないファンが始動され、これにより、エレメント3にはファンで加速され、吸い込まれた被除菌空間内の空気がエレメント3に供給される。そして、被除菌空間内の空気はエレメント3に滴下される被処理水中の次亜塩素酸に接触した後、被除菌空間内に吐出される。この次亜塩素酸は、被除菌空間内の空気中に例えばインフルエンザウィルスが侵入した場合、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する機能を持ち、これを破壊すると、インフルエンザウィルスと、当該ウィルスが感染するのに必要な被感染生物の受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止される。このように、エレメント3にて被除菌空間内の空気を供給し、当該エレメント3に供給される被処理水と接触させることで、被処理水中に含まれる次亜塩素酸により空気を除菌することができる。
【0033】
他方、エレメント3にて被処理水は濃縮されてフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2A内に戻る。これにより、前記電解処理手段4にて電気分解され、配管10を介して空間2A内に流入した被処理水と合流する。このとき、エレメント3からの被処理水は当該エレメント3における濃縮によりスケールが発生し易い状態となって、水受け皿2の空間2A内に至る。同様に、電解処理手段4による電気分解で被処理水から発生したスケールは電極12、13に付着するが、一部のスケールは電極12、13に付着せずに電解槽11から流出し、当該水受け皿2の空間2A内に至る。
【0034】
従って、この空間2A内にて合流した上記被処理水は共にスケールが発生しやすい状態、或いは、スケールが発生した状態である。そして、当該被処理水をフィルタ6に流すことで、フィルタ6にて被処理水中のスケールが回収される。
【0035】
そして、フィルタ6にてスケールが除去された上記被処理水は、その後、空間2Bから水受け皿2を出て二つの流れに分流され、前述したように一方がエレメント3に供給された後、上述したようにフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2Aに戻るサイクルを繰り返す。また、分流された他方の被処理水は、電解処理手段4の入口側に戻る。
【0036】
このように、電解処理手段4に供給される被処理水とエレメント3に供給される被処理水を合流させてフィルタ6に流すことにより、電解処理手段4で生成されたスケールをエレメント3に供給する前にフィルタ6で回収することができる。これにより、エレメント3にスケールが付着して、エレメント3の濡れ性が低下し、寿命が著しく短くなる不都合を極力解消することができるようになる。
【0037】
特に、本発明ではスケール回収手段5を電解処理手段4からの被処理水とエレメント3からの被処理水が合流した後に配置しているので、エレメント3で被処理水が濃縮されて発生したスケールも電解処理手段4にそのまま送り込まれず、直接スケール回収手段5に流れるので、当該スケール回収手段5のフィルタ6で回収することができる。これにより、電極12、13でのスケールの生成も遅延され、従来より電極においてスケールが発生し難くなる。これにより、電極12、13の劣化の要因となる極性の反転を極力低減することができるので、電極12、13の耐久性が向上し、長寿命化を図ることが可能となる。
【0038】
尚、電解処理手段4の電極12、13における電気分解は、上述した所定の条件下(例えば、電解槽11内、或いは、エレメント3に供給される被処理水の次亜塩素酸の濃度が2PPM乃至10PPMを維持するように、30分時間毎に10分間)で行われる。また、係る電気分解によりカソード側の電極(電極12、或いは、電極13のどちらか)では被処理水スケールが付着するため、一定周期で極性反転が行われる。即ち、予め決められた所定回数(例えば、10回)電気分解が行われたら、電極12、13の極性が反転される。これにより、カソード側の電極に付着したスケールが剥離される。電極から剥離したスケールは被処理水と共に水受け皿2の空間2A内に流入し、フィルタ6を通過する過程で回収される。このように、極性反転により電極から剥離したスケールも当該フィルタ6にて回収することができる。
【0039】
一方、フィルタ6に多量のスケールが付着し、当該フィルタ6を介した水の流通が不可能となると、電解処理手段4及びエレメント3から空間2A内に流入した被処理水は水受け皿2の空間2Bに流れることなく、空間2A内に貯留され行く。そして、空間2A内に貯留された被処理水がフィルタ6の高さ寸法を超えると、空間2A内の被処理水が当該フィルタ6の上部を経て、即ち、オーバーフローして空間2B内に流入する。このように、当該フィルタ6を介した被処理水の流通が不可能となった場合には、フィルタ6の上方から空間2A内の被処理水が空間2Bにバイパスして流れる流路17が構成されるので、フィルタ6が詰まった場合であっても、係るフィルタ6に詰まったスケールを除去するまでの間の被処理水の循環を確保することができる。
【0040】
以上詳述したように本発明によりエレメント3にスケールが付着する不都合を回避し、且つ、電解処理手段4の電極にスケールが発生し難くなり、電極及びエレメント3双方でのスケールの付着する不都合を効果的に回避することができる。更に、フィルタ6にスケールが詰まった場合であっても、フィルタ6をオーバーフローして被処理水が流れるので、被処理水の循環を確保することができる。
【実施例2】
【0041】
次に、図3を用いて他の実施例(第2実施例)のスケール回収システムについて説明する。本実施例では、スケール回収システムを、上記実施例1と同様に空気除菌装置VWに適用したものであり、図3は本実施例のスケール回収システムの系統図である。尚、図3において、前記図1及び図2と同一の符号が付されたものは、同様、或いは、類似の効果、若しくは作用を奏するものであるためここでは説明を省略する。
【0042】
図3において、20は次亜塩素酸分解手段としての分解触媒である。本実施例の分解触媒20は、被処理水中の次亜塩素酸を分解する触媒からなるもので、配管22上に配設されている。配管22は、配管9Aから分岐する一方の配管であって、配管9Aから分岐する一端から分解触媒22を介して、他端は配管9Bの途中部であって、電解処理手段4の上流側(入口側)に接続されている。また、配管22の分解触媒22の上流側(入口側)には弁装置24(例えば、電磁弁等)が設置され、弁装置24の下流側(出口側)の分解触媒20への被処理水の流入が制御されている。
【0043】
本実施例では、弁装置24は通常、全閉されて弁装置24の下流側(出口側)に設けられた分解触媒20への被処理水の流入を阻止すると共に、電解処理手段4の電極12、13への通電を開始する直前の所定時間のみ弁装置24を開放して、分解触媒20に被処理水が流入するよう制御されている。
【0044】
以上の構成で次に図4に示すタイミングチャートを用いて本実施例のスケール除去システムを備えた空気除菌装置VWの動作について説明する。先ず、空気除菌装置VWの電源が投入されると、電解処理手段4の電極12、13への通電が開始され(図4に示す電解ON)、同時に、循環ポンプPが始動される(図4に示すポンプONの状態)。このとき、弁装置24は閉塞されており、分解触媒20への被処理水の流入が阻止されている(図4に示す弁Closeの状態)。これにより、循環ポンプPから出て分流され、配管9A内に流入した被処理水は、分解触媒20に流れることなく、配管9Bを経て電解槽11内に流入する。
【0045】
そして、電解槽11内にて被処理水が電気分解され次亜塩素酸を含む電解水(被処理水)が生成される(電気化学的処理)。電解槽11にて生成された被処理水(上記電解水)は循環ポンプPの運転により、当該電解槽11の被処理水内にて開口する一端から配管10に入り、フィルタ6の上流側(入口側)である水受け皿2の空間2A内に至る。空間2A内の被処理水は、フィルタ6を経て空間2B内に流入し、この空間2B内にて開口する一端から配管7に入り、循環ポンプPを経た後、二つの流れに分流され、一方が配管8を介してエレメント3に供給される。
【0046】
一方、前記電極12、13への通電開始と同時にエレメント3の一面側に設けられた図示しないファンが始動され、これにより、エレメント3にはファンで加速され、吸い込まれた被除菌空間内の空気がエレメント3に供給される。そして、被除菌空間内の空気が前記実施例で詳述したように除菌される。
【0047】
他方、エレメント3にて被処理水は濃縮されてフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2A内に戻る。これにより、前記電解処理手段4にて処理され、配管10を介して空間2A内に流入した被処理水と合流する。このとき、エレメント3からの被処理水は当該エレメント3における濃縮によりスケールが発生し易い状態となって、水受け皿2の空間2A内に至る。同様に、電解処理手段4による電気分解で被処理水から発生したスケールは電極に付着するが、一部のスケールは電極に付着せずに電解槽11から流出し、当該水受け皿2の空間2A内に至る。
【0048】
従って、この空間2A内にて合流した上記被処理水は共にスケールが発生しやすい状態、或いは、スケールが発生した状態である。そして、当該被処理水をフィルタ6に流すことで、フィルタ6にて被処理水中のスケールを回収することができる。
【0049】
そして、フィルタ6にてスケールが除去された上記被処理水は、その後、空間2Bから水受け皿2を出て二つの流れに分流され、前述したように一方がエレメント3に供給された後、上述したようにフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2Aに戻るサイクルを繰り返す。また、分流された他方の被処理水は、前述の如く配管9A、配管9Bを経て電解処理手段4の入口側に戻る。
【0050】
一方、上記電極12、13への通電を開始して所定時間経過すると、通電が停止される(図4に示す電解OFF)。このとき、循環ポンプPは継続して運転された状態であり(図4に示すポンプON)、弁装置24も閉塞された状態である(図4に示す弁Closeの状態)。
【0051】
そして、電極12、13における電気分解を所定の条件下、例えば、電解槽11内、或いは、エレメント3に供給される被処理水(電解水)の次亜塩素酸濃度が所定値(例えば、2PPM乃至10PPM)を維持するように、所定の時間間隔、例えば、30分時間毎に10分間実行するものとした場合、電極12、13への通電が開始される直前の所定時間、例えば、通電を停止してから25分経過すると、電極12、13への通電が開始されるまでの5分間、弁装置24が開放される(図4に示す弁Openの状態)。これにより、循環ポンプPから出て分流され、配管9A内に流入した被処理水の一部は、配管22を経て分解触媒20に流入する。このとき、被処理水中の次亜塩素酸が当該分解触媒20を通過する過程で分解される。
【0052】
このように、弁装置24を開放して配管9A内に流入した被処理水の一部を分解触媒20に流す動作を繰り返すことで、次回の電解処理手段4の電極12、13への通電が開始される以前に、前回の電気分解で生成された次亜塩素酸を全て分解して、次亜塩素酸濃度を初期化することができる。このような被処理中の次亜塩素酸を分解できる次亜塩素酸分解処理手段が無い場合、電解処理手段4にて生成されてエレメント3に供給され、当該エレメント3にて微生物ウィルスや細菌等と反応することなく残留した次亜塩素酸が徐々に蓄積されて行くため、被処理水中の次亜塩素酸濃度が上昇し、空気除菌装置VWの耐久性の観点から好ましいものではなかった。
【0053】
しかしながら、本発明の如く次亜塩素酸分解手段(実施例では分解触媒20)を設けて、これを機能させることで被処理中の次亜塩素酸を分解して、上記のような不都合を未然に回避することができる。特に、本実施例の如く電解処理手段4の電極12、13への通電が停止されて、電気分解が行われていない状態で分解触媒20を機能させることで、空気の除菌に影響すること無く、次亜塩素酸を分解して、被処理水中の次亜塩素酸濃度が上昇しすぎる不都合を解消することができる。
【0054】
尚、図3では分解触媒20の上流側(入口側)の配管22上に弁装置24を設けて、当該弁装置24の開閉を制御することで、分解触媒20への被処理水の流入を制御するものとしたが、図5に示す如き9Aの分岐点に三方弁25を設置し、配管22内への被処理水の流入を当該三方弁により制御しても構わない。
【0055】
この場合、三方弁25を通常、配管9Aと配管9Bとを連通して、配管22内への流入を阻止すると共に、電解処理手段4の電極12、13への通電を開始する直前の所定時間のみ配管9Aと配管22とを連通して、配管22内に被処理水が流入するよう制御する。
【0056】
具体的な動作を前記図4のタイミングチャートを用いて説明する。尚、三方弁25の動作以外は上述した弁装置24を用いた場合と同じであるため、ここでは三方弁25の動作のみを簡単に説明する。先ず、空気除菌装置VWの電源が投入されると、電解処理手段4の電極12、13への通電が開始され(図4に示す電解ON)、同時に、循環ポンプPが始動される(図4に示すポンプONの状態)。このとき、三方弁25は配管9Aと配管9Bとを連通された状態であり、配管22内への被処理水の流入が阻止されている(図4に示す弁Closeの状態)。これにより、循環ポンプPから出て分流され、配管9A内に流入した被処理水は、分解触媒20に流れることなく、配管9Bを経て電解槽11内に流入する。
【0057】
そして、電極12、13への通電を開始して所定時間経過すると、通電が停止される(図4に示す電解OFF)。このとき、循環ポンプPは継続して運転された状態であり(図4に示すポンプON)、三方弁25も同様に配管9Aと配管9Bとを連通した状態である(図4に示す弁Closeの状態)。
【0058】
そして、電極12、13における電気分解を所定の条件下、例えば、電解槽11内、或いは、エレメント3に供給される被処理水(電解水)の次亜塩素酸濃度が所定値(例えば、2PPM乃至10PPM)を維持するように、所定の時間間隔、例えば、30分時間毎に10分間実行するものとした場合、電極12、13への通電が開始される直前の所定時間、例えば、通電を停止してから25分経過すると、電極12、13への通電が開始されるまでの5分間、三方弁25が配管9Aと配管22とを連通するよう制御される(図4に示す弁Openの状態)。これにより、循環ポンプPから出て分流され、配管9A内に流入した被処理水は、配管22に入り、分解触媒20を通過する。このとき、被処理水中の次亜塩素酸が当該分解触媒20を通過する過程で分解される。
【0059】
これにより、次回の電解処理手段4の電極12、13への通電が開始される以前に、前回の電気分解で生成された次亜塩素酸を全て分解して、次亜塩素酸濃度を初期化することができる。
【実施例3】
【0060】
尚、分解触媒20として、例えば、酸化ニッケルなどの熱触媒を使用する場合、即ち、常温では被処理水中の次亜塩素酸を分解せずに、所定の温度に加熱することにより触媒作用を発揮して、被処理水中の次亜塩素酸を分解する触媒を使用する場合には、上記実施例2の如く配管22及び三方弁25を設けることなく、図6に示すように配管9上に分解触媒20を介設することができる。この場合、分解触媒20には、当該分解触媒20を所定温度に加熱可能な加熱手段(例えば、ヒーター27)を取り付ける。尚、分解触媒20として酸化ニッケルを用いる場合、40℃乃至70℃に加熱することで分解作用を発揮するため、酸化ニッケルが40℃乃至70℃の温度に加熱されるようヒーター27の通電を制御する必要がある。
【0061】
係るヒーター27への通電は、電極12、13への通電停止中(電気分解がなされていないと時)であって電極12、13への通電が開始される以前の所定時間実行される。
【0062】
ここで、図7に示すタイミングチャートを用いて動作を説明する。先ず、空気除菌装置VWの電源が投入されると、電解処理手段4の電極12、13への通電が開始され(図7に示す電解ON)、同時に、循環ポンプPが始動される(図7に示すポンプONの状態)。このとき、ヒーター27は停止された状態であるため(図7に示すヒーターOFF)、循環ポンプPから出て配管9内に入り、分解触媒20を通過する被処理水中の次亜塩素酸は当該分解触媒20にて分解されることなく、電解槽11内に流入する。
【0063】
そして、電解槽11内にて被処理水が電気分解され次亜塩素酸を含む電解水(被処理水)が生成される(電気化学的処理)。電解槽11にて生成された被処理水は循環ポンプPの運転により、当該電解槽11の被処理水内にて開口する一端から配管10に入り、フィルタ6の上流側(入口側)である水受け皿2の空間2A内に至る。空間2A内の被処理水は、フィルタ6を経て空間2B内に流入し、この空間2B内にて開口する一端から配管7に入り、循環ポンプPを経た後、二つの流れに分流され、一方が配管8を介してエレメント3に供給される。
【0064】
一方、前記電極12、13への通電開始と同時にエレメント3の一面側に設けられた図示しないファンが始動され、これにより、エレメント3にはファンで加速され、吸い込まれた被除菌空間内の空気がエレメント3に供給される。そして、被除菌空間内の空気が前記実施例で詳述した如く除菌される。
【0065】
他方、エレメント3にて被処理水は濃縮されてフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2A内に戻る。これにより、前記電解処理手段4にて処理され、配管10を介して空間2A内に流入した被処理水と合流する。このとき、エレメント3からの被処理水は当該エレメント3における濃縮によりスケールが発生し易い状態となって、水受け皿2の空間2A内に至る。同様に、電解処理手段4による電気分解で被処理水から発生したスケールは電極に付着するが、一部のスケールは電極に付着せずに電解槽11から流出し、当該水受け皿2の空間2A内に至る。
【0066】
従って、この空間2A内にて合流した上記被処理水は共にスケールが発生しやすい状態、或いは、スケールが発生した状態である。そして、当該被処理水をフィルタ6に流すことで、フィルタ6にて被処理水中のスケールを回収することができる。
【0067】
そして、フィルタ6にてスケールが除去された上記被処理水は、その後、空間2Bから水受け皿2を出て二つの流れに分流され、前述したように一方がエレメント3に供給された後、上述したようにフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2Aに戻るサイクルを繰り返す。また、分流された他方の被処理水は、前述の如く配管9、分解触媒20を経て電解処理手段4の入口側に戻る。
【0068】
一方、上記電極12、13への通電を開始して所定時間経過すると、通電が停止される(図7に示す電解OFF)。このとき、循環ポンプPは継続して運転された状態であり(ポンプON)、ヒーター27も停止された状態である(図7に示すヒーターOFFの状態)。
【0069】
そして、電極12、13における電気分解を所定の条件下、例えば、電解槽11内、或いは、エレメント3に供給される被処理水(電解水)の次亜塩素酸濃度が所定値(例えば、2PPM乃至10PPM)を維持するように、所定の時間間隔、例えば、30分時間毎に10分間実行するものとした場合、電極12、13への通電が開始される直前の所定時間、例えば、通電を停止してから25分経過すると、電極12、13への通電が開始されるまでの5分間、ヒーター27が通電されて(図7に示すヒーターONの状態)、分解触媒20が所定の温度に加熱される。これにより、循環ポンプPから出て分流され、配管9内に流入して分解触媒20を通過する被処理水は、当該分解触媒20により次亜塩素酸が分解される。
【0070】
これにより、上記実施例2と同様に電気分解が行われていない状態で分解触媒20を機能させて、被処理水中の次亜塩素酸濃度を初期化することができるので、空気の除菌に影響すること無く、次亜塩素酸を分解して被処理水中の次亜塩素酸濃度が上昇しすぎる不都合を解消することができる。
【実施例4】
【0071】
尚、上記各実施例では、本発明のスケール除去システムを空気除菌装置VWに適用し、当該空気除菌装置VWのエレメントを本発明の負荷としたが、本発明のスケール除去システムは、空気除菌装置VWに限らず、他のものに用いても有効である。例えば、被冷却対象を冷却水にて冷却するクーリングタワー(冷却塔)や、加湿器に適用することが可能である。スケール除去システムをクーリングタワーに適用した場合、負荷はクーリングタワーのコンデンサに相当し、加湿器に適用した場合には、負荷は加湿エレメントに相当する。
【0072】
次に、図8を用いて本発明のスケール除去システムをクーリングタワーCに適用した場合の一例について説明する。クーリングタワーCでは、未使用時においてクーリングタワー内に循環される貯留水(被処理水)からスケールが発生し易く、また、使用時においては回路内を循環する水(被処理水)が凝集されて行き、特に、コンデンサ30(本発明の負荷に相当)にて水が濃縮されて当該水からスケールが発生し易い状況となる。発生したスケールは、配管やコンデンサ30の表面(伝熱面)に付着し易いので、係るスケールの発生による悪影響を除去するために本発明のスケール除去システムを使用することが好ましい。尚、図8において前記図1乃至図7と同一の符号が付されたものは同様、或いは、類似の効果、若しくは作用を奏するものであるため説明を省略する。
【0073】
図8において、35は冷却水(被処理水)が流れる回路を示している。この回路35は、電解処理手段4と、負荷手段36と、クーリングタワーCと、水受け皿2と、水受け皿2内に設けられたスケール回収手段5と、循環ポンプP等を配管などで接続することにより構成されている。即ち、水道などの給水源には給水配管15の一端が接続され、給水配管15の他端が水受け皿2の空間2A内にて開口し、ここから回路25内に水(補給水)が補給される。
【0074】
水受け皿2内には前記各実施例と同様に水を流通可能な通水性とされ、且つ、水中に含まれるスケールのみを捕集可能なフィルタ6にて構成されたスケール回収手段5が設けられ、当該水受け皿2内を空間2A側と、空間2B側とにそれぞれ区画している。更に、前記各実施例と同様に通常、当該水受け皿2内に貯留される水の水面は、フィルタ6の高さ寸法より下側に位置するよう設定されている。
【0075】
当該水受け皿2の空間2A内には、前述した給水配管15の他端の開口が位置して、当該給水配管15からの補給水が供給可能に設置されると共に、一端が電解処理手段4の電解槽11に接続された配管10の他端の開口が位置して、電解処理手段4にて電解処理された被処理水が当該配管10を介して供給可能に配設されている。また、空間2Bには配管7が接続され、この空間2B内の底部にて配管7の一端が開口している。配管7は空間2B内の底部に位置する一端から循環ポンプPを経て、他端が二股に分岐されている。そして、分岐した一方の配管8は、負荷手段36を介してクーリングタワーCに至り、当該クーリングタワーCのコンデンサ30の上方にて開口し、当該コンデンサ30の表面に水(被処理水)が供給可能に構成されている。また、分岐した他方の配管9は、電解処理手段4の電解槽11に接続され、当該電解槽11内に水が供給可能に構成されている。尚、電解処理手段4の構成は上記各実施例と同様であるためここでは説明を省略する。
【0076】
前記負荷手段36は、被処理水に負荷を付与して減圧し、下流側に設けられたクーリングタワーC内のコンデンサ30表面で被処理水を蒸発させるためのものである。また、上記クーリングタワーC内のコンデンサ30は、図示しない圧縮機、膨張手段、蒸発器と共に配管接続されて、例えば、空気調和機の冷媒サイクルを構成している。
【0077】
以上の構成で次に本実施例のスケール除去システムの動作を説明する。循環ポンプPが駆動され、同時に電解処理手段4の電極12、13への通電が開始される。これにより、電解槽11内の被処理水が電気分解され次亜塩素酸を含む電解水(被処理水)が生成される(電気化学的処理)。
【0078】
そして、電解槽11にて生成された被処理水(電解水)は循環ポンプPの運転により、当該電解槽11の被処理水内にて開口する一端から配管10に入り、フィルタ6の上流側(入口側)である水受け皿2の空間2A内に至る。空間2A内の被処理水は、フィルタ6を経て空間2B内に流入し、この空間2B内にて開口する一端から配管7に入り、循環ポンプPを経た後、二つの流れに分流されて一方が配管8に流入し、当該配管8上に設けられた負荷手段36にて減圧され、その後、クーリングタワーC内に吐出される。クーリングタワーC内に吐出された水の一部は当該クーリングタワーCに配設されたコンデンサ30から吸熱して蒸発する。一方、コンデンサ30内を流れる冷媒は被処理水と熱交換することにより冷却される。そして、クーリングタワーC内で蒸発した水(水蒸気)の一部はその後液体に戻り、該クーリングタワーC内で蒸発しなかった水と共に水受け皿2の空間2A内に滴下される。これにより、前記電解処理手段4にて処理され、配管10を介して空間2A内に流入した被処理水と合流する。
【0079】
このとき、クーリングタワーCからの被処理水は当該クーリングタワーCにおける蒸発により濃縮され、スケールが発生しやすい状態となって、水受け皿2の空間2A内に戻る。同様に、電解処理手段4による電気分解で被処理水から発生したスケールはカソード側の電極13に付着するが、一部のスケールは電極13に付着せずに電解槽11から流出し、当該水受け皿2の空間2A内に至る。
【0080】
従って、この空間2A内にて合流した上記被処理水は共にスケールが発生しやすい状態、或いは、スケールが発生した状態である。そして、当該被処理水をフィルタ6に流すことで、フィルタ6にて被処理水中のスケールを回収することができる。
【0081】
そして、フィルタ6にてスケールが除去された上記被処理水は、その後、空間2Bから水受け皿2を出て二つの流れに分流され、前述したように一方がクーリングタワーCに供給された後、上述したようにフィルタ6の上流側(入口側)の水受け皿2の空間2Aに戻るサイクルを繰り返す。また、分流された他方の被処理水は、電解処理手段4の入口側に戻る。
【0082】
このように、電解処理手段4に循環される被処理水とクーリングタワーCに循環される被処理水を合流させてフィルタ6に流すことにより、電解処理手段4で生成されたスケールをクーリングタワーCに循環される前にフィルタ6で回収することができる。これにより、クーリングタワーCのコンデンサ30表面である伝熱面にスケールが付着して、冷却能力が著しく悪化する不都合を極力解消することができるようになる。
【0083】
更に、本発明によればクーリングタワーCにて被処理水が蒸発し、濃縮されることで発生したスケールも電解処理手段4に直接流すこと無く、フィルタ6で回収することができるので、電極13にスケールが発生し難くなる。これにより、電極12、13の劣化の要因となる極性の反転を極力低減することができるので、電極12、13の耐久性が向上し、長寿命化を図ることが可能となる。
【0084】
尚、上記電極12、13への通電を開始して所定時間経過すると、通電が停止される。そして、電解処理手段4の電極12、13における電気分解は、所定の条件下、例えば、前述同様に電解槽11内、或いは、コンデンサ30表面に供給される被処理水の次亜塩素酸の濃度が2PPM乃至10PPMを維持するように、30分時間毎に10分間で行われる。また、係る電気化学的処理によりカソード側の電極13では被処理水スケールが付着するため、一定周期で極性反転が行われる。即ち、予め決められた所定回数(例えば、10回)電気分解が行われたら、電極12、13の極性が反転される。これにより、カソード側の電極13に付着したスケールが剥離される。電極13から剥離したスケールは被処理水と共に水受け皿2の空間2A内に流入し、フィルタ6を通過する過程で回収される。このように、極性反転により電極13から剥離したスケールも当該フィルタ6にて回収することができる。
【0085】
尚、フィルタ6に多量のスケールが付着し、当該フィルタ6を介した水の流通が不可能となると、電解処理手段4及びコンデンサ30表面から空間2A内に流入した被処理水は水受け皿2の空間2Bに流れることなく、空間2A内に貯留され行く。そして、空間2A内に貯留された被処理水がフィルタ6の高さ寸法を超えると、上記各実施例同様に空間2A内の水が当該フィルタ6の上部を経て、即ち、オーバーフローして空間2B内に流入する。このように、当該フィルタ6を介した水の流通が不可能となった場合には、フィルタ6の上方から空間2A内の水が空間2Bにバイパスして流れる流路(本実施例では図示せず)が構成されるので、フィルタ6が詰まった場合であっても、係るフィルタ6に詰まったスケールを除去するまでの間の被処理水の循環を確保することができる。
【0086】
以上詳述したように本発明のスケール除去システムをクーリングタワーCに適用した場合においても、クーリングタワーCのコンデンサ30表面にスケールが付着する不都合を回避し、且つ、電極13にスケールが発生し難くなり、電極13及びコンデンサ30の双方でのスケールの付着する不都合を効果的に回避することができる。更に、フィルタ6にスケールが詰まった場合であっても、フィルタ6をオーバーフローして被処理水が流れるので、被処理水の循環を確保することができる。
【実施例5】
【0087】
また、上記実施例4ではスケール回収手段5としてのフィルタ6を水受け皿2内に配置して、当該水受け皿2を空間2A側と空間2B側とに区画するものとしたが、本発明はこの構成に限定されるものでは無く、負荷(実施例4ではクーリングタワーCのコンデンサ30)に供給した後の被処理水が、電解処理手段5からの被処理水と合流させて、スケール回収手段5の入口側に戻すことが可能な構成であれば良く、例えば、図9に示すように水受け皿2内に底面がスケール回収手段5のフィルタ6にて成る容器40を配置し、クーリングタワーCを通過した後の被処理水及び電解処理手段4からの被処理水を当該容器40内にて合流させるよう構成しても同様な効果を得ることができる。
【0088】
この場合、通常(即ち、フィルタ6がスケールにより詰まった状態でない場合)、容器40内にて合流した被処理水(クーリングタワーCからの被処理水と電解処理手段4からの被処理水)を全てスケール回収手段5のフィルタ6を通過させて、水受け皿2に滴下される。そして、水受け皿2内の被処理水は、当該水受け皿2の底部に接続された配管7から取り出され分流されて、一方が負荷手段36を介してクーリングタワーCに供給される。また、分流された他方の被処理水は電解処理手段4に供給される。
【0089】
尚、上記容器40は、クーリングタワーCからの被処理水を全て受けることができる十分な径を有し、且つ、水受け皿2より小径のものを使用するものとする。これにより、容器40底部を構成するフィルタ6がスケールにより詰まって、フィルタ6を介しての被処理水の流通が不可能となり、容器40から被処理水が溢れ出た場合には、容器40から溢れ出た被処理水がフィルタ6をバイパスして水受け皿2に流れる流路が構成されることになる。これにより、前記各実施例同様にフィルタ6が詰まった場合であっても、係るフィルタ6に詰まったスケールを除去するまでの間の被処理水の循環を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施例のスケール回収システムの概略構成図である。
【図2】図1のスケール回収システムの系統図である。
【図3】本発明の他の実施例(第2実施例)のスケール回収システムの系統図である。
【図4】図3のスケール回収システムの動作のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施例のスケール回収システムの他の系統図である。
【図6】本発明のもう一つの他の実施例(第3実施例)のスケール回収システムの系統図である。
【図7】図5のスケール回収システムの動作のタイミングチャートである。
【図8】本発明の第4実施例のスケール回収システムを模式的に示した系統図である。
【図9】本発明の第5実施例のスケール回収システムを模式的に示した系統図である。
【符号の説明】
【0091】
VW 空気除菌装置
C クーリングタワー
P 循環ポンプ
2 水受け皿
2A、2B 空間
3 エレメント
4 電解処理手段
5 スケール回収手段
6 フィルタ
7、8、9、10 配管
11 電解槽
12、13 電極
15 給水配管
17 流路
20 分解触媒(次亜塩素酸分解手段)
22 配管
24 弁装置
25 三方弁
27 ヒーター(加熱手段)
30 コンデンサ
35 回路
40 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に循環供給される被処理水中のスケールを除去するシステムであって、
前記被処理水中に浸漬されて当該被処理水を電気化学的に処理する少なくとも一対の電極と、該電極の下流側に設けられたスケール回収手段とを備え、該スケール回収手段を経た前記被処理水を分流し、一方を前記負荷に供給した後、前記電極からの前記被処理水と合流させて前記スケール回収手段の入口側に戻すと共に、他方を前記電極の入口側に戻すことを特徴とするスケール除去システム。
【請求項2】
前記被処理水が前記スケール回収手段をバイパスして流れる流路を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスケール除去システム。
【請求項3】
前記被処理水中の次亜塩素酸を分解する次亜塩素酸分解手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスケール除去システム。
【請求項4】
前記電極による電気化学的処理を所定の条件下で行うと共に、当該電気化学的処理が行われていない状態で前記次亜塩素酸分解手段を機能させることを特徴とする請求項3に記載のスケール除去システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−100191(P2008−100191A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286098(P2006−286098)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】