説明

スズ−亜鉛複合酸化物粉体、スズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法、電子写真用キャリアおよび電子写真用現像剤

【課題】所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物の粉体を提供する。
【解決手段】体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズ−亜鉛複合酸化物粉体、スズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法、電子写真用キャリアおよび電子写真用現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成において2成分現像剤に用いられるキャリアとして、芯材の表面を樹脂材料で被覆することにより被覆層を設けることが行なわれている。この被覆層の電気抵抗を調整する方法としては、樹脂成分中に導電粉を分散させることにより調整する技術が知られている。ここで用いられる導電粉としては、カーボンブラック、金属粉、酸化金属粉等が知られており、特にカーボンブラックが汎用に使用されている。
【0003】
具体的には、キャリア芯材の表面に被覆層を有し、該被覆層にシリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化スズまたはカーボンブラックから選択される無機粉末を含有するキャリアが提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、キャリア芯材の表面に樹脂と低抵抗粒子を含有する被覆層を有する電子写真用キャリアにおいて、該低抵抗粒子としてカーボンブラック、マグネタイト、チタンブラック、酸化亜鉛、および酸化スズからなる化合物群から選ばれる化合物の少なくとも1種を添加する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、スパッタリング用ターゲットやイオンプレーティング用ターゲットとして用いられるスズおよび亜鉛を含んだ酸化物焼結体が知られており、例えば、実質的にスズ、亜鉛、および酸素からなる酸化物焼結体であって、亜鉛がZn/(Zn+Sn)の原子数比として0.05以上0.48以下含有され、かつ、主としてスズ酸亜鉛化合物相と酸化スズ相とから構成される酸化物焼結体が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−202381公報
【特許文献2】特開2008−233328公報
【特許文献3】特開2007−314364公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物の粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
非晶質体である請求項1に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
減圧下にて450℃以上900℃以下での熱処理が施されている請求項1または請求項2に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下である請求項3に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
スズ−亜鉛複合酸化物粉体に対し、減圧下にて450℃以上900℃以下で熱処理を施す工程を経て請求項1または請求項2に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体を製造するスズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下である請求項5に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
磁性体を含む芯材と、
前記芯材を被覆し、且つ体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する被覆層と、
を備える電子写真用キャリアである。
【0014】
請求項8に係る発明は、
磁性体を含む芯材と、前記芯材を被覆し、且つ体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する被覆層と、を備える電子写真用キャリア、
および、電子写真用トナーを含有する電子写真用現像剤である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物の粉体が提供される。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、非晶質体でない場合に比べ、容易に低抵抗化と小粒径化を行い得るスズ−亜鉛複合酸化物粉体が提供される。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、減圧下での熱処理を施さないまたは熱処理の温度が450℃以上900℃以下の範囲でない場合に比べ、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物粉体が提供される。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下の範囲でない場合に比べ、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物粉体が提供される。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、減圧下での熱処理を施さないまたは熱処理の温度が450℃以上900℃以下の範囲でない場合に比べ、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物粉体を容易に製造し得る製造方法が提供される。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下の範囲でない場合に比べ、所望の抵抗率を備えた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物粉体を容易に製造し得る製造方法が提供される。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、被覆層に体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有しない場合に比べ、スズ−亜鉛複合酸化物粉体の含有によって所望の抵抗率を備えた淡色な被覆層を有する電子写真用キャリアが提供される。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、被覆層に体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物を含有したキャリアを用いない場合に比べ、スズ−亜鉛複合酸化物粉体の含有によって所望の抵抗率を備え、形成される画像における色点や色のくすみなどの画質劣化の発生が抑制された電子写真用現像剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る電子写真用現像剤を用いた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る電子写真用現像剤を用いたプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の電子写真用キャリアおよび電子写真用現像剤の実施形態について詳細に説明する。
【0025】
[スズ−亜鉛複合酸化物粉体]
本実施形態に係るスズ−亜鉛複合酸化物粉体は、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下である。
尚、「粉体」とは、固体が粒子になって多数集合している状態であるものをさす。その平均粒径(面積平均粒径)は10nm以上5000nm以下が好ましく、更に10nm以上1000nm以下がより好ましい。
この面積平均粒径は、SEMの画像から測定され、具体的には、SEM画像中の50個から100個の粒子の粒径を測定し、それらの粒子の平均を求めることにより測定される。
【0026】
−スズ−亜鉛複合酸化物粉体の低抵抗化−
スズ−亜鉛複合酸化物粉体は通常淡色であるものの抵抗率が高い。このスズ−亜鉛複合酸化物粉体を、淡色のまま十分な電気抵抗を付与し得る程度に低抵抗化する方法としては、特に限定されるものではないが、減圧下にて熱処理を施す方法によって達成されることを見出した。減圧下にて熱処理を施すことによりスズ−亜鉛複合酸化物粉体は低抵抗化され、淡色で且つ求められる範囲(即ち1×10Ω・cm以下)の体積抵抗率を有するスズ−亜鉛複合酸化物粉体が得られる。
【0027】
−体積抵抗率−
前記スズ−亜鉛複合酸化物粉体の体積抵抗率は、更に1×10Ω・cm以下であることがより好ましく、1×10Ω・cm以下であることが特に好ましい。
【0028】
尚、「スズ−亜鉛複合酸化物粉体の体積抵抗率」は、三菱化学アナリテック社製の粉体抵抗測定ユニット(MCP−PD51)を用い且つ測定条件を以下の通り設定することにより体積抵抗率が測定される。
(測定条件)
・印加電圧リミッタ:90V
・使用プローブ:四探針プローブ (電極間隔:3.0mm、電極半径:0.7mm、試料半径:10.0mm)
・荷重4.00kN:圧力12.7MPa
本明細書に記載の数値は上記の方法にて測定されたものである。
【0029】
−製造方法−
スズ−亜鉛複合酸化物粉体の具体例としては、特に限定されるものではないが、ZnSnOおよびZnSnO等が挙げられる。
【0030】
また、前述の通り上記スズ−亜鉛複合酸化物粉体の体積抵抗率を1×10Ω・cm以下の範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば減圧下にて熱処理を施す方法が挙げられる。より具体的には、スズ−亜鉛複合酸化物粉体を減圧下にて450℃以上900℃以下の温度で熱処理を施すことが好ましく、更には450℃以上600℃以下の範囲がより好ましく、更に500℃以上600℃以下であることが特に好ましい。
【0031】
減圧の範囲としては、真空度が10Pa以上3kPa以下が好ましく、更には180Pa以上3kPa以下がより好ましく、670Pa以上3kPa以下が特に好ましい。
尚、熱処理の際における真空度は、真空熱処理炉のポートにクリスタルイオンゲージを取り付け、それと接続した真空度表示計にて測定される。本明細書に記載の数値は該方法にて測定したものである。
【0032】
熱処理の時間は0.5時間以上が好ましく、更には2時間以上がより好ましい。
【0033】
また、スズ−亜鉛複合酸化物粉体は非晶質体であることが好ましい。
スズ−亜鉛複合酸化物粉体が非晶質体であることにより、容易に低抵抗化し得ると共に、良好に解砕し得るとの特性を有し、小粒径化することが容易となる。尚、後述するとおりスズ−亜鉛複合酸化物粉体を導電剤としてキャリアにおける被覆層に含有させる場合、該被覆層は通常0.5μm以上5μm以下の範囲に制御されるため、そこに添加される導電剤の粒径もより小粒径であることが好ましい。
尚、スズ−亜鉛複合酸化物粉体が非晶質体であるか否かは、X線回折測定により確認される。
また、スズ−亜鉛複合酸化物粉体を非晶質体に制御するには、乾燥、熱処理時の温度を結晶化温度以下にする等の方法が挙げられる。
【0034】
また、スズ−亜鉛複合酸化物粉体は淡色であることが好ましく、具体的には、以下の測定による「色差ΔE」が20以下であることが好ましく、更には10以下であることがより好ましい。尚、下限値は特に限定されず低ければ低いほどよい。
−色差ΔEの測定方法−
0.1mg/ml濃度のポリエステル樹脂溶液に、0.1mg/ml濃度の導電剤試料の溶液を混合してサンプル溶液を得る。このサンプル溶液を、ミリポア社製フィルター(直径47mm、孔径0.05μm、セルロース)にて吸引ろ過し、トナーバインダー層を形成する(面積10cm)。その後、前記トナーバインダー層を自然乾燥させ、120℃にて熱定着を行って色評価パッチサンプルを形成する。作製した色評価パッチサンプルの測色をx−rite939(x−rite社製)を用いて行い、且つリファレンスとしてミリポア社製の前記フィルターのみの測色を行い、リファレンスと色評価パッチサンプルとの色差ΔEを、下記式(1)より算出する。
ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 式(1)
(式(1)において、ΔL*=L*reference−L*sample、Δa*=a*reference−a*sample、Δb*=b*reference−b*sampleを表す。)
【0035】
[電子写真用キャリア]
次いで、本実施形態に係る電子写真用キャリアについて詳細に説明する。
【0036】
本実施形態に係る電子写真用キャリア(以下、単に「キャリア」と称する場合がある)は、磁性体を含む芯材と、前記芯材を被覆し、且つ体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する被覆層と、を備えることを特徴とする。
【0037】
キャリアの被覆層に含有する導電剤として例えばカーボンブラックを用いた場合、該カーボンブラックが濃色であるために被覆層自体も濃色となる。このキャリアとトナーとを現像装置内で混合する際に該キャリアには衝撃が加わるため、前記被覆層に剥がれが生じる場合があり、剥がれた被覆層は現像の際にトナーと共に画像部や非画像部に保持されて、濃色の被覆層による色点や色のくすみなどの画質劣化が発生する。
これに対し本実施形態に係るキャリア、特に前述の製造方法によって得られた淡色のスズ−亜鉛複合酸化物粉体を被覆層に含有するキャリアは、被覆層に十分な電気抵抗を付与し得る程度に抵抗率が低いスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する。尚、該スズ−亜鉛複合酸化物粉体は淡色であるため、該キャリアにおいては求められる電気抵抗を保持しつつ且つ淡色である被覆層が得られる。被覆層が淡色であることから、例え前記のごとく被覆層に剥がれが生じた場合であっても、形成される画像における色点や色のくすみなどの発生は抑制される。
【0038】
<被覆層>
(導電剤)
前述の通り、被覆層に含有される導電剤として体積抵抗率が1×10Ω・cm以下である、前述の本実施形態に係るスズ−亜鉛複合酸化物粉体を用いる。
【0039】
−併用される導電剤−
また、本実施形態に係る被覆層においては、スズ−亜鉛複合酸化物粉体以外の導電剤を併用してもよい。
併用される導電剤として用いられる材料としては、具体的には、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛、金属(例えば金、銀、銅)、カーボンブラック、酸化チタン、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等が挙げられる。また併用される導電剤として、金属ナノ粒子を用いてもよい。金属ナノ粒子は、1つの粒子の大きさがnmオーダーの金属粒子であり、この金属粒子としては、金属(合金を含む)または金属酸化物による粒子が挙げられる。上記金属ナノ粒子の材料としては、例えば、周期律表の8族、9族、10族、11族、12族、13族、14族および15族から選択される1種以上の単体、合金、または酸化物が挙げられ、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Alの金属や、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Sn、Bi、Zn、Fe、Coの中から選択される二種以上の金属からなる合金や、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Sn、Bi、Zn、Fe、Coの中から選択される金属の酸化物が挙げられる。また、上記金属、合金、または金属酸化物に、Ga,Al,Tb,Nb等をドープ(添加)したものが挙げられる。
これらの中でも、特に併用する導電剤としては、酸化スズ(SnO)が好ましい。
【0040】
(樹脂)
被覆層を構成する樹脂としては、マトリックス樹脂として使用されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂およびポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<芯材>
芯材は、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、鉄、鋼、ニッケル、若しくはコバルト等の磁性金属粒子、これらの磁性金属とマンガン、クロム、若しくは希土類等との合金、フェライト若しくはマグネタイト等の磁性酸化物粒子、または磁性粒子とバインダー樹脂とを含む磁性粒子分散型の芯材等が挙げられる。
【0042】
また上記フェライトとしては、例えば、Mn、Ca、Li、Mg、Cu、Zn、Srなどの金属との混合物が挙げられる。
芯材の体積電気抵抗値としては、例えば、1×10Ω・cm以上1×1010Ω・cm以下の範囲が挙げられる。
尚、上記体積電気抵抗値は、以下の方法で測定した値をいう。中温中湿下(温度20℃、湿度50%RH)で、芯材を2×10−4の断面積を有する容器に厚み1mmになるように充填し、その後、充填した芯材に、金属製部材により1×10kg/mの荷重をかける。該金属製部材と容器の底面電極との間に10V/mの電界が生じる電圧を印加し、その際の電流値から算出した値を体積電気抵抗値とする。
【0043】
芯材の体積平均粒径としては、10μm以上500μm以下が好ましく、更に30μm以上150μm以下がより好ましく、30μm以上100μm以下が特に好ましい。
なお、この体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、BECKMAN COULTER社製)を用いて測定された値をいう。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径とする。
【0044】
<キャリアの製造方法>
本実施形態に係るキャリアの製造方法は、特に限定されるものではなく、乾式法、湿式法等の方法を採用し得る。尚、特に乾式法にて好適に製造される。
以下に、本実施形態に係るキャリアの製造方法について、一例を挙げて説明する。
【0045】
被覆層を形成する方法として、前述の樹脂の原料および導電剤としてのスズ−亜鉛複合酸化物粉体、並びにその他の成分(例えば併用される導電剤等)を混合した溶液(被覆層形成用塗布液)を、芯材に付着させ、加熱する方法が挙げられる。
芯材の表面に上記被覆層形成用塗布液を付着させた後、例えば70℃に加熱し、その後更に130℃に上昇させて、樹脂を硬化させ被覆層を形成する。
【0046】
なお、芯材表面に上記被覆層形成用塗布液を付着させる方法は特に限定されず、具体的には、芯材を被覆層形成用塗布液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用塗布液を芯材の表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用塗布液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で芯材と被覆層形成用塗布液とを混合し溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0047】
こうして形成される被覆層の膜厚としては、0.5μm以上5μm以下の範囲が好ましく、更には1μm以上3μm以下の範囲がより好ましい。
【0048】
[電子写真用現像剤]
次に本実施形態の電子写真用現像剤(以下、「現像剤」と称す場合がある)について説明する。本実施形態の現像剤は、上記キャリアと、トナーと、を含むものである。
ここで、トナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、例えば、トナー:キャリア=1:100乃至20:100の範囲が好ましく、更には3:100乃至15:100の範囲がより好ましい。
【0049】
トナーとしては、公知のものが利用され、その製造方法も特に限定されるものではない。トナーの製造方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤等の成分を混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と着色剤、離型剤、帯電制御剤等の成分の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、帯電制御剤等の成分の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と着色剤、離型剤、帯電制御剤等の成分の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が使用される。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法が使用される。
これらの方法の中でも、水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が良く、乳化重合凝集法が特に良い。
【0050】
トナーは、結着樹脂と着色剤とを含み、更に離型剤を含むことが良く、また、必要であれば、シリカや帯電制御剤を用いてもよい。なお、トナーの体積平均粒径としては2μm以上12μm以下が好ましく、3μm以上9μm以下が好ましい。
なお、トナーの体積平均粒径は、LS−Particle−Size−Analyzer(COULTER社)を用い、体積粒度分布に対し小径側から累積分布を描き、累積50%となる粒径として求めたものである。
【0051】
上記結着樹脂としては、例えば、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体および共重合体が例示される。特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0052】
また、着色剤としては、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0053】
離型剤としては、例えば、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
【0054】
また、帯電制御剤としては公知のものが使用され、例えばアゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。なお、湿式製法でトナーを製造する場合水に溶解しにくい素材を使用するのが良い。
本実施の形態で用いられるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナーであってもよく、磁性材料を含有しない非磁性トナーであってもよい。
【0055】
トナーには種々の目的で外添剤粒子を外添してもよく、例えば無機酸化物を添加してもよい。これらの無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、酸化チタン、メタチタン酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化クロム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の粒子が挙げられる。
【0056】
トナーが外添剤を含む場合は、トナー粒子および外添剤をヘンシェルミキサーあるいはVブレンダー等で混合することによって、トナーが製造される。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0057】
[画像形成装置]
次に、前述の本実施形態に係る電子写真用現像剤を用いた画像形成装置について説明する。
上記画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、帯電された前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記静電潜像を前述の本実施形態に係る電子写真用現像剤におけるトナーによって、トナー像として現像する現像装置と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写装置と、を有することを特徴とする。上記画像形成装置は、必要に応じて前記潜像保持体をクリーニング部材で摺擦し転写残留成分をクリーニングするクリーニング装置等のその他の装置を備えていてもよい。
以下、上記画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0058】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像装置を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着自在なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0059】
図1は、上記画像形成装置の一例である4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成装置)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定めた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着自在なプロセスカートリッジであってもよい。
【0060】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定めた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像装置)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0061】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0062】
第1ユニット10Yは、潜像保持体として機能する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定めた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写装置)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0063】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0064】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定めた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
【0065】
現像装置4Y内には、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定めた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定めた1次転写位置へ搬送される。
【0066】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定めた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0067】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0068】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写装置)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが接触している隙間に予め定めたタイミングで給紙され、予め定めた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出装置(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0069】
この後、記録紙Pは定着装置28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0070】
[プロセスカートリッジ]
図2は、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング装置)113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を表す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0071】
図2で示すプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかに、感光体107、帯電ローラ108、クリーニング装置113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてよい。上記プロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電ローラ108、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えるものであってもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の実施例を具体的に挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0073】
〔実施例1〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の合成および低抵抗化1>
まず、以下の方法によりスズ−亜鉛複合酸化物粉体である「ZnSnO」(白色粉末)を合成した。
スズ酸ナトリウム3水和物(和光純薬社製)66部を純水に溶解させた。また、塩化亜鉛(和光純薬社製)34部を塩酸水溶液にて溶解させ、前記スズ酸ナトリウム3水和物を溶解させた液に注入し、スリーワンモーター(新東科学株式会社 HEIDON BL600)にて150rpmで30分間攪拌した。その後、沈殿物の水洗およびろ過を、導電率が10mS/m以下になるまで繰り返した。その後、200℃で乾固した。
【0074】
遊星ボールミルに1mmジルコニアビーズを充填し、さらに前記より得られたZnSnOを65部、エタノールを35部入れて、3時間解砕を行い、その後、試料を大気下500℃で熱処理を行った。SEMの観察により測定した面積平均粒子径は300nmであった。
【0075】
次いで、この試料に対し、減圧加熱を行なうための装置(フルテック社製、高温真空管状雰囲気電気炉)を用いて、減圧下1kPaにおいて500℃で1時間の熱処理を施し、試料1を得た。
【0076】
−体積抵抗率の測定−
該熱処理前後におけるZnSnOのそれぞれの体積抵抗率を、三菱化学アナリテック社製粉体抵抗測定ユニット(MCP−PD51)を使用し前述の方法にて測定を行ったところ、熱処理前における体積抵抗率は10Ω・cm(13MPa下)であったのに対し、熱処理後は3×10Ω・cmとなり、低抵抗化された。
【0077】
−X線回折測定−
尚、上記熱処理後の試料1について、X線回折測定装置(ブルカーエイエックス(株)社製、D8DISCOVER)を用いてX線回折測定を行ったところ、「非晶質」であることがわかった。
【0078】
−色−
また、上記熱処理後の試料1の色は白色から肌色に近い淡色であった。この色を評価するため、下記の色評価パッチを作製した。
0.1mg/ml濃度のポリエステル樹脂溶液に、0.1mg/ml濃度の上記熱処理後の試料1の溶液を混合してサンプル溶液を得た。このサンプル溶液を、ミリポア社製フィルター(直径47mm、孔径0.05μm、セルロース)にて吸引ろ過し、トナーバインダー層を形成した(面積10cm)。その後、前記トナーバインダー層を自然乾燥させ、120℃にて熱定着を行って色評価パッチサンプルを形成した。作製した色評価パッチサンプルの測色をx−rite939(x−rite社製)を用いて行い、且つリファレンスとしてミリポア社製の前記フィルターのみの測色を行い、リファレンスと色評価パッチサンプルとの色差ΔEを、下記式(1)より算出した。
ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2 式(1)
(式(1)において、ΔL*=L*reference−L*sample、Δa*=a*reference−a*sample、Δb*=b*reference−b*sampleを表す。)
その結果、上記色評価パッチサンプルの上記レファレンスとの色差は「5」であった。
【0079】
〔実施例2〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の低抵抗化2>
実施例1に記載の方法により合成、解砕したZnSnOに対し、実施例1に用いた装置を用いて減圧下1kPaにおいて900℃で1時間の熱処理を施し、試料2を得た。SEMの観察により測定した面積平均粒子径は600nmであった。
【0080】
−体積抵抗率の測定−
該熱処理後における試料2の体積抵抗率を測定したところ1×10Ωcmであり、低抵抗化された。
−X線回折測定−
この試料2のX線回折測定を、実施例1に用いた装置を用いて行なったところ、ZnSnOとSnOであることがわかった。
【0081】
−色−
また、上記熱処理後の試料2の色は白色から肌色に近い淡色であった。この色を評価するため、実施例1に記載の方法で色評価パッチサンプルを作製し、測色を行った結果、リファレンスとの色差は「6」であった。
【0082】
〔実施例3〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の合成および低抵抗化3>
スズ−亜鉛複合酸化物粉体であるZnSnOを化学合成法(炭酸塩法)を用いて作製した。具体的には、和光純薬製の硝酸亜鉛・6水和物7.4gを純水50mlに溶解させ、また和光純薬製の塩化スズ・2水和物2.8gを2M塩酸水溶液50mlに溶解させ、先の硝酸亜鉛水溶液と混合した。この溶液に炭酸ナトリウム0.5M/Lの溶液をpH7になるまで注入し、その後30分間攪拌した。純水での洗浄とろ過を、ろ過液が10mS/m以下になるまで繰り返して沈殿物を除去し、その後100℃で乾燥して、大気下において900℃1時間の熱処理を行った。
この試料の解砕を実施例1に記載の方法で行なった。
更にその後、実施例1に用いた装置を用いて減圧下1kPaにおいて900℃で1時間の熱処理を施し、試料3を得た。SEMの観察により測定した面積平均粒子径は500nmであった。
【0083】
−体積抵抗率の測定−
該熱処理後における試料3の体積抵抗率を測定したところ2×10Ωcmであった。
−X線回折測定−
この試料3のX線回折測定を、実施例1に用いた装置を用いて行なったところ、ZnSnO単相であることがわかった。
【0084】
−色−
また、上記熱処理後の試料3の色を評価するため、実施例1に記載の方法で色評価パッチサンプルを作製し、測色を行った結果、リファレンスとの色差は「5」であった。
【0085】
〔実施例4〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の合成および低抵抗化4>
スズ−亜鉛複合酸化物粉体であるZnSnOを化学合成法(炭酸塩法)を用いて作製した。具体的には、和光純薬製の硝酸亜鉛・6水和物8.9gを純水50mlに溶解させ、また和光純薬製の塩化スズ・2水和物6.7gを2M塩酸水溶液50mlに溶解させ、先の硝酸亜鉛水溶液と混合した。この溶液に炭酸ナトリウム0.5M/Lの溶液をpH7になるまで注入し、その後30分間攪拌した。純水での洗浄とろ過を、ろ過液が10mS/m以下になるまで繰り返して沈殿物を除去し、その後100℃で乾燥して、大気下において500℃1時間の熱処理を行った。
この試料の解砕を実施例1に記載の方法で行なった。
更にその後、実施例1に用いた装置を用いて減圧下1kPaにおいて500℃で1時間の熱処理を施し、試料4を得た。SEMの観察により測定した面積平均粒子径は300nmであった。
【0086】
−体積抵抗率の測定−
該熱処理後における試料4の体積抵抗率を測定したところ2×10Ωcm(13MPa下)であった。
−X線回折測定−
この試料4のX線回折測定を、実施例1に用いた装置を用いて行なったところ、「非晶質」であることがわかった。
【0087】
−色−
また、上記熱処理後の試料4の色は白色から肌色に近い淡色であった。この色を評価するため、実施例1に記載の方法で色評価パッチサンプルを作製し、測色を行った結果、リファレンスとの色差は「5」であった。
【0088】
〔比較例1〕
導電材として、三井金属社製の導電性酸化物(パストラン6010/酸化スズ系)を準備した。これを比較試料1と称す
−体積抵抗率の測定−
該比較試料1の体積抵抗率を測定したところ1×10Ωcmであった。
−色−
また、上記比較試料1の色を評価するため、実施例1に記載の方法で色評価パッチサンプルを作製し、測色を行った結果、リファレンスとの色差は「24」であった。
【0089】
【表1】



【0090】
〔実施例5〜6および比較例2〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の低抵抗化5〜7>
実施例1に記載の方法により得た減圧加熱前のZnSnOに対し、実施例1に用いた装置を用いて減圧下1kPaにおいて、400℃(比較例2),450℃(実施例5),600℃(実施例6)で1時間の熱処理を施し、試料5〜7を得た。該熱処理後における試料5〜7の体積抵抗率および色差を下記表2に示す。
また、減圧下1kPaにおいて650℃を超える温度で1時間の熱処理を施した場合には、ZnSnOのピークが観測され始めた。
【0091】
【表2】



【0092】
〔実施例7〜11、比較例3〜5〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の低抵抗化8〜15>
実施例1に記載の方法により得た減圧加熱前のZnSnOに対し、実施例1に用いた装置を用いて、下記表3に記載の真空度にて、500℃で1時間の熱処理を施し、試料8〜15を得た。該熱処理後における試料8〜15の体積抵抗率、色差を下記表3に示す。
【0093】
【表3】



【0094】
〔実施例12〜14、比較例6〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の低抵抗化16〜19>
実施例2に記載の方法により得た減圧加熱前のZnSnOに対し、実施例1に用いた装置を用いて、下記表4に記載の真空度にて、900℃で1時間の熱処理を施し、試料16〜19を得た。該熱処理後における試料16〜19の体積抵抗率、色差を下記表4に示す。
【0095】
【表4】



【0096】
〔比較例7、8〕
<スズ−亜鉛複合酸化物粉体の合成>
スズ−亜鉛複合酸化物粉体であるZnSnOを化学合成法(炭酸塩法)を用いて作製した。具体的には、和光純薬製の硝酸亜鉛・6水和物8.9gを純水50mlに溶解させ、また和光純薬製の塩化スズ・2水和物6.7gを2M塩酸水溶液50mlに溶解させ、先の硝酸亜鉛水溶液と混合した。この溶液に炭酸ナトリウム0.5M/Lの溶液をpH7になるまで注入し、その後30分間攪拌した。純水での洗浄とろ過を、ろ過液が10mS/m以下になるまで繰り返して沈殿物を除去し、その後100℃で乾燥して、大気下において900℃1時間の熱処理を行い、試料20を得た。この試料20の体積抵抗率を測定したところ1×10Ωcm(13MPa下)であった。
更にこの試料20を、Ar雰囲気下(比較例7),N雰囲気下(比較例8)において900℃で1時間の熱処理を施した。これらそれぞれのサンプルの体積抵抗率を測定したところ、何れも1×10Ωcmであった。また、色差はいずれも3であった。
【0097】
<評価:キャリアの作製および画像の形成>
−キャリアの作製−
上記実施例1乃至3および比較例1で得た各試料を導電剤として用いてキャリアを製造した。
まず、芯材としてMn−Mg−Srフェライト粒子(体積平均粒径:35μm)を用い、また導電剤として上記実施例および比較例で得た各試料をそれぞれ使用した。被覆層用の樹脂としてシクロヘキシルメタクリレートとメタクリレートとの共重合体樹脂液3部に、前記芯材を100部と、前記導電剤を0.8部加え、真空脱気型ニーダーに入れて70℃に加熱しながら30分間攪拌し、減圧しながら攪拌して溶剤を除去した。製造した試料を75μm目開きメッシュにて篩分することによってキャリアを得た。
【0098】
−トナーの作製−
・乳化液(非結晶性樹脂ラテックス(A1))の調製
テレフタル酸ジメチル97.1部、イソフタル酸58.3部、無水ドデセニルコハク酸53.3部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物94.9部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物241部、ジブチルスズオキシド0.12部を窒素雰囲気下で、180℃で6時間攪拌した。その後減圧にしながら220℃で5時間攪拌し、分子量が30000になったら、無水トリメリット酸8部を加えさらに2時間攪拌した。重量平均分子量Mw=45900、数平均分子量Mn=7900の非結晶性ポリエステルである樹脂A1を得た。
【0099】
樹脂A1 300部を酢酸エチル120部、イソプロピルアルコール75部を加え、25℃で樹脂を溶解し、その後10%アンモニア水10.4部を加えたのち、この混合物にイオン交換水1200部を徐々に滴下していくと転相して得られた乳化液から酢酸エチルを留去し、体積平均粒子径0.17μmの非結晶性樹脂ラテックス(A1)を得た。
【0100】
・乳化液(非結晶性樹脂ラテックス(B1))の調製
テレフタル酸ジメチル97.1部、イソフタル酸38.8部、無水ドデセニルコハク79.9部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物94.9部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物241部、ジブチルスズオキシド0.12部を窒素雰囲気下で、180℃で6時間攪拌した。その後減圧にしながら220℃で2時間攪拌し、分子量が12000になったら、無水トリメリット酸9部を加えさらに1時間攪拌した。重量平均分子量Mw=14500、数平均分子量Mn=5300の非結晶性ポリエステルである樹脂B1を得た。
【0101】
樹脂B1 300部を酢酸エチル120部、イソプロピルアルコール75部に25℃で溶解し、10%アンモニア水10.4部を加えたのち、この混合物にイオン交換水1200部を徐々に滴下していくと転相して得られた乳化液から酢酸エチルを留去し、体積平均粒子径0.15μmの非結晶性樹脂ラテックス(B1)を得た。
【0102】
・乳化液(結晶性樹脂ラテックス(C1))の調製
ドデカン2酸230.3部、1,9−ノナンジオール160.3部、ジブチルスズオキシド0.12部を窒素雰囲気下で、180℃で6時間攪拌した。その後減圧にしながら4時間攪拌し、重量平均分子量Mw=24200、数平均分子量Mn=9900の結晶性ポリエステル樹脂である樹脂C1を得た。
【0103】
樹脂C1 300部を酢酸エチル105部、イソプロピルアルコール105部を加え、65℃で樹脂を溶解し、その後10%アンモニア水15.5部を加えたのち、この混合物にイオン交換水1200部を徐々に滴下していくと転相して得られた乳化液から酢酸エチルを留去し、体積平均粒子径0.13μmの結晶性樹脂ラテックス(C1)を得た。
【0104】
・顔料分散液の調製
下記組成のものを混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)と超音波照射とにより分散し体積平均粒径150nmの青顔料分散液を得た。
・カーボンブラック顔料 R330(キャボット社製):50部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC:5部
・イオン交換水:200部
【0105】
・離型剤分散液の調製
下記組成のものを混合し、97℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)にて分散した。その後、ゴーリンホモジナイザー(盟和商事製)で分散処理し、105℃、550kg/cmの条件で20回処理して微粒子化することにより、体積平均粒径190nmの離型剤分散液を得た。
・ワックス(WEP−5、日本油脂社製):50部
・アニオン性界面活性剤ネオゲンSC:5部
・イオン交換水:200部
【0106】
・電子写真用トナーの作製
下記の組成のものを、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散した。
・非結晶性樹脂ラテックス(A1):195部
・非結晶性樹脂ラテックス(B1):195部
・結晶性樹脂ラテックス(C1):52部
・イオン交換水:250部
・顔料分散液:33.5部
・離型剤分散液:67.5部
・架橋剤(オキサゾリン基を有する架橋剤、エポクロスWS−500):1.8部
その後、10%硫酸アルミニウム水溶液75部を加えフラスコ内の内容物を攪拌しながら45℃まで加熱攪拌し、45℃で30分間保持した(コア作製)。
その後、追加の非結晶性樹脂ラテックス(A1)105部、および非結晶性樹脂ラテックス(B1)105部を添加し、30分攪拌した。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が6.5μmの凝集粒子が生成していることが確認された。水酸化ナトリウム水溶液で、pHを7.5に調整し、その後、温度を上げて90℃にしたのち2時間かけて凝集体を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、電子写真用トナーを得た。
【0107】
−像現像剤の作製−
前記キャリア100部と上記トナー8部とをV型ブレンダーで20分間攪拌し現像剤を作製した。
【0108】
−画像の形成−
得られた現像剤を画像形成装置(富士ゼロックス社製、商品名:DOCUPrint2220)にセットし、画像を形成した。得られた画像を目視により評価した。
実施例1乃至3で得られた試料1乃至試料3を用いて作製したキャリアによる画像は、比較例1で準備した比較用試料1を用いて作製したキャリアによる画像に比べて、キャリアの被覆層剥がれによる画質欠陥やハーフトーンにおける色相悪化が抑制され、画質が良好であった。
【符号の説明】
【0109】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ
28、115 定着装置
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
P、300 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体。
【請求項2】
非晶質体である請求項1に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体。
【請求項3】
減圧下にて450℃以上900℃以下での熱処理が施されている請求項1または請求項2に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体。
【請求項4】
前記熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下である請求項3に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体。
【請求項5】
スズ−亜鉛複合酸化物粉体に対し、減圧下にて450℃以上900℃以下で熱処理を施す工程を経て請求項1または請求項2に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体を製造するスズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理の際における真空度が10Pa以上3kPa以下である請求項5に記載のスズ−亜鉛複合酸化物粉体の製造方法。
【請求項7】
磁性体を含む芯材と、
前記芯材を被覆し、且つ体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する被覆層と、
を備える電子写真用キャリア。
【請求項8】
磁性体を含む芯材と、前記芯材を被覆し、且つ体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であるスズ−亜鉛複合酸化物粉体を含有する被覆層と、を備える電子写真用キャリア、
および、電子写真用トナーを含有する電子写真用現像剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−66990(P2012−66990A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275026(P2010−275026)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】