説明

スタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレーム

【課題】収納物の大きさ、高さに合わせ容器を嵩上げできるスタッキングおよびネステイング可能な容器を開発する。
【解決手段】スタッキングおよびネスティングが可能な容器Aの上縁フランジ1のポケット部4a,5a,4b,5bの近くに夫々位置決め孔13,15および係合孔14,16を開設し、内周縁に容器Aのポケット部4a,5a,4b,5b,9a,10a,9b,10bに合致する切込部54a,54b,55a,55b,59a,59b,60a,60bを形成したフレームBを形成し、該フレームBの下部フランジ32の下面に前記位置決め孔に嵌合するテーパ軸状ガイド突起33,35および前記係合孔に係合する鉤状突起34,36を形成し、該フレームBの上部フランジ31には前記位置決め孔13,15および係合孔14,16と同位置同形状に位置決め孔43,45および係合孔44,46を開設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッキングおよびネスティングが可能なプラスチック製容器の上縁に必要に応じて装着することにより、収納物の大きさ、高さに合わせて嵩上げすることのできるスタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレームの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、既存の容器の上縁に収納物の大きさ、高さに応じてフレームを着脱することにより、該容器の収容能力が調整され、容器の利用効率を向上させる容器の嵩上げフレームを開示するものである。
【特許文献1】実用新案登録番号第2521865号公報
【0003】
一方、側壁の一部を外方向に膨出させることによりポケット部が形成されたプラスチック製容器であって、下段の容器に対して上段の容器を水平面内で180度回転し、或いは回転することなく乗せることにより、容器を多段に積み上げ(スタッキング)られ、或いは下段の容器内に上段の容器の略下半部が挿入された状態で積み重ね(ネスティング)られ非使用時に減容できる物流用容器は周知のとおりである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようにスタッキングおよびネスティングが可能なプラスチック製容器に上記従来の嵩上げフレームを装着すると、ポケット部が該嵩上げフレームによって封鎖されるためにネスティングができなくなるという問題がある。
また、ポケット部が封鎖されないように嵩上げフレームに切込部を形成することが考えられたが、そうした場合、該フレームの強度が弱くなり、プラスチック成形するものであることから特に変形し易く、容器との重ね合わせがうまくできなくなるという問題がある。
また、スタッキング作業は通常、下段の容器の上に上段の容器を乗せた後、上段の容器を水平にスライドさせることで真直に積み上げられるようにするものであるが、嵩上げフレームを装着した状態でスタッキング作業をすると、スライド時に嵩上げフレームに大きな横向荷重が掛かることから該嵩上げフレームが外方にずれたり外れるおそれがあった。
本発明はこのような問題点を解消し得るスタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレームを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために請求項1に記載の発明は、相対する側壁の少なくとも2個所を外方向に膨出させることによりポケット部を形成し、下段の容器に対して上段の容器を水平面内で180度回転し、或いは回転することなく乗せることにより、下段の容器の上縁フランジ上に上段の容器が積み上げられ、或いは下段の容器内に上段の容器の略下半部が挿入された状態で積み重ねられる容器において、上縁フランジの両ポケット部間で両ポケット部近くに夫々位置決め孔および係合孔を開設するとともに、内周縁に前記ポケット部に合致する切込部を形成することにより前記ポケット部を封鎖することなく該容器の上縁フランジ上に重ねられるフレームを形成し、該フレームの各辺は上部フランジと下部フランジとが横断面コ字形なるように連接されたものであり、下部フランジの下面に前記位置決め孔に嵌合するテーパ軸状ガイド突起および前記係合孔に係合する鉤状突起を形成してなることを特徴とする。
このため、多少変形したフレームであっても、ずれたり外れるおそれなく容器の上縁フランジ上に確実に装着される。
【0006】
また請求項2に記載の発明は、フレームの上部フランジには前記容器の上縁フランジに開設された位置決め孔および係合孔と同位置同形状に位置決め孔および係合孔を開設したことを特徴とする。
このため、必要に応じて同形のフレームを重ねて装着することができ、収納物の大きさ、高さに合わせた嵩上げができる。
【0007】
また請求項3に記載の発明は、上記嵩上げ用フレームにおける各辺の中央部を下方に開口するコ字形の横断面形状に形成したことを特徴とする。
このため、嵩上げ用フレームに作業者の手が掛けられ持ち上げられるおそれがなくなり、そのためにフレームが外れ容器が脱落する事故を起こすおそれがない。
【発明の効果】
【0008】
この嵩上げ用フレームを装着することにより、スタッキングおよびネスティングが可能であるという容器本来の機能を損なうことがない。従って、この嵩上げ用フレームを装着すれば、スタッキングおよびネスティングが可能な容器においても収納物の大きさ、高さに合わせた嵩上げが可能となる。このため、容器の利用効率,用途範囲を高められる。
【実施例1】
【0009】
次に本発明の実施例を図面に従い説明する。図1は本発明に係るプラスチック製容器の斜視図である。該容器Aは、上端開口縁の全周に上縁フランジ1が一体に形成され、該上縁フランジの下側に補強フランジ2が一体に形成され、相対する長側壁3a,3bにその一部を外方向に膨出させることにより容器Aの略半分の深さのポケット部4a,5a,4b,5bがそれぞれ所定間隔を離して形成されている。そして該ポケット部4aと点対称位置なるように長側壁3bの外側面に支脚6bが形成され、ポケット部5aと点対称位置なるように長側壁3bの外側面に支脚7bが形成され、ポケット部4bと点対称位置なるように長側壁3aの外側面に支脚7aが形成され、ポケット部5bと点対称位置なるように長側壁3aの外側面に支脚6aが形成される。また、相対する短側壁8a,8bにその一部を外方向に膨出させることにより容器Aの略半分の深さのポケット部9a,10a,9b,10bがそれぞれ所定間隔を離して形成され、該ポケット部9aと点対称位置なるように短側壁8bの外側面に支脚11bが形成され、ポケット部10aと点対称位置なるように短側壁8bの外側面に支脚12bが形成され、ポケット部9bと点対称位置なるように短側壁8aの外側面に支脚11aが形成され、ポケット部10bと点対称位置なるように短側壁8aの外側面に支脚12aが形成される。
【0010】
このため、該容器Aは、下段の容器に対して上段の容器を回転させることなく乗せることにより、下段の容器の上縁フランジ1上に上段の容器の支脚6a,6b,7a,7b,11a,11b,12a,12bが乗って容器内容物に荷重を掛けることなく多段に積み上げられる(スタッキング)とともに、下段の容器に対して上段の容器を水平面内で180度回転させて乗せることにより、下段の容器の各ポケット部4a,5a,4b,5b,9a,10a,9b,10b内に点対称位置に形成された上段の容器の各支脚6a,6b,7a,7b,11a,11b,12a,12bが収まることで、約半分の高さに積み重ねられ(ネスティング)減容する。
【0011】
また、図2,図3に示したように、上縁フランジ1の両ポケット部4a,5a間で両ポケット部近くに円形の位置決め孔13および長方形状の係合孔14をそれぞれ貫通状に開設し、また、両ポケット部4b,5b間で両ポケット部近くにも同形の位置決め孔15および長方形状の係合孔16を貫通状に開設している。また、両ポケット部9a,10a間にも円形の位置決め孔17および切欠円形の係合孔18が貫通状に開設される。また、両ポケット部9b,10b間に円形の位置決め孔19が貫通状に開設され、両ポケット部9b,10bの外側に切欠円形の係合孔20が貫通状に開設される。
【0012】
また、該容器Aの四隅上縁に上縁フランジ1の内周を切り込むような形態で相隣る側壁を外方に突出させ段部21a〜21dを形成している。また、長側壁3a,3bに位置する上縁フランジ1の中央部は、図4に横断面形状を示したように、下方に開口するコ字形に形成され、その下側に容器を持ち上げるときに指が掛けられるようにしている。なお、22は長側壁3aの外面に周知のカード差し(内容物の品名、属性、コード番号、バーコード等が記載された伝票を挟むためのもの)を取り付けるために上縁フランジ1の中央部に貫通状に形成された取付孔である。また、ネスティング時に上段の容器のカード差しが下段の容器の内面に衝突しないようにするため長側壁3bの内面は図1に示されるように凹窪状に形成されている。
【0013】
一方、図5はこの容器Aの上縁フランジ1上に重ねられる嵩上げ用フレームBの斜視図、図6は該フレームBを裏返したときの斜視図である。該フレームBは、容器Aの上縁フランジ1と同形の長方形枠状で、その各辺は上部フランジ31と下部フランジ32とが横断面コ字形に連接された形態である。そして、該フレームBの内周縁に前記容器Aの各ポケット部4a,4b,5a,5b,9a,9b,10a,10bに合致する切込部54a,54b,55a,55b,59a,59b,60a,60bを形成することにより、該各ポケット部を封鎖することなく該容器の上縁フランジ上に重ね得るようにしている。また、下部フランジ32の下面に前記位置決め孔13,15,17,19に嵌合するテーパ軸状ガイド突起33,35,37,39を形成するとともに、前記係合孔14,16,18,20に係合する鉤状突起34,36,38,40を形成している。
【0014】
また、上部フランジ31には前記容器の上縁フランジ1に開設された位置決め孔13,15,17,19および係合孔14,16,18,20と同位置同形状に位置決め孔43,45,47,49および係合孔44,46,48,50を開設してなる。なお、テーパ軸状ガイド突起33,35,37,39は鉤状突起34,36,38,40よりも長く下方に突出している。また、前記段部21a〜21dに合致する垂下片51a〜51dが該フレームBの四隅内周縁に一体に形成されているとともに、該垂下片51a〜51dの真上の相当する該フレームBの四隅内周縁に前記段部21a〜21dと同様に内周を切り込むような形態の段部61a〜62dが形成されている。なお、フレームBの各辺の中央部を下方に開口するコ字形の横断面形状に形成されている。
【0015】
このため、該フレームBを上縁フランジ1上に装着するに際しては、該フレームBを上縁フランジ1上に乗せて下方に押圧することにより、先ずテーパ軸状ガイド突起33,35,37,39が位置決め孔13,15,17,19に嵌入し、そのとき該ガイド突起のテーパ面が該位置決め孔の内周縁に摺接することにより、該フレームBの各辺が成形精度が十分でなくて外方或いは内方に多少変形していたとしても、その摺接に伴う反力の水平方向成分により該フレームBの変形が矯正されつつ下降するので、該フレームBが変形していても鉤状突起34,36,38,40を係合孔14,16,18,20に確実に合致させ係合させることができる。なお、前記位置決め孔13,15,17,19の周囲は上記押圧力に耐えられるように図示したように他部分よりも肉厚に成形されている。
【0016】
また、位置決め孔13,15および係合孔14,16は上縁フランジ1の両ポケット部4a,4b,5a,5b間で両ポケット部近くに開設されていることから、変形し易い該フレームBの長辺が矯正され切込部54a,54b,55aを横ズレすることなくポケット部4a,4b,5a,5bに高精度で合致させることができるとともに、フレームを装着した状態でのスタッキング作業で上段の容器をスライドさせたときに該フレームに大きな横向荷重が掛かっても該フレームがずれたり外れるおそれがない。このため、フレームBの成形上の変形による製品不良が発生する割合、或いは使用による変形,破損する割合を大幅に減少させることができる。
【0017】
また、フレームBの各辺の中央部を下方に開口するコ字形の横断面形状に形成したことから、図10に示したように、該フレームを容器Aに装着したとき該開口が該容器の上面によって閉鎖されることから、該フレームに運搬作業時に手が掛けられることなく、そのために該フレームが外れ容器が脱落するような事故を起こすおそれがない。
【0018】
また、フレームBの上部フランジ31に位置決め孔43,45,47,49および係合孔44,46,48,50が開設されていることから、該フレームBにさらに必要に応じて同形のフレームを重ねて装着することもでき、収納物の大きさ、高さに合わせた嵩上げをさらにすることができる。このため、この嵩上げ用フレームを必要数装着することにより容器の利用効率,用途範囲を一層高めることができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施形態に示した構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えばガイド突起,位置決め孔,鉤状突起および係合孔は、容器Aの上縁フランジおよびフレームBの長辺のみに設けてもよく、またその数もこの実施例に限定されるものでない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
上記実施例は、上段の容器を180度回転させて乗せることによりネスティングする容器を説明したが、ポケット部の配置次第で上段の容器を180度回転させて乗せることによりスタッキングし、回転させることなく乗せることによりネスティングするタイプの周知の容器についても、本発明により上記実施例と同様に嵩上げ用フレームを装着できる構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例であるスタッキングおよびネスティングが可能な容器の斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】図1のC−C線断面図。
【図5】本発明の実施例である嵩上げ用フレームの斜視図。
【図6】図5の嵩上げ用フレームを下面側から見た斜視図。
【図7】本発明の実施例である容器に嵩上げ用フレームを装着したときの斜視図。
【図8】図7のD−D線断面図。
【図9】図7のE−E線断面図。
【図10】図7のF−F線断面図。
【符号の説明】
【0022】
A 容器
B 嵩上げ用フレーム
1 上縁フランジ
3a,3b 長側壁
4a,5a,4b,5b,9a,10a,9b,10b ポケット部
6a,6b,7a,7b,11a,11b,12a,12b 支脚
8a,8b 短側壁
13,15,17,19 位置決め孔
14,16,18,20 係合孔
31 上部フランジ
32 下部フランジ
54a,54b,55a,55b,59a,59b,60a,60b 切込部
33,35,37,39 テーパ軸状ガイド突起
34,36,38,40 鉤状突起
43,45,47,49 位置決め孔
44,46,48,50 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する側壁の少なくとも2個所を外方向に膨出させることによりポケット部を形成し、下段の容器に対して上段の容器を水平面内で180度回転し、或いは回転することなく乗せることにより、下段の容器の上縁フランジ上に上段の容器が積み上げられ、或いは下段の容器内に上段の容器の略下半部が挿入された状態で積み重ねられる容器において、上縁フランジの両ポケット部間で両ポケット部近くに夫々位置決め孔および係合孔を開設するとともに、内周縁に前記ポケット部に合致する切込部を形成することにより前記ポケット部を封鎖することなく該容器の上縁フランジ上に装着されるフレームを形成し、該フレームの各辺は上部フランジと下部フランジとが横断面コ字形なるように連接されたものであり、下部フランジの下面に前記位置決め孔に嵌合するテーパ軸状ガイド突起および前記係合孔に係合する鉤状突起を形成してなることを特徴としたスタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレーム。
【請求項2】
フレームの上部フランジには前記容器の上縁フランジに開設された位置決め孔および係合孔と同位置同形状に位置決め孔および係合孔を開設した請求項1に記載のスタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレーム。
【請求項3】
フレームの各辺の中央部を下方に開口するコ字形の横断面形状に形成した請求項1または2に記載のスタッキングおよびネスティングが可能な容器とその嵩上げ用フレーム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate