説明

スタック

【課題】スタックレイン現象を防止することができ、煙道の内壁面に付着する煤塵の除去の容易化及び安全な保守管理を実現することが可能なスタックを提供する。
【解決手段】排ガスGが上昇する煙道Aを有するスタック本体2と、スタック本体2の煙道Aに配置されて煙道Aを上昇する排ガスGと衝突することで排ガスGに含まれる水分を凝縮水にして捕捉する円弧状の凝縮水捕捉体4を複数備え、凝縮水捕捉体4は、捕捉した凝縮水を煙道Aの上端側から下端側に導くべく螺旋状に並べて配置されて、スタック本体2の内壁面2aに沿った状態でそれぞれ固定され、隣接する凝縮水捕捉体4のうちの下側に位置する凝縮水捕捉体4の上端部における受け部4bは、上側に位置する凝縮水捕捉体4の下端部における捕捉辺4aの下方に間隔をおいて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や廃棄物焼却場に設置される排ガス放出用のスタックに係わり、いわゆるスタックレイン現象を防ぐ機能を有するスタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタックレイン現象とは、スタック内の煙道を上昇する排ガスがその途中で冷却され、この排ガスに含まれる水分が凝縮水となって、排ガスとともにスタック外部に放出されて周囲に降りそそぐ現象であり、風向きや風の強さによっては、上記凝縮水が人の生活区域に達することもあるので、好ましいことではない。
【0003】
従来、このようなスタックレイン現象を防ぐ装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このスタックレイン防止装置は、スタックの煙道の適宜位置に配置された複数枚の固定案内板と、これらの固定案内板の下方において煙道の内壁面に配置された環状のドレン部を備えている。
複数枚の固定案内板は、煙道の軸を中心にして径方向に振り分けて固定されていて、上昇する排ガスに旋回を与えるようになっており、固定案内板の各先端部は、いずれも煙道の内壁面に接近している。
【0004】
このスタックレイン防止装置では、煙道を上昇する排ガスを複数枚の固定案内板に衝突させて旋回を与える際に、この排ガスに含まれる水分を複数枚の固定案内板に付着させて捕捉し、この捕捉した付着水を煙道の内壁面を介して環状のドレン部に導くことで、回収又は排水するようになっている。
【0005】
また、これとは別のスタックレイン防止装置として、例えば、特許文献2に記載されたものがある。このスタックレイン防止装置は、スタックの上端部に形成された拡径部と、この拡径部の上端周縁に形成されたスリットを介して連通する捕獲部を備えており、このスタックレイン防止装置では、拡径部からスリットを介して捕獲部に導入した排ガスがこの捕獲部内で衝突を繰り返しつつ外部に流れるようになすことで、排ガスに含まれる水分を捕獲部で捕らえるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58-013919号公報
【特許文献2】特開平03-157113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した従来のスタックレイン防止装置では、前者のスタックレイン防止装置の場合、スタックの煙道においてその軸を中心にして複数枚の固定案内板を径方向に振り分けて固定するようにしているので、固定案内板や煙道の内壁面に付着する煤塵の除去が容易ではないという問題がある。
【0008】
一方、後者のスタックレイン防止装置の場合、スタックの上端部に位置している都合上、保守管理には高所での作業を強いられるという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、スタックレインを防止することができるのは勿論のこと、煙道の内壁面に付着する煤塵の除去の容易化及び安全な保守管理を実現することが可能であるスタックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るスタックは、排ガスが上昇する煙道を有するスタック本体と、このスタック本体の煙道に配置されて該煙道を上昇する排ガスと衝突することで該排ガスに含まれる水分を凝縮水にして捕捉する凝縮水捕捉体を備え、前記凝縮水捕捉体は、捕捉した凝縮水を前記煙道の上端側から下端側に導くべく該煙道を形成するスタック本体の内壁面に固定されている構成としたことを特徴としており、この構成のスタックを前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0011】
また、本発明の請求項2に係るスタックは、円弧状を成す凝縮水捕捉体を複数備え、これらの凝縮水捕捉体は、前記煙道の上端側から下端側にかけて螺旋状に並べて配置されて、前記スタック本体の内壁面に沿った状態でそれぞれ固定され、隣接する凝縮水捕捉体のうちの下側に位置する凝縮水捕捉体の上端部は、上側に位置する凝縮水捕捉体の下端部の下方に間隔をおいて配置される構成としている。
【0012】
本発明に係るスタックにおいて、凝縮水捕捉体を煙道の上端側から下端側にかけて螺旋状に連続する形状とすることも可能である。
【0013】
また、本発明に係るスタックにおいて、凝縮水捕捉体で凝縮水を捕捉し易くする排ガスの旋回流を煙道内部に生じさせるために、凝縮水捕捉体の排ガスと衝突する部分に捻りを与えたり、翼形断面を持たせたりすることが望ましい。
【0014】
本発明の請求項1に係るスタックでは、煙道を上昇する排ガスがスタック本体の内壁面に固定された凝縮水捕捉体と衝突すると、排ガスに含まれる水分が凝縮水として凝縮水捕捉体に捕捉される。
そして、凝縮水捕捉体に捕捉された凝縮水は、この凝縮水捕捉体を伝わって煙道の上端側から下端側に導かれて、回収又は煙道の外部に排出されることとなり、その結果、スタックレイン現象が生じる可能性が少なく抑えられることとなる。
【0015】
つまり、本発明に係るスタックでは、凝縮水を捕捉して煙道の下端側に導く凝縮水捕捉体をスタック本体の内壁面に固定しているだけなので、この凝縮水捕捉体や内壁面に付着する煤塵の除去が簡単なものとなり、高所でのメンテナンス作業を強いられるようなこともないので、保守管理における安全性が向上することとなる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係るスタックでは、複数の凝縮水捕捉体を煙道の上端側から下端側にかけて螺旋状に並べて配置しているので、煙道内部に排ガスの旋回流が生じて凝縮水捕捉体で凝縮水を捕捉し易くなる。
加えて、隣接する凝縮水捕捉体同士が上下方向に間隔をおいて配置されるので、凝縮水捕捉体が螺旋状を成す一体物である場合と比べて、材料コストの低減が図られることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスタックでは、上記した構成としているので、煙道を形成するスタック本体の内壁面に付着する煤塵の除去作業の容易化及び保守管理における安全性の向上を実現したうえで、スタックレイン現象が生じるのを防止することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係るスタックの一部を破断して示す全体斜視説明図(a),部分平面説明図(b)及び要部の拡大断面説明図(c)である。
【図2】図1におけるスタックの凝縮水捕捉体の他の形態例を示す拡大断面説明図(a)及びさらに他の形態例を示す拡大断面説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るスタックの一実施例を示しており、この実施例では、本発明に係るスタックがボイラの排ガス通路上における湿式脱硫塔の下流側に設置されるスタックである場合を例に挙げて説明する。
【0020】
図1(a)に示すように、このスタック1は、先細り形状を成すスタック本体2と、このスタック本体2の下端部に接続する水平管3と、複数の凝縮水捕捉体4を備えており、図外の湿式脱硫塔を通過したボイラからの排ガスGは、水平管3を介してスタック本体2の煙道A内に導入され、そして、この煙道Aを上昇してスタック本体2の上端開口から放出される。
【0021】
複数の凝縮水捕捉体4はいずれも円弧状を成しており、これらの凝縮水捕捉体4は、煙道Aの上端側から下端側にかけてほぼ螺旋を成すようにして並べて配置されて、スタック本体2の内壁面2aに沿った状態でそれぞれ固定されている。複数の凝縮水捕捉体4はいずれもアングル材から成っており、L字状断面の隅部が下方向を向くようにしてそれぞれ固定されていて、煙道Aの内側に向く辺を捕捉辺4aとしている。
【0022】
この場合、図1(b)にも示すように、凝縮水捕捉体4は、スタック本体2への取り付け位置において円周の半分強の長さを有しており、隣接する凝縮水捕捉体4,4のうちの下側に位置する凝縮水捕捉体4の上端部における捕捉辺4aは、上側に位置する凝縮水捕捉体4の下端部における捕捉辺4aの下方に間隔をおいて重ねて配置されるようになっていて、図1(c)に示すように、幅dだけ煙道Aの内側に張り出す幅広の受け部4bとして形成されている。なお、この煙道Aの内側に張り出す幅広の受け部4bは、幅dだけ張り出さない受け部4bとして形成される場合もある。
【0023】
つまり、上側に位置する凝縮水捕捉体4の捕捉辺4aを伝わって下端部に導かれた凝縮水がこの下端部から落下する際に、図1(b)における矢印に示すように、凝縮水を下側に位置する凝縮水捕捉体4の上端部における受け部4bで遺漏無く受けることができるようになっている。
【0024】
この実施例によるスタック1では、複数の凝縮水捕捉体4の各捕捉辺4aに捕捉された凝縮水は、螺旋状に並ぶ凝縮水捕捉体4の各捕捉辺4aを順次通過して煙道Aの上端側から下端側に導かれて、図外の湿式脱硫塔内の水槽に回収又は煙道Aの外部に排出されることとなるので、スタックレイン現象が生じる可能性が少なく抑えられることとなる。
【0025】
この際、複数の凝縮水捕捉体4は、スタック本体2の内壁面2aに固定してあるだけなので、この凝縮水捕捉体4や内壁面2aに付着する煤塵の除去が簡単なものとなり、加えて、高所でのメンテナンス作業を強いられるようなこともないので、保守管理における安全性が向上することとなる。
【0026】
また、この実施例によるスタック1では、複数の凝縮水捕捉体4を煙道Aの上端側から下端側にかけて螺旋状に並べて配置しているので、煙道Aの内部に排ガスGの旋回流が生じて凝縮水捕捉体4の捕捉辺4aにおいて凝縮水を捕捉し易くなるうえ、隣接する凝縮水捕捉体4,4同士を上下方向に間隔をおいて配置しているので、凝縮水捕捉体4を螺旋状の一体物とする場合と比べて、材料コストの低減が図られることとなる。
【0027】
上記した実施例では、凝縮水捕捉体4がアングル材から成る構成としているが、これに限定されるものではなく、他の構成として、例えば、図2(a)に示すように、チャンネル材から成る凝縮水捕捉体14をコ字状断面の溝が下を向くように内壁面2aに固定する構成とすることができるほか、図2(b)に示すように、同じくチャンネル材から成る凝縮水捕捉体24をコ字状断面の溝が上を向くように内壁面2aに固定する構成とすることができる。
【0028】
また、上記した実施例では、スタック1のスタック本体2が、先細り形状を成している場合を示したが、スタック本体2が円筒形状を成していてもよい。
【0029】
さらに、上記した実施例では、本発明に係るスタックがボイラの排ガス通路上における湿式脱硫塔の下流側に設置されるスタックである場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、廃棄物焼却場に設置されるスタックであってもよい。
【0030】
本発明に係るスタックの構成は、上記した実施例の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 スタック
2 スタック本体
2a スタック本体の内壁面
4,14,24 凝縮水捕捉体
4a,14a,24a 凝縮水捕捉体の捕捉辺
4b,14b,24b 凝縮水捕捉体の受け部
A 煙道
G 排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが上昇する煙道を有するスタック本体と、
このスタック本体の煙道に配置されて該煙道を上昇する排ガスと衝突することで該排ガスに含まれる水分を凝縮水にして捕捉する凝縮水捕捉体を備え、
前記凝縮水捕捉体は、捕捉した凝縮水を前記煙道の上端側から下端側に導くべく該煙道を形成するスタック本体の内壁面に固定されている
ことを特徴とするスタック。
【請求項2】
円弧状を成す凝縮水捕捉体を複数備え、これらの凝縮水捕捉体は、前記煙道の上端側から下端側にかけて螺旋状に並べて配置されて、前記スタック本体の内壁面に沿った状態でそれぞれ固定され、隣接する凝縮水捕捉体のうちの下側に位置する凝縮水捕捉体の上端部は、上側に位置する凝縮水捕捉体の下端部の下方に間隔をおいて配置される請求項1に記載のスタック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−257060(P2011−257060A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131856(P2010−131856)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】