スタンチョン
【課題】家畜へのストレスを抑制できるばかりでなく、回動板の下端部と水平棒のストッパ突部との当接係合が不用意に解除されるのを防止でき、家畜の捕獲が確実となるスタンチョンを提供する。
【解決手段】スタンチョン21のロック手段31は、互いに離間対向する前後一対の対向プレート32を有し、両対向プレート32には第1支軸41を架設する。第1支軸41には、この第1支軸41を中心として上下方向に回動する第1回動板43の上端部を取り付ける。両対向プレート32間には、ストッパ突部47を有する左右方向の水平棒46を挿通する。固定柵棒および回動柵棒27を前傾状態に配置し、かつ第1支軸41を水平状態に配置する。
【解決手段】スタンチョン21のロック手段31は、互いに離間対向する前後一対の対向プレート32を有し、両対向プレート32には第1支軸41を架設する。第1支軸41には、この第1支軸41を中心として上下方向に回動する第1回動板43の上端部を取り付ける。両対向プレート32間には、ストッパ突部47を有する左右方向の水平棒46を挿通する。固定柵棒および回動柵棒27を前傾状態に配置し、かつ第1支軸41を水平状態に配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに離間対向する固定柵棒および回動柵棒で牛等の家畜の首を挟持して家畜を捕獲するスタンチョンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載されたスタンチョンや図5ないし図8に示すスタンチョン等が知られている。
【0003】
図5ないし図8に示すスタンチョン1は、複数の固定柵棒2と、固定柵棒2と離間対向し作用方向への回動により鉛直状の作用状態となり自重に基づく非作用方向への回動により傾斜状の非作用状態になり作用状態時には牛等の家畜Aの首を固定柵棒2とともに左右から挟持する複数の回動柵棒3と、回動柵棒3を前後方向の軸4を中心として回動可能に支持する複数の略く字状の屈曲柵棒5とを備えている。
【0004】
また、スタンチョン1は、回動柵棒3を作用状態にロックして家畜Aを捕獲するロック手段6を備えている。ロック手段6は、回動柵棒3の上端部に設けられ互いに離間対向する前後一対の対向プレート7を有し、これら両対向プレート7には第1支軸8および第2支軸9が架設されている。第1支軸8には第1回動板11の上端部が回動可能に取り付けられ、この第1回動板11はその第1支軸8を中心として上下方向に回動する。第2支軸9には第2回動板12の上端部が回動可能に取り付けられ、この第2回動板12はその第2支軸9を中心として上下方向に回動する。
【0005】
さらに、両対向プレート7間には水平棒13が挿通され、この水平棒13は、第1回動板11の下端部が当接係合するストッパ突部14と、棒状のハンドル部15とを有している。また、水平棒13は、第2回動板12の下端部が当接係合するストッパを兼ねた軸支持体16にて左右方向の軸線を中心として回動可能に支持されている。
【0006】
そして、図7に示すように、回動柵棒3の作用状態時には、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合により回動柵棒3の非作用方向への回動が規制され、回動柵棒3が所望の作用状態にロックされる。また、このロックを解除する場合、図8に示すように、水平棒13のハンドル部15を把持して水平棒13を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が解除され、回動柵棒3が自重で非作用方向へ回動して傾斜状の非作用状態となる。
【特許文献1】特開2005−229811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5ないし図8に示す従来のスタンチョン1では、回動柵棒3の作用状態時に牛等の家畜Aの肩が固定柵棒2および回動柵棒3にぶつかるため、家畜Aは餌を食べづらく、また家畜Aにとって苦痛で、ストレスを与えてしまう問題がある。
【0008】
そこで、例えば図9に示すように、固定柵棒2および回動柵棒3等を上端ほど家畜Aの胴体から離れるように前傾させて配置することが考えられるが、この図9に示す構成では次のような問題がある。
【0009】
すなわち、回動柵棒3の前傾により第1支軸8が前端ほど下方に位置するように傾斜し、この第1支軸8の傾斜により第1回動板11も傾斜状態に配置されるため、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が不用意に解除されるおそれがある。
【0010】
つまり、図10に示すように、第1回動板11が傾斜状態に配置されると、第1回動板11が自重で第1支軸8に沿って前方に若干ずれ、第1回動板11の前端部が前側の対向プレート7における後側の対向プレート7との対向面と接触する。このため、家畜Aが回動柵棒3に衝突し、その勢いで第1回動板11が傾斜状の第1支軸8を中心として上方に回動した際に、その第1回動板11の下方への戻りが、第1支軸8が水平状の場合に比べて遅くなり、その間に回動柵棒3が自重で非作用方向へ回動し、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が解除されてしまうことがある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、家畜が餌を食べやすくなり、苦痛による家畜へのストレスを抑制できるばかりでなく、回動板の下端部と水平棒のストッパ突部との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒を作用状態に適切に維持でき、家畜の捕獲が確実となるスタンチョンに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のスタンチョンは、固定柵棒と、この固定柵棒と離間対向し、作用方向への回動により作用状態となり、自重に基づく非作用方向への回動により非作用状態になり、作用状態時には家畜の首を前記固定柵棒とともに挟持する回動柵棒と、この回動柵棒を作用状態にロックするロック手段とを備え、前記ロック手段は、前記回動柵棒の上端部に設けられ、互いに離間対向する前後一対の対向プレートと、これら両対向プレートに架設された支軸と、この支軸に上端部が取り付けられ、この支軸を中心として上下方向に回動する回動板と、前記両対向プレート間に挿通され、ストッパ突部を有する左右方向の水平棒とを有し、前記回動柵棒の作用状態時に、前記回動板の下端部と前記ストッパ突部との当接係合により前記回動柵棒の非作用方向への回動が規制されるスタンチョンであって、前記固定柵棒および前記回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ前記支軸が水平状態に配置されているものである。
【0013】
請求項2記載のスタンチョンは、請求項1記載のスタンチョンにおいて、ロック手段の水平棒は、ハンドル部を有し、前記ハンドル部を把持して前記水平棒を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、回動板の下端部とストッパ突部との当接係合が解除され、回動柵棒が自重で非作用方向へ回動するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定柵棒および回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ支軸が水平状態に配置されているため、家畜が餌を食べやすくなり、苦痛による家畜へのストレスを抑制できるばかりでなく、回動板の下端部と水平棒のストッパ突部との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒を作用状態に適切に維持でき、家畜の捕獲が確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のスタンチョンの一実施の形態を図1および図2を参照して説明する。
【0016】
図1において、21はスタンチョンで、このスタンチョン21は、農業畜産において、牛等の家畜Aに対して予防接種等の所定作業をするために、その家畜Aを捕獲する自動ロック式の連動スタンチョンである。
【0017】
スタンチョン21は、例えば畜舎内の飼槽部分に鉛直状に固定された固定柱22を備え、この固定柱22によって柵本体23が前傾状態に支持されている。柵本体23は、図5等に示すスタンチョン1と同様、複数の固定柵棒26と、固定柵棒26と離間対向し作用方向(図1中、反時計回り)への回動により正面視鉛直状の作用状態となり自重に基づく非作用方向(図1中、時計回り)への回動により正面視傾斜状の非作用状態になり作用状態時には牛等の家畜Aの首を固定柵棒26とともに左右から挟持する複数の回動柵棒27と、回動柵棒27をこの回動柵棒27の長手方向略中央の軸(図示せず)を中心として回動可能に支持する複数の略く字状の屈曲柵棒28とを備えている。
【0018】
そして、固定柵棒26の上端部および屈曲柵棒28の上端部は左右方向に延びる1本の上棒29に取り付けられ、固定柵棒26の下端部および屈曲柵棒28の下端部は左右方向に延びる1本の下棒30に取り付けられ、上棒29は支持アーム25を介して固定柱22の上部に取り付けられている。
【0019】
なお、図2に示されるように、固定柵棒26、回動柵棒27および屈曲柵棒28等は、上端ほど家畜Aの胴体から離れるように前方に傾斜する前傾状態に配置されている。すなわち例えば、側面視で回動柵棒27の軸線aと上下方向の鉛直線bとがなす角度αは、5〜15度、好ましくは15度である。
【0020】
また、スタンチョン21は、回動柵棒27を作用状態にロックして家畜Aを捕獲するロック手段31を備えている。ロック手段31は、回動柵棒27の上端部外周側に取り付けられ互いに離間対向する前後一対の略板状の対向プレート32を有している。
【0021】
各対向プレート32は、回動柵棒27の上端部外周面に対応した円弧面状の取付板部33と、この取付板部33の上端に一体に設けられた対向板部34とにて構成され、両対向板部34の上端部同士が連結杆35にて連結されている。対向板部34は、上下方向略中央の1箇所で折り曲げられた屈曲板にて構成され、下部に傾斜板36を有し上部に鉛直板37を有している。
【0022】
前後に互いに離間対向する両鉛直板37には、第1支軸(支軸)41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42は水平状態に配置されている。また、互いに離間対向する両傾斜板36間には、水平な上棒29が挿通されている。
【0023】
そして、水平状態の第1支軸41には略矩形板状の第1回動板(回動板)43の上端部が回動可能に取り付けられており、この水平状態に配置された第1回動板43は、その第1支軸41を中心として上下方向に回動する。また、水平状態の第2支軸42には略矩形板状の第2回動板44の上端部が回動可能に取り付けられており、この水平状態に配置された第2回動板44は、その第2支軸42を中心として上下方向に回動する。各回動板43,44は同一形状のもので、上端部に略円筒状の軸挿通部45を有し、この軸挿通部45に支軸41,42が挿通されている。
【0024】
また、互いに離間対向する両対向板部34間には、左右方向に延びる1本の水平棒46が挿通されている。そして、この水平棒46は、第1回動板43の下端部との当接係合により回動柵棒27の非作用方向への回動を規制して回動柵棒27を作用状態にロックする複数の略直方体状のストッパ突部47と、回動柵棒27のロックを解除する際に操作する棒状のハンドル部48とを有している。ストッパ突部47は、水平棒46のうち各回動柵棒27に対応する部分に突出形成され、ハンドル部48は水平棒46の端部に突出形成されている。さらに、水平棒46は、第2回動板44の下端部との当接係合により回動柵棒27が作用方向へ必要以上に回動するのを規制するストッパを兼ねた軸支持体51にて左右方向の軸線cを中心として回動可能に支持されている。
【0025】
次に、上記スタンチョン21の作用等を説明する。
【0026】
図示しない餌箱内に餌を入れると、牛等の家畜Aは、互いに離間対向する固定柵棒26および回動柵棒27間に頭を突っ込んだ後、餌に向って頭を下げる。すると、回動柵棒27の下部が家畜Aにて押され、回動柵棒27が支軸を中心として作用方向に向って回動して作用状態となり、作用状態の回動柵棒27とこの回動柵棒27と離間対向する固定柵棒26とにて家畜Aの首が挟持される。
【0027】
この回動柵棒27の作用方向への回動時には、第1回動板43の下端部が、第1回動板43の自重に基づいて水平棒46に接触した状態でこの水平棒46上をスライド移動してストッパ突部47を乗り越えた後、このストッパ突部47の端部と当接係合し、この第1回動板43の下端部とストッパ突部47との当接係合により回動柵棒27の自重に基づく非作用方向への回動が規制され、回動柵棒27が所望の作用状態にロックされ、こうして家畜Aが捕獲される。また、第2回動板44の下端部は水平棒46上をスライド移動して軸支持体51と当接係合し、この第2回動板44の下端部と軸支持体51との当接係合により回動柵棒27が作用方向へ必要以上に回動することが規制される。
【0028】
そして、作業者は、スタンチョン21で捕獲した複数頭の家畜Aに対して、予防接種等の所定作業を順次行う。
【0029】
また、所定作業終了後、家畜Aを一斉に開放する場合、作業者は、水平棒46のハンドル部48を把持し、このハンドル部48を押し下げるようにして水平棒46を左右方向の軸線cを中心に略90度回動操作する。すると、複数のストッパ突部47が水平棒46とともに回動し、第1回動板43の下端部とストッパ突部47との当接係合が解除され、回動柵棒27が自重で非作用方向へ回動して非作用状態になる。
【0030】
なお、家畜Aを開放した後には、ハンドル部48を持ち上げるようにして水平棒46を左右方向の軸線cを中心に略90度回動操作することにより、自動ロックの待機状態にしておく。
【0031】
そして、このようなスタンチョン21によれば、固定柵棒26および回動柵棒27が上端ほど家畜Aの胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ第1回動板43を回動可能に支持する第1支軸41が水平状態に配置されているため、家畜Aが餌を食べやすくなり、苦痛による家畜Aへのストレスを抑制できるばかりでなく、図10に示すような第1回動板43の下方への戻りが遅くなる不具合が発生せず、第1回動板43の下端部と水平棒46のストッパ突部47との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒27を作用状態に適切に維持でき、家畜Aの捕獲が確実となり、よって例えば予防接種等の所定作業を安全に行うことができる。
【0032】
また、例えば図3に示す構成のスタンチョン21でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
この図3のスタンチョン21では、前側の対向プレート32の対向板部34は、回動柵棒27の軸線aに沿った傾斜面状の平板34aにて構成されている。また、後側の対向プレ−ト32の対向板部34は、2箇所で折り曲げられた屈曲板34bにて構成され、この屈曲板34bは下側から順に、第1板61、第2板62および第3板63を有し、第1板61および第3板63は平板34aと平行状に配置されている。第2板62は上端ほど後方に位置するように上下方向に対して傾斜して配置されている。そして、平板34aと第3板63とに第1支軸41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42が水平状態に配置されている。なお、その他の構成に関しては図1および図2に示すスタンチョン21と同様である。
【0034】
さらに、例えば図4に示す構成のスタンチョン21でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
この図4のスタンチョン21では、前後一対の対向プレート32の対向板部34が鉛直面状の鉛直板65のみにて構成され、前後に互いに離間対向する両鉛直板に第1支軸41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42が水平状態に配置されている。なお、その他の構成に関しては図1および図2に示すスタンチョン21と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタンチョンの要部正面図である。
【図2】同上スタンチョンの側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るスタンチョンの側面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係るスタンチョンの側面図である。
【図5】従来のスタンチョンの正面図である。
【図6】同上従来のスタンチョンの側面図である。
【図7】同上従来のスタンチョンの回動柵棒の作用状態時の要部正面図である。
【図8】同上従来のスタンチョンの回動柵棒の非作用状態時の要部正面図である。
【図9】同上従来のスタンチョンの回動柵棒等を前傾させた状態の側面図である。
【図10】同上回動柵棒等を前傾させた状態の回動板を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
21 スタンチョン
26 固定柵棒
27 回動柵棒
31 ロック手段
32 対向プレート
41 支軸である第1支軸
43 回動板である第1回動板
46 水平棒
47 ストッパ突部
48 ハンドル部
A 家畜
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに離間対向する固定柵棒および回動柵棒で牛等の家畜の首を挟持して家畜を捕獲するスタンチョンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載されたスタンチョンや図5ないし図8に示すスタンチョン等が知られている。
【0003】
図5ないし図8に示すスタンチョン1は、複数の固定柵棒2と、固定柵棒2と離間対向し作用方向への回動により鉛直状の作用状態となり自重に基づく非作用方向への回動により傾斜状の非作用状態になり作用状態時には牛等の家畜Aの首を固定柵棒2とともに左右から挟持する複数の回動柵棒3と、回動柵棒3を前後方向の軸4を中心として回動可能に支持する複数の略く字状の屈曲柵棒5とを備えている。
【0004】
また、スタンチョン1は、回動柵棒3を作用状態にロックして家畜Aを捕獲するロック手段6を備えている。ロック手段6は、回動柵棒3の上端部に設けられ互いに離間対向する前後一対の対向プレート7を有し、これら両対向プレート7には第1支軸8および第2支軸9が架設されている。第1支軸8には第1回動板11の上端部が回動可能に取り付けられ、この第1回動板11はその第1支軸8を中心として上下方向に回動する。第2支軸9には第2回動板12の上端部が回動可能に取り付けられ、この第2回動板12はその第2支軸9を中心として上下方向に回動する。
【0005】
さらに、両対向プレート7間には水平棒13が挿通され、この水平棒13は、第1回動板11の下端部が当接係合するストッパ突部14と、棒状のハンドル部15とを有している。また、水平棒13は、第2回動板12の下端部が当接係合するストッパを兼ねた軸支持体16にて左右方向の軸線を中心として回動可能に支持されている。
【0006】
そして、図7に示すように、回動柵棒3の作用状態時には、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合により回動柵棒3の非作用方向への回動が規制され、回動柵棒3が所望の作用状態にロックされる。また、このロックを解除する場合、図8に示すように、水平棒13のハンドル部15を把持して水平棒13を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が解除され、回動柵棒3が自重で非作用方向へ回動して傾斜状の非作用状態となる。
【特許文献1】特開2005−229811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5ないし図8に示す従来のスタンチョン1では、回動柵棒3の作用状態時に牛等の家畜Aの肩が固定柵棒2および回動柵棒3にぶつかるため、家畜Aは餌を食べづらく、また家畜Aにとって苦痛で、ストレスを与えてしまう問題がある。
【0008】
そこで、例えば図9に示すように、固定柵棒2および回動柵棒3等を上端ほど家畜Aの胴体から離れるように前傾させて配置することが考えられるが、この図9に示す構成では次のような問題がある。
【0009】
すなわち、回動柵棒3の前傾により第1支軸8が前端ほど下方に位置するように傾斜し、この第1支軸8の傾斜により第1回動板11も傾斜状態に配置されるため、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が不用意に解除されるおそれがある。
【0010】
つまり、図10に示すように、第1回動板11が傾斜状態に配置されると、第1回動板11が自重で第1支軸8に沿って前方に若干ずれ、第1回動板11の前端部が前側の対向プレート7における後側の対向プレート7との対向面と接触する。このため、家畜Aが回動柵棒3に衝突し、その勢いで第1回動板11が傾斜状の第1支軸8を中心として上方に回動した際に、その第1回動板11の下方への戻りが、第1支軸8が水平状の場合に比べて遅くなり、その間に回動柵棒3が自重で非作用方向へ回動し、第1回動板11の下端部と水平棒13のストッパ突部14との当接係合が解除されてしまうことがある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、家畜が餌を食べやすくなり、苦痛による家畜へのストレスを抑制できるばかりでなく、回動板の下端部と水平棒のストッパ突部との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒を作用状態に適切に維持でき、家畜の捕獲が確実となるスタンチョンに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のスタンチョンは、固定柵棒と、この固定柵棒と離間対向し、作用方向への回動により作用状態となり、自重に基づく非作用方向への回動により非作用状態になり、作用状態時には家畜の首を前記固定柵棒とともに挟持する回動柵棒と、この回動柵棒を作用状態にロックするロック手段とを備え、前記ロック手段は、前記回動柵棒の上端部に設けられ、互いに離間対向する前後一対の対向プレートと、これら両対向プレートに架設された支軸と、この支軸に上端部が取り付けられ、この支軸を中心として上下方向に回動する回動板と、前記両対向プレート間に挿通され、ストッパ突部を有する左右方向の水平棒とを有し、前記回動柵棒の作用状態時に、前記回動板の下端部と前記ストッパ突部との当接係合により前記回動柵棒の非作用方向への回動が規制されるスタンチョンであって、前記固定柵棒および前記回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ前記支軸が水平状態に配置されているものである。
【0013】
請求項2記載のスタンチョンは、請求項1記載のスタンチョンにおいて、ロック手段の水平棒は、ハンドル部を有し、前記ハンドル部を把持して前記水平棒を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、回動板の下端部とストッパ突部との当接係合が解除され、回動柵棒が自重で非作用方向へ回動するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定柵棒および回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ支軸が水平状態に配置されているため、家畜が餌を食べやすくなり、苦痛による家畜へのストレスを抑制できるばかりでなく、回動板の下端部と水平棒のストッパ突部との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒を作用状態に適切に維持でき、家畜の捕獲が確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のスタンチョンの一実施の形態を図1および図2を参照して説明する。
【0016】
図1において、21はスタンチョンで、このスタンチョン21は、農業畜産において、牛等の家畜Aに対して予防接種等の所定作業をするために、その家畜Aを捕獲する自動ロック式の連動スタンチョンである。
【0017】
スタンチョン21は、例えば畜舎内の飼槽部分に鉛直状に固定された固定柱22を備え、この固定柱22によって柵本体23が前傾状態に支持されている。柵本体23は、図5等に示すスタンチョン1と同様、複数の固定柵棒26と、固定柵棒26と離間対向し作用方向(図1中、反時計回り)への回動により正面視鉛直状の作用状態となり自重に基づく非作用方向(図1中、時計回り)への回動により正面視傾斜状の非作用状態になり作用状態時には牛等の家畜Aの首を固定柵棒26とともに左右から挟持する複数の回動柵棒27と、回動柵棒27をこの回動柵棒27の長手方向略中央の軸(図示せず)を中心として回動可能に支持する複数の略く字状の屈曲柵棒28とを備えている。
【0018】
そして、固定柵棒26の上端部および屈曲柵棒28の上端部は左右方向に延びる1本の上棒29に取り付けられ、固定柵棒26の下端部および屈曲柵棒28の下端部は左右方向に延びる1本の下棒30に取り付けられ、上棒29は支持アーム25を介して固定柱22の上部に取り付けられている。
【0019】
なお、図2に示されるように、固定柵棒26、回動柵棒27および屈曲柵棒28等は、上端ほど家畜Aの胴体から離れるように前方に傾斜する前傾状態に配置されている。すなわち例えば、側面視で回動柵棒27の軸線aと上下方向の鉛直線bとがなす角度αは、5〜15度、好ましくは15度である。
【0020】
また、スタンチョン21は、回動柵棒27を作用状態にロックして家畜Aを捕獲するロック手段31を備えている。ロック手段31は、回動柵棒27の上端部外周側に取り付けられ互いに離間対向する前後一対の略板状の対向プレート32を有している。
【0021】
各対向プレート32は、回動柵棒27の上端部外周面に対応した円弧面状の取付板部33と、この取付板部33の上端に一体に設けられた対向板部34とにて構成され、両対向板部34の上端部同士が連結杆35にて連結されている。対向板部34は、上下方向略中央の1箇所で折り曲げられた屈曲板にて構成され、下部に傾斜板36を有し上部に鉛直板37を有している。
【0022】
前後に互いに離間対向する両鉛直板37には、第1支軸(支軸)41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42は水平状態に配置されている。また、互いに離間対向する両傾斜板36間には、水平な上棒29が挿通されている。
【0023】
そして、水平状態の第1支軸41には略矩形板状の第1回動板(回動板)43の上端部が回動可能に取り付けられており、この水平状態に配置された第1回動板43は、その第1支軸41を中心として上下方向に回動する。また、水平状態の第2支軸42には略矩形板状の第2回動板44の上端部が回動可能に取り付けられており、この水平状態に配置された第2回動板44は、その第2支軸42を中心として上下方向に回動する。各回動板43,44は同一形状のもので、上端部に略円筒状の軸挿通部45を有し、この軸挿通部45に支軸41,42が挿通されている。
【0024】
また、互いに離間対向する両対向板部34間には、左右方向に延びる1本の水平棒46が挿通されている。そして、この水平棒46は、第1回動板43の下端部との当接係合により回動柵棒27の非作用方向への回動を規制して回動柵棒27を作用状態にロックする複数の略直方体状のストッパ突部47と、回動柵棒27のロックを解除する際に操作する棒状のハンドル部48とを有している。ストッパ突部47は、水平棒46のうち各回動柵棒27に対応する部分に突出形成され、ハンドル部48は水平棒46の端部に突出形成されている。さらに、水平棒46は、第2回動板44の下端部との当接係合により回動柵棒27が作用方向へ必要以上に回動するのを規制するストッパを兼ねた軸支持体51にて左右方向の軸線cを中心として回動可能に支持されている。
【0025】
次に、上記スタンチョン21の作用等を説明する。
【0026】
図示しない餌箱内に餌を入れると、牛等の家畜Aは、互いに離間対向する固定柵棒26および回動柵棒27間に頭を突っ込んだ後、餌に向って頭を下げる。すると、回動柵棒27の下部が家畜Aにて押され、回動柵棒27が支軸を中心として作用方向に向って回動して作用状態となり、作用状態の回動柵棒27とこの回動柵棒27と離間対向する固定柵棒26とにて家畜Aの首が挟持される。
【0027】
この回動柵棒27の作用方向への回動時には、第1回動板43の下端部が、第1回動板43の自重に基づいて水平棒46に接触した状態でこの水平棒46上をスライド移動してストッパ突部47を乗り越えた後、このストッパ突部47の端部と当接係合し、この第1回動板43の下端部とストッパ突部47との当接係合により回動柵棒27の自重に基づく非作用方向への回動が規制され、回動柵棒27が所望の作用状態にロックされ、こうして家畜Aが捕獲される。また、第2回動板44の下端部は水平棒46上をスライド移動して軸支持体51と当接係合し、この第2回動板44の下端部と軸支持体51との当接係合により回動柵棒27が作用方向へ必要以上に回動することが規制される。
【0028】
そして、作業者は、スタンチョン21で捕獲した複数頭の家畜Aに対して、予防接種等の所定作業を順次行う。
【0029】
また、所定作業終了後、家畜Aを一斉に開放する場合、作業者は、水平棒46のハンドル部48を把持し、このハンドル部48を押し下げるようにして水平棒46を左右方向の軸線cを中心に略90度回動操作する。すると、複数のストッパ突部47が水平棒46とともに回動し、第1回動板43の下端部とストッパ突部47との当接係合が解除され、回動柵棒27が自重で非作用方向へ回動して非作用状態になる。
【0030】
なお、家畜Aを開放した後には、ハンドル部48を持ち上げるようにして水平棒46を左右方向の軸線cを中心に略90度回動操作することにより、自動ロックの待機状態にしておく。
【0031】
そして、このようなスタンチョン21によれば、固定柵棒26および回動柵棒27が上端ほど家畜Aの胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ第1回動板43を回動可能に支持する第1支軸41が水平状態に配置されているため、家畜Aが餌を食べやすくなり、苦痛による家畜Aへのストレスを抑制できるばかりでなく、図10に示すような第1回動板43の下方への戻りが遅くなる不具合が発生せず、第1回動板43の下端部と水平棒46のストッパ突部47との当接係合が不用意に解除されるのを防止できるため、回動柵棒27を作用状態に適切に維持でき、家畜Aの捕獲が確実となり、よって例えば予防接種等の所定作業を安全に行うことができる。
【0032】
また、例えば図3に示す構成のスタンチョン21でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
この図3のスタンチョン21では、前側の対向プレート32の対向板部34は、回動柵棒27の軸線aに沿った傾斜面状の平板34aにて構成されている。また、後側の対向プレ−ト32の対向板部34は、2箇所で折り曲げられた屈曲板34bにて構成され、この屈曲板34bは下側から順に、第1板61、第2板62および第3板63を有し、第1板61および第3板63は平板34aと平行状に配置されている。第2板62は上端ほど後方に位置するように上下方向に対して傾斜して配置されている。そして、平板34aと第3板63とに第1支軸41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42が水平状態に配置されている。なお、その他の構成に関しては図1および図2に示すスタンチョン21と同様である。
【0034】
さらに、例えば図4に示す構成のスタンチョン21でも、同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
この図4のスタンチョン21では、前後一対の対向プレート32の対向板部34が鉛直面状の鉛直板65のみにて構成され、前後に互いに離間対向する両鉛直板に第1支軸41および第2支軸42が架設され、各支軸41,42が水平状態に配置されている。なお、その他の構成に関しては図1および図2に示すスタンチョン21と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタンチョンの要部正面図である。
【図2】同上スタンチョンの側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係るスタンチョンの側面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係るスタンチョンの側面図である。
【図5】従来のスタンチョンの正面図である。
【図6】同上従来のスタンチョンの側面図である。
【図7】同上従来のスタンチョンの回動柵棒の作用状態時の要部正面図である。
【図8】同上従来のスタンチョンの回動柵棒の非作用状態時の要部正面図である。
【図9】同上従来のスタンチョンの回動柵棒等を前傾させた状態の側面図である。
【図10】同上回動柵棒等を前傾させた状態の回動板を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
21 スタンチョン
26 固定柵棒
27 回動柵棒
31 ロック手段
32 対向プレート
41 支軸である第1支軸
43 回動板である第1回動板
46 水平棒
47 ストッパ突部
48 ハンドル部
A 家畜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定柵棒と、
この固定柵棒と離間対向し、作用方向への回動により作用状態となり、自重に基づく非作用方向への回動により非作用状態になり、作用状態時には家畜の首を前記固定柵棒とともに挟持する回動柵棒と、
この回動柵棒を作用状態にロックするロック手段とを備え、
前記ロック手段は、
前記回動柵棒の上端部に設けられ、互いに離間対向する前後一対の対向プレートと、
これら両対向プレートに架設された支軸と、
この支軸に上端部が取り付けられ、この支軸を中心として上下方向に回動する回動板と、
前記両対向プレート間に挿通され、ストッパ突部を有する左右方向の水平棒とを有し、
前記回動柵棒の作用状態時に、前記回動板の下端部と前記ストッパ突部との当接係合により前記回動柵棒の非作用方向への回動が規制されるスタンチョンであって、
前記固定柵棒および前記回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ前記支軸が水平状態に配置されている
ことを特徴とするスタンチョン。
【請求項2】
ロック手段の水平棒は、ハンドル部を有し、
前記ハンドル部を把持して前記水平棒を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、回動板の下端部とストッパ突部との当接係合が解除され、回動柵棒が自重で非作用方向へ回動する
ことを特徴とする請求項1記載のスタンチョン。
【請求項1】
固定柵棒と、
この固定柵棒と離間対向し、作用方向への回動により作用状態となり、自重に基づく非作用方向への回動により非作用状態になり、作用状態時には家畜の首を前記固定柵棒とともに挟持する回動柵棒と、
この回動柵棒を作用状態にロックするロック手段とを備え、
前記ロック手段は、
前記回動柵棒の上端部に設けられ、互いに離間対向する前後一対の対向プレートと、
これら両対向プレートに架設された支軸と、
この支軸に上端部が取り付けられ、この支軸を中心として上下方向に回動する回動板と、
前記両対向プレート間に挿通され、ストッパ突部を有する左右方向の水平棒とを有し、
前記回動柵棒の作用状態時に、前記回動板の下端部と前記ストッパ突部との当接係合により前記回動柵棒の非作用方向への回動が規制されるスタンチョンであって、
前記固定柵棒および前記回動柵棒が上端ほど家畜の胴体から離れるように傾斜する前傾状態に配置され、かつ前記支軸が水平状態に配置されている
ことを特徴とするスタンチョン。
【請求項2】
ロック手段の水平棒は、ハンドル部を有し、
前記ハンドル部を把持して前記水平棒を左右方向の軸線を中心として回動操作すると、回動板の下端部とストッパ突部との当接係合が解除され、回動柵棒が自重で非作用方向へ回動する
ことを特徴とする請求項1記載のスタンチョン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−5644(P2009−5644A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171500(P2007−171500)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(506310050)株式会社アクト (16)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(506310050)株式会社アクト (16)
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