説明

スタンド式サンドバッグ

【課題】 組み立て、分解の簡素化を図れ、また傾けてもすぐ真っ直ぐに立つ姿勢復帰性に優れるスタンド式サンドバッグを提供する。
【解決手段】 スポンジなどの緩衝材6が充填された円筒状のバッグ本体1と、ベース10上に垂直に立設した支柱2と、水や砂などの重量物18が収納されて中央に上下貫通状の挿通孔23を有する環状の錘タンク3とを備える。錘タンク3は支柱2にこれの上方から通されてベース10上に載置される。ベース10は錘タンク3の外底面に設けた凹部26に嵌め込む。バッグ本体1は錘タンク3から上方に突出する支柱2に差し込む。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案が属する技術分野】
本考案は、空手やボクシングなどの武道練習に使用されるスタンド式サンドバッグ(本明細書においては、バッグ本体に砂に限らず、スポンジなどの緩衝材を詰めているものを含めてサンドバッグという。)に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のスタンド式サンドバッグに実公平5−22207号公報があり、これは床上などに立てて使用できるため、天井などに吊り下げて使用する在来型とは異なり、家屋の損傷などの問題がなく、任意の場所に自由に移動させて使用できる利点がある。前出の従来例は、図6に示すごとくスポンジなどの緩衝材40を詰めた円筒状のバッグ本体41を支柱42に挿通し、この支柱42の最下端部に一体的に結合したベースプレート43を合成樹脂製などの錘袋44の内底に砂などの重い粒状物45ごと収納してなる。このようなバッグ本体41は、支柱42のベースプレート43が砂などの重い粒状物45で押さえつけられることによって、安定よく垂直姿勢に支持されるため、バッグ本体41に突き、蹴り、打つなどが加えられても転倒しない。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかるに、前出の従来例では、支柱42の最下端部のベースプレート43が錘袋44の内部に粒状物45ごと収納されている。従って、その収納に際しては、先ずベースプレート43を錘袋44の内底面上に載置する状態に収納し、次いでベースプレート43の上に粒状物45を充填することになるが、この組み立て作業が甚だ煩わしい。
【0004】
また、かかる収納状態では支柱42がベースプレート43と共に錘袋44内で粒状物45の重みによる押さえ力に抗して独自に傾動可能な状態にある。このため、バッグ本体41に突き、蹴り、打つなどの衝撃力が加えられてバッグ本体41および錘袋44ごと支柱42が傾くとき、支柱42がベースプレート43で粒状物45を押し退けてバッグ本体41および錘袋44の傾き角よりも大きく傾くことがある。かかる支柱42の錘袋44内での傾きに伴い、粒状物45がベースプレート43の下面側に回り込むことがある。繰り返し使用に伴い粒状物45がベースプレート43の下面側に回り込む量が増えてくると、ベースプレート43が粒状物層内で次第に浮上する状態となる。この結果、粒状物45の重みによる押さえ力が減り、バッグ本体41が倒されたりすると、すぐに真っ直ぐに立たなくなるという問題が生じる。こうした場合は、一旦、錘袋44から支柱42ごとベースプレート43および粒状物45を全部出したうえで、ベースプレート43を錘袋44の内底面上に直接載置した当初の収納状態に入れ直して、再び粒状物45を充填する必要を生じ、この手間が面倒であった。
【0005】
またバッグ本体41の開口下端と錘袋44の開口上端どうしは連結紐47で結ぶことによって互いに連結されている。そのため、移動運搬に際し、バッグ本体41と錘袋44とを分離して運搬するにしても連結紐47をいちいち解く必要があり、これも面倒であった。
【0006】
そこで本考案の目的は、組み立ての簡素化を図れ、また傾けてもすぐ真っ直ぐに立つ姿勢復帰性に優れるスタンド式サンドバッグを提供することにある。本考案の他の目的は移動運搬や収納保管の容易化を図れるスタンド式サンドバッグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案のスタンド式サンドバッグは、図2に示すごとくベース10上に垂直に立設した支柱2と、支柱2の上部に抜き差し可能に差し込まれ、内部にスポンジやぼろ布などの緩衝材6が充填された円筒状のバッグ本体1と、支柱2のベース10とバッグ本体1の下端面との間に介在してバッグ本体1を受け止める中空の錘タンク3とからなる。錘タンク3は、中央に支柱2が挿通される上下貫通状の挿通孔23を有し、これの中空内部に砂や水などの重量物18が収容可能であり、かつ外底面にベース10が嵌まり込む凹部26を挿通孔23の開口下端と連通するよう形成してある。錘タンク3の挿通孔23の内周と支柱2との間には第1緩衝体28が介在している。ベース10は、支柱2の最下端部から放射状に配設された3本以上の足部材11からなる。足部材11と凹部26の内周との間に、第2緩衝体29が介在している。
【0008】
【作用】
上記構成のスタンド式サンドバッグは、床面上などに置いたとき錘タンク3内の重量物18の重みでベース10が床面に対し強く押さえ付けられ、支柱2はバッグ本体1を真っ直ぐに支持する。ベース10である足部材11は錘タンク3の外底面に設けた凹部26に嵌まり込んでいるので、ベース10上に錘タンク3の重量が均等に加わり、また支柱2と錘タンク3とが相対的に回転するおそれもなくて常に安定よく設置できる。従って武道練習時に、バッグ本体1に突き、蹴り、打つなどの動作を加えることでバッグ本体1が錘タンク3ごと傾いても、錘タンク3の重量で直ちに直立状に立ち戻る。
【0009】
仮に、支柱2の下部およびベース10が錘タンク3の挿通孔23および凹部26に対し剛体的に結合固定されていると、使用時にバッグ本体1および支柱2が受ける衝撃力が支柱2の下部およびベース10を介して錘タンク3にもろに加わり、錘タンク3が早期に破損したり損傷しやすい。しかし、上記構成では支柱2の下部およびベース10は錘タンク3の挿通孔23および凹部26に対し単に差し込み、また嵌め込む状態にしてあるので、使用時の衝撃が錘タンク3に直接に加わらない。
【0010】
錘タンク3の挿通孔23の内周と支柱2との間に第1緩衝体28を介在していると、使用時の衝撃で支柱2が挿通孔23の内周壁にもろに衝突してこれが破損するのを吸収緩和できる。足部材11と凹部26の内周との間にも第2緩衝体29が介在していると、使用時に足部材11から錘タンク3の底に加わる衝撃を緩和できる。
移動運搬時や収納保管時には、バッグ本体1を支柱2から抜き出し、支柱2を錘タンク3から抜き出すことで、これら三部材を容易に分解分離できる。
【0011】
【考案の実施の形態】
図1および図2において、1は円形で縦長のバッグ本体、2は支柱、3は中空の錘タンクである。バッグ本体1は、図2に示すごとく天然皮革、合成皮革あるいは合成樹脂シートなどの可撓性材料からなる円筒状の袋4内に、これの下端口5からスポンジ、又はぼろ布(ウエス)などの緩衝材6を充填してある。袋4の上端中央にはエアー抜き孔7を設け、袋4の下端口5の縁には紐8を通し、この紐8で下端口5を絞って閉じている。緩衝材6の中央にはこれの下方から支柱2を挿通可能にするための縦孔9を形成してあり、この縦孔9の開口下端は下端口5の中央部位に臨んでいる。
【0012】
図5において支柱2は、金属パイプなどからなり、下端のベース10の上に垂直に立設されている。ベース10は金属製の角形パイプなどからなる足部材11を十字状に交差させて一体的に結合してなり、足部材11の中央交差部の上面には円形の金属板からなる下部接合板12を溶接などで固定している。一方、支柱2の下端にも同じく円形の金属板からなる上部接合板13の中央部を溶接などで直角に固定している。支柱2の下端外周面部と上部接合板13の上面とが交わる入隅コーナには、複数枚の三角形状のガゼットプレート14を等間隔置きに溶接固定することにより、支柱2と上部接合板13との両者の結合強度を高めている。かくして、足部材11側の下部接合板12の上に支柱2側の上部接合板13を重ね合わして、この重合部の数箇所をボルト15とナット16とで締結固定する(図3参照)。
【0013】
錘タンク3は、図3に示すごとく中空のタンク本体17内に砂あるいは水などの重量物18が充填される。タンク本体17はプラスチック成形品であり、内筒19、外筒20、内外筒19・20間の底側を塞ぐ底壁21、および内外筒19・20間の上側を塞ぐ上壁22とで、中央に内筒19の周壁で囲まれる上下貫通状の挿通孔23を有する環状に形成されている。挿通孔23はこれの上下中間部位で最も細く絞っていて、該当部位から上方側が上方拡開状のテーパ孔23aに形成され、該当部位から下方側が下方拡開状のテーパ孔23bに形成されている。下方拡開状のテーパ孔23bは、支柱2の上端部を挿通孔23にこれの下方から挿入し易くし、その挿入後は支柱2の上下部接合板13・12およびガゼットプレート14が余裕間隙をもって納まる。挿通孔23の最も細く絞られた上下中間部位の径は支柱2の径よりも少し大きい寸法に設定してある。
【0014】
タンク本体17の上壁22には、重量物18を出し入れできる注入口24を設けてあり、この注入口24は栓25で開閉可能に塞ぐことができる。タンク本体17の底壁21の外底面には、図3および図4に示すごとく支柱2の下端の足部材11が嵌まり込む凹部26が挿通孔23の下端開口と連通するよう十字状に設けられている。外筒20の外周には補強リブ27を付けてある。
【0015】
このように構成されたバッグ本体1、支柱2および錘タンク3の三部材を組み立てるには、まず錘タンク3の中央の挿通孔23にこれの下方側から支柱2の上端を挿通するが、このとき支柱2の下端の足部材11が錘タンク3の底の凹部26に嵌まり込むように通す。これにより、足部材11の下面と錘タンク3の底壁21の外底面とが略面一の状態に納まる。また支柱2の上下部接合板13・12およびガゼットプレート14が挿通孔23のテーパ孔23b内に納まる。支柱2とテーパ孔23aの内周との間には、スポンジなどの第1緩衝体28を介在させる。その際、テーパ孔23aは上方拡開状に形成してあるので、支柱2を通した後にテーパ孔23aにこれの上方から第1緩衝体28を詰め込み易く、詰め込み後は第1緩衝体28が下方へずり落ち難くなる。足部材11と凹部26の内周との間にも、必要に応じてスポンジなどの第2緩衝体29を介在させる。具体的には足部材11に第2緩衝体29を巻き付けてある。
【0016】
次に、錘タンク3に注入口24を介して砂などの重量物18を入れる。最後に、錘タンク3の上壁22より上方へ突出する支柱2に、バッグ本体1の縦孔9を挿入することにより、図1および図2に示すごとくバッグ本体1は錘タンク3の上壁22の上に垂直姿勢で載置する状態に受け止め支持される。必要に応じて支柱2と縦孔9の内周との間にはスポンジなどの第3緩衝体30を介在させる。
【0017】
このようにして組み立てたスタンド式サンドバッグは、床面上などに置いたとき錘タンク3内の重量物18の重みでベース10である足部材11が床面に対し強く押さえ付けられ、支柱2はバッグ本体1を真っ直ぐに支持する。従って、武道練習時に、バッグ本体1に突き、蹴り、打つなどの動作を加えることでバッグ本体1が錘タンク3ごと傾いても錘タンク3の重量によってすぐ真っ直ぐに立ち戻る。
【0018】
錘タンク3の挿通孔23および凹部26に対し支柱2の下部および足部材11は、剛体的に結合固定することなく、単に差し込み、また嵌め込む状態にしてある。従って、使用時に支柱2の下部や足部材11の側から錘タンク3の内筒19や底壁21に強い衝撃がもろに伝わることを回避できる。
支柱2とテーパ孔23aの内周との間には、第1緩衝体28が介在し、また足部材11と凹部26の内周との間には、同じく第2緩衝体29が介在しているので、使用時に衝撃で支柱2が内筒19にもろに衝突して破損したり、ベース10が錘タンク3の底壁21にもろに衝突して破損するのを防止できる。
【0019】
移動運搬時や収納保管時には、バッグ本体1を支柱2から抜き出し、支柱2を錘タンク3の挿通孔23から抜き出すことで、これら三部材を容易に分解分離できるため、嵩張ることなくコンパクトな状態にまとめて梱包することができ、移動運搬や収納保管にも便利である。また錘タンク3から重量物18を注入口24から取り出すことで、軽量になって持ち運び易くなる。
【0020】
図示例の全容は以上のとおりであるが、ベース10の足部材11は支柱2の下端部から3本を水平方向に放射状に張り出すこともできる。足部材11は支柱2の下端部に、上記の上下部接合板13・12を用いずにそのまま溶接して一体的に接合してもよい。
【0021】
【考案の効果】
本考案によれば、錘タンク3の中央に挿通孔23を上下貫通状に設け、この挿通孔23に支柱2の下部を挿通できるようにしてあるので、両者を簡単に組み立てることができる。その際、支柱2のベース10である足部材11が錘タンク3の底に設けた凹部26に嵌まり込むようにしてあるので、ベース10上に錘タンク3の重量が常に均等に加わり、また支柱2と錘タンク3とが相対的に回転するおそれもなくて安定よく設置することができ、いずれの方向から突き、蹴り、打つなどの動作が加えられて傾いても、全体がすぐに真っ直ぐな姿勢に復帰し、小刻みに打つ、蹴る、突くなどの継続使用にも適している。
【0022】
錘タンク3の挿通孔23および凹部26に対して支柱2の下部およびベース10は、剛体的に結合固定することなく、単に差し込み、また嵌め込む状態にしてあるので、使用時の衝撃で支柱2の下部やベース10が錘タンク3に早期の破損や損傷を加えるのをよく抑止でき、耐久性に優れる。
【0023】
またバッグ本体1は支柱2から抜き出し、支柱2は錘タンク3から抜き出すことにより、これら三部材を容易に分解することができ、移動運搬や収納保管にも便利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】全体の外観正面図である。
【図2】全体の縦断正面図である。
【図3】図2における要部の拡大縦断正面図である。
【図4】錘タンクの底面図である。
【図5】支柱の下部と錘タンクとを示す分解斜視図である。
【図6】従来例の内部構造を示す切り欠き斜視図である。
【符号の説明】
1 バッグ本体
2 支柱
3 錘タンク
6 緩衝材
10 ベース
18 重量物
26 凹部
28 第1緩衝体

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ベース10上に垂直に立設した支柱2と、支柱2の上部に差し込まれ、内部に緩衝材6が充填されたバッグ本体1と、砂などの重量物18が収容される中空の錘タンク3とからなり、錘タンク3は、中央に支柱2が挿通される上下貫通状の挿通孔23を有し、錘タンク3の外底面に、ベース10の嵌合を許す凹部26が挿通孔23の開口下端と連通するよう凹み形成されていることを特徴とするスタンド式サンドバッグ。
【請求項2】 ベース10上に垂直に立設した支柱2と、支柱2の上部に抜き差し可能に差し込まれ、内部に緩衝材6が充填された円筒状のバッグ本体1と、支柱2のベース10とバッグ本体1の下端面との間に介在してバッグ本体1を受け止め支持する中空の錘タンク3とからなり、ベース10は、支柱2の下端から放射状に配設された3本以上の足部材11を有し、錘タンク3は、中央に支柱2が挿通される上下貫通状の挿通孔23を有し、錘タンク3の中空内部に砂などの重量物18が収容可能であり、錘タンク3の外底面に、足部材11が嵌まり込む凹部26を挿通孔23の開口下端と連通するよう凹み形成してあり、錘タンク3の挿通孔23の内周と支柱2との間に、第1緩衝体28が介在していることを特徴とするスタンド式サンドバッグ。
【請求項3】 足部材11と凹部26の内周との間に、第2緩衝体29が介在している請求項2記載のスタンド式サンドバッグ。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図5】
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【登録番号】第3054652号
【登録日】平成10年(1998)9月24日
【発行日】平成10年(1998)12月8日
【考案の名称】スタンド式サンドバッグ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−4442
【出願日】平成10年(1998)6月3日
【出願人】(596132569)エルソニック株式会社 (1)