スタンプマーカー
【課題】付着対象物に付着液を付着する際に、確実に正確に行うことができるスタンプマーカーを提供する。
【解決手段】本発明のスタンプマーカー1は、液透過部材10と、付着液が入れられる容器部材15とを有し、液透過部材10には先端部材34、ベース部材35及び固定部材36が設けられている。先端部材34の表面24には付着部20と非付着部23とを有し、先端部材34の表面24を付着対象に接触させて、付着部20の形状が転写するように、容器部材15内の付着液を付着対象に付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成する。
【解決手段】本発明のスタンプマーカー1は、液透過部材10と、付着液が入れられる容器部材15とを有し、液透過部材10には先端部材34、ベース部材35及び固定部材36が設けられている。先端部材34の表面24には付着部20と非付着部23とを有し、先端部材34の表面24を付着対象に接触させて、付着部20の形状が転写するように、容器部材15内の付着液を付着対象に付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキなどの液の付いた部分を付着対象に接触させ、付着対象に当該液を付着させて、所定の形状の付着痕を形成することができるスタンプマーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗布液を容器内に収納し、収納された塗布液をフエルトや繊維束チップなどで形成される塗布部によって塗布するマーカー類が使用されている。そして、このようなマーカー類は、塗布される対象である塗布対象に塗布液を塗布し、塗布された跡によって文字や形状を表示することができるものである。
【0003】
このような塗布対象は、紙や物品など、様々なものがあり、例えば、特許文献1には、上記のような塗布具が開示されており、当該塗布具は、液体溜部と塗布部を備え、両者の間に弁が介在されているものである。
【特許文献1】特開2001−80264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力関連設備に用いられる配管などは非破壊で検査が行われるが、この検査を行う位置がずれたりしないように、検査位置を明確にするため、このようなマーカー類によって表示してマーキングしている。しかしながら、フリーハンドなどで丸印などの印を書いたのでは、手間がかかり、また、位置の精度がばらついたりする。
【0005】
また、浸透印などのようなものを用いてマーキングする方法が考えられるが、このような方法では、マーキングがはっきり見えにくく、上記のような用途には不適当であった。
さらに、平面状でない面にマーキングする場合があるが、このような場合にも確実にマーキングできるようなものが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、付着対象物に付着液の付着を行って付着痕を形成する際に、正確に行うことができるスタンプマーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、 多孔質材料である液透過部材と、付着液が入れられる容器部材とを有し、容器部材内の付着液を液透過部材の表面側へと供給することができ、液浸透部材の表面には付着部と非付着部とを有し、液浸透部材を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであることを特徴とするスタンプマーカーである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、容器部材内の付着液を多孔質材料である液透過部材へと供給して、液透過部材の表面を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであるので、必要な場所へのマーキングを容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであることを特徴とする請求項1に記載のスタンプマーカーである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであるので、非付着部の形成を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、液浸透部材にはフエルトが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンプマーカーである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、液浸透部材にはフエルトが用いられているので、付着液の浸透性と強度を両立させることができる。
【0013】
液透過部材には先端部材とベース部材とが設けられ、容器部材内の付着液をベース部材を介して先端部材へと供給することができ、先端部材の表面には付着部と非付着部とを有するものを採用してもよい(請求項4)。
【0014】
請求項5に記載の発明は、先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われることを特徴とする請求項4に記載のスタンプマーカーである。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われるので、先端部材とベース部材との固定を簡単に行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っていることを特徴とする請求項5に記載のスタンプマーカーである。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っているので、固定部材が付着部の邪魔にならずにマーキングなどの付着痕を形成する作業を可能にすることができ、また、固定部材の取り外しが容易となり、先端部材の着脱可能な構造とすることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、固定部材には、ねじが用いられていることを特徴とする請求項6に記載のスタンプマーカーである。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、固定部材にはねじが用いられているので、固定部材の着脱を容易に行うことが可能となる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のスタンプマーカーである。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであるので、さらに、着脱を容易に行うようにすることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、付着液調節部材が設けられ、付着液調節部材は付着液の供給を調整することができるものであり、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタンプマーカーである。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、付着液の供給を調整することができる付着液調節部材が設けられており、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われるので、必要以上に付着液を供給しないようにすることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、容器部材に入れられる付着液は、白色系であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のスタンプマーカーである。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、容器部材に入れられる付着液は、白色系であるので、濃い色の付着対象に付着痕を形成した場合に、見えやすい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスタンプマーカーによれば、付着対象物に付着液を付着させる際に、確実に行うことができ、作業しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態におけるスタンプマーカー1は、図1、図2に示されるように、液透過部材10、キャップ部材11、付着液調節部材13、容器部材15を有している。そして、容器部材15内部に入れられる付着液は、液透過部材10に形成される付着部20に供給され、付着部20を付着対象に押しつけて付着させるものである。
【0028】
液透過部材10は、図1(b)や図2(b)に示されるように、先端部材34、ベース部材35及び固定部材36を有している。そして、先端部材34やベース部材35には、付着液が透過する多孔質部材であるフエルトが用いられている。
先端部材34の表面24には付着部20と非付着部23とを有している。そして、付着部20は非付着部23を基準とすると突出しており、非付着部23は付着部20を基準とすると陥没している。
先端部材34の表面24を付着対象に接触させると、陥没している非付着部23が付着対象に接触せず、付着部20が付着対象に接触して、付着部20の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させることができ、その結果、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができる。
【0029】
本実施形態の先端部材34の全体形状はほぼ円柱状である。そして、本実施形態の付着部20は先端部材34の表面24の縁に形成されている。したがって、本実施形態のスタンプマーカー1を使用して、付着対象に付着痕を形成した場合、付着痕の形状は円形となる。
【0030】
ベース部材35は、図1(b)や図2(b)に示されるように、「T」字状の部材であり、幅広部25と角柱部26とを有している。また、角柱部26には、抜け止め突起27が形成されている。そして、ベース部材35がキャップ部材11に装着されると、抜け止め突起27が引っ掛かって、ベース部材35の先端側への離脱を防止することができる。
【0031】
また、先端部材34とベース部材35とは接触しており、容器部材15内の付着液は、ベース部材35を介して先端部材34へと供給することができる。
【0032】
本実施形態の先端部材34及びベース部材35は、同じ種類のフエルトが用いられている。なお、付着液が透過する材質であれば、特に限定されるものでなく、多孔質部材を用いることができる。また、先端部材34及びベース部材35を異なるフエルトを用いても良く、フエルト以外の連続気泡のスポンジなどの他の材質を用いることができる。
また、先端部材34及びベース部材35は、切断などによって所定の形状にして製作されるものであるが、先端部材34の表面24の加工は、以下に示すように、加工具80を用いて加工することができる。
【0033】
また、図11に示される液透過部材10aように、先端部材34及びベース部材35とを別の部材ではなく、1つの部材とすることができる。
【0034】
通常、フエルトは、厚み方向に繊維が向きにくく、繊維の方向は厚み方向の他の方向が多くなるので、同じフエルトを用いても、配置の方向を変えると、先端部材34やベース部材35の特性が変化する。そして、本実施形態の先端部材34及びベース部材35は同じフエルトを用いているが、これらの部材のフエルトの向きが異なる方向となるように配置しており、以下に示すように、付着液の透過性と、強度のバランスを確保することができる。
【0035】
このことを詳しく説明すると、一般に、フエルトは、繊維を所定の方法で絡ませて製造されるものであるので、繊維の方向は厚み方向が少なくなり、長さ方向や幅方向に向く傾向となる。一般に、付着液の透過性(液通過性)は繊維に沿った方向が良いので、液透過部材10として使用する場合、厚み方向よりも厚み方向以外(長さ方向や幅方向)の繊維が向く方向に付着液を通過させる方が良い。一方、液透過部材10に、曲げや引張力が作用した場合には、繊維に沿った方向に力が作用するような配置の方が強度が高いので、厚み方向以外(長さ方向や幅方向)の方向を湾曲させたり、引っ張ったりする方が強度が高い。
【0036】
そして、本実施形態の液透過部材10では、先端部材34については、フエルトの厚み方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるように配置し、ベース部材35については、フエルトの厚み方向以外の方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるように配置している。
そのため、付着液の透過に関しては、ベース部材35では付着液調節部材13と先端部材34との間の付着液の供給を良くすることができ、先端部材34では横方向に浸透し、表面24の全域に付着液を行き渡りやすくすることが可能となる。また、先端部材34には、使用時に湾曲するような力が作用することがあるが、このような力が作用した場合にも、高強度とすることができる。
【0037】
先端部材34やベース部材35は、ほぼ一定の厚みのフエルトを用いて、これを切断して形成されるものである。そして、先端部材34は、円形に打ち抜いて円柱状にすることにより、フエルトの厚み方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるものを製作することができる。また、ベース部材35は、「T」字型に打ち抜くことにより、フエルトの厚み方向以外の方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるものを製作することができる。
【0038】
また、付着痕の大きさを大きくする場合には、先端部材34の表面24の付着部20を大きくする必要があるので、先端部材34が大きくなる。普通のフエルトペンのように、先端部材34とベース部材35とが別々でなく、1個の部材である場合、厚くて長いフエルトを用いる必要があるが、先端部材34とベース部材35とが別なので、そのような必要が無く、また、複雑な形状であっても、容易に製作することが可能である。
そして、大きな先端部材34を用いることにより、小さい容器部材15や小さいベース部材35を用いても、大きな付着痕を形成することが可能となる。
【0039】
先端部材34の表面24の加工は、図3に示されるように、加工具80を用いて行われる。加工具80の先端81の形状は、非付着部23の全体の形状に対応している。具体的には、先端81の形状は、先端部材34全体の外径よりもやや小さい外径の円形状であり、加工具80は円柱状をしている。
そして、加工具80を加熱し、加工具80の先端81を先端部材34の表面24に押し付ける。加工具80の加熱温度は、先端部材34の素材であるフエルトが変形しやすい温度であり、素材の種類によって適当な温度で加工が行われる。また、押し付ける力や時間などは、加工に適した条件で行われる。
【0040】
本実施形態においては、先端部材34としてフエルトが用いられ、このフエルトの繊維の材質はポリエステルが用いられている。そして、加工は、温度が150℃、押し付け時間は5秒で行われる。
また、押し付け部分(非付着部23)の面積は、1.3平方cmであり、押し付けの際の力は1900Nである。
【0041】
加熱された加工具80の先端81を先端部材34の表面24に押し付けると、押し付けられた部分が圧縮されて陥没する。したがって、押し付けられていない他の部分が、押し付けられた部分に対して突出する状態となる。そして、陥没した部分が非付着部23となり、他の部分が付着部20となる。
【0042】
このように、先端部材34の表面24の加工は、簡単に行うことができる。また、本実施形態の非付着部23は円形であったが、複雑な形状であっても、加工具80の形状を変えるだけで製作が可能である。
上記の加工方法では、非付着部23の全体を加工具80の押しつけにより形成するものであったが、加工具80による加工する部分を一部として、残りの非付着部23の形成を他の方法によって行うこともできる。
【0043】
また、加工具80によって押し付けられた部分である非付着部23のフエルト材は、圧縮されるので、他の部分に比べて繊維が密な状態となったり、溶融して浸透性が低下する。そのため、先端部材34へ供給される付着液は、非付着部23よりも、加工具80によって押し付けられられていない付着部20へ供給されやすいので、使用時に、鮮明な付着痕を形成することができる。
【0044】
そして、先端部材34及びベース部材35は、固定部材36によって接触状態で保持されて一体化されている。
固定部材36は、棒状の部材であり、先端部材34の内部を貫通してベース部材35の内部に至っている。そして、固定部材36はねじであり、図2(b)に示されるように、先端部材34の表面24の非付着部23から、先端部材34の内部を貫通してベース部材35の中途部分まで進入した状態となっている。
【0045】
さらに、固定部材36として用いられるねじは、木ねじが使用されており、頭部36aの端面は、非付着部23とほぼ同じ面となるまでねじ込まれている。したがって、固定部材36によって先端部材34が固定されている状態においても、頭部36aの位置は、付着部20の先端の位置よりも容器部材15側であり、スタンプマーカー1を使用する際に固定部材36が付着対象に接触することはなく、邪魔になることはない。
また、固定部材36を用いて、先端部材34及びベース部材35を一体化する場合、先端部材34やベース部材35に下穴を設けて、その下穴にねじ込んでもよいが、本実施形態の先端部材34及びベース部材35にはフエルトが用いられているので、そのまま下穴を設けないで、固定部材36をねじ込んで固定することもできる。
【0046】
このように一体化された液透過部材10は、先端部材34の表面24側が先端側となるように配置される。
【0047】
固定部材36には、木ねじが用いられているので、このねじである固定部材36の着脱が容易である。したがって、固定部材36を取り外して付着部20の異なる先端部材34に交換することにより、簡単に、異なる付着痕を付着対象に付けることができる。
【0048】
なお、本実施形態の固定部材36は、木ねじが用いられているが、後述するものなどのように、他のものを用いることができ、例えば、木ねじ以外のねじやピンや釘などを用いて、先端部材34の内部を貫通してベース部材35に至る状態として固定を行うことができる。
【0049】
スタンプマーカー1の付着部20の形状は、使用時には付着対象上に形成される付着痕の形状となるものであり、そのため、大きさや形状や幅などは、求められる付着痕の形状に合わせられている。本実施形態では、円形状であるが、一定の領域を囲むような、三角状、四角状などの多角形状や、星型の縁をつないだ形状や、C字状などの一部が欠損している形状などや、さらに、一定の領域を囲まない形状である×印などの形状を採用することができる。
【0050】
液透過部材10は、キャップ部材11の小径部32の先端側に位置するガイド部33にガイドされており、長さ方向の移動が可能なように保持されている。また、液透過部材10は、ばね37によって先端側に向かって付勢されており、通常の位置は、可動範囲の先端側の位置であり、抜け止め突起27によって引っ掛かる位置である。そして、スタンプマーカー1を用いて付着液を供給する際には、容器部材15を持って付着対象に付着部20を当てることにより、液透過部材10が後退する向きに移動して供給が行われる。
【0051】
キャップ部材11は、図1(b)、図2(b)に示されるように、大径部30、小径部32を有している。大径部30の内側に雌ネジが形成されており、容器部材15の雄ネジ部40との螺合により、キャップ部材11は容器部材15に固定されている。
小径部32は、大径部30よりも外径が小さく、先端側に位置している部分である。そして、図2(b)に示されるように、小径部32の外周に蓋18の内側を密着させて、密閉状態とし、液透過部材10が露出しない状態とすることができる。
また、小径部32の先端側には開口32aが形成されており、内側の空間に液透過部材10が配置される。そして、この液透過部材10の一部が、開口32aから露出した状態となっている。
【0052】
キャップ部材11は、樹脂成形品などが用いられているが、特に限定されるものではなく、他の材料を用いることができる。
【0053】
リング部材12は、円形のリングであり、付着液を一時的に貯めることができる。
本実施形態のリング部材12は、ウレタン製のスポンジ状のものが用いられている。
【0054】
付着液調節部材13は、付着液の供給を調整するものであり、容器部材15の開口側に配置される。そして、容器部材15の内部は、付着液調節部材13によって蓋をしたような状態となり、容器部材15内の付着液は、付着液調節部材13を介して液透過部材10に供給される。
【0055】
付着液調節部材13には開口部43及び弁部44を有している。そして、開口部43から弁部44へと通じており、弁部44が開放状態となると、容器部材15内の付着液は、開口部43及び弁部44を通過して、液透過部材10へ供給される。
この弁部44の開閉は、液透過部材10の移動によって行われる。通常は、可動範囲の先端側の位置となって弁部44が閉鎖状態であるので、塗布液の供給が行われない。また、付着対象に付着部20を押し付けることにより、液透過部材20が後退して開放状態となって、塗布液の供給が行われる。
【0056】
このように、本実施形態のスタンプマーカー1には、付着液の供給を調整する付着液調節部材13を有しているので、必要なときに付着液を供給することができ、使用時に多くの付着液を付着させつつ、使用しないときに不必要に供給させないようにすることが可能である。
【0057】
容器部材15は、円形の細長い筒状の有底の容器であり、一方の端部に開口が形成されている。そして、開口側の縁付近の外周には、雄ネジ部40が形成されており、雄ネジ部40を用いてキャップ部材11を固定することができる。
本実施形態の容器部材15は、金属製のものが用いられているが、樹脂製のものなど他のものを用いることができる。
【0058】
また、容器部材15の内部には、付着液を収納する空間が形成されている。
容器部材15に収納される付着液は、付着対象や目的に応じて様々なものを使用することができる。公知のインキなどを用いることができる。また、付着液の色についても特に限定されることはないが、原子力関連設備にマーキングする用途として用いる場合には、白色系インキを用いることができる。かかる場合には、付着液を付着させることにより形成される表示を見やすくすることができる。
【0059】
また、容器部材15の内部には、攪拌玉60が入れられており、スタンプマーカー1を振ることにより、付着液を均一に攪拌することができる。
攪拌玉60の材質は、特に限定されることはないが、本実施形態においては、ガラス玉が用いられている。
【0060】
スタンプマーカー1は、容器部材15に付着液及び攪拌玉60を入れ、付着液調節部材13を配置し、一方、キャップ部材11の大径部30側から液透過部材10とリング部材12を挿入し、キャップ部材11を容器部材15に固定して、組み立てが行われる。
そうすると、図1や図2に示すように、全体が一体となり、液透過部材10の先端部材34の表面24が、キャップ部材11の小径部32側の開口32aから露出した状態となる。
【0061】
組み立て直後のスタンプマーカー1では、液透過部材10に付着液が浸透していないが、液透過部材10の先端部材34の表面24を下側にしながら付着対象などに押しつけることにより、液透過部材10の後端部分が付着液調節部材13の弁部44が開いて、容器部材15内の付着液が付着液調節部材13を通じて液透過部材10に供給される。そうすると、付着部20に付着液が移動して、スタンプが可能な状態となる。
【0062】
そして、付着対象の付着液による表示を行う場所に、液透過部材10の先端部材34の表面24を押しつけて使用する。そうすると、付着部20が付着対象に接触して、付着部20に応じた形状となるように転写され、付着痕が付着対象に形成される。本実施形態では、付着部20の形状は円形であるので、円形の付着痕が付着対象の上に形成される。
【0063】
また、塗布液を供給しない場合には、液透過部材10が前進して弁部45が閉じ、必要の無いときに、不必要な付着液が供給されることはない。
また、スタンプマーカー1を使用しない場合に、付着部24付近が開放されていると、かかる部分の付着液の乾燥が発生したり、付着部24に触れて汚れたりするおそれがある。そのため、これを防ぐため、キャップ部材11に蓋18を取り付けることにより、液透過部材10付近を覆って密閉状態にすることができる。
【0064】
上記した液透過部材10は、木ねじである固定部材36が用いられて、先端部材34とベース部材35とが接触状態で固定されているものであるが、図4〜図10に示される液透過部材50、51、52、53、54、55、56のように、液透過部材10以外の他の構造のものを採用することができる。
なお、液透過部材50、51、52、53、54、55、56では、液透過部材10と同じ、先端部材34とベース部材35が用いられている。
【0065】
図4に示される液透過部材50は、上記した液透過部材10と同様の固定部材36を2個用い、非付着部23側からねじ込んだものである。
図5に示される液透過部材51は、上記した液透過部材10と同様の固定部材36をベース部材35側からねじ込んだものである。
図6に示される液透過部材52は、U字状のピンである固定部材60を非付着部23側から差し込んだものである。この固定部材60として、ステープル(ホッチキスの針)などを使用することができる。
図7に示される液透過部材53は、頭部61a付きのピンである固定部材61を用い、固定部材61を先端部材34及びベース部材35を貫通する状態として固定するものである。そして、頭部61aは非付着部23に位置しており、また、頭部61aとは反対側の端部は曲げられて、折り曲げ部61bが形成されている。
図8に示される液透過部材54は、ピンである固定部材62を先端部材34の側方からベース部材35へと挿入したものである。
【0066】
図9に示される液透過部材55は、先端部材34及びベース部材35にそれぞれ貫通孔を設けて一連の貫通孔55aを形成し、この貫通孔55aに固定部材63を挿入して、固定部材63の両端には頭部63a、63bが配置されるようにしたものである。
この固定部材63に用いられる例としては、ボルトとナットを用いて、ボルトの頭とナットにより頭部63a、63bとしたり、また樹脂製の棒を用い、少なくともいずれか一方の頭部63a、63bを挿入後に溶融させて形成したものなどが用いられる。
【0067】
図10に示される液透過部材56は、先端部材34及びベース部材35を嵌め込むような固定部材64を用いて固定するものである。この固定部材64は、先端部材34及びベース部材35の側面部分を覆うような形状である。そして、付着部20や非付着部23のある先端部材34の表面や、ベース部材35の後端側は、固定部材64によっては覆われていない。
【0068】
図4、図6、図8に示される液透過部材50、52、54では、固定部材36、60、62によって、2ヵ所で固定されているので、先端部材34及びベース部材35との間で回転力が作用しても、相対回転が発生しにくい。
【0069】
このように、本実施形態のスタンプマーカー1では、液透過部材10の付着部20を付着対象に接触させ、付着対象に付着液を付着させて所定の形状の付着痕を形成することができるものであるので、目的の位置に表示を行いやすい。また、付着痕を形成する際には、位置ずれがしにくいので、原子力関連設備に用いられる配管などの検査位置の表示を正確に行うことができ、また作業しやすい。
【0070】
なお、上記したスタンプマーカー1を、通常のペンのように使用することもできる。すなわち、付着部20を押しつけながら移動させることにより、その軌跡に付着液が付着して、付着液を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態におけるスタンプマーカーを示した斜視図であり、(b)は(a)の蓋以外の部分を示した分解斜視図である。
【図2】図1(a)に示すスタンプマーカーの正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図3】先端部材と加工具を示した斜視図である。
【図4】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図5】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図6】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図7】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図8】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図9】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図10】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図11】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 スタンプマーカー
10、10a、50、51、52、53、54、55、56 液透過部材
13 付着液調節部材
15 容器部材
20 付着部
23 非付着部
24 表面
34 先端部材
35 ベース部材
36、60、61、62、63、64 固定部材
80 加工具
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキなどの液の付いた部分を付着対象に接触させ、付着対象に当該液を付着させて、所定の形状の付着痕を形成することができるスタンプマーカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、塗布液を容器内に収納し、収納された塗布液をフエルトや繊維束チップなどで形成される塗布部によって塗布するマーカー類が使用されている。そして、このようなマーカー類は、塗布される対象である塗布対象に塗布液を塗布し、塗布された跡によって文字や形状を表示することができるものである。
【0003】
このような塗布対象は、紙や物品など、様々なものがあり、例えば、特許文献1には、上記のような塗布具が開示されており、当該塗布具は、液体溜部と塗布部を備え、両者の間に弁が介在されているものである。
【特許文献1】特開2001−80264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力関連設備に用いられる配管などは非破壊で検査が行われるが、この検査を行う位置がずれたりしないように、検査位置を明確にするため、このようなマーカー類によって表示してマーキングしている。しかしながら、フリーハンドなどで丸印などの印を書いたのでは、手間がかかり、また、位置の精度がばらついたりする。
【0005】
また、浸透印などのようなものを用いてマーキングする方法が考えられるが、このような方法では、マーキングがはっきり見えにくく、上記のような用途には不適当であった。
さらに、平面状でない面にマーキングする場合があるが、このような場合にも確実にマーキングできるようなものが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、付着対象物に付着液の付着を行って付着痕を形成する際に、正確に行うことができるスタンプマーカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、 多孔質材料である液透過部材と、付着液が入れられる容器部材とを有し、容器部材内の付着液を液透過部材の表面側へと供給することができ、液浸透部材の表面には付着部と非付着部とを有し、液浸透部材を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであることを特徴とするスタンプマーカーである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、容器部材内の付着液を多孔質材料である液透過部材へと供給して、液透過部材の表面を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであるので、必要な場所へのマーキングを容易に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであることを特徴とする請求項1に記載のスタンプマーカーである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであるので、非付着部の形成を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、液浸透部材にはフエルトが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンプマーカーである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、液浸透部材にはフエルトが用いられているので、付着液の浸透性と強度を両立させることができる。
【0013】
液透過部材には先端部材とベース部材とが設けられ、容器部材内の付着液をベース部材を介して先端部材へと供給することができ、先端部材の表面には付着部と非付着部とを有するものを採用してもよい(請求項4)。
【0014】
請求項5に記載の発明は、先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われることを特徴とする請求項4に記載のスタンプマーカーである。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われるので、先端部材とベース部材との固定を簡単に行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っていることを特徴とする請求項5に記載のスタンプマーカーである。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っているので、固定部材が付着部の邪魔にならずにマーキングなどの付着痕を形成する作業を可能にすることができ、また、固定部材の取り外しが容易となり、先端部材の着脱可能な構造とすることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、固定部材には、ねじが用いられていることを特徴とする請求項6に記載のスタンプマーカーである。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、固定部材にはねじが用いられているので、固定部材の着脱を容易に行うことが可能となる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のスタンプマーカーである。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであるので、さらに、着脱を容易に行うようにすることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、付着液調節部材が設けられ、付着液調節部材は付着液の供給を調整することができるものであり、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタンプマーカーである。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、付着液の供給を調整することができる付着液調節部材が設けられており、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われるので、必要以上に付着液を供給しないようにすることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、容器部材に入れられる付着液は、白色系であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のスタンプマーカーである。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、容器部材に入れられる付着液は、白色系であるので、濃い色の付着対象に付着痕を形成した場合に、見えやすい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスタンプマーカーによれば、付着対象物に付着液を付着させる際に、確実に行うことができ、作業しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態におけるスタンプマーカー1は、図1、図2に示されるように、液透過部材10、キャップ部材11、付着液調節部材13、容器部材15を有している。そして、容器部材15内部に入れられる付着液は、液透過部材10に形成される付着部20に供給され、付着部20を付着対象に押しつけて付着させるものである。
【0028】
液透過部材10は、図1(b)や図2(b)に示されるように、先端部材34、ベース部材35及び固定部材36を有している。そして、先端部材34やベース部材35には、付着液が透過する多孔質部材であるフエルトが用いられている。
先端部材34の表面24には付着部20と非付着部23とを有している。そして、付着部20は非付着部23を基準とすると突出しており、非付着部23は付着部20を基準とすると陥没している。
先端部材34の表面24を付着対象に接触させると、陥没している非付着部23が付着対象に接触せず、付着部20が付着対象に接触して、付着部20の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させることができ、その結果、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができる。
【0029】
本実施形態の先端部材34の全体形状はほぼ円柱状である。そして、本実施形態の付着部20は先端部材34の表面24の縁に形成されている。したがって、本実施形態のスタンプマーカー1を使用して、付着対象に付着痕を形成した場合、付着痕の形状は円形となる。
【0030】
ベース部材35は、図1(b)や図2(b)に示されるように、「T」字状の部材であり、幅広部25と角柱部26とを有している。また、角柱部26には、抜け止め突起27が形成されている。そして、ベース部材35がキャップ部材11に装着されると、抜け止め突起27が引っ掛かって、ベース部材35の先端側への離脱を防止することができる。
【0031】
また、先端部材34とベース部材35とは接触しており、容器部材15内の付着液は、ベース部材35を介して先端部材34へと供給することができる。
【0032】
本実施形態の先端部材34及びベース部材35は、同じ種類のフエルトが用いられている。なお、付着液が透過する材質であれば、特に限定されるものでなく、多孔質部材を用いることができる。また、先端部材34及びベース部材35を異なるフエルトを用いても良く、フエルト以外の連続気泡のスポンジなどの他の材質を用いることができる。
また、先端部材34及びベース部材35は、切断などによって所定の形状にして製作されるものであるが、先端部材34の表面24の加工は、以下に示すように、加工具80を用いて加工することができる。
【0033】
また、図11に示される液透過部材10aように、先端部材34及びベース部材35とを別の部材ではなく、1つの部材とすることができる。
【0034】
通常、フエルトは、厚み方向に繊維が向きにくく、繊維の方向は厚み方向の他の方向が多くなるので、同じフエルトを用いても、配置の方向を変えると、先端部材34やベース部材35の特性が変化する。そして、本実施形態の先端部材34及びベース部材35は同じフエルトを用いているが、これらの部材のフエルトの向きが異なる方向となるように配置しており、以下に示すように、付着液の透過性と、強度のバランスを確保することができる。
【0035】
このことを詳しく説明すると、一般に、フエルトは、繊維を所定の方法で絡ませて製造されるものであるので、繊維の方向は厚み方向が少なくなり、長さ方向や幅方向に向く傾向となる。一般に、付着液の透過性(液通過性)は繊維に沿った方向が良いので、液透過部材10として使用する場合、厚み方向よりも厚み方向以外(長さ方向や幅方向)の繊維が向く方向に付着液を通過させる方が良い。一方、液透過部材10に、曲げや引張力が作用した場合には、繊維に沿った方向に力が作用するような配置の方が強度が高いので、厚み方向以外(長さ方向や幅方向)の方向を湾曲させたり、引っ張ったりする方が強度が高い。
【0036】
そして、本実施形態の液透過部材10では、先端部材34については、フエルトの厚み方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるように配置し、ベース部材35については、フエルトの厚み方向以外の方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるように配置している。
そのため、付着液の透過に関しては、ベース部材35では付着液調節部材13と先端部材34との間の付着液の供給を良くすることができ、先端部材34では横方向に浸透し、表面24の全域に付着液を行き渡りやすくすることが可能となる。また、先端部材34には、使用時に湾曲するような力が作用することがあるが、このような力が作用した場合にも、高強度とすることができる。
【0037】
先端部材34やベース部材35は、ほぼ一定の厚みのフエルトを用いて、これを切断して形成されるものである。そして、先端部材34は、円形に打ち抜いて円柱状にすることにより、フエルトの厚み方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるものを製作することができる。また、ベース部材35は、「T」字型に打ち抜くことにより、フエルトの厚み方向以外の方向がスタンプマーカー1全体の軸方向となるものを製作することができる。
【0038】
また、付着痕の大きさを大きくする場合には、先端部材34の表面24の付着部20を大きくする必要があるので、先端部材34が大きくなる。普通のフエルトペンのように、先端部材34とベース部材35とが別々でなく、1個の部材である場合、厚くて長いフエルトを用いる必要があるが、先端部材34とベース部材35とが別なので、そのような必要が無く、また、複雑な形状であっても、容易に製作することが可能である。
そして、大きな先端部材34を用いることにより、小さい容器部材15や小さいベース部材35を用いても、大きな付着痕を形成することが可能となる。
【0039】
先端部材34の表面24の加工は、図3に示されるように、加工具80を用いて行われる。加工具80の先端81の形状は、非付着部23の全体の形状に対応している。具体的には、先端81の形状は、先端部材34全体の外径よりもやや小さい外径の円形状であり、加工具80は円柱状をしている。
そして、加工具80を加熱し、加工具80の先端81を先端部材34の表面24に押し付ける。加工具80の加熱温度は、先端部材34の素材であるフエルトが変形しやすい温度であり、素材の種類によって適当な温度で加工が行われる。また、押し付ける力や時間などは、加工に適した条件で行われる。
【0040】
本実施形態においては、先端部材34としてフエルトが用いられ、このフエルトの繊維の材質はポリエステルが用いられている。そして、加工は、温度が150℃、押し付け時間は5秒で行われる。
また、押し付け部分(非付着部23)の面積は、1.3平方cmであり、押し付けの際の力は1900Nである。
【0041】
加熱された加工具80の先端81を先端部材34の表面24に押し付けると、押し付けられた部分が圧縮されて陥没する。したがって、押し付けられていない他の部分が、押し付けられた部分に対して突出する状態となる。そして、陥没した部分が非付着部23となり、他の部分が付着部20となる。
【0042】
このように、先端部材34の表面24の加工は、簡単に行うことができる。また、本実施形態の非付着部23は円形であったが、複雑な形状であっても、加工具80の形状を変えるだけで製作が可能である。
上記の加工方法では、非付着部23の全体を加工具80の押しつけにより形成するものであったが、加工具80による加工する部分を一部として、残りの非付着部23の形成を他の方法によって行うこともできる。
【0043】
また、加工具80によって押し付けられた部分である非付着部23のフエルト材は、圧縮されるので、他の部分に比べて繊維が密な状態となったり、溶融して浸透性が低下する。そのため、先端部材34へ供給される付着液は、非付着部23よりも、加工具80によって押し付けられられていない付着部20へ供給されやすいので、使用時に、鮮明な付着痕を形成することができる。
【0044】
そして、先端部材34及びベース部材35は、固定部材36によって接触状態で保持されて一体化されている。
固定部材36は、棒状の部材であり、先端部材34の内部を貫通してベース部材35の内部に至っている。そして、固定部材36はねじであり、図2(b)に示されるように、先端部材34の表面24の非付着部23から、先端部材34の内部を貫通してベース部材35の中途部分まで進入した状態となっている。
【0045】
さらに、固定部材36として用いられるねじは、木ねじが使用されており、頭部36aの端面は、非付着部23とほぼ同じ面となるまでねじ込まれている。したがって、固定部材36によって先端部材34が固定されている状態においても、頭部36aの位置は、付着部20の先端の位置よりも容器部材15側であり、スタンプマーカー1を使用する際に固定部材36が付着対象に接触することはなく、邪魔になることはない。
また、固定部材36を用いて、先端部材34及びベース部材35を一体化する場合、先端部材34やベース部材35に下穴を設けて、その下穴にねじ込んでもよいが、本実施形態の先端部材34及びベース部材35にはフエルトが用いられているので、そのまま下穴を設けないで、固定部材36をねじ込んで固定することもできる。
【0046】
このように一体化された液透過部材10は、先端部材34の表面24側が先端側となるように配置される。
【0047】
固定部材36には、木ねじが用いられているので、このねじである固定部材36の着脱が容易である。したがって、固定部材36を取り外して付着部20の異なる先端部材34に交換することにより、簡単に、異なる付着痕を付着対象に付けることができる。
【0048】
なお、本実施形態の固定部材36は、木ねじが用いられているが、後述するものなどのように、他のものを用いることができ、例えば、木ねじ以外のねじやピンや釘などを用いて、先端部材34の内部を貫通してベース部材35に至る状態として固定を行うことができる。
【0049】
スタンプマーカー1の付着部20の形状は、使用時には付着対象上に形成される付着痕の形状となるものであり、そのため、大きさや形状や幅などは、求められる付着痕の形状に合わせられている。本実施形態では、円形状であるが、一定の領域を囲むような、三角状、四角状などの多角形状や、星型の縁をつないだ形状や、C字状などの一部が欠損している形状などや、さらに、一定の領域を囲まない形状である×印などの形状を採用することができる。
【0050】
液透過部材10は、キャップ部材11の小径部32の先端側に位置するガイド部33にガイドされており、長さ方向の移動が可能なように保持されている。また、液透過部材10は、ばね37によって先端側に向かって付勢されており、通常の位置は、可動範囲の先端側の位置であり、抜け止め突起27によって引っ掛かる位置である。そして、スタンプマーカー1を用いて付着液を供給する際には、容器部材15を持って付着対象に付着部20を当てることにより、液透過部材10が後退する向きに移動して供給が行われる。
【0051】
キャップ部材11は、図1(b)、図2(b)に示されるように、大径部30、小径部32を有している。大径部30の内側に雌ネジが形成されており、容器部材15の雄ネジ部40との螺合により、キャップ部材11は容器部材15に固定されている。
小径部32は、大径部30よりも外径が小さく、先端側に位置している部分である。そして、図2(b)に示されるように、小径部32の外周に蓋18の内側を密着させて、密閉状態とし、液透過部材10が露出しない状態とすることができる。
また、小径部32の先端側には開口32aが形成されており、内側の空間に液透過部材10が配置される。そして、この液透過部材10の一部が、開口32aから露出した状態となっている。
【0052】
キャップ部材11は、樹脂成形品などが用いられているが、特に限定されるものではなく、他の材料を用いることができる。
【0053】
リング部材12は、円形のリングであり、付着液を一時的に貯めることができる。
本実施形態のリング部材12は、ウレタン製のスポンジ状のものが用いられている。
【0054】
付着液調節部材13は、付着液の供給を調整するものであり、容器部材15の開口側に配置される。そして、容器部材15の内部は、付着液調節部材13によって蓋をしたような状態となり、容器部材15内の付着液は、付着液調節部材13を介して液透過部材10に供給される。
【0055】
付着液調節部材13には開口部43及び弁部44を有している。そして、開口部43から弁部44へと通じており、弁部44が開放状態となると、容器部材15内の付着液は、開口部43及び弁部44を通過して、液透過部材10へ供給される。
この弁部44の開閉は、液透過部材10の移動によって行われる。通常は、可動範囲の先端側の位置となって弁部44が閉鎖状態であるので、塗布液の供給が行われない。また、付着対象に付着部20を押し付けることにより、液透過部材20が後退して開放状態となって、塗布液の供給が行われる。
【0056】
このように、本実施形態のスタンプマーカー1には、付着液の供給を調整する付着液調節部材13を有しているので、必要なときに付着液を供給することができ、使用時に多くの付着液を付着させつつ、使用しないときに不必要に供給させないようにすることが可能である。
【0057】
容器部材15は、円形の細長い筒状の有底の容器であり、一方の端部に開口が形成されている。そして、開口側の縁付近の外周には、雄ネジ部40が形成されており、雄ネジ部40を用いてキャップ部材11を固定することができる。
本実施形態の容器部材15は、金属製のものが用いられているが、樹脂製のものなど他のものを用いることができる。
【0058】
また、容器部材15の内部には、付着液を収納する空間が形成されている。
容器部材15に収納される付着液は、付着対象や目的に応じて様々なものを使用することができる。公知のインキなどを用いることができる。また、付着液の色についても特に限定されることはないが、原子力関連設備にマーキングする用途として用いる場合には、白色系インキを用いることができる。かかる場合には、付着液を付着させることにより形成される表示を見やすくすることができる。
【0059】
また、容器部材15の内部には、攪拌玉60が入れられており、スタンプマーカー1を振ることにより、付着液を均一に攪拌することができる。
攪拌玉60の材質は、特に限定されることはないが、本実施形態においては、ガラス玉が用いられている。
【0060】
スタンプマーカー1は、容器部材15に付着液及び攪拌玉60を入れ、付着液調節部材13を配置し、一方、キャップ部材11の大径部30側から液透過部材10とリング部材12を挿入し、キャップ部材11を容器部材15に固定して、組み立てが行われる。
そうすると、図1や図2に示すように、全体が一体となり、液透過部材10の先端部材34の表面24が、キャップ部材11の小径部32側の開口32aから露出した状態となる。
【0061】
組み立て直後のスタンプマーカー1では、液透過部材10に付着液が浸透していないが、液透過部材10の先端部材34の表面24を下側にしながら付着対象などに押しつけることにより、液透過部材10の後端部分が付着液調節部材13の弁部44が開いて、容器部材15内の付着液が付着液調節部材13を通じて液透過部材10に供給される。そうすると、付着部20に付着液が移動して、スタンプが可能な状態となる。
【0062】
そして、付着対象の付着液による表示を行う場所に、液透過部材10の先端部材34の表面24を押しつけて使用する。そうすると、付着部20が付着対象に接触して、付着部20に応じた形状となるように転写され、付着痕が付着対象に形成される。本実施形態では、付着部20の形状は円形であるので、円形の付着痕が付着対象の上に形成される。
【0063】
また、塗布液を供給しない場合には、液透過部材10が前進して弁部45が閉じ、必要の無いときに、不必要な付着液が供給されることはない。
また、スタンプマーカー1を使用しない場合に、付着部24付近が開放されていると、かかる部分の付着液の乾燥が発生したり、付着部24に触れて汚れたりするおそれがある。そのため、これを防ぐため、キャップ部材11に蓋18を取り付けることにより、液透過部材10付近を覆って密閉状態にすることができる。
【0064】
上記した液透過部材10は、木ねじである固定部材36が用いられて、先端部材34とベース部材35とが接触状態で固定されているものであるが、図4〜図10に示される液透過部材50、51、52、53、54、55、56のように、液透過部材10以外の他の構造のものを採用することができる。
なお、液透過部材50、51、52、53、54、55、56では、液透過部材10と同じ、先端部材34とベース部材35が用いられている。
【0065】
図4に示される液透過部材50は、上記した液透過部材10と同様の固定部材36を2個用い、非付着部23側からねじ込んだものである。
図5に示される液透過部材51は、上記した液透過部材10と同様の固定部材36をベース部材35側からねじ込んだものである。
図6に示される液透過部材52は、U字状のピンである固定部材60を非付着部23側から差し込んだものである。この固定部材60として、ステープル(ホッチキスの針)などを使用することができる。
図7に示される液透過部材53は、頭部61a付きのピンである固定部材61を用い、固定部材61を先端部材34及びベース部材35を貫通する状態として固定するものである。そして、頭部61aは非付着部23に位置しており、また、頭部61aとは反対側の端部は曲げられて、折り曲げ部61bが形成されている。
図8に示される液透過部材54は、ピンである固定部材62を先端部材34の側方からベース部材35へと挿入したものである。
【0066】
図9に示される液透過部材55は、先端部材34及びベース部材35にそれぞれ貫通孔を設けて一連の貫通孔55aを形成し、この貫通孔55aに固定部材63を挿入して、固定部材63の両端には頭部63a、63bが配置されるようにしたものである。
この固定部材63に用いられる例としては、ボルトとナットを用いて、ボルトの頭とナットにより頭部63a、63bとしたり、また樹脂製の棒を用い、少なくともいずれか一方の頭部63a、63bを挿入後に溶融させて形成したものなどが用いられる。
【0067】
図10に示される液透過部材56は、先端部材34及びベース部材35を嵌め込むような固定部材64を用いて固定するものである。この固定部材64は、先端部材34及びベース部材35の側面部分を覆うような形状である。そして、付着部20や非付着部23のある先端部材34の表面や、ベース部材35の後端側は、固定部材64によっては覆われていない。
【0068】
図4、図6、図8に示される液透過部材50、52、54では、固定部材36、60、62によって、2ヵ所で固定されているので、先端部材34及びベース部材35との間で回転力が作用しても、相対回転が発生しにくい。
【0069】
このように、本実施形態のスタンプマーカー1では、液透過部材10の付着部20を付着対象に接触させ、付着対象に付着液を付着させて所定の形状の付着痕を形成することができるものであるので、目的の位置に表示を行いやすい。また、付着痕を形成する際には、位置ずれがしにくいので、原子力関連設備に用いられる配管などの検査位置の表示を正確に行うことができ、また作業しやすい。
【0070】
なお、上記したスタンプマーカー1を、通常のペンのように使用することもできる。すなわち、付着部20を押しつけながら移動させることにより、その軌跡に付着液が付着して、付着液を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態におけるスタンプマーカーを示した斜視図であり、(b)は(a)の蓋以外の部分を示した分解斜視図である。
【図2】図1(a)に示すスタンプマーカーの正面図であり、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図3】先端部材と加工具を示した斜視図である。
【図4】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図5】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図6】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図7】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図8】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図9】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図10】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【図11】液透過部材の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 スタンプマーカー
10、10a、50、51、52、53、54、55、56 液透過部材
13 付着液調節部材
15 容器部材
20 付着部
23 非付着部
24 表面
34 先端部材
35 ベース部材
36、60、61、62、63、64 固定部材
80 加工具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料である液透過部材と、付着液が入れられる容器部材とを有し、容器部材内の付着液を液透過部材の表面側へと供給することができ、
液浸透部材の表面には付着部と非付着部とを有し、液浸透部材を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであることを特徴とするスタンプマーカー。
【請求項2】
液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであることを特徴とする請求項1に記載のスタンプマーカー。
【請求項3】
液浸透部材にはフエルトが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンプマーカー。
【請求項4】
液透過部材には先端部材とベース部材とが設けられ、容器部材内の付着液をベース部材を介して先端部材へと供給することができ、先端部材の表面には付着部と非付着部とを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【請求項5】
先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われることを特徴とする請求項4に記載のスタンプマーカー。
【請求項6】
固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っていることを特徴とする請求項5に記載のスタンプマーカー。
【請求項7】
固定部材には、ねじが用いられていることを特徴とする請求項6に記載のスタンプマーカー。
【請求項8】
先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のスタンプマーカー。
【請求項9】
付着液調節部材が設けられ、付着液調節部材は付着液の供給を調整することができるものであり、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【請求項10】
容器部材に入れられる付着液は、白色系であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【請求項1】
多孔質材料である液透過部材と、付着液が入れられる容器部材とを有し、容器部材内の付着液を液透過部材の表面側へと供給することができ、
液浸透部材の表面には付着部と非付着部とを有し、液浸透部材を付着対象に接触させて、付着部の形状が転写するように付着対象に付着液を付着させ、付着対象上に所定の形状の付着痕を形成することができるものであることを特徴とするスタンプマーカー。
【請求項2】
液浸透部材は、非付着部の一部又は全部の形状に対応する形状の加工具を表面に押し付けて、表面の加工が行われるものであることを特徴とする請求項1に記載のスタンプマーカー。
【請求項3】
液浸透部材にはフエルトが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンプマーカー。
【請求項4】
液透過部材には先端部材とベース部材とが設けられ、容器部材内の付着液をベース部材を介して先端部材へと供給することができ、先端部材の表面には付着部と非付着部とを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【請求項5】
先端部材の内部と、ベース部材の内部を連通する固定部材を用いて、先端部材とベース部材との固定が行われることを特徴とする請求項4に記載のスタンプマーカー。
【請求項6】
固定部材は、非付着部から先端部材の内部を貫通してベース部材に至っていることを特徴とする請求項5に記載のスタンプマーカー。
【請求項7】
固定部材には、ねじが用いられていることを特徴とする請求項6に記載のスタンプマーカー。
【請求項8】
先端部材及びベース部材にはフエルトが用いられており、固定部材を先端部材側からねじ込んで固定するものであることを特徴とする請求項6又は7に記載のスタンプマーカー。
【請求項9】
付着液調節部材が設けられ、付着液調節部材は付着液の供給を調整することができるものであり、液透過部材に供給される付着液は前記付着液調節部材を介して行われることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【請求項10】
容器部材に入れられる付着液は、白色系であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のスタンプマーカー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−246973(P2008−246973A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93777(P2007−93777)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
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