説明

スタンプ装置

【課題】ローラースタンプにおいて使用時と非使用時の切替を容易に行うことができるとともに、非使用時においては誤って印面が露出してしまう事態を防止する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ローラーの押出し動作によって、ローラーをケースの開口側に移動させたとき、印面のカバーが回転して印面が開口において露出する。したがって、ローラースタンプの使用時と非使用時の切替を容易に行うことができる。またカバー部材は、ローラーが押し出される前は印面の開口側を覆っているので、ローラースタンプの非使用時に誤って印面が露出される事態を防止することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転体により被転写面に対して印字をすることが可能なスタンプ装置に関する。特にスタンプ装置の非使用時において回転体の印面を覆う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体を紙等の被転写体に押圧しながら回転させ、当該被転写体に印字をするローラースタンプがあった。このローラースタンプは、外周に印面を有する略円柱または略円筒状の回転体と、当該回転体を軸支(回転可能に支持)するとともに収容する収容体とを備えている。回転体及び収容体のうち、いずれか一方には軸受が設けられ、対する他方には当該軸受に支持される軸部が設けられる。ローラースタンプの操作者は、この収容体を保持しつつ、回転体を押圧するとともに回転させ、被転写体に対して印字操作を行う。
【0003】
またこのような従来のローラースタンプは、収容体から回転体の印面が少なくとも一部露出していなければ、被転写体に対して印字を行うことができない。したがって、収容体は、当該収容体の保持部に対する反対側に開口部が設けられている。操作者は保持部を保持し、開口部から一部露出した回転体の印面を被転写体に押圧する。
【0004】
ただしローラースタンプは、非使用時にいずれかの場所に載置されることになる。この非使用時において印面が露出したままとなっていれば、載置された場所や、ローラースタンプの付近にあるもの等が汚れてしまうおそれがある。
【0005】
そこで従来、ローラースタンプは、収容部の開口部側に蓋が設けられていた。この点、特許文献1に記載のローラースタンプは、収容部に対して回転可能に支持された蓋を備えている。この蓋は、回転体の印面より外側で回転する。すなわちこの回転体は回転することにより、収容部の開口部側と、その反対側となる保持部側の位置との間で位置を切り替えることができる。
【0006】
蓋は、収容部の保持部側に位置するとき、収容部と回転体とに挟まれた状態となり、収容部の開口部側が開放され、印字が可能となる。これに対し蓋が開口部側に位置するとき、回転体の露出された印面が覆われた状態となる。特許文献1に記載のローラースタンプは、蓋の紛失を防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−90577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1をはじめとする従来のローラースタンプは非使用時において蓋が露出しているため、次のような問題がある。すなわち、ローラースタンプを非使用状態にしてから、いずれかの場所に載置または収容していたとしても、蓋に対してなんらかの衝撃や特定方向からの力が加わった場合、蓋が開いてしまうおそれがある。例えばローラースタンプがカバンに収容されている状態において、ローラースタンプの蓋に接触しているものが移動し、ローラースタンプの蓋を開けてしまう状況が想定される。
【0009】
この点、従来のローラースタンプにおいても、誤って蓋が開く事態を回避しようとする構成を備えているものもある。例えば特許文献1に記載のローラースタンプにおいても、意に反して蓋が開放されることを防ぐため、蓋の端部に小突起(特許文献1の符号16)を設けている。この突起は、印面を塞いでいる時、収容部の開口部側端部に接しており、誤って蓋が開いてしまう事態を防ぐ意図で設けられている。
【0010】
しかしながら、特許文献1の蓋は使用時に開放されるものであり、少なくとも操作者が容易に開放できなければ、ローラースタンプとして使用しづらいものとなってしまう。これに対し蓋を容易に開放することができてしまうと、誤って蓋が開いてしまうおそれが高まる。このように特許文献1のローラースタンプは、その構造上、2つの背反する課題があり、双方を解決することが困難である。
【0011】
この発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、ローラースタンプ(スタンプ装置)において使用時と非使用時の切替を容易に行うことができるとともに、非使用時においては誤って印面が露出してしまう事態を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外周に印面が設けられた回転体と、前記印面の少なくとも一部が通過可能な大きさに形成された開口部を有し、前記回転体を収容するケースと、前記回転体をその軸中心に回転自在とし、かつ前記印面の一部が該開口部側に臨むように支持する支持部と、前記支持部により前記回転体と独立に回転可能に支持され、前記印面の前記開口部に臨む部分を覆うカバー部材と、前記回転体が前記支持部と一体に該開口部側へ押出されることにより前記印面の少なくとも一部を該開口部から突出させる押出部と、前記開口部と反対側に前記押出部を付勢する弾性部材と、前記押出部により前記回転体が押出されたとき、該押出し動作に連動して前記支持部を回転させる連動機構と、を備え、前記支持部の回転により、前記カバー部材が前記ケースの内部側へ向かって回転し、前記印面の前記開口部側を開放すること、を特徴とするスタンプ装置である。
【発明の効果】
【0013】
上記請求項1にかかるスタンプ装置によれば、押出し動作によって、回転体を開口部側に移動させたとき、印面のカバーが回転して印面が開口部において露出する。したがって、スタンプ装置の使用時と非使用時の切替を容易に行うことができる。またカバー部材は、回転体が押出される前は印面の開口部側を覆っているので、スタンプ装置の非使用時に誤って印面が露出される事態を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプの収納時の状態を示す概略正面図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプの使用時の状態を示す概略正面図。
【図2】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプの収納時の状態を示す概略側面図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプの使用時の状態を示す概略側面図。
【図3】(A)図2(A)におけるローラースタンプの概略A−A断面図。 (B)図2(B)におけるローラースタンプの概略B−B断面図。
【図4】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、収納時の内部の状態を示す概略断面図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、ノック途中の内部の状態を示す概略断面図。 (C)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、使用時の内部の状態を示す概略断面図。
【図5】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプのカムを示す概略斜視図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプのカムをケースの開口部側から見た概略底面図。 (C)この発明の実施形態にかかるローラースタンプのスプリングロッドを示す概略側面図。 (D)この発明の実施形態にかかるローラースタンプのスプリングロッドをケースの開口部側から見た概略底面図。
【図6】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおける各部の構成および各部の接続関係の概要を示す概略分解斜視図。
【図7】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプのノブを示す概略斜視図。 (B)図7(A)におけるローラースタンプのC−C部分の構成を含む概略正面図。
【図8】この発明の実施形態にかかるローラースタンプのカムケースを示す概略斜視図。
【図9】この発明の実施形態にかかるローラースタンプのカムケースをケースの開口部側から見た概略斜視図。
【図10】この発明の実施形態にかかるローラースタンプのカムケースの内部構成を含む概略正面図。
【図11】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおける、カバーの側板および爪部と、ローラー保持枠の凹部を示す概略断面図である。
【図12A】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、収納時の内部の状態を示す概略切断端面図。
【図12B】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、ノック途中の内部の状態を示す概略切断端面図。
【図12C】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、使用時の内部の状態を示す概略切断端面図。
【図13】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、図3(A)の状態と図3(B)の状態との間における、ノック途中の内部の状態を示す概略断面図。 (B)図13(A)における状態を側方から見た場合の概略断面図。
【図14】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、第1ケース部材のロックが解除された状態を示す概略斜視図。 (B)図14(A)の状態における内部構造を示す概略切断端面図。
【図15】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、第2ケース部材の突部がカムケースの突起に係止された状態を示す概略断面図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、突部と突起との係止が解除された状態を示す概略断面図。
【図16A】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、突部と突起との係止状態が解除されていく動作の概略を示す概略断面図。
【図16B】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、突部と突起との係止状態が解除されていく動作の概略を示す概略断面図。
【図16C】この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、突部と突起との係止状態が解除されていく動作の概略を示す概略断面図。
【図17】(A)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、第2ケース部材が開かれ、交換可能となった状態を示す概略切断端面図。 (B)この発明の実施形態にかかるローラースタンプにおいて、カートリッジが取り外された状態を示す概略切断端面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について図1〜図17を参照して説明する。
【0016】
(全体構成)
この発明の第1実施形態にかかるローラースタンプ100の全体構成の概略について、図1および図2を参照して説明する。図1(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100の収納時の状態を示す概略正面図である。図1(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100の使用時の状態を示す概略正面図である。図2(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100の収納時の状態を示す概略側面図である。図2(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100の使用時の状態を示す概略側面図である。
【0017】
なお以下の実施形態において、ローラースタンプ100は、本発明にかかる「スタンプ装置」の一例に該当する。ロック102は、本発明にかかる「係止部」の一例に該当する。ガイド103、フレーム120およびキャッチャー124は本発明にかかる「支持部」、「連動機構」の一例に該当する。ノック機構110は、本発明にかかる「押出部」の一例に該当する。スプリング112、スプリング117の少なくともいずれか一方は、本発明にかかる「弾性部材」の一例に該当する。ローラー200は、本発明にかかる「回転体」の一例に該当する。
【0018】
この実施形態のローラースタンプ100はいわゆるローラースタンプであり、ローラーの印面215(図1(A)参照)を紙葉類等の被転写体に押圧しながら回転させ、当該被転写体に印字をするものである。ここで印字される内容は、任意の文字列や図形、記号等であってもよく、また被転写面に印刷された内容を視認不可能とするセキュリティスタンプであってもよい。なお、セキュリティスタンプとは、印刷内容を視認不可能とするように、例えば意味を成さない文字列、記号または図形のうちいずれか1種又は複数の組み合わせを所定の密度で印面に形成したものである。
【0019】
また、ローラースタンプ100におけるローラー200にはインクが含浸されている。すなわち印面215が被転写体に押圧されると、この含浸インクが染み出て印面215に設けられた文字列、記号や図形が被転写体に転写され、印字されるものである。
【0020】
図1(A)および図2(A)に示すように、ローラースタンプ100は、被転写面に印字する印面215が設けられたローラー200と、一端に開口部105が形成され、当該ローラー200を収容するとともに支持するケース101と、ローラー200の押出し操作を行うためのノック機構110とを有して構成される。またケース101は、第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとを有して構成されている。第2ケース部材101cは、ケース101の開口部105側の端部において第1ケース部材101aに回動可能に支持されている。すなわち図2(A)のX1方向に示すように、第2ケース部材101cは第1ケース部材101aと離隔する方向に回動可能である。なお、第2ケース部材101cが第1ケース部材101aに対して離隔する方向については、以下、単に「X1方向」と記載することがある。
【0021】
また図1(A)に示すように、ケース101において第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとは、第2ケース部材101cの回動軸と反対側、すなわちノック機構110側においてロック102を介して係止されている。このロック102は、第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとが最も近接した状態で固定することにより、ケース101の閉鎖状態を維持する。後述するように、このロック102は解除可能である。
【0022】
なお「第2ケース部材101cの回動軸側」、「開口部105側」については、以下、単に「下端側」と記載することがある。また当該下端側と反対側すなわちノック機構110(図3参照)側については、以下、単に「上端側」と記載することがある。また、ローラースタンプ100における上端側と下端側との間の面については、以下、単に「側面」と記載することがある。ここで、「上端」、「下端」と記載するのは説明の便宜上であって、必ずしもローラースタンプ100の実際の向きを示すものではない。
【0023】
またローラースタンプ100は、ノック機構110を開口部105側に押し下げ可能となっている。操作者により当該押し下げ操作がなされると、図1(B)および図2(B)に示すようにケース101に収容されたローラー200が開口部105側に押出され、ローラー200の少なくとも一部が開口部105から突出し、印面215がケース101外に露出される。
【0024】
(ノック機構の構成および押し下げ動作の概略)
次に、図3〜図5を参照してローラースタンプ100のノック機構110の構造の概要および各部の動作とともに、ローラー200の押し下げ動作の概要について説明する。図3(A)は、図2(A)におけるローラースタンプ100の概略A−A断面図である。図3(B)は、図2(B)におけるローラースタンプ100の概略B−B断面図である。図4(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、収納時の内部の状態を示す概略断面図である。図4(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、ノック途中の内部の状態を示す概略断面図である。図4(C)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、使用時の内部の状態を示す概略断面図である。図5(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカム116を示す概略斜視図である。図5(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカム116をケース101の開口部105側から見た概略底面図である。図5(C)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のスプリングロッド119を示す概略側面図である。図5(D)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のスプリングロッド119をケース101の開口部105側から見た概略底面図である。
【0025】
〔ノック機構の概要〕
まずローラースタンプ100のノック機構110についての概要を説明する。図3(A)に示すように、第1ケース部材101aの上端側には、ノブ111を受け容れ可能な大きさの受入口が形成されている。ノブ111は、ほぼ全体がこの受入口に受け容れられている。このノブ111は下端側に移動可能である。
【0026】
なお、必ずしも図3(A)に示すように当該ケース101上端の受入口の口径とノブ111の外周の長さとをほぼ同じに形成する必要は無い。ただし図3(A)に示されるローラースタンプ100では、ノブ111が第1ケース部材101aに対して上下動が可能な程度に、ノブ111の幅を当該受入口の口径より若干小径に(狭く)形成している。ノブ111をこのように構成することでノブ111の下方移動を安定させることができ、次に説明するノック動作を円滑に行うことが可能となる。また図3(A)に示すようなにノブ111のほぼ全体が、ケース101の受入口に受け容れられる構成に限られないが、ローラースタンプ100の印字操作を円滑に行うためには、受入口からノブ111が突出していないことが好ましい。
【0027】
また図3(A)および図4(A)に示すように、ノブ111の下方にはスプリング112を介し、間隔を空けてカムケース114が配置されている。カムケース114は、下端側が平面状に形成されており、かつ当該面の中央は、ノブ111へ向かって円筒状に突出した突出部分114aとなっている。このスプリング112は、当該円筒状の突出部分114aの周囲に配置されている。またスプリング112の上端はノブ111の中央部の下端(図7・符号111c参照)に当接している。これに対しスプリング112の下端は、カムケース114の下端面に当接している。したがって図3(A)、図3(B)および図4(A)〜(C)に示すようにノブ111は、スプリング112に付勢されて上端側に付勢されており、かつカムケース114の下端面との間で上下動が可能である。
【0028】
また図3(A)および図5(A)・(B)に示すように、ノブ111の下方かつカムケース114の中央側には、下端側が開放され内部に空間を有する凸形状のカム116が配置されている。さらにカム116の下端には、カムケース114に挿通されたスプリングロッド119が嵌め込まれている。このスプリングロッド119は、上端が図4(C)に示すようにカム116の内部の凸形状に合致するように凸形状に形成されている。また、スプリングロッド119の凸形状部分の下方側にはフランジ119aが形成されている。
【0029】
また図3(A)および図4(A)に示すようにスプリングロッド119の周囲かつ、カムケース114の円筒部分の内周面との間にはスプリング117が配置されている。このスプリング117の上端はフランジ119aの下面に当接している。
【0030】
また図3(A)および図4(A)に示すように、カムケース114の下面に隣接して、略平板状のスプリングベース118が配置されている。このスプリングベース118は、第1ケース部材101aに固定されている。またスプリングベース118は中央に貫通孔が設けられている。当該貫通孔の口径はスプリングロッド119を挿通可能な大きさであって、スプリング117を通さない大きさとなっている。
【0031】
スプリング117は、下端がスプリングベース118に当接している。したがって図3(B)および図4(A)〜(C)に示すようにカム116とスプリングロッド119は、スプリング117に付勢されて上端側に付勢されており、かつカムケース114の突出部分114aからスプリングベース118の上端面との間でスプリング117の伸縮可能な距離だけ上下動が可能である。
【0032】
また図3(A)、図5(C)および図5(D)に示すように、スプリングロッド119の下端、言い換えると凸形状部分に対する他端は係合部119cが形成されている。この係合部119cは、スプリングベース118の貫通孔を通過して、スプリングベース118下方に間隔を空けて配置されたフレーム120の上面部の係合凹部に係合する。また図3(A)・(B)に示すようにこのフレーム120には、ローラー保持枠204に保持されたローラーシャフト202、キャッチャー124、を介してローラー200およびカバー210が接続されている。なお、カバー210とローラー200の組み合わせについては、以下、「カートリッジ」と記載することがある(カートリッジ216/図3(A)参照)。
【0033】
以上が、本実施形態のノック機構110の構成の概要である。なお、ノック機構110のロック状態の構成の詳細およびノック動作およびカバー210の回転動作の詳細については、ガイド103、キャッチャー124の構成を説明した後、記載する。次に図3〜図5を参照して、ローラースタンプ100全体の動作の概要を説明する。
【0034】
〔押し下げ動作の概要〕
図4(A)および図4(B)に示すように、操作者によりノブ111が下端側へ押し下げられると、ノブ111の下端に当接したスプリング112の付勢力に抗してノブ111が押し下げられる。このときノブ111の中央の突出部分111aがカム116の上端側に当接したままカム116を押し下げる。
【0035】
図4(B)に示すように、カム116が押し下げられ続けると、図3(B)に示すように、スプリングロッド119がスプリング117の付勢力に抗して押し下げられる。その結果、スプリングロッド119の係合部119cに係合されたフレーム120が開口部105に向かって押し下げられる。このとき、後述するようにフレーム120に嵌め込まれたキャッチャー124がガイド103にしたがって回転し、キャッチャー124に回動可能に支持されたカバー210が回転する。すなわち開口部105からケース101の外部に臨むカバー210が回転し、ケース101内部側へ回転する。
【0036】
図3(B)に示すように、スプリングロッド119はスプリング117が最も縮んだ状態で下方移動が規制され、当該下方移動が停止される。このとき、カバー210は回転によって上端側へ向いており、ローラー200はケース101の外部に臨んでいる。さらにローラー200の印面215は押出し動作の完了にしたがって、その外周面に形成された印面215の一部が開口部105から露出する。以上が押し下げ動作の概要である。
【0037】
(ローラースタンプの各部の構成および接続構造)
次に、図4〜図11を参照してローラースタンプ100の各部の構造および各部の接続関係について説明する。図6は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100の各部の構成および各部の接続関係の概要を示す概略分解斜視図である。図7(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のノブ111を示す概略斜視図である。図7(B)は、図7(A)におけるローラースタンプ100のC−C部分の構成を含む概略正面図である。図8は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカムケース114を示す概略斜視図である。図9は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカムケース114をケース101の開口部105側から見た概略斜視図である。図10は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカムケース114の突出部分114aを含む概略正面図である。図11は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100のカバー210の側板210aおよび爪部210cと、ローラー保持枠204の凹部204aを示す概略断面図である。なお、上記ノック機構の概要において説明した構成については説明を割愛する。
【0038】
〔ノブの構成〕
図6および図7(A)および図7(B)に示すように、ノブ111は、上面が曲面である筐体部分と、当該曲面の内側中央付近から下端側、すなわちカムケース114の突出部分114aへ向かって、円筒状の突出部分111aが設けられている。図7(A)および図7(B)に示すように、突出部分111aの突出端111bは、側面がジグザグに、すなわち略山型または略鋸歯形となるように形成されている。すなわち、突出端111bの端面は段状に形成されており、かつ端面の段の突出部分は刃のような形状となっている。また突出端111b、端面の段と段との間は上端に向かって傾斜したテーパー面となっている。また、ノブ111の筐体部分の内側において、突出部分111aの基部を囲うように、押圧部111cが形成されている。押圧部111cはスプリング112の上端と当接する部分である。さらにノブ111の側面には、当該ノブ111の押し下げ方向および第2ケース部材101cの回動方向X1(図2(A)参照)と略直交する方向に突出するフック111eが設けられている。このフック111eは、次に説明するカムケース114のガイド溝114fに係合しており、ガイド溝114fにしたがってノブ111の上下動をガイドするものである。また、フック111eは、スプリング112の付勢力等によってノブ111がケース101から外れないようにするものである。
【0039】
〔カムケースの構成〕
図6および図8に示すようにカムケース114は、ローラースタンプ100の上端側、すなわちノブ111側に向かって開口された筐体部分と、平面状の底面の略中央付近から上端側へ突出する円筒状の突出部分114aが設けられている。図8に示すようにこの突出部分114aの突出端114cは、カム116の3箇所の翼部116aと等間隔に三叉に分断されている。また突出端114cの内周面には、この分断された突出端114cの端面における隣接する弧と弧の間から下端へ向かって直線状に溝部114dが形成されている。この溝部114dはカム116の翼部116aを通過可能な幅に形成される。さらにカム116の下端部分の半径と翼部116aが側方に突出する長さを足した長さは、突出部分114aにおける半径と溝部114dの深さを足した長さより短い。したがってカム116は、ノブ111がカム116を下端側に押し込み、翼部116aが突出部分114aの溝部114dの位置に合うような位置に回転されたとき、突出部分114aの内部を通過する。
【0040】
また図9および図10に示すように、突出部分114aの略中央にはノブ111の突出部分111aのような、側面が略山型または略鋸歯形であって、端面が段状の係止部114hが形成されている。ここで、突出部分114aの略中央とは、溝部114dに沿って突出端114cとカムケース114の底面とを結んだ線の略中間に位置する部分である。
【0041】
また図9に示すように、突出部分114aにおいて係止部114hより下端側は、翼部116aを含んだカム116全体が回転可能な径となっている。すなわち、図9に示すように突出部分114aにおける略中央からカムケース114の底面までの間にわたって、突出部分114aに挿通されている翼部116aが押し下げられている方向を軸として回転可能な径(または幅)となるように形成されている。
【0042】
また図6および図8に示すように、カムケース114の側面には、スプリングロッド119が押し下げられる方向を長手方向とする直線状のレール部114eが設けられている。このレール部114eは、第1ケース部材101aに設けられたガイド104等に沿って移動可能に係合する。ガイド104はレール部114eより若干幅が広く、かつカムケース114よりやや長い。すなわちレール部114eは、第1ケース部材101aのガイド104にガイドされ、カムケース114をガイド104の長手方向にガイドするとともにカムケース114を支持するための部材である。
【0043】
また図6および図8に示すように、カムケース114の側面においては、後述する第2ケース部材101cの突部101gの下端に当接する突起114gが設けられている。カムケース114の側面における突起114gの位置は、例えば図8に示すように下端側であって、かつ第2ケース部材101cが回動して離れていく方向の端部とすることが可能である。
【0044】
〔カムにおける翼部の構成〕
図5(A)および図5(B)に示すようにカム116における翼部116aは、カム116の側面において等間隔かつ三叉に設けられている。またこの翼部116aの上端、すなわちノブ111側の面は、テーパー状になっている。さらに当該面の傾斜は、突出端111b、係止部114hの端面の傾斜に対応した傾斜となる。このように翼部116aの傾斜を対応させることにより、ノブ111が押し下げられたとき、この翼部116a上端面と、突出端111bの下端面とが相対して接する。したがってノブ111が押し下げられると、翼部116aの上端面が、突出端111bの下端面に対してスライドし、カム116が降下方向を軸として回転する。なお図3(A)や図4(A)等に示すように、ノブ111は第1ケース部材101aの受入口の幅に対して上下動が可能な程度に若干狭く形成されている。したがってノブ111は第1ケース部材101aの受入口の内面に抑制されて回転せず、カム116のみが回転する。
【0045】
また、押し下げ操作によって、カム116がノブ111に押されて突出部分114a内を通過すると、翼部116aの上端面は、係止部114hの下端面と接する。このとき翼部116aの上端面は、スプリング117に押し上げられ、係止部114hの下端面に対してスライドする。さらに翼部116aが回転していくことにより、翼部116a側面が係止部114hにおける突出部分の側面に接し、当該スライドが停止する。翼部116aのスライドが停止されると、カム116の回転が止まる。
【0046】
〔スプリングベースの構成〕
図6に示すようにスプリングベース118は、平板上の部分と、当該平板部分の側端に形成され、スプリングベース118をケース101に固定するための突部とを含んで構成されている。この突部によってスプリングベース118はケース101に固定される。また、スプリングベース118の平板部分にはその略中央部分にスプリングロッド119を挿通可能とする貫通孔が設けられている。この貫通孔はスプリング117の径よりやや小径に形成されているので、スプリング117は当該貫通孔を通過しない。
【0047】
〔フレームおよびローラーの構成〕
図6に示すように、フレーム120はスプリングベース118の下端側に配置され、平板状の部分と当該平板部分の両側端から下端側へ向かって、当該平板部分と直交するように突出する一対の側板部分とを含んで形成されている。また、フレーム120の平板部分にはその略中央部分にスプリングロッド119の係合部119cが嵌め込まれる係合凹部が設けられている。図6に示すようにフレーム120の係合凹部は、図5(D)に示されるスプリングロッド119の下端の係合部119cを嵌め込み可能なように、係合部119cと相似の形状となっている。係合部119cがこの係合凹部に嵌め込まれることにより、スプリングロッド119とフレーム120とが固定される。
【0048】
さらにフレーム120の側板部分には突出方向の先端側に後述のキャッチャー124を回転可能に保持する保持部分が一対設けられている。フレーム120は、当該保持部分に保持された一対のキャッチャー124およびローラー保持枠204を介してローラー200を保持している。キャッチャー124の中心位置には、ローラー200の回転軸であるローラーシャフト202を貫通させる貫通孔が設けられている。ローラーシャフト202はローラー保持枠204に設けられており、ローラー200はこのローラーシャフト202を軸中心として回転自在である。
【0049】
また図6に示すように、ローラー200の回転軸の軸方向における両端面は、ローラー保持枠204に挟まれている。このローラー保持枠204は、ローラー200の当該両端面に接し、ローラーシャフト202を保持している。またこのローラー保持枠204におけるローラー200の端面側に対する反対側の面には、複数の凹部204aが形成されている。この凹部204aは、ローラー保持枠204の外側の面の外縁に沿って円環状に配列されている。この凹部204aは、次に述べる側板210aの爪部210cを係合させるものである。
【0050】
〔キャッチャー、第1ケース部材のガイドおよびカバーの構成〕
図6に示すように第1ケース部材101aには、上端側にガイド104が設けられ、ガイド104下端側にカムケース114の突起114gを受け入れる係合孔が設けられている。さらに下端側にはガイド103と、第2ケース部材101cの回動軸を受け入れる回動孔が設けられている。ガイド104は、ノブ111の押し下げ方向と同じ方向に長手方向を有する。またガイド104はカムケース114のレール部114eが係合される支持溝であり、レール部114eを介してカムケース114を第1ケース部材101aにおいてガイド可能に支持する。
【0051】
図6に示すように第1ケース部材101aにおけるガイド103は、ノブ111の押し下げ方向や、スプリングロッド119の降下方向と同じ方向に長手方向を有している。このガイド103は、フレーム120を介したカートリッジの移動方向をガイドするとともに、ローラー200を回転可能に支持している。さらにガイド103は、キャッチャー124とともにフレーム120の直線的な運動を、カバー210の回転運動に変え、押し下げ操作によるローラー200の押出しと、カバー210の開放を連動して行うものである。
【0052】
このキャッチャー124は、略円盤状に形成され、かつ第1ケース部材101a側と対向した面(軸受けと反対側の面)の略中心位置において、キャッチャー124と同心円状のピニオンギア124aが形成されている。このピニオンギア124aに対してガイド103には、キャッチャー124のピニオンギア124aに噛み合うラックギア103aが設けられている。
【0053】
図6に示すようにカバー210は、ローラー200の印面215を覆う円弧状に形成され、ローラー200の印面215より外側に配置された曲面部分を有している。当該カバー210の曲面部分はローラー200の印面215の曲率とほぼ同じ曲率である。また、カバー210の曲面部分から回転軸までの距離は、ローラー200の印面215とその回転軸までの距離よりやや長くなっている。
【0054】
また図6および図11に示すようにカバー210は、ローラー200の回転軸の軸方向の両端面を挟むローラー保持枠204のさらに外側にローラー保持枠204を挟むように形成された側板210aが設けられている。この側板210aはカバー210の曲面における円弧状の端部(カバー210の回転軸の軸方向の両端部)からカバー210の回転軸までの領域を覆う平板状の部材である。
【0055】
また図11に示すようにこの側板210aにおけるローラー保持枠204側の面は、ローラー保持枠204側に突出する爪部210cが設けられている。この爪部210cは、ローラー保持枠204の凹部204aに対応する位置に設けられる。この爪部210cは、ローラー200が図11のX2方向に回転すると、先端部分がローラー保持枠204の凹部204aそれぞれに順次接触していく。またこの接触とは、ローラー200の回転を阻害しない程度の接触である。換言すれば軽く引っかかる程度となる。
【0056】
またカバー210の側板210aには、ローラーシャフト202より若干径が大きく、かつローラーシャフト202によって、カバー210をローラー200と独立に回転可能に支持するための支持孔が設けられている。この支持孔は、ローラーシャフト202の周囲を囲うように配置される。すなわち、カバー210はローラーシャフト202によって回転可能に支持され、かつローラー200とは独立に回転される。
【0057】
さらに図6に示すようにキャッチャー124には、中心に向かって一部が切れ欠かれている切欠部124cが設けられている。また、カバー210には支持孔に隣接して、同期突起214が設けられている。このキャッチャー124の切欠部124cは、カバー210の同期突起214を嵌め込み固定するものである。したがって、キャッチャー124が回転されると、同期突起214を介してカバー210が回転する。
【0058】
以上が、本実施形態のローラースタンプ100の各部の構成と、各部相互の接続関係である。
【0059】
(ローラースタンプの各部の動作の詳細)
次に図12A〜図12Cおよび図13(A)および図13(B)を参照して、ローラースタンプ100全体の動作の詳細について説明する。図12Aは、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、収納時の内部の状態を示す概略切断端面図である。図12Bは、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、ノック途中の内部の状態を示す概略切断端面図である。図12Cは、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、使用時の内部の状態を示す概略切断端面図である。図13(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、図3(A)の状態と図3(B)の状態との間における、ノック途中の内部の状態を示す概略断面図である。図13(B)は、図13(A)における状態を側方から見た場合の概略断面図である。なお、ローラー200を含むカートリッジを交換する際のケース101の動作については別途説明する。
【0060】
〔カートリッジ収納状態からノック途中の状態までの動作〕
操作者によりノブ111を押し下げる操作がなされると、ローラースタンプ100は、図12Aに示す状態から、図12Bに示す状態へと変化する。すなわち、ノブ111がフック111eを介しガイド溝114fにガイドされ、かつスプリング112の付勢力に抗して押し下げられる。ノブ111が押し下げられると、突出部分111aの突出端111bが翼部116aの上端面を押し下げるとともに、カム116が回転する。すなわち、突出端111bの下端面と翼部116aの上端面とが対応した傾斜となっているため、翼部116aの上端面が突出端111bに対してスライドする。このスライド動作によって、カム116が回転する。
【0061】
カム116が回転すると、翼部116aが突出端114c上で回転し、当該翼部116aがカムケース114の突出部分114aにおける溝部114dの位置に到達する。このときカム116は突出部分114a内部を通過可能となる。さらにカム116が押し下げられると、図12Bに示すように翼部116aは当該溝部114dを通り、溝部114dにガイドされてカム116ごと降下する。カム116が降下すると、カム116の下端面によってスプリングロッド119が押し下げられ、フランジ119aもスプリング117の付勢力に抗して降下する。この動作にともなって、スプリングロッド119および係合部119cに固定されたフレーム120も降下する。
【0062】
このとき、上述のようにキャッチャー124はフレーム120に回転可能に保持されているので、フレーム120が押し下げられると、キャッチャー124は押し下げられる方向に直線的な力を受ける。ここで、ピニオンギア124aはラックギア103aに噛み合っているので、ラックギア103aに沿って降下する(図13(A)参照)。このピニオンギア124aに働く直線的な力は、ピニオンギア124aとラックギア103aとの作用によりピニオンギア124aの回転に変わる。また、ピニオンギア124aの回転とフレーム120の直線的運動は連動する。
【0063】
キャッチャー124の切欠部124cには、カバー210の同期突起214が嵌め込まれている。したがって、図13(B)に示すようにキャッチャー124の回転により、開口部105側に位置していたカバー210が回転され、ケース101の上端側に移動する。結果、カバー210はノブ111側に回転し、ローラー200の印面215が露出する。なお、ラックギア103aの長さ、ガイド103の位置、ピニオンギア124aの径は、カバー210が180°回転するように構成される。
【0064】
〔ローラースタンプの使用状態になるまでの動作〕
カム116が突出部分114aの内部を通過し、さらにカム116が押し下げられると、翼部116aの上端面が、突出部分114aの中間位置にある係止部114hを通過する。この時点で、スプリング117は最も短縮された状態となる。このときローラー200における開口部105からケース101外に望む部分は、当該開口部105の位置から突出する。
【0065】
操作者によってノブ111が最も押し下げられた後、ノブ111を開放する操作がなされると、ノブ111に押し下げ力が働かなくなる。その結果、図12Cに示すようにスプリング112の付勢力により、ノブ111がケース101の上端側へ移動する。あわせて、スプリングロッド119にも押し下げ力が働かなくなる。このとき、翼部116aの上端面が係止部114hの下端面を越えていれば、スプリング117の付勢力によりカム116が上端側へ移動する。
【0066】
さらに、翼部116aの上端面と係止部114hの下端面とが当接して、さらにカム116が上端側へ移動しようとすると、当該下端面に沿って当該上端面がスライドし、回転する。この回転の結果、係止部114hの下端面の突出部分に翼部116aが係止されるので、カム116は突出部分114aの中間位置に留まる。本実施形態におけるローラースタンプ100においては、このカム116の位置において、開口部105からローラー200が突出し、その位置が保持される。この位置においてもローラー200は回転自在となっている。
【0067】
図12Cに示すように、キャッチャー124とラックギア103aによりカバー210はさらに回転し、カバー210の円弧の外側の面がノブ111側に臨む位置まで移動する。このようにして、ローラースタンプ100におけるローラー200の印面215がケース101外部に露出して、ローラースタンプ100としての使用が可能な状態となる。カバー210は、キャッチャー124の回転によって移動する構成であるので、フレーム120の位置が移動しない限り回転しない。すなわち、ノブ111が再びカム116を押し下げない限り、カバー210は移動しない。
【0068】
〔ローラースタンプの使用状態から収納状態になるまでの動作〕
操作者がローラースタンプ100の使用状態において、ノブ111を押下し、ノブ111の突出端111bが、係止部114hの位置にあるカム116を押し下げると、当該使用状態が解除される。すなわちカム116が突出端111bによって押し下げられるので、翼部116aが、係止部114hに係止されている状態から開放される。この状態において、ノブ111が開放される操作がなされると、スプリング117の付勢力によりスプリングロッド119とカム116とが上端側へ移動する。
【0069】
さらに翼部116aの上端面と係止部114hの下端面とが当接して、さらにカム116が上端側へ移動しようとすると、当該下端面に沿って当該上端面がスライドし、回転する。このスライド移動の結果、翼部116aは下端側から溝部114dに入り、スプリング117の付勢力により、当該溝部114dに沿って上昇する。このとき、フレーム120はスプリングロッド119の上昇にともなって上昇する。その結果、キャッチャー124がピニオンギア124aを介し、ラックギア103aに沿って回転して上昇する。このキャッチャー124の回転により、ノブ111側に位置していたカバー210が逆回転され、ケース101の下端側に移動する。すなわち、カバー210は開口部105側に回転し、ローラー200における開口部105の印面215は再びカバー210に覆われる。
【0070】
(カートリッジの交換動作)
次に、図14〜図17を参照してローラースタンプ100のケース101における第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとの係合部分の構造およびカバー210の回転に作用する当該係合部分の動作とともに、カートリッジ216の交換時の動作について説明する。図14(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、第1ケース部材101aのロック102が解除された状態を示す概略斜視図である。図14(B)は、図14(A)の状態における内部構造を示す概略切断端面図である。図15(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、第2ケース部材101cの突部101gがカムケース114の突起114gに係止された状態を示す概略断面図である。図15(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、突部101gと突起114gとの係止が解除された状態を示す概略断面図である。図16(A)〜(C)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、突部101gと突起114gとの係止状態が解除されていく動作の過程の概略を示す概略断面図である。図17(A)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、第2ケース部材101cが開かれ、交換可能となった状態を示す概略切断端面図である。図17(B)は、この発明の実施形態にかかるローラースタンプ100において、カートリッジ216が取り外された状態を示す概略切断端面図である。
【0071】
図14(A)に示すように、ロック102を上端側にスライドする等、第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとの係合を解除する操作がされると、第2ケース部材101cのフック101eが、第1ケース部材101aのロック102から解放され、第2ケース部材101cが回動可能となる。このようにフック101eがはずれると、突部101gと、カムケース114の突起114g(図6等参照)との係合関係が解除される。その結果、突起114gを介してカムケース114をわずかに押し下げていた突部101g(図15(A)参照)からの押し下げ力が、徐々に無くなっていく(図16(A)〜(C)参照)。さらに図15(B)に示すように突部101gと、突起114gとの係合がなくなり、両者が完全に離れると、突起114gが押し下げていた分、スプリング117の付勢力によりフレーム120が上昇する。その結果、図14(B)に示すように、キャッチャー124がラックギア103aの上端まで回転する。その結果、カバー210は90°第2ケース部材101c側に回転する。
【0072】
図14(B)のように第1ケース部材101aと第2ケース部材101cとのロックが外れた状態において第2ケース部材101cを第1ケース部材101aに対して離隔させると、図17(A)に示すような状態となる。すなわち、操作者がローラー200を把持する側をカバー210が覆う。さらにキャッチャー124も切欠部124cの切欠き方向がケース101の開放側へ向くようにされている。したがって、図17(B)に示すようにカバー210ごとローラー200が取り外し可能である。すなわちカートリッジ216が取り外し可能となる。
【0073】
(作用・効果)
次に、第1実施形態にかかるローラースタンプ100の作用・効果について説明する。
【0074】
本実施形態にかかるローラースタンプ100は、ノブ111の押出し操作によって、フレーム120の直線的な移動をキャッチャー124の回転移動に変換する。この直線的な移動と回転移動とは連動している。したがって、ローラースタンプ100の使用時と非使用時の切替を容易に行うことができる。
【0075】
またカバー210は、使用状態においても、非使用状態においても、ノブ111が最も押し込まれた状態の付近まで移動されて始めてカバー210の位置が移動し、ローラー200の位置が保持される。したがって、非使用時はカートリッジ216全体がケース101に収容されるだけでなく、カバー210が開口部105側を覆っており、その非使用状態も操作者による意図的な操作によらなければ、使用状態に移行され難い。その結果、ローラースタンプ100の非使用時に誤ってローラー200の印面215が露出される事態を防止することが可能である。また、使用時においても操作者が意図的にノブ111の押し込み操作を行わなければ、非使用時に切り替わり難い。したがって使用時に誤って、ローラー200を含むカートリッジ216が収容されてしまう事態を防止することが可能である。
【0076】
さらに本実施形態にかかるローラースタンプ100は、含浸インクを使用している。含浸インクは使用に応じて減少していくためインクが尽きる場合がある。この場合、操作者がカートリッジ216を交換することにより、再度ローラースタンプ100による被転写体への印字が可能となる。また、操作者が印面215の印字内容(印字する種類、印字サイズ等)を変更したい場合も、別の種類の印面215が設けられたローラー200を含むカートリッジ216を交換することで、操作者の任意の印面に変更することができる。このような場合、本実施形態におけるローラースタンプ100は、カートリッジ216の交換時において、カートリッジ216の取り外し方向にカバー210が回転する。したがって、操作者は交換作業時にカバー210を把持してローラー200(カートリッジ216)を取り外すことにより、手を汚さずに交換を行うことが可能である。
【0077】
さらにローラースタンプ100は、使用時においてノブ111がケース101の上端位置まで戻るので、印字作業を阻害する事態を回避することが可能である。
【0078】
さらにローラースタンプ100は、使用時においてローラー200の回転にしたがって、ローラー保持枠204の凹部204aそれぞれにカバー210の側板210aの爪部210cが接触し、ローラー200の回転動作にわずかな抵抗を与え当該抵抗が、ケース101に伝達する。したがって、操作者は、印字操作のときにローラー200の回転を確認することが可能となる。すなわち操作者に使用感を与えることが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
100 ローラースタンプ
101 ケース
101a 第1ケース部材
101c 第2ケース部材
101e フック
101g 突部
102 ロック
103 ガイド
103a ラックギア
104 ガイド
105 開口部
110 ノック機構
111 ノブ
111a 突出部分
111b 突出端
111c 押圧部
111e フック
112 スプリング
114 カムケース
114a 突出部分
114c 突出端
114d 溝部
114e レール部
114g 突起
114h 係止部
116 カム
116a 翼部
117 スプリング
118 スプリングベース
119 スプリングロッド
119a フランジ
119c 係合部
120 フレーム
124 キャッチャー
124a ピニオンギア
124c 切欠部
200 ローラー
202 ローラーシャフト
204 ローラー保持枠
210 カバー
210a 側板
214 同期突起
215 印面
216 カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に印面が設けられた回転体と、
前記印面の少なくとも一部が通過可能な大きさに形成された開口部を有し、前記回転体を収容するケースと、
前記回転体をその軸中心に回転自在とし、かつ前記印面の一部が該開口部側に臨むように支持する支持部と、
前記支持部により前記回転体と独立に回転可能に支持され、前記印面の前記開口部に臨む部分を覆うカバー部材と、
前記回転体が前記支持部と一体に該開口部側へ押出されることにより前記印面の少なくとも一部を該開口部から突出させる押出部と、
前記開口部と反対側に前記押出部を付勢する弾性部材と、
前記押出部により前記回転体が押出されたとき、該押出し動作に連動して前記支持部を回転させる連動機構と、を備え、
前記支持部の回転により、前記カバー部材が前記ケースの内部側へ向かって回転し、前記印面の前記開口部側を開放すること、
を特徴とするスタンプ装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記支持部から取り外し可能であり、
前記ケースは第1ケース部材と第2ケース部材とを有して構成され、
前記第2ケース部材は前記第1ケース部材に回動可能に支持され、かつ該第1ケース部材との隣接部分において該第1ケース部材に対し係止される係止部と、前記第1ケース部材側に突出するとともに該係止状態において前記押出部に当接することにより、該押出部を介して前記回転体を前記開口部側に近づける突部とを有し、
前記第2ケース部材と前記第1ケース部材との係止が解除されて互いに離隔する方向に回動されたとき、前記回転体の前記第2ケース部材側が解放されて該回転体が交換可能となり、かつ前記突部と前記押出部とが離れることにより、該押出部が前記弾性部材に付勢されて移動されるとともに、該押出部の移動に連動して前記カバー部材が回転し、該カバー部材が前記回転体における解放された側の部分を覆うこと、
を特徴とする請求項1に記載のスタンプ装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記回転体における前記印面の曲率に対応した円弧状の曲面と、該カバー部材の回転軸の少なくとも一方の端部に形成され、該円弧状の曲面と該回転軸との間の部分を覆う側板と、該側板における該回転体側の面に形成された爪部とを有し、
前記回転体の軸方向の端部において該回転体を挟んで保持する保持枠と、
前記保持枠における前記回転体側の反対側となる面において、略円形状に配列された複数の凹部と、
前記回転体が回転すると、前記カバー部材の前記爪部が、前記保持枠における凹部に接触することにより、該回転に対する抵抗となること、
を特徴とする請求項1に記載のスタンプ装置。
【請求項4】
外周に印面が設けられた回転体と、
第1ケース部材と、前記第1ケース部材に回動可能に支持されるとともに、該第1ケース部材との隣接部分において該第1ケース部に対し係止され、該係止状態において前記回転体を前記開口部側に近づける第2ケース部材とを有し、かつ前記印面の少なくとも一部が通過可能な大きさに形成された開口部が設けられ、前記回転体を収容するケースと、
前記回転体をその軸中心に回転自在とし、かつ前記印面の一部が該開口部側に臨むように支持する支持部と、
前記支持部により前記回転体と独立に回転可能に支持され、前記印面の前記開口部に臨む部分を覆うカバー部材と、
前記回転体が前記支持部と一体に該開口部側へ押出されることにより該印面の少なくとも一部を該開口部から突出させる押出部と、
前記開口部と反対側に前記押出部を付勢する弾性部材と、
前記第2ケース部材と前記第1ケース部材との係止が解除され、かつ該第1ケース部材に対して離隔する方向に回動されるとともに、前記突部と前記押出部とが離れたとき、該押出部が前記弾性部材に付勢されて移動されることにより、該押出部の移動に連動して前記支持部を回転させる連動機構と、を備え、
前記支持部の回転にしたがって前記カバー部材が回転し、該カバー部材が前記回転体における前記第2ケース部材側の部分を覆うこと、
を特徴とするスタンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−143624(P2011−143624A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6541(P2010−6541)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(301032735)プラス株式会社 (33)