説明

スターリングエンジン

【課題】熱交換効率のよい熱交換器とすることができるスターリングエンジンを提供すること。
【解決手段】本発明のスターリングエンジンは、ハウジング1内にはディスプレーサピストン2を備え、ディスプレーサピストン2の外周部に、再生器10及び冷却器11を配置し、ハウジング1によってディスプレーサピストン2の膨脹空間1aを形成し、ハウジング1に熱交換器9を密着固定し、熱交換器9内には、複数のガス通路9aが形成され、ガス通路9aの一端を、ハウジング1内の連通路1bを介して膨脹空間1aと連通し、ガス通路9aの他端を、ハウジング1内の連通路を1b介して再生器10と連通したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスや廃熱やバイオマスなどの多様な熱源を活用できるスターリングエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼ガスや廃熱やバイオマスなどの熱源を有効に活用することは、環境問題及びエネルギー問題の解決に繋がる。スターリングエンジンは熱源を選ばず、温度差があれば運転できるという特徴を持つことから、それら熱源の有効活用に適している。
一般に、ハウジング内にはディスプレーサピストンを備え、前記ディスプレーサピストンの外周部に、加熱器、再生器、及び冷却器を配置している。
そして、ハウジングによって膨脹空間を形成し、この膨脹空間と再生器を連通するガス通路を流れる作動ガスを加熱するために、ハウジング自体を加熱する構成が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ハウジングによって膨脹空間を形成すると、耐圧を考えた材料及び構成をとらなければならず、熱交換効率を高める上で制約となっていた。
【0004】
そこで、本発明は、熱交換効率のよい熱交換器とすることができるスターリングエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明のスターリングエンジンは、ハウジング内にはディスプレーサピストンを備え、前記ディスプレーサピストンの外周部に、再生器及び冷却器を配置したスターリングエンジンであって、前記ハウジングによって前記ディスプレーサピストンの膨脹空間を形成し、前記ハウジングに熱交換器を密着固定し、前記熱交換器内には、複数のガス通路が形成され、前記ガス通路の一端を、前記ハウジング内の連通路を介して前記膨脹空間と連通し、前記ガス通路の他端を、前記ハウジング内の連通路を介して前記再生器と連通したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載のスターリングエンジンにおいて、前記熱交換器は、円柱形状で、中心部に筒状空間が形成され、前記筒状空間から外周面に向かって放射状に形成されたスリットによって燃焼ガス経路が形成され、前記スリット間に、前記ガス通路を配置したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記熱交換器を、前記ハウジングと密着固定される底部円柱部と、前記底部円柱部と連続し前記底部円柱部の径以上の径からなる胴部円柱部と、前記胴部円柱部と連続し前記胴部円柱部の径よりも小さな径からなる頂部円柱部とにより構成し、前記スリットを前記胴部円柱部に形成したことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記熱交換器を、前記ハウジングと密着固定される底部円柱部と、前記底部円柱部と連続し前記ガス通路を形成する胴部円柱部と、前記胴部円柱部と連続し前記ガス通路を形成しない頂部円柱部とにより構成し、前記胴部円柱部の外周に加熱源を配置したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載のスターリングエンジンにおいて、前記熱交換器の上面部及び外周部を断熱材にて覆ったことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項3に記載のスターリングエンジンにおいて、前記底部円柱部または前記胴部円柱部の外周に加熱源を配置したことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、複数の前記ガス通路を、前記熱交換器に同心円状に配置したことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記熱交換器として、炭化珪素系セラミックス、窒化珪素系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、又はアルミナ系から選択されるセラミックスを用いたことを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項2に記載のスターリングエンジンにおいて、前記底部円柱部、前記胴部円柱部、及び前記頂部円柱部を、それぞれ別部材として成形し、更に前記胴部円柱部を、スリットごとに分割した胴部用ピースとして成形し、前記底部円柱部、前記胴部円柱部、及び前記頂部円柱部を嵌合させた後に焼成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱交換器を耐圧部材とする必要がなく、熱交換性能だけを考えた構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態によるスターリングエンジンは、ハウジングによってディスプレーサピストンの膨脹空間を形成し、ハウジングに熱交換器を密着固定し、熱交換器内には、複数のガス通路が形成され、ガス通路の一端を、ハウジング内の連通路を介して膨脹空間と連通し、ガス通路の他端を、ハウジング内の連通路を介して再生器と連通したものである。本実施の形態によれば、ハウジングによって膨脹空間を形成しているので、熱交換器には膨脹空間の圧力を受けない。したがって、熱交換器にはガス通路内に圧力が加わるだけのため、熱交換器は耐圧部材とする必要がなく、熱交換性能だけを考えた構成とすることができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、熱交換器は、円柱形状で、中心部に筒状空間が形成され、筒状空間から外周面に向かって放射状に形成されたスリットによって燃焼ガス経路が形成され、スリット間に、ガス通路を配置したものである。本実施の形態によれば、燃焼ガスの通路面をスリットとしたことで、伝熱面積を大きくすることができる。さらに、スリット間の燃焼ガス通路とスリット内のガス通路との距離を小さくすることができるため、スリット内を流れる燃焼ガスからガス通路を流れる作動ガスに効率よく熱を伝達することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、熱交換器を、ハウジングと密着固定される底部円柱部と、底部円柱部と連続し底部円柱部の径以上の径からなる胴部円柱部と、胴部円柱部と連続し胴部円柱部の径よりも小さな径からなる頂部円柱部とにより構成し、スリットを胴部円柱部に形成したものである。本実施の形態によれば、最も大径部である胴部円柱部にスリットによって燃焼ガス経路を形成するので、燃焼ガスの通路面をスリットとしたことで、伝熱面積を大きくすることができる。さらに、スリット間の燃焼ガス通路とスリット内のガス通路との距離を小さくすることができるため、ガス通路を流れる作動ガスに効率よく熱を伝達することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、熱交換器を、ハウジングと密着固定される底部円柱部と、底部円柱部と連続しガス通路を形成する胴部円柱部と、胴部円柱部と連続しガス通路を形成しない頂部円柱部とにより構成し、胴部円柱部の外周に加熱源を配置したものである。本実施の形態によれば、加熱源で発生させた燃焼ガスをスリット通過後、筒状空間に導くことができ、熱交換器に効率よく熱を与えることができるとともに、加熱源を胴部円柱部の外周に設けることで熱交換器の軸方向の寸法を抑えることができる。
本発明の第5の実施の形態は、第2から第4の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、熱交換器の上面部及び外周部を断熱材にて覆ったものである。本実施の形態によれば、スリットを流れる燃焼ガスの熱を熱交換器に効率よく与えることができる。また、燃焼ガスは、ガス通路で熱交換した後に、筒状空間に導かれ、熱交換器と上面部の断熱材との間に形成された燃焼ガス通路を通り、外周部の断熱材に形成された燃焼ガス通路を通って排出される。したがって、熱交換器は、ガス通路での熱交換以外に、放熱、熱伝導することがなく、熱交換器の温度が、熱交換後の燃焼ガスによって、熱交換後の燃焼ガス温度以下に低下することがなく、熱交換器の保温効果が高い。さらに、上面部に配置する断熱材端面との接触面と熱交換器端面との隙間である燃焼ガス通路を小さくすることで、前述の保温効果を大きくすることができる。
本発明の第6の実施の形態は、第3の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、底部円柱部または胴部円柱部の外周に加熱源を配置したものである。本実施の形態によれば、加熱源で発生させた燃焼ガスをスリット通過後、筒状空間に導くことができ、熱交換器に効率よく熱を与えることができる。
本発明の第7の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、複数のガス通路を、熱交換器に同心円状に配置したものである。本実施の形態によれば、ガス通路を流れる作動ガスに均一に熱を伝えることができる。
本発明の第8の実施の形態は、第2の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、熱交換器として、炭化珪素系セラミックス、窒化珪素系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、又はアルミナ系から選択されるセラミックスを用いたものである。本実施の形態によれば、耐熱性に優れ、熱伝導性が高い熱交換器を実現できる。
本発明の第9の実施の形態は、第3の実施の形態によるスターリングエンジンにおいて、底部円柱部、胴部円柱部、及び頂部円柱部を、それぞれ別部材として成形し、更に胴部円柱部を、スリットごとに分割した胴部用ピースとして成形し、底部円柱部、胴部円柱部、及び頂部円柱部を嵌合させた後に焼成したものである。本実施の形態によれば、あらかじめ複数の部材を成形し、それらを接合して焼成することによりセラミックスを得ることで、ガス通路やスリットを精度よく形成することができる。
【実施例】
【0008】
以下本発明の一実施例について図面とともに詳細に説明する。
図1は本実施例によるスターリングエンジンの側断面概略図である。
図1において、ハウジング1内にディスプレーサピストン2が配置され、ディスプレーサピストン2の下方にはパワーピストン3が配置されている。パワーピストン3の外周には、パワーピストン3とともに往復動作するインナーヨーク4が配置されている。インナーヨーク4は、円筒状に構成され、その外周には磁石5が配置される。
インナーヨーク4の外周部には、円筒状のアウターヨーク6がインナーヨーク4と所定のギャップを持って配置される。アウターヨーク6の内周側にはコイル7が、磁石5と対向するように配置されている。磁石5を有するインナーヨーク4と、コイル7を有するアウターヨーク6によって発電機が構成される。
ハウジング1内の、ディスプレーサピストン2の外周部には、再生器10、及び冷却器11を備えている。ディスプレーサピストン2の膨脹空間1aは、ハウジング1によって形成している。熱交換器9は、ハウジング1の一端側の外端面に密着固定している。冷却器11はハウジング1の他端側に配置し、再生器10は熱交換器9と冷却器11との間に配置している。再生器10と冷却器11は、ともに円筒状に構成されており、ハウジング1の他端側から挿入固定される。
熱交換器9内には、複数のガス通路9aが形成され、ガス通路9aの一端をハウジング1内の連通路1bを介して膨脹空間1aと連通し、ガス通路9aの他端をハウジング1内の連通路1bを介して再生器10と連通している。
熱交換器9は、耐熱・高熱伝導性材料が適しており、例えば、炭化珪素系セラミックス、窒化珪素系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、又はアルミナ系から選択されるセラミックスを用いる。なお、これらのセラミックスと金属の傾斜機能材料としてもよい。熱交換器9の上面部及び外周部は、断熱材90にて覆われ、熱交換器9と断熱材90との間には、加熱源9cが配置されている。
熱交換器9の中心部には、筒状空間9dが形成されている。
ロッド12の一端側は大径ロッド12a、ロッド12の他端側は小径ロッド12bで構成され、大径ロッド12aはディスプレーサピストン2に固定され、小径ロッド12bは板バネ13に連結されている。
【0009】
容器14は筒状部材で構成され、パワーピストン3、インナーヨーク4、アウターヨーク5を内部に収容する。
容器14には、パワーピストン3の一端側の外周面が摺動する第1の軸受部15と、パワーピストン3の他端側の内周面が摺動する第2の軸受部16とを有している。第1の軸受部15は、パワーピストン3が摺動する第1の円筒部15aと、第1の円筒部15aの一端に形成した第1のフランジ部15bとで構成され、第2の軸受部16は、パワーピストン3が摺動する第2の円筒部16aと、第2の円筒部16aの一端に形成した第2のフランジ部16bとで構成される。第1の円筒部15aの内周面には滑り軸受を設けている。第2の円筒部16aの中心には第2の貫通孔16cを形成している。第1の軸受部15は、第1の円筒部15aの外周面と容器14の一端側の内周面で位置決め固定され、第2の軸受部16は、第2のフランジ部16bの外周面と容器14の他端側の内周面で位置決め固定される。
アウターヨーク6は容器14の内周面で位置決め固定される。
容器14の一端側にはハウジング1が配置され、ハウジング1と容器14とは連結部材17を介して締結する。連結部材17は、リング状の連結板17aと、ハウジング1側から挿入されるボルト17bから構成される。容器14の他端側には封止部材18が配置される。
【0010】
パワーピストン3は、ヘッド部3aとスカート部3bで構成し、ヘッド部3aの外周面を第1の軸受部15との摺動面とし、スカート部3bの内周面を第2の軸受部16との摺動面としている。なお、スカート部3bの外周面にインナーヨーク4は位置決め固定される。ヘッド部3aの中心には第1の貫通孔3cを形成している。第1の貫通孔3cの内周面には軸受を形成する。スカート部3bの内周面には第2の滑り軸受3eを設けている。
板バネ13は、第2の軸受部16と封止部材18との間に配置される。
ディスプレーサピストン2と板バネ13とを連結するロッド12は、大径ロッド12aを第1の貫通孔3cに配置し、小径ロッド12bを第2の貫通孔16cに配置している。
【0011】
次に、図2から図6を用いて本実施例による熱交換器について説明する。
図2は、同熱交換器の上方から見た斜視図、図3は、同熱交換器の下方から見た斜視図、図4は、同熱交換器の側面図、図5は図4のV−V線断面図、図6は同熱交換器の組み立て状態を示す要部側断面図である。
本実施例による熱交換器は、円柱形状であり、ハウジング1と密着固定される底部円柱部91と、底部円柱部91と連続し底部円柱部91の径以上の径からなる胴部円柱部92と、胴部円柱部92と連続し胴部円柱部92の径よりも小さな径からなる頂部円柱部93とによって構成されている。
燃焼ガス経路を形成するスリット9bは、胴部円柱部92に筒状空間9dから外周面に向かって放射状に形成されている。
ガス通路9aは、スリット9b間に配置されている。また、ガス通路9aは、熱交換器9に同心円状に配置している。
【0012】
本実施例によれば、ハウジング1によって膨脹空間1aを形成しているので、熱交換器9には膨脹空間1aの圧力を受けない。したがって、熱交換器9にはガス通路9a内に圧力が加わるだけであるため、熱交換器9は耐圧部材とする必要がなく、熱交換性能だけを考えた構成とすることができる。
また、本実施例によれば、スリット9b内を流れる燃焼ガスからガス通路9aを流れる作動ガスに効率よく熱を伝達することができる。
また、本実施例によれば、最も大径部である胴部円柱部92にスリット9bによって燃焼ガス経路を形成するので、ガス通路9aを流れる作動ガスに効率よく熱を伝達することができる。
また、本実施例によれば、スリット9bを流れる燃焼ガスの熱を熱交換器9に効率よく与えることができる。
また、本実施例によれば、加熱源で発生させた燃焼ガスをスリット9b通過後、筒状空間9dに導くことができ、熱交換器9に効率よく熱を与えることができる。
また、本実施の形態によれば、ガス通路9aを流れる作動ガスに均一に熱を伝えることができる。
また、本実施例によれば、パワーピストン3の摺動面を形成する第1の軸受部15と第2の軸受部16とを容器14に有するとともにアウターヨーク6を容器の内周部に設けることで、パワーピストン3がアウターヨーク6に対して、傾き及び芯ずれ状態で組み付けられることを抑制し、パワーピストン3とアウターヨーク6との隙間寸法を精度良く組み立てることができる。そのため、パワーピストン3が傾きや芯ずれによって発生する機械損失(摺動損失)を低減することができる。さらに、第1の軸受部15だけで、パワーピストン3を支持する場合には、高さ方向に長くなるが、アウターヨーク6内周面内に第2の軸受部16を形成することで、可動部内周面を有効に軸受部として形成することができるため、スターリングエンジンをコンパクトに構成できる。
また本実施例によれば、スターリングエンジンを構成する部材を、ハウジング1と容器14とにそれぞれ配置するとともに、ハウジング1と容器14とを締結することで、特にディスプレーサピストン2とパワーピストン3との位置調整を精度良く行うことができる。
また本実施例によれば、アウターヨーク6を、容器14の内周面で位置決め固定するため、インナーヨーク4とアウターヨーク6との組み立て誤差を少なくすることができる。
また本実施例によれば、第1の軸受部15を、第1の円筒部15aの外周面で容器14に位置決め固定し、第2の軸受部16を、第2のフランジ部16bの外周面で容器14に位置決め固定するため、第1の軸受部15と第2の軸受部16との組み立て誤差を少なくすることができる。
また本実施例によれば、パワーピストン3を、ヘッド部3aとスカート部3bで構成し、ヘッド部3aの外周面を第1の軸受部15との摺動面とし、スカート部3bの内周面を第2の軸受部16との摺動面とし、スカート部3bの外周面にインナーヨーク4を位置決め固定するため、インナーヨーク4とアウターヨーク6との位置調整を精度良く行うことができる。
また本実施例によれば、第1の貫通孔3cに大径ロッド12aを配置し、第1の貫通孔3cの内周面に軸受部を形成するため、ディスプレーサピストン2とパワーピストン3との間にできる空間の気密性を高めることができる。
また本実施例によれば、パワーピストン3の両端を滑り軸受で受けることでパワーピストンの往復駆動の挙動を安定させ、エンジンの信頼性を高めることができる。
【0013】
上記構成において、熱交換器9での加熱によって、封入されている気体が膨張してディスプレーサピストン2を下方へ移動させる。ディスプレーサピストン2の下方への移動によって、ディスプレーサピストン2とパワーピストン3との間の空間にあるガスが圧縮されてパワーピストン3を下方へ移動させる。パワーピストン3の下方への移動によって、気体はディスプレーサピストン2の上部から、熱交換器9、再生器10、及び冷却器11を通過してディスプレーサピストン2の下部に移動する。そしてディスプレーサピストン2の上方への移動によってディスプレーサピストン2とパワーピストン3との間の空間が低圧になることで、パワーピストン3は上方へ移動する。ディスプレーサピストン2の下部に移動した気体は、パワーピストン3の上方への移動によって、冷却器11、再生器10、及び熱交換器9を通過して、ディスプレーサピストン2の上部に移動する。
このように、熱交換器9での加熱と冷却器11での冷却によって、気体は膨張収縮を行いながらディスプレーサピストン2の上部と下部を往復することで、ディスプレーサピストン2を移動させるとともに、パワーピストン3を移動させる。そして、パワーピストン3の移動によって発電を行うことができる。
【0014】
次に、図7から図9を用いて熱交換器の製造方法について説明する。
図7は、焼結前の状態における熱交換器の上方から見た一部分解斜視図、図8は、同状態における熱交換器の下方から見た分解斜視図、図9は、同状態における熱交換器の側面図である。
底部円柱部91、胴部円柱部92、及び頂部円柱部93からなる熱交換器9は、それぞれ別部材として成形し、更に胴部円柱部92は、スリット9bごとに分割した胴部用ピース92a、92b、92c・・として成形する。
胴部用ピース92a、92b、92c・・には、それぞれ底部円柱部91と嵌合する嵌合部、及び頂部円柱部93と嵌合する嵌合部が一体に成形されている。
これら各部材は、例えば珪素系材料で成形し、図示のように各部材を嵌合させた後に、所定温度で焼成することで炭化珪素系セラミックスとする。
このようにあらかじめ複数の部材を成形し、それらを接合して焼成することによりセラミックスを得ることで、ガス通路9aやスリット9bを精度よく形成することができる。
【0015】
次に、図10を用いて他の実施例による熱交換器について説明する。
上記実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を一部省略する。
熱交換器9x内には、複数のガス通路9aが形成され、ガス通路9aの一端はハウジング1内の連通路1bを介して膨脹空間1aと連通し、ガス通路9aの他端はハウジング1内の連通路1bを介して再生器10と連通している。熱交換器9xの外周部は、断熱材90にて覆われ、熱交換器9xの底部円柱部91xまたは胴部円柱部92xと断熱材90との間には、加熱源配置空間9yが形成され、この加熱源配置空間9yに加熱源9zが配置されている。また、熱交換器9xの上面部は、燃焼ガス通路を形成するように断熱材90にて覆っている。外周部の断熱材90には、燃焼ガスを径方向に排出する燃焼ガス通路を形成している。
熱交換器9xの中心部には、筒状空間9dが形成されている。
本実施例による熱交換器9xは、円柱形状であり、ハウジング1と密着固定される底部円柱部91xと、底部円柱部91xと連続しガス通路9aを形成する胴部円柱部92xと、胴部円柱部92xと連続しガス通路9aを形成しない頂部円柱部93xとにより構成し、胴部円柱部92xの外周に加熱源配置空間9yが形成され、この加熱源配置空間9yに加熱源9zが配置されている。
なお、図示はしないが、本実施例においても燃焼ガス経路を形成するスリットが、胴部円柱部92xに筒状空間9dから外周面に向かって放射状に形成されている。
また、スリット間にガス通路9aが配置されている。そして、ガス通路9aは、熱交換器9xに同心円状に配置している。
【0016】
本実施例によれば、加熱源9zで発生させた燃焼ガスをスリット通過後、筒状空間9dに導くことができ、熱交換器9xに効率よく熱を与えることができる。
また、本実施例によれば、加熱源9zを胴部円柱部92xの外周に設けることで熱交換器9xの軸方向の寸法を抑えることができる。
また、本実施例によれば、胴部円柱部92xの外周に加熱源配置空間9yを形成し、この加熱源配置空間9y内で加熱源9zの配置を変更できるように構成することで、燃焼効率の高い位置に加熱源9zを配置することができ、設計を容易にすることができるとともに、燃焼条件などに応じて、加熱源9zを最適な位置に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明のスターリングエンジンは、廃熱やバイオマスなどの熱源ガスを活用した発電装置や動力装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例によるスターリングエンジンの側断面概略図
【図2】本実施例による熱交換器の上方から見た斜視図
【図3】同熱交換器の下方から見た斜視図
【図4】同熱交換器の側面図
【図5】図4のV−V線断面図
【図6】同熱交換器の組み立て状態を示す要部側断面図
【図7】焼結前の状態における熱交換器の上方から見た一部分解斜視図
【図8】同状態における熱交換器の下方から見た分解斜視図
【図9】同状態における熱交換器の側面図
【図10】本発明の他の実施例による熱交換器の側断面概略図
【符号の説明】
【0019】
1 ハウジング
2 ディスプレーサピストン
3 パワーピストン
4 インナーヨーク
5 磁石
6 アウターヨーク
7 コイル
9 熱交換器
10 再生器
11 冷却器
14 容器
15 第1の軸受部
16 第2の軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にはディスプレーサピストンを備え、前記ディスプレーサピストンの外周部に、再生器及び冷却器を配置したスターリングエンジンであって、
前記ハウジングによって前記ディスプレーサピストンの膨脹空間を形成し、
前記ハウジングに熱交換器を密着固定し、
前記熱交換器内には、複数のガス通路が形成され、
前記ガス通路の一端を、前記ハウジング内の連通路を介して前記膨脹空間と連通し、
前記ガス通路の他端を、前記ハウジング内の連通路を介して前記再生器と連通したことを特徴とするスターリングエンジン。
【請求項2】
前記熱交換器は、円柱形状で、中心部に筒状空間が形成され、
前記筒状空間から外周面に向かって放射状に形成されたスリットによって燃焼ガス経路が形成され、
前記スリット間に、前記ガス通路を配置したことを特徴とする請求項1に記載のスターリングエンジン。
【請求項3】
前記熱交換器を、前記ハウジングと密着固定される底部円柱部と、前記底部円柱部と連続し前記底部円柱部の径以上の径からなる胴部円柱部と、前記胴部円柱部と連続し前記胴部円柱部の径よりも小さな径からなる頂部円柱部とにより構成し、
前記スリットを前記胴部円柱部に形成したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項4】
前記熱交換器を、前記ハウジングと密着固定される底部円柱部と、前記底部円柱部と連続し前記ガス通路を形成する胴部円柱部と、前記胴部円柱部と連続し前記ガス通路を形成しない頂部円柱部とにより構成し、
前記胴部円柱部の外周に加熱源を配置したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項5】
前記熱交換器の上面部及び外周部を断熱材にて覆ったことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のスターリングエンジン。
【請求項6】
前記底部円柱部または前記胴部円柱部の外周に加熱源を配置したことを特徴とする請求項3に記載のスターリングエンジン。
【請求項7】
複数の前記ガス通路を、前記熱交換器に同心円状に配置したことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項8】
前記熱交換器として、炭化珪素系セラミックス、窒化珪素系セラミックス、窒化アルミニウム系セラミックス、又はアルミナ系から選択されるセラミックスを用いたことを特徴とする請求項2に記載のスターリングエンジン。
【請求項9】
前記底部円柱部、前記胴部円柱部、及び前記頂部円柱部を、それぞれ別部材として成形し、更に前記胴部円柱部を、スリットごとに分割した胴部用ピースとして成形し、
前記底部円柱部、前記胴部円柱部、及び前記頂部円柱部を嵌合させた後に焼成したことを特徴とする請求項3に記載のスターリングエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−167988(P2009−167988A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9848(P2008−9848)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(エネルギー使用合理化技術戦略的開発、エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発、セラミックス製熱交換器と新形式リニア発電機を用いた次世代エンジンの開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(506065725)株式会社eスター (17)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)