説明

ステアリング装置

【課題】シンプルな構成で軽量化しつつ、コストを抑えたステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置において、入力軸32は、ステアリングホイールの操舵力が入力される。伝達比可変装置30は、入力軸32に連結される遊星歯車機構を有し、入力軸32の入力量に対する出力量の入出力比を変化させる。出力部54は、遊星歯車機構に接続され、出力量に応じて回転する。ロッド12,14は、一端が出力部54に連結し、他端が車輪24,26に連結して出力部54の回転に応じて車幅方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの操舵角を変化させて出力する伝達比可変装置を備えるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置には、ステアリングホイールの操舵量を変化させて出力する舵角比可変装置が設けられる(特許文献1参照)。特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールに一体結合されたステアリングシャフトが、舵角比可変装置を介して転舵機構のピニオン軸に接続され、ピニオン軸は転舵機構のラックに接続され、ラックの両端にタイロッドを介して左右の前輪が連結されている。この舵角比可変装置により、舵角比を変化させ、ラックアンドピニオン機構によりステアリングシャフトの回転をタイロッドの車幅方向の変位に変換させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−280045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電動パワーステアリング装置では、舵角比可変装置とラックアンドピニオン機構とにより舵角比の変化と、回転軸の回転を車幅方向の変位へ変換することをそれぞれ実現しており、車両の軽量化を図るには限界がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シンプルな構成で軽量化をしたステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のステアリング装置は、ステアリングホイールの操舵力が入力される入力軸と、入力軸に連結される遊星歯車機構を有し、入力軸の入力量に対する出力量の入出力比を変化させる伝達比可変装置と、遊星歯車機構に接続され、出力量に応じて回転する出力部と、一端が出力部に連結し、他端が車輪に連結して出力部の回転に応じて車幅方向に移動するロッドと、を備える。
【0007】
この態様によると、遊星歯車機構に接続された出力部にロッドを連結させることで、シンプルな構成で入力軸の回転を車幅方向の変位へ変換することできる。これにより、ステアリング装置を軽量化することができる。
なお、入力量に対する出力量の入出力比は、入力軸の回転角に対する出力側の回転角の入出力比であってよく、入力軸の回転角の変化量に対する出力側の回転角の変化量の入出力比であってよい。
【0008】
伝達比可変装置は、モータをさらに有してもよい。遊星歯車機構は、入力軸に連結されるサンギアと、出力部に連結されるキャリアと、モータの駆動に応じて回転可能なリングギアと、を有してもよい。これにより、モータを駆動することで遊星歯車機構の入出力比を変化させることができる。
【0009】
出力部は、キャリアの外周から径方向外向きに突出するように設けられてもよい。キャリアに出力部を設けることで、出力部の周方向の揺動によりロッドを車幅方向への変位させることがでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のステアリング装置によれば、シンプルな構成で軽量化しつつ、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るステアリング装置の構成の概略を説明するための説明図である。
【図2】図1に示す伝達比可変装置の線分A−Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施形態に係るステアリング装置10の構成の概略を説明するための説明図である。ステアリング装置10は、ステアリングホイール(不図示)と、ステアリングシャフトと、第1タイロッド12と、第2タイロッド18と、リレーロッド14と、アイドラアーム16と、伝達比可変装置30と、を備える。
【0013】
ステアリングホイールは、車両室内に設けられ、運転者によって回動操作される。ステアリングシャフトは、ステアリングホイールとともに回転するように一端がステアリングホイールに連結されており、ステアリングホイールの回転を伝達比可変装置30に伝達する入力軸32として機能する。すなわちステアリングシャフトは、ステアリングホイールと伝達比可変装置30とを連結する入力軸32となり、ステアリングホイールの操舵力が入力される。
【0014】
伝達比可変装置30は、入力軸32からの入力量に対する出力量の入出力比を変化させる。また伝達比可変装置30は、入力軸32からの入力を減速して出力部54に出力する減速機能を有する。具体的な構成は後ほど説明する。出力部54は、伝達比可変装置30に接続され、伝達比可変装置30の出力に応じて回転する。
【0015】
出力部54には、第1タイロッド12およびリレーロッド14が直接連結される。第1タイロッド12は第1ナックルアーム20を介して左車輪24に連結される。第1タイロッド12の一端は、出力部54に回転可能に連結され、他端は第2ナックルアーム22に回動可能に連結される。第1タイロッド12の車幅方向の移動に応じて左車輪24が転舵される。
【0016】
リレーロッド14の一端は、出力部54に回動可能に連結され、他端はアイドラアーム16に回動可能に連結されて支持される。アイドラアーム16は車体に支持される。アイドラアーム16には第2タイロッド18の一端が回動可能に連結され、第2タイロッド18の他端は第2ナックルアーム22に回動可能に連結される。第2タイロッド18は第2ナックルアーム22を介して右車輪26に連結され、第2タイロッド18の車幅方向の移動に応じて右車輪26が転舵される。
【0017】
第1タイロッド12、リレーロッド14、第2タイロッド18を特に区別しない場合は単にロッドという。左右の車輪はロッドの車幅方向の移動に応じて転舵する。第1タイロッド12を第1のロッド、リレーロッド14および第2タイロッド18を第2のロッドととし、第1および第2のロッドは、一端が出力部54に連結し、他端が車輪に連結して出力部54の回転に応じて車幅方向に移動する。次に、図2を参照しつつ、伝達比可変装置30について説明する。
【0018】
図2は、図1に示す伝達比可変装置30の線分A−Aの断面図である。なお、図2では伝達比可変装置30のハウジング48を省略して示す。伝達比可変装置30は、入力軸32の回転を受けて、入力回転角に対する出力回転角の入出力比を自在に変化させる。左車輪24および右車輪26は、伝達比可変装置30の出力回転角に応じて第1および第2のロッドを介して転舵する。伝達比可変装置30は、入力軸32、遊星歯車機構36、ウォームギア44およびモータ46を有する。遊星歯車機構36は、キャリア34、サンギア38、遊星ギア40、リングギア42、ハウジング48、第1回転軸50および第2回転軸52を有する。ハウジング48は車体に固定される。
【0019】
入力軸32は、ステアリングホイールの操舵角に応じて回転する。サンギア38は、入力軸32に直接連結され、入力軸32とともに回転する。サンギア38の径方向外側には、第1遊星ギア40a、第2遊星ギア40bおよび第3遊星ギア40c(これらをとくに区別しない場合「遊星ギア40」という)が配され、サンギア38の外周と遊星ギア40の外周は噛合する。
【0020】
遊星ギア40は、サンギア38の周りを公転可能であり、かつ自転可能である。遊星ギア40の第1回転軸50、第2回転軸52および第3回転軸(不図示)は、キャリア34に回動可能に支持される。キャリア34は環状に形成され、遊星ギア40の回転軸を支持する軸受孔がそれぞれ形成される。キャリア34の軸受孔には遊星ギア40の回転軸が祖入される。したがって、遊星ギア40の公転によりキャリア34は回転する。
【0021】
遊星ギア40の径方向外側には、環状のリングギア42が配され、遊星ギア40の外周とリングギア42の内周は噛合する。リングギア42はキャリア34より大径である。サンギア38、遊星ギア40およびリングギア42の回転軸は平行である。
【0022】
リングギア42の外周には、ウォームギア44と噛合する歯が形成される。リングギア42の外周とウォームギア44とは噛合し、ウォームギア44の回転によりリングギア42は回転する。ウォームギア44はモータ46の駆動により回転するため、リングギア42もモータ46の駆動により回転可能である。
【0023】
モータ46は、制御部(不図示)により車速と操舵角に応じて駆動するよう制御されてよい。制御部は、たとえば車速が低速域であれば高速域より車輪が大きく転舵するように制御する。また制御部は、操舵角が初期状態から大きくなれば車輪が大きく転舵するように制御する。これにより、減速機構である遊星歯車機構36において、ステアリングのギア比、すなわち入力軸32の入力量に対する出力量の入出力比を無段階に変化させることができる。これにより、伝達比可変装置30を軽量化できる。なお、モータ46の駆動力により運転者の操舵を補助してよい。
【0024】
出力部54は、キャリア34の外周から径方向外向きに突出するように一体に設けられる。したがって、出力部54はキャリア34の回転に応じて周方向に揺動する。出力部54に回動可能に直接連結された第1タイロッド12およびリレーロッド14は、出力部54の径方向の移動にともなって車幅方向に変位する。これにより、ラックアンドピニオン機構を用いないで、回転方向の動作を車幅方向の動作に変換することができる。また、キャリア34から突出する出力部54に第1タイロッド12およびリレーロッド14を直接連結することで、ラックアンドピニオン機構を用いる場合と比べて、質量を格段に軽くすることができ、ステアリング装置10を軽量化することができる。
【0025】
ステアリング装置10の作用について説明する。運転手の操舵により入力軸32が回転すると、サンギア38が入力軸32とともに同じ角速度で回転する。サンギア38の回転により遊星ギア40が自転および公転する。また遊星ギア40と噛合するリングギア42も回転する。遊星ギア40の公転は、サンギア38と遊星ギア40とリングギア42の歯数にもとづいて、サンギア38の角速度より減速される。遊星ギア40の公転によりキャリア34が回転する。
【0026】
ここで、リングギア42の外周はウォームギア44と噛合しており、ウォームギア44を介してモータ46の駆動力が伝達される。したがってモータ46の駆動によりリングギア42の角速度が変化し、遊星ギア40の公転の角速度も変化し、遊星ギア40に連結するキャリア34の角速度も変化する。これにより、入力軸32の回転角に対する出力側のキャリア34の回転角の入出力比が変化する。
【0027】
キャリア34と同じ角速度で回転する出力部54の周方向への回転により第1タイロッド12およびリレーロッド14と第2タイロッド18が車幅方向に変位し、左車輪24および右車輪26が転舵される。出力部54と第1タイロッド12およびリレーロッド14を直接連結したことで、入力軸32の回転を車幅方向の変位に変換することができる。以上のようにステアリング装置10が動作する。
【0028】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0029】
実施形態では遊星歯車機構36のリングギア42をモータ46により回転させることで伝達比可変装置30として機能させたが、別の組み合わせであってもよい。たとえば、遊星歯車機構36の代わりに、サイクロイド減速機のケースの外周とウォームギアとを噛合させ、ウォームギアを回転させるモータの駆動によりサイクロイド減速機のケースを回転させる制御をしてもよい。これにより、サイクロイド減速機を伝達比可変装置として機能させることができる。さらに、遊星歯車機構36およびサイクロイド減速機以外にも、揺動型歯車装置やボール減速機にモータをとりつけることで、伝達比可変装置として機能させることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 ステアリング装置、 12 第1タイロッド、 14 リレーロッド、 16 アイドラアーム、 18 第2タイロッド、 20 第1ナックルアーム、 22 第2ナックルアーム、 24 左車輪、 26 右車輪、 30 伝達比可変装置、 32 入力軸、 34 キャリア、 36 遊星歯車機構、 38 サンギア、 40a 第1遊星ギア、 40b 第2遊星ギア、 40c 第3遊星ギア、 42 リングギア、 44 ウォームギア、 46 モータ、 48 ハウジング、 50 第1回転軸、 52 第2回転軸、 54 出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵力が入力される入力軸と、
前記入力軸に連結される遊星歯車機構を有し、前記入力軸の入力量に対する出力量の入出力比を変化させる伝達比可変装置と、
前記遊星歯車機構に接続され、前記出力量に応じて回転する出力部と、
一端が前記出力部に連結し、他端が車輪に連結して前記出力部の回転に応じて車幅方向に移動するロッドと、を備えることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記伝達比可変装置は、モータをさらに有し、
前記遊星歯車機構は、
前記入力軸に連結されるサンギアと、
前記出力部に連結されるキャリアと、
前記モータの駆動に応じて回転可能なリングギアと、を有することを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記キャリアの外周から径方向外向きに突出するように設けられることを特徴とする請求項2に記載のステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−95366(P2013−95366A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242253(P2011−242253)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】