説明

ステント装置送達システムおよびその作製方法

ステント装置(4)と、ステント装置を覆う外側シース(2)とを備えるステント装置送達システム(1)を開示する。外側シースは、ステント装置を展開するようにステント装置に対して軸線方向で後退可能である。ステント装置送達システムを製造する方法も開示する。ステント装置送達システムは、ステントを展開することによって生じる力に対してシースを補強する積層構造を使用する。引っ張り要素が、積層構造の一部を形成してもよく、非一様半径方向形状を有するように形成されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント装置と、ステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムに関する。外側シースは、ステント装置を展開するために、ステント装置に対して軸線方向で後退させることができる。本発明はまた、ステント装置送達システムを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステント装置送達システムは当該技術において知られている。かかるシステムの目的は、病変した血管内腔にステント装置を送達することである。ステント装置は、病変した血管内腔の圧潰に対抗する支持構造を提供する。
【0003】
本発明に関連する、少なくとも2つのタイプのステント装置送達システムが存在する。
第1のタイプは、ステント装置を展開するためのロール式(rolling)の外側シースを提供する。かかる「ロール式」外側シースシステムは、例えば、米国特許第6,544,278号に開示されている。外側シースは、内層、外層、および内層と外層を接続する折畳み部分を画定するため、それ自体の上に折り返される管状スリーブから作られる。ステント装置の送達形態では、内層および外層はステント装置を覆っている。外層は、近位方向で内層に対して軸線方向に移動可能であり、それによって、折畳み部分がステント装置の遠位端から近位端へと折り返されながら軸線方向で移動することで、外側シースをステント装置から後退させる。ステント装置は、外側シースによって拘束されなくなると、病変した血管内腔を支持する作動形態へと半径方向に拡張することができる。
【0004】
第2のタイプの従来技術の送達システムは、外側シースをステント装置から後退させる際に、ステント装置の上を折り返されるのではなく滑動する外側シースを提供する。かかる送達システムは、例えば、WO2006/133959号に開示されている。この「プルバック式(pullback)」外側シースシステムでは、外側シースをステント装置から軸線方向で引きずるため、外側シースの近位端が引っ張られる。
【0005】
展開力(deployment force)の点から、ロール式外側シース送達システムは、状況によってはプルバック式外側シース送達システムに比べて有利である。プルバック式外側シース送達システムでは、外側シースをステント装置に対して移動させるために、ステント装置の外表面と外側シースの内表面との間の摩擦を克服しなければならない。ステント装置が長くなるほど、より大きな摩擦を克服しなければならない。このことにより、強度の問題のため、外側シースに使用することができる材料に対する特定の制約が生じる。ロールバック式外側シース送達システムは、巻き戻し中、折返し部分が内層のより近位側の部分に対して全体的に滑動しなければならない場合ほどは、高い摩擦力という点による制約は受けないが、展開力が依然として問題となり得る。しかし、二層のロールバック構造は、単層のプルバック構造に比べてステントの断面プロファイルが増加する可能性があるという不利な点がある。ロール式外側シース送達システムをプルバックシステムに匹敵するプロファイルにできるようにするために、外側シースは、同等のプルバック式外側シース送達システムよりも薄い、したがってより脆弱な材料で作られる。しかし、巻き戻し中の摩擦が使用材料の強度を上回る場合、ロール式外側シースステント送達システムの信頼性が損なわれることがある。
【0006】
プルバック式外側シースステント装置送達システムおよびロール式外側シースステント装置送達システムの両方において、引っ張り力を加えて外側シースをステント装置から後退させる引っ張り部材が使用される。引っ張り部材は、ハンドル部分から、外側シースに取り付けられたステント装置のすぐ近位側の位置まで延在してもよい。引っ張り部材を外側シースに取り付ける1つのやり方は、上記で参照したWO2006/133959号に開示されている。この文献では、外側および内側バンドが配置され、それらの間で外側シースが圧縮される。引っ張りワイヤまたは引っ張り部材は、内側バンドにろう付けされ、ステント装置送達システムのハンドル部分まで手前側にずっと通っている。外側シースを後退させることによってステント装置を上手く展開するためには、引っ張り部材と外側シースとの間の強力で信頼性の高い接続が不可欠である。やはり低プロファイル形態を保ったまま、引っ張り部材を外側シースに強力に取り付ける代替のやり方を提供することが望ましい。
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、外側シースを後退させることによってステント装置を展開するという点で信頼性が高く、ステント装置を病変した血管内腔部位に送達しやすいように低プロファイルである、ステント装置送達システムを提供することである。また、本発明の1つの目的は、かかるステント装置送達システムを作製する方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的、および本発明の特徴の利点は、本発明の以下の説明から当業者には明白になるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、本発明は、ステント装置と、ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムを提供する。外側シースは、ステント装置の展開形態へとステント装置を半径方向に拡張できるようにするために、ステント装置に対して後退可能である。外側シースは、互いに積層された、ポリマー材料の第1の層(またはプラスチック層)とポリマー材料の補強層(または補強プラスチック層)とを備える。好ましい一実施形態では、第1の層および補強層は、第1の層と補強層との間の半径方向の接着剤層によって互いに接着される。
【0010】
本発明の第1の態様により、外側シースをプラスチック層で作ることができ、それによって、一部の従来技術の外側シースに比べて外側シースを比較的薄くすることができる。外側シースに適したプラスチック材料は、多くのポリマーと同様に、引っ張り要素からの張力を受けて全体的に狭窄可能であり、それによって外側シースの直径が縮小する。この直径の縮小は、システムの内側構成要素に対する半径方向の圧縮を増加させることがあり、その結果、展開力が増加する。これは、シースに対する最大許容閾値を超えた場合、展開の失敗を生じさせる可能性がある。本発明の第1の態様の補強プラスチック層が第1のプラスチック層を強化する一方で、一般的に接着剤は固化または硬化すると実質的に延性でなくなるため、好ましくは接着剤層が存在することにより、第1のプラスチック層および補強プラスチック層の狭窄を強力に抑制することが見出されている。この層の組み合わせは、驚くことに、展開力を過度に増加させることなく展開の信頼性が高い、薄い外側シースを提供することが見出されている。
【0011】
好ましくは、第1の層、補強層、および存在する場合は、好ましい接着剤層はステント装置を覆い、したがってそれに沿って延在する。ステント装置の領域における外側シースの狭窄は、特に、外側シースをステント装置から上手く後退させるための障壁となるであろう。
【0012】
別の好ましい実施形態では、外側シースは、ステント装置を覆う遠位部分と、ステント装置の近位側の移行部分とを備え、移行部分は近位方向で先細状になっている。好ましくは、移行部分の近位側にある外側シースの一部分は、外側シースの第1の層と、補強層と、好ましくは接着剤層とを含む。好ましくは、先細状部分は、第1の層と、好ましい接着剤層と、補強層とを含む。実際上、外側シースは、引っ張られてステント装置から後退しているとき、移行部分および移行部分に近接した部分において、特に応力を受けることが見出されている。したがって、補強層および好ましい接着剤層をこれらの場所の少なくとも1つに設けることは、失敗を回避するためには特に有利である。
【0013】
ステント装置送達システムは、好ましくは、外側シースをステント装置から後退させるために引っ張られる、外側シースに取り付けられた引っ張り部材をさらに備える。好ましくは、引っ張り部材は埋め込まれ、第1の層と補強層との間に挟み込まれる。好ましくは、引っ張り部材は接着剤層に埋め込まれる。引っ張り部材を接着剤層に埋め込むことによって、局部強度を提供しながら力を均一に伝達することが可能になる。引っ張り部材の外側シースに対するこのような形の取付けは、外側シースをステント装置から後退させるのに十分に強力であり、低プロファイル形態を可能にし、簡単に製造できる。
【0014】
好ましい一実施形態では、好ましい接着剤層、引っ張り部材、第1の層、および補強層は、少なくとも約1インチ(3cm)、少なくとも約2インチ(5cm)、または少なくとも約3インチ(8cm)の距離だけ軸線方向に等しく延在(coextend)する。本発明の第1の態様のこの特徴により、外側シースに対する引っ張り部材の強力な取付けが確保される。
【0015】
上述した外側シースの第1の強化層、および上述した外側シースに対する引っ張り部材の取付けは、プルバック式ステント装置送達システムおよびロール式膜ステント装置(membrane stent device)送達システムの両方に適用可能である。前者のシステムでは、第1の層はステント装置および好ましい接着剤層と滑り接触し、補強層はステント装置を覆う。引っ張り部材を引っ張ることで、第1の層、好ましい接着剤層、および補強層は、単一の層状構造として連動してステント装置に対して軸線方向で移動する。第1の層および補強層は互いに一体的に形成される。すなわち、第1の層および第2の層は、それ自体の上に折り返されている同じ管材料から形成される。好ましくは、引っ張り部材はステント装置を覆い、ステント装置の遠位端まで延在する。これは、外側シースの良好な引き戻しを確保するのに有効な解決策を提供することが見出されている。後者の送達システムでは、外側シースは、内層、外層、および内層と外層を接続する折畳み部分を備え、外層が内層に対して軸線方向で移動することで、折畳み部分がステント装置に対して軸線方向で移動するので、外側シースを後退させるために折畳み部分をステント装置の近位側に移動させることができる。外層は、第1の層、好ましい接着剤層、および補強層を含む。ロール式システムでは、外層が狭窄し、それと同時に半径方向の摩擦力が増加することにより、後退中に外側シースが貼り付く可能性がある。したがって、外側層を、第1の層、補強層、および好ましい接着剤層とともに形成することで展開の信頼性が提供される。好ましくは、引っ張り部材は、ロール式ステント装置送達システムにおいて上述した外側シースの近位部分(移行部分の近位側部分)で外側シースに取り付けられる。
【0016】
第1の層および補強層は、好ましくは冷延伸(cold-drawn)プラスチック層である。かかる層は、薄く、強力で、ステント装置送達システムの製造中の操作が容易である。好ましくは、プラスチックはポリエチレンテレフタレート(PET)である。これは、本発明の第1の態様の外側シースに特に有用な材料である。ステントを適所に置いた状態で製造中にシースを冷延伸することにより、低減されたプロファイルを維持することができる。しかし、プロファイルが低減されたことにより、かかる構成は上述の狭窄効果に特に影響を受けやすい。
【0017】
好ましくは、引っ張り部材は引っ張りワイヤである。好ましくは、引っ張りワイヤは、それが第1の層と補強層との間に埋め込まれる少なくとも一部分に沿って扁平にされる。これにより、低プロファイル形態と、層と相互作用するための表面積の増加と、外側シースに対する強力な取付けとがすべて確保される。
【0018】
引っ張り部材をステント装置送達システムの外側シースに取り付ける上述のやり方は、従来技術に対して独立して適用可能な修正でもある。したがって、本発明の第2の態様では、ステント装置と、ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムが提供される。外側シースは、ステント装置を展開形態へと半径方向に拡張できるようにするために、ステント装置に対して後退可能である。外側シースは、互いに積層された第1の層および第2の層を含み、それらは好ましくは、第1および第2の層の間の半径方向の接着剤層によって互いに接着される。引っ張り部材の一部分は、その部分を外側シースの内層と外層との間に半径方向で位置付けることによって、外側シースに取り付けられる。好ましくは、引っ張り部材のその部分は、接着剤層に埋め込まれ、接着剤層によって接着される。引っ張り部材を外側シースにこのように取り付けることにより、送達システムのプロファイルが必然的に増加する方策を回避しながら、十分に強力な取付け力が可能になる。
【0019】
好ましい一実施形態では、引っ張り部材は、少なくとも約1インチ(3cm)、少なくとも約2インチ(5cm)、または少なくとも約3インチ(8cm)の軸線方向距離だけ、外側シースの第1の層と第2の層との間に半径方向で位置付けられ、好ましくは接着剤層に埋め込まれる。長い取付け距離により、外側シースに対する引っ張り部材の強力な接続が確保される。
【0020】
好ましくは、引っ張り部材は引っ張りワイヤである。引っ張りワイヤは、好ましくは、内層と外層との間に埋め込まれる遠位端部分において扁平にされる。この方策により、低プロファイル形態を維持しながら取付け面積が増加する。
【0021】
好ましくは、第1および第2の層は、冷延伸プラスチックで、好ましくは冷延伸PETなどの冷延伸ポリエステル材料で作られる。
本発明の好ましい一実施形態は、第1の態様と第2の態様とを組み合わせたものである。したがって、好ましくは、本発明の第2の態様の第1の層は本発明の第1の態様の第1の層であり、本発明の第2の態様の第2の層は本発明の第1の態様の補強層である。
【0022】
本発明の第3の態様では、ステント装置と、ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムが提供される。外側シースは、ステント装置を展開形態へと半径方向で拡張できるようにするために、ステント装置の遠位端からステント装置の近位端まで後退可能である。内側カテーテルは、ステント装置の管腔内で延在し、ステント装置がその上に位置するステントベッド(stent bed)を提供する。ステントベッドは、内向きに先細状になったプロファイルを画定して、ステント装置の遠位部分からステント装置の近位部分まで半径を狭めている。
【0023】
ステントベッドの先細状のプロファイルは、ステント装置の近位部分が遠位部分に比べて半径方向で狭まる、ステント装置の先細状のプロファイルをもたらすと考えられる。狭窄は、一般的に、後退中の長い間隔のときに生じる。シースが後退されるにつれて、ステントの近位部分が遠位部分よりもさらに圧縮されるのを可能にすることにより、外側シースの移動している遠位側縁部は、半径方向で狭まっているステントベッドを徐々に通りすぎる。したがって、このことは、展開力を低減させるとともに、ステント装置の展開の失敗を抑制することが見出されている。
【0024】
好ましい一実施形態では、ステントベッドは、0.0003〜0.005、好ましくは0.0005〜0.002、および好ましくは0.0006〜0.0009の勾配(ステントベッドの外径の変化を、外径の変化が生じる軸線方向長さで割ったもの)で先細状になっている。勾配を計算する1つの方法は、ステント装置の遠位部分に来るステンドベッドの最大外径を決定し、ステント装置の近位部分に来るステントベッドの最小外径を決定するというものである。次に、勾配を決定するため、最大外径から最小外径への線形的変化を仮定することができる。いくつかの実施形態では、先細状のプロファイルは線形的であるが、以下のように、外径の変化が段階的に生じる他の実施形態が想到される。1つの実現例は、ステント装置の長さに沿って程度を変動させることによって、外径の変化を伴う可能性がある。勾配は、本質的に、ステント装置の遠位部分から近位部分までの長さ全体にわたるステントベッドの平均勾配である。
【0025】
一実施形態では、ステントベッドはステント装置に対して軸線方向で連続している。したがって、ステントベッドは、ステント装置の遠位部分から近位部分まで連続した先細状のプロファイルを形成する。別の実施形態では、ステントベッドは、軸線方向で分離したバンド部材など、複数の軸線方向で分離した部分によって形成される。軸線方向で分離したバンド部材を使用する場合、バンドは、近位方向で徐々に低減する外径を有し、それは好ましくは、1つのバンドから近位方向で隣接したバンドへの段階的な低減を伴い、各バンドは一定の外径を有する。あるいは、バンド自体が近位方向で内向きに先細状になった外径を有することができる。連続層の実施形態および分離したバンド部材の実施形態の両方において、ステントベッドは、段階的な形で先細状になってもよく、2、3、4、5、6、およびそれ以上の段階があってもよい。したがって、2、3、4、5、6、またはそれ以上のバンド部材があってもよい。
【0026】
ステント装置に先細状のプロファイルをもたらすのと同様に、ステントベッドはまた、ステント装置を内側カテーテルに対して軸線方向で保持するための保持機能を有すると考えられる。ステントベッドは好ましくは圧縮可能な材料で作られ、ステント装置がステントベッドに押し込まれてステントベッドを変形させる。外側シースは、このようにしてステント装置をステントベッドに部分的に埋め込まれた状態で維持する。この部分的な埋め込みにより、内側カテーテルに対するステント装置の望ましくない軸線方向の移動に抵抗する形状適合性(form fit)がもたらされる。さらに、ステントベッドは好ましくは粘着性材料で作られ、それによって、内側カテーテルに対するステント装置への半径方向ならびに軸線方向の保持力がもたらされる。ステント装置の拡張中、ステント装置はステントベッドの粘着性材料から剥がれる。粘着性材料および圧縮性材料の両方をステントベッドに使用することで、形状適合性と高強度の軸線方向の係止との組み合わせがもたらされて、ステント装置が軸線方向でしっかりと位置付けられ、そのことが、標的の病変した血管内腔部位における適正な位置的展開の助けとなる。ステントベッドに適した材料は、ゴム、シリコーン接着剤、またはポリエーテルブロックアミド(PEBAX)である。別の例の適切な材料は、Dymaxという商品名で販売されている接着剤である。材料は、噴霧されるか、または他のなんらかの方法でコーティングされてもよい。
【0027】
ステントベッドは、好ましくは内側カテーテル上に層として形成される。
好ましくは、ステント装置送達システムは、端部方向の張力を掛けて外側シースを後退させるための引っ張り部材を備える。外側シースは、好ましくは、ステント装置を覆う遠位部分と、外側シースが引っ張り部材に取り付けられる近位部分と、遠位部分および近位部分を接続する移行部分とを備え、移行部分は、遠位部分から近位部分まで内向きに先細状になっている。したがって、外側シースは、ステント装置を覆う遠位部分における外側シースの外径に比べて、半径方向内側の位置で引っ張り部材に取り付けられる。かかる引っ張り形態では、引っ張り力が半径方向内側の場所から外側シースに付与される。ステントベッドの先細状のプロファイルは、かかる形態において、展開力を低減するとともに展開の信頼性を向上するのに特に有用である。
【0028】
先細状のプロファイルは、ロール式ステント装置送達システムに適用したときに特に有用である。したがって、好ましい一実施形態では、外側シースは、ステント装置の外表面に接触する内層と、外層と、内層と外層を接続する折畳み部分とを備える。内層に対する外層の近位方向の移動により、折畳み部分がステント装置に対して近位側へと軸線方向で移動し、したがって外側シースの後退が可能になる。ステントベッドの先細状のプロファイルは、まだステント装置上にある内層の近位部分と、ステント装置の近位側へと滑動した外層との間での滑動をより一層容易にして、ロール式メカニズムが貼り付く傾向を緩和することができる。ステント装置の外表面上の起伏は、恐らくは外側シースの狭窄と組み合わせて、これまではロール式メカニズムの貼付きを引き起こしていて、それによって展開力が増加し、展開の失敗を引き起こす可能性があったと考えられる。先細状のプロファイルによって提供されるギャップの増加によって、かかる障害が緩和または回避されるものと思われる。
【0029】
先細状のプロファイルは、プルバック式ステント装置送達システムにも適用可能であり、かかるシステムでは、後退中に引っ張り部材が端部方向の張力を受けると、外側シースは遠位端から近位端までステント装置の上を滑動する。一実施形態では、外側シースは、第1の層と第2の層または補強層とを備え、それらは、好ましくは第1および第2の層の間の半径方向の接着剤層によって互いに積層されるので、第1の層、好ましい接着剤層、および第2の層は、ステント装置に対して連動して軸線方向で移動して外側シースを後退させる。内層および外層が、有利には薄くすることができる、狭窄可能なプラスチック材料で作られている場合であっても、先細状のプロファイルにより、ステント装置の近位端に向けて外側シースがわずかに狭窄することが可能になって、後退中の外側シースの貼付きが起こらなくなる。
【0030】
好ましくは、外側シースは、ステントベッドの先細状のプロファイルに追随する先細状のプロファイルを有して形成される。ここで、先細形状に「追随する」とは、同じ方向で先細状になることを意味する。好ましくは、外側シースもステントベッドと同じ勾配で先細状になる。これを達成するやり方については後述する。このようにして外側シースを先細状にすることで、ステントの展開力を低減し、ステント展開の信頼性を向上させるという利点が強化される。同様に、ステント装置は、好ましくは、先細状のステントベッドに対する圧縮によって、かつ外側シースの先細状のプロファイルによって、ステントベッドの先細状のプロファイルを当然共有するものと考えられる。外側シースは、ステントを囲む領域において先細状のプロファイルを有して形成されてもよく、または、外側シースの先細形状は、実質的にステント装置を囲む領域を超えて延在してもよい。
【0031】
一実施形態では、外側シースは、上述のロール式システムにおける外側シースの内層および外層、または上述のプルバック式システムにおける第1の層および第2の層を画定するように、好ましくはプラスチックである材料のスリーブをそれ自体の上に折り返すことによって形成される。第1および第2の層の間に接着剤を適用することができ、または第1および第2の層を互いに積層して上述のプルバック式ステント装置送達システムを形成することができ、または内層および外層が互いに対して移動できるようにして、上述のロール式ステント装置送達システムを提供することができる。好ましくは、材料のスリーブは、内層または第1の層を形成することになるスリーブの部分と、外層または第2の層を形成することになるスリーブの部分とを含む、外側シースの先細状のプロファイルの形に形成される。これにより、ステント装置の遠位部分から近位部分まで内向きに先細状になった内層または第1の層と、ステント装置の遠位部分から近位部分まで外向きに先細状になった外層または第2の層とを有する外側シースが提供され、それによってこれらの層間の潜在的なギャップがさらに増加して、外側シースの後退中の貼付きが回避される。外側シースは、好ましくは冷延伸プラスチック材料で作られる。冷延伸プラスチック材料は、後述するように、先細状のマンドレルの上に冷延伸することによって先細状のプロファイルの形に形成される。
【0032】
本発明の第1、第2、および第3の態様の特徴は組み合わせることができる。したがって、本発明の第1〜第3の態様のいずれか1つに関して記載したステント装置送達システムの特徴は、本発明の他の態様のいずれか1つのステント装置送達システムと組み合わされてもよい。
【0033】
本発明の第4の態様では、ステント装置送達システムを作製する方法が提供される。方法は、ステント装置をプラスチック材料のスリーブに装填するステップを含む。方法は、内側カテーテルをステント装置の管腔内に位置付けるステップを含む。内側カテーテルは、ステント装置がその上に位置するステントベッドを提供する。ステントベッドは先細状のプロファイルを有する。方法はさらに、スリーブの、かつしたがってステント装置の直径を縮小して、ステント装置およびステントベッドを係合し、ステント装置をプロファイルが低減された送達形態にするために、ステント装置がスリーブ内に装填されていてステントベッド上に位置する状態で、スリーブを冷延伸するステップを含む。スリーブは、ステント装置を半径方向で拡張させて展開形態にできるように、ステント装置に対して後退可能なステント装置送達システムの外側シースを提供する。
【0034】
上述の方法による外側シースの冷延伸により、ステント装置がステントベッド上に置かれ、そのことによってステント装置に対してステントベッドの先細状のプロファイルがもたらされると考えられる。さらに、外側シースはこの先細状のプロファイルを共有するように冷延伸される。この先細状のプロファイルの利点は上述してある。ステントを冷延伸することで、また、ステント圧縮の強化とシースの半径方向厚さの低減との組み合わせにより、送達システム全体のプロファイルを有利に低減することができる。
【0035】
第1の層と、第2の層、つまり外層と、第1の層および第2の層を接続する遠位側折畳み部分とを備えた外側シースを提供するために、プラスチック材料のスリーブはそれ自体の上に折り返されてもよい。第1の層および第2の層は、プルバック式ステント装置送達システムを提供する際、好ましくは接着剤層によって互いに積層されてもよい。あるいは、ロール式ステント装置送達システムを提供するために、内層および外層が互いに対して移動可能なままにされて、折畳み部分(ロール縁部(rolling edge))をステント装置に対して移動させることによって外側シースが後退でき、ステントを半径方向で拡張できるように、第1の層、つまり内層と、第2の層、つまり外層とを互いに対して移動させることができてもよい。
【0036】
ステントベッドの先細状のプロファイルは、ステント装置の遠位部分からステント装置の近位部分まで内向きに先細状になっている。遠位および近位という用語は、この場合、遠位側の折畳み部分に関して理解されるべきである。
【0037】
好ましい一実施形態では、ステント装置の遠位端においてプラスチック材料のスリーブ内にマンドレルが位置付けられる。マンドレルは、ステントベッドの先細状のプロファイルに続く先細状のプロファイルを有する。プラスチック材料のスリーブはマンドレル上に冷延伸され、それにより、ステント装置を覆う冷延伸部分と、マンドレルを覆う冷延伸延長部分とが提供される。延長部分はステント装置部分の上に折り返されて、外側シースの第1の層、つまり内層と、外側シースの第2の層、つまり外層とが提供される。折り返されると、第2の層は、第1の層と第2の層との間のギャップを増加させる逆向きの先細状のプロファイルを画定し、それにより、外側シースをステント装置から後退させる間に外側シースが貼り付く可能性が低減される。
【0038】
方法はさらに、本発明の上述の第1、第2、および第3の態様によるステント装置送達システムの特徴を提供するとともに、本発明の後述するさらなる態様の特徴を提供するものと定義することができる。
【0039】
本発明の第5の態様では、ステント装置と、ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムが提供される。外側シースは、ステント装置を半径方向で拡張させて展開形態にできるように後退可能である。ステント装置送達システムは、外側シースを近位側に引っ張って後退させる引っ張り部材を備える。引っ張り部材の遠位部分を外側シースと相対的に耐熱収縮性(heat shrink resistant)の支持部材との間に半径方向で捕捉するために、外側シースの一部分は、耐熱収縮性支持部材上に半径方向で熱収縮される。
【0040】
本発明のこの態様は、熱収縮材料を利用することによって外側シースに対する引っ張り部材の強力な接続を提供し、それにより、熱収縮後、熱収縮材料と支持部材との間で引っ張り部材に圧縮力が提供される。さらに、本発明のこの態様の特徴がなければ、引っ張り部材に接続する外側シースの部分は失敗に陥りやすい可能性がある。本発明のこの態様では、この部分は熱収縮によって強化されて、熱収縮性シースの材料特性が向上する。支持部材は耐熱収縮性であり、すなわち、熱収縮されている外側シースの部分に比べて、関連する熱収縮温度においてその特性がほぼ変化しない。使用の際、引っ張り部材は近位方向の引っ張り力を受け、それによって引っ張り部材、外側シース、および支持部材がステント装置に対して近位側に移動して、外側シースが後退する。
【0041】
好ましくは、引っ張り部材の捕捉部分は、少なくとも約1インチ(3cm)、少なくとも約2インチ(5cm)、または少なくとも約3インチ(8cm)の軸線方向距離を延在する。好ましくは、引っ張り部材の捕捉部分は半径方向に対して扁平なプロファイルを画定する。これらの特徴は両方とも、引っ張り部材と外側シースとの間の強力な取付けを提供するのに寄与する。
【0042】
外側シースの部分は、ステント装置に近接した外側シースの軸線方向部分において、耐熱収縮性支持部材上に熱収縮される。外側シースを熱収縮するのに必要な熱などにステント装置を晒すことは、特に、ステントがニチノールなどの形状記憶合金から製造されている場合には回避すべきである。同様に、ステント装置を封入するのに使用されることがあるような冷延伸ポリマーを熱に晒すと、冷延伸プロセスによって達成される有益な物理的性質が熱によって打ち消される傾向がある。引っ張り部材の熱収縮による取付けをステント装置の近位側に位置付けることによって、ステント装置の近位側であるステント装置送達システムのいわゆる「高温側(hot side)」と、残りの遠位部分から成るステント装置送達システムのいわゆる「低温側(cold side)」とを区別することができる。
【0043】
外側シースの熱収縮部分は、熱収縮部分を、ステント装置を覆う外側シースの遠位部分に接続する移行部分を提供する。移行部分は、遠位部分から熱収縮部分まで内向きに先細状になっている。したがって、引っ張り部材が外側シースに取り付けられた、低プロファイルの熱収縮部分が提供され、それによって、ステント装置送達システムのハンドル、制御部分、またはアクセス部分まで手前側に延在する十分に低いプロファイルの送達シャフトを中に受け入れることが可能になる。移行区画、およびその近位側の低プロファイル部分は、従来技術の設計では、外側シースの比較的低強度の範囲となっており、そのために展開の失敗に結び付いていた。本発明は、そのような起こり得る失敗を抑制するために、この範囲に熱収縮性材料を提供する。
【0044】
好ましい一実施形態では、本発明の第5の態様は本発明の第1の態様と組み合わされて、比較的製造が簡単な形で外側シースに強力に取り付けられた引っ張り部材が得られ、低プロファイルのステント装置送達システムが形成される。より具体的には、外側シースは、好ましくは接着剤層によって互いに積層された、第1の層および補強層を備える。引っ張り部材の捕捉部分は、第1の層と補強層との間に半径方向で位置付けられ、好ましくは接着剤層に埋め込まれ、接着剤層によって保定される。第1の層および補強層は、引っ張り部材をそれら2つの層の外側と支持部材との間に半径方向で捕捉するために、耐熱収縮性支持部材上に熱収縮される。熱収縮した第1の層および補強層によって接着剤層および引っ張り部材を圧縮することにより、有利に低減されたプロファイルを得ることができ、任意の接着剤層の厚さを低減することによって、それら要素の間の結合強度が向上する。
【0045】
本発明の第5の態様をロール式ステント装置送達システムに適用することができる。外側シースは、内層と、外層と、内層および外層を接続する折畳み部分とを備える。折畳み部分は、内層を外層に対して移動させることによって、ステント装置に対して軸線方向で移動可能であり、それによって外側シースをステント装置から後退させることができる。引っ張り部材を捕捉するために、外層は耐熱収縮性支持部材上に熱収縮される。好ましくは、外層は、好ましくは接着剤層によって互いに積層された、上述の第1の層および補強層を含む。第1の層および補強層は、引っ張り部材を捕捉するために、耐熱収縮性支持チューブ上に熱収縮される。上述したように、外側シースの熱収縮部分および引っ張り部材の捕捉部分はステント装置の近位側に位置付けられる。
【0046】
好ましくは、引っ張り部材は引っ張りワイヤであり、さらに好ましくは捕捉部分において扁平にされる。
ロール式ステント装置送達システムでは、内層は、ステント装置の近位側の位置で内側カテーテルに対して固定される。外層は、使用の際、内層に対して近位側に移動され、それによって、外側シースの後退中に折畳み部分が内層の固定された近位端に徐々に近付く。好ましい一実施形態では、内層の近位端は内側カテーテル上に半径方向で熱収縮されてそこに固定される。これは、材料を熱収縮することができる、「低温側」とは異なるステント装置送達システムの「高温側」を定義する上述の概念を利用している。熱収縮は、引っ張り部材を外側シースに、かつ内層の近位端を内側カテーテルに固定する、製造の点で便利な方法を提供する。
【0047】
好ましくは、内側カテーテルに対して固定された外側シースの内層の近位端は、外側シースの後退中に、ロール縁部を画定する折畳み部分に引っ張り力が掛かり、さらに近位側へと引っ張られると、その引っ張り力を受けて剥がれる。接着ではなく半径方向の圧縮によって内層を内側カテーテルに固定する、内側カテーテルに対する内層の熱収縮による取付けは、外側シースの後退中には内層が内側カテーテルから離れることができるように十分に低いが、それ以外の使用の際には内側カテーテルに対して固定された状態を保つのには十分に強力な、適切な剥離力を提供することができる。
【0048】
ステント装置は、内側カテーテルによって提供される保持メカニズムによって、内側カテーテルに対して固定されたままである。好ましくは、保持メカニズムは、少なくとも部分的には、上述の本発明の第3の態様によるステントベッドである。
【0049】
耐熱性支持部材に適した材料はポリイミドである。外側シースに適した熱収縮性材料はポリエチレンテレフタレート(PET)である。
本発明の第5の態様の概説した特徴は、以下に詳細に記載する本発明の第1、第2、および第3の実施形態において述べる特徴の対応する組み合わせにしたがって、本発明の第1〜第4の態様の特徴のうち任意の1つまたは複数と組み合わせることができる。
【0050】
本発明の第6の態様では、ステント装置送達システムを作製する方法が提供される。方法は、ステント装置と、ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを提供するステップを含み、ステント装置を展開形態へと半径方向で拡張できるように、外側シースは後退可能である。方法はさらに、近位方向の引っ張り力を受けて外側シースの後退をもたらすために外側シースに取り付けられる引っ張り部材を提供するステップを含む。方法はさらにまた、ステント装置の軸線方向近位側の位置において、相対的に耐熱収縮性の支持チューブを外側シース内で位置付けるステップを含む。方法はさらにまた、外側シースと支持チューブとの間に半径方向で引っ張り部材を捕捉するために、外側シースの一部分を支持チューブ上に半径方向で熱収縮するステップを含む。
【0051】
好ましい一実施形態では、方法はさらに、第1の層および補強層を含めて外側シースを形成するステップを含む。方法は、第1の層と補強層との間に半径方向で引っ張り部材を保定するために、補強層を第1の層に積層するステップを含む。好ましくは、第1の層は補強層に接着され、引っ張り部材は、第1の層および補強層を互いに接着する接着剤層に埋め込まれる。第1の層および補強層は、外側シース層と支持チューブとの間に半径方向で引っ張り部材を捕捉するために、上述したように支持チューブ上に熱収縮される。
【0052】
好ましくは、方法はさらに、ステント装置を、外側シースを形成する材料のスリーブに装填するステップを含む。プラスチック材料のスリーブは冷延伸されて、スリーブの直径を縮小するとともに、ステント装置の直径を縮小して、ステント装置を半径方向にコンパクトな送達形態にする。したがって、半径方向にコンパクトな送達形態のステント装置を外側シースが覆っている、ステント装置が提供される。ステント装置が半径方向に拡張された展開形態へと拡張できるように、外側シースは後退可能である。好ましい一実施形態では、プラスチック材料のスリーブは、ステント装置の遠位端に位置付けられたマンドレルに対して端部方向の張力を適用することによって冷延伸されて、ステント装置を覆う冷延伸されたスリーブの第1の部分と、マンドレルを覆う冷延伸されたスリーブの延長部分とが提供される。外側シースが、第1の部分を備える内層と、延長部分によって形成される外層と、内層および外層を接続する折畳み部分とを備えるように、延長部分はそれ自体の上に折り返されてステント装置を覆い、それによってロール式ステント装置送達システムが提供される。
【0053】
プラスチック材料のスリーブの近位端は、ステント装置の軸線方向近位側の位置で、すなわち折畳み部分が位置することになるステント装置の遠位端とは反対側の位置で、内層を内側カテーテルに熱収縮することによって内側カテーテルに固定される。
【0054】
材料のスリーブをそれ自体の上に折り畳んで上述のような内層および外層を形成した後、プラスチック材料のさらなるスリーブである補強層が、外側シースの仮の外層の上に同軸で置かれ、それに積層され、好ましくは接着されて、好ましくは間に半径方向で位置付けられた接着剤層によって互いに積層された第1の層および補強層を有する外層が形成される。第1の層を備える外層、好ましい接着剤層、および補強層は、第1の層と補強層との間に引っ張り部材が埋め込まれた、好ましくは接着剤層に埋め込まれたステント装置の軸線方向近位側の位置で、支持チューブ上に熱収縮され、それによって、上述したように引っ張り部材が外側シースと支持チューブとの間に半径方向で捕捉される。
【0055】
ステントベッドおよび任意にマンドレルは先細状のプロファイルを有してもよく、ステント装置送達システムは、本発明の第4の態様について上述した説明にしたがって作製されてもよい。さらに、方法は、本発明の第1、第2、第3、および第5の態様のいずれか1つ、またはそれらの組み合わせのシステムの特徴を生み出すように構成されてもよい。
【0056】
本発明のいずれの態様においても上述していない、一般的に適用可能な特徴がある。
ステント装置送達システムは、好ましくは、その遠位端に先端部を備える。先端部は、狭い通路への挿入を容易にするため、遠位方向で内向きに先細状になっていてもよい。先端部は、好ましくは、折畳み部分を配置するための環状ノッチを備える。
【0057】
好ましくは、外側シースの最外層は親水性である。好ましくは、それは、親水性である補強層の外表面である。この目的は、送達中のステント装置送達システムを通過しやすくして、送達中の通過を容易にするシステムの滑らかな遠位側表面を提供することである。
【0058】
ステント送達システムの外側シースの最外層を提供することは、従来技術に独立して適用可能な修正である。したがって、ステント装置と、半径方向で縮小された送達形態においてステント装置を覆う外側シースとを備える、ステント装置送達システムを有することが開示される。外側シースは、ステント装置を露出させて、ステント装置が展開形態へと半径方向で拡張できるように後退可能である。外側シースの最外面は、ステント装置を覆うその少なくとも遠位側の軸線方向部分に沿って親水性である。
【0059】
好ましくは、ステント装置は自己拡張性のステント装置である。自己拡張性のステント装置は、体温で、送達形態から半径方向で拡張した展開形態へと付勢される。本発明における適用に適した自己拡張性のステント装置は当業者にはよく知られており、ニチノールなどの形状記憶合金から製造されてもよい。
【0060】
自己拡張性のステント装置の場合、半径方向で縮小された送達形態は半径方向で圧縮された送達形態である。外側シースは、ステント装置を拘束して半径方向で圧縮された送達形態にする。外側シースを後退させることで、ステント装置が解放されて、半径方向で拡張された展開形態へと自己拡張する。
【0061】
第1の層および補強層の積層体は最新式の外側シースよりも薄い。第1の層および補強層は両方とも、半径方向で30〜40μmの厚さである。好ましくは、結果として得られる積層体は、厚さ100μm未満、好ましくは70〜90μmである。この低減された厚さにかかわらず、積層体は求められる強度特性を維持する。
【0062】
本発明の前述の態様のいずれかの現在好ましい実施形態では、半径方向において外側シースの第1の層と補強層との間に捕捉された引っ張り部材の部分の少なくともその一部の長さが、非一様半径方向形状を有するように形成される。このような構造では、引っ張り部材が高い引っ張り力を受けたときのずれに対する引っ張り部材の抵抗力が向上する。
【0063】
一実施形態では、非一様半径方向形状は、引っ張り部材の上記の部分の遠位端から延在する。このような構成では、引っ張り部材のずれに対する抵抗力が特に向上する。
好ましい実施形態では、非一様半径方向形状は、引っ張り部材の補足された部分の全長の実質的に2分の1、好ましくは捕捉された部分の実質的に全長に沿って延びる。このような構成は、引っ張り部材のずれに対する抵抗力が特に高い。
【0064】
本発明の現在好ましい実施形態では、非一様半径方向形状は、内部に接着剤が収容されるポケットを画定する。このような構成は、第1の層および補強層のうちの1つまたは複数に引っ張り部材を適切に接着させるのに十分な定められた厚さの接着剤を引っ張り部材と上記の1つまたは複数の層との間に確実に設けることができる。したがって、必要な接着強度を確実に得ることができる。
【0065】
好ましい実施形態では、非一様半径方向形状は実質的に周期的である。このような構成は製造が容易であり、動作が確実である。
現在好ましい一実施形態では、非一様半径方向形状は引っ張り部材の長手方向の起伏によって形成される。これは、引っ張り部材の扁平にされた部分をこのような起伏構成に変形することによって設けることができる。この構成は、製造を容易にし動作を確実にする特定の利点をもたらす。あるいは、引っ張り部材の横方向の起伏によって非一様半径方向形状を形成してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、引っ張り部材は、第1の層と補強層との間で半径方向に圧縮され、実質的に扁平にされた形態になる。このような構成は、縮小プロファイルを示し、接着剤が存在する場合は貼り合わされた層の層同士の間において接着剤が均等に広がるのを可能にし、製造の一貫性を向上させる。このようないくつかの実施形態では、扁平にされた引っ張り部材が弾性圧縮状態に保持される。
【0067】
いくつかの実施形態では、非一様半径方向形状は、好ましくはスティップリング、スコーリング、およびクロスハッチングから選択されるテクスチャ加工された表面を含む。このような構造は、製造が容易であり、引っ張り部材と積層された表面との密着を向上させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、非一様半径方向形状は、外側シースの第1の層および補強層の内面同士を係合させる引っ張り部材保持手段を含む。接着剤が存在しない実施形態でも、このような構成は引っ張り部材のしっかりとした取付けを実現する。
【0069】
現在好ましい実施形態では、非一様半径方向形状は、長手方向において変化する構成部材を含む。しかし、非一様半径方向形状は、長手方向において変化する構成部材に加えてあるいは長手方向において変化する構成部材の代わりに横方向において変化する構成部材を含んでよい。
【0070】
したがって、ステント装置送達システムを製造する方法であって、ステント装置を設けるステップと、ステント装置を半径方向にコンパクトな送達形態に保持し、かつステント装置が半径方向に拡張して展開形態をとるのを可能にするようにステント装置に対して後退可能な外側シースをステント装置に設けるステップと、外側シースに引っ張り部材を設けるステップと、補強層を外側シースに積層して引っ張り部材の一部を半径方向において補強層と外側シースとの間に捕捉するステップとを含み、引っ張り部材が捕捉された長さの少なくとも一部に沿って非一様半径方向形状を有する方法も提供される。任意に、この方法は、引っ張り部材を半径方向に圧縮して扁平にされた形態にするさらなるステップを含む。
【0071】
本発明は、以下の第1、第2、および第3のステント装置送達システムの詳細な説明によってさらに理解されるであろう。詳細な説明は、当業者が指導を行うのにも有用であり得るが、ただし、上述の本発明の様々な態様における様々な特徴の組み合わせ可能性に関する制限を伴わない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ステント装置を覆う外側シースの軸線方向部分がポリマー材料の第1および第2の層の積層体から形成されており、引っ張りワイヤが第1および第2の層の間に半径方向で埋め込まれ、外側シースの遠位端まで延在している、プルバック式ステント装置送達システムを示す図である。
【図2】近位・遠位方向が時計の文字盤を指すものとして見た場合にステント装置送達システムを90°回転させた、図1のステント装置送達システムを示す図であり、引っ張り部材が明白に見えるように、特に断面を示している図である。
【図3】ロール式の外側シースを有するタイプのステント装置送達システムであって、さらに、ポリマー材料の第1の層を外層に積層し、その間に半径方向で引っ張り部材を挟み込むことによって、ステント装置の近位側の位置で引っ張り部材が外側シースの外層に取り付けられた、ステント装置送達システムを示す図である。
【図3A】積層された外側層と第1の層の薄く剥がされた部分を示す、図3の実施形態の変形例を示す図である。
【図3B】図3Aの変形例の拡大部分を示す図である。
【図3C】図3の実施形態の他の変形例を示す図である。
【図4】外層を内層の上で巻き戻すことによって外側シースを後退させたロール式のタイプの別のステント装置送達システムであって、さらに、ステント装置の近位側の位置からステント装置を覆う位置まで軸線方向で延在する補強層が外層に積層され、外層および補強層の積層体においてそれら2つの層の間に半径方向で挟み込むことによって引っ張り部材が外側シースの外層に取り付けられており、ステント装置の近位側に位置付けられた耐熱収縮性支持チューブを含むとともに、熱収縮性支持チューブ上に外層を熱収縮させた、ステント装置送達システムを示す図である。
【図5】時計方向に90°回転させてある図4のステント装置送達システムを示す図であり、特に、引っ張り部材をよりよく示した断面図である。
【図6】半径がより大きい遠位端から半径がより小さい近位端まで連続している先細状のステントベッド(図1〜4のシステムにも示される)の設計を示す図である。
【図7】軸線方向で分離したバンド部材から構成されており、先細状のステントベッドを画定するようにバンド部材の厚さがステントベッドの遠位端から低減されている、先細状のステントベッドの代替の設計を示す図である。
【図8】半径方向において外側シースの第1の層と補強層との間に捕捉された部分に沿って非一様半径方向形状を示し、上記の図の実施形態、特に図4および図5に示されている実施形態と組み合わせて使用することのできる、引っ張り部材の特定の構成であって、図8の実施形態では、引っ張り部材が、その長さに沿って正弦波状構造に変形することによって得られる波状形態を有する構成を示す図である。
【図8A】図8の実施形態の拡大された細部を示す図である。
【図9】図8の特に好ましい変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
第1のステント装置送達システム1が図1および2に示される。ステント装置送達システム1は、内側カテーテル3上に設置されたステントベッド5を有する内側カテーテル3を備える。ステント装置4は、ステント装置4の内表面がステントベッド5の外表面と係合するようにして、ステントベッド5上に圧締めされる。外側シース2は、ステント装置4を拘束して図示される半径方向で縮小された送達形態にするように、ステント装置4の上を延在し、その送達形態では、ステント装置4の内表面はステントベッド5の外表面と係合する。外側シース2は、内側カテーテル3およびステント装置4に対して後退可能であり、したがって、ステント装置4の近位側にある外側シース2の端部、つまり外側シース2の遠位端を後退位置に位置付ける。外側シース2の後退位置は、ステント装置を解放して、図示される送達形態から病変した血管内腔を支持する展開形態へと半径方向で拡張させる。図示されるステント装置は、好ましくは自己拡張性のステント装置であり、外側シース2を後退させると、材料の形状記憶性(material memory)によって展開形態へと移動する。外側シース2を後退させると、ステントベッド5は、ステント装置4を内側カテーテル3に対して軸線方向で静止させるのに役立つ。ステントベッド5は、ステント装置4のほぼ近位端からほぼ遠位端までステント装置4の内表面に沿って軸線方向で分配されて、外側シース2が内側カテーテル3に対するステント装置4の軸線方向の変位を引き起こすのに抵抗する十分な保持力を確保する。ステント装置の近位側の停止具など、ステント装置4を内側カテーテルに対して保持する他の手段が、当該分野において知られており、この目的に適しているであろう。
【0074】
外側シース2は、ポリマー材料から作られて、第1の層、つまり外層10と、補強層9として作用する第2の層、つまり内層9とを備える。接着剤層11は、第1の層10と補強層9との間に半径方向で挟まれる。第1の層10および補強層9は、半径方向で間に挟み込まれた接着剤層11によって互いに積層される。接着剤層11は、外側シース2の周りに円周方向で分配される。積層された第1の層10および補強層9は、ステント装置のほぼ近位端からステント装置のほぼ遠位端まで延在する。実際には、図示されるシステム1では、第1の層10および第2の層9はステント装置4の遠位端を超えて延在する。第1の層10および第2の層9を接続するのは、外側シース2の遠位端にある折畳み部分12である。補強層9の内表面はステント装置4の外表面と接触している。
【0075】
外側シース2を後退させる引っ張り部材7は、引っ張り部材7の遠位端部分において、引っ張り部材7の積層された第1の層10と補強層9との間に半径方向で位置付けられる。第1の層10および補強層9を互いに接着する接着剤層11は、引っ張り部材7の遠位部分に沿って広がり、引っ張り部材7に接触して、外側シース2の第1の層10および補強層9を引っ張り部材7の遠位部分に、かつそれらを互いに接着する。引っ張り部材7は、図示される実施形態では、円筒状である引っ張り部材7の近位部分に比べて、遠位部分に沿って扁平にされているワイヤである。引っ張り部材7の遠位部分は、ステント装置4の近位端から遠位端までステント装置4に沿って、また図示されるシステム1では、外側シース2の遠位端まで延在する。
【0076】
図1および2はまた、内側カテーテル3に取り付けられた先端部材6を示す。先端部材3は、外側シース2の遠位端を受け入れる陥凹部13を有する。先端部材6は軸線方向での中間区画を有し、この中間区画は、外側シース2と同じ直径であり、先端部材6の遠位端に向かって半径方向内向きに先細状になっている。図1では、内側カテーテル3は、ステントベッド5およびステント装置4が位置する軸線方向部分では単純なチューブと見なすことができる。ステント装置4に近接した位置において、内側カテーテル3の単純なチューブは、内側チューブと内側チューブを覆う管状スリーブとを備える内側カテーテル3のガイド部分8に接続され、内側チューブには、円周方向での各スリットの範囲がチューブの円周の半分を超えるようにして、壁厚を通して軸線方向に分配された複数のスリットが形成されており、内側カテーテルのガイド部分を屈曲させることができる。内側カテーテルのガイド部分の構成は、英国特許出願第0912665.7号の主題である。内側カテーテル3のガイド部分8については、本願ではこれ以上詳細に記載しない。
【0077】
内側カテーテル3の単純なチューブ部分に適した材料はポリアミドである。
第1の層10および補強層9を接着剤層11によって積層することにより、外側シース2をポリマー性の第1の層10および補強層9から作ることができる。通常、また特に長いステント装置の場合、このことにより、外側シース2がステント装置4の上を移動するにつれて、外側シース2の内表面とステント装置4の外表面との間の抵抗力によって、外側シース2が応力を受けて不具合または狭窄を起こすことがある。また、外側シース2が狭窄すると、ステント装置4をきつく把持しすぎることがあるため、後退中の外側シース2の不具合を引き起こす場合があり、それによって求められる後退力が外側シース2の破壊強度を上回ることがある。第1の層10および補強層9と、第1の層10および補強層9を互いに積層する手段との組み合わせは、驚くことに、外側シース2の後退中の外側シース2の狭窄に抵抗するとともに、単に層9、10を組み合わせた場合を上回る強度という利益を提供することが見出されている。
【0078】
外側シース2は、第1の層9および第2の層10が同じ材料のチューブから作られ、そのチューブがそれ自体の上に折り返され、互いに接着されて補強層9、第1の層10、および第1の間の接続部分12を形成するという点で一体構造である。外側シース2は、外側シース2の遠位側軸線方向部分16を接続し、ステント装置4を覆う移行部分14と、近位部分15とを含む。近位部分15は遠位部分16に比べて半径方向で縮小された形態を有するので、移行部分14は、遠位部分16から近位部分15まで内向きに先細状になっている。これにより、遠位部分ではステント装置4の半径方向の嵩高を収容することができ、近位部分15では低プロファイルのガイド部分が可能になる。移行部分14は、外側シース2の後退中の不具合の影響を特に受けやすい。したがって、図1および2に示されるものの代替例では、積層された第1の層10および補強層9が、遠位部分16の外側シースならびに先細状部分14および/または近位部分15の少なくとも一部を形成するように、積層された第1の層10および補強層9によってもたらされる補強を、図示されているよりもさらに近位側に延在させることができる。図1および2に示されるステントベッド6は、より大きい外径の遠位端からより小さい外径の近位端まで先細状のプロファイルを有する。かかるステントベッド5上にステント装置4を受け入れることは、さらに後述する理由から有利である。ステントベッドの先細状のプロファイルの例は、図6および7に見ることができる。図6では、ステントベッドは、内側カテーテル3に適用された連続層によって形成される。ステントベッド5は、ステントベッド5の一端、つまり遠位端では、他端、つまり近位端よりも厚いプロファイルを有する。図示される実施形態では、ステントベッド5は、遠位端から近位端まで線形的に半径方向内向きに先細状になっている。しかし、層は、半径方向で段階的に、または指数関数的などの他の非線形的曲線で厚さを低減することができる。図6では、ステントベッド5の外径は、遠位端で1.4mm、近位端で1.2mmであり、220mmの軸線方向長を有する。先細状のプロファイルの勾配は、ステントベッド5の全長にわたって厚さの最大変化をとり、この値をステントベッドの長さで割ることによって作り出すことができ、これによって(1.4−1.2)/220=0.00091、つまり0.091%が得られる。
【0079】
図7には、ステントベッド5の代替構成が示される。ステントベッド5は、軸線方向で分離された複数のバンド部材17によって形成される。したがって、バンド部材17は、バンド部材17の各対の間に軸線方向で分配されたギャップをステントベッド5に画定する。図6の実施形態では、5つのバンド部材17があるが、より多数のバンド部材または実際には1つもしくは2つ少ないバンド部材を使用するのが機能的であることが想到される。各バンド部材17は一定の外径を有するが、一連のバンド部材17は、遠位端から近位端まで厚さが徐々に減少している。各バンド部材17は、バンド部材17が位置する軸線方向部分に沿ってステントベッド5の一定した外径を画定するように、図示されるような一定の厚さを有してもよい。あるいは、各バンド部材17自体が先細状のプロファイルを画定することができる。この先細状のプロファイルは、ステントベッド5の遠位端から近位端までの線形的な経路に追随することができる。別の変形例では、各バンド部材17自体が、段階的なまたは非線形の経路に追随する先細状のプロファイルを画定することができる。図7の例では、最遠位側のバンド部材17はステントベッドの1.4mmの外径を画定し、遠位側2番目のバンド部材17はステントベッドの1.35mmの外径を画定し、中央のバンド部材17はステントベッドの1.30mmの外径を画定し、近位側2番目のバンド部材17は1.25mmの外径を画定し、最近位側のバンド部材は1.20mmの外径を画定している。ステントベッド5は230mmの軸線方向長にわたって延在する。したがって、ステントベッド5の先細状のプロファイルの勾配は、(1.4−1.2)/230=0.00087、つまり0.087%である。例えば、100mm〜350mmのステントベッドの他の長さが想到される。例えば、ステントベッド5の外径における最大変化の範囲は、例えば0.1mm〜0.4mmであり得る。ステントベッド5の先細状のプロファイルの勾配に対する上述の範囲が好ましく、特に0.01%〜0.1%、より好ましくは0.05%〜0.1%の勾配が望ましい。
【0080】
図6のステントベッド5は、ゴムまたはシリコーン接着剤を内側カテーテル3上に噴霧することによって作ることができる。ステントベッド5向けにDymax医療用接着剤層も想到される。図7の例では、ステントベッド5は、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)またはDymax接着剤によって形成されてもよい。バンド部材17は、別個に形成され、内側カテーテル3の上を適所へ滑らせるのではなく、好ましくは内側カテーテル3上に形成される。これらの材料は、ステント装置4を受け入れるための粘着性かつ変形可能なステントベッド5を提供するという理由で選択される。粘着性のステントベッド5は、拡張4に対してわずかな半径方向力を提供する。ステントベッド5は、当然ながら、ステント装置4とステントベッド5との間の摩擦によって、内側カテーテル3に対するステント装置4の軸線方向の保持力を提供する。さらに、ステントベッド5の変形性により、ステント装置4をステントベッド5の外表面に部分的に埋め込むことができ、それによって、ステント装置4とステントベッド5との間で形状適合性がもたらされて、内側カテーテル3に対するステント装置4の十分な保持がさらに確保される。ステント装置4の内表面に沿ってステント装置4の近位端から遠位端まで分配され、粘着性および変形性を有するステントベッド5を使用することは、国際特許出願第PCT/EP2009/061918号において考察されており、本願ではこれ以上詳細に考察しない。ステントベッド5は、WO00/71058などの当該分野において知られているステントベッドにしたがって、先細状でなくてもよい。別の代替例では、ステント装置4を内側カテーテル3に対して保持するため、ステント装置4の近位側のプッシュ要素が使用されてもよい。かかる近位側のプッシュ要素は、例えば、WO00/71058の図1および2に開示されている。
【0081】
ステントベッド5の先細状のプロファイル設計は、次の理由から有利である。図1および2に示されるようなプルバック式の外側シース設計では、後退力、つまり外側シース2とステント装置4との間の抵抗は、ステント装置4と外側シース2との間の相対移動が始まるときに最大になる。ステントベッド5の大径部分は、小径の近位部分よりもステント装置4による圧縮が強力であり、したがって、ステント装置4の遠位端に向かって保持力が大きくなる。また、大径部分は、ステント装置4を外側シース2へとより強力に押し込むので、ステント装置4と外側シース2との間の抵抗力は遠位端の方が大きくなる。ステントベッド5の先細状のプロファイルは、保持力が最も必要とされる遠位端で十分な保持力を提供するものと思われるが、直径が縮小すると、ステント装置4と外側シースとの間の全体的な抵抗力は総じて、ステントベッド5が遠位端におけるステントベッド5の外径に等しい一定の直径を有する場合に比べて減少する。したがって、ステント装置4を標的部位で適正に位置させるための内側カテーテル3に対するステント装置4の十分な保持を確保したまま、外側シース2を後退させるのに必要な力が全体的に低減される。低減された展開力により、外側シース2により薄いポリマー材料を使用することが可能になって、ステント装置送達システム1の低プロファイルの設計に寄与する。
【0082】
図1および2に示されるステント装置送達システム1を再び参照して、ステント装置4の展開について説明する。ガイドワイヤは、最初に、ステント装置4による支持を必要とする病変した血管内腔の部位に到達するように、患者の血管系の蛇行した通路を通して供給される。図1および2のステント装置送達システム1は、次に、内側カテーテル3の管腔に受け入れられているガイドワイヤによって、ガイドワイヤに沿って供給される。ノズル6の先細状のプロファイルは、ステント装置送達システム1を患者の血管系に通すのを容易にする平滑な遠位表面を提供するので、送達の助けとなる。標的部位におけるステント装置送達システム1の適正な位置は、ステント装置4の遠位端および近位端に位置付けられた放射線不透過性材料を利用する放射性イメージングによって決定される。ステント装置4を展開するために、外科医は、システム1の手持ち部分を操作して、引っ張り部材7をステント装置4に対して引き戻す。引っ張り部材7を近位側へと移動させるにつれて、外側シース2の第1の層10および補強層9がステント装置4に対して単一の層状構造として移動する。ステント装置4に対する外側シース2の軸線方向移動により、外側シース2の内表面がステント装置4の上を引きずられる。この抵抗力は、ステント装置4を内側カテーテル3に対して近位方向で押し進める傾向がある。ステントベッド5の外表面とステント装置4の内表面との間の係合は、ステント装置4のあらゆる近位方向移動に抵抗して、ステント装置4を内側カテーテル3に対して固定させて保持する。外側シース2の遠位端、すなわち接続部分12がステント装置4の上を移動するにつれて、ステント装置4は外側シース2から徐々に近位方向で解放される。ステント装置4は、解放されると、図1および2に示されるその送達形態から展開形態へと半径方向で拡張して、病変した血管内腔を支持する。外側シース2の遠位端がステント装置4の近位端の近位側に完全に位置付けられると、ステント装置4は完全に展開され、このときに外側シースはステント装置4から後退したと見なされる。引っ張り部材7がステント装置4を覆うように延在し、外側シース2の移行部分14の遠位側の場所で外側シース2に取り付けられていることで、引っ張り部材7は外側シース2の軸線方向強度に大きく寄与するので、外側シース2が不具合を起こす可能性が低減される。引っ張り部材が外側シース2に対してより遠位側に延在するほど、外側シースが引っ張り部材7によって補強される軸線方向距離は大きくなる。したがって、図1および2に示される好ましい形態では、引っ張り部材7は外側シース2の遠位端まで延在する。第1の層10および補強層9が、特に図示されるように接着剤層11を使用することによって積層されることで、外側シース2の狭窄に対する抵抗がもたらされ、また、ステント装置4上への外側シース2の粘着と、後退中の外側シース2の不具合の可能性とを回避する軸線方向強度がもたらされる。
【0083】
図1および2に示されるものの代替例では、引っ張り部材7は、ステント装置4の近位側、かつ外側シース2の移行区画14の近位側の位置に取り付けられてもよい。この構成では、補強層9もステント装置4の近位側に延在するので、引っ張り部材7はやはり、第1の層10と補強層9との間の半径方向の積層によって取り付けられる。したがって、外側シースは、ステント装置4が位置する軸線方向部分に沿って引っ張り部材7によって補強されず、このことは、狭窄、粘着、または破断を起こすことなく後退中の軸線方向力を保つために、外側シース2の遠位部分16を十分な強度にしなければならないことを意味する。補強層9との積層によってもたらされる外側シース2の第1のポリマー層10の補強は、好ましくはやはり接着剤層11であり、したがってこの代替形態では特に重要である。この代替例はさらに、第1の層10および補強層9を、外側シースの近位部分15内に軸線方向で位置する耐熱収縮性支持チューブ上に熱収縮することによって修正することができる。引っ張り部材7はやはり、第1の層10と補強層9との間に半径方向で位置する。引っ張り部材7の熱収縮による取付け、ならびに積層による取付けにより、外側シース2に対する引っ張り部材7のしっかりした取付けが確保される。かかる熱収縮取付けについては、図4および5を参照してさらに後述する。
【0084】
図3は、別の例示的なステント装置送達システムを示す。同様の要素について言及する場合、図1および2と同じ参照番号を使用している。
図3のステント装置送達システム30は、ロール式の外側シース22を有する。上述したように、遠位端から近位端まで半径方向で内向きに先細状になったプロファイルを有するステントベッド5が、内側カテーテル3に設置される。ステント装置4はステントベッド5を覆い、ステント装置4の内表面はステントベッド5の外表面と係合して、ステント装置4を内側カテーテル3に対して保持する相互作用を提供する。ステント装置4を覆う外側シース22の遠位部分36では、外側シース22は、内層38の上に折り畳まれ、折畳み部分40によって接続された外層39の形に形成される。外層39は、内層38に対して近位方向で軸線方向に移動可能であり、それによって折畳み部分40が近位側に巻かれて、外側シース22の後退がもたらされる。内層38は、ステント装置4の近位側の場所で内側カテーテル3に取り付けられる。
【0085】
外層39は、内層38を超えて近位側に延在して、引っ張り部材27に取り付けられる外側シース22の近位部分35を提供する。引っ張り部材27は、補強層29との積層によって外側シース22に取り付けられる。引っ張り部材27は、積層された外層39と補強層29との間に半径方向で保持される。補強層29は、図3に示されるシステム30では、外側シース22の外層35の半径方向内側に位置する。しかし、補強層29は、外側シース22の外層34の外側に配置することができ、用途によってはこの方が好ましいことがある。
【0086】
外層39および補強層29は、補強層29の周りに円周方向で、かつそれに沿って軸線方向で分配された接着剤層31によって互いに積層される。引っ張り部材27は接着剤層31に埋め込まれ、それによって、補強層29および外層39に対する接着接続、ならびに積層された層29、39の捕捉効果による接続がもたらされる。接着剤層は、好ましくは、Dymaxの商品名で販売されている医療用接着剤である。製造を容易にするためUV硬化性であってもよい。これは、図1および2のシステム1の接着剤層11にも適した材料である。
【0087】
図3に示されるステントベッド5もやはり、先細状のプロファイルの形態である。ステントベッド5の先細状のプロファイルについては、図1、2、6、および7を参照して上述している。先細状でないステントベッドの代替例、ならびにステント装置4の近位側に位置付けられた内側カテーテルに対してステント装置4を保持する手段についても上述している。かかる代替のステント装置保持手段は、図3に示されるシステム30にも適用可能である。
【0088】
図3はまた、内側カテーテル3、ステント装置4、および外側シース22がそこから延在して、外側シース22を後退させるとステント装置4が展開位置へと拡張するのを可能にする、ステント装置送達システム30のガイドシース41を示す。外側のガイドシース41は、患者の血管系を進むのに適した可撓性であって、なおかつ端部方向の圧縮を受けても適度な強度があり、患者の近位端外側における操作者によって標的部位まで送達することができる、従来の材料で作ることができる。図3にはまた、遠位部分の従来のチューブ、ならびにスリット付きの管状材料と図1および2を参照して上述したような外側の管状スリーブとで作られた近位側ガイド部分8から構成された内側カテーテル3が示される。
【0089】
図3のステント装置送達システム30の展開は、引っ張り部材27に近位方向の引っ張り力を掛けることによって達成される。引っ張り部材27は、積層された層29および39の間での捕捉と、接着剤層31によるこれらの層との接着剤取付けとの組み合わせによって、外側シース36の外層39にしっかりと取り付けられる。したがって、引っ張り部材27を近位側に移動させるにつれて外層39は近位側へと移動し、折畳み部分40を近位側に巻く動きによって外層39が内層38に対して移動する。折畳み部分40が近位側へと移動し、ステント装置4を露出させ始めると、ステント装置4は、図3に示される送達形態から展開形態へと拡張する。折畳み部分40がステント装置4の近位側に至ると、ステント装置4は、ステント装置4の軸線方向全長に沿って完全に展開することができる。外側シース22の折畳み部分40は、内側カテーテル3に対する外側シース22の内層38の接続部分42に達するまで、引っ張り部材27が近位側へと移動するにつれて近位側に巻かれ続ける。図3に示される実施形態では、接続部分42は、外側シース22の外層39に対するわずかな追加の引っ張り力を受けて解放可能であるので、所望であれば、外側シース22を内側カテーテルとは独立に後退させることができる。
【0090】
外側シース22の内層38は、ステント装置4を覆う部分において、ステントベッド5の先細状のプロファイルを共有するようにされる。したがって、内層38の遠位端は内層38の近位端よりも大きな外径を有するようになる。内層38の遠位端をそれ自体の上に折り畳んで、巻かれる折畳み部分40を形成するので、どの時点においても、ロール縁部の近傍において外層39は内層38よりも大きな直径を有する。これにより、内層38と外層39との間にギャップがもたらされて、2つの層38、39の間で粘着または捕捉が起こる可能性を低減しながら、外層39を内層39の上で滑動させることができる。したがって、この特徴により、巻かれる外側シース22の展開力が低減されるとともに、外側シース22を上手く後退させるための信頼性が向上する。本明細書に開示されるステント装置送達システムの製造方法を参照して後述するように、外側シース22の内層38は、好ましくは、ステントベッド5とほぼ同じ先細状のプロファイルを有して形成されて、上述のギャップを確実に形成する。内層38は、内層38を冷延伸することによって、先細状のプロファイルを有するように形成されてもよい。
【0091】
図3に示されるものに対する代替のステント装置送達システムでは、補強層29は、外側シース22の近位部分35だけではなく、外側シース22が半径方向内向きに先細状になる移行区画34、ステント装置4を覆う遠位部分36、半径方向で縮小された近位部分35も覆うように、さらに延在させることができる。外側シース22の移行区画34は、不具合を起こすリスクが高いので、補強層29の積層によるこの部分の補強が特に有用なことがある。したがって、この代替形態の補強層29は、補強層29の近位部分では引っ張り部材25を捕捉する一方で、補強層29は引っ張り部材27の遠位端を超えて遠位側に続いて、外側シース22の移行区画34に対する補強能力としてさらに作用する。補強層29はさらに、移行区画34を超えて遠位側に延在して、ステント装置4を覆い、外層39の遠位部分36に積層されてもよい。これによって外層39に補強が提供されて、外層39の狭窄が回避されるが、そうでなければ外層39が内層38に接触しそれを圧縮し、それによって外側シース28が巻かれて粘着と場合によっては不具合を起こすことになる。長い補強層29は、外側シース22の外層39におけるかかる不具合の可能性に対する必要な抵抗を提供する。
【0092】
図3に示されるものの別の代替例では、耐熱収縮性支持チューブを外層39および補強層29内に半径方向で位置させることができる。外層39および補強層29は、支持チューブ上に熱収縮して、引っ張り部材27の取付けをさらに安定させることができる。外側シース34に対する引っ張り部材27のこの取付け手段については、図4および5に示される送達システム60に関して後述する。
【0093】
さらに別の代替例では、引っ張り部材27は、ステント装置4を覆うように、図3に示されるよりもさらに遠位側に延在してもよい。補強層2aもまた、引っ張り部材が積層された外層39と補強層29との間に半径方向で依然として捕捉されるように、遠位側に延在してもよい。引っ張り部材27を外側シース34の遠位端まで、または少なくともステント装置を覆うように実質的に延在させることは、図1および2を参照して上述したように有利であり得る。特に、引っ張り部材27は、それが積層されるシースの長さ全体を通して外側シース34に対して張力支持を提供する。
【0094】
図3Aに示されている現在好ましい実施形態では、接着剤31が充填された層29と層39の間の補強された領域は、径方向において引っ張り部材の位置と向かい合う薄く剥がされた領域301を有する。この薄く剥がされた領域では、層39が取り除かれ、接着剤31の厚さが層29に向かって徐々に薄くなっている。層29の厚さを部分的に無くしてもよい。この薄く剥がされた領域は、遠位から近位に延びて徐々に薄くなっており、好ましくは、引っ張り部材27自体と同じ長さを有し、引っ張り部材27自体と実質的に同じ軸線方向位置同士の間を延びている。この構造は図3Bに詳しく示されている。
【0095】
薄く剥がされた領域は、補強された部分の剛性を薄く剥がされた領域の長さにわたって徐々に低下させて、補強された領域と補強された領域のすぐ近位のガイド部分8との間に硬い可撓性の移行部分が形成されるのを避ける、補強された部分からガイド部分8までの滑らかな移行ゾーンを形成する。硬い可撓性の移行部分が存在すると、用途によっては、例えば、特に曲がりくねった生体構造を進行するときに、送達システムのねじれが生じる。
【0096】
好ましい実施形態では、薄く剥がされた領域は、鋭い刃を引っ張り部材27の遠位先端と向かい合うように層39に接触させ、次いでわずかな圧力を加えつつ刃を近位方向に移動させて各層39、31、および29を順に削るかあるいは剥ぐことによって形成される。図3Aおよび3Bは、基本的に層39、31、および29を剥ぎ取り、薄く剥がされた領域を比較的深く示しているが、用途によっては、切り込みをより浅くし、層29の一部のみを貫通するかあるいは貫通を最小限に抑えることが好ましい場合がある。
【0097】
代替構造が図3Cに示されており、ここでは、層39の半径方向外側に補強層29を有する実施形態に薄く剥がされた領域が存在している。この場合、薄く剥がされた領域は、最初に層29に切り込んで層29、層31、および層39を順に貫通することによって形成される。
【0098】
典型的な一例では、補強された領域の全長は23mmであり、そのうち最も遠位の端部の所の5mmは、単に接着剤31によって層29、39を積層した構造である。残りの18mmは、埋め込まれた引っ張り部材に相当する。したがって、薄く剥がされた領域は、引っ張り部材と向かい合う補強された領域の最も近位の18mmを含む。
【0099】
薄く剥がされた領域の存在は、補強された剛性の領域から比較的可撓性の高い領域までの滑らかな移行を実現することが望ましいと見なされる状況では、本明細書において説明するすべての実施形態に適用可能である。
【0100】
図4および5に示されるステント装置送達システム50は、現在最も好ましい送達システムである。これは、補強層59によって完全に補強されたロール式の外側シース52の低い後退力と、先細状のプロファイルを有するステントベッド5を提供することによる、外側シース52のより信頼性の高い後退と、補強層59を外側シース52の外層69に対して積層することによる、かつまだ上述していない他の有利な特徴を用いた、外側シース52に対する引っ張り部材57のしっかりした取付けとを組み合わせている。
【0101】
このシステムでは、ステント装置4は、先細状のステントベッド5と係合された外側シース52によって半径方向で拘束される。外側シース52は、ステント装置4の外表面に接触する内表面を有する内層68と、外層69とを備え、それらは外側シース52の遠位端で折畳み部分70によって接続される。外層69は、内層68に対して近位方向に軸線方向で移動可能であり、それによって折畳み部分70も近位側に移動し、それにより外側シース52を後退させる。外側シース52の内層68は、ステント装置4の近位側に位置する接続部分72において、内側カテーテル3に接続される。外側シース52の外層69は、接続部分72から引っ張り部材57の遠位部分までさらに近位側に延在する。引っ張り部材57の遠位部分は、外層69と、外層69に積層された補強層59との間に挟み込まれて、引っ張り部材57が外側シース52に取り付けられる。図4に示されるシステム50では、図3に示されるシステム30とは対照的に、補強層59は外層69の半径方向外側に位置付けられる。補強層59および外層69は互いに積層されて引っ張り部材57の遠位部分を捕捉し、これは好ましくは、補強層59の全長に沿って軸線方向で、かつ補強層59の周りに円周方向で接着剤層61を噴霧することによって行われる。したがって、引っ張り部材57の遠位部分は接着剤層61に埋め込まれ、補強層59および外層69に接着される。補強層は、図3に示されるシステム30よりもさらにステント装置送達システム50に沿って延在する。図5に示されるシステム50の補強層59は、ほぼ遠位端まで、または外側シース52の折畳み部分70まで延在する。補強層59、接着剤層61、および外層69はともに、外側シース52の外層と見なすことができる。その結果、内層68とこの組み合わされた外層とが外側シース52を構成する。したがって、以下、層69を外側シース52の第2の層とし、第2の層69、接着剤層61、および補強層59の組み合わせを外層75と呼ぶこととする。
【0102】
外側シース52に対する引っ張り部材57の遠位部分の取付けは、第2の層69および補強層59を、これらの層59、69の間に引っ張り部材57の遠位部分が半径方向で捕捉された状態で熱収縮することによって向上する。補強層59および第2の層69は、耐熱収縮性支持チューブ73上に熱収縮される。熱収縮は、引っ張り部材57の遠位部分を半径方向でしっかりと捕捉し、外側シース52の外層75を耐熱収縮性支持チューブ73上に圧縮してそれらを互いにしっかりと固定するのに役立つ。さらに、熱収縮ステップは、接着剤層61が固化する前に行うと、接着剤層61が全体的に広がって、引っ張り部材57の遠位部分が外側シース52の第2の層69および補強層59に強力に接着する。耐熱収縮性支持チューブ73は、内側カテーテル3に対して軸線方向で移動可能であって、外側シース52を後退させ、ステント装置4を展開するプロセスを実施できるように、外側シース52を内側カテーテル3およびステント装置4に対して移動させることができる。
【0103】
外側シース52の内層68は、ステント装置4に近接した場所で、内側カテーテル3の耐熱収縮性部分上に接続部分72で熱収縮される。これにより、内層68がステント装置4に対して滑るのを防ぐように十分に強力に、内層68が内側カテーテル3に接続されるが、外側シース52を後退させる通常の後退力を受けると依然として剥がれることができるので、ステント装置4を展開した後に、望ましい場合は外側シース52および内側カテーテル3を互いに独立に除去することができる。
【0104】
図5は、引っ張り部材57の遠位部分の円周方向の範囲が見えるようにした、ステント装置送達システムの断面図を示す。図から分かるように、引っ張り部材57は、第2の層69と補強層75との間に適合する低プロファイル部分を提供するため、遠位部分で扁平にされている、近位側の引っ張りワイヤを備える。
【0105】
図4および5のステント装置送達システム50では、内側カテーテル3の外側ガイドシース71およびガイド部分8は両方とも、端部方向の圧縮応力に抵抗するとともに、外側の管状スリーブ層がスリット付きチューブを覆った状態で標的ステント部位に進むための可撓性を持たせるために、スリット付きのチューブ材で作られている。
【0106】
図面の送達システム1、30、50それぞれにおいて、ステント装置4を覆う部分に沿った内層は、好ましくは冷延伸ポリマー材料である。この理由の1つは、冷延伸材料は前延伸材料に比べて比較的強力であるという点である。別の理由は、冷延伸ポリマー材料は、ロール式の外側シース形態において滑らかで粘着のない巻き取りの助けとなることが見出されている点である。これは、英国特許出願第0823658.0号および第0823716.6号でより詳細に考察されている。後述するように、ステント装置4を覆う部分に沿って冷延伸ポリマー材料を外側シースに使用することには、製造上の利益がある。したがって、好ましくは、内層68、第2の層69、および補強層59は、ステント装置4を覆う外側シース52の軸線方向部分に沿って冷延伸される。換言すれば、外側シース52の遠位部分66は冷延伸ポリマー材料で作られる。好ましい冷延伸材料はポリエチレンテレフタレート(PET)であるが、冷延伸および熱収縮の両方が可能な他のポリマー材料が有用である。
【0107】
外側シース52の近位部分は、耐熱収縮性支持チューブ73上に熱収縮され、それによって外側シース52の直径が縮小された部分が形成される。したがって、移行区画64は、外側シースの近位部分65と遠位部分66との間に存在する。外側シース52の熱収縮した近位部分65はこの熱処理によって強化されており、これはやはり、近位部分65で外側シースが破断するリスクを低減させるのに寄与する。支持チューブ73のための一例の耐熱収縮性材料はポリイミドである。
【0108】
図4および5のステント装置送達システム50に示されるものの代替例では、補強層59を排除できることを想到することができる。引っ張り部材57の遠位部分は、外層69を支持チューブ73上に熱収縮することによって、支持チューブ73と外層69との間に半径方向で捕捉することができる。依然として、接着剤層を使用して、引っ張り部材57の遠位部分を外層69および支持チューブ73に取り付けることができる。接着剤層は、外層69を支持チューブ73に取り付けるのにも使用することができる。この代替構造に補強層を適用することができるが、ただし、ステント装置4を覆う外層69の部分に沿ってのみ、かつ恐らくは外側シース52の移行区画54にも延在する。図4および5に示されるステント装置送達システム50の別の代替構造では、補強層59は、外側シースの近位部分65に沿って、ただしそれ以上遠位側には延在せずに、外側シース52の外層69上に積層されてもよい。別の代替例では、補強層59は、近位側の熱収縮部分65および移行区画64に沿って、ただしステント装置4は覆わずに外層69に積層されてもよい。
【0109】
システム50におけるステントベッド5は、やはり、遠位端から近位端まで半径方向内向きに先細状になっている、先細状のプロファイルに形成される。内層68は、遠位端においてより大きい外径を有し、近位端においてより小さい外径を有するとともに、それらの間でほぼ線形的に先細状になるようにして、ほぼ同じ先細状のプロファイルを共有するように形成される。第2の層69は逆の先細形状を有するように形成され、それにより、折畳み部分70に隣接した遠位端はステント装置の近位端における近位端よりも小さい直径を有する。内層68および外層69は、後述するようなやり方でこの先細形状を有して形成されるが、それには、連続的に増加する外径を有するマンドレルに沿って材料のチューブを冷延伸し、次にチューブ材料をそれ自体の上に折り返して、材料の2つの層が逆方向で先細状になるようにする工程を伴う。逆方向の先細形状を有するような内層68および第2の層69のこの特徴により、外側シース52の後退中における2つの層間の半径方向のギャップが強調されて、層68、69が互いに引っ掛かる可能性が回避される。層の引っ掛かりは展開力の増加をもたらす可能性があり、その結果、ステント装置4から外側シース52を上手く後退させる際の信頼性が低下する。
【0110】
図4および5のステント装置送達システム50では、外側シース52は、図4を参照して記載したロール式メカニズムによってステント装置4から後退する。引っ張り部材57は近位方向の引っ張り力を受け、引っ張り部材57の一方の側と補強層59の他方の側とで引っ張り部材57の遠位部分が支持チューブ73と第2の層69の間に半径方向でしっかりと捕捉されているので、その力が外側シース52に伝達される。さらに、接着剤層61は、引っ張り部材57の遠位部分を補強層59および第2の層69に対してしっかりと固定させるのを支援する。外側シース52の外層75が支持チューブ73上に熱収縮されているので、支持チューブ73は外側シース52とともに軸線方向で移動する。外層75が近位方向で移動するにつれて、ロール式の折畳み部分が内層68を消費し、外層75の長さが延びるので、ステント装置4が徐々に露出し、ステント装置4が展開形態へと拡張することができる。折畳み部分70が、内層68が内側カテーテルに接続されている接続部分72に達すると、引っ張り部材57をさらに引っ張ることで、接続部分72が内側カテーテル3から剥がれて外側シース52および内側カテーテル3が分離する。
【0111】
図4および5に示されるステント装置送達システム50の代替例では、引っ張り部材57は、少なくとも部分的にステント装置4を覆うようにさらに遠位側に延在することができる。引っ張り部材57は、やはり第2の層69と補強層61との間に半径方向で積層される。外側シース52の同じ近位部分65は支持チューブ73上に熱収縮される。これは、最遠位部分に近接した引っ張り部材57の軸線方向部分が外側シース52の熱収縮部分によって捕捉されることを意味する。図4および5に示されるシステム50に対するこの可能な修正例では、低プロファイルを保つために、引っ張り部材のより大きい軸線方向部分を扁平にしなければならない。引っ張り部材を外側シース52の遠位端に向かってさらに延在させることの利益については、図1および2を参照して上述している。
【0112】
補強層59は親水性の外層を備える。これにより、患者の血管系内における場合のように、外表面が水でコーティングされたときに非常に滑らかになるので、システム50を標的組織部位へと低摩擦で送達することができる。外側シースの最外面に親水性コーティングを施すことは、図1〜3に示され上述された他の送達システム10、30にも適用可能である。
【0113】
上述の例では、引っ張り部材は、それが積層されている外側シースの層同士の間で扁平にされた実質的にリボン状の構成を有する。「扁平な構造」は、本明細書では、構造の長さに沿って実質的に平面状である構造を含むと見なされるか、あるいは構造が積層される管状の各層の曲率に一致するわずかな曲率を有するように形成されるかまたはそのような曲率を製造時に採用する構造を含んでよい。多くの状況では、この場合、熱収縮による機械的圧縮を実施するかそれとも接着剤を使用するかにかかわらず、引っ張り部材が全体的に適切に保持される。しかし、用途によっては、ずっと大きな引っ張り力に対して安定した引っ張り部材のずっと強化された保持を実現する必要がある。
【0114】
例えば、前述のように扁平なリボン状引っ張り部材またはわずかに湾曲したリボン状引っ張り部材を含むいくつかの構造は、接着剤が使用される場合に、引っ張り部材の各側に存在する接着剤の厚さが特に大きな引っ張り力を支持するのに量または厚さにおいて不適切である構成となる可能性がある。このような状況では、特に展開が困難なときにこのような大きな力を加えると、引っ張り部材が外側シースから完全にあるいは部分的に分離される恐れがある。この場合、安全面の問題が生じ得る。
【0115】
この問題は、このような状況において、外側シースの層同士の間に捕捉される引っ張り部材の少なくともある長さの部分に、外側シースの半径方向において可変のプロファイルである非一様半径方向形状を付与することによって軽減することができる。非一様半径方向形状を有するこのような引っ張り部材の一例が図8に示されている。図8において、引っ張り部材77は、図4および5に示されている外側シースと同様な外側シースの補強層59と外側層69との間に位置しており、引っ張り部材の長さに沿って波状形態を有する。図8に示されている波状形態は、波状態引っ張り部材のそれぞれ半径方向外側および内側に、図8Aに拡大して示されているポケット61aおよび61bを画定しており、これらのポケット内に接着剤層61が収容される。この構成の引っ張り部材を採用し、起伏のスケールおよび形状を適切に選択することによって、引っ張り部材77と外側シースの層59および69との間に最小の厚さの接着剤を維持することができ、それによって、大きな引っ張り力を受けたときの脱離に対する所望の抵抗を確実に実現することができる。また、引っ張り部材は層同士の間に確実に心合わせされる。
【0116】
図8に示されている引っ張り部材の構成が、外側シースの層59および69との間に捕捉される長さに沿って(図4および5に示されているような)引っ張り部材のリボン状態形態を保持し、かつ図示のプロファイルが、扁平にされた部分の長手方向に垂直に延びる山部および谷部を有するように引っ張り部材を変形させることによって形成されることに留意されたい。これは、山部および谷部を明確に示す図8Aに拡大して示されている。
【0117】
しかし、図8の構成は、このような利点を実現することのできる唯一の構成ではない。例えば、接着剤を使用しないとき、および熱収縮保持または冷延伸を使用して引っ張り部材を外側シースの層同士の間に保持するときに、引っ張り部材にこのような波状形態をとらせると、熱収縮された層自体が、ワイヤの波状形態に倣い、したがって、起伏の山部および谷部に係合して大きな引っ張り力に抵抗することができる。それによって、起伏の山部および谷部は、熱収縮された層の内面に係合する働きをする。
【0118】
また、非一様半径方向形状は、引っ張り部材に長手方向起伏を設けることによって他の方法で実現することができる。例えば、引っ張り部材の内面上であるか、外面上であるか、それとも両方の半径方向面上であるかにかかわらず、引っ張り部材の厚さを選択的に変化させると、同様の利点をもたらすことができる。このように厚さが一様でない場合、引っ張り部材の表面に、図8に示されている波状プロファイルの波形ではなく、リッジまたは他のリリーフ構造を設けることができる。
【0119】
あるいは、非一様半径方向形状は、引っ張り部材の長手方向ではなく横方向において変化しても、そればかりでなく両方向に沿って変化してもよい。したがって、上述のような長手方向リッジ、波形、またはその他の変形例は、非一様半径方向形状の一部を形成することができる。
【0120】
別の可能な構成は、スティップリング、スコーリング、リッジング、または無作為な表面構造などの表面特徴を引っ張り部材の半径方向内面、半径方向外面、または全面に設けることを含む、引っ張り部材にテクスチャ加工された表面を設ける構成である。
【0121】
非一様半径方向形状は、外側シースの層同士の間に捕捉される引っ張り部材の長さに沿った変化が規則的である必要はないが、製造を容易にするうえで規則的な方が好ましい。また、半径方向プロファイルは、外側シースの層同士の間に捕捉される引っ張り部材の全長にわたって延びる必要はなく、その長さの一部のみに設ければよい。このような部分は、引っ張り部材の遠位端から延びるように設けることができるが、引っ張り部材に沿った他の位置に設けてもよい。このような部分は、特に有利な構成において、引っ張り部材の全長にわたって延びてもよいが、場合によっては、引っ張り部材の2分の1以上にわたって延びるだけでもよく、そればかりでなく、引っ張り部材の補足される部分の長さの実質的に2分の1よりも短い長さに沿って延びてもよい。
【0122】
特定の一構成では、引っ張り部材は、図8に示されているように構成され、外側シースの層同士の間に捕捉される引っ張り部材の長さに沿って延びる10周期よりも少ない周期の起伏を有する正弦起伏を有する。しかし、このような構成は純粋に例示的なものであり、当業者なら、上述の構造の簡単な実験および変形によって、不当な負担なしに、対象となる特定の目的および状況に適した引っ張り部材の特定の半径方向プロファイルを選択することができる。
【0123】
この構造が、有利なことに、現在この構成の適用対象となっている前述の実施形態の特定の状況の範囲外であっても適用できることにも留意されたい。そればかりでなく、このような構成を使用して、ステント送達システムにおけるシースの積層された任意の2つの層の間に引っ張り部材を保持することができる。
【0124】
半径方向の変化が、製造プロセス中の、接着剤が比較的流動性を有する間に、引っ張り部材を、例えば扁平なリボン状構成から正弦波状または波状構成に変形させることによって形成される構成では、引っ張り部材に外部から加えられるかあるいは特定の製造ステップ(例えば、外側ポリマー層の冷延伸など)を通じて引っ張り部材に生じる半径方向圧力によって、最終的な構成がとられる前に波状プロファイルが部分的にあるいは場合によっては全体的に扁平になることがある。したがって、接着剤が硬化した後、引っ張り部材は、波状プロファイルが弾性的に圧縮されるために残留応力が存在するにもかかわらず実質的に扁平な構成である。一見すると、このような構成は図4および5の構造と同様であるように見えるが、一般に、デバイスを分解し接着剤を分離すると、この弾性的な引っ張り部材は、非一様半径方向形状を有する前の構成に戻ることができる。
【0125】
このような実施形態では、組み立て段階において、非一様半径方向形状が、間に引っ張り部材が拘束される2つの層から引っ張り部材の中心線を遠ざけ、また、半径方向の圧縮が加えられたときに、山部および谷部に保持されている接着剤を引っ張り部材の表面上に広げて均等に流すのを可能にするため、本発明の利点が保持される。このような構造では、含まれる接着剤の量がより少なく、したがって、間に引っ張り部材が拘束される2つの層から引っ張り部材が剥ぎ取られやすくなる領域が引っ張り部材に近接した位置に存在することはない。
【0126】
引っ張り部材に加えられる半径方向圧縮の程度に応じて、間に引っ張り部材が捕捉される2つの層の内面同士の間隔は、シースの径方向に向かい合う領域よりも引っ張り部材の領域の方が大きい。この非対称性の程度は、非一様半径方向形状のスケールと製造時に加えられる圧縮の程度との両方によって決まるが、当業者により、使用時に許容され、しかも本発明の利点を実現するのを可能にする程度の半径方向非対称性を実現するようにこれらのパラメータのいずれかを変化させることによって選択することができる。この場合も、引っ張り部材の非一様半径方向形状が製造時に圧縮される構成では、半径方向非対称性を最小限に抑えることができる。この非対称性は、図8に示されている幅Aと幅Bの違いによって示される。図示の非対称性は、スケールが誇張して描かれているが、基本的に当業者によって自由に決定することができる。
【0127】
図8の実施形態の現在好ましい一変形例では、補強された部分が、図3Aおよび3Bに関して説明したように薄く剥がされた領域を有する。
図8に基づき、また、やはり薄く剥がされた領域を有する例示的な一実施形態に関して、引っ張り部材は、補強された領域の近位端から遠位方向に合計で18mm延びており、そこから遠位方向に、外側ガイドシース71の最も遠位の端部に達する前にさらに5mmの補強された領域を有する。このような構造が図9に示されている。埋め込まれた18mmの引っ張り部材のうちで、最も遠位の15mmは、波状リボンであり、一方、2番目に近位の2mmは、引っ張り部材のリボン状部から丸い引っ張り部材までの移行領域である。引っ張り部材の埋め込まれた部分の残りの最も近位の1mmは丸い引っ張り部材である。したがって、これは、引っ張り部材が外側ガイドシース71の最も遠位の点よりも約5mm手前で終わることによって、図8に示されている実施形態と異なる。したがって、扁平な引っ張り部材から丸い引っ張り部材までの移行部分は、図8に示されているように補強された領域の近位位置ではなく、補強された領域の内側に形成されている。
【0128】
当業者には、補強された領域および引っ張り部材の相対的な寸法および位置の選択肢が豊富であることが容易に理解され、かつ当業者には、送達システムにおいて所望の機械的特性を実現するのに適切な構成を選択することができる。
【0129】
上述の形状は、特に、管状の層59の内径が1.72mmであり、層59および69のそれぞれが厚さ13μmのPETで形成されるシステムに適用可能である。
図4および5のステント装置送達システムの製造方法を以下に示す。図1および2のステント装置送達システム1、ならびに図3のステント送達装置30を提供するのに必要な方法ステップについても続けて開示する。
【0130】
最初に、ステント装置4を、最終的には外側シース52の少なくとも一部を形成することになる材料のチューブに装填しなければならない。ステント装置4を、既知の圧着機を使用して圧着して直径を低減した形態にし、外側シース材料のチューブ内へと移送する。次に、ステントベッド5が設置された内側カテーテル3を、単純に挿入することによってステント装置の管腔内に置く。ステント装置をステントベッド5と係合するために、ステント装置はその半径方向寸法をさらに低減しなければならない。そのため、外側シース材料のチューブを、ステント装置4が位置する軸線方向部分に沿って冷延伸する。このプロセス中に外側シース材料のチューブが狭窄するので、ステント装置の直径が縮小し、ステントベッド5の外表面がステント装置4の内表面と係合される。冷延伸プロセスは手作業で行うことができ、ステント装置4の中央部分から始め、ステント装置4の外径がそれ以上縮小できなくなるまで、つまりステントベッド5とステント装置4との間が強力に係合されるまで、外側シース材料のチューブの軸線に沿って片手で一方に、他方の手で他方に引っ張ることによって最も良好に行われる。このプロセスをステント装置4の全長に沿って継続して、ステント装置4を図4に示される半径方向で縮小された送達形態にする。この冷延伸プロセスは、国際特許出願第PCT/EP2009/055590号に記載されている。
【0131】
次に、ステント装置の遠位端となるステント装置4の端部にマンドレルを当接させる。先細状のプロファイルを有するステントベッド5が使用される場合、遠位端は、ステントベッド5のより大きい外径の端部を覆うステント装置4の端部によって特定することができる。マンドレルは、管状シース内に置かれ、ステント装置4の外径のプロファイルを継続して、外側シース材料のチューブの延長部分をそこに接触させて冷延伸することができる表面を与える。好ましくは、マンドレルは、ステント装置4と当接している端部からその軸線に沿って半径方向外向きに先細状になっている。マンドレルの先細状のプロファイルは、ステントベッド5の先細形状とほぼ同じ勾配を有する。マンドレルは、ステント装置4の端部とほぼ同じ外径を有する、ステント装置4と当接下端部で始まる。外側シース材料のチューブの延長部分は、少なくともステント装置の長さ分の軸線方向長さだけ、好ましくは製造公差を考慮に入れるためにわずかにより長く、チューブをマンドレルに接触させて冷延伸することによって形成される。
【0132】
外側シース材料のチューブの遠位端には小さい切り目が作られるが、ここで、遠位とは、ステント装置4から延長部分への方向で理解すべきである。切り目により、延長部分を逆向きにして、ステント装置4を覆う外側シース材料のチューブの部分を覆うように、外側シース材料のチューブをそれ自体の上に折り返すことが可能になる。それ自体の上に折り返してある部分が、ステント装置4と接触している材料の内層に対してより自由に移動できるようにするために、外側シース材料のチューブをそれ自体の上に折り返す前に、チューブに沿って潤滑性材料を塗布してもよい。これらのステップは、半径方向で縮小された送達形態にあってステントベッド5を係合しているステント装置4を提供している。ステント装置は、冷延伸ポリマー材料の内層68がステント装置の外表面を係合していることによって送達形態で保持される。折畳み部分70を提供するように折り返されている外層69は、軸線方向で内層68を覆う。外層69および内層68は、この冷延伸および折畳みの作業によって逆向きで先細状にされる。
【0133】
図1および2に示されるシステム1を作るためには、少なくともステント装置4を覆う部分に沿って、かつ折畳み作業を実施した後には折畳み部分12となるところまで、接着剤の層を外側シース材料のチューブに沿って塗布する。引っ張り部材7を、ステント装置4を覆い、ステント装置4をわずかに超えて延在するようにして、外側シース材料のチューブ上に置く。次に、外層10および内層9とそれらを接続する折畳み部分12とを形成するように、外側シース材料のチューブをそれ自体の上に折り返す。折畳み部分12が引っ張り部材7の端部と接触するまで、外層10を内層9に対して移動させる。外層10を内層9に対して前後に回転させて、それらの間で半径方向にある接着剤層11を広げることができる。次に、接着剤層11を固化させることができ、好ましくはUV放射線を適用することによって能動的に硬化させる。かかる好ましい事例では、使用する接着剤は、例えばDymaxの商品名で販売されている、UV硬化性接着剤である。このように、図1および2に示されるような外側シース2は、単一の層状構造の形に形成されるとともに、2つの層の間に半径方向で位置付けられ、内層9および外層10を互いに接着する接着剤層11に埋め込まれた引っ張り部材7を有する、内層9、折畳み部分12、および外層10を有して形成される。
【0134】
次に、図3に示されるステント装置送達システム30を形成するのに必要な、さらなるステップについて記載するが、まず上述の説明において到達した図4および5のシステム50の製造プロセスにおける段階から始める。シース材料のさらなるチューブを、ステント装置の近位側の外層に、つまり折畳み部分40が位置するのとは反対側の端部に挿入する。外側シース材料のさらなるチューブは補強層29を形成する。外層39および補強層29は約5cmの距離だけ軸線方向で重なり合う。補強層材料のチューブを外層39の近位部分に挿入する前に、軸線方向で外層39の近位部分と重なり合うようになる、補強材料のチューブの末端部分に接着剤層31を適用する。補強材料のチューブを円周方向で回転させて、接着剤層31が外層31の円周の周りで均一に広がるようにする。外層39と積層されていない補強材料のチューブの残りの部分を切り取る。引っ張り部材37の遠位部分を、補強層29の遠位端に達するまで接着剤層31に挿入する。このようにして、引っ張り部材の遠位部分が接着剤層に埋め込まれ、補強層29と外層39との間に捕捉される。接着剤層31がUV硬化性である好ましい実施形態では、接着剤層31をUV光源に暴露して接着剤を均一に硬化させる。これは簡単に製造できるが、引っ張り部材27を外側シース34にしっかりと固定する非常に効果的な方法である。
【0135】
図4および5に示されるステント装置送達システム50の製造を再び参照すると、先端部材6は近位端にボアを有して、内側カテーテル3の上に嵌合する。先端部材6はこのようにして内側カテーテル3に嵌合される。先端部材6を通して半径方向で延在する穴は、内側カテーテル3と連通する。接着剤の「滴」をこれらの穴それぞれに注入して、先端部材6を内側カテーテル3にしっかりと固定する。
【0136】
耐熱性支持チューブ73を、外層69の近位端に外層の内側半径方向で挿入する。支持チューブ73は、上述の熱収縮部分を形成するようになる長さ分だけ、外側チューブ69と軸線方向で重なり合うように挿入する。次に、外層69の重なり合う近位部分を支持チューブ73上に熱収縮させる。外層69の熱収縮部分は長さ約5〜10cmになる。
【0137】
接着剤は、ステント装置4を覆う軸線方向部分に沿って外層69の外表面に塗布する。補強層材料のチューブを、外層69のほぼ近位端まで外層69の上に滑らせるが、ここで、遠位・近位方向は、システム50の軸線に沿ったステント装置4から支持チューブ73の方向である。このようにして補強層材料のチューブを軸線方向で滑らせることにより、接着剤が外層69の近位端まで軸線方向で広がる。補強層材料59のチューブをさらに回転させて、接着剤を円周方向で均一に広げる。
【0138】
次に、補強層材料のチューブを、システム50の軸線方向部分に沿ってステント装置4の近位端から外層69の遠位端まで冷延伸する。これは、システム50の遠位部分66をコンパクトにして低減されたプロファイルを確保するのに役立つ。折畳み部分70を超えて延在する補強層のチューブの余分な材料があればそれを切り取る。冷延伸プロセスはまた、接着剤を補強層59に沿って軸線方向で、かつその周りに円周方向で広げることによって接着剤を均一に圧迫する。余分な接着剤があれば、補強層59の遠位端から外に出すことができる。これにより、接着剤の薄い層を外層69と補強層59の間に残すことができる。
【0139】
支持チューブ73を覆う補強層59の軸線方向部分を、支持チューブ73上に熱収縮する。この熱収縮プロセスおよび上述した熱収縮プロセスは、PET補強層59を使用する場合、220℃の温度で薄い熱ブレードを使用して実施することができる。熱ブレードにより、熱収縮を実施すべきところに熱を正確に適用することができる。特に、ステント装置4は、温度ベースの形状記憶材料で作られているので、かかる高温に晒されることに対して特に高感度である。さらに、耐熱収縮性支持チューブ73を遠位側で熱収縮すると、その範囲で半径方向の収縮が起こり、外側シース52を後退させるプロセスを阻害または妨害することがある。したがって、熱ブレードからの高温に晒すのは、耐熱収縮性支持チューブを覆う補強層59および外層69の部分のみである。熱収縮プロセスを実施する前に、引っ張り部材57の遠位部分を接着剤層61に、かつ補強層59と外層69との間に半径方向で挿入して、補強層59、外層69、および引っ張り部材57の遠位部分が約5cmの距離だけ軸線方向で重なり合うようにする。熱収縮プロセスは、補強層59の周りでそれに沿って接着剤層61を均一に分配するのに役立つとともに、このプロセスによって接着剤層61内にある引っ張り部材57の遠位部分が全体的に埋め込まれる。
【0140】
ステント装置送達システム50を、接着剤層61が存在する場所に沿って紫外光に晒して接着剤層61を硬化させ、このようにして外層69および補強層59の積層を完成させる。
【0141】
この時点で、補強された領域の、径方向において引っ張り部材と向かい合う部分を削るかあるいは剥ぐことによって、薄く剥がされた領域を設けることができる。
接着剤が固化すれば、引っ張り部材57を近位端で張力計に取り付けて、外側シース52を後退させるための作動力を決定することができる。試験を行ったところ、ステント装置送達システム50を用いて20N未満の最大展開力が一貫して信頼性高く達成される。20Nという展開力の上限は、外側シース52を作り出すのに使用されるポリマー材料が不具合を起こすあらゆる可能性を防ぐのに十分な許容差を提供するために選択されている。外側シース52の後退は非常に少量なので、低プロファイルのステント装置送達システムを構築するのに非常に薄い(約20μm)ポリマー材料層を安全に使用できる。さらに、外側シース52に対する引っ張り部材の取付けに関する試験は、引っ張り部材が外側シース52から分離する前に、外側シース52を後退させるのに必要な力よりもはるかに大きい力を掛けることができることを示している。
【0142】
非一様半径方向形状を有する引っ張り部材を使用するステント装置送達システムの実施形態を製造する場合、製造プロセスは、上記に、一様な半径方向形状の引っ張り部材を有する実施形態に関して説明したプロセスと基本的に同様である。重要な違いは、引っ張り部材の長さのうちの、関連する層同士の間に捕捉すべき部分が、関連する層同士の間に捕捉される前に所望の非一様半径方向形状を有するように形成されることである。当業者は、自由に任意の技術を選択してこのようなプロファイルを形成することができる。
【0143】
波状プロファイルを有する実施形態の場合、一様な引っ張り部材を所望のプロファイルを有するように屈曲させ、次に、任意に、当業者が選択できるような処理を施して所望の任意の機械的特性を有する屈曲した引っ張り部材を形成することによってプロファイルを形成してもよく、上記の処理については焼きなましまたは同様のプロセスを適用してよい。
【0144】
他の実施形態では、引っ張り部材の各部の打ち抜き加工、エッチング、レーザアブレーション、または機械的磨耗によって非一様半径方向形状を形成することができる。当業者は、当技術分野において従来使用されているような任意の技術を使用してこのような各部材を形成し所望の非一様半径方向形状を得ることができる。単に、引っ張り部材の表面の一部を所望の表面仕上げが得られるまで無作為に機械的に磨耗させることによって表面テクスチャを設けることができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、当業者は、最終的な安定した構成が得られる前、例えば接着剤が硬化する前に、非一様半径方向形状を有する引っ張り部材を含む製造中のステント装置送達システムを圧縮することを選ぶことができる。このような圧縮は、圧着プロセス中に外部から半径方向の力を加えるか、あるいはポリマーの半径方向外側層を熱収縮または冷延伸させて引っ張り部材に半径方向の圧縮力を加えることによって実現することができる。十分な半径方向の力を加えることによって、引っ張り部材は、平面に近い扁平にされた形態を実現し、一方、変形の結果として生じるある程度の内部応力を保持することができる。このような圧縮プロセスにおいて、間に引っ張り部材が拘束される2つの層の内面に引っ張り部材を接着するのに接着剤を使用する実施形態では、引っ張り部材を圧縮することによって、引っ張り部材の非一様半径方向形状によって画定されるポケット内、例えば前述の波状引っ張り部材の非一様半径方向形状の山部と谷部の間に蓄積した接着剤が、半径方向への圧縮時に上向きに流れ、引っ張り部材の周囲の領域を一様にコーティングすることができる。
【0146】
波状プロファイルについて説明した上記の開示全体において、これらの波状プロファイルは、正弦波、鋸波形、矩形波形、その他の非周期的波状形態のような連続的に変化する起伏と、一般にリボン状またはワイヤ状の引っ張り部材を曲がりくねった形態または波状形態に屈曲させることによって形成することのできるあらゆる構成とを含むものと見なすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント装置送達システムであって、
ステント装置と、
前記ステント装置の半径方向にコンパクトな送達形態における前記ステント装置を覆い、前記ステント装置に対して後退可能であり、前記ステント装置を半径方向に拡張して展開構成をとらせる外側シースとを備え、
前記外側シースは、互いに積層された第1の層と補強層とを含み、引っ張り部材の一部が、前記一部を半径方向において前記外側シースの前記第1の層と前記補強層との間に捕捉することによって前記外側シースに取り付けられるステント装置送達システム。
【請求項2】
前記引っ張り部材は、半径方向において、前記外側シースの前記第1の層と前記第2の層との間に少なくとも約1インチ(3cm)、少なくとも約2インチ(5cm)、または少なくとも約3インチ(8cm)の軸方向距離にわたって位置する、請求項1に記載のステント装置送達システム。
【請求項3】
前記引っ張り部材は引っ張りワイヤである、請求項1または2に記載のステント装置送達システム。
【請求項4】
前記引っ張りワイヤは、半径方向において前記内側層と前記外側層との間に捕捉された前記部分において扁平にされる、請求項3に記載のステント装置送達システム。
【請求項5】
前記第1の層はポリマー材料によって形成され、前記補強層はポリマー材料によって形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項6】
前記第1の層および前記補強層は、前記ステント装置を覆い、したがって、前記ステント装置に沿って延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項7】
前記外側シースは、前記ステント装置を覆う遠位部と、前記ステント装置の近位に位置する部分とを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項8】
前記外側シースは、前記ステント装置を覆う遠位部と、前記ステント装置の近位に位置する移行部分とを備え、前記移行部分は、近位方向において半径方向内向きに先細状になっている、請求項1から6のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項9】
前記外側シースの前記近位部は前記第1の層と前記補強層とを含む、請求項7または8に記載のステント装置送達システム。
【請求項10】
前記先細状部分は前記第1の層と前記補強層とを含む、請求項8に記載のステント装置送達システム。
【請求項11】
前記引っ張り部材は、前記ステント装置を覆い、前記ステント装置の遠位端まで延び、ここでは、遠位が、前記外側シースが前記ステント装置から近位方向に引き込まれる状況において理解される、請求項1から10のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項12】
前記引っ張り部材は、前記引っ張り部材を半径方向において前記第1の層と前記補強層との間に捕捉することによって前記外側シースの前記近位部の所で前記外側シースに取り付けられる、請求項7、8、9、または10に記載のステント装置送達システム。
【請求項13】
前記第1の層は、前記ステント装置に滑り接触し、前記補強層は前記ステント装置を覆い、それによって、前記第1の層と前記補強層は、前記ステント装置から前記外側シースを引き込むときに単一の層状構造として協働して前記ステント装置に対して軸方向に移動する、請求項1から12のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項14】
前記外側シースは、内側層と、外側層と、前記内側層と前記外側層を連結する折畳み部分とを備え、それによって、前記外側層が前記内側層に対して軸方向に移動すると、前記折畳み部分が前記ステント装置に対して軸方向に移動し、したがって、前記折畳み部分を前記ステント装置の近位に移動させて前記ステント装置から前記外側シースを後退させることができ、前記外側層は、前記第1の層と前記補強層とを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項15】
前記第1の層および前記補強層の少なくとも一方は、冷延伸されたプラスチック材料層であり、前記プラスチック層に沿って、前記各層が前記ステント装置を覆う、請求項6、あるいは請求項7から14が請求項6の従属クレームであるときには請求項7から14のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項16】
前記第1の層と前記補強層は、半径方向において前記第1の層と前記補強層との間に位置する接着剤層によって互いに積層される、請求項1から15のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項17】
前記引っ張り部材の前記部分は前記接着剤層に埋め込まれる、請求項16に記載のステント装置送達システム。
【請求項18】
前記引っ張り部材は、前記外側シースを近位方向に引いて後退させる部材である、請求項1から17のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項19】
前記外側シースの一部は、半径方向に、比較的に耐熱収縮性の支持部材上に熱収縮され、前記引っ張り部材の前記部分を半径方向において前記外側シースと前記耐熱収縮性支持部材との間に捕捉する、請求項18に記載のステント装置送達システム。
【請求項20】
前記外側シースは、前記ステント装置の近位に位置する前記外側シースの軸方向部分の所で前記耐熱収縮性支持部材上に熱収縮される、請求項19に記載のステント装置送達システム。
【請求項21】
前記外側シースの前記熱収縮部分は、前記熱収縮部分を、前記ステント装置を覆う前記外側シースの遠位部分に連結する移行部分を提供し、前記移行部分は、前記遠位部分から前記熱収縮部分まで半径方向内向きに先細状になっている、請求項20に記載のステント装置送達システム。
【請求項22】
保持機構と、前記ステント装置のルーメン内を半径方向に延び、かつ軸方向に貫通する内側カテーテルとを備え、前記ステント装置は、前記内側カテーテルによって形成される前記保持機構によって前記内側カテーテルに対して固定され保持される、請求項1から21のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項23】
前記外側シースの最外面は親水性である、請求項1から22のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項24】
前記最外面は前記補強層の前記外面である、請求項23に記載のステント装置送達システム。
【請求項25】
前記外側シースは、前記ステント装置が半径方向に拡張して展開構成をとるのを可能にするように前記ステント装置の遠位端から前記ステント装置の近位端まで後退可能であり、内側カテーテルは、前記ステント装置のルーメン内を半径方向および軸方向に延び、前記ステント装置が配置されるステントベッドを提供し、それによって、前記ステント装置の前記半径方向内面は、前記ステントベッドの半径方向外面に係合し、前記ステントベッドは、内向きに先細状になったプロファイルを画定し、前記ステント装置の遠位部分から前記ステント装置の近位部分まで半径が小さくなっていく、請求項1から24のいずれか一項にステント装置送達システム。
【請求項26】
半径方向において前記外側シースの前記第1の層と前記補強層との間に捕捉された前記引っ張り部材の部分の少なくとも一部の長さが、前記長さに沿って非一様半径方向形状を有するように形成される、請求項1から25のいずれかに記載のステント装置送達システム。
【請求項27】
前記非一様半径方向形状は、前記部分の前記遠位端から延びる、請求項26に記載のステント装置送達システム。
【請求項28】
前記非一様半径方向形状は、前記引っ張り部材の前記捕捉された部分の全長の実質的に2分の1、好ましくは前記捕捉された部分の実質的に全長に沿って延びる、請求項26または請求項27に記載のステント装置送達システム。
【請求項29】
前記非一様半径方向形状は、接着剤が収容されるポケットを形成する、請求項26から28のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項30】
前記非一様半径方向形状は実質的に周期的である、請求項26から29のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項31】
前記非一様半径方向形状は、前記引っ張り部材の長手方向の起伏によって提供される、請求項26から30のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項32】
前記非一様半径方向形状は、前記引っ張り部材の横方向の起伏によって提供される、請求項26から30のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項33】
前記引っ張り部材は、前記第1の層と前記補強層との間で半径方向に圧縮され、実質的に扁平にされた形態になる、請求項26から32のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項34】
前記扁平にされた引っ張り部材は、弾性圧縮状態に保持される、請求項33に記載のステント装置送達システム。
【請求項35】
前記非一様半径方向形状は、好ましくはスティップリング、スコーリング、およびクロスハッチングから選択されるテクスチャ加工された表面を含む、請求項26から34のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項36】
前記非一様半径方向形状は、前記外側シースの前記第1の層および前記補強層の内面同士を係合させる引っ張り部材保持手段を含む、請求項26から34のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項37】
前記非一様半径方向形状は、長手方向において変化する構成部材を含む、請求項26から36のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項38】
前記非一様半径方向形状は、横方向において変化する構成部材を含む、請求項26から37のいずれか一項に記載のステント装置送達システム。
【請求項39】
ステント装置送達システムを製造する方法であって、
ステント装置を設けるステップと、
前記ステント装置を半径方向にコンパクトな送達形態に保持し、かつ前記ステント装置が半径方向に拡張して展開構成をとるのを可能にするように前記ステント装置に対して後退可能である外側シースを前記ステント装置に設けるステップと、
前記外側シースに引っ張り部材を設けるステップと、
補強層を前記外側シースに積層して前記引っ張り部材の一部を半径方向において前記補強層と前記外側シースとの間に捕捉するステップとを含み、前記引っ張り部材は、前記捕捉された長さの少なくとも一部に沿って非一様半径方向形状を有する方法。
【請求項40】
前記引っ張り部材を半径方向に圧縮して、扁平にされた形態にするステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−512706(P2013−512706A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541485(P2012−541485)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068627
【国際公開番号】WO2011/067280
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(510294003)アンジオメト・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・メディツィンテクニク・カーゲー (14)
【Fターム(参考)】