説明

ステージ装置

【課題】測長SEMのような半導体の検査や評価を目的にした装置に適用可能なステージ装置を小型化、軽量化すると同時に電子線への磁場の影響を低減する。
【解決手段】トップテーブル101の大きさと可動ストロークとから決まる最小寸法とほぼ同じ大きさのベース104上に、リニアモータのXモータ固定子110a、110b、Xモータ移動子111a、111b、Yモータ固定子112a、112b、およびモータ移動子113a、113bを、ステージ装置中央の電子ビーム照射位置から遠ざけるように4辺に配置する。Xモータ固定子110a及びYモータ固定子112bは、コの字構造の開口部を装置の外側に向ける構成とする。また、可動のXテーブル102とトップテーブル101、及びXテーブル102とYテーブル103の連結は、非磁性材料を用いたリニアガイド107、109もしくは非磁性材料を用いたローラ機構によって行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステージ装置に関し、例えば半導体製造分野において半導体の検査や評価に用いる電子顕微鏡装置の試料ステージとして好適なステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の微細化に伴い、半導体製造装置のみならず、半導体素子の検査や評価装置にもそれに対応した高精度化が要求されている。通常、半導体ウェハ上に形成したパターンの形状寸法が正しいか否かを評価するために、測長機能を備えた走査型電子顕微鏡(以下、測長SEMと称す)が用いられている。
【0003】
測長SEMでは、パターンが形成されたウェハ上に電子線を照射し、得られた二次電子信号を画像処理し、その明暗の変化からパターンのエッジを判別して寸法を導出している。ここで、前記した半導体素子の微細化に対応するためには、高い観察倍率において、よりノイズの少ない二次電子像を得ることが重要である。そこで、二次電子像を何枚も重ね合わせてコントラストを向上させる必要があり、ウェハを搭載保持している試料ステージにはサブミクロンオーダーの高精度な位置決めが要求される。
【0004】
また、試料ステージの移動時間は、装置全体のスループットに大きく影響する。特に、大型半導体ウェハの搬送を行う試料ステージの場合では、ステージ移動時間を短縮し、スループットを向上することが求められる。
【0005】
一方、ステージ装置の大型化や質量の増大は、ステージ装置を格納する試料室の質量を増大させ、試料室を保持するマウント、設置にかかるコストを増大させるため、ステージ装置には、小型かつ軽量であることが求められる。
【0006】
このようにステージ装置には、高精度かつ高速な位置決めが可能であることと同時に小型で軽量であることが求められており、これには一般的にリニアモータなどを駆動機構とするサーボ制御システムが採用されている。しかしながら、リニアモータを用いたステージ装置を測長SEMなどに適用した場合、リニアモータのコイルからなる一次側と永久磁石からなる二次側によって発生する磁場により電子線が曲げられ、二次電子像に悪影響を及ぼすことがある。測長SEMは、半導体ウェハ上の測定点にステージを移動させ、その後電子線による画像取得を行うため、一次側より発生する磁場については、ステージの位置決め終了後にコイルへの通電を止めることで磁場を除去することができる。しかしながら、二次側は永久磁石を用いているため、磁場を完全に除去することはできない。それゆえ、電子線によって取得する二次電子像に及ぼす影響を考慮した設計を行わなければならない。
【0007】
このように電子線に悪影響を及ぼす磁場は大きく2種類に分類される。一方は電子線照射位置での磁場の絶対量であり、固定磁場と呼ばれる。もう一方は、ステージ移動により電子線照射位置での磁場が変化する変動磁場である。固定磁場は、ステージ移動によって変化しないため、予め固定磁場の分布のマップを取得するなどして電子線の偏向補正を行うことである程度影響を除去できる。しかし、その磁場の絶対量が大きい場合、電子線の偏向によって補正しきれないことが考えられる。そのため固定磁場の大きさを低減するが要求される。また、変動磁場に対しては、ステージ移動によって磁場が変化するため予め補正を行うことはできないため、ステージ移動時の磁場の変動を抑制することが要求される。
【0008】
一般に、XY平面動作を行うステージ装置の構成として、一方の軸(ここでは下軸と称する)方向に移動するテーブル上にもう一方の軸(ここでは上軸と称する)方向のリニアモータ及びリニアガイドを配置し、上軸のリニアモータ可動子上にトップテーブルを配置する方式がある。この方式によれば、上軸のリニアモータの永久磁石が下軸テーブルと共に移動するため、電子線照射位置での磁場変動が非常に大きくなる。
【0009】
以上述べたような電子線に影響を及ぼす固定磁場及び変動磁場への対策として、4個のリニアモータを用い、電子線照射位置から遠ざけることにより磁場の影響を緩和する技術が特許文献1に記載されている。この技術では、X方向及びY方向に交差する可動テーブルと、前記可動テーブルの両端に外側からリニアモータを配置することで、XY平面動作を行う構成となっている。また、別の技術として、リニアモータを試料室の外に配置することにより電子線への磁場の影響を除去する技術が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−93686号公報
【特許文献2】特開2003−123680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示された技術によれば、トップテーブルの可動範囲の外側にモータを配置するため装置の小型化が困難である。また、リニアモータ固定子の開口部からの漏洩磁場が電子線に影響し、二次電子画像に乱れが生じるという問題につながる。
【0012】
また、特許文献2に示された技術によれば、試料室の外にモータを配置するため装置の小型化が難しく、装置構成が複雑になり、コストの増大につながる。
【0013】
本発明は、前記した問題を解決するためになされたものであり、測長SEMのような半導体の検査や評価を目的にした装置に適用可能なステージ装置であって、小型・軽量な構造であり、かつ電子線への磁場の影響を低減することが可能なステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、トップテーブルの大きさと可動ストロークとから決まる最小寸法とほぼ同じ大きさのベース上に、リニアモータを電子ビーム照射位置(ステージ装置中央)から遠ざけるように4辺に配置した。リニアモータ固定子は「コの字」構造の開口部を装置の上側あるいは外側に向ける構成とした。可動テーブルとトップテーブルの連結は、非磁性材料を用いたリニアガイドもしくは非磁性材料を用いたローラ機構によって変位を伝達するようにしてもよい。
【0015】
また、可動テーブル上の磁性材料を用いず、非磁性のリニアガイドもしくはローラ機構を用いることにより、テーブル移動時に磁性体が動くことによる磁場変動を除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ステージ装置のサイズを最小に収める事ができる。また、リニアモータ固定子から漏れる固定磁場が電子ビーム照射位置から遠くなり、かつ磁束が外側に向くため、電子線に対する固定磁場の影響を最小限にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるステージ装置の一例を示す外観見取図である。
【図2】トップテーブルを除去したステージ装置の見取図である。
【図3】リニアモータの概略図である。
【図4】本発明によるステージ機構の一例の概略構成図である。
【図5】本発明によるステージ装置の他の例を示す外観見取図である。
【図6】本発明によるステージ装置の他の例を示す外観見取図である。
【図7】本発明によるステージ装置におけるローラ機構の外観見取図である。
【図8】本発明によるステージ装置におけるローラ機構の概略構成図である。
【図9】本発明のステージ装置を組み込んだ走査型電子顕微鏡の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明のステージ装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るステージ装置の外観見取図である。また、図2は、図1からトップテーブルを除去した見取図である。
【0019】
図1において、ステージ機構は、ベース104の上に可動テーブルとそれを駆動するための機構を搭載している。まず、Yテーブル103は、ベース104に固定されたYガイド108によって拘束され、Y方向(図1に示す座標軸のY方向)にのみ可動するよう設置される。Yモータ可動子113a,113bは、Yテーブル103の両端付近に固定される。Yモータ固定子112a,112bは、そのX−Z平面の断面が「コの字」の形をしており、その開口部がベース104の外側に向いており、なおかつYモータ可動子113a,113bをZ方向(図1に示す座標軸のZ方向)の両側から挟むよう設置される。ここでリニアモータの構成要素として1次側(永久磁石)、2次側(コイル)があるが、Yモータは固定子112a,112bを永久磁石、可動子113a,113bをコイルとするのが望ましい。このYモータ固定子112a,112b及びYモータ可動子113a,113bの間に発生する電磁気力によってYテーブル103をY方向に駆動する。
【0020】
図3は、Yモータ固定子とYモータ可動子からなるリニアモータの概略図であり、図3(a)は外観見取図、図3(b)はX−Z断面図である。固定子112は一方が開口した箱型のヨークを有し、開口部はベースの外側方向を向いている。固定子112のヨークの対向する内壁面には多数の永久磁石117が配置され、その対向する永久磁石群の間にコイル118を備える可動子113が移動自在に配置されている。図3(b)に示されるように、固定子112のヨークの断面形状はコの字型である。また、ベースの外側に向いたヨークの開口部からは、多少の磁場の漏れ出しがある。
【0021】
図1に戻って、Xガイド台105a,105bは、ベース104に固定され、Xテーブル102は、Xベース台105a,105bに固定されたXガイド106a,106bによって拘束され、X方向(図示する座標軸のX方向)にのみ可動するよう設置される。Xモータ可動子111a,111bは、Xテーブル102の両端付近に固定される。Xモータ固定子110a,110bは、そのY−Z平面の断面が「コの字」の形をしており、その開口部がZ方向上方に向いており、なおかつXモータ可動子111a,111bをY方向の両側から挟むよう設置される。Yモータと同様にXモータは固定子110a,110bを永久磁石、可動子111a,111bをコイルとするのが望ましい。このXモータ固定子110a,110b及びXモータ可動子111a,111bの間に発生する電磁気力によってXテーブル102をX方向に駆動する。
【0022】
以上によりXテーブル102とYテーブル103は、十字にクロスする形で構成され、ベース104に対してそれぞれX方向及びY方向に独立に駆動される。ここでXテーブル102のZ方向高さをYテーブル103のZ方向高さよりも高くしており、互いに干渉せずに動作できる。
【0023】
Yテーブル103上には、Xサブガイド107がX軸に平行に備えられている。図2に示すように、サブテーブル114はXサブガイド107に沿ってYテーブル103に対してX方向にのみ可動するよう設置される。これによりサブテーブル114はYテーブル103と共にY方向に動くと共にXサブガイド107に沿ってX方向に動き、XY平面内を二次元動作できる。
【0024】
Xテーブル102上には、Yサブガイド109がY軸に平行に備えられている。トップテーブル101は、Yサブガイド109に沿ってXテーブル102に対してY方向にのみ可動するように設置される。これにより、トップテーブル101はXテーブル102と共にX方向に動くと共にYサブガイド109に沿ってY方向に動き、XY平面内を二次元動作できる。トップテーブル101は、連結部材115によってサブテーブル114と固定され、一体となってXY平面内を二次元動作する。
【0025】
以上述べた構成によれば、Xモータ(110a,111a及び110b,111b)によりXテーブル102をX方向に駆動した場合、Xテーブル102、トップテーブル101、サブテーブル114が一体となりX方向に移動する。同様にYモータ(112a,113a及び112b,113b)によりYテーブル103をY方向に駆動した場合、Yテーブル103、サブテーブル114、トップテーブル101が一体となりY方向に移動する。これらトップテーブル101のX方向及びY方向の移動は、互いに独立に行うことができる。すなわち、XモータとYモータを制御することにより、トップテーブル101をXY平面で任意の位置に移動させ位置決めすることができる。
【0026】
図4は、図1に示したステージ装置のトップテーブル上方から見た概略構成を示す図である。図4では、説明を簡単にするため主な構成要素のみを示している。以下、図4を用いて本発明の効果を説明する。図4では、本実施例におけるステージ装置のトップテーブル101が図中のX方向及びY方向のマイナス側ストロークエンドまで移動した時の位置を破線201で示している。
【0027】
図4において、トップテーブル101のX方向の長さTxは、一般に搬送する試料の大きさによって決まる。例えば、半導体検査装置においては、半導体ウェハの大きさを基に決定すれば良い。また、トップテーブル101のX方向の可動範囲(Xストローク)は任意に決定できる。半導体検査装置においては、半導体ウェハの全面の観察を行うため半導体ウェハの直径と同じかそれ以上のストロークを取ればよい。このとき、トップテーブル101がX方向にストロークを満足して動くためにはトップテーブル長さTxとXストロークSxを加算した長さBxだけの長さが必要である。Y方向についても全く同様にトップテーブル101のY方向の長さTyとYストロークSyが決められ、トップテーブル101がY方向にストロークを満足して動くためにはトップテーブル長さTyとYストロークSyを加算した長さByだけの長さが必要である。以上より、トップテーブル101がXY平面でフルストローク動作するためには、BxとByによって作られる空間が必要となる。
【0028】
ベース104が大きくなると装置サイズや質量が増大するため、必要最低限のサイズで設計するのが望ましい。すなわち、ベース104はX方向長さBx、Y方向長さByのサイズとすることでトップテーブル101の動作空間を確保した上で最も小型化、軽量化が実現できる。
【0029】
一方、電子線は装置中央上部から照射され、この電子線への磁場の影響を最小にすることが求められる。特にリニアモータの永久磁石は強い磁力を有しているため、磁場の影響を緩和するためにモータは電子線照射位置からできるだけ離して設置することが望ましい。
【0030】
以上のことから、図4に示すようにベース104はX方向長さBx、Y方向長さByと同等のサイズとし、その4辺に沿ってできるだけ中心から離すようにリニアモータ固定子110a,110b及び112a,112bを設置する構造とした。この構造によれば、ベース104のサイズを最小としながら最大限に固定磁場の影響を除去できる。さらに、本実施例によれば、Yモータ(112a,113a及び112b,113b)を横向きに配置することにより、Yテーブル103の高さを低くすることができ、ひいてはステージ装置全体の高さを低減できる。これによりステージ装置の質量を低減できる。
【0031】
さらに、リニアモータ固定子110a,110b及び112a,112bの永久磁石の周囲を磁気シールド材で覆うことは磁場の影響のさらなる抑制に有効である。しかしながら、「コの字」構造の固定子においては、可動子がその開口部に挟まれた状態で移動するため、「コの字」の開放側に磁気シールド材を取り付けることが困難であり、開口部からの漏洩磁場は無視できない。本実施例においては、特にYモータ固定子112a,112bについて、その開口部を外側に向けることにより開口部からの漏洩磁束の方向を外側に向けることができると同時に、磁場の漏洩する位置をさらに電子線から遠ざけることができる。また、本発明のステージ装置は試料室と呼ばれる真空チャンバに入れられるが、モータ固定子の開口部を外側にして試料室の内壁の近傍に配置したことにより、試料室の内壁に磁気シールド材を張ることで固定磁場の影響のさらなる抑制効果ある。
【0032】
また、図1においてXテーブル102上のYサブガイド109及びYテーブル103上のXサブガイド107は、トップテーブル101のXY平面移動に伴いX方向及びY方向に移動する。リニアガイドに鉄系などの磁性材料を使用した場合、特に電子線照射位置近傍を磁性体が通過する際に、磁性体の位置によって電子線照射位置の磁束の大きさや向きが変化し、二次電子像へ影響を及ぼす。そのため、Yサブガイド109及びXサブガイド107は、例えば非磁性金属やセラミックなどの非磁性材料を使用することが望ましい。一方、Xガイド106a,106b及びYガイド108については、変動磁場に影響がないため磁性材料を用いることが可能である。
【0033】
図5は、本発明の実施例2に係るステージ装置の外観見取図である。本実施例のステージ装置の構成要素は図1及び図2に示した実施例1と同様であり、同様の駆動方法によりトップテーブル101をXY平面内で二次元動作させる。
【0034】
図5において、Xモータ固定子110a,110bは、そのY−Z平面の断面が「コの字」の形をしており、その開口部がベース104の外側に向いており、なおかつXモータ可動子111a,111bをZ方向の両側から挟むよう設置される。実施例1と同様に、このXモータ固定子110a,110b及びXモータ可動子111a,111bの間に発生する電磁気力によってXテーブル102をX方向に駆動する。
【0035】
このような構成によれば、前述した実施例1におけるYモータと同様にXモータ固定子110a,110bに関しても、その開口部を外側に向けることにより開口部からの漏洩磁束の方向を外側に向けることができると同時に磁場の漏洩する位置をさらに電子線から遠ざけることができる。また、前述のようにモータ固定子の開口部を外側にして試料室の内壁の近傍に配置したことにより、試料室の内壁に磁気シールド材を張ることで磁場の影響のさらなる抑制効果がある。
【0036】
図6は、本発明の実施例3に係るステージ装置の外観見取図である。本実施例のステージ装置の構成要素は図1及び図2に示した実施例1とほぼ同様であるが、本実施例ではYサブガイド109を用いず、ローラ機構によりXテーブル102のX方向移動をトップテーブルに伝達する。
【0037】
図7は、図6に示したステージ装置におけるローラ機構の外観見取図である。図7では、説明のため主な構成部品のみを図示しており、トップテーブル101は図示していない。図7において、サブテーブル114はYテーブル103に伴ってY方向に移動するとともに、Xサブガイド107に沿ってX方向に移動する。サブテーブル114とトップテーブル101(図示せず)は4本の連結部材115a〜115dにより連結されている。Xテーブル102よりX方向プラス側に備えられた連結部材115a及び115bにはローラ機構300aが備えられ、同様にX方向マイナス側に備えられた連結部材115c及び115dにはローラ機構300bが備えられている。ローラ機構300a及び300bは、それぞれXテーブル102の側面を両側から挟む構造となっている。
【0038】
図8は、ローラ機構の概略構成を示す上面図である。図8では、説明のため図7におけるローラ機構300a及びその周辺の主な構造のみを図示している。図8において、ローラ301はローラ軸302により回転支持され、ローラ軸302は2枚の板バネ303a,303bによって支持されている。板バネ303a,303bの両端は、支持部材304a,304b及び305a,305bによってそれぞれ連結部材115a及び115bに固定される。
【0039】
このような構造によれば、サブテーブル114がY方向に移動した場合、ローラ301がXテーブル102の側面に沿って回転移動するため、サブテーブル114及び連結部材115a〜115dによって連結されたトップテーブル101はY方向に自由に移動できる。また、Xテーブル102がX方向に移動した場合、ローラ301、板バネ303a,303bを介して連結部材115a〜115dに力が作用する。これにより、連結部材114に連結されたトップテーブル101がX方向に移動する。
【0040】
ここで、板バネ303a,303bのバネ剛性が低ければ、Xテーブル102が移動した際にガタや不感帯が生じる場合がある。そのため、板バネ303a,303bはバネ剛性が高いものを選択すると共にXテーブル102の方向に予圧を与えておく必要がある。このため、支持部材304a,304b及び305a,305bは、この板バネ303a,303bの予圧を調整できる構造であることが望ましい。これにより、板バネ303a,303bのバネ剛性と予圧を設計することにより、トップテーブル101のX方向の剛性を設計できる。
【0041】
また、以上述べたローラ機構300a,300bの構成部品は非磁性材料を用いることが望ましい。これにより、Xテーブル102が移動した際に磁性体の位置変化による電子線照射位置での磁場変動を無くすことができる。
【0042】
本実施例では、ローラ機構300a,300bはローラ301とローラ軸302を用いる構成としたが、玉やころなどを用いた軸受け部品などを用いて構成することも有効である。この際、軸受け部品は、真空内で使用可能なものであり、かつ非磁性材料を用いていることが望ましい。
【0043】
本実施例では、Xテーブル102の側面にそれぞれローラ機構を1つずつ配置する構成としたが、ローラ機構をそれぞれ2つずつ配置する構成も可能である。この際、4本の連結部材115a〜115dにそれぞれ1つずつローラ機構を設置し、かつ4つのローラ機構のバネ剛性及び予圧を独立に設計できるようにすることが望ましい。
【0044】
本実施例では、板バネを連結部材に固定したが、板バネはトップテーブルに固定するようにしてもよい。
【0045】
本実施例では、Xテーブル102上のYサブガイド109の代わりにローラ機構300a,300bを用いる構成としたが、同様にYテーブル103上のXサブガイド107の代わりにローラ機構を用いる構成としてもよい。
【0046】
なお、上記した実施例では、Xテーブルを2台のリニアモータで駆動し、Yテーブルを2台のリニアモータで駆動する構成としたが、Xテーブル及びYテーブルをそれぞれ1台のリニアモータで駆動する構成としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、リニアモータはコイルを可動子、永久磁石を固定子とする構成としたが、逆の構成として永久磁石を可動子、コイルを固定子とする構成とすることも可能である。この際、可動子となる永久磁石には前述したような磁気シールド材により磁場遮蔽を行うことが有効である。
【0048】
以上のように構成したステージ装置により、小型軽量かつ磁場による影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0049】
図9は、本発明のステージ装置を組み込んだ走査型電子顕微鏡の概略図である。この走査型電子顕微鏡は、除振マウント401の上に据え付けられた試料室402を有し、その試料室内に上記実施例1〜3で説明した本発明のステージ装置403が設置されている。試料室402は、ステージ上にウェハ等の試料を保持固定した後、内部を真空引きされる。試料室の上部には、電子線源や電子線照射光学系を備え、試料に電子線を収束して照射するためのカラム404が固定されている。カラムから試料に向けて電子線を照射し、試料から発生する二次電子信号を二次電子検出器で検出し、それを画像処理することにより試料の二次元像やラインプロファイルを得る。試料室内壁の固定子の開口部に面した位置には、固定子の開口部から漏れる漏洩磁場を低減するために磁気シールド材405が張られている。なお、本発明のステージ装置は、走査型電子顕微鏡以外にも集束イオンビーム装置など、保持した試料に電子ビームやイオンビームを照射する荷電粒子線装置一般のステージ装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
101 トップテーブル
102 Xテーブル
103 Yテーブル
104 ベース
105 Xガイド台
106 Xガイド
107 Xサブガイド
108 Yガイド
109 Yサブガイド
110 Xモータ固定子
111 Xモータ可動子
112 Yモータ固定子
113 Yモータ可動子
114 サブテーブル
115 連結部材
300 ローラ機構
401 除振マウント
402 試料室
403 ステージ装置
404 カラム
405 磁気シールド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに対して第一の方向に案内される第一のテーブルと、
前記ベースに対して前記第一の方向に直交する第二の方向に案内される第二のテーブルと、
前記第一のテーブル上で前記第二の方向に案内されるサブテーブルと、
前記第二のテーブル上で前記第一の方向に案内されるトップテーブルと、
前記サブテーブルと前記トップテーブルを連結する連結部材と、
前記第一のテーブルを前記第一の方向に駆動する第一の駆動手段と、
前記第二のテーブルを前記第二の方向に駆動する第二の駆動手段と、を備え、
前記第一の駆動手段と前記第二の駆動手段とによって前記トップテーブルを二次元移動させることが可能なステージ装置であって、
前記ベースは、前記トップテーブルの大きさと前記トップテーブルの可動距離とを加算した前記トップテーブルの可動範囲とほぼ等しい大きさであり、
前記第一の駆動手段は、前記第一の方向に沿って平行、かつ前記ベース上の前記第二の方向の端部近傍に配置されたリニアモータから構成され、
前記第二の駆動手段は、前記第二の方向に沿って平行、かつ前記ベース上の前記第一の方向の端部近傍に配置されたリニアモータから構成される、
ことを特徴とするステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−33748(P2013−33748A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222405(P2012−222405)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2009−217641(P2009−217641)の分割
【原出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】