説明

ステータコイルの加熱装置及び加熱方法

【課題】加熱温度がばらつくような問題もなく、ステータコイルの加熱処理の作業性の向上を図り、コイルヘッドの磁束によるコアの局部的な熱変形を有効に防止できるステータコイルの加熱装置及び加熱方法を提供する。
【解決手段】環状コアFに巻回されたステータコイルLを加熱するステータコイルの加熱装置A(B)において、前記環状コアFの厚さ方向の端面Fa、Fbに臨出している環状のコイル引回し部La、Lbに対して、コアFの厚さ方向外方から高周波誘導作用を及ぼして加熱する高周波誘導加熱用コイルヘッド1、11と、前記コアFの厚さ方向の端面Fa、Fbを前記コイルヘッド1、11による高周波磁束から遮蔽する遮蔽体2、12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車用発電機などのステータの製造工程で使用されるステータコイルの加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用発電機のステータの製造工程では、環状コアに三相のステータコイルを巻装した後、コアの軸方向の端面に臨出している環状のコイル引回し部を含むステータコイル全体にワニス含浸し、この状態でステータコイルを加熱することにより、前記含浸されたワニスを硬化乾燥させるようになっている。
【0003】
従来では、上記ワニスをステータコイル含浸した後、回転させながらステータ全体を加熱炉に挿入し、熱風により前記ワニスを硬化乾燥させることが行われていた。
【0004】
ところが、加熱炉を利用してワニスを硬化乾燥する方法では、ステータを加熱炉に投入してから、そのステータ温度がゆっくり昇温するため、ワニス材を硬化させるのに必要な温度、時間条件を満足するためには、加熱処理時間が長くなり、その分使用電力量も増えてコスト高となっている。さらに、炉内温度を常に一定に保持する必要があるため、ワーク投入前に炉内温度を昇温させ、ワークが全て搬出されるまで保持しなければならないので、よりコスト高である。
【0005】
ところで、ワニスをステータコイルに含浸する前にステータコイルを予備加熱しておく工程では、従来より、作業効率の向上、さらには加熱時間の短縮化による低電力化などを図るために、環状コアの中空部に高周波誘導加熱用コイルヘッドを配置し、ステータコイルおよびコアを高周波誘導方式により迅速に加熱することが提案されている。
【0006】
このような高周波誘導加熱用コイルヘッドを使った加熱手段を、ステータコイルに含浸されたワニスを硬化乾燥させる工程に導入する試みもなされている。つまり、高周波誘導加熱用コイルヘッドを、ステータにおけるコアの厚さ方向(コアの軸方向)の両側にそれぞれ臨出するコイル引回し部に対して、コアの厚さ方向の外方から対向するようにセットし、高周波誘導加熱用コイルヘッドによる高周波誘導加熱により、前記ステータコイルを加熱するものである。
【0007】
また、従来、ステータコイルに通電して該ステータコイルを自己発熱させることにより、ステータコイルを加熱させる技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−82050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、誘導加熱方式を採用してステータコイルを加熱する場合、誘導加熱用コイルヘッドから発生する磁束の一部が、コアの厚さ方向の端面に作用してしまう。コアは、通常、珪素鋼板の積層体で構成されているから、コアの厚さ方向への熱伝導性が低いこともあって、前記コアの厚さ方向の端面のみが局部的に加熱されてしまう。それにより、コアの厚さ方向の端面部位が熱変形を起こすおそれがあり、また、これにより、ステータコイルに対する加熱が十分になされなくなるという問題がある。
【0009】
また、ステータコイルに通電して自己発熱させる方法では、ステータコイルの種別によって自己発熱温度がばらつく傾向があり、採用しにくいという問題がある。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、加熱温度がばらつくような問題もなく、ステータコイルの加熱処理の作業性の向上を図り、コイルヘッドの磁束によるコアの局部的な熱変形を有効に防止できるステータコイルの加熱装置及び加熱方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)環状コアに巻回されたステータコイルを加熱するステータコイルの加熱装置において、前記環状コアの厚さ方向の端面に臨出している環状のコイル引回し部に対して、コアの厚さ方向外方から誘導作用を及ぼしてコイルを加熱する誘導加熱用コイルヘッドと、前記コアの厚さ方向の端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する遮蔽体と、を備えていることを特徴とするステータコイルの加熱装置。
(2)前記遮蔽体は、前記誘導加熱用コイルヘッドに対して一体的に設けられている前項1に記載のステータコイルの加熱装置。
(3)前記コイルヘッドは、前記コイル引回し部の環状径と略同径で同一平面上にあるいは筒状に巻かれたものであり、前記コアの厚さ方向の両側のコイル引回し部に対してそれぞれ厚さ方向の外方から対向する状態でコアと同軸上に配置されており、前記遮蔽体は、コアの厚さ方向の外周側端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する環状遮蔽体である前項1または2に記載のステータコイルの加熱装置。
(4)前記コイルヘッドは、ループ形状で同一平面上にあるいは筒状に巻かれたものであり、前記コアの厚さ方向の両側のコイル引回し部に対してそれぞれ円周方向の任意の位置で前記厚さ方向の外方から対向する状態で配置されており、前記遮蔽体は、コアの厚さ方向の外周側端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する弧状遮蔽体であり、前記ステータコイルに対する誘導加熱時には、前記ステータがその軸周りに回転されるように構成されている前項1または2に記載のステータコイルの加熱装置。
(5)環状コアに巻回されたステータコイルを、誘導加熱用コイルヘッドにより誘導加熱するステータコイルの加熱方法において、前記コアの厚さ方向の端面に作用する前記コイルヘッドによる磁束を、遮蔽体により遮蔽しながら、前記環状コアの厚さ方向の端面に臨出している環状のコイル引回し部に対して、コアの厚さ方向外方から誘導作用を及ぼしてコイルを加熱することを特徴とするステータコイルの加熱方法。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、ステータコイルを加熱炉を使用するこなく、誘導加熱用コイルヘッドを使って加熱するから、例えばコイルへのワニス含浸後の加熱硬化乾燥工程での作業性が改善される。しかも、加熱炉を利用した温風加熱方式により硬化乾燥させる場合のように、加熱処理時間が長くなりその分使用電力量が増えてコスト高になるといった不都合もなく、環境的上の問題もない。
【0013】
また、ステータコイルに通電する方法のように、自己発熱温度にばらつきが生じるといった問題もなく、良好な加熱処理が行える。
【0014】
とくに、誘導加熱用コイルヘッドで発生する磁束からコアの厚さ方向の端面が遮蔽体により遮蔽されるから、コアの端面が局部的に加熱されて熱変形などを起こすおそれが解消される。さらに、これにより、多くの磁束がステータコイルに作用するから、ステータコイルが効率よく加熱されて、ワニス等を速やかに硬化乾燥させることができる。
【0015】
前項(2)に記載の発明によれば、遮蔽体が誘導加熱用コイルヘッドに対して一体的に設けられているから、誘導加熱用コイルヘッドの設置に伴って遮蔽体を同時にセットすることができ、加熱準備作業の迅速化を図ることができる。
【0016】
前項(3)に記載の発明によれば、コアの厚さ方向の両側の端面に臨出する環状コイル引回し部と略同径の誘導加熱用コイルヘッドを使うから、ステータを固定したままで誘導加熱用コイルヘッドから発生する磁束により、コイル引回し部の全周を同時に加熱することができる。
【0017】
また、誘導加熱時に、環状遮蔽体により、コアの厚さ方向の端面の外周側を遮蔽されるから、各端面の熱変形が有効に防止される。
【0018】
前項(4)に記載の発明によれば、前記コイル引回し部の円周方向の任意の一部に誘導加熱用コイルヘッドを対向配置し、ステータコイルを軸周りに回転させて誘導加熱を行うから、コイル引回し部と同径のようなコイルヘッドを用いなくても容易に誘導加熱処理を行うことができる。
【0019】
前項(5)に記載の発明によれば、ステータコイルを加熱炉を使用するこなく、誘導加熱用コイルヘッドを使って加熱するから、例えばコイルへのワニス含浸後の加熱硬化乾燥工程を短時間で効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、この発明の実施形態に係るステータコイルの加熱装置を示す分解斜視図、図2は、同じくステータコイルの加熱装置をステータにセットした状態で示す平面図、図3は同じくステータコイルの加熱装置をステータにセットした状態で示す半切断面図である。
【0022】
この実施形態では、自動車用発電機のステータにおけるステータコイルを加熱する例で説明するが、これに限定されるものではない。
【0023】
図1〜図3において、このステータMは、複数の薄肉珪素鋼板を厚さ方向へ積層してなる環状のコアFと、このコアFに巻装された三相のステータコイルLとからなり、コアFの厚さ方向(軸方向:図の上下方向)の両側の端面Fa,Fbには、それぞれステータコイルLにおける環状のコイル引回し部La、Lbが臨出しており、これらコイル引回し部La、Lbを含めてステータコイルLの全体には、前工程でワニス(図示せず)が塗布・含浸されている。
【0024】
なお、Tは、前記ステータコイルLから引き出された三相外部端子である。
【0025】
前記ワニスが含浸されたステータコイルLを加熱するために、前記厚さ方向の両端側には、ステータコイルLの加熱装置A,Bがそれぞれ対向して配置されている(図1では、一方の加熱装置Aのみを示す)。
【0026】
両加熱装置A,Bは同じ構成であるから、以下においては、一方(上部側)の加熱装置Aを代表して説明する。
【0027】
前記加熱装置Aは、高周波誘導加熱装置で構成されており、図示しない高周波発振部からの出力で駆動される高周波誘導加熱用コイルヘッド1と、遮蔽体2とを備えている。
【0028】
高周波誘導加熱装置Aは、作業者が図示しない操作パネルからステータMの種類に応じた加熱温度、加熱時間などの加熱条件を設定できるようになっており、設定された加熱条件は、加熱チャートとして、記憶部(図示せず)に記憶されている。
【0029】
そして、加熱処理対象のステータMの種類に応じて、対応する加熱チャートを操作パネルから選択・指示して所望の加熱チャートを呼び出し、コンピュータ制御により、前記加熱チャートに基づいた条件でステータコイルLの加熱条件が実行されるようになっている。
【0030】
前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1は、前記環状になっているコイル引回し部Laと略同径で、同一平面上にあるいは筒状(この実施形態では円筒状)に数回(例えば2回巻)に形成されたものであり、前記コイル引回し部Laに対して同軸上でコアFの厚さ方向から外方から対向・配置されている。
【0031】
この高周波誘導加熱用コイルヘッド1の外周巻部1aの外周面には、複数、例えば4個のL形遮蔽体支持ブラケット4・・・が円周方向で等配されるとともに、各遮蔽体ブラケット4・・・の各垂直片部4aがろう付けで固定されている(図4参照)。
【0032】
なお、この高周波誘導加熱用コイルヘッド1の設置については、作業者が手作業で移動させてもよいし、あるいは専用のコイル保持手段を用意して自動的に移動させるようにしてもよく、それらは任意に選択可能である。
【0033】
高周波誘導加熱用コイルヘッド1の巻回数についても、この例の2回巻に限られるものではなく、希望するコイル加熱温度や処理速度などに応じて、任意に巻数の増減が可能である。
【0034】
前記遮蔽体2は、前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1から発生する高周波磁束に対して前記コアFの厚さ方向の一方(上部)の端面Faの外周側を遮蔽するものであり、例えばCu板を使用して前記ステータコイルLのコイル引回し部Laの環状径より大径の鍔形に形成されており、コイル引き回し部Laと干渉しないようになっている。前記コアFの端面Faの外周側に該厚さ方向外方から対向する状態で同軸状に配設されている。
【0035】
この遮蔽体2は、4個のL形遮蔽体支持ブラケット4・・・を介して前記加熱用コイルヘッド1の外周巻部1aの外周面に、コイルヘッド1とは電気的に絶縁状態で連結・保持されている。具体的には、遮蔽体2は、図4に示すように、前記4個のL形遮蔽体支持ブラケット4・・・の各水平片部4bに載置されて、樹脂(ビニール)ビス6により固定されている。
【0036】
なお、この遮蔽体2を高周波誘導加熱用コイル1の外周巻部1aの外周面に連結する手段は、この例の構造に限られるものではなく、遮蔽体2を高周波誘導加熱用コイル1に連結しなければならないものではなく、遮蔽体2を高周波誘導加熱用コイル1の外周巻部1aに対して一体的に保持できる構成であれば、任意の手段を採用可能である。
【0037】
つぎに、上記構成のステータコイルの加熱装置Aの動作について説明する。
【0038】
前記ステータコイルLにワニスが含浸されたステータMが搬入されて所定の加熱位置に置かれると、前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1を所定位置にセットする。このとき、高周波誘導加熱用コイルヘッド1に一体化されている遮蔽体2も、コアFの端面Faの外周側に対向して配置される。
【0039】
上記遮蔽体2を、高周波誘導加熱用コイルヘッド1とは別体のままで、専用の保持手段により設定位置に保持させるようにしてもよいが、この例のように、遮蔽体2を高周波誘導加熱用コイルヘッド1と一体化してあると、高周波誘導加熱用コイルヘッド1の設置に伴って遮蔽体2を同時にセットすることができ、加熱準備作業の迅速化を図ることができる。
【0040】
この状態で、高周波誘導加熱装置Aにおける高周波発信部を駆動すると高周波出力が高周波誘導加熱用コイルヘッド1に印加されるから、このコイルヘッド1から発生する高周波磁束により、ステータMにおけるステータコイルLに高周波誘導加熱が及ぼし、このステータコイルLが加熱され、これによってステータコイルLに含浸されたワニスが硬化乾燥される。
【0041】
前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1による高周波誘導加熱により、ステータコイルLが一定温度まで加熱されると、該コイルヘッド1による高周波誘導加熱を停止する。
【0042】
このように、ワニスが塗布・含浸されたステータコイルLに対して、高周波誘導加熱用コイルヘッド1を使用して高周波誘導加熱を行うことにより、ステータコイルLが直接的に加熱されるから、加熱炉を使って加熱する場合のように、長い加熱時間が不要で使用電力も減らすことができる。
【0043】
また、ステータコイルLに通電して自己発熱させる場合のように、自己発熱温度にばらつきが起きるといった問題もなく、ステータコイルLを良好に加熱することができる。
【0044】
ところで、前記遮蔽体2をセットしないままで前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1により、ステータコイルLのコイル引回し部Laを加熱すると、該コイルヘッド1で発生する高周波磁束の一部が前記コアFの厚さ方向の端面Faの特に外周側に作用して、この端面Faが局部的に加熱されて熱変形を起こすおそれがある。
【0045】
これに対して、この発明の実施形態では、前記コアFの厚さ方向の端面Faの外周側おに対向する位置にそれぞれ遮蔽体2を配設してあるから、前記コイルヘッド1から発生した高周波磁束が前記コアFの端面Faの外周側に作用しようとするのが遮蔽される。従って、前記コアFの端面Faの外周側が局部的に加熱されるのが阻止されて、それらの部位の熱変形が有効に防止される。
【0046】
また、前記高周波磁束からコアFの端面Faの外周側が遮蔽されることによって、前記高周波誘導加熱用コイルヘッド1からの高周波磁束の多くがステータコイルLに作用することになり、該ステータコイルLが効率的に加熱され、加熱処理時間の短縮化を図ることができる。
【0047】
図5は、この発明の他の実施形態を示す。
【0048】
図5において、高周波誘導加熱装置Aは、小形の高周波誘導加熱用コイルヘッド11を有している。この高周波誘導加熱用コイルヘッド11は、前記ステータコイルLの円周方向の任意の位置でコアFの厚さ方向の外方から対向して配置されている。なお、図5では図示していないが、コアFの厚さ方向の他方側(図5では下側)にも、同一構成の高周波誘導加熱装置Bが設置され、高周波誘導加熱用コイルヘッド11がコアFの厚さ方向の外方から対向して配置されている。
【0049】
これら高周波誘導加熱用コイルヘッド11は、任意のループ形状で同一平面上にあるいは筒状(例えば円筒状)に数回(例えば2回)巻かれたものである。
【0050】
また、この高周波コイルヘッド11の外周側にブラケット14を介して円弧状の遮蔽体13が連結されている。
【0051】
前記遮蔽体12は、例えばCu板から円弧状に形成されており、高周波誘導加熱用コイルヘッド11で発生した高周波磁束から前記コアFの厚さ方向の端面Faの外周側をそれぞれ遮蔽するものである。
【0052】
また、この高周波誘導加熱装置Aは、前記ステータMをチャックして軸周りに回転駆動可能なステータ回転駆動機構20を備えている。
【0053】
このステータ回転駆動機構20は、例えば、図6に示すように、前記ステータMにおけるコアFの中空部Fxに挿入された状態で図示しないモータなどの回転駆動装置によって駆動される駆動軸21と、この駆動軸21の先端側に装備されて、先端に押圧片22を有し、前記駆動軸21周りに等配された複数のステータチャック部材23とを備えている。
【0054】
このステータ回転駆動機構20は、前記駆動軸21を回転させると、その回転に伴って前記ステータチャック部材23が径方向外方へ伸長して、押圧片22を環状コアFの中空部Fxの内壁に圧接することにより、ステータMを軸周りに回転駆動するようになっている。
【0055】
この実施形態においては、高周波誘導加熱用コイルヘッド11により高周波誘導加熱を行う際には、該コイルヘッド11をステータコイルLのコイル引回し部Laに対して、円周方向の任意の位置で対向させた状態で、前記ステータMを軸周りに回転させることにより、ステータコイルLのコイル引回し部Laの全周が加熱されることになる。
【0056】
この場合、前記ステータMを回転させるから、先の実施例のような環状のコイルヘッド1よりも小形のコイルヘッド11を使用でき、遮蔽体12も円弧状の小形のもので対応できる。
【0057】
以上説明した実施形態では、高周波誘導加熱方式を採用したが、例えば商用電源周波数等の低周波誘導加熱方式を採用しても良い。また、図1〜図4の大径の加熱用コイルヘッド1を用いた例では、ステータMを停止状態でコイルLを加熱するものとしたが、ステータMを回転させても良い。
【0058】
また、ステータMの軸方向(厚さ方向)が垂直となる姿勢で加熱を行うものとしたが、ステータMの軸方向が水平となる姿勢で加熱を行っても良く、ステータMの姿勢は任意に設定すれば良い。この場合は、誘導加熱用コイルヘッドをステータの下側を避けて配置できるため、硬化前に低粘度化したワニス材等がコイルエンドやスロット部から垂れ落ちても誘導加熱用コイルヘッドに付着しないので、メンテナンス性もよい。
【0059】
また、環状コアFの厚さ方向の端面の外周側のみを遮蔽するように遮蔽体2、12を配置したが、必要に応じて内周側も遮蔽しても良い。しかし、一般には、環状コアFの厚さ方向の端面の外周側の方が露出面積が大きく、また内周側にはコイルが巻回されており、この巻回されたコイル部分にも磁束を作用させて誘導加熱を生じさせることが望ましいこと等から、この実施形態のように、環状コアFの厚さ方向の端面の外周側のみを遮蔽するのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施形態に係るステータコイルの加熱装置を示す分解斜視図である。
【図2】ステータコイルの加熱装置を、ステータにセットした状態で示す平面図である。
【図3】ステータコイルの加熱装置を、ステータにセットした状態で示す半切断面図である。
【図4】ステータコイルの加熱装置の動作説明を兼ねた要部の拡大図である。
【図5】この発明の他の実施形態に係るステータコイルの加熱装置を、ステータにセットした状態で示す斜視図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係るステータコイルの加熱装置におけるステータ回転駆動機構を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1,11 高周波誘導加熱用コイルヘッド
2,12 遮蔽体
A,B 高周波誘導加熱装置
F ステータにおけるコア
Fa,Fb コアにおける厚さ方向の端面
L ステータにおけるステータコイル
La,Lb ステータコイルにおけるコイル引回し部
M ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状コアに巻回されたステータコイルを加熱するステータコイルの加熱装置において、
前記環状コアの厚さ方向の端面に臨出している環状のコイル引回し部に対して、コアの厚さ方向外方から誘導作用を及ぼしてコイルを加熱する誘導加熱用コイルヘッドと、
前記コアの厚さ方向の端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する遮蔽体と、
を備えていることを特徴とするステータコイルの加熱装置。
【請求項2】
前記遮蔽体は、前記誘導加熱用コイルヘッドに対して一体的に設けられている請求項1に記載のステータコイルの加熱装置。
【請求項3】
前記コイルヘッドは、前記コイル引回し部の環状径と略同径で同一平面上にあるいは筒状に巻かれたものであり、前記コアの厚さ方向の両側のコイル引回し部に対してそれぞれ厚さ方向の外方から対向する状態でコアと同軸上に配置されており、
前記遮蔽体は、コアの厚さ方向の外周側端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する環状遮蔽体である請求項1または2に記載のステータコイルの加熱装置。
【請求項4】
前記コイルヘッドは、ループ形状で同一平面上にあるいは筒状に巻かれたものであり、前記コアの厚さ方向の両側のコイル引回し部に対してそれぞれ円周方向の任意の位置で前記厚さ方向の外方から対向する状態で配置されており、
前記遮蔽体は、コアの厚さ方向の外周側端面を前記コイルヘッドによる磁束から遮蔽する弧状遮蔽体であり、
前記ステータコイルに対する誘導加熱時には、前記ステータがその軸周りに回転されるように構成されている請求項1または2に記載のステータコイルの加熱装置。
【請求項5】
環状コアに巻回されたステータコイルを、誘導加熱用コイルヘッドにより誘導加熱するステータコイルの加熱方法において、
前記コアの厚さ方向の端面に作用する前記コイルヘッドによる磁束を、遮蔽体により遮蔽しながら、前記環状コアの厚さ方向の端面に臨出している環状のコイル引回し部に対して、コアの厚さ方向外方から誘導作用を及ぼしてコイルを加熱することを特徴とするステータコイルの加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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