説明

ストッパ付ワイヤ、駆動装置、および弁体駆動装置

【課題】ストッパの優れた固定強度を発現するストッパ付ワイヤを提供すること。
【解決手段】複数の細線11からなるワイヤ10と、このワイヤ10に接続される接続部材のワイヤ10からの抜けを防止するストッパ20と、を備え、ワイヤ10を構成する複数の細線11とストッパ20との間にろう材30が介在しているストッパ付ワイヤ1とした。このワイヤ10は、複数の細線11を撚り合わせてなるものであるとよい。また、ストッパ20は、ワイヤ10にかしめられており、そのかしめられたストッパ20とワイヤ10との間にろう材30が介在しているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動対象物などに引っ掛けられるストッパが固定されたワイヤ、これを備えた駆動装置、および弁体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの駆動力によって回転するプーリで巻き上げられるワイヤが記載されている。このワイヤには、端部をプーリや駆動対象物(接続部材)に引っ掛けるためのストッパが固定されている。特許文献1において、ストッパはスリーブ状の部材を圧着することによってワイヤに固定されているが、ストッパに掛かる負荷の増大などに対応するため、さらなる固定強度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、ストッパの優れた固定強度を発現するストッパ付ワイヤを提供することにある。また、このようなストッパ付ワイヤを備えた駆動装置および弁体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明にかかるストッパ付ワイヤは、複数の細線からなるワイヤと、このワイヤに接続される接続部材の前記ワイヤからの抜けを防止するストッパと、を備え、前記ワイヤを構成する複数の細線と前記ストッパとの間にろう材が介在していることを要旨とするものである。
【0006】
上記構成によれば、ワイヤを構成する複数の細線の間にワイヤとストッパとを接合するろう材が入り込んだ状態となるから、ストッパがワイヤから抜けようとする方向の力に対する抵抗力(摩擦力等)が増大する。つまり、ストッパの優れた固定強度を発現するストッパ付ワイヤとなる。また、ワイヤと細線の間に入り込んだろう材によってストッパ部分の肉厚が厚くなり、強度が向上する。
【0007】
またこの場合、前記ワイヤは、複数の細線を撚り合わせてなるものであればよい。
【0008】
上記構成によれば、ワイヤを構成する複数の細線同士の間(谷間)が、ワイヤの軸線(ストッパ内のワイヤに掛かる力の方向)に対して傾いた方向に形成される。したがって、当該傾いた方向に形成される谷間の間に存在するろう材がワイヤに引っ掛かった状態となるから、ストッパがワイヤから抜けようとする方向の力に対する抵抗力がさらに大きくなる。
【0009】
また、前記ストッパは、前記ワイヤにかしめられており、そのかしめられたストッパと前記ワイヤとの間に前記ろう材が介在していればよい。
【0010】
上記構成によれば、かしめられた部分におけるワイヤとストッパとの隙間が小さくなるから、ろう材が入り込みやすい。また、かしめる前の状態のストッパにおけるワイヤが入り込む部分を大きくすることができるから、ストッパをワイヤの所定位置に挿入する作業が容易になる。
【0011】
また、前記ろう材のろう付けが、前記ワイヤにかしめられた前記ストッパを溶融したろうの中に浸すことによってなされたものであればよい。
【0012】
上記構成によれば、ストッパの外周面もろう材で覆われるため、ストッパが腐食しにくい。また、溶融したろうの中に浸す作業は、ストッパがワイヤにかしめられた状態(仮固定された状態)で行うことができるため、当該作業の作業性に優れる。
【0013】
また、前記ワイヤの表面における前記ろう材のぬれ性は、前記ストッパの表面における前記ろう材のぬれ性よりも低ければよい。
【0014】
このようにワイヤの表面(酸化皮膜)のぬれ性が低ければ、ワイヤを構成する複数の細線同士の間を伝ってろう材がワイヤの長さ方向に広がってしまうことを抑制することができる。したがって、ワイヤにおけるストッパが固定された部分よりも基端側の部分がろう材によって硬くなってしまうことが抑制され、ワイヤの良好な屈曲性が保たれる。また、ろう付けが溶融されたろう材の中にストッパを浸すことによってなされる場合には、細線同士の間を伝ってろう材がワイヤの長さ方向に広がることが抑制されるため、作業者がワイヤを保持している部分までろう材の熱が伝わりにくく、ろう付け作業時の火傷などが防止される。
【0015】
また、前記ストッパは、筒状であればよい。
【0016】
このようにストッパが筒状であれば、ワイヤとストッパの対向する面積が増え、ストッパの固定強度がさらに向上する。
【0017】
また、前記ストッパは、板状体が丸められて筒状に形成されたものであればよい。
【0018】
上述したように、ワイヤとストッパはろう付けされるため、板状体を丸めてストッパを形成しても(例えば、切れ目の無い筒状体でストッパを構成した場合よりも)強度が著しく低下する等の問題が発生するおそれはない。よって、このような板状体を丸めたものをストッパとすることにより、ストッパを安価に構成できる。
【0019】
また、本発明にかかる駆動装置は、ワイヤの表面におけるろう材のぬれ性がストッパの表面におけるろう材のぬれ性よりも低いストッパ付ワイヤと、このストッパ付ワイヤの基端側に設けられた前記ストッパに係合された、駆動源によって回転することにより前記ワイヤを巻き込む前記接続部材としてのプーリと、を備えることを要旨とするものである。
【0020】
上記駆動装置では、ワイヤの屈曲性が維持されるから(細線の間に入り込んだろう材でワイヤが硬くなることがないから)、ワイヤを巻き込むプーリおよびそれを回転させる駆動源に掛かる負荷の増大を抑制できる。
【0021】
また、本発明にかかる弁体駆動装置は、上記駆動装置と、前記ストッパ付ワイヤの先端側に設けられた前記ストッパに係合された、流路を開閉する前記接続部材としての弁体と、を備え、前記ワイヤはステンレスで形成され、そのワイヤが前記プーリに巻き込まれることにより、前記弁体が流水路を開状態とすることを要旨とするものである。
【0022】
上記弁体駆動装置によれば、ワイヤが水で腐食することを防止することができる。
【0023】
またこの場合、前記弁体は、洗濯機の排水流路を開閉するものであればよい。
【0024】
洗濯機が脱水運転を行っている際には、弁体は排水流路を開状態としなければならない。また、かかる脱水運転時には振動が発生する。このように、振動が発生する環境下で閉方向に付勢された弁体を開状態に維持しなければならないため、ワイヤに固定されたストッパにかかる負荷が大きくなるが、上記構成ではワイヤに対するストッパの固定強度が高いため問題がない。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるストッパ付ワイヤ、駆動装置、および弁体駆動装置によれば、
ワイヤを構成する複数の細線の間にワイヤとストッパとを接合するろう材が入り込んだ状態となるから、ワイヤに対するストッパの固定強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態にかかるストッパ付ワイヤのろう付け前の状態を示したものであり、図1(b)は本発明の実施形態にかかるストッパ付ワイヤを示したものであり、図1(c)は本発明の実施形態にかかかるストッパ付ワイヤの変形例を示したものである。
【図2】本発明の実施形態にかかるストッパ付ワイヤのストッパ部分の断面図(図1(b)のA−A線断面図)である。
【図3】ストッパ付ワイヤの第一の組立手順を説明するための図である。
【図4】ストッパ付ワイヤの第二の組立手順を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる駆動装置(弁体駆動装置)の外観図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる駆動装置(弁体駆動装置)が備えるプーリおよびストッパ付ワイヤを介してプーリに接続された弁体(被駆動体)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1および図2に示す本発明の実施形態にかかるストッパ付ワイヤ1は、ワイヤ10およびストッパ20を備える。ワイヤ10は、金属製の複数の細線11が撚り合わされてなる。ストッパ20は、ワイヤ10の端部に固定された筒状の部材である。具体的には、金属製の板材(板状体P;図4参照)の両端を突き合わせるように屈曲させることによって筒状に形成された部材である。したがって、当該突き合わされた両端同士の間には微少な隙間(切れ目)が存在する。
【0028】
ストッパ20は、ワイヤ10にかしめられている。本実施形態では、突き合わされた両端部分の略中央が押し潰されることによってストッパ20がワイヤ10にかしめられている。このようにしてかしめられたストッパ20とワイヤ10の間には、ろう材30が介在されている(両者の間に入り込んでいる)。ろう材30は、ストッパ20の押し潰された部分21とワイヤ10との間の相対的に小さな隙間、およびそれ以外の相対的に大きな隙間に入り込んでいる。
【0029】
また、ろう材30は、ワイヤ10を構成する複数の細線11同士の間(谷間12)にも入り込んでいる。上述したように、ワイヤ10は複数の細線11が撚り合わされてなるものであるから、上記谷間12はワイヤ10の軸線方向に対して傾いている。ろう材30は、この傾いた谷間12に入り込んだ状態にある。用いられるろう材30としては、真鍮、銀、アルミニウム、半田などが挙げられるが、溶融温度が低い半田が好ましい。ろう材30によって接合される母材(ワイヤ10およびストッパ20)は、ろう材30よりも高い溶融温度を有する材質で形成しなければならないところ、溶融温度の低い半田を選択すればその材質の選択余地が広まるからである。また、後述するように、溶融したろうの中にワイヤ10を浸すろう付け作業を行う場合に作業が安全になるからである。
【0030】
ここで、ワイヤ10は、その表面(酸化皮膜)におけるろう材30のぬれ性が、ストッパ20の表面(酸化皮膜)におけるろう材30のぬれ性よりも低くなるような材質に設定されている。換言すれば、ワイヤ10の表面の酸化皮膜がストッパ20の表面の酸化皮膜よりもろう付け時に除去されにくいということである。ワイヤ10やストッパ20の表面にメッキ等の表面処理を施さない場合には、表面にワイヤ10やストッパ20を構成する金属材料の酸化被膜が形成されることになるし、ワイヤ10やストッパ20にメッキ等の表面処理を施す場合には、表面に当該表面処理材料の酸化被膜が形成されることになる。例えば、ろう材30として半田を選定した場合には、ワイヤ10(細線11)はクロムの水和オキシ酸化物を主体とする酸化皮膜等が構成されたステンレスを用い、ストッパ20の表面に酸化皮膜が形成されない錫めっきを施せばよい。
【0031】
このような構成のストッパ付ワイヤ1の組立手順の一例(第一の組立手順)としては図3に示すような組立手順が考えられる。まず、ストッパ20となる板状体を屈曲させ、筒状とする。この筒状のストッパ20にワイヤ10を挿入する。ワイヤ10を挿入した状態で筒状のストッパ20の一部(隙間部分の中央)を押し潰す。これによりストッパ20がワイヤ10にかしめられた状態(ストッパ20がワイヤ10に仮固定された状態)となる。この後、ワイヤ10にかしめられたストッパ20を溶融したろうの中に浸す。ろう材30は、ワイヤ10とストッパ20との間に進入して固着する。具体的には、ストッパ20がかしめられた部分における相対的に小さな隙間、およびそれ以外の相対的に大きな隙間に進入して固着する。これにより、ワイヤ10とストッパ20が接合される。また、ストッパ20の外周面もろう材30で覆われた状態となる。
【0032】
また、異なる組立手順(第二の組立手順)としては図4に示すような手順が考えられる。まず、ストッパ20となる板状体の上にワイヤ10を載置する。この状態で板状体をその両端を近づけるように屈曲させつつ、ワイヤ10にかしめる。例えば、U字状の窪みが形成された下型および上型によって板状体を挟み込むことにより板状体を屈曲させつつワイヤ10にかしめる。これにより、板状体がワイヤ10を包み込むような筒状となると同時にワイヤ10にかしめられる。この後、上記第一の組立手順と同様に、ワイヤ10にかしめられたストッパ20を溶融したろうの中に浸す。これにより、ろう材30がワイヤ10とストッパ20との間に進入して固着し、ワイヤ10とストッパ20が接合される。また、ストッパ20の外周面もろう材30で覆われた状態となる。このような手順を採用することにより、ワイヤ10の太さに合った形状にストッパ20が変形するから、ワイヤ10とストッパ20との隙間をより小さくすることができる。また、ストッパ20にワイヤ10を通す作業が不要となる。さらには、ワイヤ10の先端がほつれていても、ストッパ20(板状体)で当該ほつれたワイヤ10で包む作業が簡単である。
【0033】
なお、ワイヤ10にストッパ20がかしめられた状態で、ろう材30は、ワイヤ10にかしめられたストッパ20を溶融したろうの中に浸すことによって付けられることを説明したが、ワイヤ10とストッパ20の間にろう材30を注入してもよい。そうすると、図1(c)に示すような、ワイヤ10とストッパ20の間にのみろう材30が存在するストッパ付ワイヤ1(変形例にかかるストッパ付ワイヤ1a)が得られる。
【0034】
以上説明した本実施形態にかかるストッパ付ワイヤ1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0035】
本実施形態にかかるストッパ付ワイヤ1は、ワイヤ10を構成する複数の細線11の間にワイヤ10とストッパ20とを接合するろう材30が入り込んだ状態となるから、ストッパ20がワイヤ10から抜けようとする方向の力に対する抵抗力(摩擦力等)が増大する。つまり、ストッパ20の優れた固定強度を発現するストッパ付ワイヤ1となる。また、ワイヤ10と細線11の間に入り込んだろう材30によってストッパ20部分の肉厚が厚くなり、強度が向上する。
【0036】
また、ワイヤ10は、複数の細線11を撚り合わせてなるものであるため、ワイヤ10を構成する複数の細線11同士の間(谷間12)が、ワイヤ10の軸線に対して傾いた方向に形成される。したがって、当該傾いた方向に形成される谷間12の間に存在するろう材30がワイヤ10に引っ掛かった状態となるから、ストッパ20がワイヤ10から抜けようとする方向の力に対する抵抗力がさらに大きくなる。
【0037】
また、ストッパ20はワイヤ10にかしめられており、そのかしめられた部分におけるワイヤ10とストッパ20との隙間が小さくなるから、ろう材30が入り込みやすい。また、ストッパ20が筒状に形成された後にワイヤ10が挿入される第一の組立手順を採用する場合、かしめる前の状態のストッパ20におけるワイヤ10が入り込む部分(筒の内側の空間)を大きくすることができるから、ストッパ20をワイヤ10の所定位置に挿入する作業が容易になる。
【0038】
また、ろう材30のろう付けがワイヤ10にかしめられたストッパ20を溶融したろうの中に浸すことによってなされる場合、ストッパ20の外周面もろう材30で覆われた状態となり、ストッパ20が腐食しにくい。また、ろう付け前にストッパ20がワイヤ10にかしめられた状態(仮固定された状態)となるため、当該ろう付け作業の作業性に優れる(ストッパ20が溶融したろうの中に落下してしまうことなどが防止される)。
【0039】
また、ワイヤ10の表面におけるろう材30のぬれ性は、ストッパ20の表面におけるろう材30のぬれ性よりも低いため、ワイヤ10を構成する複数の細線11同士の間を伝ってろう材30がワイヤ10の長さ方向に広がってしまうことを抑制することができる。したがって、ワイヤ10におけるストッパ20が設けられた部分より基端側の部分がろう材30によって硬くなることが抑制され、ワイヤ10の良好な屈曲性が保たれる。また、ろう付けが溶融されたろう材30の中にストッパ20を浸すことによってなされる場合には、細線11同士の間を伝ってろう材30がワイヤ10の長さ方向に広がることが抑制されるため、作業者がワイヤ10を保持している部分までろう材30の熱が伝わりにくく、ろう付け作業時の火傷などが防止される。
【0040】
また、ストッパ20は筒状に形成されるため、ワイヤ10とストッパ20の対向する面積が増え、ストッパ20の固定強度がさらに向上する。
【0041】
また、ストッパ20は、板状体が丸められて筒状に形成されたものであるが、ワイヤ10とストッパ20はろう付けされるため、(例えば、切れ目の無い筒状体でストッパ20を構成した場合よりも)強度が著しく低下する等の問題が発生するおそれはない。よって、このような板状体を丸めたものをストッパ20とすることにより、ストッパ20を安価に構成できる。
【0042】
次に、本発明の実施形態にかかる駆動装置2および弁体駆動装置3について説明する。本実施形態にかかる駆動装置2は、図5に示すように、上記ストッパ付ワイヤ1と、ケース80内に収容されたモータ90のような駆動源により(歯車などの動力伝達要素91を介して)回転するプーリ40とを備える。ストッパ20はワイヤ10の基端側に設けられており、このワイヤ10の基端側に設けられたストッパ20が接続部材としてのプーリ40に係合されている。例えば、図6に示すように、プーリ40にはストッパ20が係合可能な係合凹部41が形成されており、この係合凹部41内に嵌め込まれるようにしてストッパ20が係合される。駆動源によってプーリ40が回転(正転)するとその外周の巻き込み部42にワイヤ10が巻き込まれ、ワイヤ10の先端に接続された被駆動体50が移動する。
【0043】
このような回転するプーリ40によってワイヤ10が巻き込まれる構成である場合、ワイヤ10の屈曲性(屈曲しやすさ)が重要である。屈曲しにくい(硬い)ワイヤ10を用いると、プーリ40を回転させる駆動源にかかる負荷が大きくなってしまうからである。本実施形態では、ワイヤ10の表面におけるろう材30のぬれ性は、ストッパ20の表面におけるろう材30のぬれ性よりも低いため、ワイヤ10を構成する複数の細線11同士の間を伝ってろう材30がワイヤ10の長さ方向に広がってしまうことが抑制される。つまり、ワイヤ10におけるストッパ20が固定された部分以外の部分がろう材30によって硬くなることが抑制され、ワイヤ10の良好な屈曲性が保たれている。したがって、ワイヤ10を巻き込むプーリ40およびそれを回転させる駆動源に掛かる負荷の増大を抑制できる。
【0044】
本発明の実施形態にかかる弁体駆動装置3は、上記駆動装置2および被駆動体50である弁体を備える。被駆動体50である弁体は、ストッパ付ワイヤ1の先端に接続されている。具体的には、ワイヤ10の先端側に設けられたストッパ20に接続部材としての弁体が係合されることによってストッパ付ワイヤ1に接続されている。このストッパ20を利用した弁体の接続構造は、どのような構成を採用してもよい。また、ストッパ付ワイヤ1のワイヤ10は、水で腐食することを防止するためにステンレスで形成されている。駆動源によってプーリ40が回転(正転)し、プーリ40の外周の巻き込み部42ワイヤ10が巻き込まれると、ストッパ20に係合された弁体が引っ張られ、流路を開状態とする。駆動源が停止すると、流路に流れ込む流体圧によってプーリ40が回転(逆転)し、弁体が閉状態に戻る。
【0045】
このような弁体駆動装置3は、例えば洗濯機の排水流路を開閉する弁体を駆動させる装置として適用される。洗濯機に適用される場合において、弁体は閉状態側に付勢されており、洗濯機が脱水運転を行っている際には弁体は排水流路を開状態としなければならず、この脱水運転時には振動が発生する。つまり、洗濯機の弁体駆動装置3は、振動が発生する環境下で閉方向に付勢された弁体を開状態に維持しなければならないため、ワイヤ10に固定されたストッパ20にかかる負荷が大きくなる。本実施形態では、上記のようにワイヤ10に対するストッパ20の固定強度に優れるストッパ付ワイヤ1を用いているため、当該ストッパ20に掛かる負荷によってストッパ20がワイヤ10から外れてしまうといったおそれはない。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ストッパ付ワイヤ
10 ワイヤ
11 細線
12 細線同士の間(谷間)
20 ストッパ
30 ろう材
2 駆動装置
40 プーリ(接続部材)
3 弁体駆動装置
50 被駆動体(接続部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細線からなるワイヤと、
このワイヤに接続される接続部材が前記ワイヤから抜けることを防止するストッパと、を備え、
前記ワイヤを構成する複数の細線と前記ストッパとの間にろう材が介在していることを特徴とするストッパ付ワイヤ。
【請求項2】
前記ワイヤは、複数の細線を撚り合わせてなることを特徴とする請求項1に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項3】
前記ストッパは、前記ワイヤにかしめられており、そのかしめられたストッパと前記ワイヤとの間に前記ろう材が介在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項4】
前記ろう材のろう付けが、前記ワイヤにかしめられた前記ストッパを溶融したろうの中に浸すことによってなされたものであることを特徴とする請求項3に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項5】
前記ワイヤの表面における前記ろう材のぬれ性は、前記ストッパの表面における前記ろう材のぬれ性よりも低いことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項6】
前記ストッパは、筒状であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項7】
前記ストッパは、板状体が丸められて筒状に形成されたものであることを特徴とする請求項6に記載のストッパ付ワイヤ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のストッパ付ワイヤと、
このストッパ付ワイヤの基端側に設けられた前記ストッパに係合された、駆動源によって回転することにより前記ワイヤを巻き込む前記接続部材としてのプーリと、を備えた駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載の駆動装置と、
前記ストッパ付ワイヤの先端側に設けられた前記ストッパに係合された、流路を開閉する前記接続部材としての弁体と、を備え、
前記ワイヤはステンレスで形成され、
そのワイヤが前記プーリに巻き込まれることにより、前記弁体が流水路を開状態とすることを特徴とする弁体駆動装置。
【請求項10】
前記弁体は、洗濯機の排水流路を開閉するものであることを特徴とする請求項9に記載の弁体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24410(P2013−24410A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163318(P2011−163318)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)