説明

ストレイナー装置

【課題】スナッピーをストレイナー装置に対してボルトを用いずにワンタッチで取付けることができ、スナッピーの取付け、取外し作業の容易性および装置自体の取扱性を向上させる。
【解決手段】ドラム1の胴本体2の外周面に固定される固定ベース15に上下動自在な移動ベース16を取付け、この移動ベース16に支持部材33を固定する。 スナッピー7の一端側に設けられている連結部材13Aを挾持する第1、第2の挾持部材31,32を締付けボルト35によって締結する。これらの挾持部材31,32は、支持部材33の支持用溝41に挿入され、永久磁石45の吸引力によって支持用溝41内に固定されることにより、支持用溝41からの脱落が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させるストレイナー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スネアードラムは、複数本の細い響線で構成されたスナッピーをストレイナー装置によって非打面側、すなわち裏面側ドラムヘッドまたは打面側(表面側)ドラムヘッドと裏面側ドラムヘッドの双方に対して選択的に接触離間させることにより、ドラムヘッドの振動を響線に伝えて楽器に特有なパラパラという軽快な音色をもたらす、いわゆるタブリング効果と称する特殊音響効果を得るようにしている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
図5は裏面側のドラムヘッドに対してスナッピーを装着した従来のスネアードラムを示す外観斜視図、図6はスナッピーのストレイナー装置に対する取付構造を示す分解斜視図である。これらの図において、1はスネアドラム、2は両端が開放した円筒状の胴本体、3は胴本体2の裏面側開口部を覆う裏面側ドラムヘッド、4は胴本体2の各開口端部に嵌装されたフープ(締枠)、5はラグ、6はフープ4とラグ5を連結する締めボルト、7は裏面側ドラムヘッド3に対して取付けられるスナッピー、8はスナッピー7の可動側端部7Aを保持する第1のストレイナー、9はスナッピー7の固定側端部7Bを保持する第2のストレイナーであり、これらのストレイナー8,9によってスナッピー7のストレイナー装置を構成している。
【0004】
前記スナッピー7は、長手方向と直交する方向に所定の間隔を保って並設された複数本の細い響線11と、これら響線11の各端部がそれぞれ半田付けによって固定された左右一対のスナッピープレート12A,12Bと、各スナッピープレート12A,12Bにそれぞれ取付けられた可撓性を有する連結部材13A,13B(13Bは図示せず)とで構成されている。連結部材13A(13Bも同様)は、2個の挾持部材(以下、第1、第2の挾持部材という)14A,14Bによって挟持されており、これらの挾持部材14A,14Bが前記第1のストレイナー8に着脱可能に連結されている。
【0005】
前記第1のストレイナー8は、前記スナッピー7の一端部(可動側端部)7Aを裏面側ドラムヘッド3に対して選択的に接触離間させるもので、前記一対の挾持部材14A,14Bと、胴本体2の外周に固定された固定ベース15と、この固定ベース15に対して図6の矢印A、Bで示す上下方向、言い換えればスナッピー7がドラムヘッド3に対して接近離間する方向に移動自在に取付けられた移動ベース16と、切替レバー17Aの操作によって前記移動ベース16を前記固定ベース15に対して上下移動させ前記スナッピー7の可動側端部7Aを裏面側ドラムヘッド3に対して接触または離間させるスイッチ機構17と、前記移動ベース16を同じく前記固定ベース15に対して上下移動させ前記スナッピー7の張力を調節する張力調節用ねじ18とで構成されている。前記一対の挟持部材14A,14Bは、前記連結部材13Aを挟持した状態で移動ベース16の下端部に2本の締付け角ボルト19により共締め固定されている。
【0006】
一方、前記第2のストレイナー9は、前記第1のストレイナー8とは異なりスナッピー7の他端部(固定側端部)7Bを裏面側ドラムヘッド3に対して接触離間させる機構とスナッピーの張力を調節する手段を備えていないため、胴本体2に固定された固定ベースと、前記スナッピー7の固定側端部7Bに設けられている連結部材を挟持する一対の挾持部材とで構成されている。
【0007】
このような第1、第2のストレイナー8,9からなるストレイナー装置を備えたスネアドラム1において、スナッピー7を使用しないで演奏するときは、スイッチ機構17の切替レバー17Aを手で所定角度回動させる。切替レバー17Aが回動すると、移動ベース16は、固定ベース15に沿って下降し、スナッピー7の可動側端部7Aを引き下げ、スナッピー7を緊張状態から解放する。このため、スナッピー7は自重によって垂れ下がって裏面側ドラムヘッド3から離間し、もってスネアドラム3がスナッピー7を使用しない演奏状態に切り替えられる。
【0008】
このような状態から切替レバー17Aを上記とは反対方向に所定角度回動させて元の位置に復帰させると、移動ベース16は元の高さ位置に引き上げられてスナッピー7を緊張させ、裏面側ドラムヘッド3に接触させる。したがって、スネアドラム1はスナッピー7を使用しない演奏状態からスナッピーを使用する演奏状態に切り替えられる。この接触状態で表面側ドラムヘッドを打撃すると、その振動が裏面側ドラムヘッド3を介して響線11に伝達されるため、響線11も振動して楽器に特有なパラパラという軽快な音色の特殊音響効果が得られる。
【0009】
裏面側ドラムヘッド3を他のドラムヘッドと交換する際には、先ず締付けボルト19を緩めてスナッピー7をストレイナー装置から外す。そして、締めボルト6をラグ5から外してフープ4を胴本体2から外し、裏面側ドラムヘッド3を別のドラムヘッドと交換する。裏面側ドラムヘッドの交換が終了すると、再度スナッピー7を上記とは反対の手順でストレイナー装置に装着する。
【0010】
【特許文献1】実公昭58−50372号公報
【特許文献2】米国特許明細書第6008445号
【特許文献3】米国特許明細書第5844157号
【特許文献4】特開2005−202063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来の第1のストレイナー8(第2のストレイナー9も同様)に対するスナッピー7の取付構造は、スナッピー7の各端部に連繋されている連結部材13Aを一対の挟持部材14A,14Bによって挟持し、これら挟持部材14A,14Bを2本の締付け角ボルト19によって移動ベース16(第2のストレイナー9の場合は固定ベース)の下端部に、ドラムキー、スパナ等の工具を用いて共締め固定している。このため、スナッピー7を他の種類のスナッピーと交換したり、あるいは裏面側ドラムヘッド3を別のドラムヘッドと交換するとき、2本のボルト19を緩めてスナッピー7をストレイナー装置から外さないと交換することができず、また、交換後は再び連結部材13Aを一対の挟持部材14A,14Bによって挟持し、これら挟持部材14A,14Bを2本の締付け角ボルト19によって移動ベース16に固定しなければならないため、その作業が煩わしいという問題があった。
【0012】
また、連結部材13Aを一対の挟持部材14A,14Bによって再度挟持したとき、挟持部材14A,14Bによる連結部材13Aの挾持位置が変わると、張力調節用ねじ18によってスナッピー7の張力を再調節する必要が生じ、裏面側ドラムヘッド3の交換作業に長時間を要するという問題もあった。
【0013】
そこで、このような問題を解決するために、例えば前記特許文献4に記載されているストレイナー装置は、1本のボルトによって第1の挾持部材を移動ベースに固定するようにしている。このようなストレイナー装置によれば、挾持部材の移動ベースに対する取付けを1本のボルトで行えるため、上記した従来装置に比べてスナッピーの取付け、取外し作業の時間を短縮することができるという利点がある。
【0014】
また、第1、第2の挾持部材によって連結部材を挾持した状態のままで第1、第2の挾持部材を移動ベースから取り外すことができるようにしているため、裏面側ドラムヘッドの交換時等に連結部材を第1、第2の挾持部材から外す必要もなく、スナッピーの張力の再調整が不要である。
【0015】
しかしながら、引用文献4に記載されているストレイナー装置は、依然としてボルトを用いているため、その締結、取外し作業が煩わしいという点では図5および図6に示した従来装置と五十歩百歩であり、さらなるスナッピーの交換作業の容易性、ないしストレイナー装置の取扱性の改善が要請されている。
【0016】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、スナッピーをストレイナー装置に対してボルトを用いずにワンタッチで取付けることができ、スナッピーの取付け、取外し作業の容易性および装置自体の取扱性を向上させたストレイナー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために第1の発明は、スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれかの挾持部材を永久磁石の吸引力によって前記支持部材に固定したものである。
【0018】
第2の発明は、前記挟持部材および前記支持部材のうちいずれか一方の部材を磁性材料によって形成し、他方の部材に永久磁石を設けたものである。
【0019】
第3の発明は、前記挟持部材および前記支持部材のうちのいずれか一方の部材を磁性材料によって形成し、他方の部材を永久磁石で構成したものである。
【0020】
第4の発明は、スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれか一方の挾持部材を弾性変形自在な係合片によって前記支持部材に着脱可能に固定したものである。
【0021】
第5の発明は、スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれか一方の挾持部材を係合凹部と係合突部との係合によって前記支持部材に着脱可能に固定したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、2個の挾持部材を永久磁石、係合片または係合凹部と係合突部によって支持部材に固定するようにしているので、ボルトやスパナ等の工具を一切必要とせず、第1、第2の挾持部材をワンタッチで着脱することができ、スナッピーや裏面側ドラムヘッドの交換作業の容易性および装置の取扱性を向上させることができる。
【0023】
磁性材料としては、比透磁率(μs )が1より非常に大きい強磁性体を用いることが望ましい。強磁性体としては、例えば鉄(μs =100〜10000)、ニッケル(μs =180)、コバルト(μs =270)、マンガン(μs =4000)や、これらの化合物が用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るストレイナー装置の第1の実施の形態を示す断面図、図2は第1のストレイナーの分解斜視図である。なお、図5および図6に示した構成部品と同一のものについては、同一符号をもって示し、その説明を適宜省略する。
【0025】
これらの図において、参照符号1はスネアドラム、20はスナッピー7を裏面側ドラムヘッド3に対して選択的に接触離間させるストレイナー装置で、このストレイナー装置20は、スネアドラム1の胴本体2の外周面で裏面側ドラムヘッド3側の開口部付近に互いに対向するように周方向に180°離間して設けられた第1、第2のストレイナー21,22を備えている。
【0026】
前記スナッピー7は、図5および図6に示した従来のスナッピー7と同一構造であって、長手方向と直交する方向に所定の間隔をおいて並設された複数本の細い響線11と、これら響線11の各端部がそれぞれ半田付けによって固定された左右一対のスナッピープレート12A,12Bと、各スナッピープレート12A,12Bにそれぞれ取付けられた可撓性を有する連結部材13A,13Bとで構成されている。各連結部材13A,13Bは、適宜な長さを有する細い紐やテープからなり、長手方向中央部aがスナッピープレート12A,12Bの各端部にそれぞれ形成した2つの挿通孔23に挿通されて連結されている。このようなスナッピー7は、裏面側ドラムヘッド3の表面に中心を通るように径方向に張設されて各スナッピープレート12A,12Bがドラムヘッド3の表面外周縁部にそれぞれ接触し、各連結部材13A,13Bが締め枠4に設けた開口部27を通って上方に導かれ、前記第1、第2のストレイナー21,22にそれぞれ連結されている。
【0027】
前記第1のストレイナー21は、スナッピー7の可動側端部7Aを裏面側ドラムヘッド3に対して選択的に接触または離間させるもので、前記胴本体2に複数個のボルト24とナット(図示せず)によって固定された固定ベース15を備えている。
【0028】
前記固定ベース15は、合成樹脂等によって内部が空洞の直方体に形成され、胴本体2の外周面に密接する背面25aに前記ボルト24が螺合するナット(図示せず)が埋設されている。前記ボルト24は、胴本体2に設けた取付孔25を内側から貫通して前記固定ベース15の背面15aに埋設されている前記ナットに螺合することにより、固定ベース15を胴本体2の外周面に固定している。固定ベース15の前面15bは、移動ベース16の摺動面を形成しており、下端部寄り(裏面側ドラムヘッド3側)には段差部29が形成されている。この段差部29は、前記移動ベース16の上方への移動を制限する傾斜したストッパ面29aと、移動ベース16の下端部を案内する摺動面29bとで構成されている。摺動面29bは、固定ベース15の前面15bと平行でこれより一段低い面を形成している。このため、固定ベース15の下端部は、上端部より薄肉に形成されている。
【0029】
前記移動ベース16は、金属製のプレートからなり、下端部に前記固定ベース15の段差部29と側面視同形状をなす略L字形の折曲部16Aが一体に設けられており、前記固定ベース15の内部においてスイッチ機構17と張力調節用ねじ18に連結されている。
【0030】
前記スイッチ機構17は、スナッピー7を裏面側ドラムヘッド3に対して接触または離間させる際に、移動ベース16を固定ベース15の前面25bに沿って上下方向、すなわち前記スナッピー7を裏面側ドラムヘッド3に対して接近離間させる方向(矢印A、B方向)に直線移動させるための機構である。このようなスイッチ機構17としては、移動ベース16を上下方向に直線移動または回動させる従来周知の機構であればどのようなものであってもよく、例えば図示を省略したカムもしくはリンクと、切替レバーが用いられる。この場合、本実施の形態においては、上記した特許文献4に記載されているスイッチ機構17と全く同一構造からなるスイッチ機構、すなわちリンクと切替レバー17Aからなるスイッチ機構を用いているため、これ以上の詳細な説明および図示を省略する。
【0031】
張力調節用ねじ18は、同じく前記特許文献4に記載されている張力調節用ねじ18と同一構造であって、固定ベース15の上面側に回転自在に取付けられており、このねじ18を手で回転操作して、ねじ18に螺合しているナット(図示せず)を上昇または下降させ前記移動ベース16を押圧することにより、移動ベース16を上昇または下降させるように構成されている。
【0032】
前記第1のストレイナー21は、前記固定ベース15、切替レバー17Aを含むスイッチ機構17および移動ベース16に加えて、さらに前記スナッピー7の可動側端7A側に連繋されている前記連結部材13Aの端部を挟持する第1、第2の挟持部材31,32と、これらの挾持部材31,32を支持する支持部材33を備えている。
【0033】
前記第1の挾持部材31は、アルミニウム等の金属によって前、後面31a,31bが平坦な細長い金属板からなり、長手方向の両端面に前記支持部材33によって支持される被支持部34がそれぞれ一体に設けられている。この被支持部34は、第1の支持部材31より幅が小さい矩形の突起で構成されている。また、第1の支持部材31の両端部付近には、締付けボルト35が挿通されるボルト用取付孔36がそれぞれ形成されている。
【0034】
前記第2の挾持部材32は、断面形状がD字形の棒状体に形成することにより、前面32aが平坦面で前記第1の挾持部材31の後面31bとともに前記連結部材13Aの各端部b,cを挟持する挾持面を形成し、後面32bが円弧面に形成されている。また、第2の挾持部材32は、前記第1の挾持部材30と同一長さで、両端には被支持部37がそれぞれ一体に突設されている。これらの被支持部37は、前記第1の挾持部材31の被支持部34と同一の大きさからなる矩形の突起で構成されている。さらに、第2の挾持部材31の両端部寄りには、前記締付けボルト35がねじ込まれるねじ孔38がそれぞれ形成されている。
【0035】
このような第2の挾持部材32は、磁性材料、好ましくは比透磁率(μs )が1より非常に大きい強磁性材料(強磁性体)によって形成されている。強磁性体としては、最も手近にしかも安価に入手することができる鉄が用いられるが、ニッケル、マンガン、コバルトや、これらの化合物であってもよい。
【0036】
前記連結部材13Aの各端部b,cは、第2の挾持部材32の後方下方から上方に導かれて後面32bに添接され、上縁で折り返されることにより前面32aに沿って下方に導かれる。そして、2本の締付けボルト35を第1の挾持部材30の各ボルト用取付孔36に前方から挿通して第2の挾持部材31のねじ孔38にねじ込んで第1、第2の挾持部材31,32を締結することにより、連結部材13Aの各端部b,cが第1、第2の挾持部材31,32によって挾持される。第1、第2の挾持部材31,32を締付けボルト35によって締結すると、被支持部34と37は互いに重なり合う。
【0037】
前記支持部材33は、アルミニウム等の成形品からなり、細長い板状の基部33Aと、この基部33Aの両端にそれぞれ一体に設けられた左右一対の支持部33Bとで構成されている。基部33Aは、前記移動ベース16の折曲部16Aの前面に2本の止めねじ40によって固定されている。各支持部33Bは、側面視横向きのU字状に形成することにより胴本体2とは反対方向に開放する矩形の支持用溝41を有している。この支持用溝41は、前記第1、第2の挾持部材31,32の被支持部34,37の幅より若干大きな溝幅と、重なり合った被支持部34と37の厚さと略等しい奥行きを有し、また、支持用溝41の奥壁には永久磁石45が固定されている。永久磁石45は、円盤状に形成されて両面がN極とS極になるように着磁されており、いずれか一方の極に前記第2の挾持部材32の後面32bが当接するように支持用溝41に配設されている。
【0038】
締付けボルト35によって締結された前記第1、第2の挾持部材31,32は、左右の被支持部34,37が支持部材33の各支持部33Bの支持用溝41に、被支持部37が被支持部34より奥側になるように嵌挿されることにより支持部材33によって支持される。また、第1、第2の挾持部材31,32は、第2の挾持部材32の左右の被支持部37が永久磁石45の磁束によって吸引されることにより、支持用溝41内に固定され、支持用溝41からの脱落が防止される。
【0039】
第1、第2の挾持部材31,32を支持部材33から取り外すときは、第1、第2の挾持部材31,32を把持して支持用溝41から永久磁石45の吸引力に抗して引き出せばよい。
【0040】
前記第2のストレイナー22は、スナッピー7の固定端7B側に取付けられている連結部材13Bを挟持する第1、第2の挾持部材51,52と、胴本体2の外周面に固定された固定ベース53と、この固定ベース53の前面下端部に固定され前記第1、第2の挾持部材51,52の両端部を支持する支持部材54と、この支持部材54に設けられ前記第1、第2の挾持部材51,52を支持部材54に固定する永久磁石55とで構成されている。
【0041】
前記第1、第2の挾持部材51,52は、前記第1のストレイナー21の第1、第2の挾持部材31,32と全く同一に形成されており、2本の締付けボルト56によって締結すれることにより連結部材13Bの端部を挟持する。
【0042】
前記固定ベース53は、第1のストレイナー21の固定ベース15と外観が略同一形状で胴本体2の外周に複数本のボルト57によって固定されてはいるが、前述した移動ベース16、スイッチ機構17、切替レバー17Aおよび張力調節用ねじ18が取付けられていない点で異なっている。
【0043】
前記支持部材54は、前記第1のストレイナー21の支持部材33と同一形状であるため、その説明を省略する。また、永久磁石55も第1のストレイナー21の永久磁石45と同一である。
【0044】
締付けボルト56によって締結された前記第1、第2の挾持部材51,52は、両端に突設した被支持部60,61が支持部材54の各支持部55Bの支持用溝63に、被支持部61が被支持部60より奥側になるように嵌挿されることにより支持部材54によって支持される。また、第1、第2の挾持部材51,52は、第2の挾持部材52の被挾持部61が永久磁石55の磁束によって吸引されることにより、支持用溝63内に固定され支持用溝63からの脱落が防止される。
【0045】
第1、第2の挾持部材51,52を支持部材54から取り外すときは、第1、第2の挾持部材51,52を把持して支持用溝63から永久磁石55の吸引力に抗して引き出せばよい。
【0046】
このように、本実施の形態においては、第1のストレイナー21の第1、第2の挾持部材31,32を支持部材33の支持部33Bによって支持し、永久磁石45の磁気吸引力によって支持部材33に固定し、また同様に第2のストレイナー22の第1、第2の挾持部材51,52を支持部材54の支持部54Bによって支持し、永久磁石55の磁気吸引力によって支持部材54に固定するようにしたので、ボルトを用いて固定する必要がなく、第1、第2の挾持部材31と32、51と52を支持部材33,54に対して工具等を用いることなくワンタッチで取付けたり、取り外したりすることができる。したがって、スナッピー7や裏面側ドラムヘッド3の交換作業を容易かつ迅速に行なうことができ、ストレイナー装置20の取扱性を向上させることができる。
【0047】
また、裏面側ドラムヘッド3を他のドラムヘッドと交換する際、第1、第2の挾持部材31と32、51と52を支持部材33,54から外すだけで、ボルト35,56を緩めて連結部材13A,13Bの挾持状態を解除する必要がないので、ドラムヘッド3の交換後にスナッピー7を再装着したとき、響線11の張力を再調節する必要もない。
【0048】
さらに、本発明においては、連結部材13A,13Bの各端部b、cを第1、第2の挾持部材31と32、51と52の上方から下方に導くようにしているので、ストレイナー装置20を操作したりするとき、端部b,cが手に当たったりして邪魔になることがない。
【0049】
さらにまた、第2の挾持部材32,52の背面側を円弧面に形成して連結部材13A、13Bを添接しているので、連結部材13A,13Bに加わる力が分散されて連結部材13A,13Bの断線を防止することができる。
【0050】
図3は本発明の第2の実施の形態を示す第1のストレイナーの要部の分解斜視図、図4は同第1のストレイナーの断面図である。
これらの図において、本実施の形態は、連結部材13Aの端部を挟持する第1、第2の挾持部材70,71を支持部材72に固定する固定部材として、上記した永久磁石45の代わりに弾性変形自在な係合片73を用いたものである。
【0051】
第1の挾持部材70は、上面中央に前記係合片73の爪部73aが係合する突起部74が一体に突設され、両端に突起状の被支持部が設けられていない点で、図1および図2に示した第1の挾持部材31,51と異なっている。その他の構成は前記図1および図2に示す発明と全く同一である。第2の挾持部材71は、アルミニウム等によって製作され、両端に突起状の被支持部が設けられていない点で上記した第2の挾持部材32,52と異なっている。その他の構成は前記図1および図2に示す発明と全く同一である。
【0052】
前記支持部材72は、第1、第2の挾持部材70,71を支持する一対の支持部72B、72Bを板状の基部72Aの下面中間部に一体に設けた点で、図1および図2に示した支持部材33,54と異なっており、その他の構造は略同一である。
【0053】
前記係合片73は、板状に形成されて基端にT字形の固定部73bが一体に突設されている。この固定部73bは、係合片73より厚肉に形成されることにより十分な剛性を有し、前記支持部材72の2つの支持部72B,72B間に掛け渡され、両面粘着テープ76によって基部72Aの表面中央に固着されることにより、係合片73を2つの支持部72B,72B間に位置させている。
【0054】
第1、第2の挾持部材70,71は、支持部材72の各支持部72Bの支持用溝78内に挿入されると、突起部74が係合片73の爪部73aを押し上げる。このため、係合片73は上方に弾性変形する。そして、第1、第2の挾持部材70,71を支持用溝78の最奥まで挿入すると、突起部74が爪部73aの下を通過して押圧状態を解除する。このため、係合片73は弾性復帰して爪部73aを突起部74の前面に係合させ、これによって第1、第2の挾持部材70,71が支持部材73に固定され、支持用溝78からの脱落が防止される。なお、第1、第2の挾持部材70,71を支持部材72から取り外す際には、爪部73aに指を掛けて押し上げ係合片73を上方に弾性変形させることにより、爪部73aと係合突起74の係合状態を解除する。そして、この状態で第1、第2の挾持部材70,71を支持部材72の支持用溝78から引き出せばよい。
【0055】
このように本実施の形態においては、第1、第2の挾持部材70,71を支持部材72の支持用溝78内に挿入し、係合片73によって固定するようにしているので、ボルトによって固定する必要がなく、上記した実施の形態と同様に、第1、第2の挾持部材70,71を支持部材72に対してワンタッチで取付けたり、取り外したりするができる。
【0056】
また、永久磁石を用いていないので、第2の挾持部材71を磁性材料で製作する必要がなく、材質の選択の自由度を高めることができる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、スナッピーの可動側端が連結される第1のストレイナーに適用した例を示したが、上記した実施の形態と同様に、スナッピーの固定側端が連結される第2のストレイナーにも適用することができることは明らかであろう。
【0058】
また、本発明は上記した実施の形態に何ら特定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。例えば、支持部材33(支持部材54も同様)に対する永久磁石45の取付位置は、支持用溝41の奥壁に限らず溝の上壁または下壁であってもよく、また第2の挾持部材32の代わりに第1の挾持部材31を吸着したり、あるいはまた第1、第2の挾持部材31,32の双方を吸引固定するようにしてもよい。その場合は、第1の挾持部材31または第1、第2の挾持体31,32を磁性材料で形成すればよい。
【0059】
また、永久磁石45を第1、第2の挾持部材31,32のうちの少なくともいずれか一方に取付け、支持部材33を磁性材料で製作したり、あるいはまた第1、第2の挾持部材31,32のうちのいずれか一方を永久磁石で構成し、支持部材33を磁性材料で製作したり、第1、第2の挾持部材31,32のうちのいずれか一方を磁性材料で製作し、支持部材33を永久磁石で構成してもよい。
【0060】
また、上記した実施の形態においては、永久磁石45,55と、係合片73を用いた例を示したが、本発明はこれらに何ら限定されるものではなく、請求項5に示すように係合凹部と係合突部の係合によって一対の挾持部材31と32(51と52、70と71)を支持部材33(54,72)に対して着脱可能に固定するようにしてもよい。係合凹部としては、支持部材33,54,72の支持用溝41,63,78を係合凹部として用い、係合突部としては、挾持部材31,32の被支持部34,37や、挾持部材70,71の端部を係合突部として用いればよい。また、係合凹部を挾持部材に設け、係合突部を支持部材に設けてもよい。
【0061】
また、支持部材33,54は、別個に製作されるものに限らず、移動ベース16や固定ベース15,53と一体に製作されるものであってもよい。
【0062】
さらに、上記した実施の形態においては、スナッピー7の各端部に設けられる可撓性の連結部材13A,13Bとして紐またはワイヤを用いた例について説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなくベルトを用いてもよい。
さらにまた、ストレイナー装置は、第1、第2のストレイナーがスナッピー7の各端部をドラムヘッドに対して接触離間させる機構を備えたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るストレイナー装置の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】第1のストレイナーの分解斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す第1のストレイナーの要部の分解斜視図である。
【図4】同第1のストレイナーの断面図である。
【図5】裏面側のドラムヘッドに対してスナッピーを装着した従来のスネアードラムを示す外観斜視図である。
【図6】スナッピーのストレイナーに対する取付構造を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1…スネアドラム、2…胴本体、3…裏面側ドラムヘッド、7…スナッピー、11…響線、15…固定ベース、16…移動ベース、21…第1のストレイナー、22…第2のストレイナー、12A,12B…スナッピープレート、13A,13B…連結部材、17A…切替レバー、18…張力調節用ねじ、31…第1の挾持部材、32…第2の挾持部材、33…支持部材、33B…支持部、45…永久磁石、51…第1の挾持部材、52…第2の挾持部材、53…固定ベース、54…支持部材、55…永久磁石、70…第1の挟持部材、71…第2の挾持部材、72…支持部材、73…係合片。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、
前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれかの挾持部材を永久磁石の吸引力によって前記支持部材に固定したことを特徴とするストレイナー装置。
【請求項2】
請求項1記載のストレイナー装置において、
前記挟持部材および前記支持部材のうちいずれか一方の部材を磁性材料によって形成し、他方の部材に永久磁石を設けたことを特徴とするストレイナー装置。
【請求項3】
請求項1記載のストレイナー装置において、
前記挟持部材および前記支持部材のうちのいずれか一方の部材を磁性材料によって形成し、他方の部材を永久磁石で構成したことを特徴とするストレイナー装置。
【請求項4】
スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、
前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれか一方の挾持部材を弾性変形自在な係合片によって前記支持部材に着脱可能に固定したことを特徴とするストレイナー装置。
【請求項5】
スナッピーの各端部に設けられている可撓性を有する連結部材を挟持する2個の挾持部材と、これらの挾持部材を支持する支持部材をそれぞれ備えてドラムの胴本体の外周面の互いに対向する位置に取付けられ、前記スナッピーをドラムヘッドに対して選択的に接触離間させる第1、第2のストレイナーとで構成されるストレイナー装置において、
前記第1、第2のストレイナーのうちの少なくともいずれか一方の挾持部材を係合凹部と係合突部との係合によって前記支持部材に着脱可能に固定したことを特徴とするストレイナー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−129070(P2008−129070A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310418(P2006−310418)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)