説明

ストレス耐性となるように工作された植物へのネオニコチノイドの適用によるストレス耐性の増加

本発明は、植物および植物細胞におけるストレス耐性を増加させる方法に関し、限定されないが、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリドまたはチアクロプリドなどのネオニコチノイド化合物が、植物またはこれらの細胞をよりストレス耐性にするように修飾されたゲノムを含む植物またはこれらの細胞、即ち、ストレス耐性となるように工作された植物に適用される。特に、遺伝子改変されたストレス耐性植物またはこれらの細胞と組み合わせた効果的なストレス耐性共力剤は、例えば、イミダクロプリド、チアクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラムおよび6−クロロニコチン酸(6−CNA)のようなクロロピリジン側鎖を含むネオニコチノイド化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
限定されないが、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、アセタミプリドまたはチアクロプリドなどのネオニコチノイド化合物が、植物またはこれらの細胞をよりストレス耐性にさせるために修飾されたゲノムを含む植物またはこれらの細胞(すなわち、ストレス耐性となるように工作された植物)に適用される、植物および植物種子におけるストレス耐性を増加させる方法が提供される。特に、遺伝子改変されたストレス耐性植物またはこれらの細胞と組み合わせる有効なストレス耐性共力剤は、例えば、イミダクロプリド、チアクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラムおよび6−クロロニコチン酸(6−CNA)のようなクロロピリジン側鎖を含むネオニコチノイド化合物である。
【背景技術】
【0002】
ストレス耐性となるように工作された植物は、当分野において知られている。植物細胞および植物におけるストレス耐性は、例えば、WO00/04173A1およびPCT/EP2004/003995にそれぞれ記載されている内因性ポリ−ADP−リボースポリメラーゼ(ParP)またはポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(ParG)の活性またはレベルを低下させることによって達成することができる。このようにして、ストレス状態に晒されている植物細胞における致命的なNADおよびATP枯渇は、外傷性の細胞死をもたらすものの、回避されまたは十分に先送りにされ、ストレスを受けた細胞が生存し、ストレス状態に順応することができると考えられている。
【0003】
欧州特許出願第04077624.7には、植物および植物細胞におけるストレス耐性は、例えば、植物に過剰発現させるために、NADサルベージ合成経路および/またはNADデノボ合成経路に関与する酵素をコードするヌクレオチド配列を用いることによって達成されることが記載されている。
【0004】
昆虫防除以外の目的で植物にネオニコチノイド類の化合物を適用することがまた、当分野で知られている(WO01/26468A2、WO03/096811A1)。
【0005】
WO01/26468A2は、ネオニコチノイド類から選択される少なくとも1つの化合物を植物またはこの遺伝子座に適用することを含む植物の成長を改善する方法を開示している。
【0006】
WO03/096811A1には、植物の種子をネオニコチノイド化合物で処理することによって、昆虫防除目的のために殺虫剤の使用の必要性を示すレベルより昆虫侵入レベルが下回る場所において、農業植物の収率および/または活力が増すかまたは改善することができることを記載している。この方法は、非トランスジェニック植物、および改変したバチラス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)デルタ−内毒素タンパク質の生成物をコードする外来遺伝子を有する植物に有用であると考えられている。しかしながら、当技術は、従来技術に説明されるようなストレス耐性植物の健康および活力を増加させ、その上、化合物の適用によってストレス耐性となるようにすでに工作された植物のストレス耐性をさらに増加させる可能性については依然として沈黙したままである。
【発明の開示】
【0007】
したがって、簡単に、本技術は、植物および/またはこの植物の生育地、植物細胞またはこのような植物が成長する種子をネオニコチノイド化合物で処理することを含む、ストレス耐性となるように組換えられている植物および植物細胞のストレス耐性を増加させる新規な方法に関する。
【0008】
本発明はまた、植物および/または植物の生育地、植物細胞またはこのような植物が成長する種子をネオニコチノイド化合物で処理することを含む、ストレス耐性となるように組換えられている植物および植物細胞の健康および活力を増加させる新規な方法に関する。
【0009】
本発明はまた、ストレス耐性植物が成長する、ネオニコチノイド化合物で処理されている新規な種子に関する。
【0010】
詳細な説明
本明細書中で使用するとき、「ストレス耐性となるように工作された植物」または「ストレス耐性となるように工作された植物細胞」とは、外因性のストレス耐性増加遺伝子、またはこのような外因性のストレス耐性増加遺伝子に対応する内因性遺伝子の変異体を含む外来DNAを含有する植物またはこれらの細胞および種子を意味する。この変異体は植物細胞またはこのような変異体を内在させている植物に、より強いストレス耐性をもたらす。
【0011】
本発明によれば、ストレス耐性となるように組換えられている植物のストレス耐性、健康および活力は、有効量のネオニコチノイド化合物で植物または植物の種子および/または植物の生育地を処理することによって増加できることが見い出された。驚くべきことに、このようなネオニコチノイド化合物は、それぞれの野生型植物よりすでにストレス耐性である植物のストレス耐性および健康の増加を引き起こす能力を有している。この効果は、WO01/26468A2に説明されるような植物に適用される場合のネオニコチノイドの成長増加特性の付加された効果、および所与の植物の工作されたストレス耐性由来の効果に依存することのみから期待され得る効果をさらに超えている。この効果は、上述したネオニコチノイドの標的物である昆虫の存在とは無関係である。したがって、この効果は、植物もしくは植物細胞または成長する種子のストレス耐性の生化学的な改善と関連付けられる。この効果はこのような工作された植物および植物細胞の遺伝子工作されたストレス耐性を増加することが見い出された。
【0012】
本明細書中で使用するとき、「ストレス耐性」とは、例えば、化合物(例えば、除草剤、防かび剤、殺虫剤、植物成長調節剤、アジュバント、肥料)の塗布、非生物的ストレス(例えば、干ばつ、強い光状態、極端な温度、オゾンおよび他の大気汚染物質、土壌塩分または重金属)への曝露、または生物的ストレス(例えば、真菌、ウイルス、細菌、昆虫、線虫、マイコプラズマおよびマイコプラズマ様微生物による感染を含む病原体または害虫感染)によって、ストレスが植物に適用される場合、組換えられていない植物と比較して、ストレスに対するより良好な耐性を意味する。
【0013】
本発明の一実施形態では、ストレス耐性となるように組換えられている植物もしくは植物細胞、またはこのような植物が成長する種子のストレス耐性および健康を増加させるのに有用な方法が記載され、前記方法は、有効量の式(I):
【0014】
【化2】

(式中、
Hetは、いずれの場合でも、フッ素、塩素、メチルまたはエチルによって場合により一置換または多置換される複素環を表し、この複素環は、下記の複素環群:
ピリド−3−イル、ピリド−5−イル、3−ピリジニオ、1−オキシド−5−ピリジニオ、1−オキシド−5−ピリジニオ、テトラ−ヒドロフラン−3−イル、チアゾール−5−イルから選択され、
Aは、C−C−アルキル、−N(R)(R)またはS(R)を表わし、ここで、
は、水素、C−C−アルキル、フェニル−C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルケニルまたはC−C−アルキニルを表わし、および
は、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、−C(=O)−CHまたはベンジルを表わし;
Rは、水素、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、−C(=O)−CHもしくはベンジルを表わし、またはRと一緒になって以下の基:
−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−S−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−N(CH)−CH−を表わし、および
Xは、N−NO、N−CNまたはCH−NOを表わす。)
で表わされるネオニコチノイド化合物を前記植物および/またはこの生育地、植物細胞または前記植物が成長する種子に適用することを含む。
【0015】
アルキルまたはアルケニルなどの飽和または不飽和の炭化水素ラジカルは、いずれの場合でも、これが可能である限り、直鎖であるかまたは分岐であり得、ヘテロ原子と組み合わせて、例えばアルコキシを含む。
【0016】
これらの化合物は、殺虫力を有することが知られている(例えば、EP−A1−192 606、EP−A2−580 533、EP−A2−376 279、EP−A2−235 725を参照されたい。)。
【0017】
言及することができる式(I)の好ましい化合物は、「The Pesticide Manual」,13th,2003(British Crop Protection Council)に列挙されているネオニコチノイドである。
【0018】
非常に特に好ましい化合物は、式:
【0019】
【化3】

で表わされるイミダクロプリドであり、例えば、EP A1 0 192 060により知られている。
【0020】
さらに非常に特に好ましい化合物は、式:
【0021】
【化4】

で表わされるアセタミプリドであり、例えば、WO A1 91/04965により知られている。
【0022】
さらに非常に特に好ましい化合物は、式:
【0023】
【化5】

で表わされるチアクロプリドであり、例えば、EP A2 0 235 725により知られている。
【0024】
さらに非常に特に好ましい化合物は、式:
【0025】
【化6】

で表わされるニテンピラムであり、例えば、EP A2 0 302 389により知られている。
【0026】
さらに好ましい化合物は、式:
【0027】
【化7】

で表わされるクロチアニジンであり、例えば、EP A2 0 376 279により知られている。
【0028】
さらに好ましい化合物は、式:
【0029】
【化8】

で表わされるチアメトキサムであり、例えば、EP A2 0 580 553により知られている。
【0030】
さらに好ましい化合物は、式:
【0031】
【化9】

で表わされるジノテフランであり、例えば、EP A1 0 649 845により知られている。
【0032】
イミダクロプリドは、本発明による方法で使用するための特に好ましい化合物である。クロチアニジンはまた、本発明の明細書において好ましい化合物として言及されるべきである。
【0033】
本発明の別の実施形態では、ストレス耐性となるように組換えられている植物もしくは植物細胞、またはこのような植物が成長する種子のストレス耐性および健康を増加させるのに有用である方法が記載され、式:
【0034】
【化10】

で表わされる6−クロロニコチン酸(ナイアシン、CAS NO:5326−23−8)の有効量を前記植物および/またはこの生育地、植物細胞または前記植物が成長する種子に適用することを含む。
【0035】
6−クロロニコチン酸は、この基、例えば、イミダクロプリド、チアクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラムを担持する上述したネオニコチノイドの分解過程に遊離され得る。例えば、イミダクロプリドは、段階的に、一次代謝物である6−クロロニコチン酸に分解され、結局は二酸化炭素に分解される。この代謝物はまた、ストレス耐性となるように工作された植物もしくは植物細胞またはこのような植物が成長する種子のストレス耐性および健康を増加させる。
【0036】
上述した化合物は、外因性のストレス耐性増加遺伝子またはこのような外因性のストレス耐性増加遺伝子に対応する内因性遺伝子の変異体を含む外来性DNAを含有する植物またはこれらの細胞および種子のストレス耐性の増加を引き起こし、変異体はこのような変異体を内在させている植物細胞または植物に、より強いストレス耐性をもたらす。
【0037】
一般に、ストレス耐性の増加は、ストレスを指示するパラメータの少なくとも有意な減少を意味し、このパラメータは、ストレスを受けた未処理の非トランスジェニックの参照植物またはこれらの細胞および種子と、処理されたトランスジェニック参照植物またはこれらの細胞および種子とを比較した場合の形態的、生理的または生化学的な差異のいずれかとして測定することができる。「健康」とは、本明細書中で言及されるように、害虫および疾病を有する植物、これらの細胞および種子の蔓延レベルが有意に低いことを意味し、例えば、存在している個々の害虫種数として、または肉眼で見える病徴発現(例えば、相対的な葉領域減少、葉領域浸漬、葉領域壊死)として計算するかまたは評価することができる。コルビー(Colby)の式を用いて有意性が明らかにされる。さらに、ストレス状態に対する耐性はまた、EP04077624.7(参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されるストレス条件下で、NAD(H)レベル(ストレスを受けた対照の植物よりもストレスを受けた耐性のある植物において依然として高い。)および活性酸素種(ストレスを受けた対照の植物よりもストレスを受けた耐性のある植物において低い。)を測定することによって評価することができる。
【0038】
本発明の利点の1つには、本発明に係る化合物およびこの化合物を含む組成物の際立った浸透移行性が、ストレス耐性となるように工作された植物の種子をこれらの組成物で処理することによって、発芽植物および出芽後に現れた植物のストレス耐性が増加することを意味するということである。このように、播種時またはその後すぐに農作物の迅速な処理を省くことができる。
【0039】
本発明の別の実施形態では、ストレス耐性となるように組換えられている植物もしくは植物細胞またはこのような植物が成長する種子でのストレス耐性および健康を増加させるのに有用である方法が記載され、前記方法は、有効量の式(I)の化合物を含む組成物を前記植物および/またはこの生育地、植物細胞または前記植物が成長する種子に適用することを含む。
【0040】
したがって、本発明はまた、本発明に係る式(I)の化合物を含む組成物を使用するためのこのような組成物に関する。
【0041】
式(I)の化合物は、他の活性化合物、例えば、殺虫剤、殺菌剤、ダニ駆除剤、防かび剤などの混合物中にて、商業的に有用な製剤の形態において、またはこのような製剤から調製した適用形態にて用いることができる。これを実施することにより、本発明に係る植物のストレス耐性および健康を改善することに加えて、現存する可能性のある害虫をも退治する組成物が得られる。使用することができる殺虫剤は、例えば、有機リン試薬、カルバメート試薬、カルボン酸塩型化学物質、塩素化炭化水素型化学物質、微生物によって産生される殺虫性物質である。
【0042】
多くの場合、これは、相乗効果をもたらす。すなわち、混合物の活性は、個々の成分の活性を上回る。このような製剤および適用形態は、一般により少量の有効成分を用いることができるので、商業的および生態学的に特に有用である。しかしながら、共力剤は、活性化合物の作用を増加させる限りにおいて、それ自身必ずしも活性である必要はない。
【0043】
除草剤などの他に公知の活性化合物との混合物、または毒性緩和剤、肥料および成長調節剤との混合物もまた可能である。
【0044】
活性化合物による植物および植物部位の本発明に係る処理は、直接実行されるか、または慣用の処理法、例えば、浸水、噴霧、蒸発、雲霧、分散、塗布によって、繁殖原料である場合、特に種子の場合、同様に1以上の被覆剤を適用することによって、化合物がこれらの周囲、環境もしくは貯蔵スペースに作用できるようにさせることによって行われる。
【0045】
活性化合物は、溶液、乳液、水和剤、懸濁液、粉末、粉塵、ペースト、溶剤、顆粒、懸濁液−乳液濃縮物、活性化合物で含浸された天然および合成材料、および重合物質のマイクロカプセルなどの慣用の製剤に変換することができる。
【0046】
商業的に有用な製剤または適用形態での本発明の活性化合物の含有量は、広範囲で変化させることができる。商業的製剤から調製される使用形態の活性化合物含量は、広範囲で変化させることができる。
【0047】
これらの製剤は、公知の方法、例えば、活性化合物を増量剤、換言すれば、液体溶媒および/または固体担体と混合することによって、場合により、界面活性剤、換言すれば、乳化剤および/または分散剤および/または発泡剤を使用して製造される。
【0048】
使用される増量剤が水であれば、補助溶媒として、例えば有機溶媒を使用することも可能である。原則として、適する液体溶媒は、キシレン、トルエンまたはアルキルナフタレンなどの芳香族化合物、クロロベンゼン、クロロエチレンまたは塩化メチレンなどの塩素化芳香族化合物または塩素化脂肪族炭化水素、シクロヘキサンまたはパラフィンなどの脂肪族炭化水素、例えば石油留分、鉱油および植物油、ブタノールまたはグリコールなどのアルコール、これらのエーテルおよびエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの強い極性溶媒、および水である。
【0049】
固体担体としては、例えば、アンモニウム塩、カオリン、粘土、タルク、チョーク、水晶、アタパルジャイト、モンモリロナイトまたは珪藻土などの地面の天然鉱物、および非常な分散シリカ、アルミナおよびケイ酸塩などの地面の合成鉱物が適している。顆粒用の固体担体としては、例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石および白雲石などを砕いて分別した天然石、無機および有機ミールの合成顆粒、およびおがくず、ココナッツの殻、トウモロコシの穂軸およびタバコの茎などの有機材料の顆粒が適している。乳化剤および/または発泡剤としては、非イオン性およびアニオン性乳化剤[例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(例えばアルキルアリールポリグリコールエーテル)、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アリールスルホン酸塩]およびタンパク質加水分解物が適している。分散剤としては、例えば、リグニン亜硫酸塩排液およびメチルセルロースが適している。
【0050】
製剤中に、カルボキシメチルセルロースなどの粘着性付与剤、および(粉末の形態、顆粒の形態またはラテックスの形態の)天然および合成高分子(例えばアラビアゴム、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニル)が用いられ得、また、並びにケファリンおよびレシチンなどの天然リン脂質、および合成リン脂質が用いられ得る。他の添加剤は鉱油および植物油であってもよい。
【0051】
無機色素(例えば酸化鉄、酸化チタンおよびプルシアンブルー)および有機色素(アリザリン色素、アゾ色素および金属フタロシアニン色素など)などの着色剤ならびに、微量栄養素(鉄塩、マンガン塩、ホウ素塩、銅塩、コバルト塩、モリブデン塩および亜鉛塩など)を用いることができる。
【0052】
本製剤は、一般に、活性化合物の0.1から98重量%、好ましくは0.1から90重量%、特に好ましくは活性化合物の0.5から70重量%を含む。
【0053】
ネオニコチノイド化合物および6−CNAによるストレス耐性を増加する有利な効果は、ある適用率で特に強く現れる。しかしながら、活性化合物の適用率は、相対的に広範囲で変化させることができる。一般的に、適用率は、1gから1600g活性化合物/ヘクタール、好ましくは10gから800g活性化合物/ヘクタール、特に好ましくは10gから600g活性化合物/ヘクタールである。
【0054】
前述した通り、本発明の一実施形態は、ストレス耐性となるように組換えられている植物のストレス耐性および健康を増加させるのに有用である方法であり、前記方法は、この植物が成長する種子を含む植物の繁殖原料に有効量の式(I)の化合物を含む組成物を適用することを含む。植物の繁殖原料は、植付け前に処理されてもよく、例えば、種子は、播種前に処理されてもよい。本発明に係る化合物はまた、種子の穀粒を液体製剤で含浸させるかまたはこれらを固体製剤で被覆させることによって、前記穀粒に適用することができる。この組成物はまた、繁殖原料が植付けられている場合、例えば播種期間中に、植付け部位に適用されてもよい。
【0055】
したがって、本発明はまた、ストレス耐性となるように工作され、本発明に係る化合物で処理された植物の種子に関する。
【0056】
種子などの植物の繁殖原料の処理と関連して、有益な適用率は、一般に、処理される材料100kg当たり、ネオニコチノイド化合物の1つまたは6−CNAの0.1から1000g、特に1から800g、好ましくは10から500gである。
【0057】
本方法に従って改良することができる農作物には、ストレス耐性となるように工作された任意の植物、双子葉種子および単子葉種子の両方、植物細胞、特にコットン、カノーラ、セイヨウアブラナ(oilseed rape)、小麦、トウモロコシまたはトウモロコシの実(maize)、大麦、米、オートムギ、ライムギ、ソバ、ライ小麦、サトウキビ、大豆、ヒマワリ、アルファルファ、豆、亜麻、カラシナ、エンドウ、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ビート、芝草、ソルガム、キビ、アブラナ科野菜、他の野菜(チョウセンアザミ、アスパラガス、ニンジン、セロリ、チコリー、キュウリ、ナス、ニラネギ、レタス、メロン、オクラ、タマネギ、コショウ、カボチャ、大根、ルタバガ、紅花、ホウレンソウ、スカッシュ、トマト、スイカ、ヤムイモ、ズッキーニを含む)、アーモンド、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、カカオ、シトラス(グレープフルーツ、レモン、オレンジ、キンカン、ライム、マンダリン、タンジェリン、パメロおよびサツママンダリンを含む)、チェリー、ココナッツ、クランベリー、ナツメヤシ、グーズベリー、グレープ、グアバ、キウイ、マンゴー、ネクタリン、パパイヤ、パッションフルーツ、ピーチ、ピーナッツ、西洋ナシ、パイナップル、ペカン、ピスタチオ、プラム、ラズベリー、イチゴ、チャノキ、クルミを含み、また園芸、草花栽培または林業において用いられる植物を含む。
【0058】
全ての植物および植物部位は、本発明に従って処理することができる。植物部位は、芽、葉、花および根などの植物の全ての地上および地下の部分および器官を意味すると理解されるべきであり、例としては、葉、針状葉、茎、幹、花、子実体、果実、種子、根、塊茎および地下茎であると言うことができる。植物部分はまた、収穫した原料、植物および発生の繁殖原料、例えば、裁断、塊茎、地下茎、子球および種子を含む。これらはまた、用いることができるかまたは本発明に従って植物細胞の形質転換に起因してもよい植物細胞を含む。例えば、植付けまたは播種前に、記載された効果を達成するために、例えば、植付け後の植物および処理された土壌に播種された種子から成長する出芽している植物のストレス耐性を増加させるために、土壌上または土壌中に前述の化合物を適用することもできる。
【0059】
本発明で言及される植物、植物細胞および種子は、具体的な方法で前記植物のストレス耐性を増加させるように組換えられる。
【0060】
本発明の一実施形態では、外因性のストレス耐性増加遺伝子は、WO00/04173A1またはEP04077984.5(参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載される植物細胞または植物におけるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の発現および/または活性を低下させることができる。
【0061】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、ポリ(ADP−リボース)トランスフェラーゼ(ADPRT)(EC2.4.2.30)としても知られ、酵母を除く、脊椎動物、節足動物、軟体動物、粘菌変形菌、渦鞭毛虫、真菌および他の下等真核生物を含む大部分の真核動物に見出される核酵素である。酵素活性はまた、数多くの植物において明らかにされている(Payneら、1976;WillmitzerおよびWagner、1982;Chenら、1994;O’Farrell、1995)。
【0062】
PARPは、標的タンパク質中の主にグルタミン酸残基のカルボキシル基にNAD由来のADP−リボース部分を転移を、およびその後、ADP−リボース重合を触媒する。主要な標的タンパク質は、PARPそれ自身であるが、またヒストン(高移動度群染色体タンパク質)でもあり、トポイソメラーゼ、エンドヌクレアーゼおよびDNAポリメラーゼも、この修飾の対象であることが示されている。
【0063】
特定の実施形態として、ストレス耐性増加遺伝子は、機能可能なように連結された下記のDNA断片:
a)植物にて発現可能なプロモータ;
b)転写された場合に、植物の内因性のPARPをコードする遺伝子の発現を低下させることができるRNA分子(PARP阻害性RNA分子)をもたらすDNA領域;
c)転写終結およびポリアデニル化に関与するDNA領域
を含み得る。
【0064】
言及したDNA領域は、転写または転写後の形式で、標的植物または植物細胞においてPARPをコードする遺伝子の発現を低下させるいわゆるアンチセンスRNA分子をもたらすことができ、植物細胞または植物に存在するPARPをコードする遺伝子のヌクレオチド配列の相補体と少なくとも95%から100%の同一性を有する少なくとも20または21個の連続するヌクレオチドを含む。
【0065】
言及したDNA領域はまた、転写または転写後の形式で、標的植物または植物細胞においてPARPをコードする遺伝子の発現を低下させることを含むいわゆるセンスRNA分子をもたらすことができ、植物細胞または植物に存在するPARPをコードする遺伝子のヌクレオチド配列と少なくとも95%から100%の同一性を有する少なくとも20または21個の連続するヌクレオチドを含む。
【0066】
しかしながら、PARPをコードする領域の約20ntのアンチセンスまたはセンスRNA領域の最小のヌクレオチド配列は、より大きなRNA分子内に含まれていてもよく、大きさにして約20ntから標的遺伝子のサイズに等しい長さまで変化する。言及したアンチセンスまたはセンスヌクレオチド領域は、したがって、21nt、40nt、50nt、100nt、200nt、300nt、500nt、1000nt、2000ntまたはさらに約5000ntなどの約21ntから約5000ntの長さ、または5000ntより大きな長さであってよい。さらに、本発明の目的のためには、使用される阻害性PARP RNA分子のヌクレオチド配列または外因性遺伝子のコーディング領域は、植物細胞においてその発現が低下させられることを目標とする内因性PARP遺伝子に完全に同一であるかまたは完全に相補的である必要はない。配列が長くなると、全体の配列同一性に対する要求はより緩くなる。したがって、センスまたはアンチセンス領域は、内因性PARP遺伝子のヌクレオチド配列またはこの相補体に対して約40%または50%または60%または70%または80%または90%または100%の全体の配列同一性を有し得る。しかしながら、言及したように、アンチセンスまたはセンス領域は、内因性PARP遺伝子のヌクレオチド配列に対して約100%の配列同一性を有する20個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列を含まなくてはならない。好ましくは、約100%の配列同一性の範囲は、約50、75または100ntでなくてはならない。
【0067】
本発明の趣旨において、2つの関連するヌクレオチド配列の「配列同一性」は、パーセントして表現され、同一の残基を有する2つの最適に整列した配列の位置の数(×100)を比較される位置の数で割ったものを意味する。ギャップ、即ち、残基が1つの配列に存在するがその他の配列には存在しない整列における位置は、一致しない残基のある位置としてみなされる。2つの配列の整列は、ニードルマン(Needleman)およびヴンシュ(Wunsch)アルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch、1970)によって実行される。コンピュータ支援配列整列は、ギャップ開始ペナルティ50およびギャップ伸長ペナルティ3を有するデフォルトのスコアリングマトリックスを用いるウィスコンシン(Wisconsin)パッケージ バージョン10.1(ジェネティックス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン州マディソン、米国)の1つであるGAPなどの標準的なソフトウェアプログラムを用いて都合良く行うことができる。
【0068】
RNA分子のヌクレオチド配列が、対応するDNA分子のヌクレオチド配列を参照することにより定義されるときはいつでも、ヌクレオチド配列中のチミン(T)は、ウラシル(U)で置換されるべきであることは明確である。RNAまたはDNA分子のいずれかが参照されるかどうかは、出願の内容から明らかである。
【0069】
内因性のPARP遺伝子の発現の低下における上述の外因性遺伝子の効率は、ポリアデニル化されていない異常なPARP阻害性RNA分子の発現をもたらすDNAエレメントを含ませることによってさらに高まり得る。この目的に適するこのようなDNAエレメントの1つは、WO00/01133A1に記載されている自己スプライシングリボザイムをコードするDNA領域である。
【0070】
植物細胞の内因性PARP遺伝子発現の低下における上述した外因性遺伝子の効率はまた、本明細書中に記載されるアンチセンスPARP阻害性RNA分子をコードする外因性遺伝子、および本明細書中に記載されるセンスPARP阻害性RNA分子をコードする外因性遺伝子を同時に1つの植物細胞に含めることによってさらに上昇させることができる。ここで、前記アンチセンスおよびセンスPARP阻害性RNA分子は、WO99/53050A1に記載されているように、上述した少なくとも20個の連続するヌクレオチド間の塩基対によって二本鎖RNA領域を形成することができる。
【0071】
WO99/53050A1にさらに記載されているように、二本鎖RNA領域を形成することができるセンスおよびアンチセンスPARP阻害性RNA領域は、好ましくはスペーサー領域によって分別される1つのRNA分子中に存在していてよい。このスペーサー領域は、イントロン配列を含むことができる。このような外因性遺伝子は、単離されているかまたは同定されている内因性PARP遺伝子からの少なくとも20個のヌクレオチドを含み、その発現が低下されるように方向付けられているDNA断片を、逆方向反復中に、植物にて発現可能なプロモータならびに転写終結およびポリアデニル化に関係している3’末端形成領域に、機能可能なように連結して都合良く構築することができる。このような外因性遺伝子の構築を達成するために、WO02/059294A1に記載されているベクターを利用することができる。
【0072】
現在の命名は、古典的なZnフィンガーを含有するポリメラーゼをPARP1タンパク質(および対応するparp1遺伝子)と呼び、これに対し、構造的な非古典的なPARPタンパク質は、当面、PARP2(および対応するparp2遺伝子)と呼びおよび本明細書中で使用されるPARPをコードする遺伝子は、どちらのタイプについても使用し得る。
【0073】
実験的に示された推定上のポリADP−リボースポリメラーゼタンパク質配列、この部分または相同配列を同定する下記のデータベースの記載は(参照により本明細書中に組み込まれる。)は、本発明に従って使用することができる:BAD53855(オリザ・サティバ(Oryza sativa));BAD52929(オリザ・サティバ);XP 477671(オリザ・サティバ);BAC84104(オリザ・サティバ);AAT25850(ゼア・マイズ(Zea mays));AAT25849(ゼア・マイズ);NP 197639(アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana));NP 850165(アラビドプシス・タリアナ);NP 188107(アラビドプシス・タリアナ);NP 850586(アラビドプシス・タリアナ);BAB09119(アラビドプシス・タリアナ);AAD20677(アラビドプシス・タリアナ);Q11207(アラビドプシス・タリアナ);C84719(アラビドプシス・タリアナ);T51353(アラビドプシス・タリアナ);T01311(アラビドプシス・タリアナ);AAN12901(アラビドプシス・タリアナ);AAM13882(アラビドプシス・タリアナ);CAB80732(アラビドプシス・タリアナ);CAA10482(アラビドプシス・タリアナ);AAC79704(ゼア・マイズ);AAC19283(アラビドプシス・タリアナ);CAA10888(ゼア・マイズ);CAA10889(ゼア・マイズ);CAA88288(アラビドプシス・タリアナ)。
【0074】
本発明の特定の実施形態として、PARP遺伝子発現を低下させる遺伝子は、機能可能なように連結されている下記のDNA断片を含み得る。
a)植物にて発現可能なプロモータ、
b)転写された場合、下記を含むRNA分子を生じるDNA領域:
a.配列番号1(アラビドプシスparp1コーディング領域)、配列番号2(アラビドプシスparp2コーディング領域)、配列番号3(ゼア・マイズparp1コーディング領域)、配列番号4(別のゼア・マイズparp1コーディング領域)、配列番号5(ゼア・マイズparp2コーディング領域)もしくは配列番号6(コットンparp2部分cDNA)のヌクレオチド配列から選択されるまたは前述したヌクレオチド配列によってコードされる類似したもしくは同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列から選択される約20個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列と約96%の配列同一性を有する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含むアンチセンスヌクレオチド配列。
b.アンチセンスヌクレオチド配列に相補的である少なくとも約20個のヌクレオチドを含むセンスヌクレオチド配列。したがって、このセンスヌクレオチド配列は、配列番号1(アラビドプシスparp1コーディング領域)、配列番号2(アラビドプシスparp2コーディング領域)、配列番号3(ゼア・マイズparp1コーディング領域)、配列番号4(別のゼア・マイズparp1コーディング領域)、配列番号5(ゼア・マイズparp2コーディング領域)もしくは配列番号6(コットンparp2部分cDNA)のヌクレオチド配列から選択される、または言及したヌクレオチド配列によってコードされる類似したもしくは同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列から選択される約20個の連続するヌクレオチドのヌクレオチド配列と約96%の配列同一性を有する少なくとも20個の連続するヌクレオチドの配列を含み得る。
これによって、センスおよびアンチセンスヌクレオチド配列は、二本鎖RNA分子(dsRNA)を形成することができる;
c)転写終結およびポリアデニル化のためのDNA領域。
【0075】
しかしながら、WO00/04173またはEP04077984.5に記載されている他のPARPをコードする遺伝子を用いることができることは明らかである。
【0076】
ストレス耐性を増加させる本発明の目的はまた、ゲノム中に変異体PARPをコードする遺伝子を含む植物または植物細胞に前記の化合物を適用することによって達成することができ、これによって、PARP発現および/または活性が、類似植物のPARP発現および/または活性と比較した場合に低下され、これはまた、変異体PARPを有する植物のストレス耐性の増加をもたらそう。このような変異体PARPをコードする遺伝子は、例えば突然変異によって誘導することができ、またはPARPをコードする遺伝子の天然に存在する、内在している植物のストレス耐性の増加と相関している対立遺伝子であってもよい。
【0077】
本発明の別の実施形態において、言及した化合物は、WO2004/090140(参照により本明細書中に組み込まれる。)に記載されているように、植物または植物細胞のParGをコードする遺伝子の発現および/または活性を低下させることができる外因性のストレス耐性増加遺伝子を含む植物または植物細胞に適用される。
【0078】
PARG(ポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ;E.C.3.2.1.143)は、そのエキソグリコシダーゼ活性およびエンドグリコシダーゼ活性(PARG)によってポリ(ADP−リボース)ポリマーを遊離ADP−リボースに変換する。
【0079】
植物において、ポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼは、アラビドプシス(Arabidopsis)における遺伝子の時間制御転写においておよび植物成長から開花への光照射期に依存した移行において影響を受ける突然変異おいて不活性化された野生型遺伝子のマップに基づくクローニングによって同定されている(tej)。この遺伝子のヌクレオチド配列は、ヌクレオチドデータベースから受入番号AF394690により入手可能である(パンダ(Panda)ら、2002年12月、デベロップメンタル・セル(Dev.Cell)、3、51−61;配列番号7)。
【0080】
植物由来の他の植物のPARGをコードする遺伝子のヌクレオチド配列、例えば、ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosm)(配列番号8);オリザ・サティバ(配列番号9)またはゼア・マイズ(配列番号10)由来のPARG遺伝子、並びに他の植物由来の更なるPARGをコードする遺伝子およびこの変異体を単離する方法などは、WO2004/090140A2に見出すことができる。
【0081】
したがって、一実施形態において、ストレス耐性となるように工作された植物または植物細胞は、機能可能なように連結されている下記のDNA断片を含み得る。
a)植物にて発現可能なプロモータ、
b)転写された場合、阻害性RNA分子を生じるDNA領域[前記RNA分子は、
i.アンチセンスヌクレオチド領域(前記アンチセンスヌクレオチド領域は、配列番号7、配列番号8、配列番号9もしくは配列番号10のヌクレオチド配列などのまたは前述のヌクレオチド配列に類似のもしくは前述のヌクレオチド配列と同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列などの、植物PARGタンパク質をコードする塩基配列の相補体から選択される約20個のヌクレオチドのヌクレオチド配列と少なくとも約96%の配列同一性を有する少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む。)、または
ii.センスヌクレオチド領域(前記センスヌクレオチド領域は、配列番号7、配列番号8、配列番号9もしくは配列番号10のヌクレオチド配列などのまたは前述のヌクレオチド配列に類似のもしくは前述のヌクレオチド配列に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列などの、植物PARGタンパク質をコードするヌクレオチド配列から選択される少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む。)、または
iii.サブi)またはii)に記載のアンチセンスヌクレオチド配列およびセンスヌクレオチド配列(前記アンチセンスヌクレオチド配列および前記センスヌクレオチド配列は二本鎖RNA分子を形成することができる。)
を含む。]
c)転写終結およびポリアデニル化に関与するDNA領域。
【0082】
当業者には、センスヌクレオチド配列およびアンチセンス塩基配列またはdsRNA分子の長さについての追加のパラメータは、ならびにParG阻害性RNA分子についての配列同一性は、PARP阻害性RNA分子について上述したように用いることができることが直ちに明らかである。
【0083】
本発明の更なる別の実施形態において、外因性のストレス耐性増加遺伝子は、EP04077624.7(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されているように、機能可能なように連結されている下記のDNA分子を含み得る。
a)植物にて発現可能なプロモータ、
b)ニコチンアミダーゼ、ニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドシンテターゼから選択されるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドサルベージ合成経路の植物機能性酵素をコードするDNA領域;および
c)転写終結およびポリアデニル化に関与する3’末端領域。
【0084】
本明細書中で使用するとき、「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドサルベージ合成経路の植物機能性酵素」は、植物に発現可能なプロモータおよびターミネータ領域などの適した調節エレメントに連結され、植物に導入された場合、転写および翻訳されて植物細胞にて機能するNADサルベージ合成経路の酵素を産生することができる酵素である。NADサルベージ合成由来の酵素(およびコードしている遺伝子)が含まれ、これは、植物源から、また、酵母(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cereviseae))または他の酵母もしくは真菌から入手される。後者のタンパク質は、同様の植物由来酵素が受けるかもしれない酵素的フィードバック調節などを受ける可能性が低いので、本発明に係る方法にさらにより適している可能性があると考えられる。
【0085】
NADサルベージ合成経路に関係する酵素は下記を含む。
−ニコチンアミドのアミド基の加水分解を触媒し、これによってニコチン酸塩およびNHを放出するニコチンアミダーゼ(EC3.5.1.19)。この酵素はまた、ニコチンアミドデアミナーゼ、ニコチンアミドアミダーゼ、YNDアーゼまたはニコチンアミドアミドヒドロラーゼとして知られている。
【0086】
−ニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.2.11)。これは、ナイアシンリボヌクレオチダーゼ、ニコチン酸モノヌクレオチドグリコヒドラーゼ;ニコチン酸モノヌクレオチドピロホスホリラーゼ;ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼとしても知られており、下記の反応を触媒する。
ニコチネート−D−リボヌクレオチド+二リン酸塩=ニコチン酸塩+5−ホスホ−α−D リボース 1−ジホスフェート
【0087】
−ニコチネート−ヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.18)。これは、デアミド−NAD+ピロホスホリラーゼ;ニコチネートモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ;デアミドニコチンアミドアデニンジヌクレオチドピロホスホリラーゼ;NaMT−ATase;ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼとしても知られており、下記の反応を触媒する。
ATP+ニコチネートリボヌクレオチド=二リン酸塩+デアミド−NAD
−NAD−シンターゼ(EC 6.3.1.5)。これは、NADシンテターゼ;NADシンターゼ;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドシンテターゼ;ジホスホピリジンヌクレオチドシンテターゼとしても知られており、下記の反応を触媒する。
デアミド−NAD+ATP+NH=AMP+二リン酸塩+NAD
【0088】
本発明の一実施形態において、NADサルベージ経路の植物機能性酵素をコードするDNA領域は、配列番号11、12、13、14もしくは15由来のヌクレオチド配列、または上述のヌクレオチド配列によってコードされているタンパク質に類似のもしくは上述のヌクレオチド配列と同一のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0089】
ハント(Hunt)ら(2004年)によって説明されているように、これらの酵素の植物相同性が決定され、これらのDNA配列は、類似の効果に使用することができる(Huntら、2004、New Phytologist 163(1):31−44)。決定されたDNA配列は、下記の受入番号:ニコチンアミダーゼに関しては、At5g23220(配列番号16);At5g23230(配列番号17)およびAt3g16190(配列番号18);ニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼに関しては、At4g36940(配列番号19)、At2g23420(配列番号20);ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼに関しては、At5g55810(配列番号21)およびNADシンテターゼに関しては、At1g55090(配列番号22)を有する。
【0090】
しかしながら、ストレス耐性となるように工作された植物はまた、挿入、欠失および置換を含むこれらのヌクレオチド配列の変異体を含み得ることが明確である。同様に、サッカロマイセス・セレビシエとは異なる種由来の前述のヌクレオチド配列に対する相同体を用いることができる。これらは、限定されないが、植物由来のヌクレオチド配列、同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列、並びにこのようなヌクレオチド配列の変異体を含む。
【0091】
記載されたヌクレオチド配列の変異体は、配列表に特定されているヌクレオチド配列などの、NADサルベージ経路由来の酵素をコードする、特定されたヌクレオチド配列と好ましくは少なくとも約80%または85%または90%または95%の配列同一性を有する。好ましくは、これらの変異体は、NADサルベージ経路由来の酵素と同じ酵素活性を有する機能性タンパク質をコードする。
【0092】
本発明の方法は、様々な種類のストレスを誘導する条件(特に、浸水、強い光状態、強い紫外線レベル、過酸化水素レベルの増加、干ばつ状態、高温または低温、塩分状態の増加、除草剤、農薬、殺虫剤の塗布などを含む非生物的ストレス状態)に対する植物または植物細胞の耐性を増加させるために用いることができる。本発明の方法はまた、悪条件下、特に、浸水、強い光状態、強い紫外線レベル、過酸化水素レベルの増加、干ばつ状態、高温または低温、塩分状態の増加などを含む非生物学的ストレス条件下で成長している植物の細胞において、反応性酸素種(ROS)レベルを低下させるまたはNAD+、NADH+もしくはATPを増加させるために用いることができる。ROSレベルまたはNADHレベルは、実施例に説明されている方法を含む当分野において公知の方法を用いて測定することができる。植物のストレス耐性の増加はまた、WO97/06267またはWO02/066972に記載されているミトコンドリアの電子流を測定するための方法を用いて分析することができる。
【0093】
本発明を特定の作用様式に限定することは意図されないが、ネオニコチノイドの代謝物、特に、クロロピリジン側鎖を含むネオニコチノイド化合物の代謝物は、NADサルベージ経路に送り込まれ、NADレベルのより高産生をもたらすことが期待されている。この点において、ストレス耐性となるように工作された植物にこのような化合物を適用することによって、このような植物細胞におけるストレス条件でのNADレベルが、ストレス耐性となるように組換えられていない植物細胞の場合よりもすでに有意に高いため、何らかの効果があるとは期待されていなかった。
【0094】
植物または植物細胞にネオニコチノイド化合物を適用することによってストレス耐性を増加させる本発明の方法は、ストレス耐性となるように工作されたいずれかの植物、双子葉および単子葉植物細胞、限定されないが、コットン、アブラナ科野菜、セイヨウアブラナ、小麦、トウモロコシまたはトウモロコシの実、大麦、ヒマワリ、米、オートムギ、サトウキビ、大豆、野菜(チコリー、レタス、トマトを含む)、タバコ、ジャガイモ、ビート、パパイヤ、パイナップル、マンゴー、アラビドプシス・タリアナ、また園芸、草花栽培または林業に用いられる植物、小麦、オートムギ、大麦、ライムギ、米、芝草、ソルガム、キビまたはサトウキビ植物を含む穀物用植物を含む植物に適していよう。本発明の方法はまた、限定されないが、コットン、タバコ、カノーラ、セイヨウアブラナ、大豆、野菜、ジャガイモ、レムナ(Lemna)属種、ニコチアナ(Nicotiana)属種、サツマイモ、アラビドプシス、アルファルファ、大麦、豆、トウモロコシ、コットン、亜麻、エンドウ、セイヨウアブラナ(rape)、米、ライムギ、紅花、ソルガム、大豆、ヒマワリ、タバコ、小麦、アスパラガス、ビート、ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、キュウリ、ナス、レタス、タマネギ、セイヨウアブラナ、コショウ、ジャガイモ、カボチャ、ラディッシュ、ホウレンソウ、スカッシュ、トマト、ズッキーニ、アーモンド、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、カカオ、チェリー、ココナッツ、クランベリー、ナツメヤシ、グレープ、グレープフルーツ、グアバ、キウイ、レモン、ライム、マンゴー、メロン、ネクタリン、オレンジ、パパイヤ、パッションフルーツ、ピーチ、ピーナッツ、エンドウ、パイナップル、ピスタチオ、プラム、ラズベリー、イチゴ、タンジェリン、クルミおよびスイカを含むいずれかの植物に適用することができる。
【0095】
本明細書中で使用するとき、「含む」は、言及されている特徴、数値、工程または成分の存在を特定するものとして意図されるべきであり、1以上の特徴、数値、工程もしくは成分、またはこのグループの存在または追加を排除しない。したがって、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列を含む核酸またはタンパク質は、実際に引用されたものよりも多くのヌクレオチドまたはアミノ酸を含むことが可能であり、すなわち、より大きな核酸またはタンパク質に包含することができる。機能的または構造的に定義されているDNA領域を含む外因性遺伝子は、追加のDNA領域などを含むことができる。
【0096】
実施例中で別に提示されない限り、全ての組換えDNA技術は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク、およびAusubelら(1994年)Current Protocols in Molecular Biologyの第1巻および第2巻、Current Protocols、USAに記載されている標準的なプロトコールに従って行う。植物の分子作業のための標準的な材料および方法は、BIOS Scientific Publications Ltd(英国)およびBlackwell Scientific Publications、英国、によって共同して出版されたR.D.D.クロイ(Croy)によるPlant Molecular Biology Labfax(1993)に記載されている。標準的な分子生物学的技術のための他の文献は、サンブロックおよびラッセル(Russell)(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク、ブラウン(Brown)(1998)の第I巻および第II巻、Molecular Biology LabFax、第2版、Academic Press(英国)を含む。ポリメラーゼ連鎖反応のための標準的な材料および方法は、ディーフェンバッハ(Dieffenbach)およびデヴェクスラー(Dveksler)(1995)Primer:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびマックファーソン(McPherson)ら(2000)PCR−Basics:From Backgroung to Bench、初版、Springer Verlag、ドイツに見出すことができる。
【0097】
本説明および実施例の全体を通じて、下記の配列が参照される。
配列番号1:アラビドプシス・タリアナ由来のparp1をコードする領域。
配列番号2:アラビドプシス・タリアナ由来のparp2をコードする領域。
配列番号3:ゼア・マイズ由来のparp1をコードする領域1。
配列番号4:ゼア・マイズ由来のparp1をコードする領域2。
配列番号5:ゼア・マイズ由来のparp2をコードする領域。
配列番号6:コットン由来のparp2を部分的にコードする領域。
配列番号7:アラビドプシス・タリアナ由来のparGをコードする領域。
配列番号8:ソラヌム・ツベロスム由来のparGをコードする領域。
配列番号9:オリザ・サティバ由来のparGをコードする領域。
配列番号10:ゼア・マイズ由来のparGをコードする領域。
配列番号11:サッカロマイセス・セレビシエ由来のニコチンアミダーゼのヌクレオチド配列(PNC1)。
配列番号12:サッカロマイセス・セレビシエ由来のニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列(NPT1)(相補体)。
配列番号13:サッカロマイセス・セレビシエ由来のニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ1(NMA1)のヌクレオチド配列。
配列番号14:サッカロマイセス・セレビシエ由来のニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ2(NMA2)のヌクレオチド配列。
配列番号15:サッカロマイセス・セレビシエ由来のNADシンテターゼ(QNS1)のヌクレオチド配列。
配列番号16:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチンアミダーゼのヌクレオチド配列(アイソフォーム1)。
配列番号17:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチンアミダーゼのヌクレオチド配列(アイソフォーム2)。
配列番号18:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチンアミダーゼのヌクレオチド配列(アイソフォーム3)。
配列番号19:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列(アイソフォーム1)。
配列番号20:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列(アイソフォーム2)。
配列番号21:アラビドプシス・タリアナ由来のニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列。
配列番号22:アラビドプシス・タリアナ由来のNADシンテターゼのヌクレオチド配列。
【実施例1】
【0098】
NADH含有量およびスーパーオキシド含有量の測定プロトコール
水溶性テトラゾリウム塩を用いる細胞内NAD(P)H定量
【0099】
【表1】

【0100】
植物材料
大部分の植物材料、例えば、インビトロで成長したアラビドプシスの芽14から18日齢を用いることができるが、セイヨウアブラナの開花および胚軸の外植体ではない。
【0101】
細胞計数キット−8(CCK−8)
Sopachem n.v./Belgium、72A、ラールベークラーン通り(Avenue du Laarbeeklaan)、1090 ブリュッセル、ベルギー。
【0102】
含有量
5ミリモル/L WST−8(テトラゾリウム塩)、0.2ミリモル/L 1−メトキシPMS、150ミリモル/L NaClを含有する5mLボトル;
反応液:10mL、25mM K−リン酸緩衝液pH7.4;0.5mL CCK−8;0.1mM 1−メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート(=1−メトキシフェナジンメトサルフェート):1μL/mL 100mMストック(MW=336.4;2.973mL水中100mg);1滴のTween20/25mL
【0103】
手順
植物材料を収穫し、25mM K−リン酸緩衝液pH7.4に入れる(例えば、150個のセイヨウアブラナの胚軸外植体または1グラムのアラビドプシスの芽(根を含まず))。緩衝液を反応液(1グラムのアラビドプシスの芽に対して15mLまたは150個のアブラナの胚軸外植体に対して15mL)と置換する。暗闇で約30分、26℃で温置する(反応が続く)。反応液の吸光度を450nmで測定する。
【0104】
XTTの還元を定量することによるスーパーオキシド産生の測定
【0105】
【表2】

【0106】
A.ブラシカ・ナプス(Brassica napus)
培地および反応緩衝液
播種培養液(培地201):半濃縮ムラシゲ(Murashige)およびスクーグ(Skoog)塩;2%スクロース、pH5.8;0.6%寒天(ディフコ・バクト寒天(Difco Bacto Agar));250mg/l トリアシリン。
【0107】
カルス誘導培地A2S3:MS培地、0.5g/l Mes(pH5.8)、3%スクロース、40mg/lアデニン−SO、0.5%アガロース、1mg/l 2,4−D、0.25mg/l NAA、1mg/l BAP、250mg/lトリアシリン。
【0108】
反応緩衝液:25mM K−リン酸緩衝液pH8;1mM ナトリウム・3’{1−[フェニルアミノ−カルボニル]−3,4−テトラゾリウム}−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)=XTT(Bio Vectra、カナダ)(MW674.53)。注意深く溶液(±37℃)を温めてXTTを溶解する(使用前に室温まで冷却する。)。25ml緩衝液に対してTween20を1滴。
【0109】
種子の滅菌−種子の予備発芽−種子の成長
種子を70%エタノール中に2分間浸し、次に、0.1% Tween20を含有する次亜臭素酸ナトリウム溶液(約6%活性塩素を含む。)中で15分間表面殺菌する。最後に、種子を無菌水道水1lによりすすぐ。(発芽を阻害する可能性のある成分を種子から分散できるようにするために)無菌水道水中で少なくとも1時間、種子を温置する。50ml無菌水道水(+250mg/lトリアシリン)を含有する250ml三角フラスコに種子を入れる。約20時間振とうする。幼根が飛び出した種子は、播種培地約125ml(種子10個/容器、あまり多すぎて汚染によって種子を喪失させないようにする。)を含有するDuchefaからのビトロベント(Vitro Vent)コンテナーに入れる。日照時間を16時間にして±24℃で10から30μアインシュタインs−1−2で種子を発芽させる。切り取らなければならない種子の量の計算については、5胚軸部分/実ばえ。
【0110】
胚軸部分外植体の前培養およびストレス誘導
播種後12から14日で、胚軸を約7から10mm切片に切断する。胚軸外植体(25胚軸/オプチラックス・ペトリディッシュ(Optilux Petridish)、Falcon S1005、デンマーク)を培地A2S3上で5日間25℃で培養する(10から30μアインシュタインs−1−2)。1条件当たり150個の胚軸外植体が用いられる。
【0111】
ストレス誘導
それぞれ0、25および50mg/lアセチルサリチル酸を含有するA2S3培地に胚軸外植体を移す。日照時間を16時間にして25℃、10から30μアインシュタインs−1−2で約24時間インキュベートする。
【0112】
XTT−アッセイ
150個の胚軸外植体を50mlファルコンチューブに移す。反応緩衝液(XTT不含)で洗浄する。20mL反応緩衝液+XTTを添加する。外植体は浸水させなければならないが、減圧浸潤させない。暗闇中26℃で温置する。反応培地の吸光度を470nmで測定することによって反応を追跡する。
【0113】
B.アラビドプシス・タリアナ
培地および反応緩衝液
植物培地:半濃縮ムラシゲおよびスクーグ塩;ビタミンB5;1.5%スクロース;pH5.8;0.7%ディフコ寒天。
【0114】
温置培地:1/2濃縮MS塩;1%スクロース;0.5g/L MES pH5.8;25ml培地に対してTween20を1滴。
【0115】
反応緩衝液:25mM K−リン酸緩衝液pH8;1mMナトリウム・3’−{1−[フェニルアミノ−カルボニル]−3,4−テトラゾリウム}−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)=XTT(Bio Vectra、カナダ)(MW674.53)。注意深く溶液(±37℃)を温めてXTTを溶解する(使用前に室温まで冷却する。)。25ml緩衝液に対してTween20を1滴。
【0116】
アラビドプシス植物
アラビドプシス株:対照(試験される株が誘導される母株);試験するための株。
【0117】
アラビドプシス種子の滅菌;2分。70%エタノール;10分漂白剤(6%活性塩素)+20ml溶液に対してTween20を1滴;滅菌水道水で5回洗浄;滅菌は、2mlエッペンドルフチューブ中で行う。アラビドプシス種子は、チューブの底に沈め、1ml用ピペットマンを用いて液体を除去する。
【0118】
種子の予備発芽:12ml滅菌水道水を含有する9cmオプチラックス・ペトリディッシュ(ファルコン)中で24時間まで一晩微光。
【0119】
アラビドプシス植物の成長:植物培地±125mlを含有するファルコンのインターグリッド組織培養ディスク(3025番)に植え付ける:種子1個/グリッド。植物は、24℃、30μアインシュタインs−1−2、16時間日照−8時間暗闇で、(薹立ち前)約18日間成長させる。アッセイを行うために、植物材料(根を含まない芽)1g/株/条件を必要とする。芽1gは40から60個の植物と一致する。
【0120】
ストレス誘導
パラコート:アラビドプシスの芽(根を含まない。)を収穫する。それぞれ0、5および10μMパラコートを含有する温置培地に芽1gを入れる(芽は浸水させなければならないが、減圧浸潤させない。)。温置培地:ファルコンのインターグリッド組織培養ディスク(3025番)中に±150ml。暗闇中24℃で±24時間および30から50μアインシュタインs−1−2で日照16時間温置する。
【0121】
強い光:植物の半分を強い光(250μアインシュタインs−1−2)に移し、4から20時間温置する。
【0122】
XTT−アッセイ
寒天プレート(強い光のストレス)または液体温置培地(除草剤によるストレス)から芽(根を含まない。)を収穫し、反応緩衝液(XTT不含)を含有する50mlファルコンチューブにこれらを入れる。反応緩衝液はXTT(15mL/グラム)を含有する緩衝液と置換される。芽は浸水させなければならないが、減圧浸潤させない。暗闇中26℃で温置する。反応培地の吸光度を470nmで測定することによって反応を追跡する(約1時間)。
【実施例2】
【0123】
ストレス耐性を増加させるトランスジェニック遺伝子を含む植物にネオニコチノイド化合物を適用した後のストレス耐性の分析
WO00/04173A1(例えば、実施例8)に記載されているように、内因性PARP遺伝子を減少させることができるdsRNA分子をコードするトランスジェニック遺伝子を含むアブラナ科(Brassica)植物を種々の濃度のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ニテンピラム、ジノテフラン、6−クロロニコチン酸およびチアクロプリドにより処理し、様々なストレス条件、特に、高−低温、強い光の強度もしくは干ばつストレスまたはこれらの組合せに晒す。
【0124】
処理後、これら植物は、未処理のトランスジェニック対照植物、および同じ方法で上述の化合物で処理される非トランスジェニック同系植物と比較して生存および損傷に関して視覚的に記録される。活性酸素種、NADおよびATPレベルを測定し、対照植物と比較する。
【0125】
化合物で処理されたトランスジェニックのアブラナ科植物は、未処理のトランスジェニック対照植物より良好にストレス条件を切り抜ける。ROSレベルは、未処理のトランスジェニックのアブラナ科植物よりも処理されたトランスジェニックのアブラナ科植物において低いが、NADまたはATPレベルは高い。
【0126】
WO00/04173A1に記載されているように、内因性PARP遺伝子を減少させることができるdsRNA分子をコードするトランスジェニック遺伝子を含むトウモロコシ植物を種々の濃度のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ニテンピラム、ジノテフラン、6−クロロニコチン酸およびチアクロプリドで処理し、様々なストレス条件、特に、高−低温、強い光の強度もしくは干ばつストレスまたはこれらの組合せに晒す。
【0127】
処理後、これら植物は、未処理のトランスジェニック対照植物、および同じ方法で上述の化合物で処理された非トランスジェニック同系植物と比較して生存および損傷に関して視覚的に記録される。活性酸素種、NADおよびATPレベルを測定し、対照植物と比較する。
【0128】
化合物で処理されたトランスジェニックのトウモロコシ植物は、未処理のトランスジェニック対照植物より良好にストレス条件を切り抜ける。ROSレベルは、未処理のトランスジェニックのトウモロコシ植物よりも処理されたトランスジェニックのトウモロコシ植物において低いが、NADまたはATPレベルは高い。
【0129】
EP04077984.5に記載されているように、内因性PARP遺伝子を減少させることができるdsRNA分子をコードするトランスジェニック遺伝子を含む綿植物を種々の濃度のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ニテンピラム、ジノテフラン、6−クロロニコチン酸およびチアクロプリドで処理し、様々なストレス条件、特に、高−低温、強い光の強度もしくは干ばつストレスまたはこれらの組合せに晒す。
【0130】
処理後、これら植物は、未処理のトランスジェニック対照植物、および同じ方法で上述の化合物で処理される非トランスジェニック同系植物と比較して生存および損傷に関して視覚的に記録される。活性酸素種、NADおよびATPレベルを測定し、対照植物と比較する。
【0131】
化合物で処理されたトランスジェニックの綿植物は、未処理のトランスジェニック対照植物より良好にストレス条件を切り抜ける。ROSレベルは、未処理のトランスジェニックのコットン植物よりも処理されたトランスジェニックの綿植物において低いが、NADまたはATPレベルは高い。
【0132】
WO2004/090140に記載されるように、内因性PARG遺伝子を減少させることができるdsRNA分子をコードするトランスジェニック遺伝子を含むアブラナ科植物または米の植物を種々の濃度のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ニテンピラム、ジノテフラン、6−クロロニコチン酸およびチアクロプリドで処理し、様々なストレス条件、特に、高−低温、強い光の強度もしくは干ばつストレスまたはこれらの組合せに晒す。
【0133】
処理後、これら植物は、未処理のトランスジェニック対照植物、および同じ方法で上述の化合物で処理される非トランスジェニック同系植物と比較して生存および損傷に関して視覚的に記録される。活性酸素種、NADおよびATPレベルを測定し、対照植物と比較する。
【0134】
化合物で処理されたトランスジェニックのアブラナ科植物または米の植物は、未処理のトランスジェニック対照植物より良好にストレス条件を切り抜ける。ROSレベルは、未処理のトランスジェニックのアブラナ科植物または米の植物よりも処理されたトランスジェニックのアブラナ科植物または米の植物において低いが、NADまたはATPレベルは高い。
【0135】
EP0477624.7に記載されているように、NADサルベージ経路に関係する植物機能酵素をコードするトランスジェニック遺伝子を含むアラビドプシス(Arabidopsis)植物を種々の濃度のイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、アセタミプリド、ニテンピラム、ジノテフラン、6−クロロニコチン酸およびチアクロプリドで処理し、様々なストレス条件、特に、高−低温、強い光の強度もしくは干ばつストレスまたはこれらの組合せに晒す。
【0136】
処理後、これら植物は、未処理のトランスジェニック対照植物、および同じ方法で上述の化合物で処理される非トランスジェニック同系植物と比較して生存および損傷に関して視覚的に記録される。活性酸素種、NADおよびATPレベルを測定し、対照植物と比較する。
【0137】
化合物で処理されたトランスジェニックのアラビドプシス植物は、未処理のトランスジェニック対照植物より良好にストレス条件を切り抜ける。ROSレベルは、未処理のトランスジェニックのアラビドプシス植物よりも処理されたトランスジェニックのアラビドプシス植物において低いが、NADまたはATPレベルは高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の6−クロロニコチン酸または式(I)
【化1】

(式中、
Hetは、いずれの場合でも、フッ素、塩素、メチルまたはエチルによって場合により一置換または多置換される複素環を表し、この複素環は、次記の複素環の群:ピリド−3−イル、ピリド−5−イル、3−ピリジニオ、1−オキシド−5−ピリジニオ、1−オキシド−5−ピリジニオ、テトラ−ヒドロフラン−3−イル、チアゾール−5−イルから選択され、
Aは、C−C−アルキル、−N(R)(R)またはS(R)を表わし、ここで、
は、水素、C−C−アルキル、フェニル−C−C−アルキル、C−C−シクロアルキル、C−C−アルケニルまたはC−C−アルキニルを表わし、および
は、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、−C(=O)−CHまたはベンジルを表わし、
Rは、水素、C−C−アルキル、C−C−アルケニル、C−C−アルキニル、−C(=O)−CHもしくはベンジルを表わし、またはRと一緒になって以下の基:−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−O−CH−、−CH−S−CH−、−CH−NH−CH−、−CH−N(CH)−CH−を表わし、および
Xは、N−NO、N−CNまたはCH−NOを表わす。)
で表わされる化合物を植物もしくはこの遺伝子座または前記植物の種子に適用することを含み、前記植物がストレス耐性となるように工作された植物であることを特徴とする、植物におけるストレス耐性を増加させる方法。
【請求項2】
前記ストレス耐性となるように工作された植物が、ストレス耐性を増加させる外因性遺伝子を含むトランスジェニック植物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外因性遺伝子が、PARP阻害性RNA分子をコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.配列番号1のヌクレオチド配列、配列番号2のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド配列、配列番号4のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むPARP阻害性RNA分子をコードするDNA領域;および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.配列番号1のヌクレオチド配列、配列番号2のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド配列、配列番号4のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列の相補体から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むPARP阻害性RNA分子をコードするDNA領域;および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.PARP阻害性RNA分子をコードするDNA領域(前記RNA分子は、
i.配列番号1のヌクレオチド配列、配列番号2のヌクレオチド配列、配列番号3のヌクレオチド配列、配列番号4のヌクレオチド配列、配列番号5のヌクレオチド配列または配列番号6のヌクレオチド配列から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むセンスヌクレオチド配列;および
ii.前記センスヌクレオチド配列における前記少なくとも20個の連続するヌクレオチドに相補的であるヌクレオチド配列を含むアンチセンスヌクレオチド配列
を含み;
iii.前記センスおよびアンチセンスヌクレオチド配列は二本鎖RNA領域を形成することができる。);および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アンチセンスヌクレオチド配列が、前記センスヌクレオチド配列に約95%の配列同一性を有するまたは前記センスヌクレオチド配列と同一である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記外因性遺伝子が、ParG阻害性RNA分子をコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号8のヌクレオチド配列、配列番号9のヌクレオチド配列または配列番号10のヌクレオチド配列から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むPARG阻害性RNA分子をコードするDNA領域;および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号8のヌクレオチド配列、配列番号9のヌクレオチド配列または配列番号10のヌクレオチド配列から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むPARG阻害性RNA分子をコードするDNA領域;および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記外因性遺伝子が、機能可能なように連結されている下記のDNA断片:
a.植物にて発現可能なプロモータ;
b.PARG阻害性RNA分子をコードするDNA領域(前記RNA分子は、
i.配列番号7のヌクレオチド配列、配列番号8のヌクレオチド配列、配列番号9のヌクレオチド配列または配列番号10のヌクレオチド配列から選択される20個の連続するヌクレオチドのうち少なくとも19個を含むセンスヌクレオチド配列;および
ii.前記センスヌクレオチド配列における前記少なくとも20個の連続するヌクレオチドに相補的であるヌクレオチド配列を含むアンチセンスヌクレオチド配列
を含み;
iii.前記センスおよびアンチセンスヌクレオチド配列は二本鎖RNA領域を形成することができる。);および
c.転写終結およびポリアデニル化DNA領域
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記アンチセンスヌクレオチド配列が、前記センスヌクレオチド配列に約95%の配列同一性を有するまたは前記センスヌクレオチド配列と同一である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記外因性遺伝子が、ニコチンアミダーゼ、ニコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼ、ニコチン酸モノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドシンテターゼから選択されるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドサルベージ合成経路の植物機能酵素をコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記外因性遺伝子が、配列番号11のヌクレオチド配列、配列番号12のヌクレオチド配列、配列番号13のヌクレオチド配列、配列番号14のヌクレオチド配列、配列番号15のヌクレオチド配列、配列番号16のヌクレオチド配列、配列番号17のヌクレオチド配列、配列番号18のヌクレオチド配列、配列番号19のヌクレオチド配列、配列番号20のヌクレオチド配列、配列番号21のヌクレオチド配列または配列番号22のヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ネオニコチノイド類から選択される前記化合物がイミダクロプリドである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ネオニコチノイド類から選択される前記化合物がクロチアニジンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ネオニコチノイド類から選択される前記化合物がチアクロプリドである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ネオニコチノイド類から選択される前記化合物がニテンピラムである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ネオニコチノイド類から選択される前記化合物がアセタミプリドである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が6−クロロニコチン酸である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項2から14のいずれか一項に記載の、ストレス耐性となるように工作された植物のストレス耐性を増加させるための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物で処理された、請求項2から14のいずれか一項に記載のストレス耐性となるように工作された植物の種子。
【請求項23】
請求項2から14のいずれか一項に記載のストレス耐性となるように工作された植物の種子が、6−クロロニコチン酸または請求項1に記載の式(I)で表わされる化合物の有効量とともに植えられる土壌を処理することを含む、植物におけるストレス耐性を増加させる方法。
【請求項24】
前記植物が、前記トランスジェニックのストレス耐性双子葉植物もしくは単子葉植物、これらの植物細胞または種子である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記種子が、0.1g/種子100kgから1000g/種子100kgの量の請求項1に記載の化合物で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記植物が、10gから1600g/ヘクタールの請求項1に記載の化合物で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
a.請求項1に記載の化合物、および
b.請求項2から14のいずれか一項に記載の、ストレス耐性となるように工作された植物または前記植物の種子
を少なくとも含む容器。

【公表番号】特表2008−545421(P2008−545421A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513992(P2008−513992)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005072
【国際公開番号】WO2006/131222
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】