ストレーナーを備えるドレン構造およびストレーナー
【課題】ドレン側に特別な加工を必要とせずに風等によってストレーナーが抜けたり、飛んでしまうことを防止する。
【解決手段】ドレン2に挿入されるストレーナー3の帯状足部32に突起を設けドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3の抜け止めを図ったことを要旨とする。特に帯状足部32に設けられる突起を平板状とすることで、平板状突起33はドレン内壁面23に効率的に掛かり止めされる。これによりストレーナー3がドレン2に着脱自在に固定される。
【解決手段】ドレン2に挿入されるストレーナー3の帯状足部32に突起を設けドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3の抜け止めを図ったことを要旨とする。特に帯状足部32に設けられる突起を平板状とすることで、平板状突起33はドレン内壁面23に効率的に掛かり止めされる。これによりストレーナー3がドレン2に着脱自在に固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下地に設けられた排水孔に設置される排水ドレン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上やベランダ、バルコニー等に設けられた排水孔には雨水等の排水のため一般にドレンが設置されている。また落葉やゴミなどが排水孔に流れ込むことで排水孔が詰まるのを防止するために、ごみ取り用のキャップとしてドレンの上部にストレーナーが設置されている。またこのストレーナーにたまったゴミ等を清掃したり、ドレン内部を清掃するためにストレーナーは着脱可能に設置することが求められている。
【0003】
そこで、ストレーナーを容易に着脱するためにボルトなどで下地等に止め付けることが行われている。この場合は固定を行うためのボルト等を下地面等に設ける必要があり、そのボルト等は鋳物製等のドレンと一体化されている場合が多い。
【0004】
しかし、このようなボルト等により固定したストレーナーを含む防水構造を防水シートにより改修する場合には既存のドレン構造の上から防水改修の施工を行う工法が多く採用されている。このような改修施工の場合には既存のドレンに樹脂製のドレンを挿入し防水シートを固定している。そのために、既設のドレン構造で設置されていたストレーナー固定用のボルトやネジ穴が改修施工の場合には設置できない。またドレン周辺部も防水シート等で覆って改修を行うため、ストレーナー固定用の既存ボルト等も利用できない。よって、このような改修工事においてはストレーナーを既設ドレン構造と同じようにネジ止め等することができない。
【0005】
また、これら固定のためのボルト等が設けられた鋳物製等のドレンは重量が重いために住宅用などでは躯体への負担が問題となり、鋳物製等のドレンを使用しない場合がある。したがって、この様な場合も鋳物製等のドレンに設けられたボルト等を利用できないために、ストレーナーをネジ止めすることができない。
【0006】
上記のようにストレーナーをボルト等でねじ止め出来ない場合には、帯状足部が設けられたストレーナーが使用出来る。すなわちストレーナーに設けられた帯状足部をドレンに挿入し、その帯状足部の反発力によってドレン内壁面に帯状足部が接することで、ストレーナーがドレンに固定されるという構造が用いられている。
しかし、ドレンに挿入されたストレーナーは、帯状足部の反発力によって固定されているだけであり、帯状足部がドレン内壁に対して滑りやすいと簡単にストレーナーが抜けてしまう。したがって、強風に対して十分な耐力がないと、ストレーナーが抜けてしまったり、飛んでしまうことがあった。
【0007】
これを解決する方法として、ストレーナーの帯状足部の先端に係止め部を設け、ドレン内部にもそれに対応した係止め鍵部を設け、これらを係止めすることで固定する方法(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−321907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の係止めを用いる方法では、ドレン、ストレーナー双方に係り止めのための対応した加工が必要であり、また施工においても帯状足部の係止め具をドレンの係止め鍵部に係止めすることを要し煩雑であるといった問題点があった。
そこで本発明においては、上記のようにドレンに設置されるストレーナーにおいて、ドレン側に特別な加工を必要とせずに風等によってストレーナーが抜けたり、飛んでしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題を解決するために本発明において講じた手段は以下のとおりである。
すなわちドレンに挿入されるストレーナーの帯状足部に突起を設けドレン内壁面に掛かり止めされることでストレーナーの抜け止めを図ったことを要旨とする。
特に帯状足部に設けられる突起を平板状とすることで、平板状突起はドレン内壁面に効率的に掛かり止めされる。これによりストレーナーがドレンに着脱自在に固定される。
【0011】
本発明は、下地に設けられた排水孔と前記排水孔に挿入された筒状部を有するドレンと前記ドレンの筒状部に挿入された、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部、前記ストレーナー本体部にバネ弾性体から成る帯状足部が連結されたストレーナーとを備え、前記ストレーナーの前記帯状足部に平板状突起を複数形成し前記平板状突起が前記ドレンの前記筒状部の内壁に掛かり止めされることで前記ストレーナーが前記ドレンに固定されたことを特徴とする排水ドレン構造とすることである。
【0012】
さらに平板状突起はその先端部が平面視、略三角形とすることができる。平板状突起の先端が略三角形であることによりドレン内壁面に対して掛かり止めがされやすくなる。
また平板状突起が前記帯状足部の平面に切り込みを入れた切り込み部を設け前記切り込み部を立ち上げることで形成することが出来る。これにより平板状突起を帯状足部と一体に形成される。
【0013】
前記帯状足部がJIS G 4313によるバネ限界値において275〜1800N/mm2であるステンレス材からなることと出来る。帯状足部に適度な反発力が得られ、帯状足部に設けられた平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされやすくなる。
【0014】
また帯状足部の前記ドレンとの連結部から先端までの長さ(L)と、前記ドレンの直径(R)との比がL/R=1.0〜3.0である排水ドレン構造とすることも出来る。帯状足部のドレン内壁面に接する部分が大きくなることで掛かり止めがされやすくなるとともに、ドレン内壁面に接していない部分を小さくすることで排水性の阻害を低減することが出来る。
【0015】
また本発明のドレンに挿入されるストレーナーは、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部と、前記ストレーナー本体部に連結されたバネ弾性体から成る帯状足部と、前記帯状足部に形成された平板状突起とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドレン構造によれば、ストレーナー本体部に接続された帯状足部に設けられた平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされることで、ドレンに特別な加工を施すことなくストレーナーがドレンに着脱自在に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の排水ドレン構造の一実施形態を示す断面図
【図2】本発明のストレーナーの一実施形態を示す斜視図
【図3】本発明の帯状足部の形状例を示す平面図
【図4】本発明の帯状足部および平板状突起の一実施形態を示す斜視図
【図5】本発明の帯状足部の平面図
【図6】本発明のストレーナーの設置状態を示す断面図
【図7】本発明のストレーナーの設置状態を示す断面図
【図8】本発明のストレーナーの平板状突起の先端の形状を示す平面図
【図9】平板状突起の加工方法の一実施態様を示した斜視図
【図10】本発明のストレーナーの平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされる状態を示す断面図
【図11】本発明に用いられるドレンの形状例を示す斜視図
【図12】既存ドレンを改修した場合の本発明の排水ドレン構造の一実施形態を示す断面図
【図13】既存ドレンを改修した場合の本発明の排水ドレン構造の他の実施形態を示す断面図
【図14】本発明の横引きの排水ドレン構造の他の実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適実施の態様について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に本発明のドレン構造の一実施形態を示す。下地1には排水用の排水孔4が設けられ、排水孔4には、筒状部21を有するドレン2が挿入され、ドレン2にはストレーナー本体部31と帯状足部32を有するストレーナー3が帯状足部32をドレンに挿入する形で設置されている。そして、帯状足部32に形成された平板状突起33がドレン2の筒状部21の内壁面23に掛かり止めされることで、ストレーナー3がドレン2に設置固定されている。
【0020】
図2に本発明に用いられるストレーナーの一実施形態を示す。通水孔34を有するストレーナー本体部31とこれに連結された帯状足部32とを備え、帯状足部32には平板状突起33が設けられている。
【0021】
帯状足部の形状は板状であればよく特に限定されないが、図3に示したものを使用することが出来る。すなわち、略長方形(3−1)、先端が面取りされている形状(3−2)、幅狭部分と幅広部分を有する形状(3−3)(3−4)、略台形(3−5)などが挙げられる。またこれらの要素を組み合わせても良く、例えば(3−4)は幅狭部分と幅広部分を有する形状であって先端が面取りされている。
【0022】
また、帯状足部32には平板状突起33が1つ以上設けられており一実施形態を図4(4−1)に示した。(4−2)には別の実施形態での平板状突起部分の拡大図であるが、この例では帯状足部32に三角形の平板状突起33を2列で設けてある。
【0023】
帯状足部はバネ弾性体からなり、バネ弾性体の反発力により帯状足部32に設けられた平板状突起33がドレンの内壁面23に掛かり止めされる。ここで帯状足部に用いられるバネ弾性体とは、上記目的を達せられるような弾性体であればよいが、鉄、ステンレス等の金属板や樹脂板等が用いられる。中でも、耐久性の面から金属製が好ましく、耐腐食性の面からステンレス製がより好ましい。
【0024】
さらに、帯状足部はステンレスの中でも、より強いバネ限界値が得られるとの点から、JIS G 4313によるSUSバネ材のバネ限界値において、275〜1800N/mm2であるステンレスが好ましい。300〜1200N/mm2がより好ましく、350〜1000N/mm2がさらに好ましい。
この様なバネ限界値を有するものとしては、SUS301−CSP、SUS304−CSP、SUS631−CSP、SUS632J1−CSP等が挙げられる。
【0025】
帯状足部の厚さや幅は用途に応じて適宜選択することが出来るが、厚さや幅はドレン内壁面に対する掛かり止めの強さに影響を与える。すなわち、厚さは帯状足部をその反発力によりドレン内壁面に押しつける強度に影響を与え、幅はドレン内壁面への帯状足部の接触面積に関与し掛かり止めの強度に影響を与える。したがって、帯状足部の厚みは適度な反発力を得られる点から、0.1mm〜2.0mmが好ましく、0.2mm〜1.5mmがより好ましく、0.3mm〜1.0mmがさらに好ましい。
【0026】
帯状足部の幅は大きいほど接触面積は大きくなるが、通常ドレンが円筒形であるため、帯状足部が平板状であれば幅が大きすぎても接触面積の増加効果は小さくなる。一方で帯状足部の幅が広くなることでドレン内部での排水を阻害し易くなる。したがってドレンの内径が30mm〜200mm程度のものが多用されることも考慮すると、帯状足部の幅は5mm〜50mmが好ましく、10mm〜35mmがより好ましく、15mm〜30mmがさらに好ましい。
【0027】
また上記の帯状足部による排水の阻害の度合いはドレンの内径により異なるため、概ね、ドレン内径に対する帯状足部の幅の比は1/3〜1/40が好ましい。
【0028】
帯状足部はドレン内部に挿入されるため、前述の通り帯状足部はドレン内部で排水を妨げることとなる。したがって、帯状足部は排水性の面からは幅が狭いことが好ましく、掛かり止めの効果の面からは接触面積が大きくなるように幅が広いことが好ましい。よって、帯状足部はドレンとの接触面においては幅が広く、それ以外の部分は幅が狭い、形状であることが好ましい。
つまり図6(6−1)に示すように帯状足部32のうちドレン内壁面23に接する内接部分32Cの幅は広くし、ドレン本体部との連結部32Aから前記内接部分32Cまでを接続部分32Bとすると、接続部分32Bの幅を狭くした形状が好ましい。
そこで図5(5−1)のように帯状足部においてその幅の狭い幅狭部分32Fと幅の広い幅広部分32Hを設けた形状が好適に用いられる。
【0029】
この様な形状の帯状足部をドレンに挿入すると幅狭部分32Fと幅広部分32Hとの境界部32Gに応力集中し、境界部32Gが屈曲点となる。そうすると幅狭部分32Fが接続部分32Bに相当し、幅広部分32Hが内接部分32Cにおよそ相当することになる。
すなわち、図6(6−2)に示すように、ストレーナー本体31と帯状足部32の連結部32Aから緩やかに上側に弓型形状を成しながらドレン内壁面23近傍にまで幅狭部分32F(接続部分32B)が伸び、境界部32Gを屈曲点として、ドレン内壁面23に沿って略垂直かつ下方に向かって幅広部分32H(内接部分32C)が延伸される形状となる。
【0030】
したがって、幅狭部分32Fと幅広部分32Hを設けることでその境界部32Gが屈曲点として作用することで幅広部分をドレン内壁面への内接部分とすることが出来る。そこで内接部分の面積を大きくすることが出来るという点から、図5(5−2)において幅狭部分32Fの幅(W1)と幅広部分32Hの幅(W2)との比は、W2/W1=1.2〜4.5が好ましく、1.5〜3.5がより好ましく、1.7〜3がさらに好ましい。
【0031】
このような形状の場合も排水性と掛かり止め効果を考慮した場合、ドレン内径に対する各部位の幅の比については、接続部分では1/10〜1/40が好ましく、内接部分では1/3〜1/20が好ましい。
【0032】
また、ドレン内壁面に対する帯状足部の接触面積を大きくすることが掛かり止め効果を上げるため、この接触面積すなわち帯状足部の内接部分をより大きくすることが好ましい態様である。ここで内接部分の長さを大きくすることでその接触面積は大きくなる。この内接部分の長さは帯状足部全体の長さすなわち連結部からその先端までの長さとドレン内径により影響をうける。
これを図7により説明すると、帯状足部の長さがドレン内径に対して短いと、帯状足部の内接部分32Cも短くなる(7−1)、一方、帯状足部の長さがドレン内径に対して長いと、帯状足部の内接部分32Cが長くなり掛かり止め効果がより期待できる。しかしこの場合には、帯状足部の内接部分32Cからさらに先端部32Eにかけてドレン内壁面に内接されないその余の部分32Dが生じる場合がある(7−2)。さらに、このようなその余の部分32Dは反発力によってドレン内壁面23から離れドレン内部に排水を妨げるように内向することがある。
【0033】
したがって、帯状足部の連結部32Aから先端部32Eまでの長さ(L)がドレンの内径(R)に対して、L/R=0.8〜3.5であることが好ましい。L/Rが上記範囲にあれば帯状足部のその余の部分による排水性の阻害がなく、ドレン内壁面に対する接触面積も大きくなるため好ましい態様である。またより好ましくはL/R=1.0〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.5である。
【0034】
また、図5のように幅狭部分32Fと幅広部分32Hを設けることでその境界部32Gが屈曲点として作用することで幅広部分をドレン内壁面への内接部分とすることが出来る。したがって内接部分の面積を大きくすることが出来るという点から、幅狭部分32Fの長さ(L1)と幅広部分32H(L2)の比をL2/L1=0.5〜3とすることが好ましく、0.8〜2.5がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
【0035】
帯状足部に設けられた平板状突起はドレン内壁面に掛かり止めされる形状であればよく、平板状の突起であってその先端が尖った形状や鉤針状の形状等であればよい。なかでも平板状突起の先端が略三角形であれば、掛かり止めされやすく好ましい形状である。このような平板状突起の好ましい先端部を図8に示したが、(8−1)〜(8−4)のように先端部が略三角形であれば好ましく、平板状突起部のその他の部分の形状は特に限定されない。また先端部が略三角形には、平板状突起の最先端部の一部を切断した略台形形状等も含まれる(8−5)。このような最先端部が略台形形状の平板状突起を有するストレーナーは、ドレンへのストレーナーへの挿入時に平板状突起が引っ掛かりが少なく挿入がし易くなる。また、清掃時等にストレーナーを取り外す際にも引っ掛かりにくく取り外しが容易となり好ましい。
【0036】
また平板状突起の先端が略三角形である場合に、図8(8−1)に例示したように平面視、平板状突起の最先端に向かう一側の側辺33Aと他側の側辺33Bからなる角33Cは、掛かり止めがされやすいとの点から10°〜160°が好ましく、20°〜120°がより好ましく、30°〜90°がさらに好ましい。さらに、(8−5)のような略台形形状の場合には、破線円部分の拡大図(8−6)のように、平板状突起の最先端に向かう一側の側辺33Aと他側の側辺33Bを延長してなす角33Cが上記の範囲であれば好ましい。
【0037】
平板状突起33は少なくとも帯状足部32のドレン内壁面23に接する部分に設けられていればよい。また1本の帯状足部に加工により平板状突起を形成してもよく、また帯状足部に別に作製した平板状突起を接合することで形成してもよい。加工が行い易く、製造工程が少なく、低コストという点から、1本の帯状足部に加工を施すことで平板状突起を形成することが好ましい。
【0038】
このような平板状突起を形成する加工としては、切り起こし加工(切り絞り加工)を施すことで設けることができる。ここでいう切り起こし加工(切り絞り加工)とは、板材に切り込みを入れ、その切り込み部を曲げることをいう。この場合の曲げるとは切り込みを入れた部分を起こすことであればよい。例えば図9のように、帯状足部32の平面にレーザーで三角形の底辺33Eを残して二辺33Dに切り込みを入れて、三角形の切り込み部33Fを形成し(9−2)、プレスで絞り加工を行い底辺33Eを軸に切り込み部33Fを矢印方向に起こす方法(9−3)などが挙げられる。また、プレス機等により切り込みと絞りを同時または多段で行ってもよい。
【0039】
平板状突起の帯状足部に対する角度はドレン内壁面に掛かり止めされ易い角度が好ましく、図10に示される平板状突起の帯状足部に対する角度33Hは15°〜70°が好ましく、20°〜60°がより好ましく、30°〜50°がさらに好ましい。平板状突起の帯状足部に対する角度が90°より大きいとストレーナーが引き抜かれる方向の力、すなわち上方への力に対しての抵抗が弱くなる場合がある。
【0040】
平板状突起を上記のように、切り込みを入れ、その切り込み部を曲げることで形成する場合は帯状足部にはその切り込み部が立ち上げられたことにより穴が開けられたこととなる。よって、この穴から通水が可能となる。したがって、このような方法(切り起こし加工)によって平板状突起を形成することで、仮にドレン内径に対して帯状足部が相対的に長く、上述したようなドレン内壁面に接していないその余の部分が生じても、切り込み部が立ち上げられたことによる穴によって通水が可能となり排水性の阻害を軽減することが出来好ましい。
【0041】
ここでドレンの内径は多数あるため、排水性と掛かり止め効果を考慮するとその帯状足部の長さをドレン径に応じて変えることが最も好ましいが、様々なドレン径に応じた帯状足部を用意することは容易でない。したがって、一の長さの帯状足部でより広い範囲のドレン径に対応させる場合には、帯状足部の内接部分がそのドレン径に応じて変わるために、平板状突起は広い範囲に形成する必要がある。この様な場合においても、平板状突起の形成に際し帯状足部に設けた切り込み部を立ち上げたことによる穴が開けられることによって、内接部分の上下に存在する接合部分およびその余の部分にも穴が開くことになり、掛かり止め効果を得つつ排水性を妨げることがない。
【0042】
例えば、あるドレン内径に対して基準となる帯状足部の長さを定め、帯状足部の広範囲において切り起こし加工による平板状突起を設けた場合、ドレン内径が小さい場合は帯状足部はドレン内径に対して相対的に長くなるため、内接部分から先端部にかけてその余の部分が生じやすくなるが、この部分にも切り込み部の立ち上げによる穴が設けられており排水性を向上させ得る。また、ドレン内径が基準より大きい場合には、内接部分から連結部までの接続部分が長くなるが、この部分にも切り込み部の立ち上げによる穴が開かれていることで排水性の阻害を軽減することができる。したがって、帯状足部の広範囲に切り起こし加工により平板状突起を設けることで、一の帯状足部の長さのストレーナーによって抜け止め効果と排水性を両立することができるために好ましい。
【0043】
ここで、具体的には帯状足部32の先端部32Eから帯状足部の長さに対して90%〜60%の位置まで平板状突起を設けるのが好ましい。ここで帯状足部の長さとは連結部32Aから先端部32Eまでの長さである。
【0044】
ストレーナー本体部は、金属、樹脂を用いることが出来るが、耐久性の面から金属製が好ましく、躯体への影響を軽減するとういう点から軽量なアルミ製がより好ましい。
【0045】
図2において、ストレーナー本体部と帯状足部の連結はストレーナー本体部に設けられたネジ穴を有する台座部35と、ネジ穴を設けた帯状足部をネジ、ボルトによって固定することができる。また図5において、2本の帯状足部32を互いに連結部32A側でつなげて1本にした形状とすることができる。この場合は2本の帯状足部をつなげて1本にしたものの略中央部に上記のようなストレーナー本体部とのネジ穴を設けることが出来る。
【0046】
また、帯状足部はストレーナー本体部に複数本備えることができるが、掛かり止め効果と帯状足部が増加することによる排水性の阻害から、2本〜6本が好ましく、2本から4本がより好ましく、2本または4本がさらに好ましい。
【0047】
本発明に用いられるドレンは排水孔に挿入される筒状部を有しており、ドレンを設置し易いことから筒状部の上面で接続されたつば部を有することが好ましい。好ましいドレンの形状の例を図11に示した。(11−1)は円筒形の筒状部21に円形のつば部22が接続され、(11−2)は円筒形の筒状部21に角形のつば部22が接続されている。また(11−3)は横方向の排水孔に挿入される横引き用のドレン形状の一例であって、円筒形の筒状部21に折り曲げられた角形のつば部22が接続されている。
【0048】
また、本発明に用いられるドレンは合成樹脂製、金属製、鋳物製等を用いることが出来る。中でも軽量であるという点から熱可塑性樹脂等の合成樹脂製のものが好ましい。特に適度な剛性と柔軟性をもち、本発明に係るストレーナーの帯状足部の平板状突起が掛かり止めされやすいという点からドレンを構成する合成樹脂製の弾性率が50MPa〜2000MPaであるものがより好ましく、100MPa〜1500MPaがより好ましく、200MPa〜1000MPaがさらに好ましい。この様な合成樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―酢酸エチルビニル共重合体等のポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂等が使用でき、塩化ビニル系樹脂製防水シートとの溶融着性を考慮すると塩化ビニル系樹脂製が好ましい。
【0049】
また、本発明のドレン2は内壁面23を上記のような合成樹脂製とすることもできる。これにより内壁面23の合成樹脂により平板状突起による掛かり止めがされやすく、剛性を保つことが容易となる。さらに、ドレン2と防水シート5との接合部を上記の合成樹脂製とすることもでき、これにより防水シート5と本発明のドレン2との溶着による接合が容易となる。この場合、防水シート5をドレン2の接合部を同種の合成樹脂とすることが好ましい。具体的にはドレン2のつば部22を合成樹脂製とすることが好ましい。また、つば部22の上面を合成樹脂層で被覆することも出来る。
【0050】
このような合成樹脂層を有するドレンはドレンの外周面を合成樹脂層で被覆されていてもよい。合成樹脂層で被覆されたドレンは金属等の芯材の外周面をディッピング加工することなどで得ることが出来る。
【0051】
また上記の合成樹脂層の厚みは、平板状突起が合成樹脂層に引っ掛かるあるいは食い込むことで掛かり止めされるために、その掛かり止め効果および防水性の維持の点から一定以上の厚みを有することが好ましい。したがって、ドレンの合成樹脂層の厚みは0.3mm〜15mmが好ましく、0.5mm〜10mmがより好ましく、0.7mm〜7mmがさらに好ましい。
【0052】
他の実施態様として図12に既存防水層の改修におけるドレン構造の一例を示した。既存ドレン8に改修用のドレン2を挿入し、ドレン2のつば部22に新たに敷設される防水層である防水シート5を接合し、ストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入してストレーナー3を固定している。また新たな防水層5は下地に対して接着剤による接着工法や機械固定工法で固定することができる。本実施態様においては防水シート5として塩化ビニル系樹脂製防水シートを用いている。
さらに図12においては、既存のストレーナー(図示せず)と既存の防水層(図示せず)を撤去した後に、必要に応じ既存ドレン8と下地1面のレベルをモルタル7等を充填することで調整している。そして既存ドレン8に改修用塩化ビニル系樹脂製のドレン2を挿入し、ドレンつば部22と下地1面を覆うように塩化ビニル系樹脂製の防水シート5を敷設し下地1に対して接着工法により固定する。そして、塩化ビニル系樹脂製のドレン2のつば部22と防水シート5を熱または溶剤により溶融着し、その溶融着部の端部11をシーラー6で処理する。これによりストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入し平板状突起33がドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3がドレン2に固定される。
また、この実施態様では、ドレン2のつば部22と下地1との段差をモルタル7等を充填することで調整し、このドレンつば部22とモルタル等による段差調整部分を覆うように防水シート5を敷設固定しているが、モルタル等での調整は必要に応じて行えばよい。
この場合に既存ドレンにストレーナー接続用のボルトが設置されている場合にはこれを切断し、必要に応じてモルタルで補修を行う。また既存ドレンにストレーナー接続用のメネジ部が設けられていれば必要に応じてモルタルで補修を行うこともできる。
【0053】
ここで接着工法とは下地等に防水シートを接着剤を用いて接着固定する工法である。また機械的固定工法とは鋼板とビスを用いて防水シートを固定する方法である。下地等に鋼板をビス等で固定し、鋼板とその上に敷設される防水シートを接合することで固定する先付け工法や、防水シートを敷設後に防水シートの上面から鋼板とビスにより固定する後打ち工法等がある。また後打ち工法では鋼板の上面に補強用の防水シートが接合される。ここで、鋼板の上面すなわち防水シートとの接合面にこの防水シートと同種の樹脂による被覆層を設けることで、防水シートと鋼板を熱や溶剤により溶融着することが出来るために好ましい。例えば防水シートが塩化ビニル系樹脂製であれば、塩化ビニル系樹脂で被覆された鋼板が好ましい。鋼板としては亜鉛鋼板やステンレス鋼板が使用でき、耐久性を考慮するとステンレス鋼板が好ましい。また、その形状は帯状、多角形状、円形状などが使用出来る。
【0054】
さらに他の実施態様を図13に示した。既存ドレン8に改修用のドレン2を挿入し、既存押さえコンクリート10に防水シートを敷設し、改修用のドレン2のつば部22と防水シート5を接合し、その防水シート5の端部11を液シーラー6で防水処理する。そして、ストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入し平板状突起33がドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3がドレン2に固定される。
ここで図13では既存ドレン8の周囲の既存防水層9を撤去しモルタル7で補修している。このドレン周りを含め、既存防水層を撤去するか否かはその現場に応じて対応することができる。そして既存押さえコンクリート10の傾斜部10Aに接着剤により防水シート5Aを敷設固定し、ドレン2のつば部22に防水シート5Aを敷設し熱または溶剤により溶融着した。既存押さえコンクリート10の平場部10Bに鋼板12をビス13で固定し、その上から防水シート5Bを敷設し鋼板12と溶着すると共に防水シート5Aと防水シート5Bを溶着し端部11を液シーラー6で防水処理している。
また、この場合も既存ドレンにストレーナー接続用のボルトが設置されている場合にはこれを切断し、必要に応じてモルタルで補修を行う。また既存ドレンにストレーナー接続用のメネジ部が設けられていれば必要に応じてモルタルで補修を行うこともできる。
【0055】
図12、13に示したような既存防水層の改修に伴う改修ドレン構造においては、既存ドレン8に筒状部21とつば部22を有し少なくともつば部22の上面に熱可塑性合成樹脂層を有する改修用ドレン2を挿入することで、改修用の防水シート5を敷設しこの改修用の防水シート5と改修用ドレン2のつば部22の熱可塑性合成樹脂層とを溶剤や熱により溶融着することができる。
そしてこの様にしてドレンの周囲に改修用の防水層が形成されるとストレーナーをネジ止めするためのメネジ部、オネジ部を設けることは防水性を損なうおそれがある。したがって、このような場合に本発明に係るストレーナーを改修用ドレンに挿入することで、ストレーナーを着脱自在にかつその帯状足部の平板状突起部がドレン内壁面に掛かり止めされることでボルト等を用いることなくストレーナーを固定することが出来る。
なお、既存防水層を撤去するか、またドレン周りおよび下地面をモルタル等で補修するか否かは適宜判断すればよくいずれの場合にであっても本発明のドレン構造として採用し得る。
【0056】
横引きドレン構造に係る実施形態の例を図14に示した。横方向に設けられた排水孔4にドレン2を挿入しドレン2の筒状部21にストレーナー3の帯状足部32を挿入しストレーナー3をドレン2に固定している。
図14では既存の防水層を撤去した改修施工におけるドレン構造を示しているが、本発明の排水ドレン構造は改修施工に限定されるものではなく、新築においても適用することが出来る。図14では既存の防水層(図示せず)を撤去後に改修用のドレン2を横引きの排水孔4に設置された既存ドレン8に挿入している。この改修用ドレン2には蛇腹管を接続しておくこともできる。また、このときに必要に応じ壁面を含む下地1をモルタルで補修してもよい。そして改修用ドレン2のつば部22を壁面を含む下地1に接着剤を用いて接着し、そのつば部22を覆うようにして防水シート5を接着剤で下地(壁面を含む)に敷設固定し、つば部22と防水シート5を溶剤又は熱により溶融着し防水シート5の端部を液シーラー6で処理した。改修用のドレンにストレーナー3を帯状足部32から挿入し固定した。
【0057】
ここで、図14で示された横引きドレン構造で使用されるストレーナーのストレーナー本体部は側面視、略直角三角形である。すなわちストレーナーをドレンに挿入した際の下地側の2辺により成す角が略直角である。このときの帯状足部は2本としても充分な固定がなされる。
【符号の説明】
【0058】
1 下地
2 ドレン
21 筒状部
22 つば部
23 内壁面
3ストレーナー
31 ストレナー本体部
32 帯状足部
32A 連結部
32B 接続部分
32C 内接部分
32D その余の部分
32E 先端部
33 平板状突起
34 通水孔
35 台座部
4 排水孔
5 防水シート
6 シーラー
7 モルタル
8 既存ドレン
9 既存防水層
10 既存押さえコンクリート
11 防水シートの端部
12 鋼板
13 ビス
【技術分野】
【0001】
本発明は下地に設けられた排水孔に設置される排水ドレン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋上やベランダ、バルコニー等に設けられた排水孔には雨水等の排水のため一般にドレンが設置されている。また落葉やゴミなどが排水孔に流れ込むことで排水孔が詰まるのを防止するために、ごみ取り用のキャップとしてドレンの上部にストレーナーが設置されている。またこのストレーナーにたまったゴミ等を清掃したり、ドレン内部を清掃するためにストレーナーは着脱可能に設置することが求められている。
【0003】
そこで、ストレーナーを容易に着脱するためにボルトなどで下地等に止め付けることが行われている。この場合は固定を行うためのボルト等を下地面等に設ける必要があり、そのボルト等は鋳物製等のドレンと一体化されている場合が多い。
【0004】
しかし、このようなボルト等により固定したストレーナーを含む防水構造を防水シートにより改修する場合には既存のドレン構造の上から防水改修の施工を行う工法が多く採用されている。このような改修施工の場合には既存のドレンに樹脂製のドレンを挿入し防水シートを固定している。そのために、既設のドレン構造で設置されていたストレーナー固定用のボルトやネジ穴が改修施工の場合には設置できない。またドレン周辺部も防水シート等で覆って改修を行うため、ストレーナー固定用の既存ボルト等も利用できない。よって、このような改修工事においてはストレーナーを既設ドレン構造と同じようにネジ止め等することができない。
【0005】
また、これら固定のためのボルト等が設けられた鋳物製等のドレンは重量が重いために住宅用などでは躯体への負担が問題となり、鋳物製等のドレンを使用しない場合がある。したがって、この様な場合も鋳物製等のドレンに設けられたボルト等を利用できないために、ストレーナーをネジ止めすることができない。
【0006】
上記のようにストレーナーをボルト等でねじ止め出来ない場合には、帯状足部が設けられたストレーナーが使用出来る。すなわちストレーナーに設けられた帯状足部をドレンに挿入し、その帯状足部の反発力によってドレン内壁面に帯状足部が接することで、ストレーナーがドレンに固定されるという構造が用いられている。
しかし、ドレンに挿入されたストレーナーは、帯状足部の反発力によって固定されているだけであり、帯状足部がドレン内壁に対して滑りやすいと簡単にストレーナーが抜けてしまう。したがって、強風に対して十分な耐力がないと、ストレーナーが抜けてしまったり、飛んでしまうことがあった。
【0007】
これを解決する方法として、ストレーナーの帯状足部の先端に係止め部を設け、ドレン内部にもそれに対応した係止め鍵部を設け、これらを係止めすることで固定する方法(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−321907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の係止めを用いる方法では、ドレン、ストレーナー双方に係り止めのための対応した加工が必要であり、また施工においても帯状足部の係止め具をドレンの係止め鍵部に係止めすることを要し煩雑であるといった問題点があった。
そこで本発明においては、上記のようにドレンに設置されるストレーナーにおいて、ドレン側に特別な加工を必要とせずに風等によってストレーナーが抜けたり、飛んでしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題を解決するために本発明において講じた手段は以下のとおりである。
すなわちドレンに挿入されるストレーナーの帯状足部に突起を設けドレン内壁面に掛かり止めされることでストレーナーの抜け止めを図ったことを要旨とする。
特に帯状足部に設けられる突起を平板状とすることで、平板状突起はドレン内壁面に効率的に掛かり止めされる。これによりストレーナーがドレンに着脱自在に固定される。
【0011】
本発明は、下地に設けられた排水孔と前記排水孔に挿入された筒状部を有するドレンと前記ドレンの筒状部に挿入された、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部、前記ストレーナー本体部にバネ弾性体から成る帯状足部が連結されたストレーナーとを備え、前記ストレーナーの前記帯状足部に平板状突起を複数形成し前記平板状突起が前記ドレンの前記筒状部の内壁に掛かり止めされることで前記ストレーナーが前記ドレンに固定されたことを特徴とする排水ドレン構造とすることである。
【0012】
さらに平板状突起はその先端部が平面視、略三角形とすることができる。平板状突起の先端が略三角形であることによりドレン内壁面に対して掛かり止めがされやすくなる。
また平板状突起が前記帯状足部の平面に切り込みを入れた切り込み部を設け前記切り込み部を立ち上げることで形成することが出来る。これにより平板状突起を帯状足部と一体に形成される。
【0013】
前記帯状足部がJIS G 4313によるバネ限界値において275〜1800N/mm2であるステンレス材からなることと出来る。帯状足部に適度な反発力が得られ、帯状足部に設けられた平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされやすくなる。
【0014】
また帯状足部の前記ドレンとの連結部から先端までの長さ(L)と、前記ドレンの直径(R)との比がL/R=1.0〜3.0である排水ドレン構造とすることも出来る。帯状足部のドレン内壁面に接する部分が大きくなることで掛かり止めがされやすくなるとともに、ドレン内壁面に接していない部分を小さくすることで排水性の阻害を低減することが出来る。
【0015】
また本発明のドレンに挿入されるストレーナーは、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部と、前記ストレーナー本体部に連結されたバネ弾性体から成る帯状足部と、前記帯状足部に形成された平板状突起とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のドレン構造によれば、ストレーナー本体部に接続された帯状足部に設けられた平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされることで、ドレンに特別な加工を施すことなくストレーナーがドレンに着脱自在に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の排水ドレン構造の一実施形態を示す断面図
【図2】本発明のストレーナーの一実施形態を示す斜視図
【図3】本発明の帯状足部の形状例を示す平面図
【図4】本発明の帯状足部および平板状突起の一実施形態を示す斜視図
【図5】本発明の帯状足部の平面図
【図6】本発明のストレーナーの設置状態を示す断面図
【図7】本発明のストレーナーの設置状態を示す断面図
【図8】本発明のストレーナーの平板状突起の先端の形状を示す平面図
【図9】平板状突起の加工方法の一実施態様を示した斜視図
【図10】本発明のストレーナーの平板状突起がドレン内壁面に掛かり止めされる状態を示す断面図
【図11】本発明に用いられるドレンの形状例を示す斜視図
【図12】既存ドレンを改修した場合の本発明の排水ドレン構造の一実施形態を示す断面図
【図13】既存ドレンを改修した場合の本発明の排水ドレン構造の他の実施形態を示す断面図
【図14】本発明の横引きの排水ドレン構造の他の実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適実施の態様について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に本発明のドレン構造の一実施形態を示す。下地1には排水用の排水孔4が設けられ、排水孔4には、筒状部21を有するドレン2が挿入され、ドレン2にはストレーナー本体部31と帯状足部32を有するストレーナー3が帯状足部32をドレンに挿入する形で設置されている。そして、帯状足部32に形成された平板状突起33がドレン2の筒状部21の内壁面23に掛かり止めされることで、ストレーナー3がドレン2に設置固定されている。
【0020】
図2に本発明に用いられるストレーナーの一実施形態を示す。通水孔34を有するストレーナー本体部31とこれに連結された帯状足部32とを備え、帯状足部32には平板状突起33が設けられている。
【0021】
帯状足部の形状は板状であればよく特に限定されないが、図3に示したものを使用することが出来る。すなわち、略長方形(3−1)、先端が面取りされている形状(3−2)、幅狭部分と幅広部分を有する形状(3−3)(3−4)、略台形(3−5)などが挙げられる。またこれらの要素を組み合わせても良く、例えば(3−4)は幅狭部分と幅広部分を有する形状であって先端が面取りされている。
【0022】
また、帯状足部32には平板状突起33が1つ以上設けられており一実施形態を図4(4−1)に示した。(4−2)には別の実施形態での平板状突起部分の拡大図であるが、この例では帯状足部32に三角形の平板状突起33を2列で設けてある。
【0023】
帯状足部はバネ弾性体からなり、バネ弾性体の反発力により帯状足部32に設けられた平板状突起33がドレンの内壁面23に掛かり止めされる。ここで帯状足部に用いられるバネ弾性体とは、上記目的を達せられるような弾性体であればよいが、鉄、ステンレス等の金属板や樹脂板等が用いられる。中でも、耐久性の面から金属製が好ましく、耐腐食性の面からステンレス製がより好ましい。
【0024】
さらに、帯状足部はステンレスの中でも、より強いバネ限界値が得られるとの点から、JIS G 4313によるSUSバネ材のバネ限界値において、275〜1800N/mm2であるステンレスが好ましい。300〜1200N/mm2がより好ましく、350〜1000N/mm2がさらに好ましい。
この様なバネ限界値を有するものとしては、SUS301−CSP、SUS304−CSP、SUS631−CSP、SUS632J1−CSP等が挙げられる。
【0025】
帯状足部の厚さや幅は用途に応じて適宜選択することが出来るが、厚さや幅はドレン内壁面に対する掛かり止めの強さに影響を与える。すなわち、厚さは帯状足部をその反発力によりドレン内壁面に押しつける強度に影響を与え、幅はドレン内壁面への帯状足部の接触面積に関与し掛かり止めの強度に影響を与える。したがって、帯状足部の厚みは適度な反発力を得られる点から、0.1mm〜2.0mmが好ましく、0.2mm〜1.5mmがより好ましく、0.3mm〜1.0mmがさらに好ましい。
【0026】
帯状足部の幅は大きいほど接触面積は大きくなるが、通常ドレンが円筒形であるため、帯状足部が平板状であれば幅が大きすぎても接触面積の増加効果は小さくなる。一方で帯状足部の幅が広くなることでドレン内部での排水を阻害し易くなる。したがってドレンの内径が30mm〜200mm程度のものが多用されることも考慮すると、帯状足部の幅は5mm〜50mmが好ましく、10mm〜35mmがより好ましく、15mm〜30mmがさらに好ましい。
【0027】
また上記の帯状足部による排水の阻害の度合いはドレンの内径により異なるため、概ね、ドレン内径に対する帯状足部の幅の比は1/3〜1/40が好ましい。
【0028】
帯状足部はドレン内部に挿入されるため、前述の通り帯状足部はドレン内部で排水を妨げることとなる。したがって、帯状足部は排水性の面からは幅が狭いことが好ましく、掛かり止めの効果の面からは接触面積が大きくなるように幅が広いことが好ましい。よって、帯状足部はドレンとの接触面においては幅が広く、それ以外の部分は幅が狭い、形状であることが好ましい。
つまり図6(6−1)に示すように帯状足部32のうちドレン内壁面23に接する内接部分32Cの幅は広くし、ドレン本体部との連結部32Aから前記内接部分32Cまでを接続部分32Bとすると、接続部分32Bの幅を狭くした形状が好ましい。
そこで図5(5−1)のように帯状足部においてその幅の狭い幅狭部分32Fと幅の広い幅広部分32Hを設けた形状が好適に用いられる。
【0029】
この様な形状の帯状足部をドレンに挿入すると幅狭部分32Fと幅広部分32Hとの境界部32Gに応力集中し、境界部32Gが屈曲点となる。そうすると幅狭部分32Fが接続部分32Bに相当し、幅広部分32Hが内接部分32Cにおよそ相当することになる。
すなわち、図6(6−2)に示すように、ストレーナー本体31と帯状足部32の連結部32Aから緩やかに上側に弓型形状を成しながらドレン内壁面23近傍にまで幅狭部分32F(接続部分32B)が伸び、境界部32Gを屈曲点として、ドレン内壁面23に沿って略垂直かつ下方に向かって幅広部分32H(内接部分32C)が延伸される形状となる。
【0030】
したがって、幅狭部分32Fと幅広部分32Hを設けることでその境界部32Gが屈曲点として作用することで幅広部分をドレン内壁面への内接部分とすることが出来る。そこで内接部分の面積を大きくすることが出来るという点から、図5(5−2)において幅狭部分32Fの幅(W1)と幅広部分32Hの幅(W2)との比は、W2/W1=1.2〜4.5が好ましく、1.5〜3.5がより好ましく、1.7〜3がさらに好ましい。
【0031】
このような形状の場合も排水性と掛かり止め効果を考慮した場合、ドレン内径に対する各部位の幅の比については、接続部分では1/10〜1/40が好ましく、内接部分では1/3〜1/20が好ましい。
【0032】
また、ドレン内壁面に対する帯状足部の接触面積を大きくすることが掛かり止め効果を上げるため、この接触面積すなわち帯状足部の内接部分をより大きくすることが好ましい態様である。ここで内接部分の長さを大きくすることでその接触面積は大きくなる。この内接部分の長さは帯状足部全体の長さすなわち連結部からその先端までの長さとドレン内径により影響をうける。
これを図7により説明すると、帯状足部の長さがドレン内径に対して短いと、帯状足部の内接部分32Cも短くなる(7−1)、一方、帯状足部の長さがドレン内径に対して長いと、帯状足部の内接部分32Cが長くなり掛かり止め効果がより期待できる。しかしこの場合には、帯状足部の内接部分32Cからさらに先端部32Eにかけてドレン内壁面に内接されないその余の部分32Dが生じる場合がある(7−2)。さらに、このようなその余の部分32Dは反発力によってドレン内壁面23から離れドレン内部に排水を妨げるように内向することがある。
【0033】
したがって、帯状足部の連結部32Aから先端部32Eまでの長さ(L)がドレンの内径(R)に対して、L/R=0.8〜3.5であることが好ましい。L/Rが上記範囲にあれば帯状足部のその余の部分による排水性の阻害がなく、ドレン内壁面に対する接触面積も大きくなるため好ましい態様である。またより好ましくはL/R=1.0〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.5である。
【0034】
また、図5のように幅狭部分32Fと幅広部分32Hを設けることでその境界部32Gが屈曲点として作用することで幅広部分をドレン内壁面への内接部分とすることが出来る。したがって内接部分の面積を大きくすることが出来るという点から、幅狭部分32Fの長さ(L1)と幅広部分32H(L2)の比をL2/L1=0.5〜3とすることが好ましく、0.8〜2.5がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。
【0035】
帯状足部に設けられた平板状突起はドレン内壁面に掛かり止めされる形状であればよく、平板状の突起であってその先端が尖った形状や鉤針状の形状等であればよい。なかでも平板状突起の先端が略三角形であれば、掛かり止めされやすく好ましい形状である。このような平板状突起の好ましい先端部を図8に示したが、(8−1)〜(8−4)のように先端部が略三角形であれば好ましく、平板状突起部のその他の部分の形状は特に限定されない。また先端部が略三角形には、平板状突起の最先端部の一部を切断した略台形形状等も含まれる(8−5)。このような最先端部が略台形形状の平板状突起を有するストレーナーは、ドレンへのストレーナーへの挿入時に平板状突起が引っ掛かりが少なく挿入がし易くなる。また、清掃時等にストレーナーを取り外す際にも引っ掛かりにくく取り外しが容易となり好ましい。
【0036】
また平板状突起の先端が略三角形である場合に、図8(8−1)に例示したように平面視、平板状突起の最先端に向かう一側の側辺33Aと他側の側辺33Bからなる角33Cは、掛かり止めがされやすいとの点から10°〜160°が好ましく、20°〜120°がより好ましく、30°〜90°がさらに好ましい。さらに、(8−5)のような略台形形状の場合には、破線円部分の拡大図(8−6)のように、平板状突起の最先端に向かう一側の側辺33Aと他側の側辺33Bを延長してなす角33Cが上記の範囲であれば好ましい。
【0037】
平板状突起33は少なくとも帯状足部32のドレン内壁面23に接する部分に設けられていればよい。また1本の帯状足部に加工により平板状突起を形成してもよく、また帯状足部に別に作製した平板状突起を接合することで形成してもよい。加工が行い易く、製造工程が少なく、低コストという点から、1本の帯状足部に加工を施すことで平板状突起を形成することが好ましい。
【0038】
このような平板状突起を形成する加工としては、切り起こし加工(切り絞り加工)を施すことで設けることができる。ここでいう切り起こし加工(切り絞り加工)とは、板材に切り込みを入れ、その切り込み部を曲げることをいう。この場合の曲げるとは切り込みを入れた部分を起こすことであればよい。例えば図9のように、帯状足部32の平面にレーザーで三角形の底辺33Eを残して二辺33Dに切り込みを入れて、三角形の切り込み部33Fを形成し(9−2)、プレスで絞り加工を行い底辺33Eを軸に切り込み部33Fを矢印方向に起こす方法(9−3)などが挙げられる。また、プレス機等により切り込みと絞りを同時または多段で行ってもよい。
【0039】
平板状突起の帯状足部に対する角度はドレン内壁面に掛かり止めされ易い角度が好ましく、図10に示される平板状突起の帯状足部に対する角度33Hは15°〜70°が好ましく、20°〜60°がより好ましく、30°〜50°がさらに好ましい。平板状突起の帯状足部に対する角度が90°より大きいとストレーナーが引き抜かれる方向の力、すなわち上方への力に対しての抵抗が弱くなる場合がある。
【0040】
平板状突起を上記のように、切り込みを入れ、その切り込み部を曲げることで形成する場合は帯状足部にはその切り込み部が立ち上げられたことにより穴が開けられたこととなる。よって、この穴から通水が可能となる。したがって、このような方法(切り起こし加工)によって平板状突起を形成することで、仮にドレン内径に対して帯状足部が相対的に長く、上述したようなドレン内壁面に接していないその余の部分が生じても、切り込み部が立ち上げられたことによる穴によって通水が可能となり排水性の阻害を軽減することが出来好ましい。
【0041】
ここでドレンの内径は多数あるため、排水性と掛かり止め効果を考慮するとその帯状足部の長さをドレン径に応じて変えることが最も好ましいが、様々なドレン径に応じた帯状足部を用意することは容易でない。したがって、一の長さの帯状足部でより広い範囲のドレン径に対応させる場合には、帯状足部の内接部分がそのドレン径に応じて変わるために、平板状突起は広い範囲に形成する必要がある。この様な場合においても、平板状突起の形成に際し帯状足部に設けた切り込み部を立ち上げたことによる穴が開けられることによって、内接部分の上下に存在する接合部分およびその余の部分にも穴が開くことになり、掛かり止め効果を得つつ排水性を妨げることがない。
【0042】
例えば、あるドレン内径に対して基準となる帯状足部の長さを定め、帯状足部の広範囲において切り起こし加工による平板状突起を設けた場合、ドレン内径が小さい場合は帯状足部はドレン内径に対して相対的に長くなるため、内接部分から先端部にかけてその余の部分が生じやすくなるが、この部分にも切り込み部の立ち上げによる穴が設けられており排水性を向上させ得る。また、ドレン内径が基準より大きい場合には、内接部分から連結部までの接続部分が長くなるが、この部分にも切り込み部の立ち上げによる穴が開かれていることで排水性の阻害を軽減することができる。したがって、帯状足部の広範囲に切り起こし加工により平板状突起を設けることで、一の帯状足部の長さのストレーナーによって抜け止め効果と排水性を両立することができるために好ましい。
【0043】
ここで、具体的には帯状足部32の先端部32Eから帯状足部の長さに対して90%〜60%の位置まで平板状突起を設けるのが好ましい。ここで帯状足部の長さとは連結部32Aから先端部32Eまでの長さである。
【0044】
ストレーナー本体部は、金属、樹脂を用いることが出来るが、耐久性の面から金属製が好ましく、躯体への影響を軽減するとういう点から軽量なアルミ製がより好ましい。
【0045】
図2において、ストレーナー本体部と帯状足部の連結はストレーナー本体部に設けられたネジ穴を有する台座部35と、ネジ穴を設けた帯状足部をネジ、ボルトによって固定することができる。また図5において、2本の帯状足部32を互いに連結部32A側でつなげて1本にした形状とすることができる。この場合は2本の帯状足部をつなげて1本にしたものの略中央部に上記のようなストレーナー本体部とのネジ穴を設けることが出来る。
【0046】
また、帯状足部はストレーナー本体部に複数本備えることができるが、掛かり止め効果と帯状足部が増加することによる排水性の阻害から、2本〜6本が好ましく、2本から4本がより好ましく、2本または4本がさらに好ましい。
【0047】
本発明に用いられるドレンは排水孔に挿入される筒状部を有しており、ドレンを設置し易いことから筒状部の上面で接続されたつば部を有することが好ましい。好ましいドレンの形状の例を図11に示した。(11−1)は円筒形の筒状部21に円形のつば部22が接続され、(11−2)は円筒形の筒状部21に角形のつば部22が接続されている。また(11−3)は横方向の排水孔に挿入される横引き用のドレン形状の一例であって、円筒形の筒状部21に折り曲げられた角形のつば部22が接続されている。
【0048】
また、本発明に用いられるドレンは合成樹脂製、金属製、鋳物製等を用いることが出来る。中でも軽量であるという点から熱可塑性樹脂等の合成樹脂製のものが好ましい。特に適度な剛性と柔軟性をもち、本発明に係るストレーナーの帯状足部の平板状突起が掛かり止めされやすいという点からドレンを構成する合成樹脂製の弾性率が50MPa〜2000MPaであるものがより好ましく、100MPa〜1500MPaがより好ましく、200MPa〜1000MPaがさらに好ましい。この様な合成樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―酢酸エチルビニル共重合体等のポリオレフィン、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、アクリル系樹脂等が使用でき、塩化ビニル系樹脂製防水シートとの溶融着性を考慮すると塩化ビニル系樹脂製が好ましい。
【0049】
また、本発明のドレン2は内壁面23を上記のような合成樹脂製とすることもできる。これにより内壁面23の合成樹脂により平板状突起による掛かり止めがされやすく、剛性を保つことが容易となる。さらに、ドレン2と防水シート5との接合部を上記の合成樹脂製とすることもでき、これにより防水シート5と本発明のドレン2との溶着による接合が容易となる。この場合、防水シート5をドレン2の接合部を同種の合成樹脂とすることが好ましい。具体的にはドレン2のつば部22を合成樹脂製とすることが好ましい。また、つば部22の上面を合成樹脂層で被覆することも出来る。
【0050】
このような合成樹脂層を有するドレンはドレンの外周面を合成樹脂層で被覆されていてもよい。合成樹脂層で被覆されたドレンは金属等の芯材の外周面をディッピング加工することなどで得ることが出来る。
【0051】
また上記の合成樹脂層の厚みは、平板状突起が合成樹脂層に引っ掛かるあるいは食い込むことで掛かり止めされるために、その掛かり止め効果および防水性の維持の点から一定以上の厚みを有することが好ましい。したがって、ドレンの合成樹脂層の厚みは0.3mm〜15mmが好ましく、0.5mm〜10mmがより好ましく、0.7mm〜7mmがさらに好ましい。
【0052】
他の実施態様として図12に既存防水層の改修におけるドレン構造の一例を示した。既存ドレン8に改修用のドレン2を挿入し、ドレン2のつば部22に新たに敷設される防水層である防水シート5を接合し、ストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入してストレーナー3を固定している。また新たな防水層5は下地に対して接着剤による接着工法や機械固定工法で固定することができる。本実施態様においては防水シート5として塩化ビニル系樹脂製防水シートを用いている。
さらに図12においては、既存のストレーナー(図示せず)と既存の防水層(図示せず)を撤去した後に、必要に応じ既存ドレン8と下地1面のレベルをモルタル7等を充填することで調整している。そして既存ドレン8に改修用塩化ビニル系樹脂製のドレン2を挿入し、ドレンつば部22と下地1面を覆うように塩化ビニル系樹脂製の防水シート5を敷設し下地1に対して接着工法により固定する。そして、塩化ビニル系樹脂製のドレン2のつば部22と防水シート5を熱または溶剤により溶融着し、その溶融着部の端部11をシーラー6で処理する。これによりストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入し平板状突起33がドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3がドレン2に固定される。
また、この実施態様では、ドレン2のつば部22と下地1との段差をモルタル7等を充填することで調整し、このドレンつば部22とモルタル等による段差調整部分を覆うように防水シート5を敷設固定しているが、モルタル等での調整は必要に応じて行えばよい。
この場合に既存ドレンにストレーナー接続用のボルトが設置されている場合にはこれを切断し、必要に応じてモルタルで補修を行う。また既存ドレンにストレーナー接続用のメネジ部が設けられていれば必要に応じてモルタルで補修を行うこともできる。
【0053】
ここで接着工法とは下地等に防水シートを接着剤を用いて接着固定する工法である。また機械的固定工法とは鋼板とビスを用いて防水シートを固定する方法である。下地等に鋼板をビス等で固定し、鋼板とその上に敷設される防水シートを接合することで固定する先付け工法や、防水シートを敷設後に防水シートの上面から鋼板とビスにより固定する後打ち工法等がある。また後打ち工法では鋼板の上面に補強用の防水シートが接合される。ここで、鋼板の上面すなわち防水シートとの接合面にこの防水シートと同種の樹脂による被覆層を設けることで、防水シートと鋼板を熱や溶剤により溶融着することが出来るために好ましい。例えば防水シートが塩化ビニル系樹脂製であれば、塩化ビニル系樹脂で被覆された鋼板が好ましい。鋼板としては亜鉛鋼板やステンレス鋼板が使用でき、耐久性を考慮するとステンレス鋼板が好ましい。また、その形状は帯状、多角形状、円形状などが使用出来る。
【0054】
さらに他の実施態様を図13に示した。既存ドレン8に改修用のドレン2を挿入し、既存押さえコンクリート10に防水シートを敷設し、改修用のドレン2のつば部22と防水シート5を接合し、その防水シート5の端部11を液シーラー6で防水処理する。そして、ストレーナー3の帯状足部32をドレン2の筒状部21に挿入し平板状突起33がドレン内壁面23に掛かり止めされることでストレーナー3がドレン2に固定される。
ここで図13では既存ドレン8の周囲の既存防水層9を撤去しモルタル7で補修している。このドレン周りを含め、既存防水層を撤去するか否かはその現場に応じて対応することができる。そして既存押さえコンクリート10の傾斜部10Aに接着剤により防水シート5Aを敷設固定し、ドレン2のつば部22に防水シート5Aを敷設し熱または溶剤により溶融着した。既存押さえコンクリート10の平場部10Bに鋼板12をビス13で固定し、その上から防水シート5Bを敷設し鋼板12と溶着すると共に防水シート5Aと防水シート5Bを溶着し端部11を液シーラー6で防水処理している。
また、この場合も既存ドレンにストレーナー接続用のボルトが設置されている場合にはこれを切断し、必要に応じてモルタルで補修を行う。また既存ドレンにストレーナー接続用のメネジ部が設けられていれば必要に応じてモルタルで補修を行うこともできる。
【0055】
図12、13に示したような既存防水層の改修に伴う改修ドレン構造においては、既存ドレン8に筒状部21とつば部22を有し少なくともつば部22の上面に熱可塑性合成樹脂層を有する改修用ドレン2を挿入することで、改修用の防水シート5を敷設しこの改修用の防水シート5と改修用ドレン2のつば部22の熱可塑性合成樹脂層とを溶剤や熱により溶融着することができる。
そしてこの様にしてドレンの周囲に改修用の防水層が形成されるとストレーナーをネジ止めするためのメネジ部、オネジ部を設けることは防水性を損なうおそれがある。したがって、このような場合に本発明に係るストレーナーを改修用ドレンに挿入することで、ストレーナーを着脱自在にかつその帯状足部の平板状突起部がドレン内壁面に掛かり止めされることでボルト等を用いることなくストレーナーを固定することが出来る。
なお、既存防水層を撤去するか、またドレン周りおよび下地面をモルタル等で補修するか否かは適宜判断すればよくいずれの場合にであっても本発明のドレン構造として採用し得る。
【0056】
横引きドレン構造に係る実施形態の例を図14に示した。横方向に設けられた排水孔4にドレン2を挿入しドレン2の筒状部21にストレーナー3の帯状足部32を挿入しストレーナー3をドレン2に固定している。
図14では既存の防水層を撤去した改修施工におけるドレン構造を示しているが、本発明の排水ドレン構造は改修施工に限定されるものではなく、新築においても適用することが出来る。図14では既存の防水層(図示せず)を撤去後に改修用のドレン2を横引きの排水孔4に設置された既存ドレン8に挿入している。この改修用ドレン2には蛇腹管を接続しておくこともできる。また、このときに必要に応じ壁面を含む下地1をモルタルで補修してもよい。そして改修用ドレン2のつば部22を壁面を含む下地1に接着剤を用いて接着し、そのつば部22を覆うようにして防水シート5を接着剤で下地(壁面を含む)に敷設固定し、つば部22と防水シート5を溶剤又は熱により溶融着し防水シート5の端部を液シーラー6で処理した。改修用のドレンにストレーナー3を帯状足部32から挿入し固定した。
【0057】
ここで、図14で示された横引きドレン構造で使用されるストレーナーのストレーナー本体部は側面視、略直角三角形である。すなわちストレーナーをドレンに挿入した際の下地側の2辺により成す角が略直角である。このときの帯状足部は2本としても充分な固定がなされる。
【符号の説明】
【0058】
1 下地
2 ドレン
21 筒状部
22 つば部
23 内壁面
3ストレーナー
31 ストレナー本体部
32 帯状足部
32A 連結部
32B 接続部分
32C 内接部分
32D その余の部分
32E 先端部
33 平板状突起
34 通水孔
35 台座部
4 排水孔
5 防水シート
6 シーラー
7 モルタル
8 既存ドレン
9 既存防水層
10 既存押さえコンクリート
11 防水シートの端部
12 鋼板
13 ビス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に設けられた排水孔と、
前記排水孔に挿入された筒状部を有するドレンと、
前記ドレンの筒状部に挿入された、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部、前記ストレーナー本体部にバネ弾性体から成る帯状足部が連結されたストレーナーとを備え、
前記ストレーナーの前記帯状足部に平板状突起を複数形成し、前記平板状突起が前記ドレンの前記筒状部の内壁に掛かり止めされることで前記ストレーナーが前記ドレンに固定されたことを特徴とする排水ドレン構造。
【請求項2】
前記平板状突起の先端部が平面視、略三角形である請求項1に記載の排水ドレン構造。
【請求項3】
前記帯状足部の平面に切り込みを入れた切り込み部を設けると共に前記切り込み部を立ち上げることで前記平板状突起が形成されている請求項1または2に記載の排水ドレン構造。
【請求項4】
前記帯状足部がJIS G 4313によるバネ限界値において275〜1800N/mm2であるステンレス材からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水ドレン構造。
【請求項5】
前記帯状足部の前記ドレンとの連結部から先端までの長さ(L)と、前記ドレンの直径(R)との比がL/R=1.0〜3.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水ドレン構造。
【請求項6】
複数の通水孔を設けたストレーナー本体部と、
前記ストレーナー本体部に連結されたバネ弾性体から成る帯状足部と、
前記帯状足部に形成された平板状突起とを備え、
排水孔に形成されたドレンに挿入されるストレーナー。
【請求項1】
下地に設けられた排水孔と、
前記排水孔に挿入された筒状部を有するドレンと、
前記ドレンの筒状部に挿入された、複数の通水孔を設けたストレーナー本体部、前記ストレーナー本体部にバネ弾性体から成る帯状足部が連結されたストレーナーとを備え、
前記ストレーナーの前記帯状足部に平板状突起を複数形成し、前記平板状突起が前記ドレンの前記筒状部の内壁に掛かり止めされることで前記ストレーナーが前記ドレンに固定されたことを特徴とする排水ドレン構造。
【請求項2】
前記平板状突起の先端部が平面視、略三角形である請求項1に記載の排水ドレン構造。
【請求項3】
前記帯状足部の平面に切り込みを入れた切り込み部を設けると共に前記切り込み部を立ち上げることで前記平板状突起が形成されている請求項1または2に記載の排水ドレン構造。
【請求項4】
前記帯状足部がJIS G 4313によるバネ限界値において275〜1800N/mm2であるステンレス材からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水ドレン構造。
【請求項5】
前記帯状足部の前記ドレンとの連結部から先端までの長さ(L)と、前記ドレンの直径(R)との比がL/R=1.0〜3.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水ドレン構造。
【請求項6】
複数の通水孔を設けたストレーナー本体部と、
前記ストレーナー本体部に連結されたバネ弾性体から成る帯状足部と、
前記帯状足部に形成された平板状突起とを備え、
排水孔に形成されたドレンに挿入されるストレーナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−26241(P2012−26241A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168882(P2010−168882)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
[ Back to top ]