説明

ストロボ装置

【課題】 閃光放電管2の発光に関与する構成要素の交差を考慮せずに、発光光量を制御することができるストロボ装置1を提供することを課題とする。
【解決手段】 閃光放電管2と、閃光放電管2の発光を制御するIGBT4と、IGBT4をオン・オフ動作させて閃光放電管2の発光を制御する発光制御回路6とを備えるストロボ装置1において、発光制御回路6が発光光量のばらつきを閃光放電管2の発光開始からIGBT4がオフするまでにかかる発光時間で、より具体的には、IGBT4のゲート電荷を放電させる放電電流を可変とする放電手段によりIGBT4をオフするタイミングを補正可能な発光光量補正手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閃光放電管と、閃光放電管の発光を制御する絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下、単に「IGBT」という)と、IGBTをオン・オフ動作させて閃光放電管の発光を制御する発光制御回路とを備えるストロボ装置に関し、特に、発光光量を補正可能なストロボ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ストロボ発光を伴うストロボ撮影では、例えば、ストロボ発光(以下、単に「本発光」という)のストロボ光量を決定するため、本発光の前に(以下、単に「プリ発光」という)適当なストロボ光量で露光を行い、その結果から本発光のストロボ光量を決定し、本発光のストロボ光量となるように発光光量を制御して、撮影されている。
【0003】
従来技術のストロボ装置(特許文献1参照)は、キセノン管などの閃光放電管と、閃光放電管を励起するためのトリガ回路と、閃光放電管の発光を制御するIGBTと、閃光放電管で放電させる電荷を蓄積する(充電する)メインコンデンサと、IGBTをオン・オフ動作させて閃光放電管の発光を制御する発光制御回路とを備えている。よって、ストロボ装置は、例えば、閃光放電管と直列に接続されているIGBTをコレクタ−エミッタ間が導通状態にあるオン状態にすると、メインコンデンサに蓄積された電荷を閃光放電管で放電させて、閃光放電管の発光を開始させることができる。また、IGBTをコレクタ−エミッタ間が遮断状態にあるオフ状態にすると、閃光放電管の発光を停止させることができる。
【0004】
しかし、閃光放電管は、発光停止を開始してIGBTがオフ状態になっても、しばらくは閃光放電管内の封入ガスが発光を続ける。したがって、他の従来技術のストロボ装置(特許文献2参照)は、閃光放電管の発光停止から完全に発光が停止するまでのオーバーラン光量を予測して、オーバーラン光量を含めた発光光量で閃光放電管を発光停止させる制御を行っていた。
【特許文献1】特開2000−347253号公報
【特許文献2】特開2007−232864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、閃光放電管は製造時の精度などにより、アーク長や封入ガス圧などのばらつきがあり、同一の条件で制御して発光させた場合であっても、閃光放電管ごとに発光光量のばらつきが生じてしまう。したがって、ストロボ装置の発光制御時にオーバーラン光量を考慮しただけでは、予定していた発光光量に対し実際の発光光量に過不足が生じ、制御が不安定になってしまう。
【0006】
よって、本発明は、上記の如き従来の問題点に鑑みてなされたもので、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差を考慮せずに、発光光量を制御することができるストロボ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るストロボ装置は、上記課題を解決するためになされたもので、閃光放電管と、閃光放電管の発光を制御するIGBTと、IGBTをオン・オフ動作させて閃光放電管の発光を制御する発光制御回路とを備えるストロボ装置において、発光制御回路が閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつきを閃光放電管の発光開始からIGBTがオフするまでにかかる発光時間で補正可能な発光光量補正手段を備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、閃光放電管の発光開始からIGBTがオフするまでにかかる発光時間を適当な時間に補正することで、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきを製造されるそれぞれのストロボ装置で一律とすることができる。そして、この補正後の発光時間によりストロボ装置の発光光量を制御することで、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきを考慮する必要がなくなり、これらの複雑な制御のための部品が不要となり、ストロボ装置の小型化・軽量化を図ることができる。例えば、工場での組立工程において、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきを補正することで、出荷後の撮影では、この構成要素の公差以外から発光光量を決定することができる。
【0009】
また、本発明に係るストロボ装置の発光光量補正手段は、ゲート電荷を放電させる放電電流を可変とする放電手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する構成を採用することができる。
【0010】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、放電電流を変えることにより、ゲート電荷の放電時間が変わり、IGBTがオフするタイミングを変えることができることから、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきによる発光光量の過不足を閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間で補正することができる。
【0011】
また、本発明に係るストロボ装装置の発光光量補正手段は、閃光放電管に対する発光停止の開始からゲート電荷の放電開始をアナログ遅延回路によって遅延させる遅延手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する構成を採用することができる。
【0012】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、アナログ遅延回路の遅延時間を変えることにより、ゲート電荷の放電開始のタイミングが変わり、IGBTがオフするタイミングを変えることができることから、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきによる発光光量の過不足を閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間で補正することができる。
【0013】
また、本発明に係るストロボ装置の発光光量補正手段は、閃光放電管に対する発光停止の開始からゲート電荷の放電開始をデジタル遅延回路によって遅延させる遅延手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する構成を採用することができる。
【0014】
かかる構成からなるストロボ装置によれば、デジタル遅延回路の遅延時間を変えることにより、ゲート電荷の放電開始のタイミングが変わり、IGBTがオフするタイミングを変えることができることから、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差による発光光量のばらつきによる発光光量の過不足を閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間で補正することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明は、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差を考慮せずに、発光光量を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るストロボ装置の実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
(第一実施形態)
まず、第一実施形態に係るストロボ装置の構造について、図1を参酌しつつ説明する。ストロボ装置1は、キセノン管などの閃光放電管2と、閃光放電管2を励起するためのトリガ回路3と、閃光放電管2の発光を制御するIGBT4と、閃光放電管2で放電する電荷を蓄積する(充電する)メインコンデンサ5と、IGBT4をオン・オフ動作させて閃光放電管2の発光を制御する発光制御回路6と、電源Vddから供給される電源電圧をIGBT4の駆動電圧に合わせるために昇圧する昇圧回路7とを備えている。
【0017】
発光制御回路6は、閃光放電管2を発光開始させるためにIGBT4を充電してオン状態にさせるゲート充電手段8と、閃光放電管2を発光停止させるためにIGBT4を放電してオフ状態にさせるゲート放電手段9とを備えている。
【0018】
ゲート充電手段8は、入力される発光信号Sがオン状態になると、IGBT4のゲート電荷の充電を開始して、IGBT4をオン状態にさせるゲート充電回路10と、発光信号Sのオン・オフ動作によって、ゲート充電手段8とゲート放電手段9とが切り替わるゲート充放電切替回路11とを備えている。ここで、ゲート充放電切替回路11は、発光信号Sがオン状態になると、ゲート充電手段8に切り替わり、発光信号Sがオフ状態になると、ゲート放電手段9に切り替わるようになっている。
【0019】
よって、ゲート充電手段8は、発光信号Sがオン状態になると、ゲート充放電切替回路11がゲート充電回路10に切り替わり、ゲート充電回路10がIGBT4のゲート電荷の充電を開始して、ゲート電圧Vgが上昇する。そして、ゲート電圧Vgが閾値Vthを超えると、IGBT4がオン状態になる。
【0020】
ゲート放電手段9は、入力される発光信号Sがオフ状態になると、IGBT4のゲート電荷の放電を開始して、IGBT4をオフ状態にさせるゲート放電回路12と、発光信号Sのオン・オフ動作によって、ゲート充電手段8とゲート放電手段9とが切り替わるゲート充放電切替回路11とを備えている。また、ゲート放電回路12は、IGBT4の保護のため、IGBT4の放電を二段階で行うようになっており、可変の電流源I1gによる放電電流でゲート電荷を放電させる第一段階ゲート放電回路13と、固定の電流源I2gによる放電電流でゲート電荷を放電させる第二段階ゲート放電回路14と、さらに、ゲート電圧Vgによって、第一段階ゲート放電回路13と第二段階ゲート放電回路14とが切り変わるゲート放電切替回路15と、ゲート電圧Vgとゲート基準電圧Vrefとを比較した結果を出力するゲート放電電圧比較回路16とを備えている。
【0021】
ここで、ゲート放電電圧比較回路16は、コンパレータなどであり、非反転入力端子16aに印加されているゲート電圧Vgが基準電圧入力端子16bに印加されているゲート基準電圧Vref未満であれば、出力端子16cの電位が低レベルのままであるが、ゲート電圧Vgがゲート基準電圧Vref以上になると、出力端子16cの電位が低レベルから高レベルに反転するようになっている。また、ゲート放電切替回路15は、出力端子16cが高レベルを出力するとき、第一段階ゲート放電回路13に切り替わり、出力端子16cが低レベルを出力するとき、第二段階ゲート放電回路14に切り替わるようになっている。
【0022】
よって、ゲート放電手段9は、発光信号Sがオフ状態になると、ゲート充放電切替回路11がゲート放電回路12に切り替わり、ゲート電圧Vgがゲート基準電圧Vrefより高いとき、ゲート放電電圧比較回路16が高レベルを出力し、ゲート放電切替回路15が第一段階ゲート放電回路13に切り替わり、ゲート抵抗R1gによる放電電流でゲート電荷を放電する。そして、ゲート電圧Vgがゲート基準電圧Vrefより低くなると、ゲート放電切替回路15が第二段階ゲート放電回路14に切り替わる。また、ゲート電圧Vgがゲート基準電圧Vrefより低いときや低くなったときは、ゲート放電電圧比較回路16が低レベルを出力し、ゲート放電切替回路15が第二段階ゲート放電回路14に切り替わり、ゲート抵抗R2gによる放電電流でゲート電荷を放電する。そして、ゲート電圧Vgが閾値Vthより低くなると、IGBT4がオフ状態になる。
【0023】
さらに、ゲート放電手段9は、第一段階ゲート放電回路13の複数の電流源I1gの一つを選択することで、ゲート電荷の放電速度が変わり、IGBT4がオフ状態になるタイミングが変わることから、閃光放電管2が発光停止するタイミングを補正することができる発光光量補正手段であり、第一段階ゲート放電回路は、補正手段である。
【0024】
次に、第一実施形態に係るストロボ装置1について、発光光量のばらつきを各構成要素の組み立て後に発光制御回路6のゲート放電手段9で補正する方法を、図2を参酌しつつ、説明する。
【0025】
まず、ストロボ装置1の発光光量を計測して、閃光放電管2の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつき量を計測する。発光光量の算出方法は、従来技術と同様とし、ストロボ装置1に模擬的にテスト発光信号Stを入力し、発光光量を算出するものである。ここで、テスト発光信号Stとは、発光開始から発光停止までオン状態が継続するパルス状の信号とする。
【0026】
最初に、組み立て後の発光制御回路6の入力端子Iにテスト発光信号Stを入力する。テスト発光信号Stがオフ状態からオン状態になると(S0)、ゲート充電手段8のゲート充放電切替回路11がゲート充電回路10に切り替わり、ゲート充電回路10がIGBT4のゲート電荷を充電する(S1)。次に、ゲート電圧Vgが閾値Vthを超え、IGBT4がオン状態になる(S2)。IGBT4がオン状態になることで、メインコンデンサ5に蓄積された電荷がトリガ回路3に流れ、閃光放電管2にトリガ電圧が印加され、閃光放電管2が発光開始する(S3)。
【0027】
次に、テスト発光信号Stがオン状態からオフ状態になる(S4)と、ゲート放電手段9のゲート充放電切替回路11がゲート放電回路12に切り替わり、ゲート放電電圧比較回路16がゲート基準電圧VrefよりIGBT4のゲート電圧Vgが高いため、ゲート放電切替回路15が第一段階ゲート放電回路13に切り替わり、IGBT4が第一段階ゲート放電回路13の選択された電流源I1gによりゲート電荷を放電される(S5)。
【0028】
やがて、ゲート電圧Vgがゲート基準電圧Vrefより低くなり(S6)、ゲート放電切替回路15が第二段階ゲート放電回路14に切り替わり、IGBT4が第二段階ゲート放電回路14の電流源I2gによりゲート電荷を放電される(S7)。
【0029】
さらに、ゲート電圧Vgが閾値Vthより低くなり、IGBT4がオフ状態になって(S8)、閃光放電管2が発光停止する(S9)。その間、閃光放電管2が発光開始してから閃光放電管2が完全に発光停止するまでの発光光量を、テスト発光光量Qtとして発光光量計測装置で測定する。
【0030】
次に、基準発光光量Qと、発光光量計測装置で計測されたテスト発光光量Qtとを比較して誤差光量を求め、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qとを一致させるために、閃光放電管2の発光時間Trを補正する。具体的には、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより多く発光過剰なときは、第一段階ゲート放電回路13の電流源I1gを減らして、IGBT4のゲート電荷の放電速度を上げることで閃光放電管2の発光時間Trを短縮する。
短縮された発光時間分、誤差光量に当たる発光光量が低減されてテスト発光光量Qtと基準発光光量Qが一致する。
【0031】
また、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより少なく発光不足なときは、第一段階ゲート放電回路13の電流源I1gを増やし、IGBT4のゲート電荷の放電速度を下げることで閃光放電管2の発光時間Trを延長し、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qを一致させる。
【0032】
このようにして補正した第一段階ゲート放電回路13の複数の電流源I1gのどれを選択するかは、不揮発性メモリであるEEPROMに記録される。
【0033】
よって、組み立て後に一度、第一段階ゲート放電回路13の複数ある電流源I1gの内、最適なものを選択すれば、次回以降のストロボ装置1の発光光量は、補正した第一段階ゲート放電回路13の電流源I1gにより、ゲート放電を行うことができ、プリ発光においても本発光においても目標ストロボ光量に一致させることができるため、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつきが生じることがなくなる。
【0034】
第一実施形態に係るストロボ装置1についての説明は以上である。次に、第二実施形態に係るストロボ装置について、図3を参酌しつつ説明する。また、第一実施形態に係るゲート放電回路12は、IGBT4の保護のため、IGBT4の放電を二段階でおこなうようしたが、第二実施形態では、アナログ遅延回路20の遅延時間を調整することにより、IGBT4の放電を一段階で行えるようにしたものを例とする。なお、第一実施形態に係るストロボ装置1と同様な部分については、同一符号を振り、説明を省略するものとする。
(第二実施形態)
まず、第二実施形態に係るストロボ装置17の構造について説明する。第二実施形態に係る発光制御回路18は、ゲート充電手段8と、閃光放電管2を発光停止させるためにIGBT4を放電してオフ状態にさせるゲート放電回路19と、入力される発光信号Sをゲート放電回路19に出力するのを遅延するアナログ遅延回路20とを備えている。なお、ゲート放電回路19は、二段階放電を行わないことから、第一実施形態に係るゲート放電回路12のように二段階に分ける必要がなく、第一段階ゲート放電回路13、ゲート放電切替回路15、及び、ゲート放電電圧比較回路16とを備えていないものとする。また、アナログ遅延回路20は、例えば、コンデンサに電荷を充放電するために要する時間を利用して、入力される発光信号Sを遅延させて出力するものであり、遅延回路用のコンデンサと遅延回路用の複数の抵抗を備えている。よって、アナログ遅延回路20は、発光信号Sがオフ状態になると、遅延回路用の複数の抵抗の一つを選択して、遅延回路用のコンデンサへの充電に係る時間分を遅延させることができ、選択された抵抗により遅延時間を変更することができる発光光量補正手段であり、遅延回路用の複数の抵抗値は、遅延手段である。
【0035】
次に、第二実施形態に係るストロボ装置17について、発光光量のばらつきを各構成要素の組み立て後に発光制御回路18のアナログ遅延回路20で補正する方法を、図4を参酌しつつ、説明する。なお、第一実施形態と同様に、まず、ストロボ装置17の発光光量を計測して、閃光放電管2の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつき量をストロボ装置17に模擬的にテスト発光信号Stを入力し、発光光量を算出するものとする。
【0036】
最初に、組み立て後の発光制御回路18の入力端子Iにテスト発光信号Stを入力する。テスト発光信号Stがオフ状態からオン状態になると(S0)、ゲート充電手段8のゲート充放電切替回路11がゲート充電回路10に切り替わり、ゲート充電回路10がIGBT4のゲート電荷が充電される(S1)。次に、ゲート電圧Vgが閾値Vthを超え、IGBT4がオン状態になる(S2)。IGBT4がオン状態になることで、メインコンデンサ5に蓄積された電荷がトリガ回路3に流れ、閃光放電管2にトリガ電圧が印加され、閃光放電管2が発光開始する(S3)。
【0037】
次に、テスト発光信号Stがオン状態からオフ状態になる(S4)と、テスト発光信号Stがアナログ遅延回路20に入力され、遅延回路用の可変抵抗による充電電流で遅延回路用のコンデンサを充電する(S5)。遅延回路用のコンデンサの充電が完了すると、テスト発光信号Stをゲート放電回路19に出力する(S6)。そして、ゲート放電回路19にテスト発光信号Stが入力され、ゲート放電回路19のゲート充放電切替回路11がゲート放電回路12に切り替わり、ゲート電圧Vgが第二段階ゲート放電回路14のゲート抵抗R2gによりIGBT4のゲート電荷が放電される(S7)。
【0038】
さらに、ゲート電圧Vgが閾値Vthより低くなり、IGBT4がオフ状態になって(S8)、閃光放電管2が発光停止する(S9)。その間、閃光放電管2が発光開始してから閃光放電管2が完全に発光停止するまでの発光光量を、テスト発光光量Qtとして発光光量計測装置で測定する。
【0039】
次に、基準発光光量Qと、発光光量計測装置で計測されたテスト発光光量Qtとを比較して誤差光量を求め、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qとを一致させるために、閃光放電管2の発光時間Trを補正する。具体的には、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより多く発光過剰なときは、アナログ遅延回路20の遅延回路用の小さい値の抵抗を選択し、遅延回路用のコンデンサに蓄電された電荷の放電速度を上げて、発光信号Sの遅延時間を短縮する。短縮された発光時間分、誤差光量に当たる発光光量が低減されてテスト発光光量Qtと基準発光光量Qが一致する。
【0040】
また、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより少なく発光不足なときは、アナログ遅延回路20の遅延回路用の大きい値の抵抗を選択し、遅延回路用のコンデンサに蓄電された電荷の放電速度を下げて、発光信号Sの遅延時間を延長することで、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qを一致させる。
【0041】
このようにして補正したアナログ遅延回路20の遅延回路用の複数の抵抗のどれを選択するかは、不揮発性メモリであるEEPROMに記録される。
【0042】
よって、組み立て後に一度、アナログ遅延回路20の遅延回路用の複数ある抵抗の内、最適なものを選択すれば、次回以降のストロボ装置1の発光光量は、アナログ遅延回路20の遅延回路用の選択された抵抗により、ゲート放電を行うことができ、プリ発光においても本発光においても目標ストロボ光量に一致させることができるため、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつきが生じることがなくなる。
【0043】
第二実施形態に係るストロボ装置17についての説明は以上である。次に、第三実施形態に係るストロボ装置について、図5を参酌しつつ説明する。なお、第一及び第二実施形態に係るストロボ装置1、17と同様な部分については、同一符号を振り、説明を省略するものとする。
(第三実施形態)
まず、第三実施形態に係るストロボ装置21の構造について説明する。第三実施形態に係る発光制御回路22は、第二実施形態におけるゲート充電手段8及びゲート放電手段9に当たるIGBT4のゲート電荷の充電と放電を制御するIGBTドライバ23と、入力される発光信号SをIGBTドライバ23に出力するのを遅延するデジタル遅延回路24とを備えている。
【0044】
デジタル遅延回路24は、発光停止のタイミングを遅延する信号遅延部25と、発光信号Sのオン・オフ状態から発光開始と発光停止を判断する信号受信部26とを備えている。
【0045】
信号遅延部25は、高周波クロックを発振する発振回路27と、クロックパルスをカウントするパルスカウンタ回路28と、カウント値が基準カウント値になると出力するカウント値比較回路29とを備え、基準カウント値の初期値若しくは補正値を記憶させたEEPROM30と通信可能となっている。
【0046】
ここで、パルスカウンタ回路28は、発振回路27からのオン・オフ状態を入力する入力端子と、カウント値比較回路29へオン・オフ状態を出力する出力端子と、カウント値をリセットするリセット端子とを備えており、このリセット端子にも発光信号Sが直接入力されるようになっており、発光信号Sがオン状態になるたびにカウント値がリセットされるようになっている。また、EEPROM30は、カウント値比較回路29へ基準カウント値を出力する出力端子と、外部からカウント値を入出力することができる入出力端子とを備えており、外部からカウント値を書き換え可能となっている。また、カウント値は、初期値として、本実施例では、5が入力されている。
【0047】
なお、発振回路27は、発振周波数を高く設定することで、遅延時間の精度を高めるようにしてもよい。
【0048】
信号受信部26は、入力される発光信号Sがオン状態になると、オン状態になってIGBTドライバ23に出力し、入力される発光信号Sがオフ状態になると、オン状態になって信号遅延部25に出力し、信号遅延部25からオン状態を出力されるまで、IGBTドライバ23にオン状態で出力し続け、信号遅延部25がオン状態になると、オフ状態になってIGBTドライバ23に出力するように構成されている。
【0049】
例えば、信号受信部26は、信号遅延部25の論理否定と発光信号Sとの論理和の結果をIGBTドライバ23に出力するOR回路31と、発光信号Sの論理否定と信号遅延部25の論理否定との論理積の結果を発振回路27に出力するAND回路32と、AND回路32に発光信号Sの論理否定を出力する第一NOT回路33と、OR回路31及びAND回路32に信号遅延部25の論理否定を出力する第二NOT回路34とを備えている。
【0050】
よって、発光制御回路22は、発光信号Sがオン状態になると、OR回路31がオン状態になって、IGBTドライバ23にオン状態を出力する。
【0051】
また、発光制御回路22は、発光信号Sがオフ状態になると、入力端子Iと接続されたOR回路31の入力端子がオフ状態になるため、第二NOT回路34の出力状態により、OR回路31の出力状態が替わる。まず、カウント値比較回路29は、AND回路32の出力状態がオフ状態であるため、発振回路27は発振しておらず、パルスカウンタ回路28のカウント値がゼロのままであり、基準カウント値である5と異なり、オフ状態である。カウント値比較回路29の出力状態が第二NOT回路34により論理否定されオン状態となるため、AND回路32は、オン状態となる。よって、発振回路27の入力端子がオン状態になり、発振回路27が発振し、発振回路27の発振パルス数をパルスカウンタ回路28によりカウントした結果をカウント値比較回路29に入力する。カウント値比較回路29では、EEPROM30の基準カウント値と比較し、一致すると、第二NOT回路34に出力する。第二NOT回路34で論理否定されてオフ状態になり、OR回路31の入力端子がオフ状態となるため、OR回路31の出力状態がオフ状態になる。よって、IGBTドライバ23の入力がオフ状態になる。
【0052】
さらに、デジタル遅延回路24は、EEPROM30の基準カウント値を書き替えることで、発振回路27の発振パルス数を変えることにより、IGBTドライバ23へ入力する遅延時間を変更することができる発光光量補正手段であり、信号遅延部25は、遅延手段である。
【0053】
次に、第三実施形態に係るストロボ装置21について、発光光量のばらつきを各構成要素の組み立て後に発光制御回路22のデジタル遅延回路24で補正する方法を、図6を参酌しつつ、説明する。なお、第一及び第二実施形態と同様に、まず、ストロボ装置21の発光光量を計測して、閃光放電管2の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつき量をストロボ装置21に模擬的にテスト発光信号Stを入力し、発光光量を算出するものとする。
【0054】
最初に、組み立て後の発光制御回路22の入力端子Iにテスト発光信号Stを入力する。テスト発光信号Stがオフ状態からオン状態になると(S0)、OR回路31に入力され、出力状態がオン状態になり、IGBTドライバ23に入力され、IGBT4のゲート電荷が充電される(S1)。次に、ゲート電圧Vgが閾値Vthを超え、IGBT4がオン状態になる(S2)。IGBT4がオン状態になることで、メインコンデンサ5に蓄積された電荷がトリガ回路3に流れ、閃光放電管2にトリガ電圧が印加され、閃光放電管2が発光開始する(S3)。
【0055】
次に、テスト発光信号Stがオン状態からオフ状態になる(S4)と、AND回路32の出力状態がオフ状態であるため、発振回路27が発振しておらず、パルスカウンタ回路28のカウント値がゼロのままであり、カウント値比較回路29が基準カウント値と一致しないため、カウント値比較回路29の出力状態がオフ状態となる。よって、第二NOT回路34に接続される一方のAND回路32の入力端子は、オフ状態であるカウント値比較回路29を第二NOT回路34で論理否定されるため、オン状態となり、第一NOT回路33に接続される他方のAND回路32の入力端子は、オフ状態であるテスト発光信号Stを第一NOT回路33で論理否定されるため、オン状態となり、AND回路32の出力状態は、オン状態となる。よって、発振回路27がオン状態となり、発振回路27の出力状態が発振し、発振回路27のパルス数をパルスカウンタ回路28によりカウントし、その結果を出力としてカウント値比較回路29に入力する(S5)。カウント値比較回路29では、EEPROM30の基準カウント値と比較し、一致するまで出力状態をオフ状態のままとし、一致すると出力状態をオン状態にして第二NOT回路34に出力する(S6)。第二NOT回路34で論理否定されて、オフ状態になり、OR回路31の一方の入力端子をオフ状態にする。このとき、OR回路31の入力端子Iに接続された他方の入力端子がオフ状態であるため、OR回路31の出力状態は、オフ状態になる。よって、IGBTドライバ23の入力がオフ状態になり、IGBT4のゲート電荷が放電される(S7)。
【0056】
やがて、ゲート電圧Vgが閾値Vthより低くなり、IGBT4がオフ状態になって(S8)、閃光放電管2が発光停止する(S9)。その間、閃光放電管2が発光開始してから閃光放電管2が完全に発光停止するまでの発光光量を、テスト発光光量Qtとして発光光量計測装置で測定する。
【0057】
次に、基準発光光量Qと、発光光量計測装置で計測されたテスト発光光量Qtとを比較して誤差光量を求め、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qとを一致させるために、閃光放電管2の発光時間Trを補正する。具体的には、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより多く発光過剰なときは、EEPROM30に記録されている基準カウンタ値の補正値を減らして、発振回路27の発振回数を減らし、発光信号Sの遅延時間を短縮することで、閃光放電管2の発光時間Trを短縮する。
【0058】
短縮された発光時間分だけ閃光放電管2の発光時間Trを短縮し、誤差光量に当たる発光光量が低減されてテスト発光光量Qtと基準発光光量Qが一致する。
【0059】
また、テスト発光光量Qtが基準発光光量Qより少なく発光不足なときは、EEPROM30に記録されている基準カウンタ値の補正値を増やして、発振回路27の発振回数を増やし、発光信号Sの遅延時間を延長することで、閃光放電管2の発光時間Trを延長し、誤差光量に当たる発光光量を増加させて、テスト発光光量Qtと基準発光光量Qを一致させる。
【0060】
このようにして補正した基準カウンタ値は、不揮発性メモリであるEEPROM30に記録される。
【0061】
よって、組み立て後に一度、基準カウンタ値を補正すれば、次回以降のストロボ装置21の発光光量は、補正した基準カウンタ値により、ゲート放電を行うことができ、プリ発光においても本発光においても目標ストロボ光量に一致させることができるため、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつきが生じることがなくなる。
【0062】
なお、本発明に係るストロボ装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、本発明に係るIGBT4のゲート放電について、第一実施形態で二段階で放電する例を、第二・第三実施形態で一段階で放電する例について説明したが、これに限定されるものではなく、IGBT4に合わせて変更することができる。
【0064】
本発明に係るストロボ装置を備えた撮影装置においては、製造時のみならず、使用によって閃光放電管に生じる発光光量変化にも対応するため、撮影装置を調整機器などに接続し、ストロボの発光回数が予め規定された発光回数に達した際に、再度、発光光量測定装置で発光光量を測定して発光光量の過不足を補正しなおし、発光制御を安定させることが出来る。
【0065】
また、閃光放電管の発光に関与する構成要素について、封入ガス圧の違いなどの精度のばらつきから、製造された構成要素ごとに発光光量のばらつきが生じることがある閃光放電管や、閃光放電管から発光された光が反射率や反射角度の製造公差などにより、必要光量が確保できない場合などにおいても有効であることから、反射鏡などの閃光放電管の発光光路に関与する構成要素も含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るストロボ装置は、閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差を考慮せずに、発光光量を制御することが必要な技術分野等の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第一実施形態に係るストロボ装置1の回路構成を示すブロック図
【図2】第一実施形態に係るストロボ装置1であって、(a)発光信号S(テスト発光信号St)の波形を示す図、及び、(b)ゲート電圧Vgの波形を示す図
【図3】第二実施形態に係るストロボ装置17の回路構成を示すブロック図
【図4】第二実施形態に係るストロボ装置17であって、(a)発光信号S(テスト発光信号St)の波形を示す図、(b)アナログ遅延回路20通過後の発光信号Sの波形を示す図、及び、(c)ゲート電圧Vgの波形を示す図
【図5】第三実施形態に係るストロボ装置21の回路構成を示すブロック図
【図6】第三実施形態に係るストロボ装置21であって、(a)発光信号S(テスト発光信号St)の波形を示す図、(b)AND回路32の出力波形を示す図、(c)発振回路27の出力波形を示す図、(d)パルスカウンタ回路28の出力波形を示す図、(e)カウント値比較回路29の出力波形を示す図、及び、(f)発光制御回路22の出力波形を示す図、(g)ゲート電圧Vgの波形を示す図
【符号の説明】
【0068】
1、17、21 ストロボ装置
2 閃光放電管
4 IGBT
6、18、22 発光制御回路
8 ゲート充電手段
9、19 ゲート放電手段
20 アナログ遅延回路
23 デジタル遅延回路
Vg ゲート電圧
S 発光信号
Tr 発光時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閃光放電管と、閃光放電管の発光を制御するIGBTと、IGBTをオン・オフ動作させて閃光放電管の発光を制御する発光制御回路とを備えるストロボ装置において、発光制御回路が閃光放電管の発光に関与する構成要素の公差に起因する発光光量のばらつきを閃光放電管の発光開始からIGBTがオフするまでにかかる発光時間で補正可能な発光光量補正手段を備えることを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
発光光量補正手段は、ゲート電荷を放電させる放電電流を可変とする放電手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
発光光量補正手段は、閃光放電管に対する発光停止の開始からゲート電荷の放電開始をアナログ遅延回路によって遅延させる遅延手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項4】
発光光量補正手段は、閃光放電管に対する発光停止の開始からゲート電荷の放電開始をデジタル遅延回路によって遅延させる遅延手段により、閃光放電管の発光開始からIGBTをオフするまでにかかる発光時間を補正する請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項5】
請求項1から4記載のストロボ装置を備えることを特徴とする撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−134005(P2010−134005A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307175(P2008−307175)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】