説明

ストロボ装置

【課題】発光素子周辺から熱を効率良く拡散させて全体の均熱化を早めることによって放熱性を高め、発光素子や電子部品への熱的悪影響を軽減することができるストロボ装置を提供すること。
【解決手段】ストロボ光を出射するLEDチップ(発光素子)4と、該LEDチップ4の外周を囲むように配置され、前記LEDチップ4からのストロボ光を照射対象に向けて反射させるリフレクタ12と、該リフレクタ12の前面開口部を覆うレンズ13を備えたストロボ装置3において、前記LEDチップ4と前記レンズ13との間に空間を有し、前記リフレクタ12の内側面に複数の放熱フィン12aを形成する。又、前記放熱フィン12aを前記LEDチップ4を中心として前面視放射状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影のための補助光としてのストロボ光を照射対象に向けて照射するためのストロボ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、デジタルスチールカメラ等に内蔵されるストロボ装置は、夜間や雨天時等のように周囲が暗い環境下において所定の撮影有効範囲内での撮影を可能とするためにストロボ光を照射対象である被写体に向けて照射するものであって、ストロボ光を出射する光源と、該光源からのストロボ光を被写体に向けて反射させるリフレクタと、該リフレクタの前面開口部を覆ってストロボ光を集光させるレンズを備えている。
【0003】
ところで、近年、ストロボ装置の光源としてLED(発光ダイオード)が使用されつつあるが、LEDから出射されるストロボ光の明るさは未だ不十分であり、該LEDにより多くの電力を投入する必要がある。又、ストロボ装置には更なる薄型化と小型化が要求されているため、LEDに多くの電力を投入すると該LEDの発熱量が増えるために熱的に不利となる。このため、ストロボ装置には効率良く放熱する機構が必要になってくる。特に、LEDを実装する基板にIC等の電子部品を搭載して高機能化を図る場合、LEDのみならず、電子部品が発熱源となるために更に効率良く放熱する必要がある。
【0004】
又、デジタルスチールカメラでは連射撮影する機会が増えてきており、LEDが冷却される前に該LEDが点灯されるためにストロボ装置に熱が籠ってしまい、LEDの寿命が短くなるという問題がある。これと同様の問題はデジタルビデオカメラについても同様に発生し、動画撮影する際にLEDの冷却が追いつかないために該LEDの寿命が短くなってしまう。
【0005】
上記問題を解決する方法として、基板の背面に放熱フィンを形成することが考えられる。
【0006】
又、特許文献1には、発光素子をリードや支持体の凹部に収容することによって封止樹脂からLEDチップに作用する収縮・膨張応力を低減するとともに、発光素子の側面に隣設して熱伝導性が高い樹脂を設けることによって放熱性を改善した半導体発光装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−093672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ストロボ装置の放熱性を高めるために基板の背面に放熱フィンを形成する方法を採用した場合、薄型化が要求されるカメラ機能付き携帯電話用のストロボ装置においては、他の回路基板があるために放熱フィンを形成するための十分なスペースを確保することができないという問題がある。仮に基板の背面に放熱フィンを形成することができたとしても、筐体内部に熱が籠ってしまうため、LED若しくは他の電子部品に熱的悪影響を及ぼしてしまう。
【0009】
又、特許文献1において提案されたように発光素子の側面に隣設して熱伝導性が高い樹脂を設けるだけでは、必要十分な放熱性を確保することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、発光素子周辺から熱を効率良く拡散させて全体の均熱化を早めることによって放熱性を高め、発光素子や電子部品への熱的悪影響を軽減することができるストロボ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ストロボ光を出射する発光素子と、該発光素子の外周を囲むように配置され、前記発光素子からのストロボ光を照射対象に向けて反射させるリフレクタと、該リフレクタの前面開口部を覆うレンズを備えたストロボ装置において、前記発光素子と前記レンズとの間に空間を有し、前記リフレクタ内側面に複数の放熱フィンを形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記放熱フィンを前記発光素子を中心として前面視放射状に形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記発光素子を実装する基板に搭載された電子部品をモールドする封止樹脂に前記リフレクタを形成するとともに、該封止樹脂を熱伝導性の高い樹脂で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、発光素子において発生する熱は、リフレクタに形成された複数の放熱フィンから発光素子とレンズとの間の空間に至る第1の放熱経路を経て空間に拡散するため、ストロボ装置全体の均熱化が早められる。そして、発光素子とレンズとの間の空間に拡散した熱は、レンズを通過する第2の放熱経路を経て大気中に放射されるため、高い放熱性が得られて発光素子や電子部品への熱的悪影響が軽減される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、リフレクタに放熱フィンを発光素子を中心として放射状に形成したため、放熱フィンの根元部分と発光素子との距離を最小限に抑えることが可能となり、発光素子からの熱が第1の放熱経路を経て発光素子とレンズとの間の空間に効率良く且つ均一に拡散し、ストロボ装置全体の均熱化が早められる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、リフレクタが形成された封止樹脂を熱伝導性の高い樹脂で構成したため、発光素子からの熱の一部は封止樹脂から基板へと効率良く伝導して基板から放熱され、放熱性が更に高められて発光素子や電子部品への熱的悪影響が効果的に軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るストロボ装置を備える携帯電話の背面図である。
【図2】(a)は本発明に係るストロボ装置の正面図、(b)は(a)の矢視A方向の図である。
【図3】本発明に係るストロボ装置の分解斜視図である。
【図4】図2(a)のB−B線断面図である。
【図5】本発明に係るストロボ装置のリフレクタ形状を示す封止樹脂の正面図である。
【図6】本発明に係るストロボ装置のリフレクタ形状を示す封止樹脂の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るストロボ装置を備える携帯電話の背面図、図2(a)は同ストロボ装置の正面図、図2(b)は図2(a)の矢視A方向の図、図3は同ストロボ装置の分解斜視図、図4は図2(a)のB−B線断面図、図5は本発明に係るストロボ装置のリフレクタ形状を示す封止樹脂の正面図、図6は同封止樹脂の斜視図である。
【0020】
図1に示すカメラ機能付き携帯電話1の背面上部には撮像カメラ2が設けられており、その横には本発明に係るストロボ装置3が設けられている。このストロボ装置3は、図2〜図4に示すように、光源として発光素子である2つのLEDチップ4を備えており、これらのLEDチップ4は薄い矩形平板状の基板5上に実装されている。ここで、図4に詳細に示すように、各LEDチップ5の表面は蛍光体6によって被覆されている。
【0021】
前記基板5はアルミニウムやセラミック等の熱伝導性の高い材料によって構成されており、その上面にはLEDチップ4を駆動するICや抵抗、コンデンサ等の電子部品7が実装され、基板5の下面には2つの電極8が取り付けられている。そして、これらの電極8には金属製のコンタクトピン9がそれぞれ接触しており、これらのコンタクトピン9によって基板5が筐体10側に押圧されて固定されるとともに、不図示の電源(バッテリ)から電子部品7を介してLEDチップ4に電力が供給される。
【0022】
ところで、基板5の上面に実装された前記電子部品7は封止樹脂11によってモールドされているが、この封止樹脂11には、図4に示すように、基板5上に実装されたLEDチップ4を中心としてLEDチップ4を囲むように前面側(図4の上方)に向かって広がるテーパ円孔状のリフレクタ12が各LEDチップ4についてそれぞれ形成されている(図5及び図6参照)。そして、各リフレクタ12内側には、図5及び図6に示すように、複数の放熱フィン12aがLEDチップ4を中心としてそれぞれ前面視放射状に形成されており、各放熱フィン12aの斜面は反射面を形成している。封止樹脂11は熱伝導性の高い樹脂で構成されている。ここで、熱伝導性の高い樹脂には、封止樹脂11自体が熱伝導性の高い性質を有する樹脂であるものの他に、通常の樹脂に熱伝導性の高いフィラー(金属粉末、グラファイト、カーボンブラック又は窒化アルミニウムや窒化ホウ素、アルミナ等の燒結セラミック等)が分散されているものでも良い。
【0023】
そして、図4に示すように、カメラ機能付き携帯電話1の筐体10の背面であって、且つ、リフレクタ12が形成された箇所には細長い矩形の嵌合孔10aが形成されており、この嵌合孔10aには光透過性の高い透明樹脂から成る矩形のレンズ13が嵌め込まれて固定されている。ここで、レンズ13の外面は筐体10の外面と面一の平坦面を形成しており、レンズ13の内面には光を屈折させて集光させるためのカット13aが形成されている。尚、レンズ13の内面に形成されたカット13aは、リフレクタ12に形成された複数の放熱フィン12aの形状に応じてその傾きが決定されている。
【0024】
而して、不図示の電源(バッテリ)から互いに接触するコンタクトピン9と電極8及び電子部品7を経て各LEDチップ4に電力(電流)が供給されると、各LEDチップ4がそれぞれ起動され、各LEDチップ4からストロボ光が出射される。すると、このストロボ光は、リフレクタ12及びこれに形成された放熱フィン12aの反射面によって反射してレンズ13に向かい、レンズ13の内面に形成されたカット13aによって屈折して集光し、レンズ13から出射して撮影の補助光として被写体を照射する。
【0025】
この場合、各LEDチップ4において発生する熱は、図4に矢印にて示すように、リフレクタ12に形成された複数の放熱フィン12aからLEDチップ4とレンズ13との間の空間Sに至る第1の放熱経路を経て空間Sに拡散するため、ストロボ装置3全体の均熱化が早められる。そして、LEDチップ4とレンズ13との間の空間Sに拡散した熱は、図4に矢印にて示すようにレンズ13を通過する第2の放熱経路を経て大気中に放射されるため、高い放熱性が得られてLEDチップ4や電子部品7への熱的悪影響が軽減されてこれらの寿命延長が図られる。
【0026】
又、本実施の形態では、各リフレクタ12に複数の放熱フィン12aをLEDチップ4を中心として放射状に形成したため、放熱フィン12aの根元部分とLEDチップ4との距離を最小限に抑えることが可能となり、各LEDチップ4からの熱が第1の放熱経路を経てLEDチップ4とレンズ13との間の空間Sに効率良く且つ均一に拡散し、ストロボ装置3全体の均熱化が早められる。
【0027】
更に、本実施の形態では、リフレクタ12が形成された封止樹脂11に熱伝導性の高いフィラーを分散させ、或いは封止樹脂11自体を熱伝導性の高い樹脂で構成したため、各LEDチップ4からの熱の一部は封止樹脂11から基板5へと効率良く伝導して基板5から放熱され、これによってストロボ装置3の放熱性が更に高められてLEDチップ4や電子部品7への熱的悪影響が効果的に軽減される。
【0028】
尚、リフレクタ12に放熱フィン12aを設けたことにより、リフレクタ12はLEDチップ4から出射する光を反射する反射面としての機能が害されることはない。
【0029】
又、以上の実施の形態では、光源として2つのLEDチップ4を使用したが、LEDチップ4の個数は必要な光量に応じて任意に選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、カメラ機能付き携帯電話以外に、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、防犯カメラ、車載カメラ等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 カメラ機能付き携帯電話
2 撮像カメラ
3 ストロボ装置
4 LEDチップ(発光素子)
5 基板
6 蛍光体
7 電子部品
8 電極
9 コンタクトピン
10 筐体
10a 筐体の嵌合孔
11 封止樹脂
12 リフレクタ
12a 放熱フィン
13 レンズ
13a レンズのカット
S 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロボ光を出射する発光素子と、該発光素子の外周を囲むように配置され、前記発光素子からのストロボ光を照射対象に向けて反射させるリフレクタと、該リフレクタの前面開口部を覆うレンズを備えたストロボ装置において、
前記発光素子と前記レンズとの間に空間を有し、前記リフレクタ内側面に複数の放熱フィンを形成したことを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
前記放熱フィンを前記発光素子を中心として前面視放射状に形成したことを特徴とする請求項1記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記発光素子を実装する基板に搭載された電子部品をモールドする封止樹脂に前記リフレクタを形成するとともに、該封止樹脂を熱伝導性の高い樹脂で構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のストロボ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−93504(P2012−93504A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239743(P2010−239743)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】