説明

ストーマ装具の面板の開口形成方法、この方法において用いられる型シート及びシール、並びに面板及びストーマ装具

【課題】患者のストーマに精密に合った形状の開口をストーマ装具の面板に形成する方法を提供する。
【解決手段】本発明のストーマ装具の面板に開口を形成する方法は、型シートに形成された、患者のストーマに合った形状の孔と同一形状の塗りつぶし部をシール上に印刷する工程と、塗りつぶし部の印刷されたシールを面板に貼り付ける工程と、面板に貼り付けられたシールの塗りつぶし部の輪郭に沿って面板をカットする工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーマ装具の面板に開口を形成する方法、この方法において用いられる型シート及びシール、並びにこの方法によって開口が形成された面板及びストーマ装具に関する。
【背景技術】
【0002】
結腸切除術、回腸切除術及び尿路変更術等の外科処置では、腹部等の皮膚に、排泄物を排出するための開口、いわゆるストーマを形成することなる。ストーマの形成された患者は、排泄物の排出を制御することができないため、ストーマから排出された排泄物を収集するためのストーマ装具を利用することが必要になる。
【0003】
一般に、ストーマ装具は、患者のストーマ周りの皮膚に貼り付けられる面板(ウエハ)と、この面板に連結されてストーマから排出された排泄物を収集するストーマ袋(パウチ)とを備える。ストーマ装具は大別してワンピース型とツーピース型とに分かれる。ワンピース型のストーマ装具では面板とストーマ袋とが一体的に取り外し不能に形成される。一方、ツーピース型のストーマ装具では面板とストーマ袋とが別体として取り外し可能に形成される。このため、ツーピース型のストーマ装具では、面板を皮膚に貼り付けたままストーマ袋のみの交換を行うことができる。
【0004】
ここで、一般に、ストーマの形状等は患者毎に異なっている。したがって、患者は、斯かるストーマ装具を使用する際に、通常、ストーマ装具の面板に自らのストーマに合った形状の開口が形成されるように面板をカットし、このように面板をカットした上で面板をストーマ周りの皮膚に貼り付けることが必要とされる。
【0005】
しかしながら、例えば、患者が不器用であったり、視力が悪かったり、ストーマが複雑な形状であったりすると、患者にとって面板のカットを適切に行うことが困難な場合が多い。この結果、患者のカットにより面板に形成される開口の形状が実際のストーマとは異なる形状になってしまう。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に記載のストーマ装具の製造方法では、患者のストーマやストーマ周りの皮膚の形状を電子的に測定し、測定された形状に基づいて選択された物理的特性を有するように面板を形成することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、患者自身が面板のカットをせずに済むようにする方法の一つとして、台紙を用いた方法が考えられる。この方法では、まず、患者が自らのストーマの形状を台紙に記入し、記入した台紙をカットサービス提供者へFAX又は郵送する。FAX又は郵送を受けたカットサービス提供者は、台紙に記入された形状と同一形状の開口を面板に形成するように該面板をカットする。これにより、患者は自らのストーマの形状を記入した台紙を郵送又はFAXするだけで、ストーマと同様な形状の開口の開いた面板を入手することができる。
【0009】
ところが、患者が自らのストーマの形状を記入した台紙をFAXした場合、FAXの送信側と受信側とで記入されたストーマ孔の形状が変わってしまう場合がある。この場合、FAXにより送信された台紙のストーマ孔の形状に基づいて面板をカットすると、面板には患者の意図していた形状とは異なる形状の開口が形成されてしまう。また、患者が自らのストーマの形状を比較的太い線で台紙上に描いた場合、この線の内側に沿って面板をカットする場合とこの線の外側に沿って面板をカットする場合とで開口の大きさが異なる。したがって、この場合にも面板には患者の意図していた形状とは異なる形状の開口が形成されてしまう。
【0010】
このように面板に形成される開口の形状が患者の意図していた形状とは異なると、すなわち面板に形成される開口の形状が実際のストーマの形状と異なると、面板の開口が小さすぎて面板の一部がストーマに触れてしまったり、面板の開口が大きすぎてストーマ周りの皮膚がストーマから排出される排泄物に触れてしまったりする。これによりストーマの損傷や皮膚の炎症等を招くことになる。
【0011】
そこで、上記問題に鑑みて本発明の目的は、患者のストーマに精密に合った形状の開口をストーマ装具の面板に形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第1の発明では、ストーマ装具の面板に開口を形成する方法において、型シートに形成された、患者のストーマに合った形状の孔と同一形状の塗りつぶし部をシール上に印刷する工程と、上記塗りつぶし部の印刷されたシールを面板に貼り付ける工程と、該面板に貼り付けられたシールの塗りつぶし部の輪郭に沿って面板をカットする工程とを具備する、開口形成方法が提供される。
【0013】
第1の発明によれば、ストーマの形状を記入する台紙ではなく、ストーマの形状に合わせて孔がカットされる型シートが用いられる。この型シートは、輪郭線が描かれているわけではないから、FAXされることができず、直接送付されることになる。したがって、FAX中に型シートに形成された孔の形状が変わってしまうことはない。また、型シートはペン等により輪郭線が引かれるわけではなく直接カットされるため、輪郭線が太いことにより、最終的に面板には患者の意図していた形状とは異なる形状の開口が形成されてしまうことが防止される。
【0014】
また、第1の発明によれば、シール上には塗りつぶし部が印刷される。ここで、シール上に面板カット用の輪郭線を引いた場合には上述したように輪郭線の内側に沿ってカットをするのか外側に沿ってカットをするのか不明であると共に、間違った方に沿ってカットを行うと患者の意図した形状とは異なる形状の開口が形成されてしまう。これに対して、第1の発明によれば、面板をカットすべき領域が塗りつぶされるため、塗りつぶし部の外側輪郭に沿ってカットを行えばよいことは明らかであり、カットすべき基準の間違いにより開口の形状の誤差が発生するのを防止することができる。
【0015】
第2の発明では、第1の発明において、上記塗りつぶし部をシール上に印刷する工程は、患者のストーマに合った形状の孔が形成された型シートをスキャンする工程と、上記スキャンされた型シートの画像データ上で上記孔に相当する部分を塗りつぶす工程と、上記塗りつぶしが行われた画像データの画像をシール上に印刷する工程とを具備する。
第2の発明によれば、画像データ上で塗りつぶしが行われるため、塗りつぶしを容易に行うことができる。
【0016】
第3の発明では、第2の発明において、上記面板には位置合わせ基準線が印刷されており、上記位置合わせ基準線に対応する位置合わせ線を上記画像データに加える工程を更に具備し、上記画像をシール上に印刷する工程では、上記位置合わせ線もシール上に印刷され、上記シールを面板に貼り付ける工程では、上記シールの位置合わせ線が上記面板の位置合わせ基準線に整列するようにシールが面板に貼り付けられる。
第3の発明によれば、シールと面板との位置合わせを正確に行うことができる。しがたって、患者又は介助者が型シートに形成した孔と同一位置に同一形状の開口を面板に形成することができるようになる。
【0017】
第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、上記ストーマに合った形状の孔を型シートに形成するように型シートをカットする工程を更に具備する。
【0018】
第5の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において用いられる型シートであって、透明なシート材料で形成される、型シートが提供される。
第5の発明によれば、型シートが透明なシート材料で形成されるため、患者又は介助者は型シートをストーマ周りに直接当てて、ストーマの形状に合った孔を型シートに形成することができる。
【0019】
第6の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明において用いられるシールであって、少なくとも患者のストーマに合った形状の孔と同一形状の塗りつぶし部が印刷された、シールが提供される。
【0020】
第7の発明では、第1〜第4のいずれか一つの発明により開口が形成された面板が提供される。
【0021】
第8の発明では、第7の発明の面板と、該面板に連結されたストーマ袋とを具備する、ストーマ装具が提供される。
【0022】
第9の発明では、ストーマ装具の面板に開口を形成するのに用いられる型シートにおいて、透明なシート材料で形成され、上記面板の開口形成可能領域の輪郭と同一形状の輪郭線が印刷されている、型シートが提供される。
第9の発明によれば、型シートには面板の開口形成可能領域と同一形状の輪郭線が印刷されるため、患者又は介助者は、最終的に型シートに基づいて面板をカットしたときに面板にカットされた開口が面板の開口形成可能領域からはみ出ることのないように、型シートをカットすることができる。
【0023】
第10の発明では、第9の発明において、前記輪郭線の内側に一定間隔で設けられた該輪郭線と同心状の複数の目盛り線が印刷されている。
第10の発明によれば、目盛り線が印刷されているため、患者又は介助者は、型シートの中心に孔を寄せてカットすることができるようになり、結果的にこの型シートの孔に基づいてカットされる面板の開口もより中心に寄せることができる。
【0024】
第11の発明では、第9又は第10の発明において、開口形成可能領域が異なる形状である複数の異なる面板に開口を形成するのに使用可能であり、各面板の開口形成可能領域の輪郭と同一形状の輪郭線が印刷されている。
第11の発明によれば、一つの型プレートを複数の面板に用いることができるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、患者のストーマに精密に合った形状の開口をストーマ装具の面板に形成する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ワンピース型のストーマ装具を示す図である。
【図2】面板の部分断面図である。
【図3】ツーピース型のストーマ装具を示す図である。
【図4】本発明における開口形成の手順を概略的に示すフローチャートである。
【図5】本発明の開口形成方法で用いられる型シートの平面図及び底面図である。
【図6】カットされた型シートを示す図である。
【図7】画像データの切り取りを示す図である。
【図8】画像データの塗りつぶしを示す図である。
【図9】十字線の付加を示す図である。
【図10】面板に貼り付けられるシールの一例を示す図である。
【図11】面板を概略的に示す平面図である。
【図12】別の面板を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0028】
図1は、ストーマ装具11を概略的に示す図である。ストーマ装具11は、患者のストーマ周りの皮膚に貼り付けられる面板(ウエハ)12と、この面板12に連結されてストーマから排出された排泄物を収集するストーマ袋(パウチ)13とを備える。面板12は、図2に示したように、プラスチックプレート12aと、このプラスチックプレート12aの前側表面の全面に塗布された接着剤層12bとを具備する。更に、接着剤層12b上には保護シート12cが配置される。また、面板12には開口14が設けられる。ストーマ袋13は、その一部に開口15を有し、この開口15の縁は面板12の開口14周りにおいて面板12の後側表面に取り外し不能に結合される。
【0029】
このように構成されたストーマ装具11では、使用時には、面板12の保護シート12cが剥がされた後に、面板12の接着剤層12bにより面板12が患者のストーマ周りの皮膚に貼り付けられる。このとき、面板12は、面板12に設けられた開口14内に患者のストーマが位置するように貼り付けられる。このようにストーマ装具11の面板12が患者の皮膚に貼り付けられると、患者のストーマから排出された排泄物は、面板12の開口4及びストーマ袋3の開口5を介してストーマ袋3内に収集されることになる。
【0030】
なお、上述したストーマ装具11は、面板とストーマ袋とが一体的に形成されているワンピース型であるが、ストーマ装具としては図3に示したようなツーピース型が用いられても良い。
【0031】
図3に示したように、ツーピース型のストーマ装具21は、別体として形成された面板22とストーマ袋23とを備える。面板22には開口24が設けられると共に、面板22の後側表面には連結リング26が取り付けられる。一方、ストーマ袋23の開口25周りにも連結リング27が取り付けられる。これら連結リング26、27は互いに取り外し可能に取り付けられ、両者が互いに取り付けられているときには患者のストーマから排出された排泄物が連結リング26、27から漏れ出すことなく面板22の開口24及びストーマ袋23の開口25を介してストーマ袋23内に収集されることになる。
【0032】
ところで、ストーマの形状等は患者毎に異なっているため、ストーマ周りの皮膚に貼り付ける面板12、22の開口14、24を、各患者のストーマの形状に合わせて適切な形状にすることが必要となる。以下では、ワンピース型のストーマ装具11を例にとって、ストーマ装具11の面板12に開口を形成する方法について説明する。
【0033】
図4は、本発明における開口形成の手順を概略的に示すフローチャートである。図4に示したように、まず、ステップS11において、患者又は介助者(看護士、ヘルパー、家族等)により、患者のストーマに合った形状の孔を型シート30に形成するように型シート30がカットされる。なお、患者のストーマに合った形状とは、患者のストーマと同一又はほぼ同一の形状であるか、または患者のストーマよりも幅が1〜2ミリ大きくなるような形状を意味する。
【0034】
図5は、本発明の方法で用いられる型シート30を示す図である。型シート30は、通常のハサミで切断可能な透明なシート材料、例えばプラスチックで形成される。図5に示した例では、太い輪郭線30a、30b、30cが印刷されている。これら輪郭線30a、30b、30cは、この型シート30を用いて開口形成が行われる面板12の開口形成可能領域(面板12のうち開口を形成することが可能な領域であり、ストーマ袋13の開口15よりも小さい)の輪郭と同一形状となっている。特に、図5に示した例では、輪郭線30aは円形であり、輪郭線30b、30cは楕円形である。このように、型シート30には面板12の開口形成可能領域と同一形状の輪郭線が印刷されるため、患者又は介助者は、最終的に型シート30に基づいて面板12をカットしたときに面板12にカットされた開口が面板12の開口形成可能領域からはみ出ることのないように、型シート30をカットすることができる。特に、本実施形態では、異なる面板の開口形成可能領域の輪郭と同一形状の輪郭線30a、30b、30cが印刷されていることから、一つの型シート30を複数の異なる面板用に使用することができる。
【0035】
また、型シート30には、円形の輪郭線30aの内側に一定間隔で設けられた輪郭線30aと同心状の複数の目盛り線30dが印刷されている。この目盛り線30dと同様な線が、図11に示したように面板12にも印刷されており、面板12と型シート30との中心同士を合わせるのに用いられる。また、型シート30及び面板12には、このような目盛り線以外にも位置合わせ用の線が印刷されていてもよく、これら位置合わせ用の線は型シート30及び面板12の中心同士に加えて向きを合わせるのにも用いられる。
【0036】
さらに、このように、目盛り線が印刷されていることにより、患者又は介助者は、型シート30の中心に孔を寄せてカットすることができるようになり、結果的にこの型シート30の孔に基づいてカットされる面板12の開口もより中心に寄せることができる。また、本実施形態では、型シート30には、輪郭線30a、30b、30c全てを包囲する正方形の角部30eが印刷される。この角部30eは、後述するステップS13において、取り込んだ画像データの一部を切り取る際に用いられる。
【0037】
患者又は介助者による型シート30のカットは、例えば、前回使用したストーマ装具の面板に設けられた開口と同一形状の孔となるように型シート30をカットすることにより行われる。この型シート30のカットは、人が手動でハサミによって行ってもよいし、機械装置を用いて自動的に行ってもよい。このようにしてカットされた型シート30は例えば図6のように孔31を有する。
【0038】
一方、初めてストーマ装具を使用する場合、或いは前回使用したストーマ装具の面板の開口が患者のストーマに合っていなかった場合には、患者のストーマの形状に合わせて型シート30のカットが行われる。このとき、型シート30にはカットにより孔31が形成されるため、ストーマがストーマ周りの患者の皮膚よりも盛り上がっている場合であっても、型シート30を直接ストーマ周りの皮膚に当てて型シート30に形成された孔31の形状が実際のストーマの形状に合っているか否かを確認し、微調整することができる。
【0039】
次いで、図4のステップS12で示したように、カットが行われた型シートがカットサービス提供者へと送付される。型シート30の送付は、型シート30のカット後に消毒を行った上で、型シート30を送付用包装紙に入れた状態で行われる。
【0040】
次いで、図4にステップS13〜S16において、型シート30に形成された、患者のストーマに合った形状の孔31と同一形状の塗りつぶし部32がシール上に印刷される。具体的には、塗りつぶし部32の印刷は下記ステップS13〜S16によって行われる。
【0041】
まず、ステップS13では、孔31の形成された型シート30がカットサービス提供者に送付されると、型シート30がスキャナにかけられ、型シート30の画像データがコンピュータに取り込まれる。このとき、型シート30と型シート30に形成された孔31とを区別可能な状態、例えば型シート30には色が付いていて孔31には色が付いていない状態で型シート30の画像データがコンピュータに取り込まれるのが好ましい。
【0042】
特に、本実施形態では、型シート30全体の画像データをコンピュータに取り込んだ上で、図7に示したようにこの画像データの一部を切り取るようにしている。具体的には、上述した型シート30に印刷された角部30eによって表される正方形状に切り取るようにしている。これにより後述するステップS16において不要な箇所までシールに印刷を行うことが無くなると共に、画像データのサイズを小さくすることができ、データベースへの負荷を低減することができる。
【0043】
次いで、ステップS14では、ステップS13でスキャンにより取り込まれた型シート30の画像データ上で、型シート30の孔31に相当する部分の塗りつぶしが行われる。本実施形態では、上述したように、型シート30の画像データをコンピュータに取り込む際に、型シート30と型シート30に形成された孔31とを区別可能な状態で取り込んでいる。したがって、型シート30の孔31に相当する部分を容易に且つ正確に選択することができる。この結果、例えば、図8に示したように、画像データにおいて型シート30の孔31に相当する部分に黒く塗りつぶされた塗りつぶし部32が形成される。
なお、本明細書では、塗りつぶし又は塗りつぶし部は、所定形状の輪郭線内が必ずしも完全に塗り潰されることを意味するものではなく、所定形状の輪郭線とその内部に一定パターンの模様が描かれたものをも含むものとする。
【0044】
次いでステップS15では、塗りつぶしが行われた画像データに、図9に示したように十字線33が加えられる。この十字線33の中心は、型シート30に印刷された輪郭線30a、30b、30c、30dによって表される形状の重心に対応する位置とされる。特に、本実施形態では、型シート30に印刷された輪郭線30a、30b、30c、30dが円形又は楕円形であると共にこれら形状の中心は同一点となっていることから、十字線33の中心も円形及び楕円形の中心と同一位置とされる。
【0045】
ステップS16では、ステップS13〜S15によって作成された画像データ、すなわち型シート30の孔31と同一形状の塗りつぶし部32と十字線33とが設けられた画像データがデータベースに保存される。この画像データは顧客番号等、他のデータと一緒に保存される。
【0046】
次いで、ステップS17では、ステップS16においてデータベースに保存された画像データに基づいて、画像データの画像がシール35上に印刷される。したがって、シール35には、塗りつぶし部32と十字線33とが印刷されることになる。シール35への印刷は一枚毎に行われてもよいし、例えば、図10に示したように3枚綴り等、複数枚連なるように行われてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、シール35上への印刷を行うときには、インクとして、セミレジンインクが用いられる。このインクは、ワックス系インク等に比べて環境性能が高いと共に人体への影響が低い。このため、たとえインクの一部が面板12に付着したとしても、環境や人体への影響を最小限に抑えることができる。
【0048】
次いで、ステップS18では、ステップS17で印刷が行われたシールが未加工の面板12上に貼り付けられる。図10に示したような複数枚連なったシールは、一つずつに切断した上で、未加工の面板12上に貼り付けられる。この時、シール35は、面板12の前側表面(すなわち保護シート上)に貼り付けられる。また、図11に示したように面板12の表面には十字線36が印刷されており、シールは、シールに印刷されている十字線33が面板12上に印刷されている十字線36に合うように貼り付けられる。このため、シール35をずれることなく正確に面板12上に貼り付けることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、ステップ15において十字線33が画像データに追加され、ステップ17において十字線33がシール35に印刷され、且つステップ18においてシール35に印刷された十字線33が面板12上に印刷されている十字線36に合うように貼り付けられる。しかし、これらは必ずしも十字線である必要はなく、シール35と面板12との間で位置合わせをすることができれば、如何なる形状の線であってもよい。したがって、十字線以外を含むことを考慮すると、面板12に印刷される線は位置合わせ基準線と呼ぶことができ、シール35に印刷される線は位置合わせ線と呼ぶことができる。
【0050】
或いは、図12に示したように、面板12の表面に十字方向にサイズ表記がなされていてもよい。このように、面板12の表面上に十字方向にサイズ表記がなされていれば、シール35に印刷された十字線33をこのサイズ表記に合うように貼り付けることができる。
【0051】
その後、ステップS19では、面板12に貼り付けられたシールに印刷された塗りつぶし部32の輪郭に沿って面板12がカットされる。上述したように、シール35上に印刷された塗りつぶし部32の輪郭が型シート30に形成された孔の形状と同一の形状となっている。したがって、シール35上の塗りつぶし部32の輪郭に沿って面板12がカットされると、型シート30に形成された孔と同一形状の開口、すなわち、患者のストーマに合った形状の開口が面板12に形成される。
【0052】
このようにして開口の形成された面板12は、カットサービス提供者から患者へと送付される。
【0053】
なお、一般に、ストーマの形状は、施術後2ヶ月程度は変化するが、施術後2ヶ月経過以降はあまり変化しない。したがって、施術後2ヶ月経過以降は、ストーマの形状は同一のままであり、これに伴って面板12に形成する開口の形状も同一のままでよいことが続く場合がある。このような場合には、上述したステップ11〜19全てを繰り返す必要はなく、ステップS17〜S19のみを繰り返せばよい。
【0054】
上述したように、本発明では、型シート30に形成された孔に高い精度で一致する開口を面板12に形成することができる。型シート30に形成された孔と面板12に形成された開口との一致精度を測定する方法としては以下の方法が考えられる。
【0055】
まず、面板12と型シート30との中心同士を合わせ且つこれらの上下を合わせて面板12と型シート30とを重ねる。これは、例えば、型シート30に印刷された目盛り線30dと面板12に印刷された目盛り線とを合わせることによって行われる。このように両者を重ねた状態で面板12及び型シート30の中心から0°の方向に延びる直線上における面板12の開口と型シート30の孔との距離を計測する。次いで、中心から30°の方向に延びる直線上における面板12の開口と型シート30の孔との距離を計測する。そして、同様な計測を、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°及び330°において行う。その後、このようにして計測された12の距離の平均値又は合計値を算出する。このようにして算出された値は、面板12のカットの精度を表しており、その数値が高いほど面板12のカットの精度は低い。
【0056】
なお、図4を用いて説明した上記実施形態では、シール35の面板12への貼り付け及びシール35を貼り付けた面板12のカット(すなわち、図4のステップS18及びS19)をカットサービス提供者が行っている。しかしながら、これら作業は必ずしもカットサービス提供者が行う必要はなく、カットサービス提供者はシール35への印刷(ステップS17)終了後にシール35と未加工の面板12とを患者に送付するようにしてもよい。この場合、シール35の面板12への貼り付け及びシール35を貼り付けた面板12のカットはカットサービス提供者が行うことになる。
【0057】
欧州特許出願公開EP0800804号には、ストーマの形状に適合するストーマ装具の製造方法が記載されている。
【0058】
ストーマは、回腸造瘻術(イレオストミー)、人工膀胱造設術(ウロストミー)、人工肛門造設術(コロストミー)の全てで造設された消化管や尿管の開放孔を意味する。
接着材料は一般的には親水コロイドを含むSIS系又はPIB系である。
看護師は、ヘルパー、ヘルスケア提供者、家族及び患者自身をも含む。
【0059】
使用時には、看護師は、患者のストーマの輪郭をストーマ用型シートに描く。ストーマ用型シートに基づいて輪郭が電子的に保存される。新しい面板(baseplate)が必要なときには、輪郭がシール(label)上に印刷され、シールが面板に取り付けられ、輪郭に沿ってシール及び面板がカットされる。
【0060】
一つの実施形態では、面板及びシールのカットは、ハサミによって行われる。これは手動のカットである。この形態は、このカットモデルで得られた正確性を示す。すなわち、面板及びシールの手動のカットでさえも、ユーザのストーマにぴったりフィットする面板の輪郭を提供する。
【0061】
望ましいやり方においては、ストーマ用型シートが面板と一致するようにかたどられる。そうすることで、看護師は、ストーマ用型シートを患者に装着した面板に合致させることができるのである。ストーマ用型シートと面板が合致することにより、面板に目印ができて、ストーマ用型シートのストーマ孔の形状を、面板上の相対的に同じ位置に反映させることができる。二品系の場合に、面板とストーマ袋のかみ合わせのように。多くの患者が、ストーマ周りの皮膚に傷跡や不安定性を有するため、面板の位置が少しでもずれると、漏れや痛みを招くのである。
【0062】
正確性は以下の方法で測定される。面板をカットし、ストーマ用型シートを再び合わせる。0°から始まって、面板のカットラインとストーマ用型シートの記入ラインとの間の距離が計測される。このことは、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°及び330°において繰り返される。その後、12の値が平均化される。この値はカットがいかに不正確であったかを示している。値が大きい場合には、面板におけるカットとストーマ型シートの輪郭線との間には大きな偏差がある。値が小さい場合には、面板とストーマ用型シートとはほとんど重なっている。
【0063】
1.ストーマ用型シート上に描かれたストーマの図形を備えた、患者用の接着剤のストーマ用面板であって、上記面板がストーマ型シートに対して非正確性が4mm未満の接着材料のカットを具備する、ストーマ用面板。
【0064】
2.前記接着材料のカットはハサミによるカットである、請求項2に記載のストーマ面板。
【0065】
3.患者適合型のストーマ用面板をカットする方法において、
a)ストーマ用型シートを提供する工程と、
b)ステップ(a)のストーマ用型シート上にストーマの輪郭を描く工程と、
c)シール上にステップ(b)のシートからストーマ用輪郭を転写する工程と、
d)ステップ(c)のシールを面板に取り付ける工程と、
e)転写された輪郭に沿ってステップ(d)の面板及びシールをカットする工程とを具備する方法。
【0066】
4.患者適合型のストーマ用面板をカットする方法において、
a)ストーマ用面板を提供する工程と、
b)ストーマを有する患者にステップ(a)のストーマ用型シートを取り付ける工程と、
c)ストーマ用型シートを提供する工程と、
d)ステップ(a)のストーマ用型シート上にストーマの輪郭を描く工程と、
e)シール上にステップ(b)のシートからストーマ用輪郭を転写する工程と、
f)ステップ(c)のシールを面板に取り付ける工程と、
g)転写された輪郭に沿ってステップ(d)の面板及びシールをカットする工程とを具備する方法。
【0067】
5.前記カットがハサミによるカットである、請求項3又は4に記載の方法。
6.前記カットは手動のハサミカットである、請求項5に記載の方法。
【符号の説明】
【0068】
1 ストーマ装具
2 面板(ウエハ)
3 ストーマ袋(パウチ)
4 開口
5 開口
6 連結リング
7 連結リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーマ装具の面板に開口を形成する方法において、
型シートに形成された、患者のストーマに合った形状の孔と同一形状の塗りつぶし部をシール上に印刷する工程と、
上記塗りつぶし部の印刷されたシールを面板に貼り付ける工程と、
該面板に貼り付けられたシールの塗りつぶし部の輪郭に沿って面板をカットする工程とを具備する、開口形成方法。
【請求項2】
上記塗りつぶし部をシール上に印刷する工程は、
患者のストーマに合った形状の孔が形成された型シートをスキャンする工程と、
上記スキャンされた型シートの画像データ上で上記孔に相当する部分を塗りつぶす工程と、
上記塗りつぶしが行われた画像データの画像をシール上に印刷する工程とを具備する、請求項1に記載の開口形成方法。
【請求項3】
上記面板には位置合わせ基準線が印刷されており、
上記位置合わせ基準線に対応する位置合わせ線を上記画像データに加える工程を更に具備し、
上記画像をシール上に印刷する工程では、上記位置合わせ線もシール上に印刷され、
上記シールを面板に貼り付ける工程では、上記シールの位置合わせ線が上記面板の位置合わせ基準線に整列するようにシールが面板に貼り付けられる、請求項2に記載の開口形成方法。
【請求項4】
上記ストーマ孔に合った形状の孔を型シートに形成するように型シートをカットする工程を更に具備する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の開口形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の開口形成方法において用いられる型シートであって、
透明なシート材料で形成される、型シート。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の開口形成方法において用いられるシールであって、
少なくとも患者のストーマに合った形状の孔と同一形状の塗りつぶし部が印刷された、シール。
【請求項7】
上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の開口形成方法により開口が形成された面板。
【請求項8】
請求項7に記載の面板と、該面板に連結されたストーマ袋とを具備する、ストーマ装具。
【請求項9】
ストーマ装具の面板に開口を形成するのに用いられる型シートにおいて、
透明なシート材料で形成され、上記面板の開口形成可能領域の輪郭と同一形状の輪郭線が印刷されている、型シート。
【請求項10】
前記輪郭線の内側に一定間隔で設けられた該輪郭線と同心状の複数の目盛り線が印刷されている、請求項9に記載の型シート。
【請求項11】
開口形成可能領域が異なる形状である複数の異なる面板に開口を形成するのに使用可能であり、各面板の開口形成可能領域の輪郭と同一形状の輪郭線が印刷されている、請求項9又は10に記載の型シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−125266(P2012−125266A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276450(P2010−276450)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】