説明

スナック菓子及びその製造方法

【課題】
少量の油分であっても、多量の油分を含んだスナック菓子と同様の口溶けや喉ごしを有するスナック菓子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
乳化剤を用いて油性原料と水性原料を水中油型に乳化させたシーズニング液を、油揚げされていないスナック生地にコーティングし、その後該スナック生地を乾燥することで、油脂含量が少なくても多量に油脂を含有するのと同様の口溶けや喉ごしを得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスナック菓子及びその製造方法に関し、詳しくは少量の油分含量であっても、多量の油分を含んだスナック菓子と同様の口溶けや喉ごしを有するスナック菓子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスナック菓子には
(1)ジャガイモ等の生原料や水を加えた澱粉等の粉末原料を成型して油で揚げた後、塩
や調味料等をふりかけて味付けしたもの
(2)エクストルーダーで押し出し成型後、乾燥し、これに、油と混合した塩や調味料等
をコーティングして味付けしたもの
(3)原料を練り上げて薄くシート状にした後、乾燥してペレットとし、それを熱するこ
とで膨化させた後、これに、油と混合した塩や調味料等をコーティングして味付け
したもの
等がある。
【0003】
スナック菓子において、油は塩や調味料等の味付け材を均一にスナック生地に行き渡らせる役割の他、油自体が風味を付与したり、油の存在により、口中でスナック菓子の口溶けが良くなるため、喉ごしが良くなったり口残りが少なくなったりして嗜好性アップに大きく貢献する。しかしながら、健康意識の高まりとともに、多量の油を含むスナック菓子は不健康な食品として敬遠される傾向にある。
【0004】
特許文献1には、飽和脂肪酸比率40%以下で且つ不飽和脂肪酸比率50%以上の油脂を含有し、粗脂肪10重量%以下のスナック食品の製造方法が開示されている。スナック菓子の口溶けや喉ごしを良くするために常温で液状の油脂(飽和脂肪酸比率40%以下で且つ不飽和脂肪酸比率50%以上の油脂であることが通常考えられる)を含有させることは当業者にとって常識であるが、該スナック食品を低油分にした場合、口溶けや喉ごしにおいて充分満足できるものは得られない。
【0005】
また特許文献2には、油性原料と水性原料の混合物をコーティングするスナック菓子が開示されている。これは口溶けや喉ごし改善を目的としておらず、油の染み出しを防止するものであり、乳化剤も使用していない。そして低油分にした場合、やはりこの場合も口溶けや喉ごしにおいて充分満足できるものは得られない。
【特許文献1】特開平11−103808号公報
【特許文献2】特開平2005−87181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スナック菓子に多量の油を添加することは、風味を付与し、食感を改良して嗜好性を高める一方、健康面で好ましくない。本発明は低油分であっても嗜好性を損なわないスナック菓子及びその製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、常法により得られた油揚げされていないスナック生地に、乳化剤を用いて油性原料と水性原料を水中油型に乳化させたシーズニング液をコーティングし、その後該スナック生地を乾燥すると、油脂含量が少なくても多量に油脂を含有するのと同様の口溶けや喉ごしを得られるとの知見によるものである。すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1)乳化剤を用いて油性原料と水性原料を水中油型に乳化させたシーズニング液を、油
揚げされていないスナック菓子生地にコーティングし、乾燥することを特徴とする
スナック菓子の製造方法
(2)シーズニング液中の油性原料の含有量が10〜40重量%である(1)に記載のス
ナック菓子の製造方法
(3)乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるものである(1)又は
(2)に記載のスナック菓子の製造方法
(4)シーズニング液に塩分を含む(3)に記載のスナック菓子の製造方法。
(5)スナック菓子の油脂含量が3〜15重量%である(1)〜(4)の何れかに記載の
スナック菓子の製造方法
(6)(1)〜(5)の何れかに記載の方法により得られたスナック菓子
【発明の効果】
【0008】
上記方法により、少量の油しか含有していないにも関わらず、多量の油を含有しているスナック菓子と同様に口溶けが良好で嗜好性が高いスナック菓子を得ることが可能となる。また、シーズニング液には油と水を両方使用するので、味付け材が良く溶解し、溶けなかった味付け材が製造設備の局所に滞留する危険性が減少し、しかも味付け材がスナック生地表面からも脱落し難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の油揚げされていないスナック菓子生地とは、フライ等によりクッキング工程で油を使用することを必須とするもの(油揚げするもの等)を除いたスナック菓子生地をいい、例えばエクストルーダーにて成型されたスナック菓子生地、α化した澱粉原料をシート状にして得られるペレットを膨化することで得られるスナック菓子生地等を言う。油揚げされていないスナック菓子生地は、乳化させたシーズニング液をコーティングする前に予め乾燥されていても乾燥されていなくてもよい。
【0010】
本発明の水性原料とは、水のみ、水に塩や調味料等を添加溶解したもの、液体調味料(醤油、魚醤、みりん等)の他、酒類、食酢等の水溶性液状原料を言う。また油性原料とは、オリーブ油、パーム油、パームオレイン、乳脂、大豆油、ごま油、綿実油、米油等の食用油脂、および調味料等をこれらに添加溶解した油溶性液状原料を言い、スナック菓子の口溶けを良くするためには、食用油脂は常温で液状もしくはペースト状のものが好ましい。不溶性原料や乳化剤は水性原料にも油性原料にも含まれないが、シーズニング液には不溶性原料を含んでいてもよい。シーズニング液は水中油型に乳化させる必要がある。乳化させなかったり、油中水型に乳化させると、スナック菓子中の油脂含量が少量(3〜15重量%)である場合に口溶けや喉ごしが悪いものとなる。また、シーズニング液中の油性原料の含有量が10〜40重量%であると、特に口溶けや喉ごしといった食感の向上効果が顕著であるので好ましい。
【0011】
本発明に用いる乳化剤は、シーズニング液に塩分を含む場合はポリグセリン脂肪酸エステルから選択されるHLB5〜16のものが乳化安定性が良いのでより好ましく、その中でもHLB5〜9のものと、HLB13〜16のものを併用するのが特に好ましい。
次に、本発明のスナック菓子を得るには、スナック菓子生地に上記シーズニング液をコーティングした後、水分が0.5〜5重量%程度になるまで乾燥を行う。コーティング方法としては噴霧が一般的である。乾燥条件は特に限定されるものではないが、還元糖やアミノ酸等を含む渇変しやすい原料を含む場合には100℃以下で乾燥することが好ましい。
【0012】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
コーングリッツに水を添加して水分を15重量%に調整したものを使い、1軸エクストルーダーでローター回転数250r.p.m.にてスナック生地を製造した。このスナック生地は水分8重量%であった。一方、水75重量部、チーズシーズニング20重量部、食塩5重量部を混合したものにリョートーポリグリエステルO−50D(HLB8:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部、リョートーポリグリエステルP−8D(HLB15:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部を加え、攪拌しながらこれにパームオレイン60重量部を徐々に加えて水中油型乳化したシーズニング液を得た。前記スナック生地100重量部に対して、得られたシーズニング液35重量部を噴霧した。その後、90℃で水分1.5重量%になるまで乾燥して油分約12重量%のスナック菓子を得た。
【実施例2】
【0014】
水75重量部、チーズシーズニング20重量部、食塩5重量部を混合したものにリョートーポリグリエステルO−50D(HLB8:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部、リョートーポリグリエステルP−8D(HLB15:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部を加え、攪拌しながらこれにパームオレイン30重量部を徐々に加えて水中油型乳化したシーズニング液を得た。実施例1のスナック生地100重量部に対して、得られたシーズニング液28重量部を噴霧した。その後、90℃で水分1.5重量%になるまで乾燥して油分約6重量%のスナック菓子を得た。
【実施例3】
【0015】
水87.5重量部、チーズシーズニング10重量部、食塩2.5重量部を混合したものにリョートーポリグリエステルO−50D(HLB8:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部、リョートーポリグリエステルP−8D(HLB15:三菱化学フーズ株式会社製)0.3重量部を加え、攪拌しながらこれにパームオレイン15重量部を徐々に加えて水中油型乳化したシーズニング液を得た。実施例1のスナック生地100重量部に対して、得られたシーズニング液50重量部を噴霧した。その後、90℃で水分1.5重量%になるまで乾燥して油分約6重量%のスナック菓子を得た。
【0016】
比較例1
パームオレイン70重量部、チーズシーズニング24重量部、食塩6重量部を混合してシーズニング液を得た。実施例1のスナック生地100重量部に対して、得られたシーズニング液19重量部を噴霧した。その後、90℃で水分1.5重量%になるまで乾燥して油分約12重量%のスナック菓子を得た。
【0017】
比較例2
パームオレイン85重量部、チーズシーズニング12重量部、食塩3重量部を混合してシーズニング液を得た。実施例1のスナック生地100重量部に対して、得られたシーズニング液37重量部を噴霧した。その後、90℃で水分1.5重量%になるまで乾燥して油分約24重量%のスナック菓子を得た。
【0018】
比較例3
シーズニング液に乳化剤を添加しない以外は、実施例2と同様にして、油分約6重量%のスナック菓子を得た。
試験例
実施例1,2,3および比較例1,2,3のスナック菓子について、20名の専門パネルによって、食感の評価を行った。表1にその評価点の平均値を示す。
【0019】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤を用いて油性原料と水性原料を水中油型に乳化させたシーズニング液を、油揚げされていないスナック菓子生地にコーティングし、乾燥することを特徴とするスナック菓子の製造方法。
【請求項2】
シーズニング液中の油性原料の含有量が10〜40重量%である請求項1に記載のスナック菓子の製造方法。
【請求項3】
乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルから選択されるものである請求項1又は2に記載のスナック菓子の製造方法。
【請求項4】
シーズニング液に塩分を含む請求項3に記載のスナック菓子の製造方法。
【請求項5】
スナック菓子の油脂含量が3〜15重量%である請求項1〜4の何れか一項に記載のスナック菓子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法により得られたスナック菓子。