説明

スナック菓子製造用コーティング液

【課題】 手で直接触れても手が汚れず、好みの風味に調味したスナック菓子を、スナック菓子本来の食感を変えることなく製造することの出来るコーティング液を提供する。
【解決手段】 加工でん粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、澱粉糖化物、還元澱粉糖化物から選ばれた1種以上である水溶性被膜剤を含むスナック菓子製造用コーティング剤を親水性溶媒に溶解した、スナック菓子製造用コーティング液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類、芋類等を主原料にして作られた所謂スナック菓子(チップ、フライ、パフなど)の製造時に使用するコーティング剤及びそれを親水性溶媒に溶解したコーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
とうもろこし、馬鈴薯等を原料にした所謂スナック菓子にはその嗜好性を高めるため、香料、調味料、甘味料、酸味料等を原料にしたシーズニングと呼ばれる粉末調味料が添加されている。これらシーズニングは粉末である為、直接手でつまんで摂食する際に、手にシーズニングが付着し、手が汚れるという問題が発生する。しかしながら、従来、スナック菓子を食べた際、手が汚れるのは当然として、その改良は試みられてこなかった。
【0003】
この問題を解消する試みはなされていないが、解消するために利用できる可能性のある、従来からの、食品をコーティングする技術としては次のものが挙げられる。
【0004】
特開2001−57850号公報には、水分を多く含む内部芯材から外部への水分移行を防ぐため、α化澱粉粉末を芯材表面に被覆する技術が開示されている。
【0005】
特開2002−320453号公報には、噴霧乾燥によって得られた香料組成物芯材料粉末からの香料の揮散を防止する目的でコーティングするための、脂質及び可食性水溶性添加剤及び可食性高分子物質コーティング液について開示されている。
【0006】
特開平10−42803号公報には、ペクチンなどのハイドロコロイドとハイドロコロイドの架橋剤としての金属イオンを含む食品コーティング剤について開示されている。
【0007】
特表平8−509858号公報には、種子を湿潤させ澱粉質粉体でコーティングしたのちベーキングする技術が開示されている。
【0008】
これらの技術には食品をコーティングすることは記載されているものの、スナック菓子におけるシーズニングの付着による手の汚れや、スナック菓子本来の食感や味質を変えないという問題点を解決することについては触れられていない。
【0009】
また、スナック菓子生地にコーティングを行う技術として、特開2007−117040号公報には、油性原料と水溶性原料を乳化させたシーズニング液を油分の少ないスナック菓子にコーティングすることによって、油分の多いスナック菓子と同様の口溶けや喉ごしを有するスナック菓子について開示され、味付け材がスナック菓子表面から脱落し難くなることについても開示されている。
【0010】
しかしながら、油で揚げたスナック菓子(例えばポテトチップなど)はこの発明から除外されており、スナック菓子の食感(例えばクリスピー感など)の保持についても考慮されていない。また、効果として液状のシーズニング液が固化したものが脱落し難くなったことが記載されているのみで、粉体のシーズニングが手につかないことについては記載が無く、この問題は、依然解決されないままであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、手で直接触れても手が汚れず、好みの風味に調味したスナック菓子を、スナック菓子本来の食感を変えることなく製造することの出来るコーティング液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、水溶性被膜剤を含み、場合によってはシーズニングをも含む、コーティング液を用いることにより、上記課題に対する画期的な効果を見出し、本発明を完成するに至った。以下に課題を解決するための手段を示す。
【0013】
本発明は第一に、水溶性被膜剤を含むスナック菓子製造用コーティング剤である。
本発明は第二に、水溶性被膜剤が、加工でん粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、澱粉糖化物、還元澱粉糖化物から選ばれた1種以上であることを特徴とする、上記第一に記載のスナック菓子製造用コーティング剤である。
本発明は第三に、加工でん粉が、ヒドロキシアルキル化デキストリンであることを特徴とする、上記第二に記載のスナック菓子製造用コーティング剤である。
本発明は第四に、上記第一から第三の何れか一つに記載のスナック菓子製造用コーティング剤を親水性溶媒に溶解した、スナック菓子製造用コーティング液である。
本発明は第五に、シーズニングを含むことを特徴とする、上記第四に記載のスナック菓子製造用コーティング液である。
本発明は第六に、水溶性被膜剤の配合量が、1重量%〜20重量%であることを特徴とする、上記第四または第五に記載のスナック菓子製造用コーティング液である。
本発明は第七に、シーズニングの配合量が、2重量%〜60重量%であることを特徴とする、上記第五または第六に記載のスナック菓子製造用コーティング液である。
本発明は第八に、上記第四から第七の何れか一つに記載のスナック菓子製造用コーティング液を用いてコーティングを行う際、コーティング液の噴霧および乾燥工程を35℃〜95℃で行うことを特徴とする、スナック菓子をコーティングする方法である。
本発明は第九に、上記第四から第七に記載のスナック菓子製造用コーティング液を用いてコーティングされた、スナック菓子である。
本発明は第十に、上記第八に記載の方法で製造された、スナック菓子である。
【0014】
本発明におけるスナック菓子とは、例えば、芋類、豆類、穀類など澱粉を含有する食品を原料として、
1.ジャガイモ等の生原料や水を加えた澱粉等の粉末原料を成型して油で揚げたもの
2.粉末原料をエクストルーダーで押し出し成型後、乾燥したもの
3.原料澱粉を練り上げてα化し、薄くシート状にした後、乾燥してペレットとし、それを熱することで膨化させたもの
に、調味料(シーズニング)などで味付けしたものである。成型の段階で調味料などを添加し、味付けをすることも可能である。
【0015】
本発明においては、被覆工程で転動させるため、スナック菓子は転動させても破損しない程度の強度を有することが好ましい。
【0016】
本発明における水溶性被膜剤とは、親水性溶媒に溶解し、乾燥したときに薄膜形成能を有する溶液を形成する組成物であればよく、例えば加工澱粉(酸化澱粉、酸処理澱粉、ヒドロキシアルキル化デキストリンなど)、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、澱粉糖化物、還元澱粉糖化物などから選ばれる一種、もしくは二種以上からなる混合物である。特に作業性、価格、溶解度の高さなどの面からヒドロキシアルキル化デキストリンが好ましい。
【0017】
また、自身の被膜性は弱いが水溶性被膜剤の効果を高める物質を、水溶性被膜剤と同時に、もしくは製剤としてあらかじめ混合して用いることも可能である。被膜剤の効果を高める物質としては、糖(グルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、マルトトリオース、パノース、イソマルトースなど)、糖アルコール(グリセリン、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、イソマルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、マルトトリイトール、パニトールなど)などが挙げられる。
【0018】
本発明における水溶性被膜剤を含むスナック菓子製造用コーティング剤(以下単に「コーティング剤」と称することがある)とは、スナック菓子製造時にスナック菓子をコーティングする目的で使用するスナック菓子製造用コーティング液を調製するための水溶性被膜剤を含む製剤である。コーティング剤は水溶性被膜剤を含有していれば良く、コーティング剤の被膜形成性を損なわない範囲で水溶性の高い調味料類を含むことも可能である。
【0019】
本発明におけるシーズニングとは、香料、調味料、甘味料、酸味料等を混合し、スナック菓子に風味を与えるもので、その形態は粉末でも液状でも構わないが、最終製品となった場合に手が汚れないものが好ましいので、粉末のほうが好ましい。シーズニングが油性原料を含む場合は、乳化もしくは乳化したものを噴霧乾燥して用いるのが好ましい。シーズニングの成分として使用できる香料としては、例えば、ビーフ、チキン、ポーク、えび、めんたいこ、にんにく、のり、キムチ、カレー、わさび、チーズ、キャラメル、チョコレート、バニラ、レモン、オレンジなど食品で使用出来るものであればどのようなものでも使用が可能である。シーズニングの成分として使用できる調味料としては、例えば、塩、醤油、漁礁、みりん、各種エキス類(ビーフ、チキン、ポーク、野菜など)、旨み調味料(アミノ酸、酵母エキス、核酸など)、各種スパイス(胡椒、唐辛子、わさび、クミン、カルダモンなど)、乳由来原料(粉乳、チーズ、バター、ヨーグルトなど)、ゴマ、のり、などが挙げられる。シーズニングの成分として使用できる甘味料としては、例えば、砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコール、高甘味度甘味料などが挙げられる。シーズニングの成分として使用できる酸味料としては、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸などが挙げられる。必要に応じて着色料等も使用出来、例えばフラボノイド系、カロチノイド系、キノン系、タール系、アントシアニン系、ポルフィリン系などの色素が挙げられる。
【0020】
本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液(以下単に「コーティング液」と称することがある)とは、水溶性被膜剤を含むコーティング剤を親水性溶媒に溶解した液である。ここにおける親水性溶媒とは水、エタノール水溶液など食品の製造に使用でき、水溶性被膜剤を溶解し、溶液とすることの出来る能力のあるものであれば、特に制限なく利用できるが、水が特に好ましい。
【0021】
本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液にシーズニングを含有させることにより、これをスナック菓子に噴霧することで、シーズニングがスナック菓子表面に強固に付着し、シーズニングが手につかないスナック菓子を提供することが出来る。
【0022】
シーズニングを含有するコーティング液を調製する際、添加の順序に特に制限はないが、水溶性被膜剤を親水性溶媒に溶解させ溶液とした後にシーズニングを添加する方法は水溶性被膜剤がだまにならず好ましく、シーズニングが親水性溶媒への溶解性が低い場合、粉末として残存することで、シーズニングとしての効果が大きくなるため、より好ましい。また、本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液は噴霧乾燥を行うことが可能であれば、溶液、乳化液、懸濁液などどのような形態であっても使用できる。
【0023】
また、本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液は、既に表面に粉末シーズニングが添加されたスナック菓子に対しても使用でき、手の汚れないスナック菓子を提供することが出来る。また、スナック菓子製造用コーティング液及びシーズニングを混合したものをスナック菓子に予めコーティングしたのち、シーズニングを添加していないスナック菓子製造用コーティング液でコーティングすることにより、さらに手への付着のし易さを軽減することが出来る。
【0024】
本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液の水溶性被膜剤の配合量は、1重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜15重量%である。配合量が1重量%未満の場合は、被膜形成性が悪くシーズニングが剥離してしまい、20重量%を超える場合は溶解性が悪く、粘度が高くなり噴霧乾燥が困難となる。
【0025】
本発明におけるスナック菓子製造用コーティング液のシーズニングの配合量は、コーティング液のみでシーズニングの添加を行う場合、2重量%〜60重量%、好ましくは15重量%〜40重量%である。配合量が2重量%未満の場合は、風味が弱くなり、コーティング率を上げる必要があり、60重量%を超える場合はコーティング液の粘度が上昇し、均一なコーティングが出来なくなる。
【0026】
本発明における噴霧乾燥工程は公知の方法が採用できる。噴霧乾燥工程における送風温度は35℃〜95℃、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは60℃〜75℃である。送風温度が95℃を超える場合は、熱によりシーズニングの香料が揮発したり、シーズニング原料の熱による変質によって風味が落ちるほか、スナック菓子の生地自体も焦げやすくなる。送風温度が35℃未満の場合は乾燥時間が長くなり、スナック菓子生地への水分移行の結果、食感が悪くなる。
【発明の効果】
【0027】
水溶性被膜剤を親水性溶媒に溶解した溶液に、場合によってはシーズニングを混合した、本発明に係るスナック菓子製造用コーティング液をスナック菓子芯材に対し噴霧、乾燥することで、スナック菓子の食感を損なうことなく、好みの風味に調味した、シーズニングが手に付き難い菓子を作ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(水溶性被膜剤の比較)
【実施例1】
【0030】
ヒドロキシアルキル化デキストリン(PENON PKW、日澱化学社製)83重量部、還元麦芽糖水飴(アマルティMR、三菱商事フードテック社製)17重量部を混合し、スナック菓子製造用コーティング剤(以下「コーティング剤1」と称する)を調製した。コーティング剤1を15重量部、水85重量部を混合、溶解したのちキムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)50重量部を添加し、スナック菓子製造用コーティング液(以下「コーティング液1」と称する)を得た。
【0031】
ここで得られたコーティング液1を使用してスナック菓子のコーティングをおこなった。コーティングの芯材には、2mm厚にスライスしたじゃがいも(メークイン)を水で洗い、水分をふき取ったものを、150〜160℃のサラダ油で5分程度揚げた後、180〜190℃で2〜3分揚げて作ったポテトチップスを使用した。また、実施例、対照例、比較例のすべてにおいてこの芯材を使用した。
【0032】
コーティングは、自動コーティング機(ハイコーターラボ/HC−LABO、フロイント産業社製)を使用し、吸気温度75℃、吸気風量0.8立方メートル/分、吸気圧力0.15MPa、回転数20rpm、コーティング液の温度25℃、コーティング液の供給速度3g/分の条件で芯材のコーティング率が2%になるまでコーティングを行った。コーティングの作業終了後、コーティング液の噴霧を止めた以外は同様の条件で20分間乾燥を行い、実施品1を得た。
【実施例2】
【0033】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5、信越化学社製)10重量部、グリセリン(グリセリン 特級、和光純薬工業社製)1重量部を、水89重量部に混合、溶解したのちキムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)50重量部を添加し、スナック菓子製造用コーティング液(以下「コーティング液2」と称する)を得た。
【0034】
実施例1におけるコーティング液1の代わりにコーティング液2を使用したほかは、実施例1に記載の操作を行い、実施品2を得た。
【0035】
[対照例1]
実施例1におけるコーティング液1の代わりに水を使用したほかは、実施例1に記載の操作を行い、対照品1を得た。
【0036】
[比較例1]
シェラック(ドラッグAタイプ、岐阜セラツク社製)100重量部にキムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)50重量部を添加したものを、実施例1に記載の芯材にコーティングした。コーティングは小型糖衣機(16−D,菊水製作所)を使用し、吸気温度25℃、回転数30rpm、コーティング液の温度25℃、コーティング液の供給速度3g/分の条件で芯材のコーティング率が2%になるまでコーティングを行った。コーティングの作業終了後、コーティング液の噴霧を止めた以外は同様の条件で20分間乾燥を行い、比較品1を得た。
【0037】
[比較例2]
ツェイン(ツェインDP、昭和産業社製)9重量部、グリセリン(グリセリン 特級、和光純薬工業社製)1重量部、エタノール(エタノール99.7%、和光純薬工業社製)77重量部、精製水13重量部を混合溶解したのち、キムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)50重量部を添加したものを、実施例1に記載の芯材にコーティングした。
【0038】
自動コーティング機(ハイコーターラボ/HC−LABO、フロイント産業社製)を使用し、吸気温度50℃、吸気風量0.8立方メートル/分、吸気圧力0.15MPa、回転数20rpm、コーティング液の温度25℃、コーティング液の供給速度3g/分の条件で芯材のコーティング率が2%になるまでコーティングを行った。コーティングの作業終了後、コーティング液の噴霧を止めた以外は同様の条件で20分間乾燥を行い、比較品2を得た。
【0039】
実施例1及び2、比較例1及び2、対照例1における、コーティング液の組成を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施品、比較品、対照品の評価は、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。評価は、訓練されたパネラー5名で行った。評価項目は、手の汚れ(持ったときの手への付着)について、「○」手の汚れなし、「△」やや手の汚れあり、「×」手の汚れありとし、被膜の均一性について、「○」均一、「△」ややムラあり、「×」ムラありとし、食感について、「○」食感変化せず、「△」ややしっとりする、「×」しっとりするとし、味質について、「○」良好、「△」やや異味あり、「×」異味ありとし、それぞれのサンプルに対して、「○」5点、「△」3点、「×」1点を記載する方法で行い、その平均値が4.0〜5点の場合「○」、2.5〜3.9の場合「△」、1〜2.4点の場合「×」とし、表に○×△で示した。結果は表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
対照品1は全く被膜が形成されず、水による影響で、芯材にクランチ性が認められなかった。被膜性がないことからシーズニングが均一に付着せず、また付着したシーズニングも剥がれ易いものとなった。また、水溶性被膜剤の代わりに、シェラックやツェインを用いた比較品1及び2の場合には、食感に問題はないものの、味質に悪影響があり、さらに被膜が均一に形成されず、手の汚れを解消することはできなかった。
【0044】
一方、本発明に係る実施品1及び2は、被膜の均一性、食感、味質の評価がすべて良好であり、手が汚れることもなかった。
【0045】
(水溶性被膜剤配合量の比較)
【実施例3】
【0046】
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を20重量部、水80重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品3を得た。
【実施例4】
【0047】
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を5重量部、水95重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品4を得た。
【0048】
[比較例3]
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を50重量部、水50重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、比較品3を得た。
【0049】
[比較例4]
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を1重量部、水99重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、比較品4を得た。
【0050】
実施例1、3及び4、比較例3及び4、対照例1における、コーティング液の組成を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
実施品、比較品、対照品の評価は、水溶性被膜剤の比較のときと同様の方法で、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。結果は表4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
比較品4のように水溶性被膜剤配合量が少ない場合は、シーズニングがはがれてきてしまい、本発明の効果が得られなかった。比較品3のように水溶性被膜剤配合量が多い場合は、すべてを水に溶解することが出来ず、また調製された溶液も粘度が高くなり、操作性が悪くなり、均一なコーティングができず、食感や味質にも悪影響を及ぼした。
【0055】
一方、本発明に係る実施品1、3及び4は、被膜の均一性、食感、味質の評価がすべて良好であり、手が汚れることもなかった。
【0056】
(シーズニング配合量の比較)
【実施例5】
【0057】
実施例1において、コーティング液を調製する際、シーズニングを75重量部、水60重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品5を得た。
【実施例6】
【0058】
実施例1において、コーティング液を調製する際、シーズニングを30重量部、水105重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品6を得た。
【実施例7】
【0059】
実施例1において、コーティング液を調製する際、シーズニングを5重量部、水130重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品7を得た。
【0060】
[比較例5]
実施例1において、コーティング液を調製する際、シーズニングを100重量部、水35重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、比較品5を得た。
【0061】
[比較例6]
実施例1において、コーティング液を調製する際、シーズニングを1重量部、水134重量部を混合する以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、比較品6を得た。
【0062】
実施例1、5〜7、比較例5及び6における、コーティング液の組成を表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
実施品、比較品、対照品の評価は、水溶性被膜剤の比較のときと同様の方法で、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。結果は表6に示す。
【0065】
【表6】

【0066】
比較品5のようにシーズニングの配合量が多すぎると、コーティング液の粘度が上がり、均一にコーティングできなかった。また、比較品6のようにシーズニングの配合量が少なすぎると風味が弱くなり、コーティング率を上げる必要があり、効率的ではないことが分かった。
【0067】
一方、本発明に係る実施品1、5〜7は、被膜の均一性、食感、味質の評価がすべて良好であり、手が汚れることもなかった。
【0068】
(シーズニングの比較)
【実施例8】
【0069】
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を12重量部、水85.5重量部を混合、溶解したのち、コーンポタージュ味シーズニング[コーンオイル(OGF/12603、小川香料社製)30重量%、全脂粉乳(全脂粉乳、クオカプランニング社製)23.9重量%、旨み調味料(GTO、三菱商事フードテック社製)21重量%、コーンパウダー(コーンパウダー、日本スタンゲ社製)14.4重量%、食塩(並塩、ダイヤソルト社製)7重量%、チーズパウダー(チーズパウダー、三協食品工業社製)2.8重量%、アセスルファムカリウム(アセスルファムカリウム、ニュートリノヴァジャパン社製)0.7重量%、スクラロース(スクラロース、三栄源エフエフアイ社製)0.1重量%、カレー粉(赤缶カレー粉、ヱスビー食品社製)0.1重量%]52.5重量部を添加し、芯材のコーティング率が10%になるまでコーティングを行う以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品8を得た。
【実施例9】
【0070】
実施例1において、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を12重量部、水85.5重量部を混合、溶解したのち、キムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)52.5重量部を添加し、芯材のコーティング率が4%になるまでコーティングを行う以外は、実施例1の方法でコーティングを行い、実施品9を得た。
【0071】
実施例8及び9における、コーティング液の組成を表7に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
実施品の評価は、水溶性被膜剤の比較のときと同様の方法で、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。結果は表8に示す。
【0074】
【表8】

【0075】
シーズニングの添加量、コーティング率を変更した場合のキムチ味シーズニング、及びキムチ味シーズニングに比べコーティング率の大きいコーンポタージュ味シーズニングにおいても、良好な実施品が得られた。
【0076】
(吸気温度の比較)
【実施例10】
【0077】
実施例9において、吸気温度85℃とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品10を得た。
【実施例11】
【0078】
実施例9において、吸気温度70℃とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品11を得た。
【実施例12】
【0079】
実施例9において、吸気温度70℃、乾燥時間60分とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品12を得た。
【実施例13】
【0080】
実施例9において、吸気温度70℃、乾燥時間120分とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品13を得た。
【実施例14】
【0081】
実施例9において、吸気温度40℃、乾燥時間30分とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品14を得た。
【実施例15】
【0082】
実施例9において、吸気温度40℃、乾燥時間60分とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、実施品15を得た。
【0083】
[比較例7]
実施例9において、吸気温度25℃、乾燥時間180分とする以外は、実施例9の方法でコーティングを行い、比較品7を得た。
【0084】
実施例10〜15、比較例7における、コーティング液の組成およびコーティング条件を表9に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
実施品、比較品の評価は、水溶性被膜剤の比較のときと同様の方法で、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。結果は表10に示す。
【0087】
【表10】

【0088】
実施品10〜15のように、吸気(乾燥)温度40℃、70℃、85℃の条件では、被膜の均一性、食感、味質の評価がすべて良好であり、手が汚れることもない実施品が得られた。一方、比較品7のように、吸気(乾燥)温度25℃の場合は、長時間乾燥しても水分が残存し、食感に悪い影響を与える結果となった。
【0089】
(シーズニング添加品へのコーティング)
【実施例16】
【0090】
実施例1において、コーティングを行うポテトチップを予めポテトチップ重量に対しキムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)5重量%を付着させたものに変え、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を15重量部、水85重量部を混合、溶解したコーティング液を使用しコーティング#率が4%になるまでコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で行い、実施品16を得た。
【実施例17】
【0091】
実施例1において、コーティングを行うポテトチップを実施品1に変え、コーティング液を調製する際、コーティング剤1を15重量部、水85重量部を混合、溶解したコーティング液を使用し、コーティング率が4%になるまでコーティングした以外は、実施例1と同様の方法で行い、実施品17を得た。
【0092】
[対照例2]
実施例1におけるコーティングの芯材として使用するポテトチップに、ポテトチップ重量に対しキムチ味シーズニング(SH−2、三菱商事フードテック社製)5重量%を付着させ、対照品2(実施例16の芯材に相当)を得た。
【0093】
実施例16及び17、対照例2における、コーティング液の組成及び芯材の種類を表11に示す。
【0094】
【表11】

【0095】
実施品、対照品の評価は、水溶性被膜剤の比較のときと同様の方法で、手の汚れ、被膜の均一性、食感、味質について行った。結果は表12に示す。
【0096】
【表12】

【0097】
シーズニング添加品(シーズニングを添加した芯材)に対しても均一なコーティングを行うことが出来、食感、味質についても良好で、手が汚れることがない実施品が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によって、手で直接触れても手が汚れず、好みの風味に調味したスナック菓子を、スナック菓子本来の食感を変えることなく製造することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2001−57850号公報
【特許文献2】特開2002−320453号公報
【特許文献3】特開平10−42803号公報
【特許文献4】特表平8−509858号公報
【特許文献5】特開2007−117040号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性被膜剤を含むスナック菓子製造用コーティング剤。
【請求項2】
水溶性被膜剤が、加工でん粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、澱粉糖化物、還元澱粉糖化物から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスナック菓子製造用コーティング剤。
【請求項3】
加工でん粉が、ヒドロキシアルキル化デキストリンであることを特徴とする、請求項2に記載のスナック菓子製造用コーティング剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載のスナック菓子製造用コーティング剤を親水性溶媒に溶解した、スナック菓子製造用コーティング液。
【請求項5】
シーズニングを含むことを特徴とする、請求項4に記載のスナック菓子製造用コーティング液。
【請求項6】
水溶性被膜剤の配合量が、1重量%〜20重量%であることを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のスナック菓子製造用コーティング液。
【請求項7】
シーズニングの配合量が、2重量%〜60重量%であることを特徴とする、請求項5または6に記載のスナック菓子製造用コーティング液。
【請求項8】
請求項4〜7の何れか一つに記載のスナック菓子製造用コーティング液を用いてコーティングを行う際、コーティング液の噴霧および乾燥工程を35℃〜95℃で行うことを特徴とする、スナック菓子をコーティングする方法。
【請求項9】
請求項4〜7に記載のスナック菓子製造用コーティング液を用いてコーティングされた、スナック菓子。
【請求項10】
請求項8に記載の方法で製造された、スナック菓子。