説明

スナップ錠

【課題】小型かつ軽量で簡単に取り外しができないスナップ錠を提供する。
【解決手段】錠部を内部に有する受け金具1とダボ11を有する止め金具2とからなり、前記受け金具の錠部は止め金具のダボに係止されるリングばね4と、該リングばねを止め金具のダボに係止した状態にするストッパー3と、該ストッパーを付勢して施錠状態に保持するばねとを有し、前記ストッパーは磁性材料から形成されており、ストッパーを磁石鍵の磁力でばね5の付勢に抗して動かしリングばねとダボとの前記係止を解放させることによって、受け金具と止め金具とが解錠状態となり取り外しできることを特徴とするスナップ錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に取り外しができないスナップ錠に関し、特に磁石鍵により解錠できる係止機構付きスナップ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に痴呆症患者には、不潔行為を未然に防ぐために、ロック付き止め具を備えたねまきや手袋が着用されることがある。これらのロック付き止め具の一つとして、例えば、受け金具の内部に止め金具に係合する係止部材と該係止部材を止め金具のダボに係合した状態で係止するストッパーとを設け、該ストッパーを磁性材料から形成して磁石の磁力で前記係止を開放することにより係止部材を可動にして、受け金具と止め金具とを外す止め具が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この止め具は、受け金具の係止部材を止め金具のダボに係合した状態で係止するストッパーを磁石鍵で解放させない限り、受け金具と止め金具とを解錠して外すことができない止め具でありロック機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−136557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記止め具は、重要な構成部品である係止部材がステンレスのばね材で作られており、係止部材の位置を制御するためのガイド、ばね性を得るための分割された複数の羽根部、ダボの径に整合できる形状などが必要であり、プレス加工によって作られるが、このような形状の複雑さから非常に困難な製造工程を要した。また、形状が複雑でかつばね性と精度が要求されるため、おのずから大きさも制約され大きくならざるを得なかった。さらにばねとしての性能が要求されることから、材料の厚さやばね性が制限され材料の選択も制約された。そのため、止め具のコスト削減および小型化を得ることが困難という問題を有している。
【0006】
本発明は、このような課題を解消することを目的とし、係止部材の変更および構成部品の削減などによってコストの削減、小型化が可能な係止機構付きスナップ錠を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、錠部を内部に有する受け金具とダボを有する止め金具とからなり、前記受け金具の錠部は止め金具のダボに係止されるリングばねと、該リングばねを止め金具のダボに係止した状態に保持するストッパーと、該ストッパーを付勢して施錠状態にするばねとを有し、前記ストッパーは磁性材料から形成されており、ストッパーを磁石鍵の磁力でばねの付勢に抗して動かしリングばねとダボとの前記係止を解放させることによって、受け金具と止め金具とが解錠状態となり取り外しできることを特徴とするスナップ錠を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、受け金具の錠部の係止部材に線ばねを丸めたリングばねを採用し、止め金具のダボに係止されたリングばねをストッパーで保持して施錠し、該ストッパーを磁石鍵で動かすことによってリングばねとダボとの係止を開放し解錠させるので、構成部品の削減と簡単構造によってコストの削減と小型化が得られる。
【0009】
また、係止部材がリングばねであるため、製造上の精度が緩和されるとともに簡単構造によって耐久性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係わる好ましいスナップ錠の受け金具の断面図。
【図2】本発明に係わる好ましいスナップ錠の止め金具の一部を断面で示す説明図。
【図3】図1の受け金具のリングばねの平面図。
【図4】本発明のスナップ錠の施錠状態の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態のスナップ錠(以下、本スナップ錠という)について図面を参照して説明する。
図1は本スナップ錠の受け金具1の断面図であり、図2は止め金具2を示す。図示はしないが、これら受け金具1と止め金具2は水平方向の断面が円形である。受け金具1および止め金具2は、例えば衣服やベルト等(以下、衣服等という)10に対で取り付けられ、受け金具1の錠部に止め金具2のダボ11を嵌挿することにより係止され、同時に施錠されてロック機能が得られる。そして、磁石鍵で前記係止を開放すると、解錠されて取り外すことができる。
【0012】
上記受け金具1は、錠部を下ケース6と上ケース7との間に組み込んで形成される。図1に示すように下ケース6は、内部に錠部を組み込むための空間部を有するドーナツ状体で、底部には先端を内側に折り曲げて止め金具2のダボを嵌挿するための透き孔が、ダボの最大径より大きい径で設けられている。
【0013】
受け金具1の錠部は、止め金具2のダボに係止されるリングばね4と、該リングばね4を止め金具のダボに係止した状態に保持するストッパー3と、該ストッパーを付勢して施錠状態に保持するばね5とを有し、これらを下ケース6と上ケース7との間に組み込むことによって形成される。ストッパー3はキャップ状をしており、上ケース7の外側から磁石鍵の磁力が作用するように鉄、18−8ステンレス鋼以外のステンレス鋼(磁性ステンレス鋼)などの磁性材料で形成される。特に、磁性ステンレス鋼は防錆および加工性に優れており好ましい。ストッパー3を磁性材料で形成することにより、解錠時に磁石鍵の磁力で動作させてリングばね4に対する抑止を解消し、リングばね4と止め金具2のダボ11との係止を解放させることができる。ストッパー3は通常全体を磁性材料で形成するが、解錠時に最も磁力が作用するキャップ頂部だけを磁性材料で形成してもよいし、あるいは図1に鎖線で示すようにこの部分に磁性材15を接着してもよい。ストッパー3が磁性材料で形成されるとは、これらを含んでいる。止め金具のダボを受け入れる空間を有し、端部でリングばね4を支承できれば、その形状は適宜変えられる。
【0014】
リングばね4は、受け金具1を止め金具2のダボ11に係止させるための係止部材である。本例のリングばね4は、図3に示すように線ばねを丸く曲げてリング状にしたもので、適度の弾性を持っており、受け金具1と止め金具2との着脱時に止め金具2のダボによって内側から押されると弾性変形して広がる。線ばねを曲げ加工するだけで作れるため低コストで製造でき、かつ他の係止部材に比べて簡単形状で精度が厳しくなくてもよいため、係止部材として優れている。通常は本例のように単純な円形のリングばねが使用されるが、線ばねを部分的に内側に突出部を有する波形に曲げて、該突出部で止め金具2のダボを係止する形状であってもよい。
【0015】
また、ばね5はストッパー3を付勢して通常時はストッパー3の先端でリングばね4を位置制御し、またリングばね4が止め金具2のダボ11に係合したときには、ストッパー3の先端でリングばね4の外側上半部を抑止し、リングばね4が止め金具2のダボ11で押し広げられるのを阻止し施錠状態に保持する。ばね5としては、解錠時にリングばね4の外側上半部を抑止しているストッパー3を磁石鍵の磁力でばね5の弾性力に抗して動かしリングばね4を開放させるために、ストッパー3に作用する磁力より小さい弾性力のものが使用される。本例ではつる巻きばねを使用しているが、これに限定されないで、例えば板ばねやコイルばねなどを用いることもできる。
【0016】
上記錠部を下ケース6および上ケース7に組み込むには、図1に示すように下ケース6の底部に載置されたリングばね4にストッパー3を載置してリングばね4を下ケース6の先端とストッパー3の先端とで保持する。次に、ばね6をストッパー3に下端を載せて組み込んだ後、下ケース6に上ケース7を被せて両者の縁部を重ね合わせた状態ではとめる。この場合、ストッパー3の下部を図1に示すように傾斜させ、さらにこの部分に段部を形成しておくと、この段部でばね5の下端を支持してストッパー3に付勢させやすくなり、同時にばね5の付勢によってストッパー3が受け金具1の中央に位置制御されるため好ましい。また、ストッパー3と上ケース7との間には、解錠時にストッパー3を上方に動かしてリングばね4に対する抑止を開放させるための空間20が設けられる。
【0017】
上記受け金具1において、ストッパー3以外の部材は非磁性材料から形成されることが好ましい。その理由は、受け金具1に磁石鍵を近接させて解錠するとき、磁力が磁性材のストッパー3に集中しストッパー3以外の部材には作用しないようにするためである。この非磁性材料としては、例えば18−8ステンレス鋼、真鍮、亜鉛、アルミニウムなどの金属が強度、防錆、製造加工のしやすさなどの面で好ましく使用でき、なかでも真鍮が優れている。
【0018】
また、上記受け金具1を衣服等に取り付けるには、例えば衣服等10の受け金具1を取り付ける箇所にあらかじめ孔をあけ、該孔に裏側からはとめ8を挿入したあと、表側からはとめ8の外側に押え材9を嵌合するとともに錠部が組み込まれた受け金具1の下ケース6をはとめ8の内部に嵌合し、はとめ8の先部と下ケース6および上ケース7の縁部とを重ね合わせた状態で一緒に折り曲げてはとめる。この場合、押え材9に突起16を設けておくと、該突起16が衣服等に食い込んで衣服等への取り付けを強固にできる。なお、受け金具の取り付け方法は、取り付ける衣服等の種類などにより適宜選択でき限定されない。
【0019】
次に、止め金具2について図2を参照して説明する。止め金具2は、ダボ11とダボ止片12とによって形成される。材質としては、例えば真鍮やステンレス鋼などの金属が用いられる。柱状に植立されたダボ11の先端部は、受け金具1の前記リングばね4に嵌挿しやすくするために丸みを持っており、かつリングばね4に嵌挿した後にリングばね4でダボ11を確実に係止するのに有効な段部18を形成するために外周方向に突出している。本例においてこのようなダボ11の先端部の形状は、止め金具2を衣服等10に取り付けする際に形成できる。すなわち、図2に示す如く衣服等10にあけた取付け孔にダボ止片12のあし17を裏側から挿通した後、表側からダボ11を該あし17に嵌挿して両者の先端をかしめて止め金具2を衣服等に取り付ける際に、ダボ11の先端部を前記形状に形成する。
【0020】
次に、本スナップ錠の施錠および解錠について説明する。図4は施錠されたスナップ錠を示す。施錠する前の受け金具1において、リングばね3は下ケース6の先端で下部を、またばね5で下方に付勢されたストッパー3の先端で外側上半部を保持される。止め金具2のダボ11を該リングばね4の中に押し込むと、ダボ11は先端でリングばね4を押し広げながらまたリングばね4を介してストッパー3を押し上げながら進入する。そして、ダボ11の最大径部の進入が終ると、リングばね4は弾性力で縮小して元に戻り、それと同時にストッパー3もばね5の付勢力によって下方に押し下げられ、リングばね4の外側上半部を抑止する。これにより、図4に示すようにダボ11の段部18がリングばね4で係止され、かつ外側からリングばね4の外側上半部がストッパー3で抑止された状態となる。この状態でダボ11を受け金具1から離脱させようとしても、リングばね4が押し広げられないため、ダボ11は段部18がリングばね4によって係止され離脱できない状態となり、受け金具1と止め金具2は施錠される。施錠されたスナップ錠は、リングばね4をストッパー3の抑止から解放させない限り離脱不可でありロック機能を有する。
【0021】
施錠されたスナップ錠の解錠は、受け金具1に磁石鍵13を近づける(近接)ことによって得られる。図4に示すように受け金具1に磁石鍵13を近づけると、磁性体で形成されているストッパー3が磁石14の磁力に引き寄せられてばね5の弾性力に抗して上方に動き、リングばね4に対する抑止を解放するため、ダボ11でリングばね4を押し広げることが可能となり、スナップ錠は解錠される。
【0022】
本発明において、受け金具1と止め金具2の解錠用に使用する磁石鍵13の磁石14は、所定の強度の磁力が得られるものであれば、永久磁石、電磁石のいずれでもよい。なかでも、永久磁石は磁石自体の構造が簡単でかつ電源を必要としないため、軽量化と小型化に適し携帯の利便性が得られる点で優れている。
【0023】
本例の磁石鍵13は、例えばプラスチックス製のホルダ19に磁石14を埋設して携帯に適した形体にしたもので、ホルダ19は携帯に便利で使用しやすい形状に工夫される。また、磁石14が所定の強さの磁力を持っていれば、スナップ錠の形体、大きさ、用途などに関係なく磁石鍵を共用できる。
【0024】
本発明のスナップ錠は、受け金具1の錠部の主要部を構造的にシンプルなリングばね4とストッパー3で形成し、該ストッパー3を磁石鍵13で直接に動作させてダボ11に対するリングばね4の係止を解放できるので、部品数の削減によって製造しやすくかつ小型化が可能となり、耐久性にも優れている。また、確実に施錠できるとともに、磁石鍵13により容易に解錠できる使い勝手のよいスナップ錠が得られる。
【0025】
本発明に係るスナップ錠は、ロック機能を有する止め具として広く使用可能であり、介護用ねまきの止め具、手袋の離脱防止用の止め具、かばんやコンテナなどの止め具として使用できる。いずれの場合も施錠されたスナップ錠は、磁石鍵で解錠しない限り取り外すことができないロック機能を有している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係わるスナップ錠は、磁石の磁力で解錠できる止め具として介護用ねまきの止め具、手袋の外し防止用止め具、かばんの簡易止め具などとして利用できる。
【符号の説明】
【0027】
1:受け金具 2:止め金具 3:ストッパー
4:リングばね 5:ばね 6:下ケース
7:上ケース 8:止めケース 9:押え材
10:衣服等 11:ダボ 12:ダボ止片
13:磁石鍵 14:磁石 15:磁性材
16:突起 17:あし 18:段部
19:ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠部を内部に有する受け金具とダボを有する止め金具とからなり、前記受け金具の錠部は止め金具のダボに係止されるリングばねと、該リングばねを止め金具のダボに係止した状態にするストッパーと、該ストッパーを付勢して施錠状態に保持するばねとを有し、前記ストッパーは磁性材料から形成されており、ストッパーを磁石鍵の磁力でばねの付勢に抗して動かしリングばねとダボとの前記係止を解放させることによって、受け金具と止め金具とが解錠状態となり取り外しできることを特徴とするスナップ錠。
【請求項2】
前記リングばねは、受け金具の下ケースの先端とストッパーの先端で保持される請求項1に記載のスナップ錠。
【請求項3】
介護用ねまき、介護用手袋、かばんまたはコンテナの止め具である請求項1または2に記載のスナップ錠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate