説明

スピニングリールのリール本体

【課題】スピニングリールのリール本体において、台座部材を設けることなくカバー部材をリールボディに取り付けできるようにする。
【解決手段】このスピニングリールでは、蓋部材2bの下部に本体部材2a側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材2cを蓋部材2bに固定するためのボルト81が取り付け可能な固定突起80が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体、特に、釣竿に装着され、前方に釣り糸を繰り出し可能なスピニングリールのリール本体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、一般に、釣竿に装着されるリール本体と、リール本体に回転自在に取り付けられたハンドルと、リール本体に回転自在に装着され、ロータの前方でリール本体に前後移動自在に装着され釣り糸が外周に巻き付けられるスプールとを有している。
【0003】
リール本体は、釣竿に装着される竿取付脚部と、竿取付脚部と一体成形されたリールボディとを備えている。リールボディは、側部が開口する収納空間を内部に有する本体部材を有しており、この本体部材の開口は蓋部材によって覆われている。リール本体の後部及び下部には、リール本体を保護するために、カバー部材が装着されている。
【0004】
この種のカバー部材は、リールボディの後部及び下部に、後方及び下方からねじ部材によりねじ止め固定されている。リールボディの下部には、雌ねじが形成された台座部材が別体で装着固定されており、台座部材の雌ねじにねじ部材を螺合させることによってカバー部材を取り付けるようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来のカバー部材は、別体で装着された台座部材を介してリールボディに取り付けられている。このように別体で台座部材を設けると、全体の部品点数が増加し、組み立て工程が複雑になるおそれがある。また、台座部材は、一般に、小さい部材であることが多いので、特に、釣人がリールを分解した場合には、台座部材を紛失してしまうおそれが生じる。
【0007】
そこで、台座部材に雌ねじを形成するのではなく、本体部材又は蓋部材に雌ねじを形成することが考えられる。しかし、本体部材又は蓋部材そのものに雌ねじを形成するには、雌ねじの周囲に十分な肉厚を確保するために、本体部材又は蓋部材の開口部の端面から肉厚分だけ偏倚した位置に雌ねじを設ける必要が生じる。このように本体部材又は蓋部材の端面から偏倚した位置でカバー部材をねじ止めすると、リール外観の美観を損ねるおそれがあるとともに、カバー部材の取り付けが不均一になるためにカバー部材と本体部材又は蓋部材との間に隙間ができてしまうおそれが生じる。
【0008】
本発明の課題は、スピニングリールのリール本体において、リール外観の美観を損ねることなく、カバー部材をリールボディに均一に取り付けできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係るスピニングリールのリール本体は、釣竿に上部が装着可能であり、前方に釣り糸を繰り出し可能なスピニングリールのリール本体であって、竿取付脚部と、リールボディと、カバー部材と、固定突起とを備えている。竿取付脚部は、釣竿に装着される。リールボディは、本体部材と、蓋部材とを有する。本体部材は、側部が開口する収納空間を内部に有する。蓋部材は、本体部材の開口を覆うように本体部材に着脱自在に装着される。カバー部材は、リールボディの後部から下部を覆うように装着される。固定突起は、本体部材及び蓋部材の一方の下部に本体部材及び蓋部材の他方側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材を本体部材及び蓋部材の一方に固定するための固定部材が取り付け可能である。
【0010】
このリール本体では、本体部材又は蓋部材の下部に他方側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材を本体部材又は蓋部材に固定するための固定部材が取り付け可能な固定突起が設けられている。ここでは、固定部材が取り付け可能な固定突起が本体部材又は蓋部材に一体成形されているので、従来のように台座部材を設けることなくカバー部材をリールボディに取り付けできる。さらに、ここでは、固定突起が本体部材又は蓋部材に本体部材及び蓋部材の他方側に向けて突出するように形成されているので、本体部材及び蓋部材の合わせ面近傍に固定突起を配置できる。ここでは、本体部材及び蓋部材の合わせ面近傍でカバー部材を取り付けることができるので、リール外観の美観を損ねることなく、カバー部材をリールボディに均一に取り付けできる。
【0011】
発明2に係るリール本体は、発明1のリール本体において、固定部材は、雄ねじ部を有するねじ部材である。固定突起は、雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部を有している。この場合、ねじ部材の雄ねじ部を固定突起の雌ねじ部に螺合させるだけで、カバー部材をリールボディに容易に取り付けできる。
【0012】
発明3に係るリール本体は、発明2のリール本体において、ねじ部材は、雄ねじ部より大径の頭部をさらに有している。カバー部材は、雄ねじ部が挿通され頭部が収納される段付きの貫通孔を有している。この場合、ねじ部材の頭部がカバー部材の外表面より外方に突出しないように配置できるので、ねじ部材の頭部に釣り糸が引っ掛かりにくくなる。
【0013】
発明4に係るリール本体は、発明2又は3のリール本体において、固定突起は、雌ねじ部の中心位置がカバー部材の下部の左右方向の中心位置となるように突出するように形成されている。この場合、カバー部材の下部の左右方向の中心位置にねじ部材を装着できるので、本体部材と蓋部材とが左右方向の中心位置で接合されている場合には、本体部材と蓋部材との合わせ面付近で固定できる。
【0014】
発明5に係るリール本体は、発明1から4のいずれかのリール本体において、固定突起は、下方に突出するように形成されている。この場合、固定突起を下方に厚く形成することによって、カバー部材を厚くすることなく雌ねじの長さを確保できる。
【0015】
発明6に係るリール本体は、発明1から5のいずれかのリール本体において、固定突起は、本体部材の下部に蓋部材側に向けて突出するように一体成形されている。この場合、固定突起は、一般に、高強度な部材で形成されることが多い本体部材と一体成形されているので、突出した固定突起に大きな力が作用しても、固定突起が破損しにくくなる。
【0016】
発明7に係るリール本体は、発明1から5のいずれかのリール本体において、固定突起は、蓋部材の下部に本体部材側に向けて突出するように一体成形されている。この場合、固定突起は、本体部材に比して簡素な形状の蓋部材と一体成形されているので、固定突起の配置形成が容易になる。
【0017】
発明8に係るリール本体は、発明1から7のいずれかのリール本体において、竿取付脚部は、本体部材の上部に一体成形されている。この場合、竿取付脚部と本体部材とが一体成形されているので、竿取付脚部と蓋部材とが一体成形されている場合に比して、蓋部材の構成が簡素になる。
【0018】
発明9に係るリール本体は、発明1から7のいずれかのリール本体において、竿取付脚部は、蓋部材の上部に一体成形されている。この場合、竿取付脚部と蓋部材とが一体成形されているので、厚肉部分と薄肉部分との混在を少なくして本体部材を薄肉にして精度を高く維持し、取付脚部を厚肉にして強度を維持できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スピニングリールのリール本体において、本体部材又は蓋部材の下部に他方側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材を本体部材又は蓋部材に固定するための固定部材が取り付け可能な固定突起が設けられているので、リール外観の美観を損ねることなく、カバー部材をリールボディに均一に取り付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるスピニングリールの側面図。
【図2】前記スピニングリールの側面断面図。
【図3】前記スピニングリールの拡大背面断面図。
【図4】前記スピニングリールの分解斜視図。
【図5】固定突起周辺の側面拡大断面図。
【図6】蓋部材の側面図。
【図7】前記蓋部材の底面図。
【図8】前記蓋部材を本体部材に装着したときの底面図。
【図9】他の実施形態の図9に相当する図。
【図10】他の実施形態の図9に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1及び図2に示すように、釣竿に装着されハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4と、スプール軸15と、回転伝達機構5と、オシレーティング機構6と、ドラグ機構7とを備えている。ロータ3は、ベールアーム44を有し、リール本体2の前部に前後軸回りに回転自在に装着されている。スプール4は、ロータ3に案内された釣り糸が外周面に巻き付けられるものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。スプール軸15は、リール本体2に前後軸方向に移動自在に装着され先端にスプール4がドラグ機構7を介して装着されたものである。回転伝達機構5は、ハンドル1の回転をロータ3に伝達するものである。オシレーティング機構6は、回転伝達機構5の回転に応じてスプール軸15を前後往復移動させて、釣り糸をスプール4に均一に巻き取るための機構である。なお、ハンドル1は、図1及び図3に示すリール本体2の左側と、図2に示すリール本体2の右側とのいずれにも装着可能である。
【0022】
リール本体2は、図1から図4に示すように、ロータ3やスプール4を支持する本体部材2aと、本体部材2aに着脱自在にねじ止め固定された蓋部材2bと、本体部材2a及び蓋部材2bの後端部を覆うカバー部材2cとを主に有している。本体部材2a及び蓋部材2bの前部には、それぞれ一体形成された第1フランジ部分24a及び第2フランジ部分24bを有する円形のフランジ部2dが形成されている。なお、本発明のリールボディは、本体部材2aと蓋部材2bとで構成されている。
【0023】
本体部材2aは、たとえばガラス繊維で強化されたポリアミド系合成樹脂製であり、射出成形法により製造された部材である。本体部材2aは、図3から図4に示すように、側部に形成された開口25と、内部に形成された機構収納空間26と、ロータ3のリール本体2側に形成された円形の凹陥部3a内に配置されるように形成されロータ3の回転軸(後述するピニオンギア12)を回転自在に支持する前支持壁部27と、ハンドル1の回転軸であるハンドル軸10の一端を支持するためのボス部からなる第1ハンドル支持部28aとを有している。
【0024】
機構収納空間26には、図2に示すように、回転伝達機構5と、オシレーティング機構6とが設けられている。前支持壁部27は、機構収納空間26の前部に一体形成された略半円形の第1フランジ部分24aから前方に突出して略円柱状に一体形成されており、中心に後述するピニオンギア12が貫通する貫通孔が形成されている。この前支持壁部27の前面には、後述する逆転防止機構50のワンウェイクラッチ51がねじ止め固定されている。前支持壁部27の奥側下部には、後述する螺軸21が前方への移動を規制された状態で回転自在に装着される螺軸装着孔が形成されている。
【0025】
蓋部材2bは、たとえばガラス繊維で強化されたポリアミド系合成樹脂製であり、射出成形法により製造された部材である。蓋部材2bは、図3及び図4に示すように、本体部材2aの開口25を覆いかつ内部に空間が形成され得るようにロータ装着側に壁部としての第2フランジ部分24bが一体形成された薄肉のカバー部35と、カバー部35から上方に延びる取付脚部36とを有している。カバー部35は、上部ではリール本体2の厚みの略半分の厚みより厚く形成されており、底部35aでは本体部材2aの突出に伴ってリール本体2の厚みの略半分の厚みになっている。カバー部35の前部を除く上部及び後部には開口25に対向して縁取り部35bが形成されている。この縁取り部35bには開口25に密着するように段差が形成されている。カバー部35の前部には、フランジ部2dの略半円形の第2フランジ部分24bが形成されている。第2フランジ部分24bの内方に突出する内側部分がカバー部35を補強する壁部として機能している。また、カバー部35の側部には、ハンドル軸10の他端を支持するためのボス部からなる第2ハンドル支持部28bが形成されている。
【0026】
取付脚部36は中実の厚肉部材であり、その先端は前後両側に延びており釣竿取付部36aとなっている。取付脚部36からカバー部35にかけて境界部分は、略半分の厚みより薄く切り欠かれており、その切り欠き部分36bに外側面が滑らかに連続するように本体部材2aの上部が嵌め込まれている。
【0027】
フランジ部2dは、円板状に形成されており、ロータ3の後部に形成された円形の凹陥部3a(図1参照)を塞ぐように凹陥部3aの端面と略同一面に配置されている。フランジ部2dは、前述したように本体部材2aに一体形成された略半円形の第1フランジ部分24aと、蓋部材2bのカバー部35に一体形成され第1フランジ部分24aとで円形となるような半円形の第2フランジ部分24bとを有している。第1フランジ部分24a及び第2フランジ部分24bには、それぞれ上下の2箇所に横方向の貫通孔を有する連結部2fを有しており、本体部材2a側から装着された2つのボルト83によって本体部材2aと蓋部材2bとが連結される。また、図4に示すように、本体部材2a及び蓋部材2bの後部には、同様に、それぞれ後方に突出し横方向の貫通孔を有する連結部2fを有しており、本体部材2a側から装着された2つのボルト83によって本体部材2aと蓋部材2bとが連結される。
【0028】
カバー部材2cは、たとえばABS樹脂などの合成樹脂にめっき処理したりステンレス合金を用いたりして傷つきにくくしたものであり、リール本体2の最も傷つきやすい部分を保護するものである。カバー部材2cは、図2及び図4に示すように、本体部材2a及び蓋部材2bの後部から下部にかけて他の部分の外表面より一段凹んで形成された装着凹部2eに装着される部材である。カバー部材2cの上部は、図2及び図4に示すように、上端部に前方に突出するように一体成形された円柱状の突出部2gが、蓋部材2bの前後を貫通する貫通孔2iの後方から挿入され、貫通孔の前方から挿入されたボルト82の雄ねじ部を突出部2gに形成された雌ねじ部に螺合させることによって固定している。カバー部材2cの下部は、図2及び図4に示すように、蓋部材2bの下部に本体部材2a側に向けて突出するように蓋部材2bと一体成形された固定突起80に下部から挿入されたボルト81によって固定されている。
【0029】
固定突起80は、図5から図8に示すように、蓋部材2bの後部下方に一体成形された舌状の突起であって、本体部材2a側に向けて横方向に突出するとともに、下方向にも突出している。固定突起80は、下部から挿入されたボルト81の雄ねじ部81bが螺合する雌ねじ部80aが形成されている。ボルト81は、図5に示すように、雄ねじ部81bと、雄ねじ部81bより大径の頭部81aを有しており、カバー部材2cは、雄ねじ部81bが挿通され頭部81aが収納される段付きの貫通孔である段付凹部2hを有している。カバー部材2cは、固定突起80の先端部を完全に覆うように前端下部が下方に僅かに膨らんだ形状になっている。固定突起80は、図8に示すように、基端部が蓋部材2bの端面に設けられ、先端部が本体部材2aに重なる位置まで突出するように形成されており、雌ねじ部80aの全部が本体部材2aに重なる位置となるように配置されている。固定突起80は、図8に示すように、雌ねじ部80aの中心位置(Q)が図示しないカバー部材2cの下部の左右方向の中心位置(P)の近傍となるように突出するように形成されている。ここでは、本体部材2aと蓋部材2bとが左右方向の中心位置(P)で接合されているので、本体部材2aと蓋部材2bとの合わせ面の近傍位置(Q)でカバー部材2cを固定できる。
【0030】
このようなカバー部材2cを本体部材2a及び蓋部材2bに装着するには、まず本体部材2aと蓋部材2bとを組み立てた状態で、固定突起80の雌ねじ部80aがカバー部材2cの段付凹部2hに位置するように前端下部を押し込みながら、カバー部材2c上部の突出部2gを貫通孔2iに挿入する。この状態で、ボルト81、82を、それぞれ固定突起80の雌ねじ部80a、突出部2gの雌ねじ部に装着して固定する。
【0031】
回転伝達機構5は、図2及び図3に示すように、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギアからなるマスターギア11と、このマスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。マスターギア11は、ハンドル軸10が回転不能に装着されたマスターギア軸11aと一体形成されている。図3に示すように、マスターギア軸11aは、本体部材2a及び蓋部材2bに設けられた筒状の第1及び第2ハンドル支持部28a、28bの内部に装着された軸受45a、45bにより、本体部材2a及び蓋部材2bに前後軸と食い違う左右の軸回りに回転自在に支持されている。
【0032】
ロータ3の回転軸であるピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、前支持壁部27に装着された軸受14aと、中間支持壁部aに装着された軸受14bとを介してそれぞれリール本体2に回転自在に支持されている。ピニオンギア12の内周側には、スプール軸15が貫通している。
【0033】
オシレーティング機構6は、図2及び図3に示すように、スプール4の中心部にドラグ機構7を介して連結されたスプール軸15を回転伝達機構5の回転に連動して前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。また、オシレーティング機構6は、スライダ22を前後軸方向に案内する第1ガイド軸29a及び第2ガイド軸29bと、螺軸21の後方への移動を規制する2枚の抜け止め部材120、121とを有している。
【0034】
螺軸21は、スプール軸15の奥側斜め下方に配置されており、表面が交差する螺旋状溝21aが形成されている。螺軸21は、前述したように、前支持壁部及び後支持壁部に各別に装着されたブッシュにより前後の小径部が各別に回転自在に支持されており、前方への移動が規制された状態で後方から装着される。螺軸21は、図2及び図4に示すように、2つのボルト122、123によって本体部材2aの後部にねじ止めされた2枚の抜け止め部材120、121によって、後方への移動が規制されている。ここでは、2枚の抜け止め部材120、121を用いることで、従来の1枚の抜け止め部材に比して厚みを半分程度に薄くすることができるので、組み付けした時の強度を高く維持しながら、穴あけ等のプレス加工を容易に行える。
【0035】
スライダ22は、螺旋状溝21aに係合する係合部材を内部に有し、螺軸21の回転により前後軸方向に往復移動する。スライダ22は、スプール軸15の後端に回転不能に固定されている。スライダ22は、第1ガイド軸29a及び第2ガイド軸29bにより前後方向に案内される。
【0036】
中間ギア23は、回転伝達機構5に連動して回転する。具体的には、中間ギア23と回転伝達機構5のピニオンギア12との間には、減速ギア部39が設けられている。減速ギア部39は、ピニオンギア12に噛み合う大径ギア39aと大径ギア39aと同芯に配置された小径ギア39bとを有している。この小径ギア39bが中間ギア23に噛み合い、ピニオンギア12の回転が螺軸21に伝達される。このため、オシレーティング機構6の前後移動速度が遅くなり、釣り糸をスプール4に緻密に巻き付ける密巻を実現できる。
【0037】
第1ガイド軸29aは、螺軸21の上方に配置されている。第1ガイド軸29aは、前述したように中間支持壁部に前端部が前方への移動が規制された状態で装着され、後端部が後支持壁部に支持されている。
【0038】
第2ガイド軸29bは、スプール軸15の下方に配置されている。第2ガイド軸29bは、前述したように中間支持壁部に前端部が前方への移動が規制された状態で装着され、後端部が後支持壁部に支持されている。第2ガイド軸29bは、蓋部材2bに形成されたカバー凹部35cにより後方への移動が規制されている。
【0039】
このよう構成のオシレーティング機構6をリール本体2に組み込む際には、まずスライダ22をスプール軸15の後端に装着する。このとき、スプール4を最も後退した位置に配置する。そして、中間ギア23を所定の位置に配置した状態で螺軸21を後支持壁部の後方から挿入し、中間ギア23を貫通させて前端小径部をブッシュに装着する。なお、ブッシュは、前述したようにワンウェイクラッチ51により前方への移動が規制されている。これにより、螺軸21の前方への移動が規制される。
【0040】
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とを有している。円筒部30と第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とは一体成形されている。
【0041】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス33aが形成されている。このボス33aの貫通孔をピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。前壁33の前方側にはナット13が配置されており、このナット13がピニオンギア12の先端のネジ部に螺合している。円筒部30の前壁33より後方が凹陥部3aとなっており、この凹陥部3aの後端面と面一にフランジ部2dが本体部材2a及び蓋部材2bにそれぞれ一体形成されている。
【0042】
第1ロータアーム31の先端の外周側には第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためにラインローラ41が装着されている。また、第2ロータアーム32の先端の外周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端のラインローラ41と第2ベール支持部材42との間にはベール43が設けられている。これらの第1ベール支持部材40、第2ベール支持部材42、ラインローラ41及びベール43によりベールアーム44が構成される。
【0043】
ロータ3の円筒部30の内部にはロータ3の逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、ローラ型のワンウェイクラッチ51を有している。ワンウェイクラッチ51は、外輪が前支持壁部27に固定され、内輪がピニオンギア12に回転不能に係止されている。ワンウェイクラッチ51は、操作機構を別に設けることによって、作動状態及び非作動状態に切り換え可能なタイプのワンウェイクラッチを使用している。ワンウェイクラッチ51の後部には、図4に示すように、常にワンウェイクラッチの作動状態を維持するための切換禁止部材150が装着されている。切換禁止部材150は、ワンウェイクラッチ51に操作機構の操作レバーの操作杆が挿入される切り欠き部51aに装着される突出部150aと、第1フランジ部分24aの前部に突出して形成された2つのボス部24c、24dに装着される位置決め孔150b、150cとを有している。2つのボス部24c、24d周辺の第1フランジ部分24aは、切換禁止部材150の外形に沿うように凹んだ凹部が形成されており、切換禁止部材150を第1フランジ部分24aの凹部に装着した状態で、突出部150aをワンウェイクラッチ51の切り欠き部51aに装着すると、切換禁止部材150が第1フランジ部分24aとワンウェイクラッチ51(図示しないが、ローラクラッチ51の外周に装着された環状のローラクラッチリングを含む)との間に隙間なく完全に装着される。また、切換禁止部材150の外周に露出した部分には径方向外方に突出した突起部が形成されており、この突起部にローラクラッチリングの後部が接触しており、ローラクラッチリングが所定の位置に位置決めされる。また、切換禁止部材150は、ゴムシール等の合成樹脂からなる部材であって、ワンウェイクラッチ51の切り欠き部51aに切換禁止部材150が完全に装着されることによって、ワンウェイクラッチ内部への浸水を防止できる。
【0044】
スプール4は、たとえば、アルミニウム合金製のものであり、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構7を介して装着されている。スプール4は、図7に示すように、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部4aと、糸巻胴部4aの後端部に一体成形された大径筒状のスカート部4bと、糸巻胴部4aの前端部に配置された前フランジ部4cとを有している。
【0045】
このスピニングリールでは、蓋部材2bの下部に本体部材2a側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材2cを蓋部材2bに固定するためのボルト81が取り付け可能な固定突起80が設けられている。ここでは、ボルト81が取り付け可能な固定突起80が蓋部材2bと一体成形されているので、従来のように台座部材を設けることなくカバー部材2cをリールボディに取り付けることができる。さらに、このスピニングリールでは、固定突起80が蓋部材2bの下部に本体部材2a側に向けて突出するように形成されているので、本体部材2a及び蓋部材2bの合わせ面近傍に固定突起80を配置できる。ここでは、本体部材2a及び蓋部材2bの合わせ面近傍でカバー部材2cを取り付けることができるので、リール外観の美観を損ねることなく、カバー部材2cをリールボディに均一に取り付けることができる。
【0046】
〔他の実施形態〕
(a) スピニングリールの形態は前記実施形態に限定されるものではなく、ドラグ機構を有するものや、逆転防止機構に代えてブレーキレバーを有する制動機構を装着したものにも本発明を適用できる。
【0047】
(b) 取付脚部やカバー部等の形状や材質は本実施形態に限定されるものではない。
【0048】
(c) 前記実施形態では、第1フランジ部分24aや第2フランジ部分24bを本体部材2aやカバー部35と一体成形したが、第2フランジ部分24bの内側に突出する内側部分である壁部だけがカバー部35と一体成形されていれば、他の部分は別体にしてもよい。
【0049】
(d) 前記実施形態では、竿取付脚部36は蓋部材2bと一体成形されていたが、本体部材2aと竿取付脚部36とを一体成形してもよい。
【0050】
(e) 前記実施形態では、固定突起80が蓋部材2bと一体成形されていたが、図9に示すように、本体部材2a側に固定突起80を一体成形してもよい。ここでは、本体部材2aの下部に蓋部材2b側に向けて突出するように一体成形され、カバー部材2cを本体部材2aに固定するためのボルト81が取り付け可能な固定突起80が設けられている。ここでは、ボルト81が取り付け可能な固定突起80が本体部材2aと一体成形されているので、従来のように台座部材を設けることなくカバー部材2cをリールボディに取り付けることができる。
【0051】
(f) 前記実施形態では、固定突起80は、雌ねじ部80aの中心位置(Q)がカバー部材2cの下部の左右方向の中心位置(P)の近傍となるように突出するように形成されていたが、図10に示すように、カバー部材2cの下部の左右方向の中心位置(P)と雌ねじ部80aの中心位置(Q)とが完全に一致するようにしてもよい。ここでは、本体部材2aと蓋部材2bとの合わせ面(Q)でカバー部材2cを固定できる。
【符号の説明】
【0052】
1 ハンドル
2 リール本体
2a 本体部材
2b 蓋部材
2c カバー部材
2d フランジ部
2e 装着凹部
2f 連結部
2g 突出部
2h 段付凹部
2i 貫通孔
3 ロータ
4 スプール
5 回転伝達機構
6 オシレーティング機構
15 スプール軸
80 固定突起
80a 雌ねじ部
81、82、83 ボルト
81a 頭部
81b 雄ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に上部が装着可能であり、前方に釣り糸を繰り出し可能なスピニングリールのリール本体であって、
前記釣竿に装着される竿取付脚部と、
側部が開口する収納空間を内部に有する本体部材と、前記本体部材の開口を覆うように前記本体部材に着脱自在に装着される蓋部材とを有するリールボディと、
前記リールボディの後部から下部を覆うように装着されるカバー部材と、
前記本体部材及び前記蓋部材の一方の下部に前記本体部材及び前記蓋部材の他方側に向けて突出するように一体成形され、前記カバー部材を前記本体部材及び前記蓋部材の一方に固定するための固定部材が取り付け可能な固定突起と、
を備えたスピニングリールのリール本体。
【請求項2】
前記固定部材は、雄ねじ部を有するねじ部材であり、
前記固定突起は、前記雄ねじ部が螺合可能な雌ねじ部を有している、請求項1に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項3】
前記ねじ部材は、前記雄ねじ部より大径の頭部をさらに有しており、
前記カバー部材は、前記雄ねじ部が挿通され前記頭部が収納される段付きの貫通孔を有している、請求項2に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項4】
前記固定突起は、前記雌ねじ部の中心位置が前記カバー部材の下部の左右方向の中心位置となるように突出するように形成されている、請求項2又は3のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項5】
前記固定突起は、下方に突出するように形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項6】
前記固定突起は、前記本体部材の下部に前記蓋部材側に向けて突出するように一体成形されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項7】
前記固定突起は、前記蓋部材の下部に前記本体部材側に向けて突出するように一体成形されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項8】
前記竿取付脚部は、前記本体部材の上部に一体成形されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項9】
前記竿取付脚部は、前記蓋部材の上部に一体成形されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピニングリールのリール本体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−172252(P2010−172252A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17884(P2009−17884)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】