説明

スピニングリールのリール本体

【課題】カバー部材を外観に固定構造が表れることなく固定できるようにする。
【解決手段】スピニングリールのリール本体1は、リアドラグ機構を装着可能なリール本体1である。リール本体1は、リールボディ1aと、蓋部材1bと、竿装着部1cと、カバー部材26と、固定部材27と、を備えている。リールボディ1aは、後部に突出して形成され内部にリアドラグ機構が収納されるドラグ収納部52と、内部に形成された機構装着空間と、を有している。蓋部材1bは、機構装着空間を塞ぐようにリールボディ1aに固定されている。竿装着部1cは、蓋部材1bに一体形成されている。カバー部材26は、ドラグ収納部52の周囲でリールボディ1a及び蓋部材1bの後部を覆う。固定部材27は、ドラグ収納部52の外周面に固定され、カバー部材27を固定するリング状の部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール本体、特に、先端にスプールが装着されたスプール軸を制動するリアドラグ機構を装着可能なスピニングリールのリール本体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールには、先端にスプールが装着されたスプール軸を制動するリアドラグ機構を有するものが従来知られている。リアドラグ機構を有するスピニングリールでは、リール本体を構成するリールボディの後部にドラグ機構を収納するための筒部が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
筒部には、リアドラグ機構が収納されると共に、リアドラグ機構のドラグ力を調整するドラグ調整部材が装着されている。筒部の基端部には、リール本体の後面をカバーするカバー部材が装着されている。従来、カバー部材は、小ネジなどのネジ部材を用いてリールボディに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−348638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、カバー部材がネジ部材を用いてリールボディに固定されているので、ネジ部材の頭部が外観に表れる。ネジ部材の頭部が外観に表れると、意匠が損なわれるとともに、頭部にオキアミなどの釣り餌が付着して見苦しくなることがある。
【0006】
本発明の課題は、カバー部材を外観に固定構造が表れることなく固定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係るスピニングリールのリール本体は、先端にスプールが装着されたスプール軸を制動するリアドラグ機構が装着可能なリール本体である。リール本体は、リールボディと、蓋部材と、竿装着部と、カバー部材と、固定部材と、を備えている。リールボディは、後部に突出して形成され内部にリアドラグ機構が収納される筒部と、内部に形成された機構装着空間と、を有している。蓋部材は、機構装着空間を塞ぐようにリールボディに固定されている。竿装着部は、リールボディ及び蓋部材のいずれか一方に一体形成されている。カバー部材は、筒部の周囲でリールボディ及び蓋部材の後部を覆う。固定部材は、筒部の外周面に固定され、カバー部材を固定するリング状の部材である。
【0008】
このリール本体では、カバー部材が筒部の周囲でリールボディ及び蓋部材の後部を覆っている。このカバー部材は、筒部の外周面に固定された固定部材により固定されている。ここでは、カバー部材を筒部の外周面に固定された固定部材により固定している。このため、カバー部材をネジ部材で固定する必要がなくなり、カバー部材を外観に固定構造が表れることなく固定できるようになる。
【0009】
発明2に係るスピニングリールのリール本体は、発明1に記載のリール本体において、リアドラグ機構は、筒部に揺動自在に装着されドラグ力を調整するためのドラグ調整レバーを有する。固定部材には、ドラグ調整レバーの揺動範囲を規制する規制突起が形成されている。この場合には、固定部材を利用してドラグ調整レバーの揺動範囲を規制できるので、カバー部材の固定と揺動範囲の規制とを一つの部材で行える。
【0010】
発明3に係るスピニングリールのリール本体は、発明1又は2に記載のリール本体において、固定部材は筒部の外周面に嵌合するリング状の固定部と、固定部の一端面から突出し、カバー部材に係合する複数の突起部と、を有する。この場合には、突起部がカバー部材に係合しているので、カバー部材を確実に固定できる。
【0011】
発明4に係るスピニングリールのリール本体は、発明3に記載のリール本体において、突起部は、リールボディの筒部の基端外周側に形成された係合穴に係合する。この場合には、カバー部材に係合する突起部がリールボディの係合穴に係合するので、カバー部材を位置決めして固定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カバー部材を筒部の外周面に固定された固定部材により固定している。このため、カバー部材をネジ部材で固定する必要がなくなり、カバー部材を外観に固定構造が表れることなく固定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールの側面断面図。
【図2】そのリール本体及びリアドラグ機構の分解斜視図。
【図3】リアドラグ機構の断面部分図。
【図4】リール本体の後部の一部分解斜視図。
【図5】固定部材を含む斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態によるスピニングリールは、図1に示すように、主に、ハンドル10を回転自在に支持するリール本体1と、ロータ2と、スプール3と、リアドラグ機構4と、を備えている。
【0015】
<リール本体の構成>
リール本体1は、図1及び図2に示すように、機構装着空間1dを内部に有するリールボディ1aと、機構装着空間1dを塞ぐ蓋部材1bと、蓋部材1bから上方に延びる竿装着部1cと、カバー部材26と、を有している。なお、竿装着部1cは、リールボディ1aから延びていても良い。蓋部材1bは、リールボディ1aにネジにより固定されている。リールボディ1aの内の機構装着空間1dにはロータ2をハンドル10の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール3を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0016】
リールボディ1aは、機構装着空間1dの前方に円形の装着部1eが形成され、後部には、リアドラグ機構4を収納するためのドラグ収納部52(筒部の一例)が筒状に一体に形成されている。このドラグ収納部52を貫通するようにカバー部材26が装着されている。カバー部材26の装着部分では、リールボディ1a及び蓋部材1bは、他の部分より凹んで形成されている。これにより、カバー部材26と、リールボディ1a及び蓋部材1bとは、概ね面一に表面が滑らかにつながっている。
【0017】
カバー部材26は、図2及び図3に示すように、ドラグ収納部52の周囲でリールボディ1a及び蓋部材1bの後部を覆う。具体的には、カバー部材26は、リールボディ1a及び蓋部材1bの下面、後面及び側面を覆うように形成されている。カバー部材26の、リールボディ1a及び蓋部材1bの後面を覆う部分には、ドラグ収納部52の外周側を通過可能な貫通孔26aが形成されている。貫通孔26aの周囲には、後述する固定部材27の突起部27bが通過する複数(例えば4つ)の通過孔26bが形成されている。カバー部材26は、図2及び図5に示すように、貫通孔26aの周囲に後方から環状に凹んだ装着面26cを有している。したがって、装着面26cの外縁部26dは、環状に突出している。
【0018】
ドラグ収納部52は、図2及び図3に示すように、後端部内周面に形成され後述するドラグつまみ50に螺合する雌ネジ部52bと、前端部外周面に形成され後述するドラグレバー51に螺合する雄ネジ部52aとを有している。雄ネジ部52aは、雄ネジ部52aの後方の外周面より僅かに(例えば、0.5mmから1.5mm程度(?))小径に形成されている。また、雄ネジ部52aの前方の外周面は、雄ネジ部52aの後方の外周面より僅かに(例えば、0.2mmから1mm程度(?))に大径に形成されている。雄ネジ部52aの後方には、ドラグつまみ50の回転規制に用いられる第1環状溝52c及びドラグつまみ50の抜け止めに用いられる第2環状溝52dが所定の間隔を隔てて形成されている。雄ネジ部52aの前方の外周面には、カバー部材26をリールボディ1aに位置決め及び固定するための固定部材27が着脱可能に装着されている。ドラグ収納部52の後端面には、周方向に所定の間隔を隔てて複数の係合凹部52eが形成されている。係合凹部52eには、つまみ発音機構80を構成する音出し円板70が回転不能かつ抜け止めされた状態で装着されている。
【0019】
ドラグ収納部52の前側外周面には、固定部材27を周方向に位置決めするための複数(例えば4つ)の位置決め突起52fが形成されている。カバー部材26の貫通孔26aは、この位置決め突起52fを通過可能な内径を有している。ドラグ収納部52の内周面の雌ネジ部52bより前方には、前後方向に沿って1対の係止溝52gが形成されている。係止溝52gは、ドラグ力を作用させるために設けられている。ドラグ収納部52の内周部において、雄ネジ部52aの前端側の内周部には、中間壁部52hが形成されている。また、中間壁部52hの前方には、中間壁部52hと間隔を隔てて前壁部52iが形成されている。中間壁部52h及び前壁部52iは、リアドラグ機構4を作用させるために設けられている。
【0020】
固定部材27は、図4及び図5に示すように、ドラグ収納部52の第1雄ネジ部52aの前方の外周面に圧入等により嵌合固定されるリング状の固定部27aと、固定部27aの一端面から突出する複数の突起部27bと、を有している。固定部27aは、一端部に大径の鍔部27cを有している。
【0021】
固定部27aの外周面には、ドラグレバー51の揺動範囲を規制するための1対の第1規制突起27dが径方向に突出して形成されている。また、ドラグレバー51を中立位置に位置決めするためのレバー位置決め凹部27eが1対の第1規制突起27dの間に凹んで形成されている。なお、図4及び図5では、第1規制突起27dは、一つしか図示されていないが、第1規制突起27dは、レバー位置決め凹部27eを挟んで対称な位置に形成されている。これにより、ドラグレバー51は、レバー位置決め凹部27eを挟んで例えば45度ずつ揺動可能である。
【0022】
固定部27aの内周面には、図5に示すように、ドラグ収納部52との間で周方向の位相を合わせるための複数(例えば4つ)の位置決め凹部27fが形成されている。1つの第2位置決め凹部27fには、図2に示すように、ドラグレバー51の操作時に発音させるためのレバー発音機構81を配置するための装着孔27gが径方向に沿って設けられている。レバー発音機構81は、装着孔27gに配置された音出しピン73及びコイルバネ74を有している。位置決め凹部27fは、位置決め突起52fに係合する。これにより、固定部材27が周方向に位置決めされる。
【0023】
突起部27bは、図4及び図5に示すように、鍔部27cの前面から前方に突出している。突起部27bは、丸棒形状であり、カバー部材26に係合してカバー部材26をがた止めを行う。具体的には、突起部27bは、カバー部材26に形成された通過孔26bに嵌合する。突起部27bは、ドラグ収納部52の基端外周側でリールボディ1aに形成された係合穴1gに係合している。突起部27bは、カバー部材の通過孔26bを通過して係合穴1gに嵌合している。鍔部27cは、カバー部材26の装着面26cと略同じ外径で円形に形成されている。鍔部27cの背面(後面)は、カバー部材26の後部の装着面26cの外縁部26dの後面と面一となるような厚み、つまり装着面26cの深さと同じ厚みに形成されている。
【0024】
<その他の構成>
ロータ2は、リール本体1の前部に回転自在に支持されている。ロータ2は、図1に示すように、ロータ円筒部30と、第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とを有している。第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32は、ロータ円筒部30の側方に互いに対向して設けられている。ロータ円筒部30と第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32とは、たとえばアルミニウム合金製であり、ロータ円筒部30に一体に成形されている。第1ロータアーム31及び第2ロータアーム32は、ロータ円筒部30の周面上に周方向に広がりをもたせて接続させている。そして、ロータ円筒部30から外方に突出して湾曲しながら前方に延びている。第1ロータアーム31は、先端に第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール3に案内するためのラインローラ41が装着されている。第2ロータアーム32は、先端に第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。ラインローラ41と第2ベール支持部材42との間には、線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。このように、第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42、ラインローラ41、ベール43によって、釣り糸をスプール3に案内するベールアーム44が構成される。ベールアーム44は、図1に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0025】
ロータ駆動機構5は、図1に示すように、ハンドル10が連結されたマスターギア軸11aとともに回転するマスターギア11と、マスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は、前後方向に沿って配置された筒状の部材であり、軸方向の中間部と後端部とがそれぞれ軸受14a、14bを介してリール本体1に回転自在に支持されている。また、ピニオンギア12の前部はロータ2の中心部を貫通してスプール3側に延びている。ピニオンギア12の中心部には、スプール軸13が回転軸芯に沿って前後方向に摺動自在に貫通している。ピニオンギア12は、ナット部材17によりロータ2に一体回転可能に固定されている。
【0026】
スプール3は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、図1に示すように、ロータ2の前部に前後移動自在に装着されている。スプール3は、スプール軸13にワンタッチ着脱機構48を介して一体回転可能に連結されたスプール本体7と、鍔部8と、鍔部固定部材9とで構成されている。スプール本体7は、糸巻胴部7aとスカート部7bとを有している。糸巻胴部7aは、筒状に形成されており、外周に釣り糸が巻き付けられる。スカート部7bは、糸巻胴部7aの外径より大径に形成され、糸巻胴部7aの後部に一体成形されている。鍔部8は、糸巻胴部7aの前部に装着されており、鍔部固定部材9によってスプール本体7に固定されている。
【0027】
スプール軸13は、一端にワンタッチ着脱機構48に係合するテーパ面13a及び係止溝13bを有し、他端にリアドラグ機構4に係合する平行な二面で構成される回り止め部13c、を有している。
【0028】
オシレーティング機構6は、図1に示すように、スプール3に連結されたスプール軸13を前後方向に移動させて、スプール3を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸13の下方に平行に配置された螺軸15と、螺軸15に沿って前後方向に移動するスライダ16と、スプール軸13に平行に配置された図示しないガイド軸と、螺軸15の先端に固定された図示しない中間ギアとを有している。スライダ16には、スプール軸13の回り止め部13cの前方部分が回転自在かつ軸方向移動不能に連結されている。
【0029】
<リアドラグ機構の構成>
リアドラグ機構4は、スプール軸13を介してスプール3を制動する機構である。リアドラグ機構4は、図2及び図3に示すように、ドラグつまみ50と、ドラグレバー51と、ドラグつまみ50によりドラグ力が調整される第1摩擦部54と、ドラグレバー51によりドラグ力が調整される第2摩擦部55と、を備えている。
【0030】
ドラグつまみ50は、リアドラグ機構4のドラグ力を例えば釣り糸又は魚種に合わせて細かく調整するためのものである。ドラグつまみ50は、ドラグ収納部52の後端部に回動自在かつ軸方向移動不能に装着されている。ドラグつまみ50は、有底円筒形状のつまみ本体50aと、つまみ本体50aの先端内周面にねじ込み固定された装着部材50bとを有している。つまみ本体50aの底部の内周面側にドラグつまみ50の回動操作により発音するつまみ発音機構80の打撃ピン71が音出し円板70に向けて付勢されて設けられている。また、つまみ本体50aの底部に雌ネジ部52bに螺合する第1押圧部材53が装着されている。装着部材50bは、ドラグつまみ50をドラグ収納部52の外周面に回転自在かつ軸方向移動不能に装着するために設けられた鍔付き筒状の部材である。
【0031】
第1押圧部材53は、第1摩擦部54を押圧するネジ部材である。第1押圧部材53の外周面には、雌ネジ部52bに螺合する雄ネジ部53aが形成されている。第1押圧部材53の後端面には、つまみ本体50aに一体回転可能かつ軸方向移動自在に連結される連結突起53bが形成されている。これにより、雌ネジ部52bに螺合する第1押圧部材53は、ドラグつまみ50の回動に連動して前後に移動する。ドラグつまみ50と第1摩擦部54の間には、ドラグ力を滑らかに調整するためのコイルバネ57が装着されている。コイルバネ57は、第1押圧部材53の軸方向位置によりバネ力が変化する。このバネ力により第1摩擦部54のドラグ力が変化する。
【0032】
ドラグレバー51は、第2摩擦部55を押圧してドラグつまみ50で調整された例えば釣り糸又は魚種に応じたドラグ力を可変に調整するためのものである。釣りを行っているときは、主にドラグレバー51によりドラグ力を調整する。ドラグレバー51は、ドラグつまみ50の前方にドラグつまみ50に近接して配置されている。ドラグレバー51は、レバー本体51aと、レバー本体51aの外側を覆う外側部材51bと、レバー本体51aの先端に装着された先端部材51cと、を有している。レバー本体51aは、ドラグ収納部52の外周側に配置される筒状部分51dと、筒状部分51dから径方向外方に延びるレバー部分51eと、を有している。レバー部分51eと先端部材51cとの間には、ドラグレバー51を中立位置であるのストライクポジションに位置決めするための位置決め部材65が設けられている。位置決め部材65は径方向に沿って配置され、径方向内方に付勢されている。位置決め部材65がレバー位置決め凹部27eに向けて進出してドラグレバー51がストライクポジションに位置決めされる。通常のドラグ調整操作では、ドラグレバー51をストライクポジションに配置した状態でドラグつまみ50によりドラグ力を調整する。
【0033】
筒状部分51dの内周面には、雄ネジ部52aに螺合する筒状の第2押圧部材56が装着されている。筒状部分51dの内周面の前部のレバー部分51eと対向する位置には、第1規制突起27dに接触して揺動範囲が規制される第2規制突起51fが内方に突出して形成されている。また、筒状部分51dの内周面の前部において、第2規制突起51fから100度程度の範囲には、レバー発音機構81を構成する多数の音出し溝51gが形成されている。音出し溝51gには、音出しピン73が振動しながら接触する。筒状部分51dの内周面の第2規制突起51fの奥側には、第2押圧部材56を一体回転可能に連結するための複数の第1連結突起51hが周方向に間隔を隔てて形成されている。
【0034】
第2押圧部材56は、第2摩擦部55を押圧して第2摩擦部55のドラグ力を調整するものである。第2押圧部材56は、直径に沿って2分割されている。これは、ドラグ収納部52の小径化を図るために、雄ネジ部52aの直径をその両側部分より小径にしたためである。第2押圧部材56を2分割することにより、このような小径化された雄ネジ部52aに第2押圧部材56を螺合させることができる。
【0035】
第2押圧部材56は、筒状部分51dの第2規制突起51fより内周側かつ奥側に連結されている。第2押圧部材56の外周面には、第1連結突起51hに係合する第2連結突起56aが形成されている。第2押圧部材56の内周面には、雄ネジ部52aに螺合する雌ネジ部56bが形成されている。第2押圧部材56の外周面と内周面との間の前面には、第2摩擦部55を押圧する押圧面56cが形成されている。第2押圧部材56の分割された2つの部材の分割面には、図4に示すように、位置決めのための凸部56d及び凹部56eが設けられている。
【0036】
第1摩擦部54は、ドラグ収納部52の内部に配置されている。第1摩擦部54は、スプール軸13の回り止め部13cに一体回転可能に連結される回転部材58と、少なくとも1枚(例えば2枚)の耳付き座金59a及び耳付き座金59bと、回転座金60と、を有している。耳付き座金59a及び耳付き座金59bは、回転部材58に回転自在に装着され係止溝52gに回転不能にそれぞれ係止されている。耳付き座金59bにコイルバネ57の一端が接触している。回転座金60は、耳付き座金59a及び耳付き座金59bの間に配置され、回転部材58に一体回転可能に装着されている。
【0037】
回転部材58は、スプール軸13の回り止め部13cの外周側に配置されている。回転部材58は、ドラグ収納部52の内周部に中間壁部52hを貫通して配置されている。回転部材58は、後部外周面と前部外周面とに、互いに平行な面で構成された第1回り止め部58a及び第2回り止め部58bを有している。第2回り止め部58bに回転座金60が係合して回転部材58と一体回転する。第1回り止め部58aと第2回り止め部58bとの間には、4箇所で径方向に突出する係止突起58cが設けられている。係止突起58cには、回転部材58と一体回転可能なドラグ座金61が係止されている。ドラグ座金61がドラグディスク62を介してドラグ収納部52の内周面に形成された中間壁部52hに接触している。ドラグディスク62は、ドラグ座金61と耳付き座金59aとの間、耳付き座金59aと回転座金60との間、及び回転座金60と耳付き座金59bとの間にも設けられている。
【0038】
第2摩擦部55は、ドラグ収納部52の内部において、第1摩擦部54と中間壁部52hを挟んで配置されている。第2摩擦部55は、ドラグ収納部52に回転不能に係止されるレバードラグ座金63と、音出し座金64と、を有している。レバードラグ座金63は、径方向に突出する複数(例えば3つ)の係止片63a(図2)を有している。レバードラグ座金63は、回転部材58に回転自在に装着され、ドラグ収納部52に回転不能に係止されている。音出し座金64は、ドラグ作動時に発音するドラグ発音機構82も構成している。音出し座金64は、回転部材58の第1回り止め部58aに係合し、回転部材58と一体回転する。音出し座金64は、ドラグディスク62を介して前壁部52iに接触している。ドラグディスク62は、レバードラグ座金63と音出し座金64との間にも配置されている。音出し座金64は、ドラグ発音機構82を構成する音出しバネ66に接触している。音出しバネ66は、リールボディ1aの機構装着空間1d内に固定されている。ドラグ作動時には、音出し座金64が回転し、音出しバネ66を振動させて発音させる。
【0039】
<スピニングリールの動作>
以上に示したスピニングリールを使用する場合、糸を繰り出すときには、ベール43を糸開放側に倒す。そして、釣り竿をキャスティングすると、スプール3から釣り糸が繰り出される。糸を巻き取るときには、ベール43を糸巻取側に戻す。この状態でハンドル10を糸巻取方向に回転させると、この回転力がマスターギア軸11a及びマスターギア11を介してピニオンギア12に伝達される。そして、ピニオンギア12に伝達された回転力が、ピニオンギア12の前部においてロータ2を回転させる。一方で、ピニオンギア12に伝達された回転力は、ピニオンギア12に噛み合う図示しない中間ギアを介して螺軸15も同時に回転させる。このとき、螺軸15の螺旋溝に噛み合うスライダ16が図示しないガイド軸に案内され前後方向に移動する。スライダ16が移動すると、スライダ16とともにスプール軸13とスプール3とが前後方向に往復移動する。こうしたロータ2の回転とスプール3の前後移動とによって、ベール43及びラインローラ41から案内された釣り糸が、スプール3の外周に前後方向に均一に巻き取られる。このように動作するスピニングリールを使用するとき、魚がかかって魚が所定のドラグ力を越える力で釣り糸を引き込むと、スプール軸13とスプール3とが相対回転してリアドラグ機構4が作動する。
【0040】
このように作動するリアドラグ機構4では、ドラグつまみ50の操作により、釣り糸又は魚種に応じたストライクポジションのドラグ力を設定する。ドラグつまみ50を締め付けると、第1押圧部材53が回転しながら前方へと移動し、第1押圧部材53に連結されたコイルバネ57が圧縮し、コイルバネ57のバネ力が強くなる。すると、第1摩擦部54の摩擦力が増大し、回転部材58に一体回転可能に装着された回転座金60及びドラグ座金61に働く摩擦力も増大する。この結果、回転部材58に対して一体回転可能なスプール軸13は回転しにくくなり、スプール3に作用するドラグ力は強くなる。一方、ドラグつまみ50を弛めると、第1押圧部材53は回転しながら後方へと移動し、コイルバネ57のバネ力が弱くなる。すると、ドラグ座金61に対して回転不能なスプール軸13は回転しやすくなり、スプール3に作用するドラグ力は弱くなる。
【0041】
ドラグレバー51をつまんでネジの締め付け方向にドラグレバー51を回動させると、第2押圧部材56が前進して第2摩擦部55を押圧する。すると、第2摩擦部55に働く摩擦力が増大する。このとき、回転部材58の外周に一体回転可能に装着された音出し座金64に働く摩擦力も増大する。このようにして、回転部材58に対して回転不能なスプール軸13も回転しにくくなり、スプール3に対するドラグ力は強くなる。一方、ドラグレバー51を緩み方向に回動させると、第2押圧部材56による押圧力が徐々に弱くなり、第2摩擦部55の押圧状態が徐々に解除される。すると、回転部材58に対して一体回転可能なスプール軸13は回転しやすくなり、スプール3のドラグ力は弱くなる。
【0042】
<カバー部材の組立手順>
カバー部材26をリールボディ1a及び蓋部材1bの後方から装着する場合は以下のような作業を行う。まず、機構装着空間1d内に配置されるすべての部品を組み付ける。続いて、蓋部材1bをリールボディ1aに固定する。この状態では、ロータ2及びスプール3は組み付けなくても良い。
【0043】
蓋部材1bを固定すると、ドラグ収納部52の後方から貫通孔26aを通してカバー部材26を前方に移動させ、カバー部材26をリール本体1の後部に接触させる。続いて固定部材27を、周方向の位相を合わせてドラグ収納部52の後方からカバー部材26に向けて移動させる。そして、固定部27aが雄ネジ部52aを超えると、圧入によりドラグ収納部52の外周面に固定部材27を固定する。これにより、固定部材27の突起部27bがリールボディ1aの係合穴1gに嵌合し、カバー部材26ががた止めされてリール本体1に固定される。
【0044】
固定部材27を装着すると、第2押圧部材56を雄ネジ部の外周側に装着する。そして、位置決め部材65及びレバー発音機構81を組み込んだドラグレバー51を、位相を合わせて第2押圧部材56に抜け止めして固定する。ドラグレバー51を装着すると、ドラグつまみ50の装着部材50bをドラグレバー51の後方に装着し、抜け止めする。この状態で、つまみ本体50aを第1押圧部材53が係合する回転位相で装着部材50bにねじ込む。このとき、つまみ発音機構80を予め組み込んでおく。これにより、カバー部材26の固定及びリアドラグ機構4の組立が完了する。
【0045】
ここでは、カバー部材26をドラグ収納部52の外周面に固定された固定部材27によりリールボディ1a及び蓋部材1bに固定している。このため、カバー部材26をネジ部材で固定する必要がなくなり、カバー部材26を外観に固定構造が表れることなく固定できるようになる。
【0046】
<特徴>
(A)スピニングリールのリール本体1は、先端にスプール3が装着されたスプール軸13を制動するリアドラグ機構4を装着可能なリール本体1である。リール本体1は、リールボディ1aと、蓋部材1bと、竿装着部1cと、カバー部材26と、固定部材27と、を備えている。リールボディ1aは、後部に突出して形成され内部にリアドラグ機構4が収納されるドラグ収納部52と、内部に形成された機構装着空間1dと、を有している。蓋部材1bは、機構装着空間1dを塞ぐようにリールボディ1aに固定されている。竿装着部1cは、蓋部材1bに一体形成されている。カバー部材26は、ドラグ収納部52の周囲でリールボディ1a及び蓋部材1bの後部を覆う。固定部材27は、ドラグ収納部52の外周面に固定され、カバー部材26を固定するリング状の部材である。
【0047】
このリール本体1では、カバー部材26がドラグ収納部52の周囲でリールボディ1a及び蓋部材1bの後部を覆っている。このカバー部材26は、ドラグ収納部52の外周面に固定された固定部材27により固定されている。ここでは、カバー部材26をドラグ収納部52の外周面に固定された固定部材27により固定している。このため、カバー部材26をネジ部材で固定する必要がなくなり、カバー部材26を外観に固定構造が表れることなく固定できるようになる。
【0048】
(B)リール本体1において、リアドラグ機構4は、ドラグ収納部52に揺動自在に装着されドラグ力を調整するためのドラグレバー51を有する。固定部材27には、ドラグレバー51の揺動範囲を規制する第1規制突起27dが形成されている。この場合には、固定部材27を利用してドラグレバー51の揺動範囲を規制できるので、カバー部材26の固定と揺動範囲の規制とを一つの部材で行える。
【0049】
(C)リール本体1において、固定部材27はドラグ収納部52の外周面に嵌合するリング状の固定部27aと、固定部27aの一端面から突出し、カバー部材26に係合する複数の突起部27bと、を有する。この場合には、突起部27bがカバー部材26に係合しているので、カバー部材26を確実に固定できる。
【0050】
(D)リール本体1において、突起部27bは、リールボディ1aのドラグ収納部52の基端外周側に形成された係合穴1gに係合する。この場合には、カバー部材26に係合する突起部27bがリールボディ1aの係合穴1gに係合するので、カバー部材26を位置決めして固定できる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
(a) 前記実施形態では、ドラグレバー51とドラグつまみ50とを有するリアドラグ機構4を備えたスピニングリールのリール本体1を開示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドラグつまみだけを備えたスピニングリールのリール本体、フロントドラグ機構とリアドラグ機構とを切換可能なスピニングリールのリール本体であっても良い。
【0053】
(b) 前記実施形態では、前記実施形態では、丸棒状の突起部27bにより固定部材27を位置決めしたが、突起部の形状は前記実施形態に限定されない。
【0054】
(c) 前記実施形態では、固定部材27の突起部27bをリールボディ1aに嵌合しているが、リールボディ1aに加えて蓋部材1bにも嵌合させても良い。この場合には、蓋部材を固定部材によりリールボディ1aに固定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 リール本体
1a リールボディ
1b 蓋部材
1c 竿装着部
1d 機構装着空間
1g 係合穴
3 スプール
4 リアドラグ機構
13 スプール軸
26 カバー部材
26a 貫通孔
26b 通過孔
27 固定部材
27a 固定部
27b 突起部
27d 第1規制突起
50 ドラグつまみ
51 ドラグレバー
51f 第2規制突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールを制動するリアドラグ機構を装着可能なスピニングリールのリール本体であって、
後部に突出して形成され内部に前記リアドラグ機構が収納される筒部と、内部に形成された機構装着空間と、を有するリールボディと、
前記機構装着空間を塞ぐように前記リールボディに固定された蓋部材と、
前記リールボディ及び前記蓋部材のいずれか一方に一体形成された竿装着部と、
前記筒部の周囲で前記リールボディ及び前記蓋部材の後部を覆うカバー部材と、
前記筒部の外周面に固定され、前記カバー部材を固定するリング状の固定部材と、
を備えたスピニングリールのリール本体。
【請求項2】
前記リアドラグ機構は、前記筒部に揺動自在に装着されドラグ力を調整するためのドラグ調整レバーを有し、
前記固定部材には、前記ドラグ調整レバーの揺動範囲を規制する規制突起が形成されている、請求項1に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項3】
前記固定部材は
前記筒部の前記外周面に嵌合するリング状の固定部と、
前記固定部の一端面から突出し、前記カバー部材に係合する複数の突起部と、
を有する、請求項1又は2に記載のスピニングリールのリール本体。
【請求項4】
前記突起部は、前記リールボディの前記筒部の基端外周側に形成された係合穴に係合する、請求項3に記載のスピニングリールのリール本体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50352(P2011−50352A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204408(P2009−204408)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】