説明

スピニングリール及びそのハンドル組立体

【課題】スピニングリールにおいて、釣り方を教えるときなどに釣り竿を持ち替えることなく操作できるようにする。
【解決手段】スピニングリールは、釣り竿に装着可能なリール本体2と、回転伝達機構と、第1ハンドル組立体1aと、第2ハンドル組立体1bと、ロータ3と、スプール4と、を備えている。回転伝達機構は、左右方向に沿って配置されたマスターギア軸を有する機構である。第1ハンドル組立体は、マスターギア軸の一端に回転不能に連結されたものである。第2ハンドル組立体は、第1ハンドル組立体がマスターギア軸の一端に連結された状態でマスターギア軸の他端に回転不能に連結可能である。ロータは、リール本体に回転自在に装着されマスターギア軸の回転に連動して回転する。スプールは、リール本体に対して前後移動自在であり、ロータの回転により外周に釣り糸が巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿に装着可能であり、前方に釣り糸を繰り出し可能なスピニングリール及びスピニングリールのマスターギア軸に回転不能に連結されるハンドル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、釣り竿に装着可能なリール本体と、リール本体に回転自在に装着されたハンドル組立体と、リール本体に左右方向に沿って配置されたマスターギア軸を有する回転伝達機構と、マスターギア軸の一端に回転不能に連結されたハンドル組立体と、リール本体に回転自在に装着されマスターギア軸の回転に連動して回転するロータと、リール本体に対して前後移動自在であり、ロータの回転により外周に釣り糸が巻き付けられるスプールと、を備えている。マスターギア軸には、マスターギアが一体又は別体で設けられており、ハンドル組立体はマスターギア軸の両端のいずれかに連結されている。このような構成のスピニングリールでは、ハンドル組立体の回転が回転伝達機構を介してロータに伝達される。
【0003】
従来、マスターギア軸の左右端のいずれからも着脱自在に装着できるハンドル組立体が知られている。このようなハンドル組立体において、ねじ式のもの(たとえば、特許文献1参照)と、非円形係合式のもの(たとえば、特許文献2参照)とが知られている。
【0004】
ねじ式のものは、たとえば、ハンドル組立体のハンドル軸にねじ方向が異なる第1及び第2雄ねじ部が軸方向に先端側から並べて配置されている。また、マスターギア軸には、一端の奥側に先端側の第1雄ねじ部に螺合する第1雌ねじ部が配置され、他端の手前側に基端側の第2雄ねじ部が螺合する第2雌ねじ部が形成されている。そして、マスターギア軸の一端から装着する場合は、ハンドル軸の第1雄ねじ部を奥側の第1雌ねじ部にねじ込んでハンドル組立体をマスターギア軸に回転不能に連結する。また、他端から装着する場合は、ハンドル軸の第2雄ねじ部を手前側の第2雌ねじ部にねじ込んでハンドル組立体をマスターギア軸に回転不能に連結する。ここで、ねじの方向が異なるのは、ハンドル組立体を糸巻取方向に回したときにねじが緩まないようにするためである。
【0005】
非円形係合式のものは、ハンドル組立体のハンドル軸の断面が正六角形等の非円形で構成され、マスターギア軸の内部に断面が正六角形等の非円形の係合孔が軸方向に貫通して形成されている。そして、ハンドル軸装着側と逆側からボルト部材により抜け止めされている。
【特許文献1】特開2004−267268号公報
【特許文献2】特開2005−253372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなスピニングリールを用いて、海上釣り堀や防波堤や桟橋などで、釣りが上手な熟練者が初心者に釣り方を教える場合ある。この場合、従来のスピニングリールでは、教える都度、熟練者と初心者とでスピニングリールが装着された釣り竿を持ち替えなければならない。たとえば、熟練者が初心者に魚を釣り上げるときのハンドルの回転のさせ方を教える場合、巻き上げ途中で釣り竿を持ち替える必要が生じる。
【0007】
本発明の課題は、スピニングリールにおいて、釣り方を教えるときなどに釣り竿を持ち替えることなく操作できるようにすることにある。
【0008】
本発明の別の課題は、一端にねじ込み式のハンドル組立体が連結されたスピニングリールの他端に連結可能なねじ込み式のハンドル組立体を操作しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係るスピニングリールは、釣り竿に装着可能であり、前方に釣り糸を繰り出し可能なリールであって、リール本体と、回転伝達機構と、第1ハンドル組立体と、第2ハンドル組立体と、ロータと、スプールと、を備えている。リール本体は、釣り竿に装着可能なものである。回転伝達機構は、左右方向に沿って配置されリール本体に回転自在に装着されたマスターギア軸を有する機構である。第1ハンドル組立体は、マスターギア軸の一端に回転不能に連結されたものである。第2ハンドル組立体は、第1ハンドル組立体がマスターギア軸の一端に連結された状態でマスターギア軸の他端に回転不能に連結可能なものである。ロータは、リール本体に回転自在に装着されマスターギア軸の回転に連動して回転する。スプールは、リール本体に対して前後移動自在であり、ロータの回転により外周に釣り糸が巻き付けられる。
【0010】
このスピニングリールでは、マスターギア軸の一端に連結された第1ハンドル組立体を回転させると、マスターギア軸が回転する。この回転がロータに伝達され、ロータが回転する。釣り方を教えるときには、第2ハンドル組立体をマスターギア軸の他端に連結する。これにより、マスターギア軸の両端にハンドル組立体が連結される。これにより、一方のハンドル組立体を熟練者が操作し、他方のハンドル組立体を初心者が操作することができる。ここでは、第1ハンドル組立体がマスターギア軸の一端に連結された状態で、第2ハンドル組立体をマスターギア軸の他端に連結可能に構成したので、釣りの途中などで釣り方を教えるときなどに、第2ハンドル組立体をマスターギア軸の他端に連結することにより、釣り竿を持ち替えることなくリールを操作できるようになる。また、不要の時には、第2ハンドル組立体を連結解除することにより第2ハンドル組立体が邪魔にならない。
【0011】
発明2に係るスピニングリールは、発明1に記載のリールにおいて、第1ハンドル組立体と第2ハンドル組立体はマスターギア軸にねじ構造により固定されており、第1ハンドル組立体と第2ハンドル組立体との回転方向の位相を調整する位相調整手段をさらに備える。この場合には、2つのハンドル組立体をマスターギア軸にねじ構造により固定する場合、ねじの加工精度によっては2つのハンドル組立体の回転方向の位相が大きくずれることがある。2つのハンドル組立体の位相がずれた状態で、両方から同時にハンドル組立体を操作すると、タイミングがずれてハンドル組立体を操作しにくくなる。このように2つのハンドル組立体の回転方向の位相がずれても、位相調整手段により2つのハンドル組立体の位相を調整できる。このため、他端に連結されたハンドル組立体の位相を一端に連結されたハンドル組立体の位相に合わせて調整することができ、2つのハンドル組立体を操作しやすくなる。
【0012】
発明3に係るスピニングリールは、発明2に記載のリールにおいて、マスターギア軸は、一端に第1雌ねじ部を有し、他端に第2雌ねじ部を有し、第1ハンドル組立体は、第1雌ねじ部に螺合する第1雄ねじ部を有し、第2ハンドル組立体は、第2雌ねじ部に螺合する第2雄ねじ部を有する。この場合には、マスターギア軸側が雌ねじ部であるので、マスターギア軸に設けられるマスターギアの影響を受けなくなり、ねじ長さを長く取れる。このため、高トルクの回転を伝達できるとともに、マスターギア軸を貫通する孔に雌ねじ部を形成することにより、マスターギア軸の軽量化を図れる。また、一方のハンドル組立体がマスターギア軸に連結された状態でも他方のハンドル組立体の着脱を容易に行える。
【0013】
発明4に係るスピニングリールは、発明2に記載のリールにおいて、マスターギア軸は、中心を左右に貫通する非円形孔を有し、第1ハンドル組立体は、非円形孔に回転不能に係合する係合部と、係合部の先端に設けられた第3ねじ部とを有するハンドル軸を有し、第2ハンドル組立体は、第3ねじ部に螺合する第4ねじ部を有する。この場合には、非円形係合のマスターギア軸の両端にハンドル組立体を装着可能になる。
【0014】
発明5に係るスピニングリールは、発明4に記載のリールにおいて、第3ねじ部は雄ねじであり、第4ねじ部は雌ねじである。この場合には、非円形孔を貫通するハンドル軸に設けられる第3ねじ部が雄ねじであるので、ねじ径を大きくとれ、ハンドルからマスターギア軸への伝達トルクが高くなる。
【0015】
発明6に係るスピニングリールは、発明2から5のいずれかに記載のリールにおいて、位相調整手段は、ねじ構造のねじのねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャを有する。この場合には、ねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャをねじ構造の締結部分に配置することにより、ねじの加工精度のばらつきが生じても第1及び第2ハンドル組立体の回転位相を簡単に合わせることができる。
【0016】
発明7に係るスピニングリールのハンドル組立体は、両端に第1ねじ部を有するスピニングリールのマスターギア軸に回転不能に連結される組立体であって、ハンドル軸と、ハンドルアームと、ハンドル把手と、位相調整手段と、を備えている。ハンドル軸は、第1ねじ部に螺合する第2ねじ部を有している。ハンドルアームは、ハンドル軸に連結され、少なくともハンドル軸と交差する一方向に延びるものである。ハンドル把手は、ハンドルアームの先端に装着されたものである。位相調整手段は、第1ねじ部と第2ねじ部と螺合量を調整可能な手段である。
【0017】
このハンドル組立体では、マスターギア軸の一端の第1ねじ部に別のねじ込み式のハンドル組立体が連結されたスピニングリールのマスターギア軸の他端の第1ねじ部に第2ねじ部を螺合させてマスターギア軸の他端に連結する。これにより、マスターギア軸の両端にハンドル組立体が連結される。ねじ込み式のハンドル組立体の場合、ねじの加工精度によっては2つのハンドル組立体を連結した状態で2つのハンドル組立体の回転方向の位相が大きくずれることがある。2つのハンドル組立体の位相がずれた状態で両方から同時にハンドル組立体を操作すると、タイミングがずれてハンドル組立体を操作しにくくなる。ここでは、一端にハンドル組立体が連結されたマスターギア軸の他端にハンドル組立体を連結したときに2つのハンドル組立体の回転方向の位相がずれても、位相調整手段により2つのハンドル組立体の位相を調整できる。このため、他端に連結されたハンドル組立体の位相を一端に連結されたハンドル組立体の位相に合わせて調整することができ、2つのハンドル組立体をリールに装着してもハンドル組立体を操作しやすくなる。
【0018】
発明8に係るスピニングリールのハンドル組立体は、発明7に記載の組立体において、第1ねじ部は雌ねじ部であり、第2ねじ部は雄ねじ部である。この場合には、マスターギア軸側の第1ねじ部が雌ねじであるので、マスターギア軸に設けられるマスターギアの影響を受けなくなり、ねじ長さを長く取れる。このため、高トルクの回転を伝達できるとともに、マスターギア軸を貫通する孔に第1ねじ部を形成することにより、マスターギア軸の軽量化を図れる。
【0019】
発明9に係るスピニングリールのハンドル組立体は、発明7又は8に記載の組立体において、位相調整手段は、第1及び第2ねじ部のねじのねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャを有する。この場合には、ねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャをハンドル組立体に配置することにより、ねじの加工精度のばらつきが生じても第1及び第2ハンドル組立体の回転位相を簡単に合わせることができる。
【0020】
発明10に係るスピニングリールのハンドル組立体は、発明9に記載の組立体において、位相調整ワッシャは、第1及び第2ねじ部のねじのピッチの1/2の厚みの第1ワッシャ部材と、ピッチの1/4の厚みの第2ワッシャ部材とを有する。この場合には、2枚のワッシャ部材を単独又は組み合わせて用いることで1/4,1/2,3/4の3段階に位相を調整できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るスピニングリールによれば、第2ハンドル組立体を、第1ハンドル組立体がマスターギア軸の一端に連結された状態でもマスターギアの他端に連結可能に構成したので、釣りの途中などで釣り方を教えるときなどに、第2ハンドル組立体をマスターギア軸の他端に連結することにより、釣り竿を持ち替えることなく操作できるようになる。また、不要の時には、第2ハンドル組立体を連結解除することにより第2ハンドル組立体が邪魔にならない。
【0022】
本発明に係るスピニングリールのハンドル組立体によれば、一端にハンドル組立体が連結されたマスターギア軸の他端にハンドル組立体を連結したときに2つのハンドル組立体の回転方向の位相がずれても、位相調整手段により2つのハンドル組立体の位相を調整できるので、他端に連結されたハンドル組立体の位相を一端に連結されたハンドル組立体の位相に合わせて調整することができ、ハンドル組立体を操作しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1から図3において、本発明の一実施形態によるスピニングリールは、釣り竿R(図2)に装着され、前方に釣り糸を繰り出すリールであって、釣り竿Rに装着可能なリール本体2と、マスターギア軸10(図3)を有する回転伝達機構5(図3)と、マスターギア軸10の一端(図2左端)に回転不能に連結された第1ハンドル組立体1aと、マスターギア軸10の他端に連結可能な第2ハンドル組立体1bと、ロータ3と、スプール4と、を備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されており、マスターギア軸10の回転に連動して回転する。スプール4は、リール本体2に対して前後移動自在であり、ロータ3の回転により外周に釣り糸が巻き付けられる。
【0024】
リール本体2は、左側部に開口2cを有するリールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に一体で延びるT字状の竿取付脚2bと、リールボディ2aの開口2cを閉塞するための蓋体2dとを有している。
【0025】
リールボディ2aは、図3及び図4に示すように、内部に空間を有しており、その空間内に回転伝達機構5が設けられている。また、空間内には、先端にスプール4が装着されたスプール軸15を、マスターギア軸10の回転に連動して前後に移動させ、釣り糸をスプール4に均一に巻き取るためのオシレーティング機構6も設けられている。
【0026】
図4に示すように、リールボディ2aの右側面には、筒状のボス部17aが形成されている。ボス部17aは、マスターギア軸10の図4右端を支持する軸受16aを収納するためにリールボディ2aの内外方に突出して形成されている。蓋体2dのボス部17aに対向する位置には、ボス部17bが形成されている。ボス部17bはマスターギア軸10の図4左端を支持する軸受16bを収納するためにリールボディ2aの内外方に突出して形成されている。第1ハンドル組立体1aが装着された側と逆側のボス部(図4ではボス部17a)は、第2ハンドル組立体1bが装着されていない通常の使用状態では、防水キャップ19により閉塞されている。ボス部17a,17bには、防水キャップが螺合する雌ねじ部17c,17dが軸受収納部分より小径に形成されている。また、雌ねじ部17c,17dの外方には、大径の筒状のシール孔17e,17fが形成されている。シール孔17e,17fには、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bに装着された後述するシール部材18a,18bの先端が接触している。
【0027】
防水キャップ19は、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bのいずれか一方のみが使用される場合に用いられる。防水キャップ19は、皿状のカバー部19aと、カバー部19aから内側に突出する筒状部19bと、を有している。筒状部19bの先端外周面には、雌ねじ部17c,17dのいずれかに螺合する雄ねじ部19cが形成されている。また、雄ねじ部19cの基端側には、シール孔17e,17fに接触するOリング21が装着されている。
【0028】
第1及び第2ハンドル組立体1a,1bは、図2,図4及び図5に示すように、マスターギア軸10に螺合する部材であり、全体としてほぼ同じ質量の部材である。
【0029】
マスターギア軸10は、筒状の軸であり、一端(図4左端)に第1ハンドル組立体1aが螺合する第1雌ねじ部(第1ねじ部の一例)10aが、他端(図4右端)に第2ハンドル組立体1bが螺合する第2雌ねじ部(第1ねじ部の一例)10bが形成されている。第1及び第2ハンドル組立体1a,1bは、マスターギア軸10の左端及び右端に各別に回転不能かつ着脱自在に装着可能である。
【0030】
第1及び第2ハンドル組立体1a,1bは、第1及び第2雌ねじ部10a,10bに螺合する第1及び第2ハンドル軸7a,7bと、第1及び第2ハンドル軸7a,7bにそれぞれ連結された第1及び第2ハンドルアーム8a,8bと、第1及び第2ハンドルアーム8a,8bの先端に装着された第1及び第2ハンドル把手9a,9bと、を有している。また、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bは、第1及び第2ハンドル軸7a,7bの外周側に装着された第1及び第2ロック部材20a,20bを有している。さらに、第2ハンドル組立体1bは、マスターギア軸10に装着したときに第1ハンドル組立体1aと回転方向の位相を合わせるための位相調整手段としての位相調整ワッシャ(位相調整手段の一例)22をさらに有している。第1及び第2ロック部材20a,20bは、第1及び第2ハンドルアーム8a,8bを、第1及び第2ハンドル軸7a,7bに対する揺動をそれぞれ禁止するロック状態及び揺動を許可するロック解除状態に切り換えるために設けられている。
【0031】
第1及び第2ハンドル軸7a,7bは、基端にマスターギア軸10の第1及び第2雌ねじ部10a,10bに螺合する第1及び第2雄ネジ部(第2ねじ部の一例)7c,7dを有する、たとえばステンレス合金製の軸部材である。第1及び第2ハンドル軸7a,7bの、マスターギア軸10に螺合する部分の長さは、マスターギア軸10の全長の半分以下の長さである。これにより、一方のハンドル組立体1a(又は1b)をマスターギア軸10の一端に装着しても他方のハンドル組立体1b(又は1a)をマスターギア軸10の他端に装着できる。マスターギア軸10の左端に螺合する第1雄ねじ部7cは、第1ハンドル組立体1aを糸巻き方向に回転させたときにねじ部が締まる方向の左ねじである。また、マスターギア軸10の右端に螺合する第2雄ねじ部7dは、第2ハンドル組立体1bを糸巻き方向に回転させたときにねじ部が締まる方向の右ねじであり、第1及び第2ハンドル軸7a,7bは、ネジ方向を除いて同一の形状である。
【0032】
第1及び第2雄ねじ部7c,7dの軸方向外側には、第1及び第2雄ねじ部7c,7dより大径の第3及び第4雄ねじ部7e,7fが各別に形成されている。第3及び第4雄ねじ部7e,7fのねじの方向は、第1及び第2雄ねじ部7c,7dと同じであり、左側の第3雄ねじ部7eは左ねじであり、右側の第4雄ねじ部7fは右ねじである。第3及び第4雄ねじ部7e,7fは、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bをマスターギア軸10から取り外したときに第1及び第2ロック部材20a,20bが脱落しないようにするために設けられている。
【0033】
第1及び第2ハンドルアーム8a,8bは、たとえば、アルミニウム合金製の部材であり、同じ形状であり質量及び長さは同じである。第1及び第2ハンドルアーム8a,8bは、略球状の外観のハンドル軸装着部8c,8dと、ハンドル軸装着部8c,8dから第1及び第2ハンドル軸7a,7bから延びるアーム部8e,8fと、を有している。
【0034】
ハンドル軸装着部8c,8dには、第1及び第2ロック部材20a,20bに後述する第1及び第2ばね受けワッシャ23a,23b(及び位置調整ワッシャ22)を介して各別に当接する、球の一部を切り欠いた形状の円形の当接面24a,24bが形成されているとともに、当接面24a,24bから中心側に向けて第1及び第2ハンドル軸7a,7bの先端の両側に密着する断面が矩形の係合溝25a,25bが形成されている。さらにハンドル軸装着部8c,8dには、第1及び第2ビス40a,40bがねじ込まれるネジ孔26a,26bが係合溝25a,25bと直交する方向に形成されている。ネジ孔26a,26bは、係合溝25a,25bを挟んで一方に形成され第1及び第2ビス40a,40bが螺合する雌ネジと、他方に雌ネジより大径に形成され第1及び第2ビス40a,40bが通過可能な透孔とをそれぞれ有している。
【0035】
アーム部8e,8fは、第1及び第2ハンドル軸7a,7bと交差する方向に延びる中空の先細り棒状の部材であり、ハンドル軸装着部8c,8dと一体形成されている。アーム部8e,8fの先端に第1及び第2ハンドル把手9a,9bがそれぞれ回転自在に装着されている。
【0036】
第1及び第2ハンドル把手9a,9bは、T字型の手の平で握れ、かつ指先でもつまめる形式の同じ形状である。第1及び第2ハンドル把手9a,9bは、アーム部8e,8fの先端に固定され、第1及び第2ハンドル軸7a,7bと平行に配置された第1及び第2把手軸8g,8hに回転自在に支持されている。
【0037】
第1及び第2ロック部材20a,20bは、第1及び第2ハンドル軸7a,7bの外周側に軸方向移動自在かつ回転自在に装着されている。第1及び第2ロック部材20a,20bは、大径筒部27a,27bと小径筒部28a,28bとを有する二重円筒構造の一体形成された部材である。大径筒部27a,27bは、軸方向外方の基端側が小径に形成されており、その部分で小径筒部28a,28bと連結されている。この基端にハンドル軸装着部8c,8dの当接面24a,24bに当接する第1当接部27c,27dが形成されている。第1当接部27c,27dの内周側には、皿ばね29a,29bが装着される凹部27e,27f(図5に29b及び27fのみ図示)が形成されている。第3雌ねじ部軸方向内方の先端には、マスターギア軸10の端部に当接する小径の第2当接部28c,28d(図5に28dのみ図示)が形成されている。小径筒部28a,28bの先端側外周面には、シール部材18a,18bが装着される環状のシール装着溝28e,28f(図5に28fのみ図示)。また、中央部より基端側の内周面には、第3及び第4雄ねじ部7e,7fに螺合する第3雌ねじ部28g,28h(図5に28hのみ図示)が形成されている。
【0038】
皿ばね29a,29bは、第1及び第2ロック部材20a,20bと、ハンドル軸装着部8c,8dを離反する方向に付勢するものであり、第1及び第2ハンドル軸7a,7bが回り止めのために設けられている皿ばね29a,29bとハンドル軸装着部8c,8dとの間に皿ばね29a.29bを押圧するための第1及び第2ばね受けワッシャ23a,23bが介装されている。さらに、第2ハンドル組立体1b側では、第2ばね受けワッシャ23bとハンドル軸装着部8dとの間に位相調整ワッシャ22が介装されている。
【0039】
位相調整ワッシャ22は、図6に示すように、厚みが異なる2枚のワッシャ部材(第1及び第2ワッシャ部材の一例)22a,22bで構成されている。ワッシャ部材22a,22bの厚みは、第1及び第2雄ねじ部7c,7dのピンチに関連して設定されている。たとえば、第1雄ねじ部7dがJIS(日本工業規格)で定められたM4のねじの場合、そのピッチは0.7mmである。そこで、たとえば、ワッシャ部材22aは、ピッチの1/2の厚みT1に設定され、ワッシャ部材22bは、ピッチの1/4の厚みT2に設定されている。これにより、2つのワッシャ部材22a,22bを組み合わせて用いることにより、1/4,1/2,3/4の3段階で第1ハンドル組立体1aと第2ハンドル組立体1bとの回転方向の位相を調整できる。それより細かく位相を調整したい場合、厚みが異なるワッシャ部材の枚数を増やせばよい。たとえば、ピッチの1/6,1/3,1/2の厚みが異なる3枚のワッシャ部材を用意すれば、6段階に位相を調整できる。
【0040】
回転伝達機構5は、図3及び図4に示すように、ハンドル組立体1a,1bが回転不能に装着可能なマスターギア軸10と、マスターギア軸10とともに回転するフェースギアからなるマスターギア11と、このマスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。マスターギア軸10の両端は、軸受16a,16bを介してリールボディ2aに回転自在に支持されている。
【0041】
マスターギア軸10の左端には、前述したように、第1ハンドル軸7aに螺合する左ネジの第1雌ネジ部10aが形成され、右端には第2ハンドル軸7bに螺合する右ネジの第2雌ネジ部10bが形成されている。また、マスターギア軸10の左端側外周部には、マスターギア11を同芯に着脱自在に装着するための円板状のフランジ部10cが形成されている。
【0042】
ピニオンギア12は、図3に示すように、前後の軸方向に沿う軸回りに回転自在にリール本体2に装着されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、軸方向の中間部と後端部とでそれぞれ軸受14a,14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。このピニオンギア12の内部をスプール軸15が貫通している。ピニオンギア12は、マスターギア11とともにオシレーティング機構6にも噛み合っている。
【0043】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、ピニオンギア12の回転に連動して動作し、ロータ3の回転に同期してスプール4を前後移動させる。
【0044】
ロータ3は、図3に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。ロータアーム31,32の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためのベールアーム44が開閉自在に装着されている。
【0045】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部にはピニオンギア12に回転不能に係止される貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。
【0046】
ロータ3の円筒部30の内部にはロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0047】
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に固定されたフランジ部4cとを有している。糸巻き胴部4aは、ストレートな円筒状の部材であり、外周面はスプール軸15と平行な周面で構成されている。糸巻き胴部4aは、2つの軸受56,57によりスプール軸15に回転自在に装着されている。
【0048】
〔リールの操作及び動作〕
このような構成のハンドル組立体1a,1bでは、通常は、第1又は第2ハンドル組立体1a,1bをマスターギア軸10の一方の端部に連結し、他方の端部側のボス部に防水キャップ19を装着する。またロータ3を回転しないように固定した状態で、第1又は第2ハンドル軸7a,7bをマスターギア軸10にねじ込むと、第1又は第2ロック部材20a,20bの両端がマスターギア軸10の端部とハンドル軸装着部8c,8dの当接面24a,24bとに当接する。この結果、第1又は第2ハンドルアーム8a,8bが図2に示すロック状態になりその揺動が禁止される。このロック状態で第1又は第2ハンドル組立体1a,1bは使用される。
【0049】
また、逆転防止機構50によりロータ3を逆転禁止状態にして第1又は第2ハンドル軸7a,7bをマスターギア軸10に対して少し緩めると、第1又は第2ロック部材20a,20bの両端とマスターギア軸10の端部及び当接面24a,24bとの間に隙間が生じる。この結果、第1又は第2ハンドルアーム8a,8bがロック解除状態になり、第1又は第2ハンドル軸7a,7bに対して折り畳み可能になる。このロック解除状態では、第1又は第2ハンドルアーム8a,8bを折り畳むことでリールをコンパクトに収納できる。
【0050】
釣りを行う際に、熟練者に釣り方を教えてもらうために、2つのハンドル組立体1a,1bを使用したいときがある。この場合、第1ハンドル組立体1(又は第2ハンドル組立体1b)が予め装着されている場合は、第2ハンドル組立体1b(又は第1ハンドル組立体1a)を装着すればよい。
【0051】
第1ハンドル組立体1aが予め装着された状態で第2ハンドル組立体1bを装着する場合、まず、右側のボス部17aに装着されている防水キャップ19を外してボス部17aを開口させる。この状態で、第2ハンドル組立体1bの第2ハンドル軸7bをマスターギア軸10の右端に接触させて糸巻取方向に回転させる。このとき、たとえば左手でロータ3の回転を止めておく。これにより、マスターギア軸10の雌ねじ部10bに第2ハンドル軸7bの第1雄ねじ部7dがねじ込まれる。すると、第2ロック部材20bの両端がマスターギア軸10の右端とハンドル軸装着部8dの当接面24bとに当接して第2ハンドルアーム8bがロック状態になりその揺動が禁止される。このロック状態で第2ハンドル組立体1bは使用可能になる。
【0052】
また、第2ハンドル組立体1bを装着するすると、その回転方向の位相が第1ハンドル組立体1aと大きく異なることがある。この場合、位相に違いに応じて位相調整ワッシャ22により2つのハンドル組立体1a,1bのハンドルアーム8a,8bの回転方向の位相を調整できる。たとえば、180度程度回転方向の位相が異なる場合は、装着した第2ハンドル組立体1bをマスターギア軸10から外してピッチの1/2厚みのワッシャ部材22aを第2ばね受けワッシャ23bと第2ハンドル組立体1aのハンドル軸装着部8dとの間に介装する。そして、再度第2ハンドル組立体1bを前述の手順でマスターギア軸10の右端に連結する。これにより、第1ハンドル組立体1aと第2ハンドル組立体1bとの回転方向の位相を、たとえば90度未満となるように合わせることができる。また、第2ハンドル組立体1bが90度程度回転し過ぎた位相になった場合は、ワッシャ部材22bを介装すればよい。さらに、第2ハンドル組立体1bが90度程度手前の位相で止まった場合は、2枚のワッシャ部材22a,22bを介装すればよい。これにより、2つのハンドル組立体1a,1bの位相を合わせることができる。
【0053】
なお、ハンドル組立体1a,1bを折り畳む場合には、ロータの逆転を禁止した状態でハンドル組立体1a,1bを糸繰り出し方向に回転させてハンドル軸7a,7bを緩めればよい。これにより、第1及び第2ロック部材20a,20bとハンドル軸装着部8c,8dとの間に隙間があき、第1及び第2ハンドルアーム8a,8bの第1及び第2ハンドル軸7a,7bに対するロックが解除され、第1及び第2ハンドルアーム8a,8bを折り畳むことができる。
【0054】
キャスティング時には、ベールアーム44を糸開放姿勢に反転させる。この状態で釣り竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣り竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。この状態で第1及び第2ハンドル組立体1a,1bのいずれかをたとえば糸巻取方向に回転させると、回転伝達機構5のマスターギア11及びピニオンギア12によりロータ3が糸巻取方向に回転し、図示しない反転機構によりベールアーム44が糸巻取姿勢に復帰して釣り糸がスプール4に巻き付けられる。
【0055】
この右側に装着される第2ハンドル組立体1bは通常の右ネジであり、左側に装着すされる第1ハンドル組立体1aは左ネジであるので、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bを糸巻取り方向に回転させたときに、第1及び第2ハンドル組立体1a,1bは、ネジが締まる方向に回転する。このため、糸巻取時にネジが緩みにくい。
【0056】
ここでは、一方のハンドル組立体1a(又は1b)がマスターギア軸10の一端に連結された状態で、他方のハンドル組立体1b(又は1a)をマスターギア軸10の他端に連結可能に構成したので、釣りの途中などで釣り方を教えるときなどに、他方のハンドル組立体1b(又は1a)をマスターギア軸の他端に連結することにより、釣り竿を持ち替えることなくリールを操作できるようになる。また、不要の時には、他方のハンドル組立体1b(又は1a)を連結解除することにより他方のハンドル組立体1b(又は1a)が邪魔にならない。
【0057】
また、一端に一方ハンドル組立体1a(又は1b)が連結されたマスターギア軸10の他端に他方のハンドル組立体1b(又は1a)を連結したときに2つのハンドル組立体1a,1bの回転方向の位相がずれても、位相調整ワッシャ22により2つのハンドル組立体1a,1bの位相を調整できる。このため、他端に連結された他方のハンドル組立体1b(又は1a)の位相を一端に連結された一方ハンドル組立体1a(又は1b)の位相に合わせて調整することができ、2つのハンドル組立体1a,1bをリールに装着してもハンドル組立体1a,1bを操作しやすくなる。
【0058】
なお、一人の釣り人が使用する場合であっても、2つのハンドル組立体1a,1bを交互に使用することにより、釣り糸を延々と巻つづけるときに左右の手が疲れにくくなる。
【0059】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、ねじ込み式のハンドル組立体を例に説明したが、非円形係合式のハンドル組立体にも本発明を適用できる。図7に示すように、非円形係合式の第1ハンドル組立体1aは、ハンドル軸107と、第1ハンドルアーム108aと、第1ハンドル把手(図示せず)とを有している。第2ハンドル組立体101bは、ハンドル軸107に螺合する第2ハンドルアーム108bと、第2ハンドル把手(図示せず)とを有している。したがって、ハンドル軸107は、左右の第1及び第2ハンドル組立体101a,101bで共通である。
【0060】
ハンドル軸107は、マスターギア軸110を貫通する中間部分に雄ネジ部に代えて非円形のたとえば矩形断面の係合部107gが形成されているとともに、先端外周面に雄ねじ部(第3ねじ部の一例)107hが形成されている。マスターギア軸110の内周部には、この係合部107gを回転不能に係止する断面が矩形の係止孔110aが形成されており、ハンドル軸107を係止孔110aに挿入すると両者が回転不能に連結される。ハンドル軸107の基端部(図7左端部)には、第1ハンドルアーム108aのハンドル軸装着部108cが前記実施形態と同様にビス40により連結されている。
【0061】
なお、この実施形態では、第1及び第2ハンドルアーム108a,108bは、折りたたみできない構造である。第2ハンドルアーム108bのハンドル軸装着部108dには、雄ねじ部107hに螺合する雌ねじ部(第4ねじ部の一例)108fが形成されている。また、第1ハンドルアーム108aのハンドル軸装着部108cと第1ロック部材20aとの間には、前記実施形態と同様な第1ばね受けワッシャ23aや皿ばね29aが装着され、第2ハンドルアーム108bのハンドル軸装着部108dと第2ロック部材20bとの間には、前記実施形態と同様な位相調整ワッシャ22や第2ばね受けワッシャ23bや皿ばね29bが装着されている。
【0062】
また、第2ハンドル組立体108bを取り外して第1ハンドル組立体108aだけで使用する場合、たとえば、第2ハンドル組立体108bのハンドル軸装着部108dと同様な形状のナット部材119によりハンドル軸107がマスターギア軸110に回転不能に連結される。この第1ハンドル組立体108aは、マスターギア軸110の右端からも装着することができる。
【0063】
このような構成の非円形係合式のハンドル組立体101a,101bでは、第1ハンドルアーム108aが連結され第1ロック部材20aが装着されたたハンドル軸107をマスターギア軸110の係止孔110aに係合部107gを合わせて挿入する。そして、逆側から飛び出したハンドル軸107に第2ロック部材20bや皿ばね29bや第2ばね受けワッシャ23bを装着する。そして、第2ハングル組立体101bの第2ハンドルアーム108aを雄ねじ部107hにねじ込んでハンドル軸107の抜け止めを行う。このとき、第1ハンドルアーム108aと第2ハンドルアーム108bとの位相が大きくずれている場合には、位相調整ワッシャ22を第2ロック部材20bと第2ハンドルアーム108aのハンドル軸装着部108dとの間に介装して位相を調整する。このような構成の非円形係合式のハンドル組立体にも本発明を適用できる。
【0064】
(b)前記実施形態では、複数枚の位相調整ワッシャ22を用いて2つのハンドル組立体の回転方向の位相を調整したが、図8に示すように、1枚の位相調整ワッシャ122の両面の直径を異ならせることにより2段階に調整できるようにしてもよい。図8において、第2ハンドル組立体201bのハンドル軸装着部208dに形成された当接面224bには、中心側に僅かに凹んだ当接凹部224dが形成されている。
【0065】
位置調整ワッシャ222は、第1面222aが大径で第2面222bが小径に形成された段付きワッシャである。第2面222bの外径は、当接凹部224dの内径より小さい。位置調整ワッシャ222の厚みは、たとえば、第1及び第2雄ねじ部7c,7dのピッチのたとえば2/3の厚みであり、大径の第1面222aは、全体の厚みの半分の厚みである。このような位置調整ワッシャ222を図示しない第1ハンドル組立体と第2ハンドル組立体201aの回転方向の位相に応じて、図8(a)に示すように、たとえば第1面222aを当接面224bに向けると、位相調整ワッシャ222の全体の厚みで位相を調整できる。一方、図8(b)に示すように、第2面222bを当接面224bに向けると、第2面222bが当接凹部224d内に当接し第1面222a側の厚み、すなわち全体の厚みの1/2の厚みで位相を調整できる。
【0066】
(c)前記実施形態では、2つのハンドル組立体のハンドルアームの長さを同一にしたが、図9に示すように異ならせても良い。この実施形態では、第1ハンドル組立体301aの第2ハンドルアーム308aの長さが第2ハンドル組立体301bの第2ハンドルアーム308bの長さより長い。これにより、それぞれのハンドル組立体を操作する釣り人の体格に合わせてハンドル組立体を選択できるようになる。たとえば、子供と大人とで操作する場合、体格が大きい大人はアーム長さが長い第2ハンドル組立体301aを操作し、体格が小さい子供はアーム短い第1ハンドル組立体301aを操作すればよい。これにより、体格が小さい子供側のハンドルアーム301bの回転半径が小さくなり、体格が小さい子供でも第2ハンドル組立体301bを回しやすくなる。
【0067】
(d)前記実施形態では、第1及び第2ハンドル把手が同じ形状であったが、別の形状でも良い。たとえば、図10に示すように、第1ハンドル組立体401aの第1ハンドル把手409aは、T字型の手の平で握れる形式のものにし、第2ハンドル組立体401bの第2ハンドル把手409bを指先でつまめる形式のものにしても良い。また、同じ形式で大きさを異ならせても良い。この場合、それぞれのハンドル組立体を操作する釣り人の体格に合わせることができる。また、ハンドル把手を異ならせることにより釣法に応じてハンドル把手を選択することもできる。
【0068】
(e)前記実施形態では、ハンドルアームがハンドル軸の先端から一方向に延びるシングルハンドル型のハンドル組立体を例に説明した。本発明はこれに限定されず、図11に示すような、それぞれのハンドルアーム508a,508bがハンドル軸の先端から両方向に延び、延びた両端にハンドル把手509a,509bが装着されるダブルハンドル型のハンドル組立体501a,501bにも本発明を適用できる。また、一方をシングルハンドル型のものにし、他方をダブルハンドル型のものにしてもよい。
【0069】
(f)前記実施形態では、第1及び第2ハンドル組立体の質量は同じであったが、異ならせても良い。たとえば、一方をステンレス合金製にして他方をアルミニウム合金やチタン合金などで軽量化しても良い。この場合、たとえば、図12に示すように、第1ハンドル組立体601aより第2ハンドル組立体601bの質量を大きくすると、釣りをするときに、リールが釣り竿Rを中心にして傾いて第2ハンドル組立体601bの位置が低くなり、二人の釣り人に身長差があってもお互いが操作しやすくなる。
【0070】
(g)前記実施形態では、第2ハンドル組立体側に位相調整ワッシャを装着したが、第1ハンドル組立体側に位相調整ワッシャを装着してもよいし、両方のハンドル組立体に位相調整ワッシャを装着してもよい。
【0071】
(h)前記実施形態では、位相調整手段として位相調整ワッシャを例示したが、位相調整手段としては、2つのハンドル組立体の回転方向の位相を調整できるものであればどのような形態でもよい。たとえば、U字状の切欠きを有する円板状の部材で位相調整手段を構成し、ハンドル組立体を取り外すことなく緩めるだけで位相を調整できるようにしてもよい。
【0072】
(i)前記実施形態では、フロントドラグ型のスピニングリールを例に説明したが、リアドラグ型のスピニングリールやレバーブレーキ型のスピニングリールやクローズドフェイスリールなどの他の形式のスピニングリールにも本発明を適用できる。
【0073】
(j)前記実施形態では、ばね受けワッシャを位相調整ワッシャと別に設けたが、ばね受けワッシャを設けなくてもよい。
【0074】
(k)前記の全ての実施形態においてねじ部の雄雌は逆でもよい。たとえば、マスターギア軸に雄ねじが形成され、ハンドル軸に雌ねじが形成されていてもよい。この場合には、マスターギア軸及びハンドル組立体の構成が簡素になる。また、マスターギア軸の一端側が雄ねじで他端側が雌ねじであってもよい。この場合には、ハンドル組立体の左右でねじの雌雄が異なるので、左右のハンドル組立体の付け間違いが生じなくなる。特に左右のハンドル組立体を異なる形状にする場合、付け間違いが生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態によるスピニングリールの背面斜視図。
【図2】その背面図。
【図3】その側面断面図。
【図4】その背面断面図。
【図5】そのハンドル組立体の断面部分図。
【図6】位相調整ワッシャの断面図。
【図7】他の実施形態の図4に相当する図。
【図8】さらに他の実施形態の位相調整ワッシャの使用状態を示す断面部分図。
【図9】さらに他の実施形態の図2に相当する図。
【図10】さらに他の実施形態の図2に相当する図。
【図11】さらに他の実施形態の図2に相当する図。
【図12】さらに他の実施形態の図2に相当する図。
【符号の説明】
【0076】
1a,1b、101a,110b、201a,201b、301a,301b、401a,401b、501a,501b、601a,601b 第1及び第2ハンドル組立体
2 リール本体
3 ロータ
4 スプール
5 回転伝達機構
7a,7b 第1及び第2ハンドル軸
7c,7d 第1及び第2雄ねじ部(第2ねじ部の一例)
8a,8b、108a,108b、208a,208b、308a,308b、508a,508b 第1及び第2ハンドルアーム
9a,9b、409a,409b、509a,509b 第1 及び第1ハンドル把手
10,110 マスターギア軸
10a,10b 第1及び第2雌ねじ部(第1ねじ部の一例)
22,222 位相調整ワッシャ(位相調整手段の一例)
22a,22b ワッシャ部材
107g 係合部
107h 雄ねじ部(第3ねじ部の一例)
108f 雌ねじ部(第4ねじ部の一例)
110a 係止孔(非円形孔の一例)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿に装着可能であり、前方に釣り糸を繰り出し可能なスピニングリールであって、
前記釣り竿に装着可能なリール本体と、
左右方向に沿って配置され前記リール本体に回転自在に装着されたマスターギア軸を有する回転伝達機構と、
前記マスターギア軸の一端に回転不能に連結された第1ハンドル組立体と、
前記第1ハンドル組立体が前記マスターギア軸の一端に連結された状態で前記マスターギア軸の他端に回転不能に連結可能な第2ハンドル組立体と、
前記リール本体に回転自在に装着されマスターギア軸の回転に連動して回転するロータと、
前記リール本体に対して前後移動自在であり、前記ロータの回転により外周に釣り糸が巻き付けられるスプールと、
を備えたスピニングリール。
【請求項2】
前記第1ハンドル組立体と前記第2ハンドル組立体は前記マスターギア軸にねじ構造により固定されており、
前記第1ハンドル組立体と前記第2ハンドル組立体との回転方向の位相を調整する位相調整手段をさらに備える、請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記マスターギア軸は、一端に第1雌ねじ部を有し、他端に第2雌ねじ部を有し、
前記第1ハンドル組立体は、前記第1雌ねじ部に螺合する第1雄ねじ部を有し、
前記第2ハンドル組立体は、前記第2雌ねじ部に螺合する第2雄ねじ部を有する、請求項2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記マスターギア軸は、中心を左右に貫通する非円形孔を有し、
前記第1ハンドル組立体は、前記非円形孔に回転不能に係合する係合部と、前記係合部の先端に設けられた第3ねじ部とを有するハンドル軸を有し、
前記第2ハンドル組立体は、前記第3ねじ部に螺合する第4ねじ部を有する、請求項2に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記第3ねじ部は雄ねじであり、前記第4ねじ部は雌ねじである、請求項4に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記位相調整手段は、前記ねじ構造のねじのねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャを有する、請求項2から5のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項7】
両端に第1ねじ部を有するスピニングリールのマスターギア軸に回転不能に連結されるハンドル組立体であって、
前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部を有するハンドル軸と、
前記ハンドル軸に連結され、少なくとも前記ハンドル軸と交差する一方向に延びるハンドルアームと、
前記ハンドルアームの先端に装着されたハンドル把手と、
前記第1ねじ部と前記第2ねじ部との螺合量を調整して前記ハンドルアームの前記マスターギア軸に対する位相を調整可能な位相調整手段と、
を備えたスピニングリールのハンドル組立体。
【請求項8】
前記第1ねじ部は雌ねじ部であり、第2ねじ部は雄ねじ部である、請求項7に記載のスピニングリールのハンドル組立体。
【請求項9】
前記位相調整手段は、前記第1及び第2ねじ部のねじのねじピッチを複数分割した厚みの位相調整ワッシャを有する、請求項7又は8に記載のスピニングリールのハンドル組立体。
【請求項10】
前記位相調整ワッシャは、第1及び第2ねじ部のねじのピッチの1/2の厚みの第1ワッシャ部材と、前記ピッチの1/4の厚みの第2ワッシャ部材とを有する、請求項9に記載のスピニングリールのハンドル組立体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−22756(P2008−22756A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197816(P2006−197816)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】