説明

スピーカーキャビネット及びこれを用いたスピーカーシステム

【課題】 スピーカーの取り付け強度を向上させてスピーカーキャビネットの振動を低減してスピーカーシステムからの再生音を改善するスピーカーキャビネットを、また、スピーカーの放熱を改善してスピーカーの温度上昇による動作不良を防止するスピーカーキャビネットを、低コストで提供する
【解決手段】 熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型して形成する筒状筐体と、筒状筐体の開放端部に連結する蓋部材と、を備えるスピーカーキャビネットであって、筒状筐体が、筒状筐体の内面に突起し押出成型方向に延設された複数のリブを備え、複数のリブから選択されて構成されるリブグループが、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ等の金属材料や、熱可塑性樹脂や、熱可塑性樹脂に木粉等セルロース系粉末もしくは発泡剤等を含む合成材料、等を押出成型して形成する筒状筐体を備えるスピーカーキャビネット、および、これを用いて構成したスピーカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカーシステムにおいては、スピーカーを取りつけるスピーカーキャビネットを、アルミ等の金属材料や、熱可塑性樹脂と、木屑や木粉等のセルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型して形成するものがある。熱可塑性樹脂に木粉等のセルロース系粉末、さらに発泡剤を混入することにより、筐体の強度が確保されて、振動に対する内部損失が大きい、音響的に好ましいスピーカーキャビネットが構成される(特許文献1、特許文献2)。また、押出成型により断面形状が自由に設計できるので、筒状筐体に曲面を構成したものや、押出方向に連続するリブもしくは突起を備えて強度を増したスピーカーキャビネットが提案されている(特許文献3)。
【0003】
また、一方で、従来のスピーカーシステムにおいては、スピーカーの取り付け強度を向上させてスピーカーキャビネットの振動を低減するために、あわせて、スピーカーにおける放熱を改善するために、スピーカーの磁気回路後面とスピーカーキャビネットとの間に、熱伝導性がよく弾性に優れた金属弾性板もしくはクッション材を設けるものがある(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】特公平1−34440号公報 (第2図)
【特許文献2】特許第3143759号公報 (第1図)
【特許文献3】特開平2−47996号公報 (第1図、第3図)
【特許文献4】特開平9−247780号公報 (第1図、第2図)
【0005】
しかしながら、従来技術のスピーカーシステムでは、スピーカーキャビネットの振動を低減し、スピーカーシステムからの再生音を改善する点において、十分ではないという問題がある。スピーカーの取り付け強度を向上させるために、別部品の金属弾性板もしくはクッション材を設けると、部品点数および取付工数の増加を招き、その結果、製造コストが増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、押出成型による筒状筐体を備えるスピーカーキャビネット及びこれを用いたスピーカーシステムに関し、スピーカーの取り付け強度を向上させてスピーカーキャビネットの振動を低減してスピーカーシステムからの再生音を改善するスピーカーキャビネットを、また、スピーカーの放熱を改善してスピーカーの温度上昇による動作不良を防止するスピーカーキャビネットを、低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスピーカーキャビネットは、押出成型により形成される筒状筐体と、筒状筐体の開放端部に連結する蓋部材と、を備えるスピーカーキャビネットであって、筒状筐体が、筒状筐体の内面に突起し押出成型方向に延設された複数のリブを備え、複数のリブから選択されて構成されるリブグループが、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成する。
【0008】
好ましくは、本発明のスピーカーキャビネットは、筒状筐体が、その前面側内面に、リブグループと、スピーカーを取り付けて収容するスピーカー収容孔と、から形成される固定取付部を備え、リブグループが、スピーカーのフレームの一の取付孔に対応する第1リブと、第1リブと離隔して、スピーカーのフレームの他の取付孔に対応する第2リブと、を含み、スピーカー収容孔が、第1リブと該第2リブとの間に設けられる。
【0009】
好ましくは、本発明のスピーカーキャビネットは、筒状筐体が、その背面側内面に、リブグループから形成される固定取付部を備え、リブグループが、当接するスピーカーの磁気回路の幅に対応して配置された複数のリブから構成され、それぞれのリブとリブとの間にスピーカーの磁気回路の放熱路を形成する。
【0010】
さらに好ましくは、本発明のスピーカーキャビネットは、筒状筐体が、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料と、弾性を有する弾性樹脂とを押出成型して形成した筒状筐体であって、固定取付部のリブグループを構成するリブが、その先端に弾性樹脂で形成された弾性連結部を備える。
【0011】
また、本発明のスピーカーシステムは、上記の本発明のスピーカーキャビネットと、その固定取付部に取り付けられるスピーカーと、を備える。
【0012】
以下、本発明の作用について説明する。
【0013】
本発明のスピーカーキャビネットは、アルミ等の金属材料や、熱可塑性樹脂、木粉等セルロース系粉末および発泡剤を含む合成材料、等を押出成型して形成する筒状筐体と、筒状筐体の開放端部に連結する蓋部材と、から構成される。押出成型により形成される筒状筐体は両端に開放端部を備えるので、蓋部材としての天板及び底板を形成し、これらが筒状筐体の開放端部を塞いで略箱形状のスピーカーキャビネットを形成する。代表的には、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型して形成するので、スピーカーで生じる振動に対する内部損失が大きく、いわば鳴きが少ない音響的に好ましいスピーカーキャビネットが実現される。もちろん、蓋部材の材料には、筒状筐体と同じ合成材料を使用するのが好ましいが、他の樹脂や、金属等の部材を用いても良い。筒状筐体は、押出成型時の切断長を任意に調整することができるので、同一成形型で様々な全長及び容積の異なるスピーカーキャビネットを供給することができる。
【0014】
スピーカーキャビネットの筒状筐体は、筒状筐体の内面に突起し押出成型方向に延設された複数のリブを備える。押出成型により、筒状筐体の断面形状は造形的に自由度が高く、筒状筐体の外面には美観上の理由から滑らかな面を形成し、一方、筒状筐体の内面には振動を抑制する突起し複数のリブを形成することができる。これらの複数のリブから選択される一部のリブは、リブグループを構成し、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成する。したがって、筒状筐体の固定取付部は、リブにより強度が向上し、かつ、スピーカーを強固に取り付けられるので、筒状筐体の振動を低減することができ、その結果、再生音が改善されたスピーカーシステムが実現される。
【0015】
具体的には、スピーカーを取り付ける固定取付部は、筒状筐体の前面側内面に、リブグループと、スピーカーを取り付けて収容するスピーカー収容孔と、から形成される。このリブグループは筒状筐体の前面側内面に設けられ、スピーカーのフレームの一の取付孔に対応する第1リブと、第1リブと離隔して、スピーカーのフレームの他の取付孔に対応する第2リブと、を含んでいる。第1リブと該第2リブとの間に設けられるスピーカー収容孔には、スピーカーの磁気回路およびフレームが収容される。なお、スピーカー収容孔は、概ねその中心が第1リブと該第2リブとの間に設けられていればよく、磁気回路やフレームが大きい場合には、その一部が第1リブと第2リブとの間から外に出ていてもよい。したがって、スピーカーのフレームは、フレームの取付孔を貫通するネジ等の連結部材により固定取付部のリブに取り付けられ、スピーカーの取り付け強度を向上させてスピーカーキャビネットの振動を低減することができる。
【0016】
また、具体的には、スピーカーを取り付ける固定取付部は、筒状筐体の背面側内面に、当接するスピーカーの磁気回路の幅に対応して配置された複数のリブから構成されるリブグループから形成される。このリブグループは、それぞれのリブとリブとの間にスピーカーの磁気回路の放熱路を形成する。つまり、このリブグループは、当接するリブがスピーカーの磁気回路を背面側から固定し、一方で、リブ同士が規定する放熱路を空気が移動可能となり、熱を発生するスピーカーの磁気回路を冷却する。したがって、スピーカーの取り付け強度を向上させてスピーカーキャビネット背面側の振動を低減してスピーカーシステムからの再生音を改善することができ、あわせて、スピーカーの放熱を改善してスピーカーの温度上昇による動作不良を防止することができる。
【0017】
また、スピーカーキャビネットの筒状筐体が、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型するのに加えて、弾性を有する弾性樹脂を同時に押出成型して形成した、いわゆる多色成形の筒状筐体である場合には、固定取付部のリブグループを構成するリブは、その先端に弾性樹脂で形成された弾性連結部を備える。つまり、スピーカーが取り付けられる固定取付部において、スピーカーは、弾性樹脂で形成された弾性連結部を介して筒状筐体に取り付けられる。したがって、スピーカーで生じる振動が固定取付部の弾性連結部で減衰するので、スピーカーキャビネットの振動をより低減することができ、スピーカーシステムからの再生音を改善することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の押出成型による筒状筐体を備えるスピーカーキャビネットは、別部品を使用することなくスピーカーの取り付け強度を向上させ、スピーカーキャビネットの振動を低減することができ、その結果、スピーカーシステムの再生音を改善することができる。また、固定取付部がスピーカーの放熱を改善して、温度上昇による動作不良等を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のスピーカーキャビネットは、低コストでスピーカーシステムからの再生音を改善するという目的を、筒状筐体が、筒状筐体の内面に突起し押出成型方向に延設された複数のリブを備え、複数のリブから選択されて構成されるリブグループが、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成することにより、実現した。
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネットおよびスピーカーシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネット1について説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は断面A−A’における側方断面図、図1(c)は背面図、図1(d)は断面B−B’における上方断面図である。スピーカーキャビネット1は、筒状筐体10と、筒状筐体10の開放端部に連結する天板8と、底板9とから構成されている。筒状筐体10は、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型して形成されていて、図1(d)に示されるような閉じた管状の断面形状を備え、前面部11、右側面部12、左側面部13および背面部14とが一体に構成されている。それぞれ筒状筐体10の押出成型時の切断長を調整することにより、様々な長さの筒状筐体が形成できるので、様々な容積の異なるスピーカーキャビネット1が形成される。また、天板8および底板9は、筒状筐体10と同一の合成材料を押出成型した板状部材を切断して形成されていて、振動に対する内部損失が大きく、いわば鳴きが少ない音響的に好ましいスピーカーキャビネット1が実現される。
【0022】
筒状筐体10は、押出成型して形成された時点では、押出成型方向の全長に渡って図1(d)の断面図に示されるような同一形状の断面を備える。押出成型された成形材は、切断されて必要なスピーカー収容孔等を開ける加工をされて、筒状筐体10となる。筒状筐体10の外表面には美観上の理由から滑らかな面が形成され、一方では、筒状筐体10の内表面には、突起し押出成型方向に延設された複数のリブ15、17および19が形成される。なお、図1(a)の正面図には、筒状筐体10の内表面のリブ15a、15bおよびリブ17a、17bが、図1(c)の背面図には、筒状筐体10の内表面のリブ19a、19b、19cおよび19dが、点線で投影されている。これらのリブは、筒状筐体10の強度を向上するとともに、複数のリブから成るリブグループを構成し、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成する。具体的には、筒状筐体10の前面11の内面にはリブ15aおよび15bからなるリブグループ15が設けられ、後述する高音用スピーカー2のフレームおよび磁気回路部分2aを収容するスピーカー収容孔16aと、後述するネジの下穴16b、16c、16dおよび16eととともに、固定取付部を形成する。同様に、筒状筐体10の前面11の内面にはリブ17aおよび17bからなるリブグループ17が設けられ、後述する低音用スピーカー3のフレームおよび磁気回路部分3aを収容するスピーカー収容孔18aと、後述するネジの下穴18b、18c、18dおよび18eとともに、固定取付部を形成する。また、筒状筐体10の背面14の内面にはリブ19a、19b、19cおよび19dからなるリブグループ19が設けられ、低音用スピーカー3の磁気回路部分5の後端部と当接して低音用スピーカー3を固定する固定取付部を形成する。
【0023】
図2は、本発明のスピーカーキャビネット1を備えるスピーカーシステム100について説明する図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は断面A−A’における側方断面図、図2(c)は背面図、図2(d)は断面C−C’における上方断面図、図2(e)は断面D−D’における上方断面図である。なお、図2(a)の正面図には、筒状筐体10の内表面のリブ15a、15bおよびリブ17a、17bが、図2(c)の背面図には、筒状筐体10の内表面のリブ19a、19b、19cおよび19dが、点線で投影されている。スピーカーシステム100は、高音用スピーカー2と、低音用スピーカー3とが筒状筐体10の前面11に取り付けられて構成されている。高音用スピーカー2と低音用スピーカー3では、再生周波数帯域および振動板の面積が異なるので、それぞれのフレームの大きさが異なっていて、低音用スピーカー3の方が高音用スピーカー2よりもフレームが大きい。
【0024】
例えば、高音用スピーカー2に対応する固定取付部のリブグループ15は、筒状筐体10の前面11の内面に設けられ、高音用スピーカー2のフレームの取付孔2bおよび2cに対応するリブ15aと、高音用スピーカー2のフレームの他の取付孔2dおよび2eに対応するリブ15bと、を含んでいる。リブグループ15には、高音用スピーカー2を固定するネジ(図示しない)の下穴が設けられ、リブ15aには下穴16bおよび16cが、リブ15bには下穴16dおよび16eが設けられる。すなわち、高音用スピーカー2は、スピーカーを固定するネジが螺合するリブグループ15が設けられることで、強固に筒状筐体10の前面11に取り付けられる。
【0025】
また、低音用スピーカー3に対応する固定取付部5のリブグループ17は、筒状筐体10の前面11の内面に設けられ、低音用スピーカー3のフレームの取付孔3bおよび3cに対応するリブ17aと、低音用スピーカー3のフレームの他の取付孔3dおよび3eに対応するリブ17bと、を含んでいる。リブグループ17には、低音用スピーカー3を固定するネジ(図示しない)の下穴が設けられ、リブ17aには下穴18bおよび18cが、リブ17bには下穴18dおよび18eが設けられる。すなわち、低音用スピーカー3は、スピーカーを固定するネジが螺合するリブグループ17が設けられることで、強固に筒状筐体10の前面11に取り付けられる。なお、対応するフレームの大きさの違いから、リブグループ17は、リブグループ15よりもスピーカーキャビネットの中心線(A−A’)に対して外側に設けられている。
【0026】
さらに、低音用スピーカー3に対応する固定取付部のリブグループ19は、筒状筐体10の背面14の内面に設けられ、低音用スピーカー3の磁気回路3aの後端部と当接して低音用スピーカー3を支持するリブ19a、19b、19cおよび19dを含んでいる。低音用スピーカー3を筒状筐体10の前面11の固定取付部に取り付けると、磁気回路3aの後端部がリブグループ19に当接して、大きくて重量を伴う低音用スピーカー3を強固に固定する。加えて、リブ19aとリブ19bとの間には放熱路19eが、リブ19bとリブ19cとの間には放熱路19fが、リブ19cとリブ19dとの間には放熱路19gが形成される。固定取付部の放熱路19e、19fおよび19g中の空気が移動することで、当接する低音用スピーカー3の磁気回路3aで発生する熱は効率的に放熱される。
【0027】
筒状筐体10の内面に設けられるリブグループは、複数のリブから構成されていれば良く、上記の実施例に限定されない。押出成型による筒状筐体10は、押出成型時の切断長を調整することにより様々な長さの筒状筐体が形成できるので、短くて容積の小さい小型スピーカーシステムのスピーカーキャビネットにも、長くて容積の大きい大型スピーカーシステムのスピーカーキャビネットにも転用できる。したがって、様々な口径のスピーカーに対応できるように、さらに複数のリブグループを筒状筐体10の内面に設けてもよい。
【0028】
例えば、上記の実施例では、リブグループ15および17を前面11に、リブグループ19を背面14に設けているが、右側面12もしくは左側面13に別の口径のスピーカーを取り付けるためのリブグループを設けてもよい。もちろん、前面11もしくは背面14にさらに別のリブグループを設けてもよい。また、筒状筐体10の内面に設けられるリブグループのうち、磁気回路の後端部に当接するリブグループのそれぞれのリブは、同一の間隔及び同一の高さでなくてもよく、対応する磁気回路の形状に合わせて間隔及び高さが変わっていてもよい。また、低音用スピーカー3に対しては、リブグループ17と、リブグループ19によりそれぞれ固定取付部を構成したが、これらのうち、どちらか一方のみで固定支持してもよい。
【0029】
また、筒状筐体10の内面に設けられるリブグループを利用して、スピーカーのダクトや、接続端子が設けられるターミナルや、スピーカー取付アーム等の壁面への取付部を、筒状筐体に取り付けてもよい。例えば、ダクトや、ターミナルを取り付ける取付部がリブグループにより強固に形成されるので、振動に強いスピーカーキャビネットが実現される。また、リブとリブとの間に規定される溝部分を、バスレフ型スピーカーの音響質量として機能するように、ダクトを取り付けてもよい。
【0030】
なお、本実施例では、内部損失が大きく、いわば鳴きが少ない材料である、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型して形成したが、上記材料に限定されない。押出成型による筒状筐体を形成する材料は、もちろん、木粉等セルロース系粉末もしくは発泡剤を含まない熱可塑性樹脂を主体とする合材材料でもよく、アルミ等の金属材料でもよい。
【実施例2】
【0031】
図3は、本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図であり、図3(a)は上方からみたスピーカーシステム200についての断面図、図3(b)は上方からみた他のスピーカーシステム300についての断面図である。いずれの実施例のスピーカーシステムは、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料を押出成型するのに加えて、弾性を有する弾性樹脂を同時に押出成型して形成した、いわゆる多色成形により形成された筒状筐体を備えるスピーカーキャビネットを含んでいる。筒状筐体の内面に形成されるリブの先端に弾性樹脂で形成された弾性連結部を備え、スピーカーが弾性樹脂で形成された弾性連結部を介して筒状筐体に取り付けられる。 なお、実施例1のスピーカーキャビネットおよびスピーカーシステムと共通する部分については、説明を省略する。
【0032】
スピーカーシステム200では、筒状筐体20の前面21に設けられた固定取付部にスピーカー7が取り付けられている。スピーカー7を取り付ける固定取付部のリブグループ25は、リブ25aとリブ25bとから構成され、リブ25aとリブ25bの先端には、弾性樹脂で形成された弾性連結部26aおよび26bが備わっている。スピーカー7のフレーム7fは、筒状筐体20の内面側からネジ等の固定部材により固定するのに適した形状をしており、前面部21のリブグループ25に固定される。すなわち、スピーカー7のフレーム7fは、弾性連結部26aおよび26bを介して筒状筐体20に取り付けられる。その結果、スピーカー7で生じた振動は、弾性連結部26aおよび26bで吸収されるので、スピーカーキャビネットの振動が低減される。
【0033】
また、スピーカーシステム300では、筒状筐体30の前面31に設けられた固定取付部に低音用スピーカー3が取り付けられ、さらに、筒状筐体30の背面34に設けられた固定取付部に低音用スピーカー3の磁気回路3aが当接して固定されている。低音用スピーカー3を取り付ける前面31側の固定取付部のリブグループ35は、リブ35aとリブ35bとから構成され、低音用スピーカー3は、実施例1の場合と同様に、筒状筐体30の前面31側から固定される。加えて、低音用スピーカー3を取り付ける背面34側の固定取付部のリブグループ37は、低音用スピーカー3の磁気回路3aの後端部と当接して低音用スピーカー3を支持する弾性連結部38aを先端に備えるリブ37aと、弾性連結部38bを先端に備えるリブ37bと、弾性連結部38cを先端に備えるリブ37cと、弾性連結部38dを先端に備えるリブ37dを含んでいる。したがって、低音用スピーカー3は、前面31側からの固定取付部と、背面34側の固定取付部と、により筒状筐体30に強固に固定され、かつ、弾性連結部38が効果的に振動を吸収する。また、例えば、リブ37aとリブ37bとの間には放熱路37eが形成される。固定取付部の放熱路39e、39fおよび39g中の空気が移動することで、当接する低音用スピーカー3の磁気回路3aで発生する熱は効率的に放熱される。
【0034】
筒状筐体の弾性連結部を形成する弾性樹脂は、代表的には熱可塑性のエラストマーでよく、ゴム、もしくはシリコン樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料とともに多色成形材を押出成型するのに適しているからである。筒状筐体を形成する材料は、もちろん、木粉等セルロース系粉末もしくは発泡剤を含まない熱可塑性樹脂を主体とする合材材料でもよく、アルミ等の金属材料でもよい。また、筒状筐体にはリブと弾性連結部とが一体に成形されているので、別部品を使用することなくスピーカーの取り付け強度を向上させ、スピーカーキャビネットの振動が低減する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のスピーカーキャビネット及びこれを用いたスピーカーシステムは、上記実施例に限られず、木粉を含まない熱可塑性樹脂を含む合成材料を押出成型するスピーカーキャビネットもしくはこれを用いたスピーカーシステムにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーキャビネットについて説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の他の好ましい実施形態によるスピーカーシステムについて説明する図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0037】
1 スピーカーキャビネット
2 高音用スピーカー
3 低音用スピーカー
7 スピーカー
8 天板
9 底板
10 筒状筐体
11 前面
12 右側面
13 左側面
14 背面
15 リブ
17 リブ
19 リブ
20、30 筒状筐体
26、38 弾性連結部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成型により形成される筒状筐体と、該筒状筐体の開放端部に連結する蓋部材と、を備えるスピーカーキャビネットであって、
該筒状筐体が、該筒状筐体の内面に突起し該押出成型方向に延設された複数のリブを備え、
該複数のリブから選択されて構成されるリブグループが、スピーカーを取り付ける固定取付部を形成する、
スピーカーキャビネット。
【請求項2】
前記筒状筐体が、その前面側内面に、前記リブグループと、スピーカーを取り付けて収容するスピーカー収容孔と、から形成される前記固定取付部を備え、
該リブグループが、該スピーカーのフレームの一の取付孔に対応する第1リブと、該第1リブと離隔して、該スピーカーの該フレームの他の取付孔に対応する第2リブと、を含み、
該スピーカー収容孔が、該第1リブと該第2リブとの間に設けられる、
請求項1に記載のスピーカーキャビネット。
【請求項3】
前記筒状筐体が、その背面側内面に、前記リブグループから形成される前記固定取付部を備え、
該リブグループが、当接するスピーカーの磁気回路の幅に対応して配置された複数のリブから構成され、それぞれのリブとリブとの間に該スピーカーの磁気回路の放熱路を形成する、
請求項1に記載のスピーカーキャビネット。
【請求項4】
前記筒状筐体が、熱可塑性樹脂と、木粉等セルロース系粉末と、発泡剤と、を含む合成材料と、前記弾性を有する樹脂とを押出成型して形成した筒状筐体であって、
前記固定取付部の前記リブグループを構成する前記リブが、その先端に該弾性樹脂で形成された弾性連結部を備える、
請求項1から3のいずれかに記載のスピーカーキャビネット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のスピーカーキャビネットと、前記固定取付部に取り付けられるスピーカーと、を備える、スピーカーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−287312(P2006−287312A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100860(P2005−100860)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】