説明

スピーカー機能付き建築用パネル

【課題】パネル前面を見栄えのよいものとしながら作業工数を低減することができ、しかも、加振器による音の伝播に必要な振動領域を振動しやすいものとしつつ振動領域として不要な範囲への振動の伝播を抑制することのできるスピーカー機能付き建築用パネルを提供する。
【解決手段】前面が化粧面となる建築用パネル1の背面から座ぐり加工をして収納凹所2を設けると共に該収納凹所2の底部を薄肉部4とする。収納凹所2内の薄肉部4に加振器3を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー機能付き建築用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スピーカー機能が付いたパネルとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1により示すものは、板状の基板に貫通孔を形成すると共に、この基板の背面に背面板を添着して、この貫通孔に振動子(加振器)を収納し、その後、この貫通孔を覆うようにして音響板を配設して構成されている。この音響板は周縁部分のみを基板の前面に接着してあり、加振器を振動させることでこの音響板全体を振動させて、音を伝播するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−44226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように、音響板を基板の前面に接着すれば、基板の前面と音響板の前面とに段差が生じて見栄えが悪いものとなる。
【0005】
しかも、基板に貫通孔を形成した上で背面板を基板背面に接着し、その上で、貫通孔内に加振器を収納して、しかも、その貫通孔を覆うように音響板を接着しなければならないため、非常に手間が掛かり、製造上コスト高になるおそれもある。
【0006】
さらに、このような音響板は上記のように周縁部分のみが基板に接着されているため、振動領域として不要な範囲へも振動が伝播してしまい、例えば、複数の加振器を一つの音響板で覆うことになると、複数の加振器による振動が相互に干渉してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パネル前面を見栄えのよいものとしながら作業工数を低減することができ、しかも、加振器による音の伝播に必要な振動領域を振動しやすいものとしつつ振動領域として不要な範囲への振動の伝播を抑制することのできるスピーカー機能付き建築用パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を備えている。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明にあっては、前面が化粧面となる建築用パネル1の背面から座ぐり加工をして収納凹所2を設けると共に該収納凹所2の底部を薄肉部4とする。収納凹所2内の薄肉部4に加振器3を設けた。
【0010】
このように構成したことで、建築用パネル1に加振器4を設けた場合であっても、化粧面には加振器を設けた痕跡が一切現れず、見栄えのよいものとすることができる。また、建築用パネル1上に座ぐり加工を施して収納凹所2を形成して、その収納凹所2に加振器3を収納するだけでよいため、作業工数を低減させることができる。しかも、建築用パネル1上における薄肉部4以外の部分を厚くしているから、振動領域となる薄肉部4を振動しやすいものとしつつ、それ以外の範囲への振動の伝播を抑制することができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記加振器3の全体が建築用パネル1の厚み内に配置されるように構成した。
【0012】
このように構成したことで、建築用パネル1の背面を下地などの被取付物に取り付ける場合には、加振器3が被取付物に干渉しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加振器を建築用パネルに内装したものにおいても、加振器を設けた痕跡を化粧面に何ら現出させず、見栄えのよいものとすることができ、また、作業工数を減らして製造コストを抑制することができ、しかも、加振器の振動領域を振動しやすいものとしつつ、それ以外の範囲への振動の伝播を抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の分解斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】他の実施形態の斜視図である。
【図4】同上の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本実施形態の一例のスピーカー機能付き建築用パネルの分解斜視図である。該スピーカー機能付き建築用パネルは、建物の桟や下地板等(以下、下地と記載する)に取り付けられ、天井材や壁材等の建築用パネルとして利用される。
【0017】
このスピーカー機能付き建築用パネルは、矩形状(図示例では長方形状)に形成され、建物の下地に取り付けられる建築用パネル1と、建築用パネル1の背面に座ぐり加工をして設けられた収納凹所2と、収納凹所2に内装された加振器3とを備えている。
【0018】
本実施形態の建築用パネル1は、MDF(Medium-Density Fiberboard)から形成されており、前面が化粧面となっている。
【0019】
長方形状に形成された建築用パネル1の短手方向の略中央で、且つ長手方向と同方向に離間して並んで(すなわち、建築用パネル1の長手方向の両端近傍に)、収納凹所2が形成されている。この収納凹所2は平面視円形形状をなしており、上記の通り、建築用パネル1の背面から座ぐり加工を施し、建築用パネル1の厚み方向の一部を残して構成されている。すなわち、収納凹所2の底面部には薄肉部4が形成されており、この薄肉部4が加振器3による振動が伝播しやすい振動領域となっている(例えば、本実施形態の建築用パネル1厚さは20〜25mm、薄肉部4の厚さは1.5〜2mmとなっている)。このような薄肉部4は、建築用パネル1における他の部分よりも薄くなっているため、加振器3による振動が伝播しやすくなっており、一方、薄肉部4以外の部分は薄肉部4よりも十分に厚くなっているため振動器3による振動が伝播し難いものとなる。
【0020】
なお、建築用パネル1は収納凹所2が形成されていない部分が大部分を占め、強度が高められている。
【0021】
加振器3は、各収納凹所2内における薄肉部4に一個ずつ取り付けられる。詳しく説明すると、各加振器3は薄肉部4の背面の中央に接着して取り付けられ、収納凹所2内の内周面(側面)と接触しない状態で収納凹所2に内装される。そして、本実施形態における各加振器3は、図2に示すように加振器3の一部が建築用パネル1よりも後方に突出した状態で収納凹所2に収納されている。
【0022】
前記各加振器3は図示しない音声用アンプ等の音源装置に配線7(図3参照)を介して接続される。各加振器3は、音源装置から出力された信号に基づいて振動し、これにより建築用パネル1の前面側の一部に設けられる振動領域となる薄肉部4を振動させ、音を前方に発する。
【0023】
以上説明した本実施形態のスピーカー機能付き建築用パネルは、建築用パネル1の前面の化粧面が平坦であり、化粧面からは収納凹所2を設けた痕跡が一切生じないため、その前面に建築用の化粧シート(図示せず)を貼着しても凹凸が生じず、見栄えのよいものとすることができる。しかも、上記のように建築用パネル1背面から座ぐり加工を施して収納凹所2を形成して、その収納凹所2内に加振器3を取り付けるだけでよいので、作業工数も少なくてすむ。なお、上記のように建築用パネル1前面に建築用の化粧シートを貼着せずに、建築用パネル1の前面である化粧面を露出するようにしてもよいのはもちろんである。
【0024】
さらに、本実施形態のスピーカー機能付き建築用パネルは、振動領域となる薄肉部4は薄く且つそれ以外の部分は厚く構成されているため、振動領域を加振器3による振動が伝播しやすいものとしながら、それ以外の部分は加振器3による振動が伝播しにくいものとすることができる。つまり、本実施形態のように、単一の建築用パネル1上に複数の加振器3を設けた場合であっても、各加振器3による振動が相互に干渉してしまうことを防ぐことができる。これにより、一枚のスピーカー機能付き建築パネルの各両端部に加振器3を配設し、それぞれ異なる音を発音するようにすれば、ステレオスピーカを構成することも可能である。
【0025】
また、一枚のスピーカー機能付き建築パネルの各両端部のうち、一方の端部に高域の周波数帯域の信号を与えると共に、他方の端部に中・低域の周波数帯域の信号を与えて発音するようにすれば、2ウェイ型のスピーカーを構成することも可能である。
【0026】
さらに、本実施形態のスピーカー機能付き建築用パネルは、大部分が収納凹所2の設けられていない厚みの厚い部分で構成されており、強度の高い建築用パネルとして利用することができる。
【0027】
次に、他の実施形態について図3に基づいて説明する。なお、本実施形態は図1に示す実施形態と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0028】
図3及び図4に示すスピーカー機能付き建築用パネルは、加振器3が収納凹所2内に完全に収納されるように、加振器3の全体が建築用パネル1の厚み内に収容されるように構成されている。
【0029】
本実施形態の建築用パネル1には、建築用パネル1の後面に各収納凹所2に通じる配線収納溝8が形成されている。配線収納溝8は、建築用パネル1の長手方向に伸びる主溝9と、建築用パネル1の短手方向に伸びる複数の副溝10とで構成されている。
【0030】
主溝9の両端はそれぞれ建築用パネル1の長手方向の端面に至って開口している。また、副溝10は一端が主溝9に連通すると共に他端が収納凹所2に連通している。これにより各収納凹所2は配線収納溝8を介して建築用パネル1の外方に連通している。
【0031】
上記のように構成されたスピーカー機能付き建築用パネルの各加振器3は、収納凹所2内において、建築用パネル1の厚み内に収まるように収納されるため、建築用パネル1から後方へ突出しない。従って、スピーカー機能付き建築用パネルを下地に取り付けるに当たって、建築用パネル1を下地の前面に取り付ける場合には、加振器3が下地に干渉せず、施工性が良いものである。
【0032】
また、配線収納溝8には図3に示すように各加振器3に接続された配線7を収納することができるため、スピーカー機能付き建築用パネルの施工性をさらに向上できる。また、建築用パネル1の後方に配線7を収納するためのスペースを形成する必要がなく、施工の自由度が増す。
【0033】
なお、上述した各実施形態のスピーカー機能付き建築用パネルは、加振器3を2個備えたものであるが、1個又は3個以上の加振器3を備えたものであっても良いものとする。また、加振器3が配される収納凹所の位置や形状、大きさも、出力する音等に応じて適宜変更可能である。また、建築用パネル1の材質は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 建築用パネル
2 収納凹所
3 加振器
4 薄肉部
7 配線
8 配線収納溝
9 主溝
10 副溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が化粧面となる建築用パネルの背面から座ぐり加工をして収納凹所を設けると共に該収納凹所の底部を薄肉部とし、収納凹所内の薄肉部に加振器を設けて成ることを特徴とするスピーカー機能付き建築用パネル。
【請求項2】
前記加振器の全体が建築用パネルの厚み内に配置されて成る請求項1に記載のスピーカー機能付き建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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