説明

スピーカ振動板とそれを用いたスピーカ

【課題】入出力特性の直線性に優れ、高音質な再生が可能なスリム形状のスピーカを実現する。
【解決手段】振動板101の外周には断面が略半円ロール状のエッジ103が形成されている。エッジ103には断面がV字状及びU字状のいずれかになるように形成した溝114をエッジ103の内側から外側までロール表面に沿って複数設ける。前記溝114は振動板101の長軸中心線に対して線対称に配置している。さらに溝114の中心線115の長さはエッジ幅方向のエッジ表面のロール長さ以上としている。このため振動板101の端部102でのエッジ103のスチフネスが小さくなるので、スピーカのf0を高くすることなく、またローリングによる異常振動を起こさずに大振幅可能となり、歪の少ない高音質なスピーカを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ振動板とそれを用いたスピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、所謂ハイビジョンやワイドビジョンテレビ等の普及により、テレビの画面は横長のものが一般的になりつつある。またテレビセット全体として狭幅・薄型のものが望まれている。
【0003】
テレビ用のスピーカは、通常画面の両脇に取り付けられるため、テレビセットの横幅を大きくする一因となっている。そのため、従来からテレビ用には角型や楕円型等の細長構造のスピーカが用いられてきた。また画面の横長化により、スピーカの横幅はますます狭くすることが求められ、これと同時に画面の高画質化に対応した音声の高音質化が要求されている。加えてブラウン管からプラズマディスプレイや液晶ディスプレイを使った薄型テレビが増加しスピーカの薄型化がさらに要求されている。そこで、矩形あるいは楕円形状等の形状を有するスリム型スピーカが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図13は、従来のスリム型スピーカの構造を示す図である。図13(a)は、従来のスリム型スピーカの上面図であり、図13(b)は、従来のスリム型スピーカの平面図である。図13において、スリム型スピーカは、マグネット901と、プレート902と、ヨーク903と、筐体904と、円筒形状のボイスコイル905と、楕円形状の振動板906とを備えている。振動板906は、中央部(振動板906に固着されているボイスコイル905の内側の部分)に、断面が半円形状であるドーム形状部分911を有している。さらに、振動板906は、外周部(図13(a)に示す振動板906における点線より外側の部分)に、断面が半円形状であるエッジ912を有している。振動板906のエッジ912は筐体904によって支持されている。ここで、振動板906は、プレート902とヨーク903との間の磁気ギャップにコイル905が挿入されるように支持されている。
【特許文献1】特開平10−191494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
湾曲部の断面形状が半円状のエッジ912において、長円部終端部近傍はエッジの円周方向の曲率の変化が大きくなるため、直線ロールエッジ部に比べスチフネスが大きくなる。これは振動板906の振動に対して円周方向に伸縮できないためである。このためスピーカの最低共振周波数が高くなり低域を再生することが困難であった。
【0006】
また振動板906の大振幅に追随することが難しく歪が増加するという問題があった。
【0007】
そこで本発明はエッジのスチフネスを小さくし、かつ低歪で再生できるスピーカを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために請求項1の発明は、長形の振動板と、前記振動板の外周部に設けた断面が略半円ロール状のエッジとを備え、前記エッジのロール部には、断面がV字状及びU字状のいずれかになるように形成した溝を、エッジの内側から外側までロール部表面に沿って複数設けるとともに、前記溝は振動板の長軸中心線に対して略線対称に配置したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は長形の振動板と、前記振動板の外周部に設けた断面が略半円ロール状のエッジとを備え、前記エッジのロール部には、断面がV字状及びU字状のいずれかになるように形成した溝を、エッジの内側から外側までロール部表面に沿って複数設けたものであるので、振動板終端部でのエッジの伸縮構造が構成される。また前記溝は振動板の長軸中心線に対して線対称に配置することでその伸縮構造が非対称にならない。また溝を振動板の外周部端に沿って複数形成し、溝の中心線長がエッジ幅方向のエッジロール長さ以上としたことで溝によるスチフネスの増加を防ぐことができる。従ってスピーカのf0を高くすることなく、またローリングによる異常振動を起こさずに大振幅可能となり歪の少ないまた大入力可能な高音質スピーカを提供することができる。
【0010】
また本発明によれば、振動板が長形あるいは長円形状であることで、縦横比が大きいスリムな形状のスピーカを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1から図5を用いて説明する。図1はスピーカの平面図、図2は図1の中心軸a−Aでの断面図、図3は振動板終端部分の拡大平面図である。図4は本発明のエッジの溝の構成を示す図、図5は振動板終端部のエッジの動作を表す断面図である。
【0012】
本実施の形態1のスピーカは、以下のように構成される。図1、図2において、101は長形平板の振動板である。長形平板の振動板101の長手方向の中心軸をa−A、短手方向の中心軸をb−Bとする。その長形平面の振動板101の長手方向の端部102は略半円状に形成されている。その略半円中心軸をc−C、f−Fとする。長形平面の振動板101の外周には断面が略半円ロール状のエッジ103が形成されている。エッジ103の内周部は振動板101に、外周部はフレーム104に固着され、振動板101を振動方向に振動可能となるように支持するものである。振動板101はPEN(ポリエチレンナフタレート)やPI(ポリイミド)の薄いシート材料を一体成型して形成される。また振動板101ならびにエッジ103の材料は、薄い金属や紙布などを用いてもよい。異種材料や一体成形されない場合にはエッジ103は振動板101に接着される。
【0013】
エッジ103は、振動板101の直線部105に沿って形成される断面形状が半円筒ロール状の直線ロール部106と、振動板101の半円状の端部102に沿って形成される半円環状の半円環ロール部107とで形成されるものである。直線ロール部106は振動板101の長手方向の直線部105の両側に2本形成され、半円環ロール部107は図1の左右の端部102にそれぞれ形成される。なお、この半円環ロール部107は、その両側をつなぎ合わせるとほぼ円環状となり、一般のコーン形状のスピーカ振動板に用いられるロールエッジの形状にほぼ等しくなるものを用いている。振動板101の内周部下端にはボイスコイルボビン108が固着され、駆動電流が入力されるボイスコイル109がこのボイスコイルボビン108上に巻線されている。ボイスコイル109はヨーク110とプレート111で形成される磁気ギャップ112に吊り下げられた状態となっている。マグネット113上部にはプレート111、下部にはヨーク110が固着され内磁型磁気回路が形成されている。フレーム104にはエッジ103の端部の固定と磁気回路の固定がなされスピーカが形成されている。
【0014】
前記エッジ103のロール部面上には断面がU字状あるいはV字状に形成された溝114が複数個形成されている。溝114は振動板101の終端側のエッジ内周部からフレーム104に固着される外周部までエッジ103のロール部の表面上に沿って形成されている。溝114の深さはエッジ内周部の開始点から徐々に深くなりエッジ103の頂部で最も深くなり、再びエッジ103外周部端に向かって浅くなる構造である。溝114の中心線115はエッジ103のロール部面に沿って形成されるため断面形状としては略半円ロール状の軌跡となり、振動板101の平面に対しては直線状に投影される。溝114の方向は次のように構成されている。
【0015】
図3において直線ロール部106上に形成される溝114の中心線115と振動板101終端との交点を116とする。溝114は交点116から斜め方向に特定の角度θで構成されている。この傾き角度θは溝114の中心線115の周長がエッジ幅方向(直交方向)でのエッジ表面のロール周長以上となるように設定する。その関係を、図を用いて説明する。図4(a)はエッジ103断面と溝114の角度の関係を表す断面図である。図4(b)は同平面図である。直線ロール部106のエッジロール断面が半円形状でありその構成半径をr1とする。同じく溝114の中心線115の構成半径をr2とする。実際はエッジ終端部では溝は浅くロール頂部では深くなる構造であるが、ここでは簡単化のために溝114の中心線115は直線ロール部106のエッジ断面のロールと同心円状に構成されるものとする。同心円のエッジロール中心を301とする。
【0016】
図4(a)において振動板101と直線ロール部106との交点を116、フレーム側の交点を117とする。直線116−117がエッジ103の幅となる。同様に同心円として考えた場合、溝114の最深部の中心線115と振動板101、フレーム104の交点をそれぞれ302、303とする。溝114の最深部の半径をr2とする。この場合ロール部表面の振動板中心線a−Aに垂直な方向でのロールエッジ周長lrは
lr=(π*r1)
となる。
【0017】
一方振動板101の直線部105に垂直に溝114を設けた場合、中心線115の周長ldは
ld=(π*r2)
である。
【0018】
ここでr1>r2故
溝114の中心線115の周長はロールエッジ周長に比べて短くなる。溝114を垂直に設けた場合、ロール半径が小さくなるために溝114の部分のスチフネスは大きくなる。また周長が短いために最大振幅も小さくなる。
【0019】
本実施形態では溝114の中心線115を直線部105に対してθ度傾けることで、エッジ幅と等しい溝の幅で、スチフネスの増加を防ぎ、最大振幅を同等以上としている。
【0020】
溝114の深さδがエッジのロール半径の10%であると仮定した場合について説明する。すなわちr2=0.9*r1と仮定する。溝114の中心線115を図4(b)のようにθ度傾けそのときの溝中心線の仮想交点302−303間の距離を交点116−117の距離以上になるように構成する。
【0021】
図4(b)から(数1)となる。
【0022】
【数1】

【0023】
溝114の中心線115の傾き角度は直線ロール部106の直線部105に対して立てた垂線に対して25.84度以上となるように配置すれば溝114の中心線115が作る断面とエッジ103のロール部の断面の長さが等しくなる。
【0024】
溝114は直線ロール部106と半円環ロール部107と両方に設けられる。半円環ロール部107のほうが溝114の配置間隔は小さい。これは溝114によってスチフネスを小さく、最大振幅を大きくするためである。
【0025】
半円環ロール部107においても溝114の角度は直線ロール部106と同じように周長をロール周長以上となるように構成する。図3に示したように半円の端部102側の交点118において交点118での接線119に対して溝114の中心線115は傾斜角θ以上のθA(先記直線ロール部106で決定した角度と等しい角度以上)でロール面上に形成される。θAとしたのは直線ロール部106での傾斜角では円周の分長さが短くなるためそれを補償する角度を加えるためである。溝114は直線ロール部106近傍から始まり、複数個が構成され長手方向の中心線a−Aまで同一角度の傾斜角で構成される。振動板の中心線a−Aを過ぎると振動板101の中心線a−Aに対して線対称となるように溝114が形成される。溝114の傾斜角度がθA度であれば中心線をはさんで(180−θA)度で線対称となるように構成され反対側の直線ロール部106に至っている。
【0026】
以上のように構成されたスピーカについて、その動作を説明する。ボイスコイル109に交流電気信号を入力した場合、ボイスコイル109を流れる電流方向および振動板101の振動方向に垂直な磁束に比例するように、駆動力が発生する。この駆動力によりボイスコイル109が接着、結合されている振動板101は振動し、その振動は音として放射される。
【0027】
この振動板101の振動に際しエッジ103の動作を説明する。
【0028】
振動板101の振幅に際してエッジ103はロール形状を変形しながら追随する。直線ロール部106と半円環ロール部107とでは動作が少し異なる。直線ロール部106は半円筒形のためにスチフネスが小さく、ロール形状が変形するのみである。大振幅に対してもエッジの周長に応じて追随する。また、溝114部分は傾けた構造であるために溝114によるスチフネスの増加と振幅量の低下を防ぐことができるものである。さらに、溝114を設けることで直線ロール部106の全長が分断され長さ方向で決まるエッジ103の共振をより高い周波数にすることができる。また後述の半円環ロール部107の円周方向の収縮量の補正を行う役目をも併せ持つものである。一方半円環ロール部107では溝114がない場合は一般のスピーカに用いられるロールエッジと同様の問題を生じる。振幅によるエッジ部の円周方向の収縮がないためにスチフネスが高くなるとともに振幅の直線性が悪くなる。図5は振動板101の端部102におけるエッジ103の振幅の様子を示す断面図である。振動板101が+d、−d振幅したときのエッジ103の軌跡を示す。振動板101の半円の端部102の中心からロール部頂点までの半径をR0とする。振動板101が+d振幅した場合、頂点401はエッジ外周部402へ移動する。その時の振動板101の半円の端部102の中心からロール部頂点までの半径はRd+となる。逆に−d振幅したときは頂部403に移動する。このとき振動板101の半円の端部102の中心からロール部頂点までの半径はRd−となる。ここでRd+>R0>Rd−の関係となる。従って半円環ロール部107の頂部の周長は同様にπRd+>πR0>πRd−となる。このことはエッジ103の振幅にあたり、半円環ロール部107部分にあっては円周方向に長さが変化することが必要であることを示す。しかしながらエッジ103の構成材料はPEN(ポリエチレンナフタレート)やPI(ポリイミド)等高分子材料や布で構成されているため、材料のみの収縮がほとんどなく、大振幅の際にはスチフネスが大きくなり大振幅に追随しなくなる。本実施形態では溝114が半円環ロール部107に設けられているために円周方向の伸縮に際し、溝114の幅が広がるあるいは狭まることで円周方向の伸縮を実現することができる。
【0029】
さらに本実施形態では振動板101長手方向の中心線に対して線対称となるように溝114を配置しているため直線ロール部106の接続点での収縮量が等しくなり振幅が偏ることがなくなるので、ローリング現象が発生しない。例えばこの溝114を直線ロール部106から半円環ロール部107に同一方向に配置した場合について比較する。図6は溝114を中心線a−Aに対して線対称に配置しない場合の平面図を示す。溝114は直線ロール部106と半円環ロール部107の接続部分で一方は外周側501と他方は内周側502と接続することになる。このため収縮を必要としない(収縮しない)直線部と収縮をする円環部での収縮の量で接続部分が異なるために振幅が不均一となる。外周側501で接続する部分では収縮量が不足し反対側では過剰となるためにスチフネスが接続部分で変化するとともに振幅量も異なる。その結果接続部で斜め方向に傾く振動いわゆるローリング現象が発生する。しかしながら本実施形態では中心線a−Aに対して対称に溝114を配置しているため、接続状態が等しくなり、不均一となることを防止するものである。このように本発明はローリングを防ぎスチフネスの低い直線性の良いエッジを構成することができる。
【0030】
なお本実施形態では振動板101の端部102に半円形状を有する形状として説明したが、通常の長方形振動板、図7に示す長形のドーム形状の振動板601や図8に示す長形のコーン型振動板602であっても良い。なお図7、図8において(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0031】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2のスピーカについて、図9を用いて説明する。図9は本発明の実施の形態2を示すスピーカの振動板101とエッジ151の平面図である。
【0032】
本実施の形態のスピーカは、以下のように構成される。図9において、101は振動板である。その振動板101の長手方向の端部102は略半円状に形成されている。振動板101の外周には断面が略半円ロール状のエッジ151が形成されている。エッジ151の内周部は振動板101であり外周部はスピーカフレーム(図示せず)に固着され、振動板101を振動方向に振動可能となるように支持するものである。
【0033】
エッジ151は振動板101の長辺部に沿って形成される半円筒状の直線ロール部152と振動板101の半円状の端部102に沿って形成される半円環状の半円環ロール部153とで形成されるものである。直線ロール部152は振動板101の長手方向の両側にそれぞれ形成されている。半円環ロール部153は両側の端部102にそれぞれ形成されている。半円環ロール部153のエッジ幅は直線ロール部152のエッジ部に比べ接続部から徐々に幅が大きくなり中心線a−Aの部分が最も大きくなる構造である。
【0034】
前記エッジ151のロール面上には断面がU字状あるいはV字状に形成された溝154が複数個形成されている。溝154はエッジ151の内周側からフレームに固着される外周側までロールの表面上に沿って形成されている。溝154の深さは内周部の開始点から徐々に深くなりロールの頂部で最も深くなり再び外周部端に向かって浅くなる構造である。溝154の中心線155はエッジ151のロール面に沿って形成されるため略半円状の軌跡となり振動板101の平面に対しては直線状に投影される。溝154は振動板101との接点から斜め方向に特定の角度を持って構成されている。この傾き角度は実施の形態1と同じく溝154の中心線155が作るロール周長がエッジ表面のロール周長以上となるように設定する。
【0035】
半円環ロール部153においては溝154は複数個構成されている。直線部同様に溝154は傾斜して構成する。その傾斜角は振動板101側の開始点における接線に対して直線ロール部152で決定した角度と等しい角度である。溝154は振動板101の中心線a−Aに対して線対称となるように形成される。溝154の傾斜角度がθ度であれば中心線をはさんで(180−θ)度となるように構成され反対側の直線ロール部152に至る。
【0036】
以上のように構成されたスピーカについて、その動作を説明する。基本的な動作は実施の形態1と同じである。本実施の形態では溝154の伸縮効果に加え、半円環ロール部153の幅を直線ロール部152の幅に比べ広くした構造であるために半円環ロール部153のスチフネスを小さくすることができる。さらに振幅に伴うロールエッジ頂部の移動も少ないために、必要とする円周方向の伸びも相対的に少なく、より大きな振幅が可能となる。
【0037】
なお本実施の形態では振動板101を長方形状として説明したが、図7に示すドーム形状の振動板601や、図8に示すコーン型の振動板602であっても良い。なお、図7、図8において(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0038】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3のスピーカについて、図を用いて説明する。図10は平面図である。
【0039】
本実施の形態3のスピーカの振動系は、以下のように構成される。図10において、701は楕円平板の振動板である。振動板701の外周には断面が略半円ロール状のエッジ702が形成されている。エッジ702の内周部は振動板701であり外周部はスピーカフレームに固着され、振動板701を振動方向に振動可能となるように支持するものである。
【0040】
前記エッジ702のロール面上には断面がU字状あるいはV字状に形成された溝703が複数個形成されている。溝703はロール部の内周側からフレームに固着される外周側までロールの表面上に沿って形成されている。溝703の深さは内周部の開始点から徐々に深くなりロールの頂部で最も深くなり再び外周部端に向かって浅くなる構造である。溝703の中心線704はロール面に沿って形成されるため略半円状の軌跡となる。溝703は振動板701との接点から斜め方向に特定の角度を持って構成されている。この傾き角度は溝の中心線704が作る周長がエッジ表面のロール周長以上となるように設定する。
【0041】
溝703は振動板701の短軸b−Bから長軸a−Aにかけて配置間隔が短くなるように構成されている。したがって溝703は長軸側で密に短軸側で疎になるように構成される。さらに溝703は振動板701の長軸中心線a−Aに対して線対称となるように形成配置される。溝703の傾斜角度がθ度であれば中心線をはさんで(180−θ)度となるように構成され反対側の直線ロールエッジ部に至る。ただし傾斜角θは短径部分に比べ長径部分では補正のため傾斜角は大きくなる。
【0042】
以上のように構成されたスピーカについて、その動作を説明する。基本的な動作は実施の形態1と同じである。しかしながら振動板701が楕円平面形状であるために、振幅に応じて必要なエッジ702の円周方向の伸縮量が場所により異なる。すなわち短軸方向では中心からの距離が短いために同じ断面変化ではその円周方向の長さの変化が少なくなる。
【0043】
図11はその動作を示す断面図で中心線をはさんで右は短軸を、左は長軸方向の断面変形図を示す。ロール形状が同様に変化したとする。振動板701が+d、−d振幅したときのロール頂上部711の軌跡を示す。振動板701の中心からロール部頂点までの半径をそれぞれRs0、Rl0とする。振動板701が+d振幅した場合頂点711はエッジ外周部712へ移動する。その時の振動板701の中心からロール部頂点までの半径はRsd+、Rld+となる。逆に−d振幅したときは頂部713に移動する。このとき振動板701中心からロール部頂点までの半径はRsd−、Rld−となる。ここでRsd+>Rs>Rsd−、Rld+>Rl>Rld−の関係となる。長径と短径の関係からRld+>Rsd+でありRld−>Rsd−である。このことはエッジ702の振幅にあたり円周方向に長さが変化することが必要であり、しかも長軸方向の伸縮量が多いことを示す。そのために短軸近傍では溝703を少なく長軸方向では溝703を多くした構造により必要な円周方向の伸縮量を確保できるものである。
【0044】
以上のように本実施の形態では溝703の配置間隔は長軸側で密に短軸側で疎になるように構成されるために最適な伸縮量が確保でき、楕円環状のエッジ702のスチフネスを高くすることなく、大きな振幅が可能となる。
【0045】
なお本実施の形態では振動板701を平面形状として説明したが、図7に示すドーム形状の振動板601や図8に示すコーン型の振動板602であっても良い。なお、図7、図8において(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0046】
また図12に示す長軸方向の幅を短軸方向に比べ広くしたエッジ721とすることで実施の形態2で示した効果を併せ持つ構造としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、縦横比が大きいスリムな形状のスピーカを実現でき、各種電子機器の小型、スリム化にも貢献するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1におけるスピーカの平面図
【図2】本発明の実施の形態1におけるスピーカの断面図
【図3】実施の形態1における一部拡大平面図
【図4】実施の形態1における溝の傾斜角を表す図
【図5】実施の形態1におけるエッジ振幅とエッジ頂部の移動を表す断面図
【図6】本発明の実施の形態1における溝の方向を説明する振動系の平面図
【図7】本発明の実施の形態1における振動板の他の形状を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における振動板のさらに他の形状を示す図
【図9】本発明の実施の形態2における振動系の平面図
【図10】本発明の実施の形態3における振動系の平面図
【図11】実施の形態3におけるエッジ振幅とエッジ頂部の移動を表す断面図
【図12】本発明の実施の形態3における振動板の他の形状を示す図
【図13】従来例におけるスピーカを示す図
【符号の説明】
【0049】
101 振動板
102 端部
103、151 エッジ
104 フレーム
105 直線部
106、152 直線ロール部
107、153 半円環ロール部
108 ボイスコイルボビン
109 ボイスコイル
110 ヨーク
111 プレート
112 磁気ギャップ
113 マグネット
114、154 溝
115、155 中心線
601、602 振動板
701 振動板
702、721 エッジ
703 溝
704 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長形の振動板と、
前記振動板の外周部に設けた断面が略半円ロール状のエッジとを備え、
前記エッジのロール部には、断面がV字状及びU字状のいずれかになるように形成した溝を、エッジの内側から外側までロール部表面に沿って複数設けるとともに、前記溝は振動板の長軸中心線に対して略線対称に配置したことを特徴とするスピーカ振動板。
【請求項2】
前記振動板は長手方向側端部が略半円形状であることを特徴とする請求項1記載のスピーカ振動板。
【請求項3】
前記溝は振動板の外周部端に沿って複数形成し、溝の中心線長がエッジ幅方向のロール長さ以上としたことを特徴とする請求項1記載のスピーカ振動板。
【請求項4】
前記エッジの幅は長軸中心線方向に大きくしたことを特徴とする請求項1記載のスピーカ振動板。
【請求項5】
長円形の振動板と、
前記振動板の外周部に設けた断面が略半円ロール状のエッジとを備え、
前記エッジのロール部には断面がV字状及びU字状のいずれかになるように形成した溝を、エッジの内側から外側までロール部表面に沿って複数設けるとともに、前記溝は振動板の長軸中心線に対して略線対称に配置したことを特徴とするスピーカ振動板。
【請求項6】
前記溝は振動板の外周部端に沿って複数形成し、溝の中心線長がエッジ幅方向のロール長さ以上としたことを特徴とする請求項5記載のスピーカ振動板。
【請求項7】
前記溝は振動板短軸中心線から振動板長軸中心線方向に配置間隔を短くしたことを特徴とする請求項5記載のスピーカ振動板。
【請求項8】
前記エッジの幅は短軸方向に比べ長軸方向に大きくしたことを特徴とする請求項5記載のスピーカ振動板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のスピーカ振動板にボイスコイルを結合したスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−282012(P2007−282012A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107372(P2006−107372)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】