説明

スピーカ装置

【課題】設置が容易であり、エンクロージャの振動すなわちスピーカの遥動振幅をより小さくするスピーカ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、スピーカユニット110と前記スピーカユニット110を収容するエンクロージャ120とを有するスピーカ100および前記スピーカ100を略水平方向に放音するように支持するスピーカスタンド500を備えるスピーカ装置10であって、前記スピーカスタンド500は、前記スピーカ100の軸上後方を前記エンクロージャの外殻面にて支持するスタンド部512を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカの低音再生能力は、振動板が動かすことのできる空気の体積に依存することが知られている。通常、低音の再生能力を向上させる場合、動かす空気の体積を増加させるために振動板の径を大きくする場合が多い。振動させる空気の体積を大きくすると、振動に伴って発生する反力が大きくなる。また、音量を上げると振動板の振幅を大きくする必要があるため、さらに反力が大きくなる。
【0003】
スピーカユニットはフレームによってエンクロージャ内部に収納されるため、再生音に伴って発生する反力は振動板を保持するフレームを介してエンクロージャに伝搬する。また、振動板の振動はエンクロージャ内部の空気も同時に振動させるため、エンクロージャに振動が伝搬する。エンクロージャの振動は不要音の原因となり、再生音に重畳して聴衆に伝わることとなり、音質劣化の原因となる。また、スピーカの軸方向の振動は、スピーカユニットを軸方向に遥動させるため、再生音の位相を変化させる原因となっている。そのため、スピーカの遥動およびエンクロージャの振動を抑えることが求められている。
【0004】
特許文献1には、スピーカユニットが取り付けられるエンクロージャの少なくとも2つの相対する板体に、エンクロージャの外側から圧縮力を加えるように支持されたスピーカが公開されている。このように構成されたスピーカによれば、エンクロージャの剛性が高くなることと等価になり、より重量が大きく且つ剛性が高いエンクロージャを採用した場合と同様に振動特性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−7778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスピーカシステムでは、スピーカシステムの前後方向の遥動に対しては、床面と天井、壁同士もしくは床と壁を利用して圧縮力をかけなければならない。そのため、スピーカを設置する際に大掛かりな工事が必要であったり、設置後の移動が困難であったりするという問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、設置が容易であり、かつエンクロージャの振動、すなわちスピーカの遥動振幅をより小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るスピーカ装置は、スピーカユニットと前記スピーカユニットを収容するエンクロージャとを有するスピーカおよび前記スピーカを略水平方向に放音するように支持するスピーカスタンドを備えるスピーカ装置であって、前記スピーカスタンドは、前記スピーカの軸上後方を前記エンクロージャの外殻面にて支持するスタンド部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスピーカ装置によれば、設置が容易であり、かつスピーカの遥動振幅およびエンクロージャの振動をより小さくすることができる。したがって、不要音を除去することができると共に、再生音の位相を変化させることなく聴衆に届けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るスピーカ装置の縦断面図である。
【図2】第2の実施形態に係るスピーカ装置の縦断面図である。
【図3】第3の実施形態に係るスピーカ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に係るスピーカ装置の構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るスピーカ装置の縦断面図である。なお、以下に説明する各図では、スピーカ装置の前方を矢印Frで示し、後方を矢印Rrで示す。
図1に示すように、スピーカ装置10は、第一のスピーカ100と、スピーカスタンド500とを備えている。第一のスピーカ100は、第一のスピーカユニット110と、第一のエンクロージャ120とを備えている。
第一のスピーカユニット110は、振動板111、磁気回路112、フレーム113、ヨーク114、ボイスコイルボビン115、ボイスコイル(不図示)、エッジ116、ダンパー117を含んで構成されている。
【0013】
ボイスコイルボビン115は、円筒形状であって、その周面にボイスコイルが巻かれている。ボイスコイルボビン115は、ダンパー117を介してフレーム113に固定される。ボイスコイルボビン115の前面部には、振動板111が接着されている。振動板111は、エッジ116を介してフレーム113に固定される。
磁気回路112は、ボイスコイル上で磁束密度が最大となるように、フレーム113とヨーク114とにより挟持される。ボイスコイルに入力される電気信号は、電気機械変換され、ボイスコイルボビン115および振動板111を振動させる。
【0014】
この第一のスピーカユニット110は、振動板111が第一のエンクロージャ120に形成された開口部に対向するように、第一のエンクロージャ120の内部に設置される。
第一のエンクロージャ120は、全体が略球体、すなわち外殻面が略球面で形成され、上述した第一のスピーカユニット110が収容できるように構成されている。第一のエンクロージャ120の前方は、球体を切り欠かれた態様で上述した開口部が形成され、第一のエンクロージャ120の後方は、外殻面が略円錐曲面に形成されている。
【0015】
一方、スピーカスタンド500は、床に第一のスピーカ100を設置するためのベース部520と、ベース部520から第一のスピーカ100を所定の高さに維持するスタンド部510とを備えている。
スタンド部510は、第一のスタンド511、第二のスタンド512を含んで構成されている。
【0016】
第一のスタンド511は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて第一のスピーカ100の重心位置下側を支持する。第二のスタンド512は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて第一のスピーカ100の軸上後方を支持する。すなわち、図1に示すように、第二のスタンド512が第一のエンクロージャ120を支持する位置は、第一のスピーカ100の重心位置を通る軸線Lを後方に延長させて第一のエンクロージャ120の外殻面と交差した位置である。
したがって、スピーカスタンド500は、スピーカ100が略水平方向、すなわちスピーカ100の重心位置を通る軸線Lの前方に放音できるように支持している。
【0017】
このように構成されたスピーカ装置10では、振動板111によって音を発生させるときの空気からの反力によるフレーム113の振動および第一のエンクロージャ120の内部空気の振動に起因して、第一のスピーカ100の軸方向に揺動が発生してしまう。しかし、スタンド部510の第二のスタンド512が、第一のエンクロージャ120の外殻面にて第一のスピーカ100の軸上後方を支持しているので、第一のスピーカ100に発生する遥動を効果的に抑えることができ、不要音を除去することができる。特に、第一のスピーカ100の軸方向の揺動を抑えることができるので、第一のエンクロージャ120の再生音の位相を変化させることなく聴衆に届けることができる。
【0018】
また、上述したスピーカ装置10では、第一のエンクロージャ120の外殻面が略球面で形成されているので、第一のエンクロージャ120の強度が増し、不要な振動を抑制することができる。したがって、第一のエンクロージャ120によって不要な音が発生することなく再生音質が向上される。また、スピーカユニット110から発生する再生音が不要に反射や回折することを防ぎ、再生音の質を向上させることができる。
【0019】
また、上述したスピーカ装置10では、第一のエンクロージャ120の後方の外殻面が略円錐曲面に形成されていることから、聴衆から見える第一のエンクロージャ120の外径を大きくすることなく第一のエンクロージャ120の容積を増やすことが可能となる。したがって、聴衆に視覚的圧力を与えることなく再生音の質を向上させることができる。
また、上述したスピーカ装置10では、スピーカ装置10を設置する際に大掛かりな工事が必要なく、設置後の移動が容易である。
【0020】
なお、本実施形態ではダイナミック型のスピーカユニットを採用しているが、これに限るものでなくコンデンサー型や圧電型等、他の駆動方式によるスピーカユニットを使用したものでもよい。
また、ベース部520は床に設置する形態となっているが、この構成に限定されるものではなく、天井に設置してもよい。
また、第一のスタンド511は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて第一のスピーカ100を支持する場合について説明したが、第一のスピーカ100の重心鉛直方向の外殻面であればどのような位置を支持してもよい。
【0021】
<第2の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一符号を付して、その説明を省略する。
図2は、本実施形態に係るスピーカ装置20の縦断面図である。図2(a)は、スピーカ装置20の全体の構成を示す図である。図2(b)は、スピーカ装置20の前方を拡大した図である。
【0022】
図2(a)および図2(b)に示すように、スピーカ装置20は、第一のスピーカ100、第二のスピーカ200および第三のスピーカ300が全て同軸上に配置された同軸スピーカ400として構成されている。
第一のスピーカ100は、第1の実施形態と同一であるため、その詳細は省略する。
【0023】
次に、図2(b)を参照して、第二のスピーカ200および第三のスピーカ300について説明する。
第二のスピーカ200は、第二のスピーカユニット210と、第二のエンクロージャ220とを備えている。第二のスピーカ200は、第一のスピーカユニット110のフレーム113と第一のエンクロージャ120との接合部から振動板111を覆うように配設された支持部材410によって、第一のスピーカ100と同軸上になるように支持されている。支持部材410には、第二のスピーカ200の外周部に開口部411が形成されている。第一のスピーカ100からの再生音は、この開口部411を通過して聴衆に届けられる。
【0024】
第二のスピーカユニット210に備えられている振動板は、第二のスピーカユニット210の軸を中心とした円環形状となっており、軸方向に振動することにより前方に再生音を放出する。
第三のスピーカ300は、第三のスピーカユニット310と、第三のエンクロージャ320とを備えている。第三のスピーカ300は、第二のスピーカユニット210の振動板の円環中央部に配設され、第三のスピーカユニット310の振動板が軸方向に振動することによって前方に再生音を放出する。
【0025】
第二のスピーカユニット210と第三のスピーカユニット310とは、磁気回路、フレーム、ヨーク、ボイスコイルボビン、エッジおよびダンパーを第一のスピーカユニット110と同様に備えているが、その詳細は省略する。
このように構成された同軸スピーカ400では、各スピーカユニットが、それぞれの振動板を同じ軸方向に振動するので、その反力も同軸方向に重畳される。
【0026】
一方、スタンド部510は、第一のスタンド511、第二のスタンド512を含んで構成されている。
第一のスタンド511は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて同軸スピーカ400の重心位置下側を支持する。第二のスタンド512は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて同軸スピーカ400の軸上後方を支持する。すなわち、図2に示すように、第二のスタンド512が第一のエンクロージャ120を支持する位置は、同軸スピーカ400の重心位置を通る軸線Lを後方に延長させて第一のエンクロージャ120の外殻面と交差した位置である。
【0027】
このように構成されたスピーカ装置20では、第二のスタンド512が、同軸スピーカ400を構成する複数のスピーカの重畳された軸方向の振動を効率的に抑えることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、3つのスピーカを使用した同軸スピーカ400について説明したが、これに限定されるものでなく、複数のスピーカを使用した同軸スピーカであればどのようなものであってもよい。
また、本実施形態の同軸スピーカ400は、第二のスピーカ200を支持部材410によって支持したが、第一のスピーカユニット110に円環状の振動板を用い、その中心部に第二のスピーカを配置してもよい。
また、支持部材410をフレーム113と第一のエンクロージャ120との接合部に配置したが、この構成に限定するものではなく、フレーム113もしくは第一のエンクロージャ120に配置してもよい。
また、第一のスタンド511は、第一のエンクロージャ120の外殻面にて同軸スピーカ400を支持する場合について説明したが、同軸スピーカ400の重心鉛直方向の外殻面であればどのような位置を支持してもよい。
【0029】
<第3の実施形態>
本実施形態では、第2の実施形態と同一の構成要素については、同一符合を付して、その説明を省略する。
図3は、本実施形態に係るスピーカ装置30の縦断面図である。
【0030】
図3に示すように、スピーカ装置30は、同軸スピーカ400と第一のスタンド511との間および同軸スピーカ400と第二のスタンド512との間に、振動吸収部材600が設けられている。すなわち、第一のスタンド511は、同軸スピーカ400の重心位置下側を、振動吸収部材600を介して支持する。また、第二のスタンド512は、同軸スピーカ400の重心位置の軸上後方部を、振動吸収部材600を介して支持する。
このように構成されたスピーカ装置30では、振動吸収部材600が同軸スピーカ400で発生した振動を吸収することで、振動を効果的に抑えることができる。
【0031】
また、同軸スピーカ400と第二のスタンド512との間に設けられた振動吸収部材600は、同軸スピーカ400を構成する複数のスピーカの重畳された軸方向の振動をより吸収し、振動する周波数を分散させることができる。
また、各振動吸収部材600は、音を再生しているときの振動に加え、移動や輸送時等の振動や衝撃から同軸スピーカ400を保護することができる。
【0032】
なお、本実施形態では同軸スピーカ400と第一のスタンド511との間および同軸スピーカ400と第二のスタンド512との間に、振動吸収部材600を設ける場合について説明したが、この場合に限られない。すなわち、同軸スピーカ400と第一のスタンド511との間および同軸スピーカ400と第二のスタンド512との間の少なくとも何れか一方に、振動吸収部材600を設ければよい。
【符号の説明】
【0033】
100:第一のスピーカ 110:第一のスピーカユニット 111:振動板
112:磁気回路 113:フレーム 114:ヨーク
115:ボイスコイルボビン 116:エッジ 117:ダンパー
120:第一のエンクロージャ 200:第二のスピーカ 300:第三のスピーカ
400:同軸スピーカ 410:支持部材 500:スピーカスタンド
510:スタンド部 511:第一のスタンド 512:第二のスタンド
520:ベース部 600:振動吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットと前記スピーカユニットを収容するエンクロージャとを有するスピーカおよび前記スピーカを略水平方向に放音するように支持するスピーカスタンドを備えるスピーカ装置であって、
前記スピーカスタンドは、前記スピーカの軸上後方を前記エンクロージャの外殻面にて支持するスタンド部を有することを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記スタンド部は、
前記スピーカの重心位置を通る鉛直方向を前記エンクロージャの外殻面にて支持する第一のスタンドと、
前記スピーカの軸上後方を前記エンクロージャの外殻面にて支持する第二のスタンドと、を有することを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記スピーカは、同軸上に複数のスピーカを有する同軸スピーカであることを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記エンクロージャの外殻面が略球面であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記エンクロージャの後方の外殻面が略円錐曲面であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記エンクロージャと前記スタンド部との間に振動を吸収する振動吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記エンクロージャと前記第一のスタンドとの間および前記エンクロージャと前記第二のスタンドとの間の少なくとも何れか一方に、振動を吸収する振動吸収部材を設けたことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−77681(P2011−77681A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225051(P2009−225051)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】