説明

スピーカ装置

【課題】スピーカから放音される音声の音質の低下を抑えて、装置本体の小型化を図るとともに、十分なコストダウンを図ることができるスピーカ装置を提供する。
【解決手段】スピーカ装置1は、スピーカ2、および制御基板6をエンクロージャー10内の同一空間に収納している。制御基板6は、エンクロージャー10の背面パネル側に位置する端部に、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5を取り付けている。電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5は、接続面側が制御基板6の外側に突出している。電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5がエンクロージャー10の背面パネルに形成している孔に対向している。さらに、弾性部材8が電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5と、背面パネルの孔との隙間を塞いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接続されている外部機器から入力された音声信号に応じた音声を放音するスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカ装置は、スピーカを収納する空間と、このスピーカの駆動を制御する制御基板を収納する空間と、をわけていた(特許文献1〜4等参照)。
【0003】
また、特許文献1等に記載されているように、スピーカに接続したリード線は、このスピーカを収納した空間から外部に引き出されている。このリード線は、スピーカとは別の空間に収納している制御基板に接続される。
【0004】
また、制御基板には、電源ラインや音声信号ライン等を接続するコネクタが設けられている。制御基板は、コネクタに接続されている電源ラインによって供給される動作電源によって動作し、接続されている音声信号ラインによって入力される音声信号に応じて、スピーカを駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−38393号公報
【特許文献2】特開平7−298168号公報
【特許文献3】特開2005−203896号公報
【特許文献4】特開2006−50167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスピーカ装置は、間仕切り部材を用いて、スピーカを収納する空間と、制御基板を収納する空間と、を間仕切りしている。このため、間仕切り部材を取り付けるスペースが必要になるだけでなく、両空間において、無駄な空き空間が生じるので、このことが装置本体の小型化を妨げていた。
【0007】
また、従来のスピーカ装置は、間仕切り部材が必要であるので、部品点数が多く、これにともなって組み立てにかかる工数も多い。このことが、スピーカ装置本体の十分なコストダウンを妨げていた。
【0008】
この発明の目的は、スピーカから放音される音声の音質の低下を抑えて、装置本体の小型化を図るとともに、十分なコストダウンを図ることができるスピーカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のスピーカ装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0010】
このスピーカ装置では、エンクロージャーが、音声を放音するスピーカと、このスピーカの駆動を制御する制御基板と、を同一空間に収納している。制御基板は、外部接続用コネクタを設けている。この外部接続用コネクタは、電源ラインや音声信号ライン等を接続するコネクタである。また、エンクロージャーは、制御基板を収納位置に取り付けたときに、この制御基板に設けている外部接続用コネクタを外部に露出させる開口部を形成している。さらに、エンクロージャーのスピーカ、および制御基板を収納する側に、外部接続用コネクタと、開口部との隙間を塞ぐ弾性部材を備えている。弾性部材は、例えばシリコンゴムである。
【0011】
したがって、制御基板を収納しているエンクロージャーの外部から、この制御基板に対する電源ラインや音声信号ライン等の接続が簡単に行える。また、エンクロージャーは、スピーカ、および制御基板を同一空間に収納する構成であるので、従来、スピーカを収納する空間と、制御基板を収納する空間と、を間仕切りに用いていた間仕切り部材を必要としない。これにより、スピーカ装置本体の小型化、およびコストダウンが図れる。また、弾性部材が、外部接続用コネクタと開口部との隙間を塞ぎ、この隙間における、外部への空気漏れを抑える。
【0012】
例えば、弾性部材は、外部接続用コネクタを嵌挿する貫通口を有する構成にする。そして、この弾性部材は、スピーカ、および制御基板を収納している空間に配置し、外部接続用コネクタを弾性部材の貫通口に嵌挿し、さらにエンクロージャーに形成している開口部から外部に露出させればよい。
【0013】
また、制御基板を、外部接続用コネクタを基板表面端部に立設する壁面部材に取り付けた構成にしてもよい。この場合、弾性部材は、壁面部材と、前記開口部を形成しているエンクロージャーの周面と、によって挟持されるので、外部への空気漏れが一層抑えられる。
【0014】
このようにして、外部接続用コネクタと開口部との隙間における、外部への空気漏れを抑えることにより、スピーカから放音される音声の音質が低下するのを抑えられる。
【0015】
弾性部材は、外部接続用コネクタを嵌挿する貫通口を複数形成してもよい。このように構成すれば、電源ラインや音声信号ライン等、接続ライン毎に外部接続用コネクタを設けた構成であっても、複数の外部接続用コネクタについて、対応する開口部との隙間を1つの弾性部材で塞ぐことができる。また、弾性部材は、複数の外部接続用コネクタが嵌挿された状態で保持されるので、によって、いずれかの外部接続用コネクタを軸に回転することがなく、位置ズレが抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、制御基板を収納しているエンクロージャーの外部から、この制御基板に対する電源ラインや音声信号ライン等の接続が簡単に行える。また、スピーカから放音される音声の音質の低下を抑え、スピーカ装置本体の小型化、およびコストダウンが図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】スピーカ装置の正面図、および背面図である。
【図2】スピーカ装置の内部構造を示す概略図である。
【図3】スピーカ装置の内部構造を示す概略図である。
【図4】制御基板に取り付けたアングルにおける電源ライン接続用コネクタ、および音声信号ライン接続用コネクタの取り付け状態を示す概略図である。
【図5】弾性部材を示す概略図である。
【図6】別の例にかかる弾性部材を示す概略図である。
【図7】別の例にかかるスピーカ装置の正面図、および背面図である。
【図8】別の例にかかるスピーカ装置の内部構造を示す概略図である。
【図9】別の例にかかるスピーカ装置の内部構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態であるスピーカ装置について説明する。
【0019】
図1は、この実施形態にかかるスピーカ装置の正面図、および背面図である。図1(A)が正面図であり、図1(B)が背面図である。このスピーカ装置1は、エンクロージャー10(筐体)が直方体形状である。
【0020】
スピーカ装置1は、図1(A)に示すように、エンクロージャー10の前面パネル11側にスピーカ2を取り付けている。エンクロージャー10の前面パネル11は、スピーカ2の放音面が対向する位置に開口部を形成している。この開口部には、編み目状に組んだネット部材や、複数の孔を形成した板部材が取り付けられている。このネット部材や、板部材は、樹脂加工部品であってもよいし、金属加工部品であってもよい。また、エンクロージャー10の前面パネル11には、音量を調整するダイヤル式の操作ツマミ3が取り付けられている。この操作ツマミ3は、後述する制御基板に電気的に接続している。
【0021】
また、スピーカ装置1は、図1(B)に示すように、エンクロージャー10の背面パネル12側に電源ラインを接続する電源ライン接続用コネクタ4や、音声信号ラインを接続する音声信号ライン接続用コネクタ5を露出させている。エンクロージャー10の背面パネル12は、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5が対向する位置に孔(この発明で言う開口部)を形成し、この孔を通して電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5を露出させている。電源ライン接続用コネクタ4や、音声信号ライン接続用コネクタ5は、後述する制御基板に取り付けている。電源ライン接続用コネクタ4や、音声信号ライン接続用コネクタ5が、この発明で言う外部接続用コネクタに相当する。
【0022】
図2は、スピーカ装置の内部構造を示す概略図である。図2(A)が側面図であり、図2(B)が上面図である。また、図3は、図2(A)において破線で囲んだ部分の拡大図である。図2では、左側がスピーカ装置1の正面側(前面パネル11側)である。このスピーカ装置1は、図2に示すように、スピーカ2、および制御基板6をエンクロージャー10に収納している。エンクロージャー10は、スピーカ2、および制御基板6を同一空間に収納している。すなわち、エンクロージャー10は、スピーカ2を収納する空間と、制御基板6を収納する空間とを、仕切り板等の間仕切り部材で間仕切りしていない構成である。
【0023】
制御基板6は、エンクロージャー10内に設けたシャーシに取り付け、固定している。制御基板6は、エンクロージャー10の背面パネル12側に位置する端部にL字型のアングル6aを取り付けている。このアングル6aには、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5を取り付けている。電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5は、図4に示すように、接続面側がアングル6aの外側(制御基板6の外側)に突出している。このアングル6aが、この発明で言う壁面部材に相当する。
【0024】
スペーサ7は、エンクロージャー10内のシャーシに取り付ける制御基板6の高さを調整する部材である。具体的には、このスペーサ7を用いて、制御基板6のアングル6aに取り付けている電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5がエンクロージャー10の背面パネルに形成している孔に対向する位置に合わせている。
【0025】
なお、特に図示していないが、制御基板6は、抵抗、コンデンサ、DSP等、電源回路や制御回路を構成する回路素子を実装している。また、前面パネル11に取り付けているスピーカ2、および操作ツマミ3は、エンクロージャー10内で制御基板6に電気的に接続している。また、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5も制御基板6に電気的に接続している。
【0026】
さらに、アングル6aと、エンクロージャー10の背面パネル12との間に弾性部材8を設けている。この弾性部材8は、例えば硬度が40度のシリコンゴムである。この弾性部材8は、外部に露出させた電源ライン接続用コネクタ4や音声信号ライン接続用コネクタ5と、これらのコネクタに対応するエンクロージャー10の背面パネル12の孔と、の間にできる隙間を塞ぎ、エンクロージャー10内を密閉するための密閉用ラバーとして機能する。
【0027】
図5は、弾性部材を示す概略図である。弾性部材8は、図5に示すように、その形状が板状であり、電源ライン接続用コネクタ4および音声信号ライン接続用コネクタ5のそれぞれについて、その外形よりも少し小さい貫通口8a、8bを形成している。したがって、電源ライン接続用コネクタ4および音声信号ライン接続用コネクタ5は、貫通口8a、8bに嵌挿すると、その外周面が貫通口8a、8bの周面に密着する。
【0028】
また、この弾性部材8の厚みは、エンクロージャー10内に固定した制御基板6に取り付けているアングル6aと、エンクロージャー10の背面パネルとの隙間よりも少し大きい。上述したように、弾性部材8は、アングル6aと背面パネルとの間に配置する。したがって、弾性部材8は、アングル6aと背面パネルとによって、両側から面で押圧され挟持される。
【0029】
また、エンクロージャー10の背面パネル12は、弾性部材8を保持するリブ12aを形成している。リブ12aは、弾性部材8の上端部が当接する位置、および下端部が当接する位置にそれぞれ形成しており、弾性部材8が上下方向に移動するのを規制する。
【0030】
なお、リブ12aは、弾性部材8の移動を規制する位置に配置していればよく、弾性部材8の上端部が当接する位置、または下端部が当接する位置の一方のみでもよく、また、弾性部材8の周囲を囲むように形成してあってもよい。
【0031】
また、弾性部材8は、上述したように、電源ライン接続用コネクタ4および音声信号ライン接続用コネクタ5の2つのコネクタを嵌挿しているので、これらのコネクタの嵌挿方向を軸とした回転も規制される。
【0032】
このスピーカ装置1は、電源ライン接続用コネクタ4に接続された電源ラインが供給する電源によって、スピーカ2や制御基板6を駆動するための電力を得る。また、制御基板6は、音声信号ライン接続用コネクタ5に接続された音声信号ラインで入力されている音声信号に基づきスピーカ2の駆動を制御し、入力されている音声信号に応じた音声をスピーカ2から放音する。
【0033】
スピーカ装置1は、上述したように、スピーカ2、および制御基板6をエンクロージャー10の同一空間に収納する構成であるので、エンクロージャー10内の空間が効率的に利用でき、スピーカ装置1本体の小型化が図れる。また、従来のようにスピーカ2を収納する空間と、制御基板6を収納する空間との間仕切りに用いていた間仕切り部材を必要としない。したがって、スピーカ装置1本体の部品点数を減少させることができ、また、これにともないスピーカ装置1本体の組み立て工数も減少できる。したがって、スピーカ装置1本体の十分なコストダウンが図れる。
【0034】
また、電源ライン接続用コネクタ4および音声信号ライン接続用コネクタ5は、エンクロージャー10の背面パネル12に露出しているので、電源ラインの接続や音声信号ラインの接続が簡単に行えるので、操作性を低下させることもない。
【0035】
また、弾性部材8が、外部に露出させた電源ライン接続用コネクタ4や音声信号ライン接続用コネクタ5と、これらのコネクタに対応するエンクロージャー10の背面パネル12の孔と、の間にできる隙間を塞いでいる。したがって、スピーカ2、および制御基板6を収納している空間からの、外部への空気漏れが抑えられるので、スピーカ2から放音される音声の音質の低下が抑えられる。
【0036】
なお、上記例のスピーカ装置1は、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5に対して、1つの弾性部材8を設ける構成としたが、弾性部材8を個別に設ける構成にしてもよい。また、電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5は、エンクロージャー10の背面パネル12に限らず、前面パネル11や、側面パネル等、他の場所に露出させる構成であってもよい。また、露出させるコネクタも、上述の2つ(電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5)に限らず、1つであってもよいし、USBコネクタ等を含めた3つ以上であってもよい。
【0037】
また、弾性部材8は、図6に示すように、アングル6aの周囲を囲む縁部を有する形状にしてもよい。図6(A)は、この例にかかる弾性部材を示す概略の斜視図であり、図6(B)は、この例にかかる弾性部材の取り付け状態を示す概略図である。
【0038】
また、スピーカ装置1は、上述の直方体形状に限らず、図7に示すような8角錐台形状であってもよい。また、スピーカ装置1が備えるスピーカ2も1つに限らず、複数であってもよい。
【0039】
さらに、上記の例では、外部接続用コネクタである電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5は、アングル6aに取り付けているとしたが、図8、や図9に示すように制御基板6に実装した構成であってもよい。図8(A)、および図9(A)は、エンクロージャー10内における制御基板6の収納状態を示す図である。また、図8(A)、および図9(A)は、背面パネル12(リブ12a)や弾性部材8等の配置を示す分解図である。
【0040】
図8、および図9では、外部接続用コネクタとして、上述の電源ライン接続用コネクタ4、および音声信号ライン接続用コネクタ5に加えてファームウェアのアップデートに用いるファームアップデート用コネクタ20を示している。また、図8は、これらの外部接続用コネクタに対する弾性部材8が1つである。一方、図9は、電源ライン接続用コネクタ4、およびファームアップデート用コネクタ20に対する弾性部材8と、音声信号ライン接続用コネクタ5に対する弾性部材8と、をわけた構成である。また、図8、および図9中で示す8cは、弾性部材8に設けた、ファームアップデート用コネクタ20を嵌挿する貫通口である。
【符号の説明】
【0041】
1…スピーカ装置、2…スピーカ、3…操作ツマミ、4…電源ライン接続用コネクタ、5…音声信号ライン接続用コネクタ、6…制御基板、6a…アングル、7…スペーサ、8…弾性部材、8a、8b、8c…貫通口、10…エンクロージャー、11…前面パネル、12…背面パネル、12a…リブ、20…ファームアップデート用コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を放音するスピーカと、
前記スピーカの駆動を制御する制御基板と、
前記スピーカ、および前記制御基板を同一空間に収納するエンクロージャーと、を備え、
前記エンクロージャーは、前記制御基板を収納位置に取り付けたときに、この制御基板に設けている外部接続用コネクタを外部に露出させる開口部を形成し、
さらに、前記エンクロージャーの前記スピーカ、および前記制御基板を収納する側に、前記外部接続用コネクタと、前記開口部との隙間を塞ぐ弾性部材を備える、スピーカ装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記外部接続用コネクタを嵌挿する前記貫通口を有し、前記スピーカ、および前記制御基板を収納している空間に位置する、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記外部接続用コネクタを嵌挿する前記貫通口を複数形成している、請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記制御基板は、前記外部接続用コネクタを基板表面端部に立設する壁面部材に取り付けている、請求項2、または3に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記エンクロージャーは、前記制御基板に設けている前記外部接続用コネクタを外部に露出させる開口部周辺に、前記弾性部材の周囲を囲むリブを形成している、請求項2〜4のいずれかに記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−81115(P2013−81115A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220660(P2011−220660)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】