説明

スプライス部の検査部形成方法

【課題】 絶縁シートが電線のスプライス部の幅方向の許容公差内に取り付けられているか否かを外観から明確な基準で検査できるようにすることを課題としている。
【解決手段】 スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右両端にマーキング冶具を設け、電線の外周面に着色塗料の塗布あるいは着色テープを巻き付けてマーキングをし、前記左右のマーキング位置に挟まれた前記スプライス位置を含む領域に絶縁シートを巻き付けて、前記絶縁シートが前記スプライス部に許容公差内に巻きつけられているかを前記マーキングを外観できることで検査可としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線のスプライス部の検査部形成方法に関し、特に、スプライス部に巻き付けられた絶縁シートがスプライス部の幅方向の許容範囲に取り付けられているかどうかを外観から検査できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電線のスプライス部は、図9(A)に示すように、電線1の絶縁被覆を皮剥ぎして露出させた複数の芯線1aを束ねて、中間圧着端子2で圧着し、回路の分岐接続を行う場合が多い。このスプライス部では、芯線1aが露出しているため、図9(B)のように絶縁シート3を巻き付けて絶縁処理を施している。上記スプライス部に巻き付ける絶縁シート3としては、通常、黒色などの濃い色の不透明な塩化ビニールシートが用いられている。 しかし、このような不透明な絶縁シートがスプライス部に巻き付けられると、スプライス部が外観できなくなり、絶縁シートとスプライス部の中心位置同士が一致しているか否かを目視することができない。
【0003】
このため、作業員が、絶縁シートの中心位置をスプライス部の中心から間違えてずらせて巻き付けても、巻き付けた後は作業者や検査員は外観から検査できないので、そのまま不良品が市場に流れてしまう恐れがある。このように、絶縁シートがスプライス部の中心からずれて巻き付けられていると、スプライス部が露出し易くなり、確実な絶縁が図れないという問題が発生する。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1(特開平8−306406号公報)では、図10に示すように、絶縁シート3を半透明なシートとし、スプライス部に巻き付けている。この技術によると、絶縁シート3が半透明であるため、絶縁シートを巻き付けた後でスプライス部が目視できるため、絶縁シートがずれて巻き付けられているのを見つけることができる。
【0005】
しかしながら、上記方法においては、絶縁シートのスプライス部の中心からのずれがどの程度か、また、そのずれが許容範囲であるか否かは不明となり、検査基準を明確化出来ない。このため、各作業者や検査員は、絶縁シートのずれの合格・不合格を各自の勘に頼らざるを得ず、品質が安定しないという問題が残る。
【0006】
近年、パートタイマーによる作業や、外注化、あるいは外国の工場への製造の移管が増加してきている状況があり、製造工場や作業者・検査員が変わっても変動しない明確な検査基準を有する検査方法が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−306406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、電線のスプライス部に絶縁シートを巻き付けた状態で、絶縁シートがスプライス部の幅方向の許容公差幅内に正しく巻き付けられているかを外観から目視できるともに、合格・不合格の明確な検査基準が与えられるスプライス部の検査部形成方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、第1に、スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右両端に、スプライス接続される電線の外周面に着色塗料の塗布あるいは着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を、左右同一寸法で突出させており、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、該スプライス位置から左右等間隔位置の前記電線にマーキング冶具でマーキングを施し、
ついで、前記左右のマーキング位置に挟まれた前記スプライス位置を含む領域に絶縁シートを巻き付けて、該絶縁シートの外側に前記左右のマーキングを外観可としておき、
前記絶縁シートが前記スプライス部に巻きつけられているかを前記左右のマーキングを外観できることで検査可としているスプライス部の検査部形成方法を提供している。
【0010】
前記方法とすることにより、絶縁シートとマーキングの着色テープの間が間隔を持って装着されている場合は、絶縁シートはスプライス部に幅方向の許容公差内に装着されていることが確認できる。このように、絶縁シートと着色テープが左右とも間隔を持って装着されている場合は検査で合格と判断できる。
一方、絶縁シートがマーキングの着色テープを覆って装着してある場合は、装着許容公差を越えていることが分かる。このように、絶縁シートが着色テープを覆って装着されている場合は検査で不合格と判断できる。
【0011】
中間圧着端子の圧着とマーキングとは同一装置内で同時に行われ、スプライス部とマーキングとの位置関係は、マーキング冶具を設定したとおりの一定の状態で作業が行われるので、作業者によってばらつくことはない。
しかしながら、絶縁シートの装着は中間圧着端子の圧着とは別工程であり、通常、半自動または手作業で行われ、人手が介在するため、スプライス部と絶縁シートの幅方向の取り付け位置がずれてしまう恐れがある。本発明によると、正確にマーキングされた着色テープを基準に、絶縁シートが幅方向の許容範囲に装着されたかどうかを、目視で検査することができ、しかも明確な基準で合格・不合格を判断することができる。
【0012】
本発明は、第2に、スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右方向の一方側に、スプライス接続される電線の外周面に着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を所要寸法で突出させており、
前記マーキング用の着色テープの幅は許容公差幅の2倍の幅とし、幅の半分を色で相違させ、あるいは幅の中央にラインを設けておき、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、前記マーキング冶具で着色テープをスプライス接合位置から一方側に所要寸法離れた位置に巻き付け、
ついで、前記着色テープの端縁より前記スプライス位置を含む領域に絶縁シートを巻き付けて、該絶縁シートの外側に前記着色テープを外観可としておき、
前記絶縁シートが前記スプライス部に巻き付けられているかを、前記着色テープの全体あるいは着色テープの外側の着色部あるいは前記ラインが外観可であれば、前記スプライス部が絶縁シートで巻き付けられていると見なされるようにしているスプライス部の検査部形成方法を提供している。
【0013】
前記方法とすることにより、着色テープの全体あるいは着色テープの外側の着色部あるいは前記ラインが外観可であれば、前記スプライス部が絶縁シートで許容範囲に巻き付けられていることを目視検査して合格と判断できる。かつ、明確な基準で合格・不合格を判断することができる。
【0014】
本発明は、第3に、スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右両端に、スプライス接続される電線の外周面に着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を、左右同一寸法をあけて突出させており、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、該スプライス位置から左右等間隔位置の前記電線にマーキング冶具で前記マーキング用の着色テープを巻き付けて締結しておき、
ついで、前記左右のマーキング用の着色テープの締結位置に挟まれた前記スプライス位置を含む領域に、シール剤が充填された発泡シートを巻き付けて、該発泡シートの外側に前記左右のマーキング用着色テープを外観可としておき、
ついで、前記左右のマーキング用の着色テープを覆う領域に絶縁性の透明テープを巻き付け固定し、
前記透明テープを通して前記発泡シートが前記スプライス部に巻き付けられているかを前記左右のマーキング用着色テープを外観できることで検査可としているスプライス部の検査部形成方法を提供している。
【0015】
この方法によると、透明テープを透過して、着色テープと発泡シートを目視でき、前記方法と同じ方法で、合格・不合格を判断することができる。このように、防水性を必要とするスプライスであっても、合格・不合格を目視だけで明確に判断することができる。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明によれば、絶縁シートが幅方向の許容公差範囲に的確に巻き付けられているかどうかを外観目視だけで判断でき、かつ、合格・不合格の判断基準が明確であるので、作業者や検査員の勘による判断でなく、統一した基準で検査をすることができる。このことにより、不具合があれば迅速に手直しすることができる。また、絶縁シートは、透明・半透明なシートに限定されず任意の材質・色の材料を用いることができるので、絶縁シートを色分けして識別に利用したり、既存のできるだけ安価な材用を採用したりする自由度が向上する効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。
図1はスプライス部の電線接合装置である圧着およびマーキングの装置とその方法を示す。図1(A)は、スプライス部への中間圧着端子の圧着とマーキング前の状態を示し、図1(B)はスプライス部への中間圧着端子の圧着とマーキング後の状態を示す。
【0018】
図1中において、1、1’はスプライス接続される被覆電線、1a、1a’は絶縁被覆を皮剥ぎされた導線、2は複数の導線1aを束ねて接合するための銅等の導電性金属材からなるU形状の中間圧着端子である。
4は電線接合装置であり、4aは圧着上型、4bは圧着下型であり、相互に離間・接近されるようにされている。
【0019】
圧着上型4aと圧着下型4bを離間させた状態で、圧着上型4aと圧着下型4bの間に、導線1aを通した中間圧着端子2を挿入し、圧着上型4aと圧着下型4bを接近させて中間圧着端子2をかしめることにより、複数の導線1aを強固にかしめ圧着して、被覆電線1と1’とをスプライス接続している。
【0020】
前記電線接合装置4の圧着上型4aを下面にとりつけた本体4cの左右両側より同一寸法の連結ロッド6、6を介して左右一対のマーキング冶具5A、5Bを付設している。マーキング冶具5A、5Bは、許容公差表示部として用いる着色テープ7を供給し、該着色テープ7を被覆電線1の外周に巻き回けることができるものである。該着色テープ7には、粘着剤を塗布した塩化ビニールテープなどが用いられる。
前記本体4cとマーキング治具5A、5Bとの間の寸法は、左右のマーキング治具5Aと5B間に絶縁シートが巻き付けれた場合に、該絶縁シートが中間圧着端子2を挟んで許容交差範囲内にある位置に設定している。
なお、連結部6は伸縮可能として、スプライス部の形状に応じてマーキング冶具5と電線接合装置の本体4cとの距離を調節可能としてもよい。
【0021】
図2は、スプライス部に樹脂製の絶縁シート3を装着する方法を示す図である。図2(A)は絶縁シート3を装着する前の状態を示す図であり、絶縁シート3の内面には粘着剤が塗布されている。図中、Lwはスプライス部の幅、Lsは絶縁シートの幅、Lmは左右の着色テープ7の内幅である。絶縁シート3の幅Lsは、スプライスの幅Lwより余裕を持って大きくし、着色テープ7の内幅Lmよりも絶縁シート3の装着の許容公差幅だけ小さくしている。言いかえると、マーキングの着色テープの内幅Lmは、絶縁シートの幅Lsよりも、絶縁シート3の幅方向の装着許容公差分だけ大きくしている。なお、G1、G2はマーキングの着色テープ7の端部と、絶縁シート3の左右の端部との距離である。
【0022】
図2(B)は絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す。絶縁シート3と着色テープ7の間は、G1およびG2の間隔を持って装着されているので、絶縁シート3はスプライス部に幅方向の許容公差内に装着されていることが確認できる。このように、絶縁シート3と着色テープ7が左右とも間隔を持って装着されている場合は検査で合格とする。
【0023】
図2(C)は絶縁シート3が着色テープ7の一部を覆って装着してあるので、装着許容公差を越えていることが分かる。このように、絶縁シート3が着色テープ7の一部でも覆って装着されている場合は検査で不合格とする。
図2(D)は絶縁シート3が着色テープ7全体を覆って装着してあるので、装着許容公差を越えていることが分かる。このように、絶縁シート3が着色テープ7全体を覆って装着されている場合も検査で不合格とする。
【0024】
上述したように、中間圧着端子2の圧着とマーキングとは同一装置内で同時に行われ、スプライス部とマーキングとの位置関係は、最初に連結部6を調節しマーキング冶具5を設定したとおりの一定の状態で作業が行われるので、作業者によってばらつくことはない。
これに対して、絶縁シート3の装着は中間圧着端子の圧着とは別工程で、通常、半自動または手作業で行われ、人手が介在するため、スプライス部と絶縁シート3の幅方向の取り付け位置がずれてしまう恐れがある。
しかしながら、前記実施形態によると、正確にマーキングされた着色テープ7を基準に、絶縁シート3が幅方向の許容範囲に装着されたかどうかを、目視で検査することができ、しかも明確な基準で合格・不合格を判断することができる。
【0025】
さらに、図3に示すように、スプライス接続される被覆電線1には、図の矢印のように複数の被覆電線1が引き裂かれる方向の力がかかる場合がある。この場会でも着色テープ7が巻き付けられていることにより、スプライス部に直接引き裂き力がかからないため、スプライス部および絶縁シート3を保護できる副次的な効果がある。
【0026】
図4は、第2実施形態を示す図である。第1の実施形態と異なり、マーキング冶具5と連結部6は電線接合装置本体4cの片側にのみ設けられている。また、マーキングの着色テープ7の幅は、絶縁シート3を装着する許容公差幅の2倍としてあり、着色テープ7の左右を7aと7bの2分割として色違いにするか、7aと7bの境界にライン7cを設けてある。着色テープ7の内側半分7bを許容公差表示部とし、7bの外側端を外側限界線7d、内側端を内側限界線7eとしている。中間圧着端子2の圧着と着色テープ7の貼付方法は、第1の実施形態と同じである。
【0027】
図5は、絶縁シート3の装着方法と検査方法を説明する図である。図5(A)は絶縁シート3を装着する前の状態を示す図であり、前述の工程で、着色テープ7の内側7bの中央部は、スプライスの中心部から絶縁シート3の幅Lsの1/2だけ離れた位置としている。
図5(B)は、絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態示す図であり、絶縁シート3の端部3aが着色テープ7の内側7bの上に来る状態で装着されており、内側限界線7eのみが絶縁シートで覆われているので、絶縁シート3は幅方向の許容公差内に装着されていることが確認でき、合格と判断される。
【0028】
図5(C)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3が着色テープ7の内側7bを全て覆い、外側限界線7d、内側限界線7eの両方が絶縁シート3に覆われているので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出して装着されていることが確認でき、不合格と判断される。もちろん、絶縁シート3が着色テープ7を全て覆い隠している場合も許容公差幅をはみ出していると確認でき、不合格と判断される。
【0029】
図5(D)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3の端部3aが着色テープ7の内側7bよりもさらに内側に来るように装着されており、外側限界線7d、内側限界線7eの両方共絶縁シートに覆われていないので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出していると確認でき、不合格と判断される。
このように、第2の実施形態では、着色テープ7によるマーキングが片側だけで済むので、装置も簡易となり、着色テープも節約できる利点がある。
【0030】
図6は、第3実施形態を示し、第2の実施形態と異なる点のみを説明する。
図6(A)は絶縁シート3を装着する前の状態を示す図であり、着色テープ7の幅は、許容公差幅と同じ幅としてある。着色テープ7の外側端を外側限界線7d、内側端を内側限界線7eとしている。着色テープ7の中央部は、スプライスの中心部から絶縁シート3の幅Lsの1/2だけ離れた位置としている。
図6(B)は、絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態示す図であり、絶縁シート3の端部3aが着色テープ7の上に来る状態で装着されており、内側限界線7eのみが絶縁シートに覆われているので、絶縁シート3は幅方向の許容公差内に装着されていることが確認でき、合格と判断される。
【0031】
図6(C)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3が着色テープ7の全てを覆っており、外側限界線7d、内側限界線7eの両方共絶縁シート3に覆われているので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出して装着されていることが確認でき、不合格と判断される。
【0032】
図6(D)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3の端部3aが着色テープ7よりも内側に来るように装着されており、外側限界線7d、内側限界線7eの両方共絶縁シートに覆われていないので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出していると確認でき、不合格と判断される。
【0033】
第3の実施形態は第2実施形態と較べ、着色テープ7として特殊な着色テープを必要とすることがなく、安価な既存のテープを利用できる利点がある。
【0034】
図7は第4実施形態を示し、第3実施形態と異なる点のみを説明する。
図7(A)は絶縁シート3を装着する前の状態を示す図であり、許容公差表示部として、着色テープ7の代りに、許容公差幅と同じ間隔で外側限界線7dと内側限界線7eがペイントまたはインク塗布により付してある。外側限界線7dと内側限界線7eとの中央部は、スプライスの中心部から絶縁シート3の幅Lsの1/2だけ離れた位置としてある。
図7(B)は、絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態示す図であり、絶縁シート3の端部3aが外側限界線7dと内側限界線7eの間に存在するよう装着されており、内側限界線7eのみが絶縁シート3に覆われているので、絶縁シート3は幅方向の許容公差内にあることが確認でき、合格と判断される。
【0035】
図7(C)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3が外側限界線7dと内側限界線7eの両方を覆っているので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出していることが確認でき、不合格と判断される。
図7(D)は、同じく絶縁シート3をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であるが、絶縁シート3の端部3aが内側限界線7eよりも内側に来るように装着されており、外側限界線7d、内側限界線7eの両方共絶縁シート7に覆われていないので、絶縁シート3は許容公差幅をはみ出していると確認でき、不合格と判断される。
【0036】
第4実施形態は第3の実施形態と較べ、ペイントまたはインク塗布のみで、着色テープ7を不要にできる利点がある。
この場合は、着色テープやペイントやインクを必要とせず、極めて簡易な手段で許容交差表示部を設けることができる。
【0037】
図8は、防水性を必要とするスプライスの場合の第5の実施形態を示し、前記の実施形態と異なる点のみを説明する。
図8(A)は絶縁シート3を装着する前の状態を示す図であり、絶縁シート3には、不透明な発泡シートが用いられており、その上にシリコンなどの充填剤(止水剤)8が塗布されている。9は上面に粘着剤が塗布された透明テープであり、絶縁シート3の外周を覆って巻きつけられる。被覆電線1には、前記の実施形態と同じく、許容公差表示部としての着色テープ7が付されている。
【0038】
図8(B)は、絶縁シート3と透明テープ9をスプライス部に巻き付けた状態を示す図であり、透明テープ9が透明であるので、着色テープ7と絶縁シート3を目視でき、前記実施形態と同じ方法で、合格・不合格を判断することができる。
本実施形態のように、防水性を必要とするスプライスであって、不透明な絶縁シートでスプライス部を覆わなければならない場合でも、前記実施形態と同じように、合格・不合格を目視だけで明確に判断することができる。
【0039】
以上の実施形態で説明したように、絶縁シート3が幅方向に許容範囲に的確に巻き付けられているかどうかを外観目視だけで判断でき、かつ、合格・不合格の判断基準が明確であるので、作業者や検査員の勘による判断でなく、統一した基準で検査をすることができる。このことにより、不具合があれば迅速に手直しすることができ、不良品が市場に流れることを防止することができる。
また、絶縁シートは、透明・半透明なシートに限定されず任意の材質・色の材料を用いることができるので、絶縁シートを色分けして識別に利用したり、既存のできるだけ安価な材用を採用したりする自由度が向上する利点もある。
なお、幅方向の許容公差は実験や設計上の検討を行って決定され、この許容公差に応じて、マーキングを付すのであるが、マーキングは許容公差を設定・変更する場合、連結部6を調節することにより自由に設定・変更できる利点がある。
【0040】
なお、上記実施形態のスプライス部は中間圧着端子を圧着する方法で結合しているが、抵抗溶接または超音波溶接を用いてよいし、着色テープの代りに塗料やインクの塗布または、被膜電線を傷付けない程度に押圧した刻印で代用してもよく、適宜変更して適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
前記した実施形態は、電線のスプライス部の検査部形成方法に関し、特に、スプライス部に巻き付けられた絶縁シートがスプライス部の許容範囲に取り付けられているかどうかを外観目視による、かつ明確な検査基準による検査方法であり、自動車に用いるワイヤハーネス等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の中間圧着端子の圧着とマーキングの方法を示し、(A)は圧着およぶマーキング前、(B)は圧着およびマーキング後の状態を示す正面図である。
【図2】第1実施形態の絶縁シートを巻き付けて検査する方法を示し、(A)は絶縁シートの巻き付け前、(B)(C)(D)は絶縁シートを巻き付け、検査する方法を示す平面図である。
【図3】第1実施形態の副次的な効果を示す外観図である。
【図4】第2実施形態の中間圧着端子の圧着とマーキングの方法を示す正面図である。
【図5】第2実施形態の絶縁シートを巻き付けて検査する方法を示し、(A)は絶縁シートの巻き付け前、(B)(C)(D)は絶縁シートを巻き付け、検査する方法を示す平面図である。
【図6】第3実施形態の絶縁シートを巻き付けて検査する方法を示し、(A)は絶縁シートの巻き付け前、(B)(C)(D)は絶縁シートを巻き付け、検査する方法を示す平面図である。
【図7】第4実施形態の絶縁シートを巻き付けて検査する方法を示し、(A)は絶縁シートの巻き付け前、(B)(C)(D)は絶縁シートを巻き付け、検査する方法を示す平面図である。
【図8】第5実施形態の絶縁シートを巻き付けて検査する方法を示し、(A)は絶縁シートの巻き付け前、(B)は絶縁シートを巻き付けた状態を示す平面図である。
【図9】従来技術を示す外観図である。
【図10】他の従来技術を示す外観図である。
【符号の説明】
【0043】
1 被覆電線
2 中間圧着端子
3 絶縁シート
4 電線接合装置
5 マーキング冶具
6 連結部
7 着色テープ
7d 外側限界線
7e 内側限界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右両端に、スプライス接続される電線の外周面に着色塗料の塗布あるいは着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を、左右同一寸法をあけて突出させており、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、該スプライス位置から左右等間隔位置の前記電線にマーキング冶具でマーキングを施し、
ついで、前記左右のマーキング位置に挟まれた前記スプライス位置を含む領域に絶縁シートを巻き付けて、該絶縁シートの外側に前記左右のマーキングを外観可としておき、
前記絶縁シートが前記スプライス部に巻きつけられているかを前記左右のマーキングを外観できることで検査可としているスプライス部の検査部形成方法。
【請求項2】
スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右方向の一方側に、スプライス接続される電線の外周面に着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を所要寸法で突出させており、
前記マーキング用の着色テープの幅は許容公差幅の2倍の幅とし、幅の半分を色で相違させ、あるいは幅の中央にラインを設けておき、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、前記マーキング冶具で着色テープをスプライス接合位置から一方側に所要寸法離れた位置に巻き付け、
ついで、前記着色テープの端縁より前記スプライス位置を含む領域に絶縁シートを巻き付けて、該絶縁シートの外側に前記着色テープを外観可としておき、
前記絶縁シートが前記スプライス部に巻き付けられているかを前記着色テープの全体あるいは着色テープの外側の着色部あるいは前記ラインが外観可であれば、前記スプライス部が絶縁シートで巻き付けられていると見なされるようにしているスプライス部の検査部形成方法。
【請求項3】
スプライス接続される電線の芯線同士を溶接あるいは中間圧着端子でかしめ圧着する電線接合装置の左右両端に、スプライス接続される電線の外周面に着色テープを巻き付けてマーキングするマーキング冶具を、左右同一寸法をあけて突出させており、
前記電線接合装置でスプライス接続する工程時に、該スプライス位置から左右等間隔位置の前記電線にマーキング冶具で前記マーキング用の着色テープを巻き付けて締結しておき、
ついで、前記左右のマーキング用の着色テープの締結位置に挟まれた前記スプライス位置を含む領域に、シール剤が充填された発泡シートを巻き付けて、該発泡シートの外側に前記左右のマーキング用着色テープを外観可としておき、
ついで、前記左右のマーキング用の着色テープを覆う領域に絶縁性の透明テープを巻き付け固定し、
前記透明テープを通して前記発泡シートが前記スプライス部に巻き付けられているかを前記左右のマーキング用着色テープを外観できることで検査可としているスプライス部の検査部形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−216460(P2006−216460A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−29457(P2005−29457)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】