説明

スプリングのバネ端係着具

【課題】スプリングのバネ端を掛け止める丸軸シャフトの径の差を容易に吸収でき、同時に、丸軸シャフトとの擦れによる異音の発生を防げる安価なスプリングのバネ端係着具を構成する。
【解決手段】丸軸シャフト3の軸上に嵌り合う略逆U字状を呈する樹脂製のカラー6aと、カラー6aの上側に嵌り合う略相似形の基体60を有し、カラー6aの上側に嵌り合う基体60の両端縁から丸軸シャフト3の軸径を超えて相対し、且つ、丸軸シャフト3の軸下よりバネ端70の相対する軸線部71,72で挟込み保持する内外の相逆方向に折れ曲がるバネ掛け片61,62を設けた金属製のリテーナ6bとを組み合わせてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性用のスプリングをシートフレームの相対するフレーム部の間に掛渡し張設するに、スプリングの略U字乃至はコの字を呈するバネ端を丸軸シャフトでなるフレーム部に掛け止めるための係着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートにおいては、クッションフレームの後部側を丸軸シャフトで形成し、クッションパッドを支持するジグザグスプリングをクッションフレームの前部側との間に掛渡し張設するに、ジグザグスプリングのバネ端をリテーナで後部側の丸軸シャフトに掛け止めることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
そのリテーナとしては、丸軸シャフトの軸上に嵌り合う略逆U字状を呈する基体と、基体の両端縁から丸軸シャフトの軸径を超えて相対し、且つ、丸軸シャフトの軸下よりバネ端の相対する軸線部で挟込み保持する内外の相逆方向に折れ曲がるバネ掛け片とを金属板材から一体に曲込み形成したものが組み付けられている。
【0004】
そのリテーナは丸軸シャフトの径に相応させて定型的な保形形状に形成されているため、ジグザグスプリングを22.2mm,23.8mm等と径の異なる丸軸シャフトに掛け止めるに、径の異なる丸軸シャフトに相応した形状を有するものを揃えることが必要となる。また、金属製のリテーナを丸軸シャフトに直接嵌め合わせると、金属相互の擦れ音が生ずる虞があり、これを防ぐに、樹脂コーティング等を施すと係着具として高価なものになってしまう。
【特許文献1】特開2006−14867号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、スプリングのバネ端を掛け止める丸軸シャフトの径の差を容易に吸収でき、同時に、丸軸シャフトとの擦れによる異音の発生を防げる安価なスプリングのバネ端係着具を構成するところにある。
【0006】
それに加えて、スプリングのバネ端を安定よく掛け止められて簡単な作業で組み付けられるスプリングのバネ端係着具を構成するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1は、弾性用のスプリングをシートフレームの相対するフレーム部の間に掛渡し張設するに、スプリングの略U字乃至は略コ字のバネ端を丸軸シャフトでなるフレーム部に掛け止めるための係着具であって、
丸軸シャフトの軸上に嵌り合う略逆U字状を呈する樹脂製のカラーと、カラーの上側に嵌り合う略相似形の基体を有し、カラーの上側に嵌り合う基体の両端縁から丸軸シャフトの軸径を超えて相対し、且つ、丸軸シャフトの軸下よりバネ端の相対する軸線部で挟込み保持する内外の相逆方向に折れ曲がるバネ掛け片を設けた金属製のリテーナとを組み合わせてなることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2は、スプリングの張設基準高さに相応する長さの内バネ掛け片と、内バネ掛け片よりも相対的に短い長さの外バネ掛け片とを設け、内バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部より外バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部を高位に傾斜させて挟み込む内外のバネ掛け片を設けた金属製のリテーナを備えてなることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3は、間隔を隔て複数本張設する各スプリングに相応し、丸軸シャフトの軸上に嵌り合う長さのカラーと、スプリングの本数と同数のバネ掛け片を設けたリテーナとを組み合わせてなることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4は、丸軸シャフトの軸線と同方向に亘って略逆U字の頂面より起立する突起を設けたカラーと、該突起を嵌め合わせる抜き穴を基体の頂面に設けたリテーナとを組み合わせてなることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項5は、基体の各端縁と当接させてリテーナを位置決めする止め鍔を略逆U字の周面に設けたカラーを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に係るスプリングのバネ端係着具では、樹脂製のカラーを丸軸シャフトの軸上に嵌め合わせ、更に、金属製のリテーナをカラーの上側に嵌め合わせることから、スプリングのバネ端を掛け止める丸軸シャフトの径に差があっても、径の大きな丸軸シャフトに合わせた樹脂製のカラーにより、径の差を容易に吸収でき、また、径の小さな丸軸シャフトについてはクリアランスが生じても、丸軸シャフトとの擦れによる異音の発生を防げる。特に、樹脂コーティング等を施す必要もないからコストダウンも図れる。
【0013】
本願の請求項2に係るスプリングのバネ端係着具では、スプリングの張設基準高さに相応する長さの内バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部より相対的に短い長さの外バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部を高位に傾斜させてリテーナのバネ掛け片をバネ端で挟込み保持することから、スプリングを基準高さに合わせて安定よく掛渡し張設するようにできる。
【0014】
本願の請求項3に係るスプリングのバネ端係着具では、間隔を隔て張設する各スプリングに相応し、丸軸シャフトの軸上に嵌り合う長さのカラーと、スプリングの本数と同数のバネ掛け片を設けたリテーナとを組み合わせることから、複数本のスプリングを掛渡し張設するに簡単な作業で組み付けるようにできる。
【0015】
本願の請求項4に係るスプリングのバネ端係着具では、丸軸シャフトの軸線と同方向に亘って略逆U字の頂面より起立する突起を設けたカラーと、該突起を嵌め合わせる抜き穴を基体の頂面に設けたリテーナとを組み合わせることから、リテーナが丸軸シャフトの軸線上で回転し或いは横ズレするのを防ぐようにできる。
【0016】
本願の請求項5に係るスプリングのバネ端係着具では、基体の各端縁と当接させてリテーナを位置決めする止め鍔を略逆U字の周面に設けたカラーを備えることから、金属製のリテーナをカラーの上側に嵌め合わせるのを簡単な作業で正確に行うようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、自動車用スライド式シートを構成するクッションフレームにおけるスプリングのバネ端をリテーナで止着する場合を示す。クッションフレームは、左右のサイドフレーム1a,1bと、サイドフレーム1a,1bと一体に取り付けられるアッパーレール2a,2bと、サイドフレーム1a,1bの後部間に亘る丸パイプまたは丸棒部材でなる丸軸シャフト3と、サイドフレーム1a,1bの前部間に掛渡し固定するパンフレーム4とから骨組されている。図1中、符号5a,5bはロアレールを示す。
【0018】
そのクッションフレームにおいては、バネ端係着具6により、略U字乃至はコ字の連続したジクザグバネでなる複数本のスプリング7が後部の丸軸シャフト3と前部のパンフレーム4との間に相平行するよう張設されている。各スプリング7は、後バネ端7aをバネ端係着具6で丸軸シャフト3の軸線上に止着すると共に、前バネ端7bをパンフレーム4の板面に設けた切起し環8で掛け止めることからクッションフレームの枠内で略水平に張設されている。
【0019】
バネ端係着具6は、図2,図3で示すように1本の丸軸シャフト3に対し、間隔を隔て張設する4本のスプリング7(図1参照)を掛止め張設するものとして構成されている。このバネ端係着具6は、ポロプロピレンを例とする樹脂製のカラー6aと、薄鋼板を例とする金属製のリテーナ6bとを組み合わせて構成されている。
【0020】
樹脂製のカラー6aは、丸軸シャフト3の軸上に嵌り合う略逆U字状を呈するよう形成されている。また、4本張設する各スプリング7に相応させて丸軸シャフト3の軸上に嵌り合う長さを有するものに形成されている。
【0021】
金属製のリテーナ6bは、カラー6aの上側に基体60で嵌り合うものとして形成されている。基体60はカラー6aの外周面と整合する略相似形の逆U字状を呈し、カラー6aの上側に嵌り合う基体61の両端縁から内外のバネ掛け片61,62(一対のみに符号を付する。)を4対設けて形成されている。
【0022】
上述した構成に加えて、カラー6aには丸軸シャフト3の軸線と同方向に亘って略逆U字の頂面より起立する2本一組の相並行する突起63が3組設けられている。それに対し、リテーナ6bには突起63を嵌め合わせる抜き穴64が基体60の頂面に3個設けられている。抜き穴64は、リテーナ6bの強度を保つため、バネ掛け片61,62の形成位置から外れた基体60の頂面に設けられている。
【0023】
カラー6aには、基体60の各端縁と当接させてリテーナ6bを位置決めする止め鍔65a,65bが略逆U字の周面に設けられている。カラー6aの両端部は、止め鍔65a,65bと同形のリブ66a,66bで補強されている。このカラー6aを含み、リテーナ6bを別部材で形成し、樹脂コーティング等を施す必要もないからコストダウンを図れる。
【0024】
このように構成するバネ端係着具では、図4で示すように樹脂製のカラー6aを丸軸シャフト3の軸上に嵌め合わせ、更に、金属製のリテーナ6bをカラー6aの上側に嵌め合わせて組み合わされている。この組合状態では、バネ掛け片61,62がカラー6aの上側に嵌り合う基体60の両端縁から丸軸シャフト3の軸径を超えて相対している。
【0025】
詳しくは、後述するような丸軸シャフト3の軸下よりバネ端の相対する軸線部で挟込み保持できるよう内外の相逆方向に折れ曲がっている。内バネ掛け片61は、スプリングの張設基準高さに相応する長さの略J字状を呈している。外バネ掛け片62は、内バネ掛け片61よりも相対的に短い長さのU字状を呈している。
【0026】
スプリング7をバネ端70でバネ掛け片61,62に掛け止めるには、図5で示すようにバネ端70の内軸線部71を内バネ掛け片61で係止し、バネ端70の橋絡線部73をバネ掛け片61,62の側部に回し、バネ端70の外軸線部72を外バネ掛け片62で係止することにより、バネ掛け片61,62をバネ端70で挟込み保持させる。
【0027】
スプリング7は、図6で示すように内バネ掛け片61で係止するバネ端70の軸線部71より外バネ掛け片62で係止するバネ端70の軸線部72を高位に傾斜させてバネ掛け片61,62を挟み込んでいる。これにより、スプリング7は基準高さに合わせて安定よく掛渡し張設するようにできる。
【0028】
そのスプリング7を複数本掛け渡すに、丸軸シャフト3の軸上に嵌り合う長さのカラー6aと、スプリング7の本数と同数のバネ掛け片61,62を設けたリテーナ6bとを組み合わせることから簡単な作業で組み付けられる。
【0029】
リテーナ6bは、図7で示すように丸軸シャフト3の軸線と同方向に亘ってカラー6aの頂面より起立する突起63を抜き穴64に嵌め合わせることから、丸軸シャフト3の軸線上で回転し或いは横ズレするのを防げる。また、基体60の各端縁をカラー6aの止め鍔65a,65bに当接させて位置決めすることにより、リテーナ6bをカラー6aの上側に嵌め合わせるのを簡単な作業で正確に行うようにできる。
【0030】
このように樹脂製のカラー6aを丸軸シャフト3の軸上に嵌め合わせ、更に、金属製のリテーナ6bをカラー6aの上側に嵌め合わせることから、丸軸シャフト3の径に差があっても、径の大きな丸軸シャフトに合わせた樹脂製のカラーにより、径の差を容易に吸収するようにできる。径の小さな丸軸シャフトについてはクリアランスが生じても、丸軸シャフトとの擦れによる異音の発生を樹脂製のカラー6aで防ぐようにできる。
【0031】
このバネ端係着具では、図8で示すように座者の荷重が加わり、スプリング7が撓むに伴って、クッションフレームの枠組内においてバネ掛け片61で係止するバネ端70の軸線部71より回転させようとする力が作用しても、クッションフレームの枠組外においてバネ掛け片62で係止するバネ端70の軸線部72より反力が作用する。
【0032】
それによっては、リテーナ6bのバネ掛け片61,62をスプリング7の軸線部71,72で前後より挟み込むことによる捩りトルクの如く作用するから、リテーナ6bの基体60が下向きU字状の姿勢を略変えない。このため、スプリング7の撓みに伴って揺動しないから異音が発生しないことは勿論、スプリング7で引っ張られることによるリテーナ6bの変形も生じない。
【0033】
上述した実施の形態は、クッションフレームの後部フレームを丸軸シャフトにより枠組する場合に基づいて説明したが、前部フレームを丸軸シャフトで枠組する場合にも同様に適用できる。また、複数本のスプリングを共に張設するバネ端係着具として説明したが、スプリングの一本単位に個別に掛け止めるよう分割させて形成するようにもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るバネ端係着具によりスプリングを張設した自動車用シートのクッションフレームを示す斜視図である。
【図2】図1のバネ端係着具を丸軸シャフトと共に展開状態で示す斜視図である。
【図3】図1のバネ端係着具を丸軸シャフトに対する組付状態で示す斜視図である。
【図4】図3のバネ端係着具をA−A線で示す断面図である。
【図5】図3のバネ端係着具に対するスプリングの掛止め状態を示す平面図である。
【図6】図3のバネ端係着具に対するスプリングの掛止め状態を示す側面図である。
【図7】図3のバネ端係着具をB−B線で示す断面図である。
【図8】図1のクッションフレームを座者の着座状態で示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
3 シートフレームの丸軸シャフト
4 丸軸シャフトと相対するフレーム部
6 バネ端係着具
6a 樹脂製のカラー
6b 金属製のリテーナ
60 リテーナの基体
61,62 リテーナのバネ掛け片
63 カラーの突起
64 リテーナの抜き穴
65a,65b カラーの止め鍔
7 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性用のスプリングをシートフレームの相対するフレーム部の間に掛渡し張設するに、スプリングの略U字乃至は略コ字のバネ端を丸軸シャフトでなるフレーム部に掛け止めるための係着具であって、
丸軸シャフトの軸上に嵌り合う略逆U字状を呈する樹脂製のカラーと、カラーの上側に嵌り合う略相似形の基体を有し、カラーの上側に嵌り合う基体の両端縁から丸軸シャフトの軸径を超えて相対し、且つ、丸軸シャフトの軸下よりバネ端の相対する軸線部で挟込み保持する内外の相逆方向に折れ曲がるバネ掛け片を設けた金属製のリテーナとを組み合わせてなることを特徴とするスプリングのバネ端係着具。
【請求項2】
スプリングの張設基準高さに相応する長さの内バネ掛け片と、内バネ掛け片よりも相対的に短い長さの外バネ掛け片とを設け、内バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部より外バネ掛け片で係止するバネ端の軸線部を高位に傾斜させて挟み込む内外のバネ掛け片を設けた金属製のリテーナを備えてなることを特徴とする請求項1に記載のバネ端係着具。
【請求項3】
間隔を隔て複数本張設する各スプリングに相応し、丸軸シャフトの軸上に嵌り合う長さのカラーと、スプリングの本数と同数のバネ掛け片を設けたリテーナとを組み合わせてなることを特徴とする請求項1または2に記載のバネ端係着具。
【請求項4】
丸軸シャフトの軸線と同方向に亘って略逆U字の頂面より起立する突起を設けたカラーと、該突起を嵌め合わせる抜き穴を基体の頂面に設けたリテーナとを組み合わせてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバネ端係着具。
【請求項5】
基体の各端縁と当接させてリテーナを位置決めする止め鍔を略逆U字の周面に設けたカラーを備えてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバネ端係着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−183107(P2008−183107A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17832(P2007−17832)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)