説明

スペクトル放出器を使用して対象物に独自にマーク付けする方法

【課題】データベースエントリに対応する独自の特性を有するセキュリティマーカの提供。
【解決手段】上記マーカは、少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器を備え、マーカの独自の特性は、少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器の独自の発光プロファイルである。マーカは、マーカの詳細な化学的分析を必要とすることなく読み取ることができる独自の発光プロファイルの形態で独自の数字を記憶する。セキュリティマーカで対象物にマーク付けし、次に、こうしたマーカを読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には対象物のタグ付けにおける独自のマーカの使用に関し、より具体的には、独自の発光プロファイルを生成するようになっているマーカの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティタグ付けおよびオリジンマーク付けは、自分の製品が広がる(spread)ことを制御するために、民間の製造業者によって使用される重要なツールである。独自の識別用マーカを自分の商品に取り付けることによって、製造業者は、偽造商品と自分自身の商品の区別を可能にすることができる。
【0003】
セキュリティタグ付けはまた、窃盗が起こった場合に、自分の財産を容易に識別することができるように、自分の財産にタグ付けしたいと思う人にとって非常に価値がある。
【0004】
任意のセキュリティタグ付けまたはオリジンマーク付けシステムを、かなり大規模に使用することができるためにはまず、多数の独自の数字を生成するシステムが存在しなければならない。この点に関して、多数の独自の数字を生成し管理する、1つのこうしたシステムは、英国特許出願第0508507.1号で開示される。
【0005】
独自の数字が生成されると、各数字を独自に記憶する機構が選択されなければならない。
【0006】
最も単純なレベルでは、独自の数字は、たとえば、微小ドット上に非常に小さいサイズで単に再印刷されてもよい。これらの独自に番号を付けられた微小ドットは、その後、マーク付けされる対象物(複数可)に取り付けられる可能性がある。この機構の1つの欠点は、独自の数字が記憶され提示される方法が、明白なことである。
【0007】
より隠蔽された機構によって独自の数字を記憶することが好ましく、それには、記憶した数字を解釈する鍵が必要とされる。独自の数字が2値ストリングの形態で記憶される可能性がある1つの方法において、上記2値ストリングは、マーカ内における或る化合物の存在(「1」の結果)、または、非存在(「0」の結果)に対応する。
【0008】
上記システムの主要な欠点は、どの化合物が、マーカ上に実際に存在するかを化学的に分析する際に生じる。どの化合物が、マーカ上に存在するかを判断するために、マーカを化学的に試験することを要求されるプロセスは、高い費用がかかる可能性があり、分析自体が、時間がかかる可能性がある。
【0009】
[発明の概要]
従来技術の制限に鑑みて、本発明は、請求項1による独自のマーカ、および、請求項6に従って、対象物を独自にマーク付けし、識別する方法を提供する。本発明は、即座にその場で、かつ、化学的分析を必要とせずに読み取ることができるマーカについて説明する。本発明は、対象物にマーク付けし、その後、こうしたマーカを読み取る方法も提供する。
【0010】
本発明は、ナノ結晶量子ドット放出器の使用に基づき、発光周波数は、手持ち式検出器によって検出され、分解されるように十分に分離している。適したナノ結晶量子ドット放出器は、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlSb、PbS、PbSe、Ge、Si、ならびに、その3元および4元混合物を含む。
【0011】
InP、InAs、InSb、PbS、およびPbSeなどのI.R.領域で放出する量子ドットの組み合わせは、他のスペクトル領域からの量子ドットと同様に使用される可能性がある。
【0012】
それぞれが特定の発光周波数を有し、専用に開発された手持ち式で電池動作式の赤外線検出器と共に使用される赤外線放出量子ドットの組み合わせは、種々の表面に取り付けられた独自のコードを識別するのに十分な情報を提供する。
【0013】
赤外線放出量子ドットは、異なる品物の大きなアレイを遠隔で動作させるための赤外線センサを大量生産する世界規模の産業がすでに存在するという理由で選択された。この低ユニットコストの産業を新しい量子ドットの概念と結合することによって、コスト効果およびマーク付けした品物をトレースする迅速な方法を提供するシステムが作成されてきた。
【0014】
量子ドットは、水安定性を与えるために、ポリマ支持体に組み込まれる可能性がある。これらの材料は、次に、品物の表面上のコード化されたマーカの位置のインジケータとして働くために、可視で放出する量子ドットも含む水ベースのポリマ乳剤に添加されてもよい。
【0015】
異なる波長の分離と識別の両方を容易にするのに十分に小さい発光ピーク半値幅を提供するための正確な物理的寸法を有する量子ドットが確認された。それらは、1〜1000ミクロンの赤外線範囲内で放出するように製造される。
【0016】
本発明は、品物が、供給者または顧客によって、製造後にマーク付けされる方法も提供するが、品物が、製品が真正であるという性質を確認し、追跡可能にするように、製造中にマーク付けされることも可能にする。
【0017】
使用される配合の複雑さのレベルは、本発明の主要な特徴であり、指紋が存在すると判断するのに使用される検出器(複数可)も同様である。各領域に適した検出器を使用して、はい/いいえの定性的応答、または、定量的手法が使用される場合に見られる材料比が提供される。
【0018】
検出器からの結果はいくつかの方法で処理される可能性がある。
i)結果は、走査される品物上の情報を確定するために局所的に使用される。
ii)結果は、必要なセキュリティ対策を介して質問が行われるように、遠隔のデータベースと連携して使用される。
【0019】
第1の手法は、発光のための刺激剤として作用する、必要な検出器要素および紫外ランプを含むスキャナを含むであろう。これは、隠蔽された適用について使用され、蛍光性染料/顔料の使用によってマークの存在を示す。
【0020】
検出器は、一連の狭帯域フィルタの背後に収容される検出器要素を備える。フィルタは、放出器からの最大発光と同じ波長での透過を最大にするように設定される。組み合わせ式で静的な検出器およびフィルタの組み合わせが使用される可能性がある。別法として、フィルタは、検出器にわたって移動し、各バンドパス領域において発光が測定されて、これらの合成物が存在することが判断されてもよい。これは、検出器の前面で回転するホイール上でのフィルタの使用を含み、その位置が、簡単なソフトウェアによって制御され、記録される。
【0021】
ドットは、発光を容易にするために、広いスペクトル源を使用して検出された。存在する量子ドットからの発光は、その後、手持ち式スキャナによって検出された。
【0022】
スキャナ内に保持されたソフトウェアは、その後、発光の組み合わせを2値ストリングに変換し、2値ストリングは、その後、さらに処理されて、その特定の組み合わせについての独自の基準数字が提供される。
【0023】
本発明の一実施形態によって、独自の基準数字が、その後、スキャナ上に保持されたデータに対して検索されて、走査された品物の出所または所有が確定されることが可能になるであろう。
【0024】
さらなる実施形態によって、おそらくは個人的性質を持つそのデータが、手持ち式スキャナからアクセス可能な、中央サーバ上に保持されることが可能になるであろう。
【0025】
本発明が基づく数学的モデル作成は、狭いスペクトル領域の厳密に制御された測定を必要とする。上述した検出器システムは、プリセットされた相対的ピーク高さを求めるように設定されるため、存在する全ての合成物の濃度は、それぞれからのスペクトル出力が同じになるように設定される。検出器は、その後、この出力のプリセットされたパーセンテージ未満の任意のスペクトル出力を無視するようにプログラムされる可能性がある。こうして、完全な基線分離無しで、ピーク最大値が得られる可能性がある。
【0026】
他の検出システムも利用可能であり、電子制御されるファブリペロー干渉計が使用される可能性がある。これらは、使用される放出器のそれぞれの発光波長でプリセットされてもよく、それぞれの出力が測定される。
【0027】
検出器は、存在する材料に関するデータを、検出器自体内か、または、データが検出器から送出されるパームトップもしくはラップトップコンピュータ上に局所的にかのいずれかで保持されるソフトウェアパッケージに供給するであろう。検出器からのデータは、ローカルコンピュータ上に保持され、全ての関連情報を含み、その場で所有者の詳細を提供することが可能なデータベースに、適したフォーマットで送出される。
【0028】
別法として、おそらくは、セキュリティのために、データは、適当な電話または無線技術を使用して、検出器から遠隔のデータベースへ送出されてもよく、遠隔のデータベースから詳細が見出され、現場のオペレーションに戻される。これは、明らかにより安全なオプションであるが、必要とされる情報を得るのに少し時間がかかる可能性がある。
【0029】
量子ドットの組み合わせ、数学的モデル作成、および説明した検出器システムによって組み合わされた、実際上、無制限で即座の追跡可能性を提供する能力は、任意の対象物が追跡されるであろうことを意味し、これは、生命のある対象物を含む最も広いコンテキストで考えられるべきである。カプセル化された量子ドットは、生体組織内にタグとして注入される場合、上記機構によって同様に検出されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースエントリに対応する独自の特性を有し、少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器を備えるセキュリティマーカであって、マーカの前記独自の特性は、前記少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器の独自の発光プロファイルであるセキュリティマーカ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器は、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlSb、PbS、PbSe、Ge、Si、ならびに、その3元および4元混合物から成るグループから選択される請求項1に記載のセキュリティマーカ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器を支持し、タグ付けされる対象物への該マーカの取り付けを容易にする支持構造をさらに備える請求項1または2に記載のセキュリティマーカ。
【請求項4】
前記支持構造はポリマを含む請求項3に記載のセキュリティマーカ。
【請求項5】
前記マーカは、完全にスペクトルの赤外域内にある独自の発光プロファイルを有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセキュリティマーカ。
【請求項6】
対象物について独自にマーク付けし、識別する方法であって、
a)少なくとも1つのナノ結晶量子ドット放出器から、独自の発光プロファイルを有する独自のマーカを作成するステップと、
b)前記独自のマーカを、マーク付けされる対象物に関する情報を含むデータベースと相互参照するステップと、
c)前記対象物に関する前記独自のマーカを提供するステップと
を含む対象物について独自にマーク付けし、識別する方法。
【請求項7】
前記マーカを電磁放射源にさらすステップと、次に、前記マーカから放出される発光を検出するステップとをさらに含む請求項6に記載の対象物について独自にマーク付けし、識別する方法。
【請求項8】
前記電磁放射源は紫外線ランプである請求項7に記載の対象物について独自にマーク付けし、識別する方法。
【請求項9】
前記検出された発光を、前記データベースに対して相互参照するステップであって、それによって、前記マーカに関して記憶された情報を確定する、相互参照するステップをさらに含む請求項7または8に記載の対象物について独自にマーク付けし、識別する方法。
【請求項10】
少なくとも1つのフィルタは、2つ以上の発光波長が前記マーカから放出される状況で、特定の発光波長を最大にするように、前記マーカと前記検出手段の間に設置される請求項7ないし9のいずれか1項に記載の対象物について独自にマーク付けし、識別する方法。

【公開番号】特開2007−4572(P2007−4572A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−185087(P2005−185087)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(505241223)スマートウォーター・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SMARTWATER LIMITED
【Fターム(参考)】