説明

スペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法

【課題】インクジェット法を用いて、透明基板上に形成されたカラーフィルタ上の所定の位置に、所定の高さを有するスペーサを高精度で配置・形成する方法を提供するものである。
【解決手段】透明基板上に、所定周期で空隙を有する遮光膜パターンを形成する工程と、少なくとも、スペーサ粒子と遮光膜に含まれる黒色顔料とを有するスペーサインクをインクジェット法により、前記空隙に吐出する工程と、カラーフィルタを形成する工程と、を有することを特徴とするスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法によってスペーサ粒子をカラーフィルタ基板の遮光部上に選択的に配置・固着する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイはパソコン、携帯電子機器等に広く用いられている。この液晶ディスプレイにおいて対向する基板間隙を一定の間隔に保ち、適正な液晶層の厚みを維持する役割を果たすのがスペーサである。
【0003】
従来の液晶ディスプレイの製造方法においては、画素電極が形成された基板上にスペーサを散布している。したがって、該スペーサの位置制御は不可能であってランダムな配置となるため、ディスプレイ表示部の画素電極上にもスペーサが配置されてしまうという問題があった。スペーサは一般的に合成樹脂やガラス等からなり、画素電極上にスペーサが配置されると消偏作用によりスペーサ部分が光り漏れを起こす。また、スペーサ近傍で液晶の配向が乱れることにより光り漏れが起こり、コントラストや色調が低下し表示品質が悪化する問題がある。
【0004】
このようなスペーサのランダムな分布に伴う問題を解決するために、スペーサを遮光層部位に配置することが必要であり、このようにスペーサを特定の位置にのみ配置する方法としては、フォトリソ方式やインクジェット方式による形成方法が数多く提案されている。
【0005】
フォトリソ方式とは、カラーフィルタ基板における主流な製造方法であって、感光性レジストを基板上に全面塗布し、露光パターンを有するフォトマスクを介して露光、現像することでカラーフィルタを順次形成していく方法である。
【0006】
この方式はパターン精度や製造安定性に優れているため、数多くの特許出願がなされており、例えば特許文献1〜4においては、現像性の向上や変形量の低減などに対応した感光性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、そもそもフォトリソ方式は、フォトマスクを介して露光し、その後不要な部分を現像除去することによりパターンを形成する方式であり、パターン形成部分が1%にも満たないスペーサ形成に対しては、材料のロスが非常に大きいというデメリットがある。
【0007】
一方、インクジェット方式とは、数十μm径の微小ノズルから所望の部位に必要な量のインキを付与することが可能な材料使用効率に優れた方法である。
【0008】
この方式は、精密ステージとの組み合わせで、所望のマイクロパターンを基材上に直接形成することが可能であり、近年、液晶関連技術への展開が盛んである。例えば、特許文献5〜7にはスペーサを所望の位置に直接形成する方法が開示されている。しかしながら、数ミクロンのスペーサ粒子を含む液滴を吐出するにはインクジェットノズル径が大きいものを選択しなければならず、基板上で形成される液滴径は50μm程度の大きさとなる。インクジェット印刷で精度良く、遮光膜上に液滴を着弾させたとしても、液滴中に含まれたスペーサ粒子の液乾燥後の位置が制御不能であるため、線幅が10μm程度と狭い遮光膜を備えるモバイル用液晶ディスプレイに対しては、遮光膜上だけに選択的にスペーサを配置することは、困難であるという問題がある。
【0009】
この問題の解消手段としては、例えば特許文献7〜8においてインクジェット印刷を行
う領域と非印刷領域の表面状態を変化させる方法が提案されている。しかしながら、このために別途処理を行わなければならず、工程が煩雑になるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−206328号公報
【特許文献2】特開2007−204588号公報
【特許文献3】特開2007−65640号公報
【特許文献4】特開2006−276496号公報
【特許文献5】特開2001−83524号公報
【特許文献6】特開2001−188235号公報
【特許文献7】特開2004−021199号公報
【特許文献8】特開2008−96515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、インクジェット法を用いて、透明基板上に形成されたカラーフィルタ上の所定の位置に、所定の高さを有するスペーサを高精度で配置・形成する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、透明基板上に、所定の周期で空隙を有する遮光膜パターンを形成する工程と、
少なくとも、スペーサ粒子と遮光膜に含まれる黒色顔料とを有するスペーサインクをインクジェット法により、前記空隙に吐出する工程と、
着色画素を形成する工程と、を有することを特徴とするスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0013】
次に請求項2の発明では、前記空隙が、遮光膜パターン形成時に同時形成されることを特徴とする請求項1記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0014】
次に請求項3の発明では、前記空隙が、円形状で直径が5μm以上の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0015】
次に請求項4の発明では、前記遮光膜がスペーサインクに対して接触角90°以上の撥液性を呈することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0016】
次に請求項5の発明では、前記スペーサインクは、分散溶媒が沸点150℃以上の有機溶剤を主成分とし、粒子径1〜10μmの黒色スペーサ粒子を0.1〜10重量%、粒子径10〜500nmの黒色顔料を1〜30重量%含有し、当該スペーサインクの23℃条件下での粘度が30cps以下、表面張力が20〜50mN/mであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0017】
次に請求項6の発明では、前記スペーサインクは、接着成分を含み、該接着成分が熱硬化/またはエネルギー線硬化/または紫外線硬化することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0018】
次に請求項7の発明では、前記空隙に配置されたスペーサ粒子数密度が1000〜50000個/cmの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【0019】
次に請求項8の発明では、前記カラーフィルタの赤色、緑色、青色画素がいずれもインクジェット印刷法で形成され、上記スペーサを含めて一括で形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は以上の特徴を持つことから、下記に示す効果がある。
【0021】
即ち、請求項1に係る発明によれば、インクジェット印刷により、必要な位置に必要な量だけスペーサ材料を配置することが可能であるため、使用材料の低減と、併せて所定パターン位置へのスペーサ配置を実現することが可能となる。
【0022】
即ち、請求項2に係る発明によれば、遮光膜形成プロセスでスペーサ配置用の空隙を同時に設けることが可能となるので、改めて空隙を作る必要がなく工程が合理化される。
【0023】
即ち、請求項3に係る発明によれば、遮光膜の空隙が、円形状であり、その直径が5μm以上であることにより、インクジェット法によるスペーサインク滴をスムーズに定着させることが可能となる。
【0024】
即ち、請求項4に係る発明によれば、遮光膜がスペーサインクに対して接触角90°以上の撥液性を有することにより、着弾したインク滴が多少の位置ズレを生じても、乾燥過程で凹部に相当する空隙内に物理的に移動させることが可能となる。
【0025】
即ち、請求項5に係る発明によれば、23℃条件下での粘度が30cps以下、表面張力が20〜50mN/mのインクに調製することで、一般的なピエゾ方式インクジェットヘッドを用いた場合においても正確で、安定した吐出を行うことが可能となる。
【0026】
即ち、請求項6に係る発明によれば、スペーサ粒子が空隙内に固着しているので、スペーサ粒子が後工程やパネル形成後でも空隙から脱離することがない。
【0027】
即ち、請求項7に係る発明によれば、上記方式でカラーフィルタ基板の遮光膜パターンの空隙に選択的に配置されたスペーサ粒子数密度が1000〜50000個/cmであることにより、パネル化によるセル厚の不均一や、パネル化工程での配向膜や液晶の塗布の際に障害となることなく製品に用いることが可能となる。
【0028】
即ち、請求項8に係る発明によれば、上記カラーフィルタとしての赤色、緑色、青色画素がいずれもインクジェット印刷法で形成され、上記スペーサを含めて一括で形成されることにより、工程の大幅短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明になるスペーサ形成過程の概念を説明する工程図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0031】
本発明が係わる遮光膜の形成材料としては、黒色遮光材、感光性ポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤及び溶剤を主成分とし、さらに分散剤等を配合した塗布組成物を使用することができる。材料特性として、遮光性に優れること、アルカリ現像性を有すること、露光時の感度に優れること、などの性能が要求される。
【0032】
黒色遮光材としては、黒色顔料、黒色染料、及び無機材料などがあげられ、例えば黒色有機顔料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、酸化チタン、及び鉄黒からなる群から選択される1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
感光性ポリマーとしては、感光性を付与するエチレン性不飽和二重結合、および現像性を付与するカルボキシキル基を有するアクリルポリマーが好適に用いられる。
【0034】
光重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有する二官能以上のモノマー、オリゴマー、プレポリマー等を用いることが出来る。光重合性モノマーの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることが出来る。これらの化合物は、単独叉は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン、1−{4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)}等を挙げることができる。これらの化合物は、単独叉は2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
分散剤としては、非イオン性界面活性剤例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルなど、また、イオン性界面活性剤例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、及びテトラアルキルアンモニウム塩など、その他、有機顔料誘導体、及びポリエステルなどが挙げられる。分散剤は一種類を単独で使用してもよく、また、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0037】
溶剤としては、黒色樹脂組成物の塗布性、分散安定性などの点から、適宜選択して使用され、例えばトルエン、キシレン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジクライム、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0038】
以上に記載の材料を所定量使用し定法により混合した感光性黒色樹脂組成物を塗布し、フォトリゾグラフィ技術によりパターニングすることで、遮光膜パターンを形成することが出来る。
【0039】
遮光膜の厚さは、好ましくは0.5μm〜3.0μmである。0.5μm未満であると十分な遮光性を得にくく、3.0μm以上ではカラーフィルタ形成時の表面平滑性が低下する傾向となる。
【0040】
本発明においては、遮光膜パターン形成時と同時にスペーサ配置用の空隙を当該遮光膜
パターン内の所定の位置に周期的に形成する。遮光膜パターンは、フォトマスクを介して露光して形成するため、スペーサ配置用の空隙はマスクパターンに組み込まれていれば、容易に形成が可能である。
【0041】
スペーサ配置用の空隙形状は円形が好ましく、これはインクジェット装置から吐出された液滴が、空隙内の隅々まで同じようにインクが拡がるからである。仮に四角形状の場合、四隅の角にインクが浸透しないと、白抜け欠陥となる恐れがある。しかしながら、空隙の配置に供される位置、大きさなどによっては必ずしも円形に限定されるものではない。
【0042】
また、スペーサ配置用の空隙は、遮光膜パターン幅以下のサイズで、その直径が5μm以上であることが好ましい。5μm以下では総じて複数個含まれるスペーサ粒子をすべて版内に収めるのが困難になりセルギャップむらを生じる恐れがあるため好ましくない。
【0043】
本発明における遮光膜はスペーサインクに対する撥液性を有する必要がある。遮光膜形成時の材料自体に予め撥液性を付与する方法、また、遮光膜形成後に別途、撥液性を付与する方法のいずれでも良いが、形成プロセスの効率から考えると前者が好ましい。
【0044】
撥液性を付与するために使用する材料としては、シリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を用いても良いし、あるいはシリコーンゴムを薄く設けてもをよい。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴムも利用され得るし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。
【0045】
具体的なシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体など、変成したものを用いることができる。シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせなどが用いられ、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサンが適宜用いられる。
【0046】
本発明における遮光膜はスペーサインクに対して、接触角90°以上の撥液性を有することが好ましく、90°以下であると空隙内へのスペーサインクの集合性を発現するのが困難となり、高さむらを生じる恐れがあるため好ましくない。
【0047】
本発明のスペーサインクに用いる有機溶剤としては沸点150℃以上、好ましくは180℃以上のものが用いられ、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
本発明に用いられる有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、2,2‘−チオジエタノール等の高沸点低揮発性の多価アルコール類が用いられ、その他にN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の有機溶剤を添加することが出来る。
【0049】
また、本発明における沸点150℃以上の有機溶剤の添加量は50〜90%であることが好ましい。添加量が50%以下であるととスペーサインクの揮発性が高くなり、インク安定性を低下させ、また、90%以上であるとスペーサインクの粘度が上昇し、インクジ
ェット印刷時の吐出不良の原因となるため好ましくない。
【0050】
本発明のスペーサインクに用いるスペーサ粒子としては粒子自体に黒色顔料を分散して着色した粒子径1〜10μmの黒色球状粒子を、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0051】
スペーサ粒子の材質としては特に限定されず、例えば、樹脂、有機物、無機物、これらの化合物や混合物等が挙げられる。上記樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等の線状又は架橋高分子重合体;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアヌレート重合体等の架橋構造を有する樹脂等が挙げられる。また、無機物としてはシリカ等が挙げられる。
【0052】
本発明の係わるスペーサインク中におけるスペーサの固形分濃度は、特に限定されないが、例えばインク全体の0.1〜10%であることが好ましい。
【0053】
スペーサインクにおけるスペーサ粒子の固形分濃度が0.1%未満であると、吐出された液滴中にスペーサ粒子が含まれなくなり易く、カラーフィルタ基板上のスペーサ粒子密度が低下し、また10%を超えると、スペーサ粒子同士が凝集し、インクジェットヘッドのノズルが詰まりったりするので好ましくない。また、液滴中に含まれるスペーサ粒子の平均個数が増加することで、空隙から溢れる粒子が発生し、結果、ギャップむらになるため好ましくない。
【0054】
スペーサインクに用いる黒色顔料としては粒子径10〜500nmの黒色有機顔料、カーボンブラック、アニリンブラック、黒鉛、酸化チタン、及び鉄黒など選択される1種または2種以上を混合して用いることができる。但し、黒色顔料は遮光膜に使用する顔料と同一とする。
【0055】
スペーサインク中における黒色顔料の固形分濃度は、特に限定されないが、例えば分散液全体の1〜30%であることが好ましい。
【0056】
スペーサインクにおける黒色顔料の固形分濃度が1%未満であると、濃度が薄いため空隙内に配置しても遮光性が不足し、白抜けの原因となる恐れがあり、また30%を超えると、黒色顔料同士、あるいはスペーサ粒子との凝集が発生し、インクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となる恐れがあるため好ましくない。
【0057】
スペーサインク中の接着樹脂成分の例としては、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリエチルアクリル酸エステル、スチレンーブタジエン共重合体、ブタジエン共重合体、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ベンゾグアナミン樹脂、フエノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリルアミド共重合体、n−イソブチルアクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ロジン系樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネート、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0058】
上記樹脂成分にアクリル基、カルボキシル基、イソシアネート基などの反応性部位を付与したもの、更にはこれらに必要に応じて架橋剤、光開始剤などを添加したものを硬化型樹脂として使用できる。これらは熱硬化、エネルギー線硬化、または紫外線硬化が可能であり、プロセスに応じ、適宜選択することができる。
【0059】
また、本発明における接着樹脂成分の添加量はスペーサ粒子の添加量に準じて0.2〜20%であり、且つスペーサ粒子と同量以上であることが好ましい。添加量が0.2%以下であるとカラーフィルタ基板上での密着性が乏しくなり、また、20%以上であるとスペーサインクの粘度が著しく上昇し、インクヘッドがノズル詰まりを起こすため好ましくない。
【0060】
また必要に応じ、カラーフィルタ基板およびインクジェットヘッドとスペーサインクとの濡れ性を制御する目的でアルコール類や界面活性剤を用いられ、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0061】
アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール等が使用でき、界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性の界面活性剤を一種類または複数種を添加できる。
【0062】
本発明の係わるスペーサインクは、スペーサ粒子が単粒子状に分散していることが好ましく、その効果を阻害しない範囲で、各種添加剤、例えば、粘接着性付与剤、粘性調整剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤が添加されていても良い。
【0063】
スペーサインクは、23℃条件下での粘度が30cps以下、表面張力が20〜50mN/mであることが好ましく、この範囲外の物性であるとインクジェットヘッドに対する吐出適性が著しく低下するため好ましくない。
【0064】
本発明ではスペーサ粒子をインクジェット方式で遮光膜に形成された空隙位置に配置する。インクジェット方式は、インク滴の生成原理により、連続ジェット(コンティヌアス)方式とドロップ・オン・デマンド方式の2方式に分類される。本発明では、いずれの方式も好ましく採用できる。
【0065】
連続ジェット方式は、インク滴を連続して生成させ、記録信号に応じてインク滴を選択して記録を行う方式であり、Sweet型、マイクロドット型、Herz型、IRIS型などがある。また、ドロップ・オン・デマンド方式は、記録信号に応じてインク滴を噴出させる方式であり、圧力パルス方式、サーマルジェット方式、ERF方式などがある。
【0066】
基板上におけるスペーサ粒子の配置は、特に限定されるものではなく、ランダム配置であっても良いし、特定の位置にパターン化して配置したパターン配置であってもよい。スペーサ粒子に起因する光抜けなどの表示品質の低下を抑制するという観点からは、パネルの非表示部分にスペーサ粒子を配置することが好ましい。また、基板上におけるスペーサの粒子密度は、特に限定されるものではないが、通常1cm平方の領域に1000〜50000個であることが好ましい。
【0067】
本発明の応用展開として、遮光膜パターン形成以後の赤色、緑色、青色画素の形成も含め、全てのプロセスをインクジェット方式で一括形成することが可能である。
【0068】
本発明の対象となる基板としては、スペーサ粒子を配置して上下電極間の短絡を防止する必要のある基板、とりわけタッチパネル用の基板に適用可能であるが、基板の材質に関しては特に限定されるものではなく、ガラス板や樹脂板等を使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
〜スペーサインクの調製〜
カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)85部、粒子径5μmの黒色スペーサ粒子(積水化学製、ミクロパールKB)1.5部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)1.5部を混合、超音波分散させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12部で希釈してスペーサインクを得た。得られた分散液の粘度は9.4mPa・s(23℃)であった。
【0071】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)96部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部、フッ素系撥水処理剤(3M製、EGC−1720)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅20μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に10μm径の円形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0072】
〜遮光膜空隙部へのスペーサ形成〜
吐出量40plのピエゾ式インクジェットヘッド、およびアライメント機構を有する精密ステージを搭載したインクジェット印刷装置に、上記スペーサインクを真空脱泡処理し充填、上記遮光膜パターンのアライメントを行った後、空隙に相当する位置にスペーサインク液滴を吐出した。80℃で5分間、プレ乾燥後、露光処理を行い、180℃で30分間、加熱硬化処理し、スペーサを形成した。
【0073】
〜着色インクの調製〜
メタクリル酸20部、メチルメタクリレート10部、ブチルメタクリレート55部、ヒドロキシエチルメタクリレート15部を乳酸ブチル300gに溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75部を加え70℃にて5時間の反応によりアクリル共重合樹脂を得た。得られたアクリル共重合樹脂を樹脂濃度が10%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈しアクリル共重合樹脂の希釈液とした。この希釈液80.1gに対し顔料19.0g、分散剤0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色、緑色、青色の各着色ワニスを得た。この各着色ワニスをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで顔料濃度が12〜15%、粘度が10mPa・s(23℃)になるように調整し赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色インクを得た。
【0074】
〜カラーフィルタの形成〜
吐出量12plのピエゾ式インクジェットヘッド、およびアライメント機構を有する精密ステージを搭載したインクジェット印刷装置に、上記着色インクを真空脱泡処理し充填、上記遮光膜パターンのアライメントを行った後、各色の開口部に前記の着色インクを吐出し、カラーフィルタを形成した。
【0075】
<実施例2>
実施例1のパターン状遮光膜の形成を下記の通り実施した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0076】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)96部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部、フッ素系撥水処理剤(3M製、EGC−1720)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1.5μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅30μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に20μm径の円形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0077】
<実施例3>
実施例1のスペーサインクの調製を下記の通り実施した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0078】
〜スペーサインクの調製〜
カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)86部、粒子径5μmの黒色スペーサ粒子(積水化学製、ミクロパールKB)0.5部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)1.5部を混合、超音波分散させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12部で希釈してスペーサインクを得た。得られた分散液の粘度は8.9mPa・s(23℃)であった。
【0079】
<実施例4>
実施例3のパターン状遮光膜の形成を下記の通り実施した以外は実施例3と同様の方法で行った。
【0080】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)96部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部、フッ素系撥水処理剤(3M製、EGC−1720)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1.5μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅30μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に20μm径の円形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0081】
<比較例1>
実施例1のパターン状遮光膜の形成を下記の通り実施した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0082】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)96部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部、フッ素系撥水処理剤(3M製、EGC−1720)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅20μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に4μm径の円形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0083】
<比較例2>
実施例1のパターン状遮光膜の形成を下記の通り実施した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0084】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)98部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅20μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に10μm径の円形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0085】
<比較例3>
実施例1のパターン状遮光膜の形成を下記の通り実施した以外は実施例1と同様の方法で行った。
【0086】
〜パターン状遮光膜の形成〜
ガラス基板上に、カーボンブラックを含有する黒色レジスト(新日鐵化学製、V−259BK)98部、光開始剤(チバスペシャリティケミカル製、ダロキュアTPO)2部を混合した塗液をスピンコートにより乾燥後膜厚が約1μmとなるように塗布し、80℃で5分間、プレ乾燥した。次に線幅20μmでマトリクス状に配置した遮光膜パターンの交点に10μmの正方形空隙を有するフォトマスクを介して、露光、現像処理後、180℃で30分間、加熱硬化処理し、パターン状遮光膜を形成した。
【0087】
以上のようにして得られたスペーサ付カラーフィルタ基板における遮光部空隙へのスペーサ配置精度を顕微鏡観察により下記基準に基づいて評価した。
○;空隙内の存在率が90%以上
×;空隙内の存在率が90%未満
【0088】
また、得られたスペーサ付カラーフィルタ基板における遮光膜表面基準でのスペーサ上面高さを測定し、下記基準に基づいて評価した。
○;高さ平均が5.0μm以上、5.2μm未満
×;高さ平均が5.2μm以上
【0089】
また、得られたスペーサ付カラーフィルタ基板における遮光部空隙内の白抜けの有無を顕微鏡観察により下記基準に基づいて評価した。
○;白抜けなし
×;白ぬけあり
【0090】
上記評価基準に基づく、実施例1〜4、比較例1〜3の評価結果一覧を下表に示す。
【0091】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、微細パターン上の所定の位置に、微小な突起状構造物を選択的に形成する工程を伴う製品、例えば各種表示素子やタッチパネル等の製品に適用可能であるが、特にガラス基材やフィルム基材を用いた液晶ディスプレイのスペーサ形成に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 遮光膜パターン
2 遮光膜空隙
3 赤色画素領域
4 緑色画素領域
5 青色画素領域
6 インクジェットヘッド
7 スペーサインク
8 黒色スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、所定の周期で空隙を有する遮光膜パターンを形成する工程と、
少なくとも、黒色スペーサ粒子と遮光膜に含まれる黒色顔料とを有するスペーサインクをインクジェット法により、前記空隙に吐出する工程と、
着色画素を形成する工程と、を有することを特徴とするスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項2】
前記空隙が、遮光膜パターン形成時に同時形成されることを特徴とする請求項1記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項3】
前記空隙が、円形状で直径が5μm以上の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項4】
前記遮光膜がスペーサインクに対して接触角90°以上の撥液性を呈することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項5】
前記スペーサインクは、分散溶媒が沸点150℃以上の有機溶剤を主成分とし、粒子径1〜10μmの黒色スペーサ粒子を0.1〜10重量%、粒子径10〜500nmの黒色顔料を1〜30重量%含有し、当該スペーサインクの23℃条件下での粘度が30cps以下、表面張力が20〜50mN/mであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項6】
前記スペーサインクは、接着成分を含み、該接着成分が熱硬化/またはエネルギー線硬化/または紫外線硬化することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項7】
前記空隙に配置されたスペーサ粒子数密度が1000〜50000個/cmの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項8】
前記カラーフィルタの赤色、緑色、青色画素がいずれもインクジェット印刷法で形成され、上記スペーサを含めて一括で形成されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスペーサ付カラーフィルタ基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−2550(P2011−2550A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144080(P2009−144080)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】