説明

スペースデブリを捕獲する装置

【課題】本願発明の目的は、タンブルしているスペースデブリ、又は回転しているスペースデブリを捕獲するのに主に適した、スペースデブリを捕獲するための洗練した装置を提案することである。
【解決手段】本願発明は、スペースデブリのための少なくとも1つのロープ状の捕獲手段(12,14)でスペースデブリ(10)を捕獲するための装置であって、前記捕獲手段は末端部(16,18)を備え、該末端部(16,18)は、スペースデブリ又はその一部の周りに巻き付けるように構成されており、該ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリと接触すると、前記スペースデブリを牽引するのに十分である摩擦を発生させることができる方法でさらに構成されていることを特徴とする装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、請求項1に記載の、スペースデブリを捕獲するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙利用の増加に起因して、大量のスペースデブリ又はジャンクが生み出され、例えば機能していない人工衛星、燃え尽きたロケットステージ、人工衛星及びロケットの破片によって生み出される。スペースデブリと人工衛星又は宇宙ステーションなどの機能している物体との間の一般的に高速の速度差に起因して、そのようなスペースデブリは、非常に危険とされる。その理由は、高速に起因して、小さな部品でさえ非常に大きい運動エネルギーを有することができ、それによって、衝突中に著しい損傷がいくつかの場合で起こる可能性があるからである。
【0003】
スペースデブリを避けるために、人工衛星などの宇宙機は一般的に、宇宙機が、宇宙機の運用寿命の終わりに宇宙機自体を処分するように構成される。例えば、宇宙機自体を自動的に使用されていない軌道(いわゆる墓場軌道(graveyard orbit))に運んだり、又は地球の大気圏内で燃え尽きるためにロケットエンジンステージと同様に減速させたりする。しかしながら、故障の場合に、使用されない宇宙機は、軌道上に残存する場合があり、機能している宇宙機との衝突の危険性が存在することを引き起こす場合がある。例えば、操作している人工衛星が、故障した人工衛星と衝突することは、発生する場合がある。該故障した人工衛星が、利用されていない可能性があり、且つ制御されていない可能性があり、それによって、非常に多くのスペースデブリが、関連している軌道内に生み出される。
【0004】
特に、低軌道において、人工衛星が、地球大気圏へ入る際に燃え尽きるように、例えば、人工衛星などのスペースデブリ又はジャンクの比較的大きい部分を破壊することは、効率的である。そのような破壊操作(crash maneuver)を開始することができるように、いわゆる牽引人工衛星(tow satellites)は、例えば、故障した人工衛星に近接する近傍まで移動して調査し、エンジンジェット又は同様のものにそれらをドッキングさせなければならない。特に、ドッキングは、標準化されたアダプタがそのために存在しないので、技術的に複雑である。さらに、該操作は、故障した人工衛星が回転している又はタンブリング(tumble)していると仮定されるので、牽引人工衛星にとって非常に危険であり、接近操作及びドッキング操作中に、絶対的に避けなければならない衝突の危険性がそれ故に増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故に、本願発明の目的は、特にスペースデブリの援助なしに、タンブルしているスペースデブリ、又は回転しているスペースデブリを捕獲するのに主に適した、スペースデブリを捕獲するための洗練された装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する、スペースデブリを捕獲する装置によって達成される。本願発明のさらなる構成は、従属請求項の主題である。
【0007】
本願発明の基礎をなす1つの考えは、スペースデブリがロープ状の捕獲手段で捕獲され、該ロープ状の捕獲手段がスペースデブリの周りに巻き付けられ、スペースデブリと接触すると、スペースデブリが牽引されることができるのに十分な高い摩擦を発生させることである。スペースデブリとの接触時に本願発明によるロープ状の捕獲手段によって発生した摩擦を利用することによって、この方法で捕獲されたスペースデブリは、例えば、牽引人工衛星によって牽引されることができ、且つ墓場軌道に輸送されることができ、又は破壊されることができる。本願発明の助けにより、例えば、牽引人工衛星が、衝突の危険性が存在するスペースデブリに非常に接近する状態になる必要がなく、タンブルしているスペースデブリ、又は回転しているスペースデブリを捕獲することが特に可能である。本願発明による該装置はまた、複数の捕獲の試みのために主に使用されることができる利点を有する。すなわち、それは、1回の試みだけを可能にせず、可逆的な方法(reversible manner)で構成されることができる。同様に、該装置は、スペースデブリの複数の連続的な捕獲及び牽引ミッションのために使用されることができるように構成されることができる。さらに、前記装置は、比較的単純で低コストの方法で製造することができ、且つ主に宇宙ミッションのための大きな利点である比較的小さい質量を有する。
【0008】
本願発明の一の実施形態は、スペースデブリのための少なくとも1つのロープ状の捕獲手段でスペースデブリを捕獲する装置であって、前記捕獲手段は末端部を備え、該末端部は、スペースデブリ又は該スペースデブリの一部の周りに巻き付けるように構成されており、該ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリと接触すると、前記スペースデブリを牽引するのに十分である摩擦を発生させることができる方法でさらに構成されている、装置に関する。例えば、該装置は、1つ又は2つのシーブ(rope pulley)を有することができ、該シーブによって、スペースデブリのための高い摩擦力を有し、且つ特別な末端部を有する捕獲ロープは、巻き取られることができ、且つ解かれる(unwound)ことができる。
【0009】
前記ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリを牽引するのに必要な摩擦が発生させることができる低い曲げ剛性(flexural stiffness)を有することができる。さらに、該ロープ状の捕獲手段は、スペースデブリで作用する静止摩擦力が所定の牽引力より大きくなる摩擦係数を有することができる。前記ロープ状の捕獲手段はまた、前記スペースデブリを牽引するのに十分である摩擦を発生させるための付加的な接着剤、特に接着材料を有することができる。
【0010】
前記装置は、スペースデブリのための少なくとも1つのロープ状の捕獲手段を回転させるために構成されることができる。これによって、スペースデブリに衝突する前に、回転しているロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリの周りに巻き付くことができる。
【0011】
前記装置は、スペースデブリのための少なくとも1つのロープ状の捕獲手段を切り裂くための切断手段によってさらに特徴付けられることができる。例えば、切断手段などの切断ナイフは、牽引された人工衛星の最終的な破壊の前に、ロープ状の捕獲手段を切断するのに使用されることができる。
【0012】
前記装置は、スペースデブリのための少なくとも1つの捕獲手段を伸縮させるためにさらに構成されることができる。これによって、捕獲範囲は設定されることができ、それによって、該装置は、複数の種類のスペースデブリに適合させることができる。例えば、前記捕獲手段は、巨大なソーラーセイルを有する回転している人工衛星の場合においてさらに外向きに伸張され、又は人工衛星の断片などの比較的小さなスペースデブリ部品の場合においてあまり伸張されない。
【0013】
本願発明の他の実施形態は、上述されたような本願発明による少なくとも1つの装置でスペースデブリを捕獲し、且つ牽引するための人工衛星に関する。
そのような人工衛星は、複数の捕獲ミッションのための牽引人工衛星として設計されることができ、前記人工衛星が、適切な制御能力及びそれらのミッションのための十分に寸法決めされた捕獲手段を含む。
【0014】
前記人工衛星は、前記人工衛星の両側に取り付けられる本願発明の装置を2つ有することができる。
【0015】
さらに、前記人工衛星は、前記少なくとも1つの装置の前記ロープ状の捕獲手段が前記軸に関して同様に回転する方法で軸(22)に関して回転させるために構成されることができる。
【0016】
本願発明のさらなる利点及び使用の可能性は、図面に図示された例示的な実施形態に関連して以下の説明から生じる。
【0017】
説明において、特許請求の範囲において、要約において、及び図面において、以下の参照符号のリストで使用される用語及び関連した参照符号は、使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】回転している故障した人工衛星を捕獲するために使用される、本願発明に記載のスペースデブリのための捕獲装置を有する牽引人工衛星を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明において、同一の要素、機能的に同一の要素、及び機能的に関連した要素は、同一の参照符号で示されることができる。絶対値は、以下の説明における例のみを付与し、本願発明を制限するように理解されるべきではない。
【0020】
図1は、ソーラーセイルを有する故障して回転している人工衛星10が、どのように本願発明による牽引人工衛星20によって牽引されるように捕獲されるのかを概略的に図示している。この目的のために、牽引人工衛星20は、例えばソーラーセイルとの衝突の危険性がないように必要に応じてできるだけ近くまで故障した人工衛星に接近するが、故障した人工衛星10が捕獲範囲内にあるように、十分近くまで故障した人工衛星に接近する。この接近操作は、地球の制御センターから、又は宇宙ステーションなどの宇宙機から制御される。
【0021】
牽引人工衛星20が捕獲位置に誘導されるとすぐに、牽引人工衛星20の両側に取り付けられた捕獲装置、例えばシーブ(rope pulley)の形態の捕獲装置は、前記シーブに巻き取られたロープ状の捕獲手段12及び16が十分に遠方へ伸張するので、該ロープ状の捕獲手段12及び16の末端部14及び18(図1において、ロープの端部でポイントによって図示される)が故障した人工衛星10まで到達する方法で、制御される。
【0022】
ロープ状の捕獲手段12及び16は、該捕獲手段が、人工衛星10が牽引人工衛星20によって牽引されることができる人工衛星10の一部との接触におけるそのような高い摩擦を生み出すことができるように構成される。この摩擦を達成するために、ロープ状の捕獲手段12及び16は、低い曲げ剛性(flexural stiffness)を有し、且つ/又は、摩擦係数を有しており、それらは、故障した人工衛星10を牽引するために必要な牽引力より大きい故障した人工衛星10での静止摩擦力を発生させることができる。同様に、さらに又は代替的に、ロープ状の捕獲手段12及び16は、牽引に十分である人工衛星での末端部の摩擦を発生させるための接着剤を有することができる。前記接着剤は、例えば、固着剤として使用される化学物質などの接着材料、例えば接着剤、又は例えば、かえし(barb)などの機械的手段を備えることができる。それ故に、本願発明で意味している接着剤は、捕獲中に、ロープ状の捕獲手段12及び16と故障した人工衛星10との間で既に発生した静止摩擦に加えて、ロープ状の捕獲手段12及び16と故障した人工衛星10の一部との間の摩擦を増加させるのに役立つ全ての手段である。
【0023】
ロープ状の捕獲手段12及び18を伸張した後、牽引人工衛星20は、その軸22に関して回転させられ、それによって、伸張したロープ状の捕獲手段12及び18が同様に回転する。遠心力に起因して、末端部14及び18は、スペースデブリの周りで巻き付くための十分な質量を有し、牽引人工衛星20から離れるように動き、伸張したロープ状の捕獲手段12及び16を緊張させる。緊張したロープ状の捕獲手段12及び16は次いで、ソーラーセイルなどの人工衛星10の一部と接触すると、末端部14及び18が、それらの質量に起因して、前記一部の周りでそれぞれロープ状の捕獲手段12及び16を巻くので、故障した人工衛星10を捕獲することができる。図1において、第2のロープ状の捕獲手段16が、どのように故障した人工衛星10のソーラーセイルの周りでその末端部18によって巻き付けられるのかが、図示される。
【0024】
牽引人工衛星20の回転の代わりに、伸張したロープ状の捕獲手段12及び16が回転する方法で、捕獲手段のみを回転させる特別な回転装置を牽引人工衛星に提供することも、考えられ得る。
【0025】
故障した人工衛星10の一部にロープ状の捕獲手段14が巻き付けられるとすぐに、牽引人工衛星20の回転は停止し、捕獲手段を自由にさせる。すなわち、例えば、第1の捕獲手段12などの捕獲手段が、故障した人工衛星10の周りで巻き付けられず、捕獲手段のシーブに巻き付けられる。
【0026】
次いで、牽引操作は開始され、牽引人工衛星20が、破壊のために墓場軌道(graveyard orbit)へ、又は地球表面に向けて故障した人工衛星10を牽引する。墓場軌道又は破壊位置に到達するとすぐに、第2の捕獲手段14は、各捕獲装置の切断ナイフがロープ状の捕獲手段12を切り裂くので、切断される。それによって、牽引人工衛星20と故障した人工衛星10との間の接続は切り離され、それによって、故障した人工衛星10は、その寿命を終える。
【0027】
牽引人工衛星20は次いで、さらなる牽引ミッションに誘導されることができる。
【0028】
本願発明は、スペースデブリに対するフレキシブルな接続によってスペースデブリの捕獲を可能にし、それによって、捕獲装置とスペースデブリとの間の危険性が減少させることができる。さらに、牽引中に、スペースデブリの重心は、特に強固な接続に対して、エンジン制御が簡易化されるように、スラスト軸に沿って自動的にそれ自体を位置付ける。
【符号の説明】
【0029】
10 回転している故障した人工衛星(スペースデブリ)
12 第1のロープ状の捕獲手段
14 第1のロープ状の捕獲手段の末端部
16 第2のロープ状の捕獲手段
18 第2のロープ状の捕獲手段の末端部
20 牽引人工衛星
22 牽引人工衛星の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペースデブリのための少なくとも1つのロープ状の捕獲手段(12,14)でスペースデブリ(10)を捕獲する装置であって、
前記捕獲手段は末端部(16,18)を備え、該末端部(16,18)は、前記スペースデブリ又はその一部の周りに巻き付けられるように構成されており、該ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリと接触すると、前記スペースデブリを牽引するのに十分である摩擦を発生させることができる方法でさらに構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリを牽引するのに十分な摩擦が発生することができる低い曲げ剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリに作用する静止摩擦力が所定の牽引力より大きくなる高い摩擦係数を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロープ状の捕獲手段は、前記スペースデブリを牽引するのに十分である摩擦を発生させるための付加的な接着剤、特に接着材料を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記スペースデブリのための前記少なくとも1つのロープ状の捕獲手段を回転させるように構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記スペースデブリのための前記少なくとも1つのロープ状の捕獲手段を切り裂くための切断手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記スペースデブリのための前記少なくとも1つのロープ状の捕獲手段を伸縮するために構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの装置(12,14,16,18)で、前記スペースデブリを捕獲し、且つ牽引するための人工衛星(20)。
【請求項9】
前記人工衛星が、前記人工衛星の両側に取り付けられる牽引装置(12,14,16,18)を有することを特徴とする請求項8に記載の人工衛星。
【請求項10】
前記人工衛星は、前記少なくとも1つの装置の前記ロープ状の捕獲手段が軸に関して同様に回転する方法で、軸(22)に関して回転させるために構成されていることを特徴とする請求項9に記載の人工衛星。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236591(P2012−236591A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−106579(P2012−106579)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(500466717)アストリウム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (34)