説明

スポットネットワーク受電設備

【目的】 従来のバンク毎のプロテクタヒューズを省いて保守点検作業の簡素化を図り、2バンク運転中にいずれかのバンクのネットワーク変圧器の2次側の短絡事故が生じても負荷給電を継続するように保護協調を改善し、とくに、2バンク構成の場合の供給信頼性を飛躍的に向上する。
【構成】 各配電線1a〜1cと各ネットワーク変圧器2a〜2cの1次側との間に設けられたバンク#1〜#3毎の1次開閉器12a〜12cと、各変圧器2a〜2cの2次側と各プロテクタ遮断器5a〜5cとの間に設けられたバンク#1〜#3毎の変流器13a〜13cと、各変流器13a〜13cの2次短絡電流検出により動作して各1次開閉器12a〜12cそれぞれを開放するバンク#1〜#3毎の過電流継電器14a〜14cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビル用受電設備等に用いられるスポットネットワーク受電設備に関し、とくに、ネットワーク変圧器の2次電圧が低い2次低圧スポットネットワーク受電設備に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スポットネットワーク受電設備は、各バンク(群)のネットワーク変圧器の2次電圧の高,低により、2次高圧設備と2次低圧設備とに大別される。そして、従来の2次低圧スポットネットワーク受電設備は、各バンクの2次側にプロテクタヒューズ(電力用ヒューズ)を設けて形成される。
【0003】すなわち、代表的な3バンク構成の従来の2次低圧スポットネットワーク受電設備は図3に示すように形成される。同図において、1a,1b,1cは高圧又は特別高圧配電線からなる3回線の配電線、2a,2b,2cは1次側が1次断路器3a,3b,3cを介して配電線1a〜1cそれぞれに接続された3バンク#1,#2,#3のネットワーク変圧器である。15a,15b,15cは各変圧器2a〜2cとプロテクタ盤16a,16b,16cとを接続するバスダクトである。
【0004】4a,4b,4cは各プロテクタ盤16a〜16c内に設けられたプロテクタヒューズ、5a,5b,5cはプロテクタヒューズ4a〜4cとネットワーク母線6との間に設けられたプロテクタ遮断器である。
【0005】7a,7b,7cはプロテクタヒューズ4a〜4cとプロテクタ遮断器5a〜5cとの間に設けられた取引用変流器、8a,8b,8cは各バンク#1〜#3のネットワーク継電器である。
【0006】9a,9b,9cは取引用変流器7a〜7cとプロテクタ遮断器5a〜5cとの間に設けられた計器用変流器、10a,10b,10cはプロテクタ遮断器5a〜5cのネットワーク変圧器2a〜2c側の電圧を検出する変圧器側計器用変圧器、11a,11b,11cはプロテクタ遮断器5a〜5cのネットワーク母線6側の電圧を検出する母線側計器用変圧器である。
【0007】そして、通常は各バンク#1〜#3の1次断路器3a〜3cが投入されて3バンク運転の状態になり、各配電線1a〜1cの電力がネットワーク変圧器2a〜2cにより降圧してネットワーク母線6に並列給電され、この母線6からテイクオフ盤(図示せず)を介して各負荷に給電される。
【0008】このとき、各バンク#1〜#3のネットワーク変圧器2a〜2cの容量等は同一に設定され、各配電線1a〜1cが需要電力の1/3ずつを均等に分担する。
【0009】また、保守点検等のため、いずれか1バンク,例えばバンク#3の1次断路器3cが開放操作されて2バンク運転の状態になると、配電線1a,1bにより需要電力の1/2ずつが分担されて負荷給電が継続される。
【0010】つぎに、3バンク運転中に何らかの原因でいずれかのバンク#1〜#3のネットワーク変圧器2a〜2cの2次側とプロテクタ遮断器5a〜5cとの間で短絡事故が発生した場合について説明する。
【0011】例えば図3に示すように、バンク#1のネットワーク変圧器2aとプロテクタヒューズ4aとの間で短絡事故が発生すると、事故バンク#1の配電線1aから事故点Pに実線■の短絡電流が流れるとともに、残りの健全バンク#2,#3の配電線1b,1cからネットワーク母線6を介して事故点Pに実線■,■の逆流の短絡電流が流れる。
【0012】このとき、プロテクタヒューズ4aに流れる短絡電流は、実線■,■を合わせたものとなり、健全バンク#2,#3のプロテクタヒューズ4b,4cに流れる短絡電流の2倍の大きさとなる。そして、この短絡電流が十分大きいため、事故バンク#1のプロテクタヒューズ4aが健全バンク#2,#3のプロテクタヒューズ4b,4cよりも早く即時に溶断する。一方、実線■の短絡電流は電力会社側の送り出し遮断器により遮断される。そして、事故バンク#1は配電線1aから切離されて、健全バンク#2,#3の配電線1b,1cの電力により2バンク運転の状態で負荷給電が継続される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】前記図3の従来設備の場合、バンク毎にプロテクタヒューズ4a〜4cを設けて形成されるため、これらのヒューズ4a〜4cの劣化を監視して取替等を行う必要があり、煩雑な保守点検作業を要する問題点がある。
【0014】また、プロテクタヒューズ4a〜4cが短絡電流により瞬時に溶断するため、とくに2バンク運転中にいずれかのバンクのネットワーク変圧器の2次側で短絡事故が発生すると、プロテクタヒューズに流れる短絡電流は同一となり、事故バンクのプロテクタヒューズが溶断すると同時に健全バンクのプロテクタヒューズも溶断し、負荷給電を継続することができず、保護協調がとられず、いわゆる全停状態になる問題点がある。
【0015】すなわち、図3の3バンク構成の受電設備において、例えばプロテクタ遮断器5cが開放操作されてバンク#1,#2の2バンク運転中に、バンク#1の事故点Pで短絡事故が発生すると、健全バンク#2のプロテクタヒューズ4bと事故バンク#1のプロテクタヒューズ4aに流れる短絡電流は同量となる。
【0016】そして、健全バンク#2からの実線■の短絡電流により、事故バンク#1のプロテクタヒューズ4aが瞬時に溶断する。また、実線■の短絡電流に基づく変流器9aの電流検出,計器用変圧器10a,11aの電圧検出とにより、ネットワーク継電器8aはネットワーク変圧器2aのネットワーク母線6からの逆電力を検出してプロテクタ遮断器5aの開放指令を出すが、このプロテクタ遮断器5aが開放する前に、健全バンク#2の実線■の短絡電流により当該バンク#2のプロテクタヒューズ4bも溶断する。
【0017】したがって、全バンク#1〜#3の給電が停止し、負荷給電が継続されなくなって全停状態になる。また、実線■の短絡電流は、通常、電力会社の送り出し遮断器で遮断されるが、ネットワーク変圧器2a〜2cが小容量の場合、短絡電流が小さく、保護できない場合もある。
【0018】ところで図3の3バンク構成等の多バンク構成の受電設備の場合は、前記したように2バンク運転中で短絡事故が発生したときにのみ全停状態が発生する。しかし、例えば図3のバンク#1,#2のみにより形成される2バンク構成の受電設備の場合は、常時2バンク運転になるため、いずれかのバンクで短絡事故が発生すると、必ず全停状態になる。したがって、短絡事故に対して何らかの対策を施し、全停状態を回避することが極めて重要な問題となっている。
【0019】本発明は、従来のプロテクタヒューズを省いて保守作業を簡素化するとともに、2バンク運転中にいずれかのバンクで短絡事故が発生したときにも負荷給電の継続を可能にし、とくに、2バンク構成の場合の信頼性を飛躍的に向上することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために本発明のスポットネットワーク受電設備の場合、各配電線と各ネットワーク変圧器の1次側との間に設けられたバンク毎の1次開閉器と、各ネットワーク変圧器の2次側と各プロテクタ遮断器との間に設けられたバンク毎の変流器と、各変流器の2次短絡電流検出により動作して各1次開閉器それぞれを開放するバンク毎の過電流継電器とを備える。そして、2バンク構成の場合は、2回線の配電線に2バンクのネットワーク変圧器の1次側それぞれを接続して形成される。
【0021】
【作用】前記のように構成された本発明のスポットネットワーク受電設備の場合、従来設備のバンク毎のプロテクタヒューズが省かれるとともに、従来の各バンクの1次断路器の代わりに1次開閉器が設けられる。
【0022】そして、バンク毎の変流器によりそれぞれの短絡電流が検出されると、各バンクの過電流継電器が動作して1次開閉器が開放し、この開放により従来のプロテクタヒューズが溶断した場合と同様に事故バンクの配電線からの給電が遮断される。
【0023】また、事故バンクのプロテクタ遮断器は、ネットワーク変圧器の2次側のネットワーク母線を介した他の健全バンクからの逆電力の検出により、従来と同様に遮断開放される。
【0024】そして、過電流継電器の動作時限によりプロテクタ遮断器の開放後に1次開閉器が開放するため、事故バンクについては、プロテクタ遮断器が開放されて当該バンクがネットワーク母線から解列した後、1次開閉器が開放して配電線から流入する短絡電流が遮断される。
【0025】さらに、残りの健全バンクについては、それぞれの1次開閉器の開放前に事故バンクのプロテクタ遮断器が開放して事故バンクへの短絡電流の注入が停止し、1次開閉器が開放されずに投入状態に保持されて負荷給電を継続する。
【0026】したがって、従来のプロテクタヒューズの保守点検等が省け、保守作業が簡素化するとともに、2バンク運転中にいずれかのバンクで短絡事故が発生しても健全バンクの負荷給電が継続され、保護協調が改善されて全停状態の発生が防止される。この全停状態の発生防止により、とくに、2バンク構成の場合は、給電信頼性が飛躍的に向上する。
【0027】
【実施例】実施例について、図1及び図2を参照して説明する。図1において、図3と同一符号は同一のものを示し、図3の従来設備と異なる点は、つぎの(i)〜(iii) の点である。
(i)図3の1次断路器3a〜3cの代わりに、2次短絡電流を遮断可能なガス絶縁型負荷開閉器等からなる1次開閉器12a,12b,12cを各1次断路器3a〜3cの位置に設けた点。
(ii)図3のプロテクタヒューズ4a〜4cを省き、各変圧器2a〜2cの真下に短絡電流検出用の変流器13a,13b,13cを設けた点。
(iii) 変流器13a〜13cの短絡電流の検出出力により動作して1次開閉器12a〜12cを整定された動作時限で開放するバンク毎の過電流継電器14a,14b,14cを設けた点。
【0028】そして、正常運転時は1次開閉器12a〜12cがいずれも閉成保持され、3バンク運転でネットワーク母線6の各負荷に給電される。また、定期点検等を行うため、例えば1次開閉器12cが開放操作されたときは、1次開閉器12a,12bが閉成し、バンク#1,#2の2バンク運転でネットワーク母線6の各負荷に給電される。
【0029】つぎに、例えばバンク#1,#2の2バンク運転中にバンク#1のネットワーク変圧器2aの2次側とプロテクタ遮断器5aとの間で短絡事故が発生すると、事故バンク#1の配電線1aから事故点Pに実線■の短絡電流が流れ、同時に、配電線1bから健全バンク#2,ネットワーク母線6を介して事故点Pに実線■の短絡電流が流れる。
【0030】そして、実線■の短絡電流が変流器13aにより検出され、変流器13aの検出出力に基づき、過電流継電器14aが動作して1次開閉器12aが開放する。また、実線■の短絡電流に基づく逆電力の検出により、ネットワーク継電器8aが動作してプロテクタ遮断器5aが開放し、この開放により事故バンク#1がネットワーク母線6から解列する。
【0031】このとき、実線■,■の短絡電流は等しく、例えば図2の実線アに示す大きさになる。また、プロテクタ遮断器5aは図2の実線イの動作特性に沿って動作し、図中の点αのタイミングで開放する。
【0032】さらに、過電流継電器14aは動作時限の整定により図2の実線ウの動作特性に沿って動作し、点αから一般的な継電器動作時限より少し長い時限差τ(=0.6秒)遅れた点βのタイミングで1次開閉器12aが開放する。なお、図2は2次電圧が420Vに設定されたネットワーク変圧器容量1000KVAの受電設備を2バンク運転した場合の動作特性図である。
【0033】そして、図2からも明らかなように、事故バンク#1においては、事故発生瞬時にプロテクタ遮断器5aが遮断開放して事故バンク#1がネットワーク母線6から解列した後、1次開閉器12aが開放する。
【0034】さらに、健全バンク#2においては、当該バンク#2の1次開閉器12bが開放する前に、事故バンク#1のプロテクタ遮断器5aが遮断開放して実線■の短絡電流が消失し、1次開閉器12bは閉成保持される。
【0035】そのため、短絡事故が発生しても、健全バンク#2の電力によりネットワーク母線6の負荷給電が継続し、保護協調が改善され、従来のプロテクタヒューズを設けた場合のような全停状態の発生が回避されて防止される。なお、この1バンク運転のときは、給電量が減少するため、給電を受ける負荷も制限される。
【0036】また、3バンク運転中に例えばバンク#1に前記と同様の短絡事故が生じたときは、プロテクタ遮断器5aの遮断開放により、図1の実線■,■の短絡電流が消失し、健全バンク#2,#3からの並列給電によりネットワーク母線6の負荷給電が継続する。
【0037】そして、図1の構成の場合は、従来設備のプロテクタヒューズ4a〜4cの劣化点検や取換えの保守作業が省け、保守作業の簡素化が図れる。さらに、3バンク運転中だけでなく、2バンク運転中にいずれかのバンクで短絡事故が発生しても、健全バンクによる負荷給電が継続され、保護協調が改善されて従来は避けられなかった2バンク運転中の全停状態の発生が防止され、信頼性が向上する。また、実線■の短絡電流は、1次開閉器12a〜12cにより遮断可能であり、ネットワーク変圧器2a〜2cが小容量の場合でも保護が可能である。
【0038】つぎに、例えば図1の2回線1a,1bに2バンク#1,#2のネットワーク変圧器2a,2bの1次側を接続した2バンク構成の受電設備の場合について説明する。この場合、1次開閉器12a,12bが閉成保持されて2バンク運転が常用される。
【0039】そして、この2バンク運転中に例えばバンク#1に短絡事故が発生すると、前記の3バンク構成で2バンク運転中に事故が発した場合と同様、事故バンク#1のプロテクタ遮断器5aの開放後に当該バンク#1の1次開閉器12aが開放し、健全バンク#2の電力により負荷給電が継続される。
【0040】この場合、従来は短絡事故の発生により必ず生じていた全停状態が回避されて防止され、給電信頼性が飛躍的に向上する。そして、前記実施例では3バンク構成,2バンク構成の場合について説明したが、4バンク以上の多バンク構成の場合に適用できるのは勿論である。
【0041】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成されているため、以下に記載する効果を奏する。従来設備のバンク#1〜#3毎のプロテクタヒューズは省かれる。そして、バンク#1〜#3毎の変流器13a〜13cによりそれぞれの短絡電流が検出されると、過電流継電器14a〜14cが動作して1次開閉器12a〜12cが開放する。また、事故バンクのプロテクタ遮断器5a〜5cは、ネットワーク変圧器2a〜2cの2次側のネットワーク母線6を介した他の健全バンクからの逆電力の検出により、遮断開放する。
【0042】そして、過電流継電器14a〜14cの動作時限によりプロテクタ遮断器5a〜5cの開放後に1次開閉器12a〜12cが開放するため、事故バンクについては、プロテクタ遮断器5a〜5cが開放して当該バンクがネットワーク母線6から解列した後、1次開閉器12a〜12cが開放して短絡電流が遮断される。
【0043】さらに、残りの健全バンクについては、それぞれの1次開閉器12a〜12cの開放前に事故バンクのプロテクタ遮断器5a〜5cが開放して事故バンクへの短絡電流の注入が停止し、1次開閉器12a〜12cが開放されず、負荷給電を継続する。
【0044】したがって、従来のプロテクタヒューズの保守点検等が省け、保守作業が簡素化するとともに、2バンク運転中にいずれかのバンクで短絡事故が発生しても健全バンクの負荷給電が継続され、保護協調が改善されて全停状態の発生が防止され、給電信頼性が向上し、とくに、2バンク構成の場合は、給電信頼性が飛躍的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスポットネットワーク受電設備の1実施例の単線系統図である。
【図2】図1の動作説明用の動作特性図である。
【図3】従来設備の単線系統図である。
【符号の説明】
1a〜1c 配電線
2a〜2c ネットワーク変圧器
5a〜5c プロテクタ遮断器
6 ネットワーク母線
12a〜12c 1次開閉器
13a〜13c 変流器
14a〜14c 過電流継電器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数回線の配電線にバンク毎のネットワーク変圧器の1次側それぞれを接続し、前記各ネットワーク変圧器の2次側をバンク毎のプロテクタ遮断器を介してネットワーク母線に並列接続し、前記ネットワーク母線から各負荷に配電し、前記各ネットワーク変圧器の2次側の前記ネットワーク母線からの逆電力を検出して前記各プロテクタ遮断器それぞれを開放するスポットネットワーク受電設備において、前記各配電線と前記各ネットワーク変圧器の1次側との間に設けられたバンク毎の1次開閉器と、前記各ネットワーク変圧器の2次側と前記各プロテクタ遮断器との間に設けられたバンク毎の変流器と、該各変流器の2次短絡電流検出により動作して前記各1次開閉器それぞれを開放するバンク毎の過電流継電器とを備えたことを特徴とするスポットネットワーク受電設備。
【請求項2】 2回線の配電線に2バンクのネットワーク変圧器の1次側それぞれを接続して形成したことを特徴とする請求項1記載のスポットネットワーク受電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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