説明

スポットライト

【課題】広角配光の光源を用いたスポットライトにおいて、広角拡散光を集光し光利用効率を高める。
【解決手段】スポットライト1は、広角配光の光源3と、光源3からの光を平行光とする集光レンズ4と、この平行光をその焦点F1に集光する第1の凸レンズ5と、第1の凸レンズ5の焦点F1よりも光源3から離れる領域に位置する第2の凸レンズ6とを備える。集光レンズ4は、光源3に対面した凹部形状の光入射面を成す空洞41を有し、光源3を空洞41で覆って光源3からの光を集光し平行光とする。この平行光は第1の凸レンズ5の焦点F1に集光され点光源の仮想光源となる。この仮想光源は第2の凸レンズ6の焦点F2に配置され、仮想光源からの光が第2の凸レンズ6に入射されスポット光となって出射される。これにより、光源3からの広角拡散光が漏れなく集光されてスポット照射されるので、光利用効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば舞台、スタジオ、展示会場などにおける被照射体の大きさに応じビーム角を変えてスポット照明することが可能なスポットライトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスポットライトの例を、図6に示す。スポットライト100は、筐体102内に設けられ全方向の照射の指向特性を持つ高輝度放電灯やハロゲンランプ等からなる光源103を用い、その光が反射鏡104で前方に集光され、凸レンズ105によりスポット照射する。この凸レンズ105からのスポット光の径を決めるビーム角は、光源103と反射鏡104をスライド機構106によって一体に移動することにより可変される。
【0003】
また、図7(a)、(b)に示されるように、光源に複数のLEDを用いたスポットライトが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスポットライト101は、複数の狭角配光のLED107からの光を平凸型のアレイレンズ108で平行光に集光し、平凸レンズ109により仮想焦点Fに集光し、さらに、照射角制御レンズ110によりスポット照射する。このスポットライト101は、レンズ摺動機構により照射角制御レンズ110を移動し、それにより照射角制御レンズ110と仮想焦点Fとの間隔を調整し、スポット光のビーム角を変えて照射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−52957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のスポットライトにおいては、光源103からの光は全方向から前方向に絞られるが、まだ約180°に近い広角の指向特性を成すので、図6のA部に示されるように、その一部が凸レンズ105で集光されず、光利用効率が低下する。また、近年、照明光源として、青色LEDと青色光から黄色光に波長変換するB/Y螢光体とを組み合わせた約180°の広角配光を成す白色LEDが使用されてきている。しかし、このスポットライト100は、光源にこのような白色LEDを用いようとした場合、上記と同様に広角配光の光を集光するために適した光学系を備えていないので、光利用効率を高めることが困難である。
【0006】
また、図7に示したようなスポットライト101においては、LED107に白色LED等の広角配光の光源を用いた場合、アレイレンズ108に臨界角以上で入射する広角成分が全反射される。このため、反射による光損失を生じ、光源からの広角拡散光を仮想焦点Fにすべて集光できず、光利用効率が低下する。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、広角配光の光源を用いたスポットライトにおいて、広角拡散光を集光し光利用効率を高めることができるスポットライトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のスポットライトは、広角配光の光源と、前記光源に対面した凹部形状の光入射面を有して、該光入射面に入射した光源からの光を平行光とする集光レンズと、前記集光レンズから出射された光を集光する第1の凸レンズと、前記第1の凸レンズの焦点よりも光源から離れる領域にあって、光源の光軸に沿ってスライド自在に支持される第2の凸レンズと、を備えたことを特徴とするスポットライト。
【0009】
このスポットライトにおいて、前記集光レンズと前記第1の凸レンズとが一体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスポットライトによれば、光源からの広角拡散光は、ほぼ全て集光レンズの凹部形状の光入射面に入射され平行光となり、漏れなく第1の凸レンズの焦点に集光され、第2の凸レンズより照射されるので、光利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスポットライトの構成図。
【図2】同上スポットライトの光軸上に配置される各レンズの斜視図。
【図3】同上スポットライトの光源の構成図。
【図4】同上スポットライトの広角配光時における仮想光源の調整位置を示す図。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態に係るスポットライトの構成図、(b)は同スポットライトの広角配光時における仮想光源の調整位置を示す図。
【図6】従来のスポットライトの構成図。
【図7】(a)は従来の他のスポットライトの構成図、(b)は同スポットライトにおける光源とアレイレンズとの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るスポットライトについて、図1乃至図3を参照して説明する。図1、図2に示されるように、スポットライト1は、筐体2と、広角配光の光源3と、集光レンズ4と、第1の凸レンズ5と、第2の凸レンズ6と、内部筐体7と、位置調整機構8とを有する。集光レンズ4は、光源3に対面した凹部形状の光入射面となる空洞41を有し、空洞41に入射した光源3からの光を平行光として出射する。第1の凸レンズ5は、集光レンズ4から出射された平行光をその焦点F1に集光する。第2の凸レンズ6は、第1の凸レンズ5の焦点F1よりも光源3から離れる領域にあって、光源3の光軸10に沿ってスライド自在に支持される。
【0013】
筐体2は、第2の凸レンズ6、内部筐体7、及び位置調整機構8を収納し、内部筐体7は、光源3、集光レンズ4、及び第1の凸レンズ5を収納している。光源3、集光レンズ4、及び第1、第2の凸レンズ5、6は、共通の光軸10上に順に照射方向に沿って配置され、内部筐体7は位置調整機構8に取り付けられ光軸10に沿って移動自在とされている。このスポットライト1は、光源2からの光を集光レンズ4で平行光とし、この平行光を第1の凸レンズ5の焦点F1に集光し、内部筐体7を位置調整機構8で移動して焦点F1と第2の凸レンズ6との間隔を調整し、スポット径を変えて被照射体を照射する。
【0014】
筐体2は、第2の凸レンズ6、内部筐体7、及び位置調整機構8等の内部部品を取り付けるための矩形や円形等の外装ケースを成し、その部材は、舞台照明用などに対しては耐熱性が要求されるので、アルミニウム、スチール、マグネシウムなどの金属が望ましい。また、筐体2は光源3と対向する照射方向側の側面に開口を有し、その開口には第2の凸レンズ6が取り付けられている。
【0015】
光源3は、後述するように、青色LEDと、青色LEDからの青色光(B)を黄色光(Y)に波長変換するB/Y蛍光体とにより成る白色LEDが用いられ、この白色LEDは前方に向け広角拡散光を放射する。
【0016】
集光レンズ4は、光学材料BK7(ホウケイ酸クラウンガラスをいう)などを用いたガラスレンズ、またはアクリル、ポリカーボネードなどを用いた樹脂レンズなどが使用され、特に、高照度の照明が要求される場合、耐熱性の高いガラスレンズが用いられる。集光レンズ4は、光軸10を中心軸とする回転体を成す樽状のレンズ体40を有する。レンズ体40は、光源3に対向する面に形成された凹部形状の空洞41と、空洞41を通ってレンズ体40内に入射した光を光軸10方向に反射する反射面42と、反射面42で反射された光を外部に出射する平面状の出射面43とを有する。集光レンズ4は光源3の光の出射側をほぼ全て空洞41で覆い、光源3からの広角拡散光のほぼ全てが空洞41内に入射するように配置されている。なお、レンズ体40の形状は樽状に限らない。
【0017】
空洞41は、光軸10を中心軸とする回転体を成す。この空洞41は光源3を覆うための開口44と、光源3の広角拡散光のうち主として広角成分の光が入射するすり鉢状の入射面45と、その天面を成し光軸10に近い狭角成分の光が入射する入射面46とを有する。この入射面46は凸状に形成されている。
【0018】
この集光レンズ4においては、光源3から空洞41に入射された広角拡散光のうち、入射面45に入射した光は反射面42で光軸10に沿う平行光とされ、入射面46に入射した光は凸レンズ作用で光軸10に沿う平行光とされる。すなわち、集光レンズ4は光源3からの光軸近傍の光だけではなく、それ以外の広角に拡散した光も平行光として集光し、光源3からの全ての光を第1の凸レンズ5に向けて平行光として出射する。
【0019】
第1の凸レンズ5は、集光レンズ4と同様のレンズ部材が使用され、集光レンズ4の出射面43に対向する平面状の入射面51と、凸面を成す出射面52とを有する平凸レンズを成し、その入射面51は集光レンズ4の出射面43と等しい形状を成している。また、第1の凸レンズ5はその焦点F1に集光レンズ4からの平行光を集光し、この焦点F1の1点に集光された光は、第2の凸レンズ6に対して等価的に点光源の仮想光源となる。
【0020】
第2の凸レンズ6は、第1の凸レンズ5と同様のレンズ部材が用いられ、第1の凸レンズ5に対向する入射面が平面を成し、照射方向の出射面が凸状を成す平凸レンズより成る。第2の凸レンズ6は、その焦点F2の位置が第1の凸レンズ5の焦点F1(仮想光源)の位置に、かつ、焦点F1の仮想光源よりも光源3から離れる領域に配置される。ここでは、内部筐体7が筐体2内で光軸10に沿って移動自在であるので、筐体2が内部筐体7に対して相対的に移動自在であることになり、筐体2に固定される第2の凸レンズ6は、等価的に光軸10に沿ってスライド自在に支持されていることになる。
【0021】
内部筐体7は、筐体2と同様の部材から成る矩形又は円形の筒体を成し、照射方向に第1の凸レンズ5を装着するための開口を有し、その開口に対向する筒体底面に光源3を備え、筒体内に集光レンズ4と第1の凸レンズ5とを保持するレンズホルダを兼ねている。
【0022】
位置調整機構8は、焦点F1の仮想光源と第2の凸レンズ6との距離を変更するための機構であり、光軸10に沿って筐体2内の底面に敷かれたレール21上に移動可能に取り付けられる。位置調整機構8は、例えば、内部筐体7を支持する可動台を備え、この可動台をレール21上でスライド可能とし、かつ、ねじ等の固定具によりレール21上の任意の位置で固定可能とする。この位置調整機構8は、内部筐体7を光軸10に沿って移動及び所望位置で固定させる構成であればよい。なお、内部筐体7を移動させる代わりに、内部筐体7及び仮想光源の位置を筐体2に固定し、第2の凸レンズを光軸10に沿って移動及び所望位置で固定させる構成であってもよい。例えば、第2の凸レンズを光軸方向にスライド自在のレンズホルダに固定し、このレンズホルダに設けた歯車と筐体2内に固定されたラックとを噛合させ、その歯車の回転を手動又は自動で操作してレンズホルダを光軸方向に沿って前後にスライドするなどの、周知のレンズ摺動機構を用いることができる。
【0023】
図3に示されるように、光源3は青色光を発光するLED31と、LED31が埋め込まれて実装される絶縁基板32と、この絶縁基板32に埋め込まれたLED31を覆う波長変換素子のB/Y螢光体33とを有する。この光源3はLED31からの青色光と、この青色光を受けたB/Y螢光体33より出射される黄色光とにより白色光を発生する白色LEDとして形成されている。この白色LEDは、同図に示されるように、その放射光分布がランバート分布を成し、約180°の範囲で前方を照射する広角配光Dを成している。
【0024】
上記のように構成されたスポットライト1においては、光源3からの光は集光レンズ4で平行光とされて、集光レンズ4の焦点F1に集光されて仮想光源となり、この仮想光源と第2の凸レンズ6との距離が位置調整機構8の操作により変更される。この操作により、第2の凸レンズ6から出射されるスポット光における光軸10に対し広がるビーム角が変化される。上記図1に示した状態においては、焦点F1の仮想光源の位置が第2の凸レンズ6の焦点F2の位置になるよう調整されているので、第2の凸レンズ6からの出射光は平行光となり、ビーム角の狭い狭角配光のスポット光として照射される。
【0025】
図4は、第2の凸レンズ6からの出射光のビーム角が拡大され、スポット光が広角配光を成す状態を示す。この状態においては、位置調整機構8の調整により、第1の凸レンズ5は第2の凸レンズ6に接近され、その焦点F1の仮想光源の位置が、第2の凸レンズ6の焦点F2よりも第2の凸レンズ6の入射面側に近付くように配置されている。このとき、第2の凸レンズ6から出射されるスポット光は、ビーム角が拡大され光軸10に対し広がる広角配光となる。
【0026】
スポット光のビーム角の調整に際して、第1の凸レンズ5は、その焦点F1と第2の凸レンズ6の焦点F2とが一致する図1に示された状態から、第2の凸レンズ6に略接触するまでの範囲で移動可能とされている。この調整範囲では、焦点F1の仮想光源からの光は、ほぼ全て第2の凸レンズ6に入射されるので、ビーム角が変化しても光利用効率は殆ど低下しない。なお、焦点F1の位置の仮想光源が第2の凸レンズ6の焦点F2の位置よりも光源3側に位置するなら、広いビーム角の配光とすることができるが、仮想光源からの第2の凸レンズ6への入射光の径が第2の凸レンズ6のレンズ口径より大きくなる。このため、仮想光源からの光が全て第2の凸レンズ6に入射されなくなると共に、筐体2が光軸10方向に長くなり装置全体が大型化する。このようなことがないように、本実施形態では、仮想光源が第2の凸レンズ6の焦点F2の位置よりも光源3側には移動できないようにし、仮想光源からの光が常に第2の凸レンズ6の開口内に入射されるようにし、かつ、ビーム角を広く調整できるようにしている。
【0027】
このように、本実施形態によれは、光源3からの広角拡散光は、ほぼ全て集光レンズ4の空洞41内に集光され平行光となると共に、その平行光が第1の凸レンズ5の焦点F1に絞られる仮想光源となり、ほぼ全て第2の凸レンズ6に入射する。これにより、広角配光の光源3を用いた場合に、光源3からの光を漏れなくスポット照射でき、高い光利用効率が得られる。
【0028】
また、光源3を1つの白色LEDから構成しているので、高輝度放電灯やハロゲンランプ、又は複数のLED等を使用する場合と比較し、小型化できる。また、複数のLEDを使用する場合に比べ、LED間の色ばらつきにより照射面に色むらが発生することがない。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係るスポットライトについて、図5(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態は、前記実施形態において集光レンズ4と第1の凸レンズ5とを一体としたものである。本実施形態の集光レンズ4aは、前述の集光レンズ4の出射面43と第1の凸レンズ5の入射面51とが一体とされている。この集光レンズ4aは、その入射面側を前記実施形態と同様にレンズ体40の空洞41とし、その出射面側を第1の凸レンズ5の出射面52に相当する出射面43aとしている。この集光レンズ4aは、空洞41内に入射した光源3からの光を反射面42で光軸10に沿う平行光とし、かつ、この平行光を凸状の出射面43aにより、その焦点F1に集光し、仮想光源を形成する。
【0030】
本実施形態によれば、集光レンズ4aは前記実施形態における集光レンズ4の出射面43と第1の凸レンズ5の入射面51との界面で発生し易い表面反射がなくなり、光ロスがなくなるので、光利用効率を高めることができる。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、光源3を一つのLEDとしたが、複数のLEDを用いてもよい。また、白色LEDは青色LEDと組合わる波長変換素子として、B/Y蛍光体に限らず、白色光を発生するために組み合わせられる赤色及び緑色螢光体など、他の波長変換素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 スポットライト
3 光源
4、4a 集光レンズ
41 空洞(凹部形状の光入射面を構成)
45、46 入射面(光入射面)
5 第1の凸レンズ
6 第2の凸レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広角配光の光源と、
前記光源に対面した凹部形状の光入射面を有して、該光入射面に入射した光源からの光を平行光とする集光レンズと、
前記集光レンズから出射された光を集光する第1の凸レンズと、
前記第1の凸レンズの焦点よりも光源から離れる領域にあって、光源の光軸に沿ってスライド自在に支持される第2の凸レンズと、を備えたことを特徴とするスポットライト。
【請求項2】
前記集光レンズと前記第1の凸レンズとが一体であることを特徴とする請求項1に記載のスポットライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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