説明

スポーツシューズ

【課題】側方へのスライド時に強い踏ん張り力を加えても引っ掛かりを生じることがなく、踏ん張り力に応じた制動力が得られて、安定した姿勢を維持しつつ容易にスライド量のコントロールをすることができるスポーツシューズを提供すること。
【解決手段】周側縁に沿って立上り部24が形成されたミッドソール22の下面に、踏み面を形成するアウターソール30を貼り合わせ、該アウターソールの外周縁には、該ミッドソールの周側面に至る延出部32が形成されてなるスポーツシューズにおいて、該ミッドソール周側面22aの小指に沿う部位に、該ミッドソールの立上り部24の靴幅方向の厚みにほぼ相当する以上の厚みを有した肉盛り部29を外側に向けて突出させて一体形成して、該アウターソール30の外周縁から該肉盛り部29の突出表面に向けて延出形成する延出部32を、そのほぼ全長に亘って円弧状に大きく湾曲形成して回り込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軽快なフットワークが得られるようにしたソール構造のスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スポーツシューズにあっては、軽量性は勿論のこと、前方等への踏み込み時における接地面に対する高いグリップ力、着地時における衝撃緩衝性、並びに側方へのスライド時における安定性、つまり横方向力に対する高い剛性と足部のホールド性等が求められている。
【0003】
そこで、上記の様な要求を満たすために、従来ではそのソール構造を図9〜図12に示す様に構成していた。なお、図9(a)は靴底の内側部を示す側面図で、(b)はその底面図、(c)はその外側部を示す側面図であり、図10は靴底をつま先側から見た正面図、図11は図9中の各図におけるXI−XI線矢視部の断面図、図12は同様にXII−XII線矢視部の断面図である。
【0004】
即ち、図9〜図12の各図に示すように、靴底2は、グリップ力を確保するためにゴムや樹脂からなるアウターソール4と、衝撃緩衝性を確保するために発泡樹脂体からなるミッドソール6とによって主に構成している。ミッドソール6には、図9(b)を除く図9〜図12の各図に示すように、その周側縁に沿って上方に延びる立上り部8を形成しており、この立上り部8には靴の本体に相当するアッパー部材(図示せず)が繋がるようになっている。そして、この立上り部8は足部のホールド性を高める機能も有している。
【0005】
図9に示すように、アウターソール4は土踏まず部を挟んで前後の2部材に分割形成されていて、図10〜図12の断面図にも示されているように、それぞれミッドソール6の下面に貼り合わされて、靴底面に踏み面を形成している。また、図9(b)を除く図9〜図12の各図に示すように、ミッドソール6の周側面6aにおける下縁部分に沿ったアウターソール4の外周縁部分には、当該ミッドソール6の周側面6aに向けて上方に延びる延出部10を形成している。そして、当該延出部10が設けられたアウターソール6の外周縁角部は、半径が数mm程の小さな円弧状に形成して面取りしており、その面取り半径は内足部側で概ね5mm程度、外足側で2mm程度に設定している。また、アウターソール4の表面には、接地面に対するグリップ力を発揮させるための溝部12を上記延出部10までにも及ばせて、ほぼその全面に亘って所定のパターン形状で形成している。ここで、上記角部の面取り形状を外足部側で2mm程度と小さく形成しているのは、スライドを抑制するための踏ん張り力は外足部側に集中して作用するので、当該踏ん張り力が十分に接地面側に伝わるようにする為と、足首の外方への捻転を防止する為である。即ち、当該外足部側の面取り半径を大きくするとスライド時の踏ん張りが効かなくなって、足首の外方への捻転も起こしやすくなる、と言うのが従来の通説となっていた。
【0006】
また、特許第2929615号公報には、靴底の着地時における横方向の揺れを抑制してフットワークの安定性の向上が図れるスポーツシューズの技術として、靴底の中足部外側縁に、硬度が50〜70度(JIS−A硬度)で縦断面が略L字状をなして下側部が外方に1〜3mmフレアー状に突出するスタビライザーや、当該外方への突出に加えて更に靴底底面の下方にも1〜3mm突出するスタビライザーを設けることが示されており、当該両スタビライザーの突出端も丸められた面取り形状とされている。
【特許文献1】特許第2929615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の図9〜図12に示した様な従来のソール構造を有したスポーツシューズにあっては、側方へのステップ時にそのスライド量を抑制すべく強く踏ん張ると、アウトソールの周縁の角の引っかかり感が急激に強くなって制動力も急増してしまう傾向がある。そして、このような引っかかり感及び制動力の急増が生じると、プレーヤーは足首を外方に捻転させられる等、その姿勢を乱され易くなる。このためそれが気になって強く踏ん張れないことになる。この結果、所望する適切なスライドが得られなくなる等して、軽快なフットワークが損なわれるという課題がある。
【0008】
また、上記特許文献1にて提案されている靴底にあっても、スタビライザーの下側部における外方への突出量は3mm以下であるから、当該突出部の先端に形成される面取り形状もその半径は最大でも3mm以下となり、当該突出部の引っ掛かりが大きくなる。つまり、上記課題を避けられない傾向があると思量される。また、外方への突出に加えて更に下方にも突出させたスタビライザーにあっては、下方に突出されているが故に、先端の接地面への食い付きが強くなるので、やはり上記課題を避けられない傾向にあると思量される。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、側方へのスライド時に強い踏ん張り力を加えても引っ掛かりを生じることがなく、軽快なフットワークをなし得るスポーツシューズを提供することにある。
【0010】
また、他の更なる目的として、側方へのスライド時等に強い踏ん張り力を加えた際に、アッパー部材が外方に孕み変形するのを可及的に抑制し得るスポーツシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために発明にあっては、アッパー部材を繋ぎ合わせるための立上り部が周側縁に沿って形成されたミッドソールの下面に、踏み面を形成するアウターソールを貼り合わせ、該アウターソールの外周縁には、該ミッドソールの周側面に至る延出部が形成されてなるスポーツシューズにおいて、該ミッドソール周側面の小指に沿う部位に、該ミッドソールの立上り部の靴幅方向の厚みにほぼ相当する以上の厚みを有した肉盛り部を外側に向けて突出させて一体形成するとともに、前記延出部を該アウターソールの外周縁から該肉盛り部の突出表面に向けて延出形成し、円弧状に大きく湾曲形成して回り込ませたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記スポーツシューズにあっては、前記肉盛り部に向かう延出部の接地側面に溝部を設けた構成となし得る。
【0013】
また、前記スポーツシューズにあっては、前記ミッドソールの内足側の母子球に沿う部位において、該ミッドソールの周側面に向けて延出されるアウターソールの延出部が、円弧状に湾曲形成されている構成となし得る。
【0014】
さらに、前記スポーツシューズにあっては、前記肉盛り部に、上端が上方に延びて前記アッパー部材の外側面に至り、該アッパー部材に接合されて該アッパー部材の外方への孕みだしを抑制する補強部材を埋設した構成とするのが望ましい。
【0015】
ここで、前記補強部材は、前記ミッドソールの上面に沿って靴幅中央方向に延出されて、該上面に面一に埋設された延出片を有している構成となし得る。
【0016】
また、前記補強部材の靴内部側の周縁には、靴長方向前後に延びる鍔部が一体形成されている構成とするのが望ましい。
【0017】
また、前記補強部材は、その上部側が靴長方向前方に向けて傾斜されて設けられている構成となし得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスポーツシューズによれば、横方向等の側方へのスライド時に強く踏ん張って、肉盛りが突出形成されている小指に沿った部位に当該踏ん張り力が集中的に作用しても、当該肉盛り部の突出表面には、アウターソールの外周縁から円弧状に大きく湾曲して延出形成された延出部が回り込まされて設けられているので、引っ掛かりが生じ難く、もって制動力が急激に増大することがない。これにより、プレーヤーは、上記引っ掛かりを気にすることなく、意図する強さで踏ん張ることができる。この結果、スライド量のコントロールも容易に行えるようになる等、プレーヤーは自己のイメージに合った軽快なフットワークを行うことができるようになる。さらに、肉盛り部によって、ミッドソールの外足部の剛性が高められるので、スライド時の横方向力に対する耐力が向上して当該部位の変形が抑制されて、足部の安定したホールド性が得られるようになる。
【0019】
また、外側方に突出させて形成した肉盛り部に、大きな円弧状の湾曲部を形成するので、従来のものと比しても接地幅は減少することがない。これにより、横方向へスライドした場合にも、十分な接地設置面積を確保できるので、足首の捻転などを確実に防止することができる。
【0020】
また、前記肉盛り部に、上端が上方に延びて前記アッパー部材の外側面に至り、該アッパー部材に接合されて該アッパー部材の外方への孕みだしを抑制する補強部材を埋設することで、横方向へスライドした際のアッパー部材の外側方への変形を可及的に防止して、足部のホールド性を格段に向上させることができ、足首の捻転などをより一層、確実に防止することができる。 また、前記補強部材に、前記ミッドソールの上面に沿って靴幅中央方向に延出されて、該上面に面一に埋設される延出片を一体形成することで、横方向へスライドした際の補強部材の外方への傾倒力を、該延出片に加わる足部からの鉛直荷重で相殺することができ、当該傾倒力を軽減してアッパー部材の孕み変形をより一層抑制して、足部のホールド性を更に向上させることができる。
【0021】
また、前記補強部材の上部側が靴長方向前方に向けて傾斜されて設けられている構成とすることで、踵部を浮き上がらせたときの靴前部の反りを阻害せずに柔軟に変形させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係るスポーツシューズの好適な実施の形態について、テニスシューズを例示して添付図面に基づき詳述する。
【0023】
===第1実施形態===
図1〜図5は本発明に係るスポーツシューズの第1実施形態を示すものであり、図1(a)は靴底の内側部を示す側面図、(b)は底面図、(c)は外側部を示す側面図、図2は靴底の平面図、図3は靴底をつま先側から見た図、図4は図1中の各図におけるIV−IV線矢視断面図、図5は同様に図1中の各図におけるV−V線矢視断面図である。
【0024】
ここで、当該図1〜図5に示してある第1実施形態のテニスシューズは上級者向けのものであって、図9〜図12に示して説明した従来例の改良型モデルである。従って、その構成は図示上からも明らかなように共通している部分が多く、その基本構成はほぼ同じになっている。
【0025】
即ち、図1〜図5の各図に示すように、このテニスシューズの靴底20は、発泡樹脂製のミッドソール22を有する。このミッドソール22には、図1(a),(c)と図2〜図5に示されているように、その周側縁の全周に沿って、アッパー部材(図示せず)が繋ぎ合わされる立上り部24が上方に向けて形成されている。また、図2に示すように、ミッドソール22の上面には踵部と前足部とに凹部が形成されていて、この凹部には当該ミッドソール22よりも軟質な発泡樹脂製のクッション材26が設けられている。また、図1(a),(c)に示すように、ミッドソール22の土踏まず部分28は下面側が上方に凹まされてアーチ状に湾曲形成されている。
【0026】
図1と図3〜図5の各図に示すように、このミッドソール22の下面には、着地時の踏み面を形成するアウターソール30が貼り合わされて設けられている。このアウターソール30は上記土踏まず部分28には設けられておらず、当該土踏まず部分28を挟んで踵部と前足部とに2分割形成されている。
【0027】
また図1(a),(c)と図3〜図5に示すように、このアウターソール30の外周縁には、下方から上方に延出されてミッドソール22の周側面22aに至る延出部32が形成されている。なお、以上の構成は図9〜図12に示した従来例と共通するものである。
【0028】
ところで、上記ミッドソール22の周側面22aにおける外足側の土踏まず部28よりも前方に位置した小指に沿った部位には、図1〜図5に示すように、当該ミッドソール22の立上り部24の靴幅方向の厚みにほぼ相当する以上の厚みを有した肉盛り部29が外側に向けて突出されて一体形成されている。そして、図5に示すように、この肉盛り部29には上記したように、その突出表面29aに向けてアウターソール30の外周縁から延出部32が延出形成されている。ここで、当該延出部32はそのほぼ延出長の全長に亘って円弧状に大きく湾曲形成されていて、肉盛り部29の突出表面29aに回り込まされている。本実施形態にあっては、その円弧状の延出部32の半径は具体的には、10mmに設定されており、従来例の面取り形状の半径が2mmであったのと比較すると5倍もの大きな円弧面となっている。
【0029】
従って、側方へのスライド時に強く踏ん張っても引っ掛かりが生じることは殆どなく、当該引っ掛かりに伴う制動力の急増も生じることがない。よって、スライド時の姿勢が安定し、かつ踏ん張り力の掛け具合に応じた制動力を容易に得られるようになるので、所望する適切なスライド量にコントロールすることが容易になる。つまり、プレーヤーは自己のイメージに合った軽快なフットワークを行うことができるようになる。
【0030】
また、延出部32の外側面には、溝部が形成されている。これにより、プレーヤープレーヤーが側方にスライドした際に、仮に過度に外側に傾いた場合にも、しっかり溝部がグリップするので、プレーヤープレーヤーが足を捻ったり、滑って転倒することを防ぐことができる。
【0031】
さらに、肉盛り部29によって、ミッドソール22の外足部の横方向への剛性が高められるので、スライド時の横方向力に対する耐力が向上して当該部位の変形が抑制される。これにより、足部の安定したホールド性が得られるようになり、このことによっても姿勢の安定性を更に高めることができるようになる。
【0032】
また、さらに着目すべき点に、従来の標準的な構成である立上がり部24の外側方に肉盛り部29を突出させて形成し、さらにこの肉盛り部29には、大きく円弧状に湾曲させて形成したアウターソール30の延出部32を回り込ませて設けている点がある。これにより、従来のものと比しても当該部位の靴幅方向の接地幅は減少することがない。この結果、横方向へスライドした場合にも、十分な設置面積を確保できるので、足首の捻転などを確実に防止することができる。
【0033】
また、ミッドソール22の内足側における母子球が位置する部位にあっては、これに沿って前後の所定長に亘り、当該ミッドソール22の周側面22aに向けて延出されるアウターソール30の延出部32を、上記肉盛り部29に形成される延出部32よりも更に大きな円弧状に湾曲形成させており、その円弧径は具体的には半径15mmに設定している。これは、側方への蹴り出しを行う場合には、主に母子球付近に体重をかけて、膝を内側に倒して蹴り出すことに対処したものである。つまり、従来は、ミッドソールの内足側における母子球が位置する部位は角ばっており接地設置面積が小さかったが、本実施の形態によれば、当該母子球に沿った部位の延出部32を大きな円弧面とすることによって、膝の内傾に伴ってもアウターソール30の接地面積を確保できる。この結果、膝の内傾に伴っても、アウターソール30の十分な接地設置面積により、蹴り出し力のロスが生じるのを防止できる。さらに、十分な設置面積を確保することにより、靴底の変形を小さくできるので、プレーヤープレーヤーは意図した通りに動きを調整できる。このように、軽快なフットワークを実現できる。
【0034】
以上説明したように、この第1実施形態によれば、側方へのスライド時に強い踏ん張り力を加えても引っ掛かりを生じることがなく、軽快なフットワークをなし得る。
【0035】
なお、アウターソール30の踵部を円弧状に湾曲形成させても良い。これにより、踵から踏み込む場合にも、十分な設置面積を確保できる。よって、踵から踏み込んだ場合にも軽快でかつ確実なフットワークを実現できる。
【0036】
===第2実施形態===
図6〜図8は本発明に係るスポーツシューズの第2実施形態を示すものであり、図6はスポーツシューズの側面図、図7は図6に示すスポーツシューズの靴底の外側部を示す側面図、図8(a)は図7中に示されるIIXa−IIXa線矢視部の断面図、(b)は同じく図7中に示されるIIXb−IIXb線矢視部の断面図、(c)は同じく図7中に示されるIIXc−IIXc線矢視部の断面図である。
【0037】
ここで、この第2実施形態のスポーツシューズにあっては、前述した第1実施形態で説明したテニスシューズにおいて、そのミッドソール22の周側面の小指に沿う部位に形成した肉盛り部29とその上部のアッパー部材とに掛けて、当該アッパー部材の外方への孕み変形を抑制する補強部材をさらに設けたものである。つまり、当該補強部材の配設箇所が第1実施形態のテニスシューズと異なる部分となっており、図1〜図5にて示されているその他の部分は基本的にこの第2実施形態にも共通するものであって同一の構成になっている。よって、以下には当該相違する補強部材の配設構造部分に付いて詳述し、第1実施形態のテニスシューズと同一な構成部分については、同一の符号を付して簡略的に説明する。
【0038】
図6に示すように、テニスシューズの靴底20のミッドソール22には、その周側縁の全周に沿って形成されている立上り部24の内側に、アッパー部材40の下端部周側縁が接合されて一体的に繋ぎ合わされている。図7にも示すように、このミッドソール22には、第1実施形態と同様に(図1、図3、図5を参照)、その周側面22aにおける外足側の土踏まず部28よりも前方に位置した小指に沿った部位に、当該ミッドソール22の立上り部24の靴幅方向の厚みにほぼ相当する以上の厚みを有した肉盛り部29が外側に向けて突出されて一体形成されている。そして、この肉盛り部29には、その突出表面に向けてアウターソールの外周縁から延出部32が延出形成されている。また、当該延出部32はそのほぼ延出長の全長に亘って、半径10mm程の円弧状に大きく湾曲形成されて肉盛り部29の突出表面に回り込まされている。
【0039】
ところで、この第2実施形態にあっては、図6〜図8(a)に示すように、上記ミッドソール22の肉盛り部29には、アッパー部材40の外方への孕みだしを抑制する補強部材42が埋設されている。この補強部材42は、図8(a)に示すように、靴幅方向に延びて前記肉盛り部29を横断して貫通する板状をなしており、その上端42aは、図6に示すように、肉盛り部29よりも上方に向けて延びてアッパー部材40の外側面に至るとともに、当該アッパー部材40に接合されている。また、補強部材42は、図8(a)に示すように、肉盛り部29が形成されている立上り部24の内側面に繋ぎ合わされているアッパー部材40の下端部にも接してこれに接合されている。
【0040】
一方、図6,図7に示すように、補強部材42の外側周縁部は、肉盛り部29に回り込まされてこれを覆っているアウターソール30の延出部32を貫通して露出している。そしてさらに、補強部材42はその上部側が靴長方向の前方に向けて傾斜されて設けられている。また、図示するこの第2実施形態においては、補強部材42は肉盛り部29に靴長方向の前後に位置して2つ設けられている。ここで、当該補強部材42の材質としては、ミッドソール22よりも硬質な樹脂(例えば、熱可塑性ウレタン(T.P.U)等)を採用するのが好ましい。また、補強部材42の設置数は2つに限らず適宜数で良い。
【0041】
また、補強部材42には、図8(a)に示すように、上記ミッドソール22の上面に沿って靴幅の中央方向に延出する延出片42cが一体形成されている。この延出片42cは、ミッドソール22の上面に面一に埋設されており、このミッドソール22の上面から肉盛り部29の内側面に亘る部分の滑らかな湾曲形状ラインに合わせて同一形状に形成されている。また、補強部材42の下端部42bはミッドソール22の上面よりも下方にアウターソール30の上面近傍の位置まで延びており、この下端部42bと上記延出片42cとは弧状の湾曲ラインで繋がっている。
【0042】
さらに、補強部材42の靴内部側の周縁、つまりミッドソール22の肉盛り部29の内側面から上面に沿っている補強部材42の周縁部分には、靴長方向の前後に向けて延びる鍔部44が一体形成されており、この鍔部44もミッドソール22と段差を形成することなく面一に埋設されている。
【0043】
そして、以上のように構成された補強部材42を有する第2実施形態のテニスシューズにあっては、前述の第1実施形態のテニスシューズが奏する作用効果に加えて、更に次の様な格別な作用効果が得られる。
【0044】
即ち、テニスのプレイ中に足部を進行方向に対して横に向けて踏ん張ってスライドさせる際や、横方向に向けてダッシュすべく踏ん張った際には、足部からアッパー部材40に横(靴幅)方向外方への力が加わり、この力は特に本発明の特徴である肉盛り部29の周辺に集中するが、当該肉盛り部29に上記補強部材42を設けてあると、上記横方向の力を補強部材42で受けることができる。このため当該補強部材42の配設部位周辺の剛性が高まって、アッパー部材40の外側方への孕みだし変形を可及的に抑制して、足部のホールド性を格段に向上させることができるようになるとともに、足首の捻転などをより一層、確実に防止することができるようになる。
【0045】
また、前記補強部材42を、靴幅方向に延びてミッドソール22の肉盛り部29を貫通する板状となして、肉盛り部29の内側面に繋ぎ合わされたアッパー部材40に接合させる構成とすることによって、補強部材42自体の剛性を可及的に高めてアッパー部材40の変形をより抑制できるようになる。
【0046】
また、補強部材42に、ミッドソール22の上面に沿って靴幅中央方向に延出する延出片42cを一体形成して、この延出片42cを当該上面に面一に埋設する構成とすることで、横方向へスライドした際等に生じる補強部材42上部側の外方への傾倒力を、当該延出片42cに加わる足部からの鉛直荷重で相殺することができ、もって当該傾倒力を軽減してアッパー部材40の孕み変形をより一層抑制して、足部のホールド性を更に向上させることができるようになる。
【0047】
さらに、補強部材42の靴内部側の周縁部に、靴長方向の前後に向けて延びる鍔部44を一体形成することで、足部に対する補強部材42の受圧面積を拡大でき、当該補強部材42の配設部位における足部のフィット性を向上させることができるようになる。
【0048】
また、前方にダッシュする時等に、アウターソール30とミッドソール22とからなるソール部材の屈曲が生じた際に、アッパー部材40には足の甲部側からその両側部に掛かる部位に踵側下がりの斜めの皺が生じるが、この皺の発生に合わせて補強部材42をその上部側を靴長方向前方に向けて傾斜させ設ける構成とすることで、踵部を浮き上がらせたときの靴の屈曲を阻害せずに柔軟に変形させることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は上記実施例にて説明したテニスシューズだけでなく、他のスポーツ種目のいかなるものにも適用することができ、その利用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るスポーツシューズの第1実施形態の靴底を示すもので、(a)は内側部を示す側面図、(b)は底面図、(c)は外側部を示す側面図。
【図2】本発明に係るスポーツシューズの第1実施形態の靴底を示す平面図。
【図3】靴底を爪先側から見た正面図。
【図4】図5及び第6図中の各図に示されるIV−IV線矢視部の断面図。
【図5】同上、図5中の各図に示されるV−V線矢視部の断面図。
【図6】本発明に係るスポーツシューズの第2実施形態を示す側面図。
【図7】図6に示すスポーツシューズの靴底の外側部を示す側面図。
【図8】(a)は図7中に示されるIIXa−IIXa線矢視部の断面図、(b)は図7中に示されるIIXb−IIXb線矢視部の断面図、(c)は図7中に示されるIIXc−IIXc線矢視部の断面図。
【図9】従来のスポーツシューズにおける靴底を示すもので、(a)は内側部を示す側面図、(b)は底面図、(c)は外側部を示す側面図。
【図10】靴底を爪先側から見た正面図。
【図11】図1中の各図に示されるXI−XI線矢視部の断面図。
【図12】同上、図1中の各図に示されるXII−XII線矢視部の断面図。
【符号の説明】
【0051】
20 靴底
22 ミッドソール
22a ミッドソールの周側面
24 立上り部
29 肉盛り部
30 アウターソール
32 延出部
34 溝部
40 アッパー部材
42 補強部材
42a 上端部
42b 下端部
42c 延出片
44 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー部材を繋ぎ合わせるための立上り部が周側縁に沿って形成されたミッドソールの下面に、踏み面を形成するアウターソールを貼り合わせ、該アウターソールの外周縁には、該ミッドソールの周側面に至る延出部が形成されてなるスポーツシューズにおいて、
該ミッドソール周側面の小指に沿う部位に、該ミッドソールの立上り部の靴幅方向の厚みにほぼ相当する以上の厚みを有した肉盛り部を外側に向けて突出させて一体形成するとともに、前記延出部を該アウターソールの外周縁から該肉盛り部の突出表面に向けて延出形成し、円弧状に大きく湾曲形成して回り込ませたことを特徴とするスポーツシューズ。
【請求項2】
前記アウターソールの前記肉盛り部に向かう延出部の接地側面に溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載のスポーツシューズ。
【請求項3】
前記ミッドソールの内足側の母子球に沿う部位において、該ミッドソールの周側面に向けて延出されるアウターソールの延出部が、円弧状に湾曲形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のスポーツシューズ。
【請求項4】
前記肉盛り部に、上端が上方に延びて前記アッパー部材の外側面に至り、該アッパー部材に接合されて該アッパー部材の外方への孕みだしを抑制する補強部材を埋設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスポーツシューズ。
【請求項5】
前記補強部材が、前記ミッドソールの上面に沿って靴幅中央方向に延出されて、該上面に面一に埋設された延出片を有していることを特徴とする請求項4に記載のスポーツシューズ。
【請求項6】
前記補強部材の靴内部側の周縁には、靴長方向前後に延びる鍔部が一体形成されていることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載のスポーツシューズ。
【請求項7】
前記補強部材は、その上部側が靴長方向前方に向けて傾斜されて設けられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のスポーツシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−236918(P2007−236918A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246790(P2006−246790)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(390010917)ヨネックス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】