スポーツ手袋
【課題】 手袋全体の滑り止めを効率よくかつ低コストで実現する。
【解決手段】 スポーツ手袋1の製造方法において、手袋本体10の裏面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂F1、F2を複数の幾何学的形状を含むパターンで印刷し、発泡樹脂F1、F2を乾燥・硬化させた後、発泡樹脂F1、F2を加熱して発泡させ、これにより、手袋用本体10の裏面における発泡樹脂F1、F2の印刷部位に張力を発生させることで、裏面の発泡樹脂F1、F2の印刷部位に対応する表面の位置に凹部11、12を形成する。発泡樹脂F1、F2による凸部によって手袋の裏面の滑りを防止でき、凹部によって手袋の表面の滑りを防止できる。この場合には、樹脂の印刷を手袋用皮革の裏面に対して行うだけでよいので、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減できる。
【解決手段】 スポーツ手袋1の製造方法において、手袋本体10の裏面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂F1、F2を複数の幾何学的形状を含むパターンで印刷し、発泡樹脂F1、F2を乾燥・硬化させた後、発泡樹脂F1、F2を加熱して発泡させ、これにより、手袋用本体10の裏面における発泡樹脂F1、F2の印刷部位に張力を発生させることで、裏面の発泡樹脂F1、F2の印刷部位に対応する表面の位置に凹部11、12を形成する。発泡樹脂F1、F2による凸部によって手袋の裏面の滑りを防止でき、凹部によって手袋の表面の滑りを防止できる。この場合には、樹脂の印刷を手袋用皮革の裏面に対して行うだけでよいので、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ、野球、テニスなどのスポーツに好適のスポーツ手袋に関し、詳細には、手袋全体の滑り止めを効率よくかつ低コストで実現するための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ手袋を含む各種手袋において、手袋の滑りを防止するために、これまで種々の改良がなされてきた。例えば、実用新案登録第3055215号公報に示す手袋では、手袋生地の表面にシリコンゴムを用いた連続模様をコーティングするとともに、裏面に無数のシリコンゴムを突設している。
【0003】
特開2004−238765号公報に示す手袋では、発泡剤が配合された高分子化合物エマルジョンを予め発泡させた後、発泡したエマルジョンを手袋の表面に不連続に塗布することにより、多数の突起を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実用新案登録第3055215号公報に示すものでは、手袋表面の滑り(つまり、手袋表面とゴルフクラブ等のグリップとの間の滑り)、および手袋内部の滑り(つまり、手袋内部と手との間の滑り)を防止するために、手袋生地の表面および裏面の双方にそれぞれ別個にシリコンゴムを付着させる必要があり、このため、非効率的であるとともに、製造工程が複雑になってコストがアップする。
【0005】
特開2004−238765号公報に示すものでは、手袋の表面側に発泡エマルジョンを塗布することによって、手袋表面の滑りを防止する点は記載されているが、手袋内部を含む手袋全体の滑りを防止する観点からの記載はない。
【0006】
その一方、手袋を補強する目的で手袋本体の表面の一部に当て革を設けたものが実用に供されている。当て革は、一般に、その外周縁部を手袋本体の表面に縫い付けることにより、手袋本体に装着されている。したがって、当て革の中央部分は手袋本体の表面には固着されておらず、このため、手袋の使用時には、当て革の中央部分がグリップの動きに追随して手袋本体の表面の上を滑る恐れがある。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、手袋全体の滑り止めを効率よくかつ低コストで実現できるスポーツ手袋を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るスポーツ手袋の製造方法は、以下の工程を備えている。
(i)手袋用皮革の一方の面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂を印刷する工程。
(ii)発泡樹脂を乾燥・硬化させる工程。
(iii)発泡樹脂を加熱して発泡させ、これにより、一方の面における発泡樹脂の印刷部位に張力を発生させることで、手袋用皮革の他方の面において一方の面における発泡樹脂の印刷部位に対応する部位に凹部を形成する工程。
【0009】
請求項1の発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷されるので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、この場合には、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0010】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0011】
さらに、この場合には、手袋用皮革の一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0012】
なお、上述した特開2004−238765号公報においては、発泡剤が配合された高分子化合物エマルジョンを手袋の表面側に塗布する旨の記載があるが、この場合には、エマルジョンの塗布後にエマルジョンを発泡させるのではなく、エマルジョンを予め発泡させた後、発泡させたエマルジョンを手袋表面に塗布している(当該公報の段落[0011]、[0019]〜[0021]参照)。したがって、本願発明とは全く異なる発明である。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が手袋用皮革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が手袋用皮革の表面である。
【0014】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が手袋用皮革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当該手袋用皮革の裏面である。
【0016】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凹部内に汗が入り込むことで、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の表面である。
【0018】
この場合には、当て革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の裏面に形成された凸部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できるとともに、当て革の表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の裏面である。
【0020】
この場合には、当て革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できるとともに、当て革の裏面に形成された凹部の角部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0021】
請求項6の発明では、請求項1において、発泡樹脂が微粘着性を有している。
【0022】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0023】
請求項7の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程において、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域に、発泡樹脂を複数の幾何学形状を含むパターンで印刷している。
【0024】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。また、手袋用皮革の面に複数の凹部または凸部が形成されることになるので、手袋の滑りを確実に防止できる。
【0025】
請求項8の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程またはその前後の工程において、発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂が印刷されている。
【0026】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0027】
請求項9の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂が80〜110℃に加熱されている。
【0028】
この場合には、発泡樹脂が比較的低温で加熱・発泡されるので、手袋用皮革が加熱により収縮するのを防止しつつ、発泡樹脂の発泡を行える。
【0029】
請求項10の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の発泡後の厚みが0.2〜2mmになっている。
【0030】
この場合、厚みを0.2mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0031】
請求項11の発明によれば、請求項1において、発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後における凹部の深さが0.1〜2mmになっている。
【0032】
この場合、深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0033】
請求項12の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程において、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷するとともに、発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の発泡後の厚みについて、子指球部に対応する領域の厚みを相対的に厚くし、第3指ないし第5指に対応する領域の厚みを相対的に薄くしている。
【0034】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0035】
請求項13の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の内部に連続気泡が形成されている。
【0036】
この場合には、連続気泡が形成されている面に水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できる。
【0037】
請求項14の発明では、請求項1において、当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法における測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNになっている。
【0038】
請求項15の発明では、請求項1において、発泡樹脂を加熱・発泡させた後、当該発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている。
【0039】
この場合には、手袋本体の表面に凸部または凹部が形成され、これら凸部または凹部を含む領域に当て革が装着されるので、当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。
【0040】
請求項16の発明に係るスポーツ手袋は、手袋用皮革の一方の面が、発泡剤を含んだ発泡樹脂の印刷部位を一部に有しており、当該発泡樹脂が発泡していることにより、一方の面における発泡樹脂の印刷部位に張力が発生することで、手袋用皮革の他方の面において一方の面の印刷部位に対応する部位に凹部が形成されている。
【0041】
請求項16の発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷され発泡しているので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、この場合には、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0042】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されているので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0043】
さらに、この場合には、手袋用皮革の一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0044】
請求項17の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当該手袋用皮革の表面である。
【0045】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0046】
請求項18の発明では、請求項15において、手袋用皮革の一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である。
【0047】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凹部内に汗が入り込むことで、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0048】
請求項19の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の表面である。
【0049】
この場合には、当て革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の裏面に形成された凸部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できるとともに、当て革の表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0050】
請求項20の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の裏面である。
【0051】
この場合には、当て革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できるとともに、当て革の裏面に形成された凹部の角部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0052】
請求項21の発明では、請求項16において、発泡樹脂が微粘着性を有している。
【0053】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0054】
請求項22の発明では、請求項16において、発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、複数の幾何学形状を含むパターンで印刷されている。
【0055】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。また、手袋用皮革の面に複数の凹部または凸部が形成されることになるので、手袋の滑りを確実に防止できる。
【0056】
請求項23の発明では、請求項16において、発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂を印刷している。
【0057】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0058】
請求項24の発明では、請求項16において、印刷部位の厚みが0.2〜2mmになっている。
【0059】
この場合、厚みを0.2mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0060】
請求項25の発明では、請求項16において、凹部の深さが0.1〜2mmになっている。
【0061】
この場合、深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0062】
請求項26の発明では、請求項16において、印刷部位が、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷されるとともに、印刷部位の厚みは、子指球部に対応する領域が相対的に厚く、第3指ないし第5指に対応する領域が相対的に薄くなっている。
【0063】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0064】
請求項27の発明では、請求項16において、印刷部位の内部に連続気泡が形成されている。
【0065】
この場合には、連続気泡が形成されている面に水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できる。
【0066】
請求項28の発明では、請求項16において、当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNになっている。
【0067】
請求項29の発明では、請求項16において、発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている。
【0068】
この場合には、手袋本体の表面に凸部または凹部が形成され、これら凸部または凹部を含む領域の上に当て革が装着されるので、当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。
【発明の効果】
【0069】
以上のように本発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷されるので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0070】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されているので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図である。
【図2】スポーツ手袋(図1)の掌側の表面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】JIS L 1018に規定するガーレ法の概要を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図である。
【図6】スポーツ手袋(図5)の掌側の表面図である。
【図7】本発明の第5の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線断面図である。
【図9】本発明の第6の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図10】図9のIX-IX線断面図である。
【図11】本発明の第7の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図12】図11のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
〔第1の実施例〕
図1ないし図4は、本発明の第1の実施例によるスポーツ手袋を説明するための図であって、図1はスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図、図2はスポーツ手袋(図1)の掌側の表面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4はJIS L 1018に規定するガーレ法の概要を説明するための図である。
【0073】
図1に示すように、スポーツ手袋1の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、発泡剤を含む発泡樹脂F1と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A1とが印刷されている。ここでは、印刷された発泡樹脂F1および粘着樹脂A1の各々がいずれも縦長の六角形状のものを示しており、さらに、発泡樹脂F1および粘着樹脂A1を上下方向および左右方向に交互に配置するパターンで示している。なお、図示の便宜上、発泡樹脂F1を黒塗りで示し、粘着樹脂A1を白抜きで示している。発泡樹脂F1および粘着樹脂A1は、第3指ないし第5指において、各関節部を除く領域に設けられている。粘着樹脂A1は、発泡樹脂F1の近傍に配置されている。
【0074】
スポーツ手袋1の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の子指球部には、発泡剤を含む発泡樹脂F2と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A2とが印刷されている。ここでは、印刷された発泡樹脂F2および粘着樹脂A2の各々がいずれも正六角形状のものを示しており、さらに、発泡樹脂F2および粘着樹脂A2を上下方向および左右方向に交互に配置するパターンで示している。なお、図示の便宜上、発泡樹脂F2を黒塗りで示し、粘着樹脂A2を白抜きで示している。粘着樹脂A2は、発泡樹脂F2の近傍に配置されている。
【0075】
図2に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には凹部11が形成され、子指球部には凹部12が形成されている。各凹部11の位置は、裏面側の発泡樹脂F1の各印刷部位に一致しており、各凹部12の位置は、裏面側の発泡樹脂F2の各印刷部位に一致している(図3参照)。これらの凹部11、12は、後述するように、裏面側の各発泡樹脂F1、F2の加熱・発泡時に各発泡樹脂F1、F2が発泡して裏面側の各発泡樹脂のF1、F2の印刷部位に張力が発生することで、凹状に形成されたものである。
【0076】
スポーツ手袋1の手袋本体10は、手袋用皮革から作製されている。手袋用皮革としては、天然皮革、人工皮革、または合成皮革のうちのいずれでもよいが、本発明においては、裏面側の各発泡樹脂のF1、F2の発泡時に裏面側の印刷部位に張力が作用した際に、表面側の対応する部位が凹状に変形する程度の低い曲げ強さを有していることが必要である。
【0077】
一般に、手袋用皮革の曲げ強さ(曲げ反発性)を測定するための明確な測定方法が確立されてないため、本願発明に係る発明者は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法を考案した。JIS L 1018に規定するガーレ法は、主として硬めの編地の曲げ反発性を測定するためのものである。
【0078】
JIS L 1018に規定するガーレ法は、図4に示すように、試験片Sの上端Saを可動アームのチャックCに取り付け、試験片Sの下端Sbを振子Pの上端Paに当接させた状態で、可動アームを一定速度で矢印方向に回転させ、試験片Sの下端Sbが振子Pの上端Paから離れるときの目盛RGを読み取って、次式から試験片Sの曲げ反発性(剛軟度)Brを求めるものである。すなわち
Br=RG×(aWa+bWb+cWc)×{(L−12.7)2/d}×3.375×10−5 …(1)
ここで、Br: 剛軟度(mN)、RG: 試験片が振子から離れるときの目盛(mN)、a、b、c: 荷重取付孔と支点間の距離(mm)、Wa、Wb、Wc: 荷重取付孔に取り付けた錘の質量(g)、L: 試験片の長さ(mm)、d: 試験片の幅(mm)である。
【0079】
JIS L 1018に規定する試験片の標準寸法は、L=89(mm)、d=25(mm)であるが、手袋用皮革は一般に柔らかく、このよう標準寸法では測定が困難であるため、ガーレ法に用いる試験片の寸法として、L=25(mm)、d=30(mm)を採用することにした。また、試験片Sの長さLの内訳として、チャックCによるチャック長さL1をL1=6(mm)、振子上端Paとのオーバラップ長さL2をL2=7(mm)とし、残りの長さL3をL3=12(mm)とした。さらに、計算の簡略化のため、L−12.7≒12(mm)とした。これにより、式(1)は、次の式(1)’のように書き換えられる。すなわち
Br=RG×(aWa+bWb+cWc)×(122/d)×3.375×10−5 …(1)’
【0080】
種々の皮革について、上述したガーレ法を用いて試験を行なって目盛RG(mN)を読み取り、(1)’式から皮革の剛軟度Brを求めた結果を表1に示す。
【表1】
表1中、「タテ」とは、動物の頭と尻尾を結ぶ前後方向を指しており、「ヨコ」とは、胴回りの方向を指している。また、「表」とは皮革の表面を指し、「裏」とは皮革の裏面を指している。なお、表1において、靴用の人工皮革、および野球グラブ1、2のデータは、ゴルフ手袋用および野球手袋用の皮革(天然、合皮、人工)との比較のために載せている。
【0081】
表1から分かるように、皮革の剛軟度Brは、試験片として用いるときの皮革の方向や表裏のいずれの面かによって変化するため、手袋用皮革の剛軟度Brは、同表中の最大値および最小値から、Br=0.1〜4.7(≒5)(mN)であるのが好ましい。
【0082】
なお、手袋用皮革の剛軟度Brは、Br=0.01〜20(mN)でもよい。これは、皮革の剛軟度が0.01(mN)より小さいと、発泡樹脂の方の剛性が相対的に高くなりすぎて、着用者が着用時に違和感を感じるようになり、また皮革の剛軟度が20(mN)より大きいと、皮革の剛性が高くなりすぎて、発泡樹脂の塗布側と逆側の面が凹状に変形しなくなるからである。
【0083】
また、手袋用皮革の厚みは、0.4〜1(mm)が好ましい。これは、0.4(mm)より薄いと、強度が不足して破れる恐れがあるからであり、また1(mm)より厚いと、フィット性が足りず、スポーツ手袋として適しないからである。
【0084】
次に、スポーツ手袋の製造方法について説明する。
まず、上述したガーレ法により選択された手袋用皮革のための皮革シートを所定の形状に裁断する。
【0085】
皮革シートの裁断後、皮革シートの手袋裏面に対応する面に、発泡剤を含む発泡樹脂を印刷する。樹脂としては、ウレタン系、アクリル系およびシリコン系のいずれでもよい。発泡樹脂の粘度としては、皮革の上に印刷する関係上、或る程度の流動性が必要なため、50〜500dPa・sが好ましい。具体的には、天然皮革および人工皮革については、100Pa・s程度の粘度のものが用いられ、合成皮革については、300Pa・s程度の粘度のものが用いられる。また、発泡剤は、比較的低温(80〜110℃)で膨張するものが用いられる。
【0086】
発泡樹脂としては、微粘着性を有しているものが好ましい。この微粘着性は、表2に示すようなJIS K 6850に規定する引張せん断接着強さの試験方法に準拠した方法で測定したときに、引張せん断接着強さが1〜20[kPa]であるのが好ましい。
【表2】
【0087】
皮革シートに発泡樹脂を印刷する工程において、またその前後の工程において、発泡樹脂の印刷部位の近傍には、粘着性を有する非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)が印刷される。
【0088】
発泡樹脂および粘着樹脂の印刷パターンとしては、図1に示すように、スポーツ手袋の第3指ないし第5指においては、発泡樹脂F1および粘着樹脂A1の各々がいずれも縦長の六角形状を有しており、これらを上下および左右方向に交互に配置している。また、子指球部においては、発泡樹脂F2および粘着樹脂A2の各々がいずれも正六角形状を有しており、これらを上下および左右方向に交互に配置している。
【0089】
次に、発泡樹脂F1、F2よび粘着樹脂A1、A2が印刷された皮革シートを常温で3〜24時間乾燥させ、各樹脂を硬化させる。その後、皮革シートを80〜110℃で10秒間加熱することにより、発泡樹脂を発泡させる。
【0090】
すると、皮革シートの樹脂印刷面に張力が発生し、これにより、皮革シートの裏側の面において樹脂印刷部位に対応する部位が当該張力によって引っ張られることで凹状に形成される。
【0091】
発泡後の発泡樹脂の厚みtは、0.2〜2mmが好ましく、凹部の深さdは0.1〜2mmが好ましい(図3参照)。また、子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指〜第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっている。なお、凹部の深さは発泡樹脂の厚みに比例するので、この場合、子指球部における凹部の深さの方が、第3指〜第5指における凹部の深さよりも深くなっている。また、このような厚み(および深さ)の違いは、発泡樹脂の塗布量を変えたり、または発泡倍率を変えたりすることにより可能である。また、発泡後の発泡樹脂の内部には、連続気泡が形成されているのが好ましい。
【0092】
次に、皮革シートを縫製することで、スポーツ手袋が完成する(図1、図2参照)。
【0093】
上述のように構成されたスポーツ手袋1によれば、手袋本体10の裏面の一部に発泡樹脂F1、F2が印刷されるので、当該発泡樹脂による複数の凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できる。また、手袋本体10の表面の一部に複数の凹部11、12が形成されるので、当該凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、手袋表面の滑りを防止できる。
【0094】
しかも、この場合には、皮革シートの一方の面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、皮革シートの他方の面が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を皮革シートの一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0095】
さらに、この場合には、皮革シートの一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0096】
また、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有しており、さらには、発泡樹脂の印刷部位の近傍に粘着樹脂が印刷されているので、発泡樹脂の印刷側の面において、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0097】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0098】
発泡樹脂の厚みを0.2mm以上としたのは、手袋のグリップ力を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0099】
凹部の深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0100】
また、発泡樹脂の内部に連続気泡が形成するようにしたのは、連続気泡が形成されている面には水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できるからである。
【0101】
〔第2の実施例〕
前記第1の実施例では、スポーツ手袋1の掌側の裏面において、第3指〜第5指、および子指球部に対応する領域に、発泡樹脂および粘着樹脂を多数の六角形の交互配置のパターンで印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。六角形の代わりに円形を用いて、多数のドットパターンを印刷するようにしてもよく、あるいは、その他の幾何学的形状を用いるようにしてもよい。また、発泡樹脂および粘着樹脂の配列のパターンも前記第1の実施例に示すものに限定されない。
【0102】
図5および図6は、本発明の第2の実施例によるスポーツ手袋を示している。図5はスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図、図6はスポーツ手袋(図5)の掌側の表面図である。これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0103】
図5に示すように、スポーツ手袋1’の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、前記第1の実施例と同様に、発泡剤を含む発泡樹脂F1と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A1とが印刷されている。図6に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、裏面側の発泡樹脂F1の各印刷部位に一致する位置に凹部11が形成されている。
【0104】
スポーツ手袋1’の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の子指球部には、発泡剤を含む発泡樹脂F2’と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A2’とが印刷されている。印刷された発泡樹脂F2’の各々は、三角形の中心から各頂点に向かう3本の直線から構成されている。粘着樹脂A2’の印刷パターンは、六角形と円形(ドット)の組合せから構成されている。発泡樹脂F2’および粘着樹脂A2’は、上下方向および左右方向に交互に配置されている。図6に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の子指球部には、裏面側の発泡樹脂F2’の各印刷部位に一致する位置に凹部12’が形成されている。
【0105】
〔第3の実施例〕
前記第1、第2の実施例では、スポーツ手袋1の第3指〜第5指、および子指球部の双方に発泡樹脂を印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。スポーツ手袋1の第3指〜第5指、または子指球部のいずれか一方に発泡樹脂を印刷するようにしてもよい。
【0106】
〔第4の実施例〕
前記第1、第2の実施例では、スポーツ手袋の裏面に発泡樹脂を印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。前記第1、第2の実施例とは逆に、スポーツ手袋の表面に発泡樹脂を印刷することにより、スポーツ手袋の裏面に凹部を形成するようにしてもよい。
【0107】
手袋の使用時には、手袋本体10の表面に印刷された発泡樹脂による複数の凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、手袋表面の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の裏面に形成された複数の凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できる。
【0108】
なお、前記第1ないし第4の実施例では、スポーツ手袋に補強材としての当て革が設けられていない例を示したが、本発明は、以下の第5ないし第7の実施例に示すように、当て革が設けられたスポーツ手袋にも同様に適用できる。これらの例では、当て革は、スポーツ手袋の子指球部に相当する領域に設けられている。また、これらの実施例において、前記各実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0109】
〔第5の実施例〕
図7および図8は、本発明の第5の実施例を示している。この第5の実施例では、前記第1の実施例の手袋本体10(図2参照)において凹部12が形成された掌側の表面の上に、発泡樹脂による凹凸のない当て革20が装着されている。当て革20は、その外周縁部が手袋本体10の上に縫い付けられている(図7および図8中に点線で示すステッチ参照)。
【0110】
手袋1Aの使用時には、手袋本体10の裏面に印刷された発泡樹脂F1、F2による複数の凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の表面に形成された複数の凹部11、12の角部が当て革20の裏面に喰い込む(または裏面を引っ掛ける)ことによって、当て革20と手袋本体10との間の滑りを防止できる。
【0111】
なお、当て革20が装着される手袋本体10は、前記第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凸部が掌側の表面に形成されたものでもよい。
【0112】
この場合、手袋の使用時には、手袋本体10の裏面に形成された複数の凹部11、12の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の表面に印刷された発泡樹脂F1、F2による複数の凸部が当て革20の裏面に喰い込む(または裏面を引っ掛ける)ことによって、当て革20と手袋本体10との間の滑りを防止できる。
【0113】
〔第6の実施例〕
図9および図10は、本発明の第6の実施例を示している。この第6の実施例では、手袋本体10’に発泡樹脂による凹凸が形成されておらず、当て革20’の裏面に、前記第1の実施例における発泡樹脂F1と同様の発泡剤を含む発泡樹脂F3が印刷されており、当て革20’の裏面には、発泡樹脂F3による複数の凸部が形成されている。このため、当て革20’の表面には、これらの凸部に対応する複数の凹部22が形成されている。
【0114】
手袋1Bの使用時には、当て革20’の裏面に印刷された発泡樹脂F3による複数の凸部の角部が手袋本体10’の表面に喰い込む(または表面を引っ掛ける)ことによって、当て革20’と手袋本体10’との間の滑りを防止できる。また、当て革20’の表面に形成された複数の凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、当て革表面(つまり手袋表面)の滑りを防止できる。
【0115】
この場合には、当て革シートの裏面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、当て革シートの表面が裏面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を当て革シートの裏面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0116】
また、この場合には、当て革の裏面の凸部と表面の凹部とが当て革の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、当て革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。
【0117】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部に対応する領域において当て革に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。
【0118】
なお、当て革20’が装着される手袋本体10’は、前記第1、第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凹凸が形成されたものでもよい。
【0119】
この場合、手袋の使用時には、当て革裏面の凸部が手袋本体表面の凹部または凸部に干渉することにより、当て革および手袋本体間の摩擦抵抗が大きくなって、当て革および手袋本体間の滑りをより確実に防止できるようになる。
【0120】
〔第7の実施例〕
図11および図12は、本発明の第7の実施例を示している。この第7の実施例では、手袋本体10’に発泡樹脂による凹凸が形成されておらず、当て革20”の表面に、前記第1の実施例における発泡樹脂F1と同様の発泡剤を含む発泡樹脂F3が印刷されており、当て革20”の表面には、発泡樹脂F3による複数の凸部が形成されている。このため、当て革20”の裏面には、これらの凸部に対応する複数の凹部22が形成されている。なお、ここでは、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A3が当て革20”の表面に印刷された例を示している。
【0121】
手袋1Cの使用時には、当て革20”の表面に印刷された発泡樹脂F3による複数の凸部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、当て革表面(つまり手袋表面)の滑りを防止できる。また、当て革20”の裏面に形成された発泡樹脂F3による複数の凹部22の角部が手袋本体10’の表面に喰い込む(または表面を引っ掛ける)ことによって、当て革20”と手袋本体10’との間の滑りを防止できる。
【0122】
この場合には、当て革シートの表面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、当て革シートの裏面が表面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を当て革シートの表面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0123】
また、この場合には、当て革の表面の凸部と裏面の凹部とが当て革の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、当て革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、表面の凸部に作用した衝撃力が、裏面にそのまま伝播するのを裏面の凹部により緩和できる。
【0124】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部に対応する領域において当て革に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。
【0125】
なお、当て革20’が装着される手袋本体10’は、前記第1、第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凹凸が形成されたものでもよい。
【0126】
この場合、手袋の使用時には、当て革裏面の凹部が手袋本体表面の凹部または凸部に干渉することにより、当て革および手袋本体間の摩擦抵抗が大きくなって、当て革および手袋本体間の滑りをより確実に防止できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、スポーツ手袋に好適であり、とくに、効率よくかつ低コストで手袋全体の滑り止めを要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0128】
1、1’、1A〜1C: スポーツ手袋
10、10’: 手袋本体
11、12、12’、22: 凹部
20、20’、20”: 当て革
F1、F2、F2’、F3: 発泡樹脂
A1、A2、A2: 粘着樹脂(非発泡樹脂)
t: 厚み
d: 深さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】実用新案登録第3055215号公報(図1および図2参照)
【特許文献2】特開2004−238765号公報(段落[0011]、[0019]〜[0021]および図2参照)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ、野球、テニスなどのスポーツに好適のスポーツ手袋に関し、詳細には、手袋全体の滑り止めを効率よくかつ低コストで実現するための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ手袋を含む各種手袋において、手袋の滑りを防止するために、これまで種々の改良がなされてきた。例えば、実用新案登録第3055215号公報に示す手袋では、手袋生地の表面にシリコンゴムを用いた連続模様をコーティングするとともに、裏面に無数のシリコンゴムを突設している。
【0003】
特開2004−238765号公報に示す手袋では、発泡剤が配合された高分子化合物エマルジョンを予め発泡させた後、発泡したエマルジョンを手袋の表面に不連続に塗布することにより、多数の突起を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実用新案登録第3055215号公報に示すものでは、手袋表面の滑り(つまり、手袋表面とゴルフクラブ等のグリップとの間の滑り)、および手袋内部の滑り(つまり、手袋内部と手との間の滑り)を防止するために、手袋生地の表面および裏面の双方にそれぞれ別個にシリコンゴムを付着させる必要があり、このため、非効率的であるとともに、製造工程が複雑になってコストがアップする。
【0005】
特開2004−238765号公報に示すものでは、手袋の表面側に発泡エマルジョンを塗布することによって、手袋表面の滑りを防止する点は記載されているが、手袋内部を含む手袋全体の滑りを防止する観点からの記載はない。
【0006】
その一方、手袋を補強する目的で手袋本体の表面の一部に当て革を設けたものが実用に供されている。当て革は、一般に、その外周縁部を手袋本体の表面に縫い付けることにより、手袋本体に装着されている。したがって、当て革の中央部分は手袋本体の表面には固着されておらず、このため、手袋の使用時には、当て革の中央部分がグリップの動きに追随して手袋本体の表面の上を滑る恐れがある。
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、手袋全体の滑り止めを効率よくかつ低コストで実現できるスポーツ手袋を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るスポーツ手袋の製造方法は、以下の工程を備えている。
(i)手袋用皮革の一方の面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂を印刷する工程。
(ii)発泡樹脂を乾燥・硬化させる工程。
(iii)発泡樹脂を加熱して発泡させ、これにより、一方の面における発泡樹脂の印刷部位に張力を発生させることで、手袋用皮革の他方の面において一方の面における発泡樹脂の印刷部位に対応する部位に凹部を形成する工程。
【0009】
請求項1の発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷されるので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、この場合には、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0010】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0011】
さらに、この場合には、手袋用皮革の一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0012】
なお、上述した特開2004−238765号公報においては、発泡剤が配合された高分子化合物エマルジョンを手袋の表面側に塗布する旨の記載があるが、この場合には、エマルジョンの塗布後にエマルジョンを発泡させるのではなく、エマルジョンを予め発泡させた後、発泡させたエマルジョンを手袋表面に塗布している(当該公報の段落[0011]、[0019]〜[0021]参照)。したがって、本願発明とは全く異なる発明である。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が手袋用皮革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が手袋用皮革の表面である。
【0014】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0015】
請求項3の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が手袋用皮革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当該手袋用皮革の裏面である。
【0016】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凹部内に汗が入り込むことで、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の表面である。
【0018】
この場合には、当て革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の裏面に形成された凸部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できるとともに、当て革の表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0019】
請求項5の発明では、請求項1において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の裏面である。
【0020】
この場合には、当て革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できるとともに、当て革の裏面に形成された凹部の角部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0021】
請求項6の発明では、請求項1において、発泡樹脂が微粘着性を有している。
【0022】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0023】
請求項7の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程において、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域に、発泡樹脂を複数の幾何学形状を含むパターンで印刷している。
【0024】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。また、手袋用皮革の面に複数の凹部または凸部が形成されることになるので、手袋の滑りを確実に防止できる。
【0025】
請求項8の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程またはその前後の工程において、発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂が印刷されている。
【0026】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0027】
請求項9の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂が80〜110℃に加熱されている。
【0028】
この場合には、発泡樹脂が比較的低温で加熱・発泡されるので、手袋用皮革が加熱により収縮するのを防止しつつ、発泡樹脂の発泡を行える。
【0029】
請求項10の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の発泡後の厚みが0.2〜2mmになっている。
【0030】
この場合、厚みを0.2mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0031】
請求項11の発明によれば、請求項1において、発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後における凹部の深さが0.1〜2mmになっている。
【0032】
この場合、深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0033】
請求項12の発明では、請求項1における発泡樹脂を印刷する工程において、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷するとともに、発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の発泡後の厚みについて、子指球部に対応する領域の厚みを相対的に厚くし、第3指ないし第5指に対応する領域の厚みを相対的に薄くしている。
【0034】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0035】
請求項13の発明では、請求項1における発泡樹脂を加熱・発泡させる工程において、発泡樹脂の内部に連続気泡が形成されている。
【0036】
この場合には、連続気泡が形成されている面に水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できる。
【0037】
請求項14の発明では、請求項1において、当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法における測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNになっている。
【0038】
請求項15の発明では、請求項1において、発泡樹脂を加熱・発泡させた後、当該発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている。
【0039】
この場合には、手袋本体の表面に凸部または凹部が形成され、これら凸部または凹部を含む領域に当て革が装着されるので、当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。
【0040】
請求項16の発明に係るスポーツ手袋は、手袋用皮革の一方の面が、発泡剤を含んだ発泡樹脂の印刷部位を一部に有しており、当該発泡樹脂が発泡していることにより、一方の面における発泡樹脂の印刷部位に張力が発生することで、手袋用皮革の他方の面において一方の面の印刷部位に対応する部位に凹部が形成されている。
【0041】
請求項16の発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷され発泡しているので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、この場合には、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0042】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されているので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0043】
さらに、この場合には、手袋用皮革の一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0044】
請求項17の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当該手袋用皮革の表面である。
【0045】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0046】
請求項18の発明では、請求項15において、手袋用皮革の一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である。
【0047】
すなわち、この場合には、手袋用皮革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、裏面に形成された凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって手袋内部の滑りを防止できるとともに、表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって手袋表面の滑りを防止できる。しかも、裏面に関しては、凹部内に汗が入り込むことで、汗による膜が生成されにくくなっており、これにより、汗による手袋内部の滑りを効果的に防止できる。また、表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による手袋表面の滑りを効果的に防止できる。
【0048】
請求項19の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の表面である。
【0049】
この場合には、当て革の裏面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、表面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の裏面に形成された凸部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できるとともに、当て革の表面に形成された凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凹部内に水分が入り込むことによって、表面に水の膜が形成されにくくなっており、これにより、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0050】
請求項20の発明では、請求項16において、手袋用皮革の一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、手袋用皮革の他方の面が当て革の裏面である。
【0051】
この場合には、当て革の表面の一部に発泡樹脂の印刷部位による凸部が形成され、裏面の一部に凹部が形成される。この場合、当て革の表面に形成された凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって当て革表面の滑りを防止できるとともに、当て革の裏面に形成された凹部の角部が手袋本体の表面に喰い込む(または手袋本体の表面を引っ掛ける)ことによって当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。また、当て革の表面に関しては、凸部が形成されて平坦面でなくなっていることにより、水分による膜が生成されにくくなっており、これにより、水はけがよくなって、水分による当て革表面の滑りを効果的に防止できる。
【0052】
請求項21の発明では、請求項16において、発泡樹脂が微粘着性を有している。
【0053】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0054】
請求項22の発明では、請求項16において、発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、複数の幾何学形状を含むパターンで印刷されている。
【0055】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。また、手袋用皮革の面に複数の凹部または凸部が形成されることになるので、手袋の滑りを確実に防止できる。
【0056】
請求項23の発明では、請求項16において、発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂を印刷している。
【0057】
この場合には、発泡樹脂が印刷された側の面が粘着性を有することになるので、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0058】
請求項24の発明では、請求項16において、印刷部位の厚みが0.2〜2mmになっている。
【0059】
この場合、厚みを0.2mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0060】
請求項25の発明では、請求項16において、凹部の深さが0.1〜2mmになっている。
【0061】
この場合、深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0062】
請求項26の発明では、請求項16において、印刷部位が、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷されるとともに、印刷部位の厚みは、子指球部に対応する領域が相対的に厚く、第3指ないし第5指に対応する領域が相対的に薄くなっている。
【0063】
この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0064】
請求項27の発明では、請求項16において、印刷部位の内部に連続気泡が形成されている。
【0065】
この場合には、連続気泡が形成されている面に水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できる。
【0066】
請求項28の発明では、請求項16において、当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNになっている。
【0067】
請求項29の発明では、請求項16において、発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている。
【0068】
この場合には、手袋本体の表面に凸部または凹部が形成され、これら凸部または凹部を含む領域の上に当て革が装着されるので、当て革と手袋本体との間の滑りを防止できる。
【発明の効果】
【0069】
以上のように本発明によれば、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂が印刷されるので、当該発泡樹脂による凸部によって、手袋の一方の面における滑りを防止できる。また、手袋用皮革の他方の面の一部に凹部が形成されるので、当該凹部によって、手袋の他方の面における滑りを防止できる。
【0070】
しかも、この場合には、手袋用皮革の一方の面の一部に発泡樹脂を印刷して発泡させることにより、手袋用皮革の他方の面の一部が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されているので、樹脂の印刷を手袋用皮革の一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図である。
【図2】スポーツ手袋(図1)の掌側の表面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】JIS L 1018に規定するガーレ法の概要を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図である。
【図6】スポーツ手袋(図5)の掌側の表面図である。
【図7】本発明の第5の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線断面図である。
【図9】本発明の第6の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図10】図9のIX-IX線断面図である。
【図11】本発明の第7の実施例によるスポーツ手袋(右手用)の掌側の表面図である。
【図12】図11のXII-XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
〔第1の実施例〕
図1ないし図4は、本発明の第1の実施例によるスポーツ手袋を説明するための図であって、図1はスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図、図2はスポーツ手袋(図1)の掌側の表面図、図3は図2のIII-III線断面図、図4はJIS L 1018に規定するガーレ法の概要を説明するための図である。
【0073】
図1に示すように、スポーツ手袋1の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、発泡剤を含む発泡樹脂F1と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A1とが印刷されている。ここでは、印刷された発泡樹脂F1および粘着樹脂A1の各々がいずれも縦長の六角形状のものを示しており、さらに、発泡樹脂F1および粘着樹脂A1を上下方向および左右方向に交互に配置するパターンで示している。なお、図示の便宜上、発泡樹脂F1を黒塗りで示し、粘着樹脂A1を白抜きで示している。発泡樹脂F1および粘着樹脂A1は、第3指ないし第5指において、各関節部を除く領域に設けられている。粘着樹脂A1は、発泡樹脂F1の近傍に配置されている。
【0074】
スポーツ手袋1の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の子指球部には、発泡剤を含む発泡樹脂F2と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A2とが印刷されている。ここでは、印刷された発泡樹脂F2および粘着樹脂A2の各々がいずれも正六角形状のものを示しており、さらに、発泡樹脂F2および粘着樹脂A2を上下方向および左右方向に交互に配置するパターンで示している。なお、図示の便宜上、発泡樹脂F2を黒塗りで示し、粘着樹脂A2を白抜きで示している。粘着樹脂A2は、発泡樹脂F2の近傍に配置されている。
【0075】
図2に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には凹部11が形成され、子指球部には凹部12が形成されている。各凹部11の位置は、裏面側の発泡樹脂F1の各印刷部位に一致しており、各凹部12の位置は、裏面側の発泡樹脂F2の各印刷部位に一致している(図3参照)。これらの凹部11、12は、後述するように、裏面側の各発泡樹脂F1、F2の加熱・発泡時に各発泡樹脂F1、F2が発泡して裏面側の各発泡樹脂のF1、F2の印刷部位に張力が発生することで、凹状に形成されたものである。
【0076】
スポーツ手袋1の手袋本体10は、手袋用皮革から作製されている。手袋用皮革としては、天然皮革、人工皮革、または合成皮革のうちのいずれでもよいが、本発明においては、裏面側の各発泡樹脂のF1、F2の発泡時に裏面側の印刷部位に張力が作用した際に、表面側の対応する部位が凹状に変形する程度の低い曲げ強さを有していることが必要である。
【0077】
一般に、手袋用皮革の曲げ強さ(曲げ反発性)を測定するための明確な測定方法が確立されてないため、本願発明に係る発明者は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法を考案した。JIS L 1018に規定するガーレ法は、主として硬めの編地の曲げ反発性を測定するためのものである。
【0078】
JIS L 1018に規定するガーレ法は、図4に示すように、試験片Sの上端Saを可動アームのチャックCに取り付け、試験片Sの下端Sbを振子Pの上端Paに当接させた状態で、可動アームを一定速度で矢印方向に回転させ、試験片Sの下端Sbが振子Pの上端Paから離れるときの目盛RGを読み取って、次式から試験片Sの曲げ反発性(剛軟度)Brを求めるものである。すなわち
Br=RG×(aWa+bWb+cWc)×{(L−12.7)2/d}×3.375×10−5 …(1)
ここで、Br: 剛軟度(mN)、RG: 試験片が振子から離れるときの目盛(mN)、a、b、c: 荷重取付孔と支点間の距離(mm)、Wa、Wb、Wc: 荷重取付孔に取り付けた錘の質量(g)、L: 試験片の長さ(mm)、d: 試験片の幅(mm)である。
【0079】
JIS L 1018に規定する試験片の標準寸法は、L=89(mm)、d=25(mm)であるが、手袋用皮革は一般に柔らかく、このよう標準寸法では測定が困難であるため、ガーレ法に用いる試験片の寸法として、L=25(mm)、d=30(mm)を採用することにした。また、試験片Sの長さLの内訳として、チャックCによるチャック長さL1をL1=6(mm)、振子上端Paとのオーバラップ長さL2をL2=7(mm)とし、残りの長さL3をL3=12(mm)とした。さらに、計算の簡略化のため、L−12.7≒12(mm)とした。これにより、式(1)は、次の式(1)’のように書き換えられる。すなわち
Br=RG×(aWa+bWb+cWc)×(122/d)×3.375×10−5 …(1)’
【0080】
種々の皮革について、上述したガーレ法を用いて試験を行なって目盛RG(mN)を読み取り、(1)’式から皮革の剛軟度Brを求めた結果を表1に示す。
【表1】
表1中、「タテ」とは、動物の頭と尻尾を結ぶ前後方向を指しており、「ヨコ」とは、胴回りの方向を指している。また、「表」とは皮革の表面を指し、「裏」とは皮革の裏面を指している。なお、表1において、靴用の人工皮革、および野球グラブ1、2のデータは、ゴルフ手袋用および野球手袋用の皮革(天然、合皮、人工)との比較のために載せている。
【0081】
表1から分かるように、皮革の剛軟度Brは、試験片として用いるときの皮革の方向や表裏のいずれの面かによって変化するため、手袋用皮革の剛軟度Brは、同表中の最大値および最小値から、Br=0.1〜4.7(≒5)(mN)であるのが好ましい。
【0082】
なお、手袋用皮革の剛軟度Brは、Br=0.01〜20(mN)でもよい。これは、皮革の剛軟度が0.01(mN)より小さいと、発泡樹脂の方の剛性が相対的に高くなりすぎて、着用者が着用時に違和感を感じるようになり、また皮革の剛軟度が20(mN)より大きいと、皮革の剛性が高くなりすぎて、発泡樹脂の塗布側と逆側の面が凹状に変形しなくなるからである。
【0083】
また、手袋用皮革の厚みは、0.4〜1(mm)が好ましい。これは、0.4(mm)より薄いと、強度が不足して破れる恐れがあるからであり、また1(mm)より厚いと、フィット性が足りず、スポーツ手袋として適しないからである。
【0084】
次に、スポーツ手袋の製造方法について説明する。
まず、上述したガーレ法により選択された手袋用皮革のための皮革シートを所定の形状に裁断する。
【0085】
皮革シートの裁断後、皮革シートの手袋裏面に対応する面に、発泡剤を含む発泡樹脂を印刷する。樹脂としては、ウレタン系、アクリル系およびシリコン系のいずれでもよい。発泡樹脂の粘度としては、皮革の上に印刷する関係上、或る程度の流動性が必要なため、50〜500dPa・sが好ましい。具体的には、天然皮革および人工皮革については、100Pa・s程度の粘度のものが用いられ、合成皮革については、300Pa・s程度の粘度のものが用いられる。また、発泡剤は、比較的低温(80〜110℃)で膨張するものが用いられる。
【0086】
発泡樹脂としては、微粘着性を有しているものが好ましい。この微粘着性は、表2に示すようなJIS K 6850に規定する引張せん断接着強さの試験方法に準拠した方法で測定したときに、引張せん断接着強さが1〜20[kPa]であるのが好ましい。
【表2】
【0087】
皮革シートに発泡樹脂を印刷する工程において、またその前後の工程において、発泡樹脂の印刷部位の近傍には、粘着性を有する非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)が印刷される。
【0088】
発泡樹脂および粘着樹脂の印刷パターンとしては、図1に示すように、スポーツ手袋の第3指ないし第5指においては、発泡樹脂F1および粘着樹脂A1の各々がいずれも縦長の六角形状を有しており、これらを上下および左右方向に交互に配置している。また、子指球部においては、発泡樹脂F2および粘着樹脂A2の各々がいずれも正六角形状を有しており、これらを上下および左右方向に交互に配置している。
【0089】
次に、発泡樹脂F1、F2よび粘着樹脂A1、A2が印刷された皮革シートを常温で3〜24時間乾燥させ、各樹脂を硬化させる。その後、皮革シートを80〜110℃で10秒間加熱することにより、発泡樹脂を発泡させる。
【0090】
すると、皮革シートの樹脂印刷面に張力が発生し、これにより、皮革シートの裏側の面において樹脂印刷部位に対応する部位が当該張力によって引っ張られることで凹状に形成される。
【0091】
発泡後の発泡樹脂の厚みtは、0.2〜2mmが好ましく、凹部の深さdは0.1〜2mmが好ましい(図3参照)。また、子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指〜第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっている。なお、凹部の深さは発泡樹脂の厚みに比例するので、この場合、子指球部における凹部の深さの方が、第3指〜第5指における凹部の深さよりも深くなっている。また、このような厚み(および深さ)の違いは、発泡樹脂の塗布量を変えたり、または発泡倍率を変えたりすることにより可能である。また、発泡後の発泡樹脂の内部には、連続気泡が形成されているのが好ましい。
【0092】
次に、皮革シートを縫製することで、スポーツ手袋が完成する(図1、図2参照)。
【0093】
上述のように構成されたスポーツ手袋1によれば、手袋本体10の裏面の一部に発泡樹脂F1、F2が印刷されるので、当該発泡樹脂による複数の凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できる。また、手袋本体10の表面の一部に複数の凹部11、12が形成されるので、当該凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、手袋表面の滑りを防止できる。
【0094】
しかも、この場合には、皮革シートの一方の面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、皮革シートの他方の面が一方の面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を皮革シートの一方の面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0095】
さらに、この場合には、皮革シートの一方の面の凸部と他方の面の凹部とが手袋の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、手袋用皮革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、一方の面の凸部に作用した衝撃力が、他方の面にそのまま伝播するのを他方の面の凹部により緩和できる。
【0096】
また、発泡樹脂が印刷された側の面が微粘着性を有しており、さらには、発泡樹脂の印刷部位の近傍に粘着樹脂が印刷されているので、発泡樹脂の印刷側の面において、当該面における手袋の滑り止め効果を向上できる。
【0097】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部や第3指ないし第5指に対応する領域に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。しかも、この場合には、物を把持する力が相対的に弱い掌の子指球部における発泡樹脂の厚みの方が、第3指ないし第5指における発泡樹脂の厚みよりも厚くなっているので、手袋の滑りをより効果的に防止できる。
【0098】
発泡樹脂の厚みを0.2mm以上としたのは、手袋のグリップ力を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の厚みは、着用者が手袋の着用後に段差として感じる部分であり、2mmよりも大きくなると、着用者が圧迫感を感じることになるからである。
【0099】
凹部の深さを0.1mm以上としたのは、手袋の滑り止め効果を発揮させるのに最低限必要な厚みであり、また2mm以下としたのは、発泡樹脂の発泡後の凸部の厚みを2mm以下と規定していることによるものである。
【0100】
また、発泡樹脂の内部に連続気泡が形成するようにしたのは、連続気泡が形成されている面には水の膜が発生しにくくなって、水はけが良くなり、これにより、手袋の防滑性を向上できるからである。
【0101】
〔第2の実施例〕
前記第1の実施例では、スポーツ手袋1の掌側の裏面において、第3指〜第5指、および子指球部に対応する領域に、発泡樹脂および粘着樹脂を多数の六角形の交互配置のパターンで印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。六角形の代わりに円形を用いて、多数のドットパターンを印刷するようにしてもよく、あるいは、その他の幾何学的形状を用いるようにしてもよい。また、発泡樹脂および粘着樹脂の配列のパターンも前記第1の実施例に示すものに限定されない。
【0102】
図5および図6は、本発明の第2の実施例によるスポーツ手袋を示している。図5はスポーツ手袋(右手用)の掌側の裏面図、図6はスポーツ手袋(図5)の掌側の表面図である。これらの図において、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0103】
図5に示すように、スポーツ手袋1’の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、前記第1の実施例と同様に、発泡剤を含む発泡樹脂F1と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A1とが印刷されている。図6に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の第3指ないし第5指には、裏面側の発泡樹脂F1の各印刷部位に一致する位置に凹部11が形成されている。
【0104】
スポーツ手袋1’の掌側の裏面(内面)において、手袋本体10の子指球部には、発泡剤を含む発泡樹脂F2’と、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A2’とが印刷されている。印刷された発泡樹脂F2’の各々は、三角形の中心から各頂点に向かう3本の直線から構成されている。粘着樹脂A2’の印刷パターンは、六角形と円形(ドット)の組合せから構成されている。発泡樹脂F2’および粘着樹脂A2’は、上下方向および左右方向に交互に配置されている。図6に示すように、スポーツ手袋1の掌側の表面(外面)において、手袋本体10の子指球部には、裏面側の発泡樹脂F2’の各印刷部位に一致する位置に凹部12’が形成されている。
【0105】
〔第3の実施例〕
前記第1、第2の実施例では、スポーツ手袋1の第3指〜第5指、および子指球部の双方に発泡樹脂を印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。スポーツ手袋1の第3指〜第5指、または子指球部のいずれか一方に発泡樹脂を印刷するようにしてもよい。
【0106】
〔第4の実施例〕
前記第1、第2の実施例では、スポーツ手袋の裏面に発泡樹脂を印刷した例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。前記第1、第2の実施例とは逆に、スポーツ手袋の表面に発泡樹脂を印刷することにより、スポーツ手袋の裏面に凹部を形成するようにしてもよい。
【0107】
手袋の使用時には、手袋本体10の表面に印刷された発泡樹脂による複数の凸部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、手袋表面の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の裏面に形成された複数の凹部の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できる。
【0108】
なお、前記第1ないし第4の実施例では、スポーツ手袋に補強材としての当て革が設けられていない例を示したが、本発明は、以下の第5ないし第7の実施例に示すように、当て革が設けられたスポーツ手袋にも同様に適用できる。これらの例では、当て革は、スポーツ手袋の子指球部に相当する領域に設けられている。また、これらの実施例において、前記各実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0109】
〔第5の実施例〕
図7および図8は、本発明の第5の実施例を示している。この第5の実施例では、前記第1の実施例の手袋本体10(図2参照)において凹部12が形成された掌側の表面の上に、発泡樹脂による凹凸のない当て革20が装着されている。当て革20は、その外周縁部が手袋本体10の上に縫い付けられている(図7および図8中に点線で示すステッチ参照)。
【0110】
手袋1Aの使用時には、手袋本体10の裏面に印刷された発泡樹脂F1、F2による複数の凸部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の表面に形成された複数の凹部11、12の角部が当て革20の裏面に喰い込む(または裏面を引っ掛ける)ことによって、当て革20と手袋本体10との間の滑りを防止できる。
【0111】
なお、当て革20が装着される手袋本体10は、前記第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凸部が掌側の表面に形成されたものでもよい。
【0112】
この場合、手袋の使用時には、手袋本体10の裏面に形成された複数の凹部11、12の角部が手に喰い込む(または手の表面を引っ掛ける)ことによって、手袋内部の滑りを防止できるとともに、手袋本体10の表面に印刷された発泡樹脂F1、F2による複数の凸部が当て革20の裏面に喰い込む(または裏面を引っ掛ける)ことによって、当て革20と手袋本体10との間の滑りを防止できる。
【0113】
〔第6の実施例〕
図9および図10は、本発明の第6の実施例を示している。この第6の実施例では、手袋本体10’に発泡樹脂による凹凸が形成されておらず、当て革20’の裏面に、前記第1の実施例における発泡樹脂F1と同様の発泡剤を含む発泡樹脂F3が印刷されており、当て革20’の裏面には、発泡樹脂F3による複数の凸部が形成されている。このため、当て革20’の表面には、これらの凸部に対応する複数の凹部22が形成されている。
【0114】
手袋1Bの使用時には、当て革20’の裏面に印刷された発泡樹脂F3による複数の凸部の角部が手袋本体10’の表面に喰い込む(または表面を引っ掛ける)ことによって、当て革20’と手袋本体10’との間の滑りを防止できる。また、当て革20’の表面に形成された複数の凹部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、当て革表面(つまり手袋表面)の滑りを防止できる。
【0115】
この場合には、当て革シートの裏面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、当て革シートの表面が裏面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を当て革シートの裏面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0116】
また、この場合には、当て革の裏面の凸部と表面の凹部とが当て革の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、当て革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。
【0117】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部に対応する領域において当て革に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。
【0118】
なお、当て革20’が装着される手袋本体10’は、前記第1、第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凹凸が形成されたものでもよい。
【0119】
この場合、手袋の使用時には、当て革裏面の凸部が手袋本体表面の凹部または凸部に干渉することにより、当て革および手袋本体間の摩擦抵抗が大きくなって、当て革および手袋本体間の滑りをより確実に防止できるようになる。
【0120】
〔第7の実施例〕
図11および図12は、本発明の第7の実施例を示している。この第7の実施例では、手袋本体10’に発泡樹脂による凹凸が形成されておらず、当て革20”の表面に、前記第1の実施例における発泡樹脂F1と同様の発泡剤を含む発泡樹脂F3が印刷されており、当て革20”の表面には、発泡樹脂F3による複数の凸部が形成されている。このため、当て革20”の裏面には、これらの凸部に対応する複数の凹部22が形成されている。なお、ここでは、粘着剤を含む非発泡性の粘着樹脂(非発泡樹脂)A3が当て革20”の表面に印刷された例を示している。
【0121】
手袋1Cの使用時には、当て革20”の表面に印刷された発泡樹脂F3による複数の凸部の角部が相手材(例えばゴルフクラブやバット等のグリップ)に喰い込む(または相手材を引っ掛ける)ことによって、当て革表面(つまり手袋表面)の滑りを防止できる。また、当て革20”の裏面に形成された発泡樹脂F3による複数の凹部22の角部が手袋本体10’の表面に喰い込む(または表面を引っ掛ける)ことによって、当て革20”と手袋本体10’との間の滑りを防止できる。
【0122】
この場合には、当て革シートの表面に発泡樹脂を印刷して乾燥・硬化後、加熱・発泡させることにより、当て革シートの裏面が表面に作用する張力によって引っ張られることで凹状に形成されることになるので、樹脂の印刷を当て革シートの表面に対して行うだけでよく、双方の面に対して樹脂を印刷する必要がなくなる。これにより、手袋全体の滑り止めを効率よく実現できるとともに、製造工程を簡略化してコストを低減でき、また全体の厚みが増大するのを防止できる。
【0123】
また、この場合には、当て革の表面の凸部と裏面の凹部とが当て革の表裏でずれることはなく、表裏の同一位置に形成されるので、当て革の表面および裏面の同一位置で同時に滑り止めを達成できる。また、凹部および凸部が表裏の同一位置に形成されることで、表面の凸部に作用した衝撃力が、裏面にそのまま伝播するのを裏面の凹部により緩和できる。
【0124】
さらに、この場合には、元々物を把持する力が弱い、掌の子指球部に対応する領域において当て革に発泡樹脂が印刷されるので、手袋の滑りを効果的に防止できる。
【0125】
なお、当て革20’が装着される手袋本体10’は、前記第1、第4の実施例に示すように、発泡樹脂による凹凸が形成されたものでもよい。
【0126】
この場合、手袋の使用時には、当て革裏面の凹部が手袋本体表面の凹部または凸部に干渉することにより、当て革および手袋本体間の摩擦抵抗が大きくなって、当て革および手袋本体間の滑りをより確実に防止できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、スポーツ手袋に好適であり、とくに、効率よくかつ低コストで手袋全体の滑り止めを要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0128】
1、1’、1A〜1C: スポーツ手袋
10、10’: 手袋本体
11、12、12’、22: 凹部
20、20’、20”: 当て革
F1、F2、F2’、F3: 発泡樹脂
A1、A2、A2: 粘着樹脂(非発泡樹脂)
t: 厚み
d: 深さ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0129】
【特許文献1】実用新案登録第3055215号公報(図1および図2参照)
【特許文献2】特開2004−238765号公報(段落[0011]、[0019]〜[0021]および図2参照)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ手袋の製造方法において、
手袋用皮革の一方の面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂を印刷し、
前記発泡樹脂を乾燥・硬化させ、
前記発泡樹脂を加熱して発泡させ、
これにより、前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に張力を発生させることで、前記手袋用皮革の他方の面において前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に対応する部位に凹部を形成した、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記発泡樹脂が微粘着性を有している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程では、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、前記発泡樹脂を複数の幾何学形状を含むパターンで印刷している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程またはその前後の工程において、前記発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂を印刷している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂を80〜110℃に加熱している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項10】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後の厚みが0.2〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項11】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後における前記凹部の深さが0.1〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項12】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程では、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷するとともに、前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、前記発泡樹脂の発泡後の厚みについて、前記子指球部に対応する領域の厚みを相対的に厚くし、前記第3指ないし第5指に対応する領域の厚みを相対的に薄くした、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項13】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、前記発泡樹脂の内部に連続気泡を形成している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項14】
請求項1において、
当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNである、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項15】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させた後、当該発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革を装着した、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項16】
スポーツ手袋において、
手袋用皮革の一方の面が、発泡剤を含んだ発泡樹脂の印刷部位を一部に有し、前記発泡樹脂が発泡していることにより、前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に張力が発生することで、前記手袋用皮革の他方の面において前記一方の面の前記印刷部位に対応する部位に凹部が形成されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項17】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項18】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項19】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項20】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項21】
請求項16において、
前記発泡樹脂が微粘着性を有している、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項22】
請求項16において、
前記発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、複数の幾何学形状を含むパターンで印刷されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項23】
請求項16において、
前記発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂が印刷されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項24】
請求項16において、
前記発泡樹脂の厚みが0.2〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項25】
請求項16において、
前記凹部の深さが0.1〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項26】
請求項16において、
前記発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷されるとともに、前記発泡樹脂の厚みは、前記子指球部に対応する領域が相対的に厚く、前記第3指ないし第5指に対応する領域が相対的に薄くなっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項27】
請求項16において、
前記発泡樹脂の内部に連続気泡が形成されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項28】
請求項16において、
当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNである、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項29】
請求項16において、
前記発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項1】
スポーツ手袋の製造方法において、
手袋用皮革の一方の面の一部に、発泡剤を含んだ発泡樹脂を印刷し、
前記発泡樹脂を乾燥・硬化させ、
前記発泡樹脂を加熱して発泡させ、
これにより、前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に張力を発生させることで、前記手袋用皮革の他方の面において前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に対応する部位に凹部を形成した、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項6】
請求項1において、
前記発泡樹脂が微粘着性を有している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項7】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程では、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、前記発泡樹脂を複数の幾何学形状を含むパターンで印刷している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程またはその前後の工程において、前記発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂を印刷している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂を80〜110℃に加熱している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項10】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後の厚みが0.2〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項11】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、当該発泡樹脂の発泡後における前記凹部の深さが0.1〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項12】
請求項1において、
前記発泡樹脂を印刷する工程では、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷するとともに、前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、前記発泡樹脂の発泡後の厚みについて、前記子指球部に対応する領域の厚みを相対的に厚くし、前記第3指ないし第5指に対応する領域の厚みを相対的に薄くした、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項13】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させる工程では、前記発泡樹脂の内部に連続気泡を形成している、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項14】
請求項1において、
当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNである、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項15】
請求項1において、
前記発泡樹脂を加熱・発泡させた後、当該発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革を装着した、
ことを特徴とするスポーツ手袋の製造方法。
【請求項16】
スポーツ手袋において、
手袋用皮革の一方の面が、発泡剤を含んだ発泡樹脂の印刷部位を一部に有し、前記発泡樹脂が発泡していることにより、前記一方の面における前記発泡樹脂の印刷部位に張力が発生することで、前記手袋用皮革の他方の面において前記一方の面の前記印刷部位に対応する部位に凹部が形成されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項17】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項18】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が当該手袋用皮革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が当該手袋用皮革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項19】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の裏面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の表面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項20】
請求項16において、
前記手袋用皮革の前記一方の面が、スポーツ手袋の表面に装着される補強用の当て革の表面であり、前記手袋用皮革の前記他方の面が前記当て革の裏面である、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項21】
請求項16において、
前記発泡樹脂が微粘着性を有している、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項22】
請求項16において、
前記発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、または第3指ないし第5指に対応する領域において、複数の幾何学形状を含むパターンで印刷されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項23】
請求項16において、
前記発泡樹脂の近傍に、粘着性を有する非発泡樹脂が印刷されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項24】
請求項16において、
前記発泡樹脂の厚みが0.2〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項25】
請求項16において、
前記凹部の深さが0.1〜2mmになっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項26】
請求項16において、
前記発泡樹脂が、着用者の掌の子指球部、および第3指ないし第5指に対応する領域にそれぞれ印刷されるとともに、前記発泡樹脂の厚みは、前記子指球部に対応する領域が相対的に厚く、前記第3指ないし第5指に対応する領域が相対的に薄くなっている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項27】
請求項16において、
前記発泡樹脂の内部に連続気泡が形成されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項28】
請求項16において、
当該手袋用皮革の剛軟度は、JIS L 1018に規定するガーレ法に準拠した方法による測定値が、試験片の長さを25mm、幅を30mmとするとき、0.01〜20mNである、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【請求項29】
請求項16において、
前記発泡樹脂を印刷した部位を含む領域または前記凹部を含む領域の上に補強用の当て革が装着されている、
ことを特徴とするスポーツ手袋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−31441(P2010−31441A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124988(P2009−124988)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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