説明

スポーツ用品に装着する刺繍ワッペン

【課題】野球・ソフトボール用のグラブやスポーツ手袋およびスポーツシューズなどスポーツ用品に取り付けられる刺繍ワッペンで、光触媒加工が施され汚れがつきにくく、長期にわたって表示部を美しく保つことのできるスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンを提供する。
【解決手段】ベース生地2に、文字、図形もしくは記号またはこれらの組み合わせからなる表示部4を刺繍糸3で表示する。該表示部4はベース生地2より盛り上がっている立体感のある刺繍ワッペン1である。該刺繍ワッペン1に光触媒加工が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍ワッペンに関するものであり、野球用グラブやスポーツ手袋およびスポーツシューズなどに装着するのに適し、さらに詳しくは、刺繍ワッペンに光触媒加工が施されているスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、野球用グラブには捕球部背面側の親指挿入部表面などに、所有者のネームやチーム名あるいは背番号の数字などを直接刺繍する表示を設けたものが知られている。これは他人のグラブと取り違えないようにするものであり、購入時にネーム入れを希望することにより行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
この所有者のネーム表示とは別に、野球用グラブやバッティング用手袋には、甲側の手口部の緊締帯や甲皮面の表面にメーカーのシンボルマークや文字などを刺繍糸で表示した表示部の刺繍ワッペンを取り付けてあるのが一般的である。この表示部によって自他商品の識別が行われると共に、視覚を通じての広告宣伝機能を有している。すなわち、シンボルマークを通じて、デザイン性、品質性、堅牢性などに関する良い印象を需要者に与えることにより、一般購入者にまで拡がるようにしてある。
【0004】
したがって、テレビ中継での野球観戦で、野手の様々なプレー時において、野球用グラブが映ると刺繍ワッペンの表示部であるメーカーのシンボルマークが鮮明に映らなければ広告宣伝機能を発揮しないことになり、各メーカーにとってはこの刺繍ワッペンの表示部をいかに鮮明に目立つようにするのかが大事なポイントになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−294839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の刺繍ワッペンは、ベース生地に、単に刺繍糸を刺し込んで形成したものであり、この刺繍ワッペンを甲側の手口部の緊締帯の表面にミシン縫いして取り付けられたものである。このグラブでゴロなどを捕球する時には、グラブの甲側を地面側にして掬い取るように捕球するのが一般的であることから、刺繍ワッペンが地面と接触して汚れてしまうことがある。特に走者が盗塁を企てスライディングすると、野手はボールを捕球したグラブでスライディングしてきた脚にタッチしなければならず、その時に、グラウンドの砂塵が舞い上がりグラブに砂がかぶり刺繍ワッペンを汚すことになる。
【0007】
その刺繍ワッペンは、ベース生地が濃色で、刺繍糸の表示部が淡色から形成されているのが一般的であるから、特に表示部が汚れやすく、表示部が汚れるとミシンで取り付けられているから、外して洗濯するということもできず、汚れたままとなり、シンボルマークや文字などの表示部が目立たなくなり、広告宣伝の効果が低減するという致命的な問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決することを課題として開発されたもので、野球・ソフトボール用のグラブやスポーツ手袋およびスポーツシューズなどスポーツ用品に取り付けられる刺繍ワッペンで、光触媒加工が施され汚れがつきにくく、長期にわたって表示部を美しく保つことのできるスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決し、その目的を達成する手段として、本発明は、ベース生地に、文字、図形もしくは記号またはこれらの組み合わせからなる表示部を刺繍糸で表示し、該表示部はベース生地より盛り上がっている立体感のある刺繍ワッペンであって、該刺繍ワッペンに光触媒加工が施されていることを特徴とするスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンを開発し、採用した。
【0010】
また、本発明では、上記のように構成したスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンにおいて、前記光触媒加工は、酸化チタン、酸化チタンゾル、酸化触媒、セラミック粉末および水性バインダーを配合した複合機能光触媒で処理することを特徴とするスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン、および前記ベース生地が濃色で、刺繍糸の表示部が淡色から形成されていることを特徴とするスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン、および前記スポーツ用品は、野球・ソフトボール用グラブであり、甲側の手口部の緊締帯に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とするスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン、および前記スポーツ用品は、スポーツ用の手袋であり、手甲部あるいは手口部の緊締部に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン、および前記スポーツ用品は、スポーツ用のシューズであり、甲部の舌片に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンを開発し、採用した。
【0011】
上記複合機能光触媒としての酸化チタンや酸化チタンゾルとして用いる酸化チタンとしては、無定形でもよいが結晶形を用いるのが好ましく、特にアナタース形を用いるのが好適である。そして、ゾルではなく、酸化チタンとして用いる酸化チタンの形態としては、粉末を用いるのが好ましく、特に微粉末を用いるのが好適である。
【0012】
上記酸化触媒としては、特に限定されないが、酸化第二鉄を用いるのが好ましく、この酸化第二鉄の形態としても、粉末を用いるのが好ましく、特に微粉末を用いるのが好適である。
【0013】
上記セラミック粉末としては、特に限定されないが、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を用いるのが好ましく、特にイットリアを均一に分散固溶させたジルコニア粉末を用いるのが好適である。
【0014】
上記水性バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂エマルジョン系接着剤が好適に用いられる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、刺繍糸で表示された表示部が、ベース生地より盛り上がっているから、特有の風趣と立体感を有すると共に、刺繍ワッペンに光触媒加工が施されているから、表示部が汚れても、太陽光が当たることにより光触媒作用が働き汚れ部分を酸化分解して汚れを解消することができる。
【0016】
請求項2に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、光触媒加工が、酸化チタン、酸化チタンゾル、酸化触媒、セラミック粉末および水性バインダーを配合した複合機能光触媒加工であるから、防汚性に優れて汚れがつきにくいばかりでなく、表示部が汚れても、太陽光が当たることにより光触媒作用が働き汚れ部分を酸化分解して汚れを解消することができる。
【0017】
請求項3に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、ベース生地が濃色で、刺繍糸の表示部が淡色であるから、砂塵をかぶると表示部が汚れることになるが、太陽光が当たることにより光触媒作用が働き汚れ部分を酸化分解して汚れを取ることができ、いつまでもきれいなままである。
【0018】
請求項4に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、野球・ソフトボール用グラブの甲側の手口部の緊締帯に光触媒加工が施された刺繍ワッペンを取り付けることにより、砂塵をかぶっても、太陽光の照射で使用しているうちに酸化分解して汚れがとれることになり、野球・ソフト用グラブとしての商品価値を高めることができる。
【0019】
請求項5に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、スポーツ用手袋の手甲部あるいは手口部の緊締帯に光触媒加工が施された刺繍ワッペンを取り付けてあるから、砂が付いて汚れたとしても、太陽光の照射で使用しているうちに酸化分解して汚れがとれることになり、スポーツ用手袋としての商品価値を高めることができる。
【0020】
請求項6に係るスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンは、スポーツ用シューズの甲部の舌片に光触媒加工が施された刺繍ワッペンを取り付けてあるから、舌片に砂がかぶったとしても、太陽光の照射で使用しているうちに酸化分解して汚れが取れることになり、スポーツシューズとしての商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明すれば、刺繍ワッペン1は、ポリエステルまたはナイロンなどの合成繊維糸で編成または織成された比較的分厚い帯状のベース生地2と、ポリエステルまたはレーヨンからなる刺繍糸3により適宜の文字、図形、記号などの表示部4が施こされており、この表示部4は、ベース生地2の表面より刺繍糸3が盛り上がって立体感を有している。そして、ベース生地2を濃色とし、刺繍糸3の表示部4を淡色とすることにより鮮明に見えるようにしてある。また、刺繍糸3の表示部4と異なる色の刺繍糸3で縁取りする場合もある。
【0022】
上記のように構成された刺繍ワッペン1を、後述の複合機能光触媒分散液中に浸漬した後マングルで絞り、これを乾燥させることによって刺繍ワッペン1に複合機能光触媒を担持させるものである。
【0023】
すなわち、純水100重量部に、酸化チタン微粉末{テイカ(株)製 光触媒用酸化チタン TKP−101(アナタース形結晶、結晶子径6nm)}2.5重量部と、酸化チタンゾル{テイカ(株)製 光触媒用酸化チタン TKSP−203(アナタース形結晶の水系ゾル、結晶子径6nm)}2.5重量部と、酸化第二鉄微粉末{((株)高純度化学研究所製 FEO10PB(αFe微粉末、粒径約1μm)}2.5重量部と、セラミック微粉末{東ソー(株)製 ジルコニア微粉末TZ−6YS(粒径90nm)}3.0重量部および水性バインダーとして{アクリル樹脂エマルジョン系接着剤 (株)日本触媒製 ユータブルE−11)}3.0重量部を投入し、室温下、各微粉末が均一分散状態になるまで充分攪拌して複合機能光触媒分散液を調整する。
【0024】
上記実施例で得られた刺繍ワッペンの防汚性試験(メチレンブルー法−ブラックライト照射)を行った。試験方法は、シャーレーに試薬メチレンブルー(濃度)10ppm)を10mL注入し、試験片0.1gを入れて浸透させ蓋をし、紫外線を照射する。
;紫外線照射条件
ブラックライト蛍光ランプ2灯(40W)
紫外線照射距離:1.0mW/cm
紫外線照射時間:20時間
;試験結果
変退色(級)
暗条件 3級
明条件 4−5級
未加工布の退色度合と比較して、加工布の退色度合が大きく、光触媒の効果が大きい。
【0025】
このように光触媒加工が施された刺繍ワッペン1は、図3に示すように、野球・ソフトボール用グラブ5の甲側の手口部緊締部6の表面にミシン掛けして縫いつけられ視覚を通じて一番目立つところに刺繍ワッペン1が取り付けられる。
【0026】
そして、この野球・ソフトボール用グラブ5を嵌めてプレーすれば、グラウンドで発生する砂埃などにより刺繍ワッペン1の表示部4が汚れたとしても、太陽光が当たって光触媒反応することにより、汚れ部分を分解除去して、表示部4がきれいになり、長期にわたって表示部4を鮮明に表示することができる。
【0027】
また、図4に示すように、野球用手袋、ゴルフ用手袋などのスポーツ手袋7の甲皮面8やリスト部を固定するための緊締部9の表面に光触媒加工が施された刺繍ワッペン1を縫い付けることにより、使用中に砂をかぶり表示部4が汚れても、太陽光が当たって光触媒反応することにより、汚れ部分を分解除去して表示部がきれいになる。
【0028】
さらに、図5に示すように、野球用スパイクシューズやサッカーシューズなどのスポーツシューズ10の舌片11に光触媒加工が施された刺繍ワッペン1を縫い付けることにより、使用中に砂をかぶり表示部4が汚れても、太陽光が当たって光触媒反応することにより、汚れ部分を分解除去して表示部がきれいになる。
【0029】
以上、本発明では、野球・ソフトボール用グラブ、野球用手袋やゴルフ用手袋、野球用スパイクシューズ、サッカーシューズなどのスポーツ用品の例で説明したが、必ずしもこれらに限ることはなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、土のグラウンドでプレーするスポーツの代表である野球用品のグラブ、手袋、スパイクシューズ、バッグなどの他、ゴルフ手袋、キーパー手袋、サッカーシューズなど各種のスポーツに取り付けられるスポーツ用品に装着する刺繍ワッペンとして有効に利用できるものでる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の刺繍ワッペンの平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】野球用グラブに取付けた状態の正面図である。
【図4】野球用手袋に取付けた状態の正面図である。
【図5】野球用スパイクシューズに取付けた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 刺繍ワッペン
2 ベース生地
3 刺繍糸
4 表示部
5 野球・ソフトボール用グラブ
6 緊締帯
7 スポーツ手袋
8 甲皮面
9 緊締部
10 スポーツシューズ
11 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース生地に、文字、図形もしくは記号またはこれらの組み合わせからなる表示部を刺繍糸で表示し、該表示部はベース生地より盛り上がっている立体感のある刺繍ワッペンであって、該刺繍ワッペンに光触媒加工が施されていることを特徴とするスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。
【請求項2】
前記光触媒加工は、酸化チタン、酸化チタンゾル、酸化触媒、セラミック粉末および水性バインダーを配合した複合機能光触媒で処理することを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。
【請求項3】
前記ベース生地が濃色で、刺繍糸の表示部が淡色から形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。
【請求項4】
前記スポーツ用品は、野球・ソフトボール用グラブであり、甲側の手口部の緊締帯に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。
【請求項5】
前記スポーツ用品は、スポーツ用の手袋であり、手甲部あるいは手口部の緊締部に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。
【請求項6】
前記スポーツ用品は、スポーツ用のシューズであり、甲部の舌片に刺繍ワッペンを取り付けてあることを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用品に装着する刺繍ワッペン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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