説明

スポーツ用手袋

【課題】衝撃の十分な緩衝性能を発揮すると共に良好な使用感を得られるスポーツ用手袋を提供する。
【解決手段】スポーツ用手袋1は、人差し指、中指、薬指、小指をそれぞれ覆う4つの指部21〜24と、緩衝部材4a〜4cとを備える。緩衝部材4a〜4cは、4つの指部21〜24の少なくとも1つの手掌側に配置され、少なくとも1つの指関節に対応する位置を跨いで指部21〜24の延在方向に沿って延びる。緩衝部材4a〜4cにおける指関節に対応する位置(幅せま部6)、および基節骨の指部と掌部3の境界部8に対応する位置(幅せま部6a)での幅は、緩衝部材4a〜4cにおける他の部分(幅広部7)での最大幅より狭い。緩衝部材4a〜4cは、4つの指部21〜24の1つから他の指部まで延在することなく、4つの指部21〜24の1つに対応して独立した部材として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスポーツ用手袋に関し、より特定的には、良好な使用感と十分な衝撃の緩和性能とを得られるスポーツ用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野球の打撃時に用いられる手袋などのスポーツ用手袋においては、衝撃の緩和を図るための様々な提案がなされている。たとえば、特開平9−182825号公報(以下、特許文献1と呼ぶ)や米国特許第5,987,642号明細書(以下、特許文献2と呼ぶ)には、手掌部から指部にかけて緩衝部材を配置したスポーツ用手袋が開示されている(たとえば、特許文献1の図3、および特許文献2の図6参照)。また、特開昭61−168378号公報(以下、特許文献3と呼ぶ)、実開昭61−69221号公報(以下、特許文献4と呼ぶ)、および特表2007−506521号公報(以下、特許文献5と呼ぶ)には、指の関節部を挟んで独立して配置された緩衝部材を備えるスポーツ用手袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−182825号公報
【特許文献2】米国特許第5,987,642号明細書
【特許文献3】特開昭61−168378号公報
【特許文献4】実開昭61−69221号公報
【特許文献5】特表2007−506521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のスポーツ用手袋においては、以下のような問題があった。すなわち、特許文献1、2に開示されたような構成のスポーツ用手袋では、指部の手掌側全体を覆うような緩衝部材が配置されているため、たとえば当該スポーツ用手袋を装着してバットを握る場合に、当該緩衝部材により指の折り曲げ動作がやり難く、結果的にバットを握る感覚が当該スポーツ用手袋を用いない場合と大きく異なり、使用者が違和感を覚える場合があった。一方、特許文献3〜5に開示されたような構成のスポーツ用手袋では、指の関節部を挟んで独立した緩衝部材が配置されているものの、バットによる打球時の衝撃が緩衝部材の間の隙間などより手に伝わり、当該衝撃の緩衝作用が不十分である場合があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、この発明の目的は、衝撃の十分な緩衝性能を発揮すると共に良好な使用感を得られるスポーツ用手袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従ったスポーツ用手袋は、人差し指、中指、薬指、小指をそれぞれ覆う4つの指部と、緩衝部材とを備える。緩衝部材は、4つの指部の少なくとも1つの手掌側に配置され、少なくとも1つの指関節に対応する位置を跨いで指部の延在方向に沿って延びる。緩衝部材における指関節に対応する位置での幅は、緩衝部材における他の部分での最大幅より狭い。緩衝部材は、4つの指部の1つに対応して独立した部材として形成されている。なお、ここで指関節とは、基節骨、中節骨、末節骨のいわゆる指骨と呼ばれる骨の間の関節を含み、さらに、指部と掌部との境界部(指部の付け根部分)も含むものである。
【0007】
この場合、指部の延在方向において指関節に対応する位置を跨いで緩衝部材が形成されているので、当該スポーツ用手袋をはめてたとえばバットを握った場合に、指部の延在方向(つまりバットのグリップ部の円周方向)に沿って相対的に広い領域で、手とグリップ部との間に緩衝部材を配置することができる。このため、指関節を挟んで緩衝部材が分離して配置されている(指関節に対応する部分には緩衝部材が存在しない)場合より、手に対する衝撃を緩衝部材で確実に吸収することができる。
【0008】
また、指関節に対応する緩衝部材の部分は、他の部分より幅が細くなっている(平面視したときに括れている)ので、指を曲げるときに当該緩衝部材が指の曲がりを邪魔することを抑制できる(本発明に従ったスポーツ用手袋をはめて指を曲げたときの感覚を、緩衝部材が無い場合の指の曲げ動作の感覚に近づけることができる)。このため、スポーツ用手袋の使用感を向上させることができる。
【0009】
また、緩衝部材は指部ごとに独立して形成されている(複数の指部のそれぞれに形成された緩衝部材が互いに連結されること無く、独立して形成されている)ので、複数の指に形成された緩衝部材が手掌部で連結され、全体として1つの緩衝部材を構成する場合に比べて、スポーツ用手袋の変形の自由度を大きくできる。このため、スポーツ用手袋を装着した使用者が指などを動かすときの自由度を大きくし、スポーツ用手袋の使用感(装着感)をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衝撃の十分な緩衝性能を発揮すると共に良好な使用感を得られるスポーツ用手袋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態1を示す模式図である。
【図2】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態2を示す模式図である。
【図3】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態3を示す模式図である。
【図4】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態4を示す模式図である。
【図5】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態5を示す模式図である。
【図6】本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態6を示す模式図である。
【図7】人間の右手を手甲側から見た場合の骨格の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態1を説明する。
【0014】
図1に示したスポーツ用手袋1は、手のひらを覆う手掌部3と、この手掌部3に連なり、人差し指、中指、薬指、小指および親指をそれぞれ覆う袋状の指部21〜25と、図1では直接示されないが手掌部の反対側に位置する手の甲を覆う手甲部と、手掌部3および指部22、23、24、25に配置された緩衝部材4a〜4c、5を備える。なお、図1に示したスポーツ用手袋1は、左手に装着するスポーツ用手袋1を例示している。そして、右手に装着するスポーツ用手袋も、図1に示したスポーツ用手袋1と同様の構造とすることができる。
【0015】
図1に示したスポーツ用手袋1の緩衝部材4a〜4cは、中指、薬指、および小指のそれぞれに対応する指部22、23、24に対応して互いに独立して(つまり互いに接続されることなく)形成されている。また、緩衝部材4a、4bは、それぞれ指部22、23の延在方向に沿って延びるように形成されている。これらの緩衝部材4a〜4c、5は、スポーツ用手袋の表面の部材(天然皮革または人工皮革よりなる外皮)上に緩衝材となるべき部材を配置し、図1に示したような平面形状を有するカバー部材を当該緩衝材となるべき部材に被せ、当該カバー部材の外周部を外皮に縫い付けることによって構成されている。緩衝部材4cは、小指の基節骨10(図7参照)の付け根(中手骨側)に位置する手掌部3に配置されている。また、緩衝部材5は、親指に対応する指部25の付け根に配置されている。当該緩衝部材5は、親指に対応する指部25の付け根から人差し指に対応する指部21に向かう方向に延びるように配置されている。また、手掌部3の指部24側における手首に近い側(下部)にも、緩衝部材が配置されている。
【0016】
緩衝部材4a、4bは、図1に示すように指部22、23の延在方向において局所的に幅(指部22、23の延在方向に対して交差する方向における幅)が、他の部分における幅よりも狭くなる(括れている)幅せま部6、6aを有する。当該幅せま部6は、指部22において指関節が位置する部分に配置されることが好ましい。さらに、幅せま部6aは、指部23と掌部3の境界部8(または指部22と掌部3の境界部8)に設けられることが望ましい。そして、当該幅せま部6、6aを挟むように、緩衝部材4a、4bには幅せま部6、6aより幅の広い幅広部7が形成されている。
【0017】
緩衝部材4a〜4c、5のそれぞれに用いられる緩衝材の厚みは(あるいは緩衝部材4a〜4c、5の厚みは)、すべて同じ厚みとしてもよいが、緩衝部材ごとに当該厚みを変更してもよい。たとえば、中指に対応する指部22に配置される緩衝部材4aについては、他の緩衝部材4b、4c、5の厚みよりも厚い厚みとなるように形成されていてもよい。また、緩衝部材4a〜4c、5のそれぞれの内部において、局所的に厚みを変えてもよい。たとえば、緩衝部材4aにおいて、指部22先端側の幅広部7より、指部22の根元側の幅広部7における厚みを相対的に厚くする、といった構成を採用してもよい。
【0018】
上記スポーツ用手袋1では、当該スポーツ用手袋1の使用時(たとえばバットの打撃時)において、発明者が実験により確認した、手に加わる衝撃の特に大きな領域に緩衝部材4a〜4c、5が配置されている。このため、使用者の手に伝わる衝撃を当該緩衝部材4a〜4c、5により効果的に吸収することができる。この結果、打撃時の衝撃など、使用者がスポーツ用手袋1を手に装着してスポーツを行なう際に受ける衝撃を緩和することができる。
【0019】
ここで、図1に示したスポーツ用手袋1における緩衝部材4a〜4c、5の配置について、スポーツ用手袋1を嵌めた使用者の手の骨との対応を用いて当該配置を説明する。具体的には、図1および図7を参照しながら、本発明によるスポーツ用手袋1の緩衝材4a〜4c、5の配置を説明する。
【0020】
図1に示したスポーツ用手袋1の緩衝部材4aは、手袋の手掌側において、図7に示した中指の中節骨14から中手指節関節12に延在するように形成されている。緩衝部材4aにおいては、基節骨10の指部22(図1参照)と掌部3(図1参照)との境界部8に対応する位置に上記幅せま部6aが配置され、基節骨10と中節骨14との間の関節である第2指節間関節13に対応する位置に幅せま部6が配置されている。そして、基節骨10の中手指節関節12側、基節骨10の中節骨14側および中節骨14の中央部近傍では、緩衝部材4aにおいて相対的に幅が広くなっている幅広部7が配置される。
【0021】
この緩衝部材4aの平面形状の外周においては、幅広部7と幅せま部6とは滑らかな曲線で繋がれている。異なる観点から言えば、中指の指部22の延在方向に延びる当該指部22の中心軸を考えたときに、緩衝部材4aの外周は幅せま部6、6aに近づくにつれて当該中心軸に近づくように、当該中心線に対して傾斜した状態となっている。また、異なる観点から言えば、緩衝部材4aにおいては、その外周が幅広部7から幅せま部6、6aにかけて滑らかに繋がるように曲線状となっている。
【0022】
また、指部23の手掌部3側に配置されている緩衝部材4bは、薬指の基節骨10に対向する位置において延在するように形成されている。緩衝部材4bの幅せま部6aは、薬指の基節骨10の指部23(図1参照)と掌部3(図1参照)の境界部8に対応する位置上に配置されている。この緩衝部材4bにおいても、その外周部の平面形状は曲面状であり、幅広部7から幅せま部6aにまで滑らかに繋がるようになっている。また、異なる観点から言えば、指部23の延在方向に沿った中心軸を考えたときに、緩衝部材4bの外周は幅せま部6aの中心部に近づくにつれて当該中心軸に近づくように構成されている。緩衝部材4bの幅広部7は、それぞれ基節骨10の中手指節関節12と第2指節間関節13近傍と対向する位置に配置されている。
【0023】
緩衝部材4cは、小指の基節骨10の中手指節関節12側と対向する手掌側の位置に配置されている。緩衝部材4cの平面形状はほぼ楕円形状である。
【0024】
緩衝部材5は、親指の付け根に対応する位置、すなわち親指の指部25の付け根に配置されている。異なる観点から言えば、緩衝部材5は、親指の中手骨11と基節骨10との間の関節である中手指節関節と対向する位置を中心として、親指の指部25側から人差し指の指部21側にまで延びるように形成されている。緩衝部材5の平面形状は楕円形状であって、そのほぼ中央部を中心として屈曲した形状となっている。なお、緩衝部材4a〜4cに含まれる緩衝材の厚みは3mmとし、緩衝部材5に含まれる緩衝材の厚みは5mmとした。
【0025】
このような緩衝部材4a〜4c、5を備えるスポーツ用手袋1により、打撃時の衝撃をより吸収することができる。また、緩衝部材4a、4bでは、指部と掌部3との境界部8に幅せま部6aが、さらに指関節である第2指節間関節13と対向する位置に幅せま部6が形成されているので、指を曲げる動作において緩衝部材4a、4bが動作の妨げになる程度を軽減できる。このため、スポーツ用手袋1の装着感や使用感を向上させることができる。なお、本明細書では、上記幅せま部6aが配置されている指部と掌部3との境界部8も、(骨格上の関節ではないものの)指関節の呼ぶ。
【0026】
(実施の形態2)
図2および図7を参照して、本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態2を説明する。
【0027】
図2に示したスポーツ用手袋1は、基本的には図1に示したスポーツ用手袋1と同様の構造を備えるが、小指に対応する指部24に形成された緩衝部材4cの構成および薬指に対応する指部23に形成された緩衝部材4bの形状が図1に示したスポーツ用手袋1とは異なっている。具体的には、図2に示したスポーツ用手袋1では、中指、薬指および小指に対応する指部22〜24のそれぞれにおいて、手掌部3側に独立した緩衝部材4a〜4cが形成されている。緩衝部材4bは、指部22に形成された緩衝部材4aと同様に薬指の基節骨10と対向する位置(手掌部3の指部側の端部)から中節骨14と対向する位置にまで延びるように形成されている。
【0028】
そして、緩衝部材4bでは、指部23の延在方向において互いに間隔を隔てた2箇所に幅せま部6、6aが形成されている。この幅せま部6、6aを挟むように幅広部7が形成されている。緩衝部材4bの外周は滑らかな曲面により構成されている。幅せま部6は、薬指の第2指節間関節13と対向する位置に配置され、幅せま部6aは、薬指の基節骨10の指部23と掌部3の境界部8に配置されている。そして、緩衝部材4bの3つの幅広部7は、それぞれ薬指の基節骨10の中手指節関節12側と第2指節間関節13側、および中節骨14の中央部を中心とした位置に配置されている。
【0029】
また、図2に示したスポーツ用手袋1では、小指に対応する指部24の手掌部側に緩衝部材4cが配置されている。緩衝部材4cは、小指の基節骨10から中節骨14にまで延在するように形成されている。緩衝部材4cにおいては、指部24の延在方向において互いに離れて2箇所の幅せま部6、6aが形成されている。幅せま部6は、小指の第2指節間関節13と対向する位置に配置され、幅せま部6aは小指の基節骨10の指部24と掌部3の境界部8に配置されている。この幅せま部6、6aを挟むように幅広部7が配置されている。緩衝部材4cの3つの幅広部7は、それぞれ小指の基節骨10の中手指節関節12側と第2指節間関節13側、および中節骨14の中央部を中心とした位置に配置されている。緩衝部材4cの外周は滑らかな曲線によって構成されている。異なる観点から言えば、緩衝部材4a〜4cにおいては、幅せま部6、6aに向けて幅広部7から徐々に当該幅が狭くなるような形状となっている。
【0030】
このような構造のスポーツ用手袋1によっても、図1に示したスポーツ用手袋1と同様の効果を得ることができる。また、中指に対応する指部23および小指に対応する指部24に形成される緩衝部材4b、4cが図1に示したスポーツ用手袋1における緩衝部材4b、4cよりも大きくなっているので、より衝撃を吸収する能力が高くなっている。
【0031】
(実施の形態3)
図3および図7を参照して、本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態3を説明する。
【0032】
図3に示した本発明によるスポーツ用手袋1は、基本的には図2に示したスポーツ用手袋1と同様の構成を備えるが、人差し指に対応する指部21の手掌側にもさらに緩衝部材4dが形成されている点が異なる。すなわち、人差し指に対応する指部21の手掌側には、人差し指の基節骨10から中節骨14と対向する位置にまで延びる緩衝部材4dが配置されている。
【0033】
緩衝部材4dは、人差し指の関節である中手指節関節12および第2指節間関節13と対向する位置に幅せま部6が形成されている。この幅せま部6を挟むように幅広部7が形成されている。緩衝部材4dの3つの幅広部7は、それぞれ人差し指の中手骨11の上部、基節骨10の中央部、および中節骨14の中央部を中心とした位置に配置されている。緩衝部材4dの平面形状は他の緩衝部材4a〜4cと同様に滑らかな曲線により構成されている。
【0034】
このような構造のスポーツ用手袋1によっても、図1および図2に示したスポーツ用手袋1と同様の効果を得ることができる。また、図3に示したスポーツ用手袋1では、人差し指の指部21にも緩衝部材4dが配置されているので、より衝撃を吸収する能力が高くなっている。
【0035】
(実施の形態4)
図4および図7を参照して、本発明によるスポーツ用手袋の実施の形態4を説明する。
【0036】
図4に示したスポーツ用手袋1は、基本的には図2に示したスポーツ用手袋1と同様の構造を備えるが、指部22〜24のそれぞれにおいて手掌部側に形成された緩衝部材4a〜4cの形状および配置が異なっている。すなわち、図4に示したスポーツ用手袋1では、中指、薬指および小指に対応する指部22〜24において、先端側の指関節を跨いで延びるように緩衝部材4a〜4cが配置されている。これらの緩衝部材4a〜4cはいずれも中指、薬指および小指の中節骨14から末節骨15にまで延びるように配置されている。緩衝部材4a〜4cの幅せま部6は、中節骨14と末節骨15との間の関節に対向する位置に配置されている。
【0037】
これらの緩衝部材4a〜4cの平面形状の外形は滑らかな曲線により構成されている。このため、緩衝部材4a〜4cの外形においては、それぞれの指部22〜24の中心軸に対して、幅せま部6に近づくほど当該中心軸までの外周からの距離が徐々に小さくなるように、緩衝部材4a〜4cの平面形状が決定されている。
【0038】
このようにすれば、上述した本発明によるスポーツ用手袋1と同様の効果を得ることができる。また、図4に示したスポーツ用手袋1においては、特に感覚の敏感な指先に緩衝部材4a〜4cが配置されているので、この敏感な指先への衝撃をより確実に吸収することができる。
【0039】
(実施の形態5)
図5および図7を参照して、本発明のスポーツ用手袋の実施の形態5を説明する。
【0040】
図5に示したスポーツ用手袋1は、基本的には図1に示したスポーツ用手袋1と同様の構造を備えるが、小指に対応する指部24の手掌部側に配置された緩衝部材4cの形状が図1に示したスポーツ用手袋1とは異なっている。具体的には、図5に示したスポーツ用手袋1においては、緩衝部材4cが小指の基節骨10から中節骨14にまで延びるように形成されている。緩衝部材4cにおける幅せま部6は第2指節間関節13と対向する位置に配置され、幅せま部6aは基節骨10において指部24と掌部3との境界部8と対向する位置に配置されている。緩衝部材4cの3つの幅広部7は、それぞれ小指の中節骨14の中央部を中心とした位置と、基節骨10の中手指節関節12側と第2指節間関節13側とに配置されている。緩衝部材4cの平面形状の外周は曲線により構成されている。このような構造によっても、図1に示したスポーツ用手袋1と同様の効果を得ることができる。
【0041】
(実施の形態6)
図6を参照して、本発明のスポーツ用手袋の実施の形態6を説明する。
【0042】
図6を参照して、本発明によるスポーツ用手袋1は、基本的には図1に示したスポーツ用手袋と同様の構造を備えるが、中指および薬指に対応する指部22、23においては、手掌部3にまで到達せず指部22、23の手掌側のみに緩衝部材4a、4bが形成されている点、およびこれらの緩衝部材4a、4bの平面形状、が図1に示したスポーツ用手袋1とは異なっている。具体的には、緩衝部材4a、4bはそれぞれ指部22、23の手掌部側のみに形成され、手掌部3には延在しない。より具体的には、緩衝部材4aは、中指の基節骨10の指部22に位置する部分から中節骨14にまで延びるように形成されている。緩衝部材4aの幅せま部6は、第2指節間関節13上の領域に配置されている。緩衝部材4aの幅広部7は、当該幅せま部6を挟むように配置され、それぞれ基節骨10上の第2指節間関節13側、および中節骨14の中央部を中心とした位置に配置されている。
【0043】
薬指に対応する指部23の手掌部側に配置された緩衝部材4bは、基節骨10の指部23に位置する部分に配置されており、幅広部7のみを有する。異なる観点から言えば、緩衝部材4bの平面形状はほぼ楕円形状となっている。
【0044】
このような構造によっても、図1に示したスポーツ用手袋1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
次に、上述した実施の形態と一部重複する部分もあるが、本発明の特徴的な構成を列挙する。
【0046】
この発明に従ったスポーツ用手袋1は、人差し指、中指、薬指、小指をそれぞれ覆う4つの指部21〜24と、緩衝部材4a〜4dとを備える。緩衝部材4a〜4dは、4つの指部21〜24の少なくとも1つの手掌側に配置され、少なくとも1つの指関節(図7に示した第2指節間関節13、中節骨14と末節骨15との間の指関節、および指部21〜24と掌部3との境界部8(異なる観点から言えば基節骨10において指部21〜24と掌部3との境界部8))に対応する位置を跨いで指部21〜24の延在方向に沿って延びる。緩衝部材4a〜4dにおける指関節(第2指節間関節13、中節骨14と末節骨15との間の指関節、および指部21〜24と掌部3との境界部8)に対応する位置(幅せま部6、6a)での幅は、緩衝部材4a〜4dにおける他の部分(幅広部7)での最大幅より狭い。緩衝部材4a〜4dは、4つの指部21〜24の1つから他の指部まで延在することなく、4つの指部21〜24の1つに対応して独立した部材として形成されている。
【0047】
この場合、指部21〜24の延在方向において指関節に対応する位置を跨いで緩衝部材4a〜4dが形成されているので、当該スポーツ用手袋をはめてたとえばバットを握った場合に、指部21〜24の延在方向(つまりバットのグリップ部の円周方向)に沿って相対的に広い領域で、手とグリップ部との間に緩衝部材4a〜4dを配置することができる。このため、指関節を挟んで緩衝部材が分離して配置されている(指関節に対応する部分には緩衝部材が存在しない)場合より、手に対する衝撃を緩衝部材4a〜4dで確実に吸収することができる。
【0048】
また、指関節に対応する緩衝部材4a〜4dの部分(幅せま部6、6a)は、他の部分より幅が細くなっている(平面視したときに括れている)ので、指を曲げるときに当該緩衝部材4a〜4dが指の曲がりを邪魔することを抑制できる(本発明に従ったスポーツ用手袋1をはめて指を曲げたときの感覚を、緩衝部材4a〜4dが無い場合の指の曲げ動作の感覚に近づけることができる)。このため、スポーツ用手袋1の使用感を向上させることができる。つまり、たとえば中手指節関節12と第2指節間関節13(、および各指関節間)の手甲側と手掌側との表面での各々の距離(表面長さ)が、指を伸ばした時は殆ど同じであるが、指を曲げたときには手掌側の距離(表面長さ)が短くなり筋肉が盛り上がるので、緩衝部材を変形しやすくして装着感をさらに改善する目的でこの幅せま部6、6aは設けられている。
【0049】
また、緩衝部材4a〜4dは指部ごとに独立して形成されている(複数の指部21〜24のそれぞれに形成された緩衝部材4a〜4dが互いに連結されること無く、独立して形成されている)ので、複数の指部21〜24に形成された緩衝部材4a〜4dが手掌部3で連結され、全体として1つの緩衝部材を構成する場合に比べて、スポーツ用手袋1の変形の自由度を大きくできる。このため、スポーツ用手袋1を装着した使用者が指などを動かすときの自由度を大きくし、スポーツ用手袋1の使用感(装着感)をより向上させることができる。
【0050】
上記スポーツ用手袋1は、手のひらを覆う手掌部3をさらに備えている。緩衝部材4a〜4dは指部21〜24の手掌側から手掌部3の上にまで延在するように形成されていてもよい。この場合、指部21〜24の延在方向に沿った緩衝部材4a〜4dの長さをより長くできる(緩衝部材4a〜4dの面積を大きくできる)ので、スポーツ用手袋1における衝撃の緩衝性能を向上させることができる。
【0051】
上記スポーツ用手袋1において、緩衝部材4a〜4dは、4つの指部21〜24のうちの2つ以上においてそれぞれ形成されていてもよい。この場合、特に中指と薬指とに対応する指部22、23に緩衝部材4a、4bを配置してもよい。この場合、複数の指部22、23にそれぞれ緩衝部材4a、4bを配置するので、より衝撃を吸収することができる。
【0052】
上記スポーツ用手袋1において、4つの指部21〜24のうちの2つ以上においてそれぞれ形成されている複数の緩衝部材4a〜4dのうちの1つの緩衝部材(たとえば緩衝部材4a)は、他の緩衝部材(たとえば緩衝部材4b)と厚みが異なっていてもよい。この場合、複数の緩衝部材4a〜4dのうちで、特に大きな衝撃を受ける部位に位置する緩衝部材4aの厚みを厚くする、といった対応が可能になる。このため、より衝撃の緩衝性能を向上させることができる。
【0053】
上記スポーツ用手袋1は、親指を覆う親指部(指部25)と、親指部の根元に配置された第2の緩衝部材5とをさらに備えていてもよい。ここで、たとえばスポーツ用手袋1をはめてバットにより打撃を行なうときに、当該親指部の根元にも大きな衝撃が加わる場合がある。このため、上記第2の緩衝部材5を配置することで、親指部の根元に加わる衝撃を効果的に吸収することができる。
【0054】
上記スポーツ用手袋1において、第2の緩衝部材5の厚みは上記4つの指部21〜24の少なくとも1つに形成される緩衝部材(たとえば緩衝部材4b)の厚みと異なっていてもよい(たとえば、第2の緩衝部材5の厚みは上記緩衝部材4a〜4dより厚くなっていてもよい)。この場合、上記第2の緩衝部材5について、その親指の根元に加わる衝撃に応じて当該第2の緩衝部材5の厚みを上記緩衝部材4a〜4dの厚みとは独立して任意に設定できるので、スポーツ用手袋1の衝撃の緩衝能力をより高めることができる。
【0055】
また、上記緩衝材4a〜4dにおいては、小指側に位置する緩衝部材4cより、親指側の緩衝部材(たとえば緩衝部材4a、4b、4d)の方が厚みが厚くなっている(内部に含まれる緩衝材の厚みが相対的に厚くなっている)ことが好ましい。たとえば、緩衝部材4a〜4dに含まれる緩衝材の厚みは、2mm以上7mm以下、より好ましくは3mm以上5mm以下である。また、第2の緩衝部材5に含まれる緩衝材の厚みは、2mm以上10mm以下、より好ましくは3mm以上7mm以下である。また、緩衝材の材料としては、衝撃をある吸収できる材料であれば任意の材料を用いることができる。
【0056】
上記スポーツ用手袋1において、緩衝部材4a〜4d、5の平面外形は曲線で構成されていてもよい。緩衝部材4a〜4dの平面外形において最大幅を示す部分(幅広部7)から指関節に対応する位置(幅せま部6)に向かう部分は、緩衝部材4a〜4dが配置された指部21〜24の延在方向に対して傾斜していてもよい。また、この傾斜した部分の当該延在方向に対する傾斜角度は、5°以上80°以下、より好ましくは10°以上45°以下である。
【0057】
この場合、指を曲げたときの指部21〜24の屈曲に対する緩衝部材4a〜4dの抵抗を低減できる範囲で、緩衝部材4a〜4dの面積をできるだけ大きくすることができる。
【0058】
なお、緩衝部材4a〜4dおよび第2の緩衝部材5の構成は、上述のような緩衝材を被覆層で覆って縫い付けるといった構成であってもよいが、他の任意の構成でもよい。たとえば、緩衝材の材質が十分な耐久性を備えるものであれば、スポーツ用手袋1の手掌側に直接緩衝材を貼り付けなどの方法で固定する、といった構成を採用してもよい。
【0059】
また、上述したスポーツ用手袋1において、緩衝部材4a〜4dでは、複数の幅せま部6、6aを有する構成において、当該複数の幅せま部6、6aのうちの1つを省略してもよい。たとえば、図2のスポーツ用手袋1において、緩衝部材4a〜4cの幅せま部6を無くし、幅せま部6aのみを形成して、当該幅せま部6aより指先側では緩衝部材4a〜4cがほぼ同じ幅を有するようにしてもよい。
【0060】
(実施例1)
本発明によるスポーツ用手袋の構成を検討するに当たり、以下のような実験を実施した。具体的には、バットでのボール打撃インパクト時に手袋において衝撃の大きい位置を特定するため、以下のような実験を行なった。
【0061】
<実験1>
(準備試料)
圧力センサを手掌側に取付けた手袋を準備した。なお、この実験で用いた手袋には、緩衝部材は配置されていない。当該手袋では、人差し指〜小指までの4本の指部の手掌側にそれぞれ4つ(合計16個)の圧力センサを取付けた。また、親指の指部の先端および根元の人差し指側の領域(親指の股の部分)にそれぞれ1つずつ(合計2個)の圧力センサを取付けた。また、手掌部の親指側の端部と小指側の端部(なお、端部とは中手骨の基節骨側をいう)とにそれぞれ1つずつ(合計2個)の圧力センサを取付けた。これらのセンサとしては、ニッタ株式会社製のF−Scanを用いた。
【0062】
(実験内容)
圧力センサを取付けた手袋(左右1組)を嵌めた試験者が、バットを持ち、実際のバットスイングにおける打撃(インパクト)時の位置でバットを静止させた。そして、当該バットの打球部の芯に向けて、ソフトボールを射出装置(バズーカと呼ばれるピッチングマシンと類似の装置)から打ち出して当該打球部に衝突させた。そして、当該ボールの衝突時における各圧力センサの出力(最大圧力の測定値)を計測した。ソフトボールの射出速度は150km/h超えとした。また、データのばらつきを考慮し、当該試験を3回〜7回行なった。
【0063】
なお、試験者は右打であった。そのため、右手はバットのトップ側(先端側)、左手はバットのグリップエンド側に位置した状態であった。
【0064】
ここで、通常は打撃時には打者はバットスイングをするが、本試験では当該バットスイングをせず、バットを固定した状態でボールをバットに当てて手に伝わる衝撃値を測定している。そのため、上記のようにボールの速度を比較的速く設定して、打撃による衝撃値を実際の打撃時に近づけている(衝撃値の絶対値を大きくしている)。
【0065】
(実験結果)
実験結果を、以下の表1および表2に示す。なお、ここでは上記実験を3回(試行1〜試行3)行なった結果を示している。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1は、右手に関する測定結果であり、表2は左手に関する測定結果である。表1および表2において、「全体」の欄には、上記手袋に付けた20個の圧力センサからの出力の合計値を記載している。また、「親指股」の欄には、上記手袋において親指の股の部分に付けた1つの圧力センサからの出力の値を記載している。また、「人差し指」の欄には、上記人差し指に付けた4つの圧力センサからの出力の合計値を記載している。また、「中指」、「薬指」、「小指」のそれぞれの欄には、上記人差し指の欄と同様に、それぞれの指部に付けた4つの圧力センサからの出力の合計値を記載している。また、表1および表2の最下段には、各欄の値の平均値を記載している。なお、上記表1および表2を初め、後述するすべての圧力センサからの出力値は定性的データとして評価するため、単位は記載していない。
【0069】
表1および表2からわかるように、圧力の値(衝撃値)は、全体としては左手より右手の方が大きくなっている。さらに、部位別に見ると、中指、薬指、小指、親指の股という領域が、他の領域より相対的に大きな衝撃値を示している。このことから、緩衝部材は中指、薬指、小指、さらに親指の股の部分に配置することが効果的であると考えられた。
【0070】
<実験2>
次に、本発明のスポーツ用手袋の効果を確認するため、以下のような実験を行なった。
【0071】
(準備試料)
上述した本発明の実施の形態1における図1に示したスポーツ用手袋を実施例1とした。また、当該実施例1と基本的な緩衝部材の配置は同様であるが、緩衝部材の幅広部が互いに独立した構成(つまり、図1の指部22、23に配置された緩衝部材4aが3つの幅広部7ごとに分離されており、緩衝部材4bが2つの幅広部7ごとに分離されて構成)のスポーツ用手袋を比較例1とした。
【0072】
そして、これらの実施例1および比較例1のスポーツ用手袋において、上述した実験1で用いた手袋と同様に、それぞれ合計20個の圧力センサを設置した。圧力センサの設置箇所は、上記実験1の場合と同様とした。
【0073】
(実験内容)
上記実験1の場合と同様に、バットの打球部にボールを衝突させたときの各圧力センサの出力を計測した。計測条件は、上記実験1と同様とした。
【0074】
(実験結果)
実験結果を、以下の表3および表4に示す。なお、ここでは上記実験を3回(試行1〜試行3)行なった結果を示している。また、表3および表4では左手のデータを示している。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
表3は、実施例1のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果であり、表4は、比較例1のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果である。なお、表3および表4では、「全体」の欄において、20個の圧力センサからの出力の合計値を記載している。
【0078】
表3および表4から分かるように、比較例1(緩衝部材が幅広部ごとに独立している構成)よりも、本発明の実施例1の方が衝撃値(圧力センサからの出力の合計値)が小さくなっていることがわかる。つまり、本発明の実施例1のスポーツ用手袋を用いた方が、手に受ける衝撃を小さくできることがわかる。
【0079】
(実施例2)
(準備試料)
実施例2の試料として、中指と薬指のみに緩衝部材を配置したスポーツ用手袋を準備した。中指および薬指の指部のそれぞれに配置された緩衝部材の構成は、図1の緩衝部材4aと同様とした。また、当該実施例2と基本的な緩衝部材の配置は同様であるが、緩衝部材の幅広部が互いに独立した構成(つまり、図1の緩衝部材4aが3つの幅広部7ごとに分離された構成となっており、この分離された緩衝部材が中指と薬指に形成された構成)のスポーツ用手袋を比較例2とした。
【0080】
そして、これらの実施例2および比較例2のスポーツ用手袋において、上述した実験1で用いた手袋と同様に、それぞれ合計20個の圧力センサを設置した。圧力センサの設置箇所は、上記実験1の場合と同様とした。
【0081】
(実験内容)
上記実験1の場合と同様に、バットの打球部にボールを衝突させたときの各圧力センサの出力を計測した。計測条件は、上記実験1と同様とした。
【0082】
(実験結果)
実験結果を、以下の表5および表6に示す。なお、ここでは上記実験を3回(試行1〜試行3)行なった結果を示している。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
表5は、実施例2のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果であり、表6は、比較例2のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果である。なお、表5および表6では、上記表3および表4と同様に、「全体」の欄において、20個の圧力センサからの出力の合計値を記載している。
【0086】
表5および表6から分かるように、比較例2(緩衝部材が幅広部ごとに独立している構成)よりも、本発明の実施例2の方が衝撃値(圧力センサからの出力の合計値)が小さくなっていることがわかる。つまり、本発明の実施例2のスポーツ用手袋を用いた方が、手に受ける衝撃を小さくできることがわかる。
【0087】
(実施例3)
(準備試料)
実施例3の試料として、小指のみに緩衝部材を配置したスポーツ用手袋を準備した。小指の指部に配置された緩衝部材の構成は、図1の緩衝部材4aと同様とした。また、当該実施例3と基本的な緩衝部材の配置は同様であるが、緩衝部材の幅広部が互いに独立した構成(つまり、図1の緩衝部材4aが3つの幅広部7ごとに分離された構成となっており、この分離された緩衝部材が小指に形成された構成)のスポーツ用手袋を比較例3とした。
【0088】
そして、これらの実施例3および比較例3のスポーツ用手袋において、上述した実験1で用いた手袋と同様に、それぞれ合計20個の圧力センサを設置した。圧力センサの設置箇所は、上記実験1の場合と同様とした。
【0089】
(実験内容)
上記実験1の場合と同様に、バットの打球部にボールを衝突させたときの各圧力センサの出力を計測した。計測条件は、上記実験1と同様とした。
【0090】
(実験結果)
実験結果を、以下の表7および表8に示す。なお、ここでは上記実験を3回(試行1〜試行3)行なった結果を示している。
【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
表7は、実施例3のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果であり、表8は、比較例3のスポーツ用手袋を用いた場合の左手に関する測定結果である。なお、表7および表8では、上記表3および表4と同様に、「全体」の欄において、20個の圧力センサからの出力の合計値を記載している。
【0094】
表7および表8から分かるように、比較例3(緩衝部材が幅広部ごとに独立している構成)よりも、本発明の実施例3の方が衝撃値(圧力センサからの出力の合計値)が小さくなっていることがわかる。つまり、本発明の実施例3のスポーツ用手袋を用いた方が、手に受ける衝撃を小さくできることがわかる。
【0095】
(実施例4)
(準備試料)
実施例4〜実施例7の試料として、中指と薬指のみに緩衝部材を配置したスポーツ用手袋を準備した。中指と薬指の指部に配置された緩衝部材の構成は、それぞれ図1の緩衝部材4a、4bと同様とした。なお、ここでは上記構成のスポーツ用手袋における右手用の手袋を実施例4、6とし、左手用の手袋を実施例5、7とした。また、実施例4、5のスポーツ用手袋では、緩衝部材を構成する緩衝材の厚みを3mmと均一なものとした。一方、実施例6、7では、中指の指部に配置される緩衝部材については上記緩衝材の厚みを6mmとし、一方薬指の指部に配置される緩衝部材については緩衝材の厚みを3mmとした。
【0096】
そして、これらの実施例4〜7のスポーツ用手袋において、上述した実験1で用いた手袋と同様に、それぞれ合計20個の圧力センサを設置した。圧力センサの設置箇所は、上記実験1の場合と同様とした。
【0097】
(実験内容)
上記実験1の場合と同様に、バットの打球部にボールを衝突させたときの各圧力センサの出力を計測した。計測条件は、上記実験1と同様とした。
【0098】
(実験結果)
実験結果を、以下の表9〜表12に示す。なお、ここでは上記実験を3回(試行1〜試行3)行なった結果を示している。
【0099】
【表9】

【0100】
【表10】

【0101】
【表11】

【0102】
【表12】

【0103】
表9は、実施例4のスポーツ用手袋(右手用)に関する測定結果であり、表10は、実施例5のスポーツ用手袋(左手用)に関する測定結果である。また、表11は、実施例6のスポーツ用手袋(右手用)に関する測定結果であり、表12は、実施例7のスポーツ用手袋(左手用)に関する測定結果である。なお、表9〜表12では、上記表3および表4と同様に、「全体」の欄において、20個の圧力センサからの出力の合計値を記載している。さらに、表9〜表12では、「親指股」または「親指」の欄にて、上記手袋において親指の股の部分に付けた1つの圧力センサからの出力の値を記載している。
【0104】
表9〜表12と上記表1および表2とを比較すると、表9〜表12に示された本発明の実施例4〜実施例7の方がいずれも衝撃値が小さくなっていることがわかる。さらに、実施例11および実施例12の方が、実施例9および実施例10より全体での衝撃値および親指の股の部分での衝撃値ともに小さくなっている。このように、中指での緩衝部材の厚み(緩衝材の厚み)を相対的に厚くすることで、打撃時に手袋の受ける衝撃をより確実に吸収することができる。
【0105】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、スポーツ用手袋、特に野球やソフトボールなどのバッティング時に着用するスポーツ用手袋に有利に適用される。
【符号の説明】
【0107】
1 スポーツ用手袋、3 手掌部、4a〜4d 緩衝部材、5 第2の緩衝部材、6 幅せま部、7 幅広部、10 基節骨、11 中手骨、12 中手指節関節、13 第2指節間関節、14 中節骨、15 末節骨、21〜25 指部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人差し指、中指、薬指、小指をそれぞれ覆う4つの指部と、
前記4つの指部の少なくとも1つの手掌側に配置され、少なくとも1つの指関節に対応する位置を跨いで前記指部の延在方向に沿って延びる緩衝部材とを備え、
前記緩衝部材における前記指関節に対応する位置での幅は、前記緩衝部材における他の部分での最大幅より狭く、
前記緩衝部材は、前記4つの指部の1つに対応して独立した部材として形成されている、スポーツ用手袋。
【請求項2】
手のひらを覆う手掌部をさらに備え、
前記緩衝部材は前記指部の手掌側から前記手掌部の上にまで延在するように形成されている、請求項1に記載のスポーツ用手袋。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記4つの指部のうちの2つ以上においてそれぞれ形成されている、請求項1または2に記載のスポーツ用手袋。
【請求項4】
前記4つの指部のうちの2つ以上においてそれぞれ形成されている複数の緩衝部材のうちの1つの緩衝部材は、他の緩衝部材と厚みが異なっている、請求項3に記載のスポーツ用手袋。
【請求項5】
親指を覆う親指部と、
前記親指部の根元に配置された第2の緩衝部材とをさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載スポーツ用手袋。
【請求項6】
上記緩衝部材の平面外形は曲線で構成されており、
前記緩衝部材の平面外形において前記最大幅を示す部分から前記指関節に対応する位置に向かう部分は、前記緩衝部材が配置された前記指部の延在方向に対して傾斜している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスポーツ用手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−229731(P2011−229731A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103600(P2010−103600)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】