説明

スマートプレート

【課題】 より簡素な構造で衝撃の有無を容易に確認できるようにする。
【解決手段】 車両のナンバープレートに取り付けられる筐体10に、外部からの圧力が印加されると変色する顕色剤塗料11を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のナンバープレートに取り付けられるスマートプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートプレート(電子ナンバープレート)は、車両の前方ナンバープレートや後方ナンバープレートに取り付けられ、路側等に設置された外部装置(路側機)と各種データの送受信を行うようになっている。このスマートプレートは、衝突など外部要因により電子回路が破壊されると正常に機能しなくなってしまう。
【0003】
外部から電子回路への衝撃による機能異常を確認するものとしては、衝突感知センサ(加速度センサ)を用いて衝撃による断線の有無を電気的に検知して、接続された外部機器の表示部に断線の有無情報を表示させるもの(例えば、特許文献1参照)、衝撃時に発生する衝撃力を感知して機械的にスイッチを作動させ、非常点滅表示灯を点滅させるもの(例えば、特許文献2参照)、主電源が断の状態であっても電源供給が可能なバックアップ電源により作動する衝撃感知装置を用いて衝撃を感知し、衝撃のあったことを表示装置に表示させるもの(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2002−150249号公報
【特許文献2】特開平11−245719号公報
【特許文献3】特開2000−88680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した各装置をスマートプレートに適用しようとした場合、衝撃を検知するための電気回路や機械的な仕掛け、あるいは衝撃があったことをユーザに報知するための非常点滅灯や表示装置を備える必要があるため、構造が複雑であるといった問題がある。また、外部からの衝撃により、衝撃を検知するための電気回路や機械的な仕掛けが障害を受けた場合、衝撃を検知できなくなる可能性があるといった問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みたもので、より簡素な構造で衝撃の有無を容易に確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、車両のナンバープレートに取り付けられる筐体に、外部からの圧力を受けると色変化を生ずる塗料が付されていることを特徴としている。
【0007】
このように、車両のナンバープレートに取り付けられる筐体に、外部からの圧力が印加されると変色する塗料が付されているので、外部からの圧力が印加されるとその部位が変色し、より簡素な構造で衝撃の有無を容易に確認できる。
【0008】
また、塗料は、カプセル皮膜内に発色剤が封入された発色剤カプセルと、カプセル皮膜の破壊により発色剤と触れると色変化を生ずる顕色剤と、が混合されたものであることを第2の特徴としている。
【0009】
このように、カプセル皮膜内に発色剤が封入された発色剤カプセルと、カプセル皮膜の破壊により発色剤と触れると色変化を生ずる顕色剤と、を混合して上記塗料を構成することにより、外部から圧力が印加されると、カプセル皮膜が破壊され、顕色剤が発色剤に触れ、発色剤と顕色剤とが触れて色変化を生ずる。この結果、外部からの圧力によって塗料に色変化を生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るスマートプレートが自動車のナンバープレートに取り付けられた様子を図1に示す。スマートプレート1は、車両諸元情報や車両番号(ナンバー)等の各種情報を記憶するICチップおよび道路沿い等に設置された外部装置と無線通信を行う無線モジュール(図示せず)と、この無線モジュールを収納する筐体10を備えている。筐体10は、無線モジュールによる無線の送受信に影響しないように樹脂材料を用いて形成されている。
【0011】
ナンバープレート2は、アルミ基材を用いて構成されており、このナンバープレート2の一部には、スマートプレート1を取り付けるための矩形の取り付け穴が形成されている。また、スマートプレート1の筐体10には、この取り付け穴と嵌合する突起部が設けられている。
【0012】
スマートプレート1は、この筐体10の突起部がナンバープレート2の裏面から取り付け穴に挿入された後、ナンバープレート2とともにネジ3を用いて車両に取り付けられている。
【0013】
本実施形態におけるスマートプレート1の筐体10の突起部の表面、すなわち筐体10のナンバープレート2の正面から見える部位の表面には、外部から衝突等による圧力を受けたときに衝突した部位の色が変化するように顕色剤塗料11が塗布されている。
【0014】
図2(a)に、筐体10の突起部の表面に顕色剤塗料11が塗布された様子を示す。図に示すように、筐体10の突起部の表面に発色剤をカプセル化した発色剤カプセル12と顕色剤13とが混合された顕色剤塗料11が塗布されている。
【0015】
そして、図2(b)に示すように、外部から衝撃による圧力が筐体10に加わると発色剤カプセル12のカプセル皮膜が破壊され、図2(c)に示すように、発色剤12と顕色剤13とが触れて色変化を生ずるようになっている。
【0016】
次に、この顕色剤塗料11の生成方法について説明する。まず、図3に示すような発色剤カプセル12を生成する。本実施形態では、発色剤カプセル12の発色剤の材料として無色のロイコ系染料を用いる。この無色のロイコ系染料を不揮発性のオイルに溶解して発色剤オイル12aを生成する。
【0017】
次に、この発色剤オイル12aを水の貯まった容器の水面に垂らすと、発色剤オイル12aは微粒子となり水の表面で分散する。
【0018】
次に、この微粒子を、ゼラチンなどを用いた高分子皮膜(以下、カプセル皮膜という)12bで包んでカプセル化する。このように微粒子をカプセル皮膜12でカプセル化することにより、直径が数マイクロメートル〜数百マイクロメートル程度のマイクロカプセルが生成される。
【0019】
このようにしてカプセル皮膜12b内に発色剤オイル12aが封入された無色の発色剤カプセル12が生成される。なお、発色剤オイル12aをカプセル皮膜12b内に封入することにより、発色剤オイル12aと顕色剤13を隔離して拡散を阻止するとともに、発色剤オイル12aの蒸散を防止している。また、カプセル皮膜12bにより、発色剤オイル12aを長時間にわたり安定して保護し、変質を防止している。
【0020】
次に、この発色剤カプセル12aを顕色剤13に混合して顕色剤塗料11を生成する。本実施形態では、顕色剤13として白色系の酸性白土を用いた酸性顕色剤を用いている。
【0021】
このようにして、発色剤カプセル12aと顕色剤13とが混合された顕色剤塗料11が生成され、スマートプレート1の筐体10の突起部の表面に塗布される。
【0022】
筐体10の顕色剤塗料11が塗布された部位に外部から強い圧力が加わるまでは、発色剤カプセル12のカプセル皮膜12bによって、発色剤オイル12aと顕色剤13とが隔離されているため、発色反応は起きない。したがって、図5(a)に示すように、衝突前の筐体10の顕色剤塗料11が塗布された部位の色は白色となっている。
【0023】
そして、筐体10の顕色剤塗料11が塗布された部位に外部から強い圧力が加わると、図4に示すように発色剤カプセル12のカプセル皮膜12bが変形に耐えられずに破壊し、発色剤オイル12aと顕色剤13とが触れて発色反応を起こし、色変化を生ずる。
【0024】
衝突後の筐体10の顕色剤塗料11が塗布された部位の色の様子を図5(b)に示す。図5(b)では白黒で示されているが、実際には左端が白色となっており、右側にいくにつれて次第に赤色に変色している。なお、この色変化は不可逆で、一端変色した色は退色することがないため、圧力が加わってから長時間経過した後でも、目視により衝突痕を容易に識別することが可能である。
【0025】
上記した構成によれば、車両のナンバープレートに取り付けられる筐体10に、外部からの圧力が印加されると色変化を生じる顕色剤塗料11が塗布されているので、外部からの圧力が印加されるとその部位が変色し、より簡素な構造で衝撃の有無を容易に確認できる。
【0026】
また、外部からの圧力が印加されると色変化によって衝突の形跡が保持されるので、スマートプレート1の機能障害のチェックを誰もが簡易に実施できる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0028】
例えば、上記実施形態では、発色剤の材料として無色のロイコ系染料を用いた例を示したが、有色のロイコ系染料を用いてもよい。また、発色剤の材料は、ロイコ系染料に限定されるものではなく、他の材料を用いてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、高分子皮膜で発色剤カプセルを生成した例を示したが、高分子皮膜以外の物質で発色剤をカプセル化してもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、白色系の顕色剤塗料11が発色剤カプセル12の発色剤と顕色剤13との発色反応によって赤色に変化する例を示したが、ロイコ系染料と酸性顕色剤の組み合わせによって青、黒などの発色作用を起こすことが可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、発色剤カプセル12が顕色剤13に混合された顕色剤塗料11を筐体10に塗布した例を示したが、例えば、顕色剤塗料11が塗布されたものを筐体10に貼り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信装置が自動車のナンバープレートに取り付けられた様子を示す図である。
【図2】顕色剤塗料の発色についての説明図である。
【図3】発色剤カプセルの構成を示す図である。
【図4】カプセル皮膜の破壊による発色剤の拡散についての説明図である。
【図5】(a)は衝突前の筐体の顕色剤塗料が塗布された部位の色の様子を示す図、(b)は衝突後の筐体の顕色剤塗料が塗布された部位の色の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1…スマートプレート、2…ナンバープレート、3…ネジ、10…筐体、11…顕色剤塗料、12…発色剤カプセル、12a…発色剤オイル、12b…カプセル皮膜、13…顕色剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のナンバープレートに取り付けられる筐体を備え、
前記筐体には、外部からの圧力を受けると色変化を生ずる塗料が付されていることを特徴とするスマートプレート。
【請求項2】
前記塗料は、カプセル皮膜内に発色剤が封入された発色剤カプセルと、前記カプセル皮膜の破壊により前記発色剤と触れると色変化を生ずる顕色剤と、が混合されたものであることを特徴とするスマートプレート。
【請求項3】
前記発色剤カプセルは、前記発色剤が不揮発性のオイルに溶解されたものが微粒子の状態で前記カプセル皮膜内に封入されたものであることを特徴とする請求項2に記載のスマートプレート。
【請求項4】
前記発色剤にロイコ系染色染料が用いられ、前記顕色剤に酸性白土が用いられていることを特徴とする請求項2または3に記載のスマートプレート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−83957(P2007−83957A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277422(P2005−277422)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】